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2017年12月1日 公開

ゾゾタウンのスタートトゥデイとユニクロのファーストリテイリング [著者ID: 10] 

Yahoo! トップで紹介されていた記事

ユニクロは生き残れるのか ゾゾタウン「無料採寸ボディスーツ」の脅威 (文春オンライン)

ファーストリテイリングの2017年8月期の有価証券報告書も、11月30日に提出されました。

そこで、Let's どんぶり会計!

損益計算書(日本基準・連結)
EDINET閲覧(提出)サイトをもとにシーフル株式会社が作成したものです

貸借対照表(日本基準・連結)
EDINET閲覧(提出)サイトをもとにシーフル株式会社が作成したものです

キャッシュフロー計算書(日本基準・連結)
EDINET閲覧(提出)サイトをもとにシーフル株式会社が作成したものです

損益計算書(連結)
EDINET閲覧(提出)サイトをもとにシーフル株式会社が作成したものです

貸借対照表(連結)
EDINET閲覧(提出)サイトをもとにシーフル株式会社が作成したものです

キャッシュフロー計算書(連結)
EDINET閲覧(提出)サイトをもとにシーフル株式会社が作成したものです

あらためて、ファーストリテイリングとスタートトゥデイって、どんな会社だっけっていうところから。

ファーストリテイリングは、製造小売と言われるSPA (Specialty store retailer of Private label Apparel)事業を行い、スタートトゥデイは、有価証券報告書に『当社グループはEC事業の単一セグメントである』とある通り、EC事業の会社である。

ということで、扱うものが同じアパレルだが、事業がそもそも全然違うので、少し比較が難しい。

スタートトゥデイの事業イメージ図(有価証券報告書 事業概要より)

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それでは、どんぶり会計してみよう。

単純な売上高比較でいくと、ファーストリテイリングが1兆8600億円であるのに比べ、スタートトゥデイは800億円に満たない。

スタートトゥデイは手数料ビジネスだから、仮に10%の手数料をとっているとすれば、商品販売額の10%が売上になっているということだ。この場合、実際に販売されたアパレルの商品の合計額は、800億円の10倍、8,000億円になる。ただし、スタートトゥデイの事業のイメージは、上の図の通りなので、そこまで単純ではないのだが、少なくとも流通しているアパレルの販売額合計は、単純な有価証券報告書上の売上高ではない。少なくとも、スタートトゥデイの有価証券報告書にあらわれる売上高より圧倒的に大きいという感覚が正しい。実際に、商品取扱高というのが有価証券報告書で開示されており、その額は、8,000億円までは大きくなく、2,120億円である。



冒頭の文春オンラインの記事によれば、『柳井正社長は、現状で6%にとどまるEコマース事業の比率を「早期に30%にしたい」と宣言。』ということだから、この比率が売上の比率だと仮定すると、ファーストリテイリングのEC事業は、1,100億円ほどになる。ファーストリテイリングのEC事業の売上は、主に自社製品の販売になるので、スタートトゥデイでいうところの商品取扱高と基本的には一致するはずだ。ちなみに、 ファーストリテイリング有価証券報告書の生産、受注及び販売の状況 (2017年8月期)を確認すると、EC事業の売上は487億円であり、全体の売上高の3%に満たない。記事中にある柳井社長のコメントの『6%』は、売上高の比率ではなさそうである。


というわけで、EC事業で比較するのであれば、スタートトゥデイとファーストリテイリングの商品取扱高2,120億円と487億円で見るべきだろう。


このようにEC事業での商品取扱高で見ると、スタートトゥデイが圧倒しており、冒頭の記事の表題の通り、ゾゾスーツというプライベートブランドで、ファーストリテイリングの牙城に迫っている、と考えるのもわかる気がする。また、ユニクロのサイトがセールで落ちたことも『TVCMでも大々的に告知した結果、通販サイトにアクセスが集中。2日にわたりシステムダウンを起こし、いきなり暗雲が立ち込めた。』とマイナスに評価されている。そこで、『ユニクロは生き残れるのか』という表題になるわけだ。

ユニクロのネット通販ダウン 「感謝祭」でアクセス集中 (日本経済新聞)



しかし、そうだろうか?


スタートトゥデイは、ビジュアル財務諸表(BS)を見るとわかるように、自社株買いをやっている。2016年3月期だ。昨年、この財務諸表を見たとき、「やることないんかな?」って思ってしまった。ゾゾスーツ は、そんな次に何をやろうかと色々考え抜いた末出した結論の1つなのであろう。むしろ、「金はあるので何かやれるので、やってみる」という暗中模索状態に感じる。


こんな記事もあった。

ゾゾタウンが「採寸ボディスーツ」に託す狙い 前澤社長は「一家に一台の存在にする」と強調 (東洋経済オンライン)

企業の継続的な成長には新しい試みが必要になってくるので、何かやるのであるが、不安は不安なのである。


一方、ファーストリテイリングのEC事業についても、確かにユニクロほどの事業規模であれば、ECサイトのインフラはもっと十分に備えておけるはずだ。だが、それだけの話だ。サイトが想定していたより多くの顧客を集めたという風に見方を変えれば、今回の失敗は、『暗雲が立ち込めた』というより、むしろポテンシャルの高さを示したものと言える。ファーストリテイリングのような商材であれば、EC事業に向いているとも考えられないだろうか。渋谷の改札内にあるユニクロなんかも意味があって、そこでちらっと見たものをネットで買うなんて人も出てくるだろう。EC事業を小さいながらもやっていた私の経験からすれば、ECサイトで顧客が買い物をする主な時間帯は、夜間である。実店舗では、ゆっくり買い物ができない層に対してのアプローチ手段としてのEC事業も考えられるだろう。


ファーストリテイリングとゾゾタウンでは、扱っている商材がアパレルというくくりでは同じであるが、行っている事業はまったく違うし、ターゲット顧客も違う。意識はするだろうが、互いにライバルとは思っていないはずだ。