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2019年7月13日 公開

35億円の巨額流出!ビットポイントを100%子会社として持つリミックスポイントの財務諸表 [著者ID: 10] 

ブロックチェーンの技術を使ったビットコインなどの仮想通貨取引。

新しい技術であるため、多くのスタートアップやベンチャー企業が、ブロックチェーンを利用した事業にトライしている。

ただ仮想通貨取引所は金融サービスだけに、他の事業と比べ、セキュリティの穴をつく攻撃を受けたりやマネーロンダリングに利用されるなどといった問題に直面しやすい。仮にブロックチェーン自体はセキュリティが強固で到底破られることがない安全なシステムだとしても、インターネットを使うサービスである以上、完璧なシステムになることはあり得ない。スマホなどのアプリで利便性を高めようとすれば、ある程度セキュリティが犠牲になる可能性がある。

コインチェック、Zaifという仮想通貨取引サービスで、巨額流出の事件があったことは記憶に新しいが、今回は、これに続く、3つめの事件である。

コインチェック、Zaifと違い、サービスを展開しているビットポイント社は、事件が起きた時点で、すでに上場しているリミックスポイントの100%子会社ということで、親会社の財務諸表を見ることで、どんな経営状態なのかがおおよそ検討がつくので、少し見てみようと思う。

貸借対照表(日本基準)
EDINET閲覧(提出)サイトをもとにシーフル株式会社が作成したものです

損益計算書(日本基準)
EDINET閲覧(提出)サイトをもとにシーフル株式会社が作成したものです

キャッシュフロー計算書(日本基準)
EDINET閲覧(提出)サイトをもとにシーフル株式会社が作成したものです

財務諸表を見てわかるように、2017年3月期から2018年3月期に転機がある。

BSを見ると、総資産が24億円から185億円と8倍近くになっている。2018年3月期、BSのグラフで示される薄い水色と薄いピンクは、それぞれ、その他流動資産、その他流動負債で、これらが大きく膨らんでいる。これは、仮想通貨の取引所を通して顧客からの預かり資産が財務諸表に載るようになり、大きくなったということであろう。



リミックスポイントのプレスリリースを見ると、そのほとんどが仮想通貨絡みである。
リミックスポイントのプレスリリースとビットポイントの新着情報をベースに、少し変遷を見てみることにする。





【ビットポイント(リミックスポイントの仮想通貨事業)の沿革】

ビットコインなどの仮想通貨の取引所をスタートさせたのは、2016年5月のことである。
2016年5月 ビットコイン等仮想通貨取引所サイト開設 -子会社ビットポイントWebサイトリリース-

取引可能な仮想通貨やサービスをを増やしていく。
2016年10月 Bitpoint(ビットポイント)ユーザーの利便性が大幅に向上 ウォレット機能の強化により、ビットコイン送金のリアルタイム化を実現 -仮想通貨送金・決済サービスの強化へ-
2017年8月 ビットコインキャッシュ(BCC)の取引を開始 -ビットコインから分岐した新仮想通貨の取引により仮想通貨市場をより活性化-
2017年9月 BITPoint 仮想通貨店舗決済アプリ及びウォレットアプリをリリース -国内初「イーサリアムによる店舗決済サービス」を開始-

2018年1月、コインチェック、仮想通貨流出事件

仮想通貨取引をより手軽に一般に普及させるという戦略が垣間見える。
2018年4月 BITPoint 待望の仮想通貨取引アプリをついにリリース!! -仮想通貨取引が初めてな方でも簡単に操作可能-

2018年6月 当社に対する関東財務局の行政処分について (業務改善命令)

2018年9月、Zaif、仮想通貨流出事件

ビットポイントを完全子会社化。
2019年3月 リミックスポイントがビットポイントジャパンを完全子会社化へ! -金融・FinTech事業の中核会社の一つとしてグループの成長を目指す-

そして、今回の事件が発生する。
2019年7月 当社子会社における仮想通貨の不正流出に関するお知らせとお詫び(第一報)



※※



実際に仮想通貨がリミックスポイントの有価証券報告書の貸借対照表の流動資産に載り始めたのは、2017年3月期からである。
これは、ビットポイントがリミックスポイントの連結対象として加わった時期と一致する。

2017年の年末にかけて、芸能人などが「仮想通貨をやっている」ということを言い出し、一般にも広がるブームが到来、仮想通貨が高騰。1億円を超える儲けを出す人も多数出て、億り人などという言葉も生まれる。

しかし、2018年1月コインチェックの仮想通貨流出事件、2018年9月にZaifの仮想通貨流出事件が起き、ブームは一気に冷めた。

この影響が大きく、2018年3月期に、34億円あった営業利益が、2019年3月期に、17億円の営業損失になった。

そして、今回の事件である。

2019年3月期のBSを見ると、仮想通貨として、資産を103億円保有している。
顧客からの仮想通貨預り金は82億円、ビットポイントの仮想通貨借入金は20億円である。

今回流出したのは、総額35億円。うち顧客資産で25億円、自社資産で10億円ということだから、単純計算で、顧客資産(預り金)の30%、自社資産(顧客資産を除いた残りが20億円として)の約半分が流出したことになる。


※※※


リミックスポイントは非常に厳しい状況に置かれている。