電通の大幅売上減と国際会計基準移行 [著者ID: 10]
この場合、売上高などで、単純に前年と比較できない場合があります。
たとえば、商社や広告代理店などで、移行前後で業績(営業利益)は落ち込んだわけではないのに、売上高が大きく変わる場合があります。
業界・会社は、どれでもよいのですが、違法残業の問題やボクシングの村田選手の発言など、何かと話題になっている電通で見てみます。
2014年3月期の日本会計基準では、2兆3千億あった売上が、国際会計基準(IFRS)適用にしたら、2015年3月期には7千3百億円と落ち込んでしまいました。
会計基準が変わっただけで、売上が3分の1になってしまう。
これ理由は、いったい何でしょうか?
大まかには、「日本会計基準で、総額表示をしていたが、国際会計基準では、純額表示に変更になった」ということが理由です。
言葉だけではわかりにくいので、例を挙げます。
1,000円の商材(テレビや新聞などのメディアの広告枠)があって、これを売るために、電通がクライアントに対し広告を作り、マージンを乗せて1,500円で売ったとします。
総額表示の場合
売上高 ・・・・・・ 1,500円 (商材の価値+広告の価値)
売上原価 ・・・・・ 1,000円 (商材の価値)
売上総利益(粗利)・・ 500円 (広告の価値)
となります。
一方、純額表示の場合
売上高 ・・・・・・ 500円 (広告の価値)
売上原価 ・・・・・ 0円
売上総利益(粗利)・・500円 (広告の価値)
となります。
このように、やっていること(事業内容)や粗利は変わらないのに、売上高は、1,500円から500円に、3分の1になってしまいます。
電通のような会社は、他社の商材を右から左に流す際に付加価値(電通の場合は、メディアの持つ広告枠などの商材を広告主に売る際に作られる広告)を生み、マージンをとる事業を営んでいます。この場合に、今までの日本会計基準では、他社が作った価値も売上に乗せていました。国際基準になって、在庫リスク等を負わない場合などの事業では、他社の生み出した価値を含まない、その会社が生み出した真の価値、つまり、マージン分しか売上に計上しないので、大幅に売上が減少したということになります。
クロネコヤマトのような流通で考えれば、電通は、運んでいる荷物の中身についても売上に上げる処理(日本会計基準)だったというと、ちょっと誤解があるでしょうか?
※ 最近、IFRSに移行する会社が多くなってきているので、このような例は増えています。
※ 電通は、さらに2015年に決算期も変更しているので、余計に比較し辛いです。
※ 国際会計基準、米国会計基準のデータは、どんぶり会計の会計データ(XBRL)自動解析プログラムで解析できませんので、財務諸表から数字を拾って手入力したものです。