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2017年7月8日 公開

トヨタ VS 日産 [著者ID: 10] 

自動運転で、新規参入として Google (NHK) の名前があがったり、フランスがガソリン車の販売停止 (東洋経済 ONLINE)を宣言したりと、自動車産業を取り巻く環境が大きく変わろうとしています。

また、電気自動車の開発競争もしばしば話題にのぼります。「電池寿命に不安。電気自動車の中古価格が暴落中! (Yahoo!ニュース)」なんて記事もありました。この記事の中で、トヨタと日産他の対応の違いを指摘されているのですが、内容は衝撃的でした。

「電池寿命に不安」なのはどの車でも同じなのですが、携帯のバッテリー寿命の問題とは、商品の価格のケタが違うだけに、より大きな問題になります。電気自動車に乗るのであればバッテリーがへなったときのあとのサポートまで見て買うべきでしょうね。

自動車産業には、他にもいろいろ見ていきたい企業はありますし、そもそも既存企業だけ見ていていいのかという問題もありますが、トヨタと日産の比較をしてみましょう。

2社の財務諸表は、米国基準と日本基準ということで単純な比較が難しい面もありますが、とりあえず見てみましょう。

貸借対照表(米国基準・連結)
EDINET閲覧(提出)サイトをもとにシーフル株式会社が作成したものです

損益計算書(米国基準・連結)
EDINET閲覧(提出)サイトをもとにシーフル株式会社が作成したものです

キャッシュフロー計算書(米国基準・連結)
EDINET閲覧(提出)サイトをもとにシーフル株式会社が作成したものです

貸借対照表(日本基準・連結)
EDINET閲覧(提出)サイトをもとにシーフル株式会社が作成したものです

損益計算書(日本基準・連結)
EDINET閲覧(提出)サイトをもとにシーフル株式会社が作成したものです

キャッシュフロー計算書(日本基準・連結)
EDINET閲覧(提出)サイトをもとにシーフル株式会社が作成したものです

まずは、ビジュアル財務諸表をざっくりと

BSで、売上債権の比率の違いに目が行きます。(注)どんぶり会計β版では、売上債権の中に、(販売)金融債権を含めています。

それから、有形固定資産、投資その他の比率が大きく違います。

上述の電気自動車の記事で、売ったあとのサポートに関する評判の違いがあります。手厚いサポートにもかかわらず、営業利益率はトヨタの方が高いです。

しかし、冒頭にも書いた通り、この辺りは会計基準の違いもあるため単純な比較が難しいところです。


有価証券報告書の見どころ

という訳なので、もう少し、財務諸表関連を深く追っていきたいところではありますが、簡単に終わりにして、有価証券報告書の見どころを1つ取り上げます。


色々ある有価証券報告書の見どころの中から今回は、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の項目を見てみます。

同じ自動車事業を営む会社でありながら、こんなところにも、企業の差って大きく現れるんですね。




■ 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

(1)トヨタ

本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は2017年3月31日現在において判断したものです。

(1) 会社の経営の基本方針
トヨタは経営の基本方針を「トヨタ基本理念」として掲げており、その実現に向けた努力が、企業価値の増大につながるものと考えています。その内容は次のとおりです。
1. 内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす
2. 各国、各地域の文化、慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する
3. クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む
4. 様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する
5. 労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる
6. グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす
7. 開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄を実現する

(2) 会社の対処すべき課題
今後の経営環境としては、先進国では着実な成長が続き、新興国についてもその好影響の波及や各国の政策効果によって、緩やかに成長率が高まっていくことが期待されます。日本経済は、雇用・所得環境が引き続き改善し、経済の好循環が進展する中で、民需を中心とした景気回復が見込まれますが、米国や英国などの政策動向に関する不確実性に留意する必要があります。
自動車市場については、先進国では安定推移が見込まれ、新興国では緩やかながらも持ち直しが期待されます。一方で、市場の変化や各種規制、技術の進化、異業種参入などが複雑に絡み合い、自動車事業そのものが大きな変革の時期を迎えています。
このような厳しい経営環境の中、トヨタは、以下の方針をかかげ、持続的成長を通じてトヨタグローバルビジョンを実現していきます。
第一に、「未来」を切り拓くため、勇気をもって新たな取り組みに挑戦していきます。電動化・情報化・知能化、新価値創造への戦略的シフトで、未来のモビリティ社会の構築を目指します。また、クルマの環境負荷をゼロに近づけるとともに、地球・社会にプラスとなる取り組みを通じて、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
第二に、木が年輪を重ねるように着実に成長するため、「仕事の進め方改革」を実行していきます。「強い志」と「謙虚な学び」で従来の延長線上から決別し、「もっといいクルマづくり」を加速させていきます。また、生き残りをかけて、激変する社会への感度を高め、危機への的確な対応による競争力獲得・維持に取り組んでいきます。
第三に、トヨタを支え続ける基盤固めに取り組んでいきます。お客様第一の徹底で、仕事の基本を守った全員参加の品質づくりを実践していきます。
このような取り組みにより、トヨタは、「もっといいクルマ」をお届けすることを通じて「いい町・いい社会」づくりに貢献し、結果として多くのお客様にクルマをお求めいただき、安定した経営基盤を構築していきます。このような循環を続けることによって、持続的成長を実現し、企業価値の向上に努めていきます。また、法令遵守をはじめとした企業行動倫理の徹底など、企業の社会的責任を果たしていきます。



(2) 日産

(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、人々の生活を豊かにすることをビジョンに掲げ、その実現のために、独自性に溢れ、革新的なクルマやサービスを創造し、その目に見える優れた価値を、全てのステークホルダーに提供することを目指していく。またそれらはアライアンスのもとに行っていく。

(2) 経営環境及び対処すべき課題等
当社グループは、平成28年度までの6年間の中期経営計画「日産パワー88」のもと、販売台数、生産能力及び売上高において大きな成長を遂げるとともに、事業運営効率を向上し、収益性を高めることができた。平成29年度は、「日産パワー88」を通じて築かれたしっかりとした事業の土台に加え、積極的にアライアンスの力を活用し、次のステップの成長に向けて進み始める年度となる。
当社グループは、平成29年度も、グローバルで戦略的な新商品を投入し、日産、インフィニティ及びダットサンの各ブランド力の一層の強化を進めていく。特に技術の日産としてのDNAを大きなバックとし、その上に「ニッサン・インテリジェント・モビリティ」による進化を重ね、しっかりとした日産の顔づくりを進める。その一環として、欧州向けの「キャシュカイ」へ「プロパイロット」を搭載し、新技術の商品化をグローバルに進めるとともに、新型「リーフ」を、国内を皮切りに、北米、欧州へ順次投入し、「ニッサン・インテリジェント・モビリティ」を、さらに強化していく。
また、当社グループは自動車業界において起きつつある大きな技術革新と、市場環境や自動車の利用形態等の変化をチャンスと捉え、技術及び事業展開の両面で進化を図っていく。この取組みには、アライアンスの力が必要不可欠であり、当社グループはその力を最大限に活用していく。



■その他の気になる数字

(a) 従業員の状況

(1)トヨタ
グループの従業員
364,445人 (臨時従業員 86,005人)

トヨタ本体の従業員数
73,875人 ( 10,700人)

平均年齢
39.0歳

平均勤続年数
15.4年

平均年間給与
8,523,317円


(2) 日産
グループの従業員
137,250人 (臨時従業員 19,366人)

日産本体の従業員数
22,209人 (臨時従業員 4,398)

平均年齢
42.8歳

平均勤続年数
20.2年

平均年間給与
8,164,762円



(b) 地域 売上高 (営業利益、△営業損失)

(1) トヨタ

日本 14兆8,308億円 (1兆2,022億円)
北米 10兆2,390億円 (3,111億円)
欧州 2兆6,810億 (△122億円)
アジア 4兆8,198億円 (4,351億円)
その他 2兆1,610億円 (586億円)

(2) 日産

日本 4兆7,184億円 (4,101億円)
北米 6兆3517億円 (2,877億円)
欧州 1兆9206億円 (△2,519億円)
アジア 1兆6095億円 (6,191億円)
その他 1兆228億円 (△1,582億円)




【参考リンク】

自動運転革命 グーグルの脅威 (NHK)

フランス、「ガソリン車は販売停止」の衝撃度 マクロン新政権が放つ環境政策の一環 (東洋経済 ONLINE)

電池寿命に不安。電気自動車の中古価格が暴落中! (Yahoo!ニュース)