有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100UVG1 (EDINETへの外部リンク)
グロースエクスパートナーズ株式会社 事業の内容 (2024年8月期)
(1) ミッション
当社グループは、「A Company for Imagination & Innovation 常に変化と成長を続け顧客と社会に革新をもたらす知的創造企業」を企業理念とし、ITを駆使して顧客企業の価値を創造することをミッションとして、大手企業の組織及びITの変革に伴走する「エンタープライズDX事業」を展開しております。日本経済が「失われた30年」を脱するには、大手企業がDXを達成し、市場における競争優位性を取り戻すだけではなく、グローバルに展開して新たな市場を開拓することが不可欠であります。一方で、大手企業においては、長年に亘り維持してきた既存の組織、人財、管理体制、システム等の成熟した資産が変革の足枷ともなり得ます。こうした状況を克服するためには、事業そのものだけではなく、組織及びITの変革が不可欠だと考えております。
当社グループでは、大手企業(エンタープライズ企業)が、新たな価値創出を実現しながら組織/ITを変革(DX)していく取り組みを「エンタープライズDX」と位置づけ、ヘルスケア、小売・流通、モビリティ、通信、建設、製造、金融など各業界におけるリーディングカンパニーであるエンタープライズ企業を主な顧客とし、顧客のエンタープライズDXを実現する「エンタープライズDX事業」を展開しております。
なお、当社は、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当しており、これにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準については連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。
(2) DX支援における当社の特徴
当社グループは顧客自ら事業価値を創造し続ける組織(以後、自走型DX組織)へ変革させるDX支援を特徴としております。顧客のDX支援へのアプローチは、新規デジタルサービス開発や既存IT資産のモダナイズ(*1)に関するご相談を受け、顧客が蓄積してきたレガシー資産(顧客、ブランド、設備・拠点、サポート体制、人財、既存IT資産、ビッグデータ、サプライチェーンなど)の強みを活用した新しいサービスやビジネスモデルの企画を支援するDXコンサルティングから開始いたします。顧客自身が事業価値定義やそれに基づく新たなサービスを継続的に創出するためのプロセスやノウハウを顧客に提供しております。顧客内の一部署や個別サービスでの成功事例を顧客内で拡大しながら、顧客の自走型DX組織の実現まで伴走しております。関係性が深耕した顧客とはDX推進組織(出島型組織)の共同運営、デジタルサービス共同開発などの共創フェーズに発展しております。主たる顧客であるエンタープライズ顧客数(*2)は継続的に増加し20社(2012年8月期実績)となっております。年間取引金額1億円以上の顧客が9社、うち年間取引金額2億円以上の顧客が5社となっております(いずれも2012年8月期実績)。顧客維持率(*3)は87.6%(2012年8月期実績)とストック性の高い収益構造となっております。既存顧客の関係性深耕により、年間取引金額2億円以上のロイヤルカスタマーを拡大しております。
① 出島型アプローチ
顧客の自走型DX組織実現支援においては「出島型アプローチ」を特徴としております。「出島型アプローチ」とは、既存の枠組みでは、本質的なイノベーションを起こしにくいという課題感のもと、DX推進のために本社から切り離した『出島』組織を作り、外部の専門性を取り込みながら、組織横断的に活動をすることで企業全体にイノベーションをもたらす取り組みを指します。当社グループでは、出島型アプローチの具体的な進め方として、組織変革/人財育成研修、合同チームでのアジャイル開発、顧客企業への出向、資本/業務提携、出島型の組織や企業を共同運営する等、顧客の状況に合わせた様々な支援手法を提供しております。実際に、一部の重要顧客においては、顧客企業のDX子会社の設立を支援しており、ニプロ株式会社は、2016年にIT子会社「ニプロシステムソフトウェアエンジニアリング株式会社」を、株式会社三越伊勢丹ホールディングスは、2019年にDX推進子会社「株式会社IM Digital Lab」を設立しております。いずれの会社においても、役員の派遣をはじめ、人事制度設計、人財採用/育成、アジャイルチームの創成、新規デジタルサービスの開発と改善、既存IT資産のモダナイズ推進等の支援を行っております。
② データ駆動型プラットフォーム
自走型DX組織を実現するIT基盤の獲得を支援するアプローチとしては、既存システムのデータを活用した新規デジタルサービスを迅速に立ち上げる基盤である「データ駆動型プラットフォーム」の構築を特徴としております。大手企業のIT変革にあたっては、クラウドやAIといった最新技術を活用し、デジタルサービスの開発・運用のアジリティを高める必要があります。その一方で、経済産業省が2018年「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」において、“2025年以降レガシーシステムが残り続けることで引き起こされるシステム障害に起因する経済損失は最大12兆円/年にのぼる可能性がある”と指摘しているとおり、既存システムへの対応も不可欠であります。当社グループでは、新たなデジタルサービスのアジャイルな立ち上げと、大企業の既存IT資産のモダナイズを実現する、すなわち、顧客企業が所属する業界のデータモデルやセキュリティモデルを組み込み、既存IT資産のデータを活用するための機能やシステム運用の自動化機能を具備する「データ駆動型プラットフォーム」を構築するノウハウを有しております。また、データ駆動型プラットフォーム上でAIデータ解析を実施し、顧客レガシー資産から新しい事業価値を創造することに取り組んでおります。当社グループの顧客における具体的な事例として、2021年には株式会社三越伊勢丹ホールディングスにおいて百貨店事業のDXを目的とするシステム基盤「三越伊勢丹ビジネスプラットフォーム/DevOps基盤」により開発スピードは4倍になったこと、2022年には大成建設株式会社において7,000社7万人が利用する基幹システムを刷新して建設業務のDXを目的とするシステム基盤「X-grab」を構築したことを公表しております。
(3) 成長力の源泉
当社グループの成長力の源泉は、グローバルDX人財(*4)の育成と、DXテクノロジーアセット(*5)の蓄積であります。
グローバルDX人財育成においては、大手企業の変革を実現するグローバルDX人財の採用・育成プログラム整備、社員が安心して長く働けるユニークな人事制度・福利厚生制度の整備に積極的に取り組んでおります。その結果、コンサルタント・エンジニア社員数(*6)は継続的に増加しており、2012年8月末時点で194名となっております。海外出身人財を積極採用し、将来的に海外出身人財比率(*7)40%以上を目指しております。DXテクノロジーアセットの蓄積においては、特に「データ駆動型プラットフォーム」を実現する技術的な資産(ソフトウェア・スキル・ノウハウなど)の蓄積を推進しております。
(4) カテゴリー
当社グループは、「エンタープライズDX事業」の単一セグメントであるため、セグメント情報は記載しておりませんが、カテゴリーは以下のとおり分類しております。事業区分 | 事業内容 |
DX推進支援事業 | 顧客が業務変革を実現するための、コンサルティングからアプリケーション開発・クラウド活用までを含む総合的支援の提供 |
DX支援プロダクト・サービス事業 | 顧客のDX推進を支援するためのプロダクトやサービスを当社グループが販売し、ライセンス収入等によりスケーラブルな収益を得る事業 |
デジタルサービス共創事業 | 顧客のデジタルサービスに共創的に取り組み、顧客ビジネスの拡大に伴って当社グループの収益も増加する事業 |
各事業内容の詳細は、次のとおりであります。
① DX推進支援事業
当社グループの中核事業である「DX推進支援事業」は、大手企業を中心とした顧客向けのDX支援コンサルティング、システム企画・開発・運用サービスであります。「出島型アプローチ」「データ駆動型プラットフォーム」に関する当社の強みをベースにしたDX推進支援を各業界のリーディングカンパニーに提供しております。当社グループでは、既存システムのデータを活用しながら、新たなデジタルサービスを企画・設計するサービスデザイン(*8)手法の構造化を推進してまいりました。このサービスデザインフレームワークに沿って、事業の現状を分析して課題・改善点を検討し、既存業務や既存システムとの関係性を踏まえながら、アーキテクチャ(*9)とカスタマーエクスペリエンスを設計することでノウハウを蓄積しております。
新規顧客との取引は、このフレームワークに基づくDXコンサルティングサービスや、組織変革・グローバルDX人財育成のための教育サービスからはじめ、顧客メンバーと当社グループメンバーの合同チームでのアジャイル開発を推進することで、顧客内での支援領域を広げ、ビジネスの幅を拡大しております。
今後、生成AIがローコード開発ツール(*10)として使われるようになることで、開発生産性は大幅に高まると予測しておりますが、そのような状況下では、アジャイル・アーキテクチャ・サービスデザイン・現場導入展開がより重要になり、当該領域に強みを持つ当社グループの優位性は更に高まるものと考えております。
当該事業においては、DXコンサルティングサービスは、グロース・アーキテクチャ&チームス株式会社(以下、「Graat」という。)中心に、システム企画・開発・運用サービスは株式会社GxP(以下、「GxP」という。)中心に提供しております。
② DX支援プロダクト・サービス事業
「DX支援プロダクト・サービス事業」として、組織変革・DX人財育成教育サービスや、顧客自らDXソリューションを開発できる自社及び他社のプロダクトを提供することで、顧客の自走型DX組織の実現を支援しております。また、本事業は、コンサルタント・エンジニア等の人的リソースに依存しない事業でもあります。出島型アプローチの支援においては、当社グループで整備している大手企業の変革を実現するグローバルDX人財の育成プログラムを、教育メニューとして顧客にも提供しております。また、顧客がアジャイルチームを定着させるための教育や、前述のサービスデザインフレームワークの教育メニューも複数の顧客に対して提供しております。
出島型アプローチを支援するプロダクトとして、Atlassian社のコラボレーションソフトウェア群、当社グループが蓄積してきたDX組織運営ナレッジをツール化した自社プロダクト「GxWagora(ワゴラ)」の他、出島型アプローチにおける開発生産性変革ツールとして、既存IT基盤の最新化を支援するFresche社のプロダクト(IBM i(AS/400)資産アセスメントツール)、ローコード開発ツール等の販売・導入支援を行っております。
また、「データ駆動型プラットフォーム」を実現するシステム基盤を資産化して、DXテクノロジーアセットのライセンス収益化に取り組んでおります。その一環として、基幹(*11)/オンプレミス(*12)に蓄積したデータの活用を支援する自社サービス「GxDiste(ディスティ)」を提供しております。
当該事業においては、教育メニューはGraat中心に、DXテクノロジーアセットはGxP中心に提供しております。
③ デジタルサービス共創事業
顧客とともにデジタルサービスを共同開発し、当社顧客の製品・サービスを利用するユーザーのDXや、当社顧客が属する業界全体のDXを支援する「デジタルサービス共創事業」に取り組んでおります。当社グループ単体ではアプローチできない顧客層にDX支援サービスを提供し、そのサービス利用料等からレベニューシェアを含む売上・利益を得るビジネスモデルとして取り組んでおります。ニプロ株式会社との取り組みでは、当社グループも一部開発投資を行い、医療機器の管理を効率化して付加価値を向上するソフトウェアを開発し、ニプロ株式会社の顧客である病院施設への導入拡大に応じてライセンス収益を得るビジネスモデルを確立しております。本ケースは、顧客がレガシー資産から新しい価値を創出するDXに対して当社グループもリスクテイクして取り組み、顧客の事業成長に応じて当社グループも収益を得るモデルケースとなっております。
当該事業はGxP中心に推進しております。
事業の系統図は、次のとおりであります。
本項「3 事業の内容」において使用しております用語の定義について以下に記します。
番号 | 用語 | 意味・内容 |
*1 | モダナイズ | 技術面の老朽化、システムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化等の問題があり、その結果として経営・事業戦略上の足枷、高コスト構造の原因となっているレガシーなIT資産を、新たな価値を創出するように変革すること |
*2 | エンタープライズ 顧客数 | 売上高1,000億円以上、かつ、創業50年以上の顧客。対象年度の当社との取引金額が500万円以上の顧客を対象。顧客の関連会社とも取引がある場合は、取引金額を集約、企業グループを顧客1社として集計。なお、各企業の売上高・創業年は各社コーポレートサイトなどをもとに当社調べ、当社の該当会計期間(9月~8月)内に発表された最新の通期決算にて判定 |
*3 | 顧客維持率 | 対象年度を含む過去3年度の当社との累計取引金額が300万円以上の顧客を対象として、「対象年度・対象年度の前年度いずれも取引した顧客数 / 対象年度の前年度に取引した顧客数」にて算出 |
*4 | グローバルDX人財 | グローバル視点と異文化交流力を有し、多様なバックグラウンド・価値観を持つ人々とともに、大手企業を組織/ITの両面から変革して新しい価値を創造する人財 |
*5 | DXテクノロジー アセット | DXを推進するための技術的な資産であり、ソフトウェア、スキル、ノウハウなどが含まれる |
*6 | コンサルタント・ エンジニア社員数 | 当社の連結子会社に所属する社員数 |
*7 | 海外出身人財比率 | 当社グループに所属する海外出身社員数 / 当社グループに所属する全社員数 |
*8 | サービスデザイン | ユーザーの利用体験、関連業務フロー、関連システムを擦り合わせながら、アーキテクチャやカスタマーエクスペリエンスを設計するプロセス |
*9 | アーキテクチャ | システムやデータの構成要素、それらの相互関係、及びシステム全体がどのように機能するかを定義し、システムの設計原理や構造を示すもの |
*10 | ローコード開発ツール | プログラミングコードの記述量を最小限に抑え、プログラミングの専門知識が少ない人でも、システムを簡単に開発するためのツール |
*11 | 基幹 | 財務、人事、生産管理、販売管理などの重要な業務を統合的に管理し、企業の主要な業務プロセスを支える中心的なシステム |
*12 | オンプレミス | 企業がサーバーやネットワーク機器、ソフトウェア等を自社が管理する設備内に保有・運用するIT環境 |
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