シェア: facebook でシェア twitter でシェア google+ でシェア

有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S10079ZZ

有価証券報告書抜粋 テラ株式会社 研究開発活動 (2015年12月期)


事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

当社グループは、中長期的な収益基盤として重要になると考えられる、がん治療・診断技術及び再生医療等について、研究開発・事業化の検討を行っております。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は264,311千円であり、そのうち細胞医療事業におけるものは149,436千円、医療支援事業におけるものは1,815千円、医薬品事業におけるものは113,058千円あります。主な研究開発活動は次のとおりであります。

がん治療技術

がん抗原等の樹状細胞ワクチン療法への応用・開発
当社が実用化してまいりました樹状細胞ワクチン療法とは、本来数少ない樹状細胞※1を体外で大量に培養し、患者様のがんの特徴(がん抗原)を認識させて体内に戻すことで、樹状細胞がリンパ球にがんの特徴を覚えさせ、そのリンパ球ががん細胞を特異的に狙って攻撃するというがん免疫療法です。
がん抗原は多数発見されておりますが、人工的に合成したペプチドをがん抗原として使用することもできます。それらの多くはMHCクラスI※2と呼ばれる分子に結合するペプチドを用いております。当社は、WT1という多くのがんに発現するがん抗原に由来するペプチドを樹状細胞ワクチン療法に用いる権利を有し、すでにWT1のMHCクラスⅠペプチドを用いた樹状細胞ワクチン療法を実用化しており、かつ、継続的に研究開発を続けております。
近年、MHCクラスⅡ※3と呼ばれる、免疫系細胞やがん細胞に限局して発現している分子に結合するペプチドの重要性が基礎研究で明らかにされております。当社はMHCクラスⅡに結合するWT1やサーバイビン※4等のペプチドを使用する権利も有しており、その実用化に向けて、基礎研究及び臨床研究を積極的に行っております。

※1:樹状細胞
がん細胞などの異物の特徴(抗原)をリンパ球に提示する機能を有しており、抗原提示細胞と呼ばれています。がん細胞やウイルス感染細胞などを攻撃するリンパ球に対して、攻撃指令を与える司令塔の役割を担う重要細胞です。

※2:MHCクラスⅠ
MHCとは主要組織適合遺伝子複合体を意味し、種々の抗原をリンパ球に提示する機能に関連した分子(タン パク質)です。MHCには、クラスⅠとクラスⅡの大きく2種類があります。MHCクラスⅠは、赤血球と精巣細胞以外の全ての細胞に発現しています。樹状細胞のMHCクラスⅠにがん抗原ペプチドを結合させた樹状細胞ワクチン療法によって、ペプチド特異的キラーTリンパ球という免疫担当細胞がペプチド(がん抗原)を認識して特異的に活性化し、がんを攻撃するようになります。
※3:MHCクラスⅡ
MHCクラスⅡは、主に樹状細胞などの抗原提示細胞で発現しており、抗原となるペプチドをヘルパーTリンパ球という免疫担当細胞に提示する機能に関連した分子(タンパク質)です。抗原ペプチド特異的なヘルパーTリンパ球を活性化し、周囲の免疫反応を賦活化します。
※4:サーバイビン
細胞のアポトーシス(プログラムされた細胞死)を抑制する機能を持つタンパク質です。多種のがん細胞でサーバイビンが高発現していることが判明しており、汎用性の高いがん抗原として期待されています。

① 膵がんを対象としたWT1クラスIを用いた樹状細胞ワクチン療法
(研究パートナー:慶應義塾大学 医学部 外科学)
慶応大学医学部、ミッドタウンクリニック、テラの3者で膵臓がんを対象としたフェーズⅠ臨床試験(安全性試験)を2011年に開始しました。本試験は、抗がん剤であるジェムザール(GEM)との併用です。2011年1月から2012年11月にがん患者をリクルートした結果、膵臓がん患者10症例が登録されました。10症例の内、がんの進行度がステージ4aは4症例、ステージ4bは6症例でした。年齢中央値は、58.5歳(幅41~69歳)、内訳は、男性6名、女性4名です。2013年には、全ての患者で治療が終了しました。本試験によって、膵癌に対する当社WT1ペプチドパルス樹状細胞療法によりCTCAEv4.0に基づいたグレード3以上の有害事象を認めることはなく当該治療法の安全性が確認されました。2014年8月に開催された18回日本がん免疫学会総会にて慶應大学医学部の眞柳周平先生により研究に関する発表がなされました。RECIST判定で、10症例中、6SD,4PDの結果となり安全に施行できたと結論づけられました。本成果は、2015年1月に日本の学術誌Cancer Science誌(2015年106巻4号397頁)に掲載されました。

② 膵がん及び胆道がんを対象とした、WT1MHCクラスⅠ及びMHCクラスⅡペプチドパルス樹状細胞ワクチン療法
(研究パートナー:東京慈恵会医科大学附属柏病院)
慈恵会医科大学とテラで膵臓がん、胆道がんを対象とし、WT1クラスIおよびクラスIIペプチドパルス樹状細胞ワクチン療法のフェーズⅠ臨床試験を2011年に開始しました。本試験は、抗がん剤であるジェムザール(GEM)との併用です。2013年で全ての患者について治療が終了し、治療を受けたがん患者の免疫モニタリングを行いました。10症例中1症例でCTCAEv4.0に基づいたグレード3以上の有害事象を生じましたが、樹状細胞ワクチン療法に関連した有害事象は認められず安全に施行できたと結論づけられています。2014年より論文化の為の免疫モニタリングを行った結果、2014年6月11日に欧米の著名なClinical Cancer Research誌(2014年20巻16号4228頁)に掲載されました。さらに、追加試験により、癌研究及び治療に関する欧米誌Anticancer Research誌に2報(2014年34巻6353頁、2015年35巻1号555頁)掲載されました。また、欧米誌World Journal Gastroenterology誌に1報(2015年21巻39号11168頁)掲載されました。


③ 進行期悪性黒色腫に対するカルボプラチン・パクリタキセル併用ペプチドパルス樹状細胞ワクチン療法の第I/II相臨床試験
(研究パートナー:慶應義塾大学 医学部 皮膚科)
慶應大学医学部とテラで悪性黒色腫(メラノーマ)に対してWT1クラスIペプチドパルス樹状細胞ワクチン療法のフェーズⅠ臨床試験(安全性)を2011年に開始しました。本試験は、抗がん剤であるカルボプラチン・パクリタキセルとの併用です。2013年に、目標の10症例中9症例まで治療が終了し、それをもって臨床試験を終了しています。2014年には、免疫モニタリング等の基礎実験を行い、学会発表あるいは論文発表等の準備をしてまいりました。2015年10月には本研究成果を第74回日本癌学会総会で発表しました。現在は、成果をまとめております。

④ 進行・再発食道癌に対するドセタキセル併用WT1ペプチドパルス樹状細胞ワクチン療法の第I相臨床試験
(研究パートナー:慶應義塾大学 医学部 外科学)
慶應大学医学部とテラで食道がんに対してWT1クラスIペプチドパルス樹状細胞ワクチン療法のフェーズⅠ臨床試験(安全性)を2011年に開始しました。本試験は、12症例中8症例で治療を行いました。しかしながら、全ての患者において、3ヶ月の治療終了前にドロップアウトとなりました。2014年には全症例で治療が終了し、現在は成果をまとめております。

⑤ サーバイビン等の新規がん抗原を用いた樹状細胞ワクチン療法
(研究パートナー:セレンクリニック東京等)
がん抗原Survivinをターゲットにした新規のペプチド、HK-HELPサーバイビンロングペプチドは、国立北海道大学で開発されたヘルパーT細胞を活性化する新たな概念のがん抗原ペプチドです。2013年度には、基礎研究および臨床研究を行ってきた結果、HK-HELPサーバイビンロングペプチド単独の第Ⅰ相臨床試験が終了し、安全性が証明されています。2014年には、基礎研究からHK-HELPサーバイビンロングペプチドを樹状細胞にパルスする条件を確立しSOP作成を終了しました。その結果、医創会セレンクリニック東京においてHK-HELPサーバイビンロングペプチドをパルスした樹状細胞を用いて固形がんに対するフェーズI安全性試験が開始されました。2015年に当臨床試験を終了し、データを解析しております。

⑥ がん抗原の基礎データ検討
テラは新規がん抗原の実用化を進めています。現在、臨床導入予定のがん抗原はWT1-A3303、WT1-A1101、WT1-A26、そして、クレアゼン社のタンパク質(AFP、MAGE-1、GPC-3)です。以下、各がん抗原の進捗です。


HLA-A2402が適応する遺伝子を有する日本人は、60%、HLA-0201が適応する遺伝子を有する日本人は、20%です。しかしながら、依然として、残り20%程度のがん患者様に対して、これらのがん抗原(WT1-A2402、WT1-A0201)を使用することはできません。WT1-A3303、WT1-A1101、WT1-A26が使用可能となれば、HLA-A3303,HLA-A1101, HLA-A26のがん患者様も対象となり、ほとんど全ての患者様にテラのWT1ペプチドパルス樹状細胞ワクチン療法を適応させることができます。2013年には、これらペプチドをテラの樹状細胞に適応させる標準手順書(SOP)の作成を行いました。2014年にはテラ社提携医療機関で各ペプチドに関してそれぞれ5症例で安全性試験を実施した結果、2014年に実用化となりました。


クレアゼン社のがん抗原タンパク質は、抗原として樹状細胞に取り込ませて使用するため、MHC分子非拘束性であり、適応できれば全てのがん患者様に利用可能となります。クレアゼン社は、前立腺がん及び肝臓がんに対するがん抗原タンパク質を保有しています。2013年は北里大学において、肝臓がんに対するがん抗原、AFP、MAGE-1、GPC-3をパルスした樹状細胞ワクチン療法の第Ⅰ相臨床試験を開始しました。2014年8月には、第52回日本癌治療学会で鈴木慶一先生により学会発表が行われました。肝臓がん患者5症例におけるRECIST判定は全てSDであり、AFP/GPC3/MAGEA1ロード樹状細胞ワクチン療法に関連した重篤な副作用は認められませんでした。クレアゼン社とのタンパク質供給についての協議も終了し、2014年に実用化となりました。


⑦ ナチュラルキラー(NK)細胞療法の研究開発
(研究パートナー:九州大学、長崎大学)
九州大学の米満吉和教授の開発したEx vivo NK細胞大量培養法によって、NK細胞療法の臨床応用が可能となりました。NK細胞は、CTLが殺傷できない腫瘍を攻撃することができます。よって、樹状細胞ワクチン療法と併用することで抗腫瘍効果に相乗効果が期待されます。2013年には、臨床応用に向け大量培養法の確立に成功し、安全性の臨床試験の準備に取り組んできました。その結果、長崎大学病院にて倫理委員会で承認を得ることができました。2014年には長崎大学で臨床試験を開始し、目標症例10症例中、3症例において投与が終了しています。2015年中に4症例で投与が終了し、1症例で投与を継続しております。

⑧ 慶應義塾大学医学部先端医科学研究所細胞情報研究部門 共同研究
(研究パートナー:慶應大学 )
慶応大学医学部の河上裕教授との共同研究によって、腫瘍浸潤Tリンパ球療法(TIL)の臨床試験を計画し、2013年には、試験管内でのTIL培養系の確立に成功しました。2014年には倫理委員会申請等、臨床試験の準備を行ってきました。その結果、慶応大学医学部の倫理委員会およびCPC運営委員会の承認が得られ、2014年にはメラノーマに対するTIL療法の臨床試験(PhaseI)が開始されました。目標症例は3症例です。2015年には慶應大学が取得したAMED助成金の対応を実施すると共に、再生医療新法関連の書類作成を支援しました。試験に登録された患者は0症例でしたが、引き続き、基準に合致した患者の登録、治療開始を推進する予定です。

⑨ 提携医療機関へのGMPに沿った運営体制の構築支援
2013年度よりGMPに沿った運営体制をテラ提携医療機関に導入することを進めて参りました。2014年11月25日には再生医療新法が施行されました。2014年は、当該新法対応の為の文書作成業務を行い、終了しています。また、2015年5月中に製造施設の届出が終了し、2015年11月中に、医療機関が提供している免疫細胞療法の提供計画書を認定再生医療等委員会に提出し、承認を得ることができました。

⑩ 慶應義塾大学、旭化成共同研究
(研究パートナー:旭化成株式会社)
慶應大学医学部、旭化成社及びテラで行っている自動培養装置開発の共同研究契約は、2013年3月29日に締結しました。2013年は、慶應大学医学部での臨床研究開始に向けて準備を行ってきました。これまでに、樹状細胞の自動洗浄技術、自動回収機構などの技術開発や臨床使用を前提とした細胞培養プロセス全体の管理手法について一定の成果と経験を積むことができましたが、全自動プロセスの実現のための技術課題克服に当初の想定以上の開発期間やコストがかさむ見通しとなりました。
一方、樹状細胞ワクチン療法を受ける患者数の伸びに比し、細胞プロセッシング装置の導入により得られる医療機関のコストメリットは、当初想定よりも小さくなる見通しとなりました。
これらの状況も踏まえ、共同研究開発の今後の方向性について旭化成社と再検討を行った結果、2016年3月末の契約期間満了をもって本共同研究開発を終了することの合意に至りました。

⑪ 再生医療等製品の研究開発(テラファーマ株式会社)
(研究パートナー:九州大学)
2013年4月に九州大学と共同で開発した大量増幅培養技術(特許出願中)を用いた樹状細胞ワクチン製造のためのフィージビリティスタディを開始しておりましたが、2016年3月に契約を終了いたしました。

事業等のリスク財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析


このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E22621] S10079ZZ)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。