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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100DDL6

有価証券報告書抜粋 ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 事業の内容 (2018年3月期)


沿革メニュー関係会社の状況

当社グループは、当社、メタボローム解析事業の北米市場における販売子会社であるHuman Metabolome Technologies America, Inc. (以下「HMT-A」といいます。)及びメタボローム解析事業の欧州市場における販売子会社であるHuman Metanolome Technologies Europe B.V. (以下「HMT-E」といいます。)並びにバイオマーカーを用いた診断薬・診断機器等の開発・製造・販売を行うHMTバイオメディカル株式会社(以下「HMT-B」といいます。)の4社で構成され、「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術をコアとした研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する」ことを企業理念として、研究機関や企業のメタボローム解析試験受託及びバイオマーカー開発を主たる事業として展開する慶應義塾大学発のベンチャー企業です。当社グループは、設立母体である慶應義塾大学先端生命科学研究所及び本社所在地である山形県や鶴岡市等地方自治体と産官学連携のもとに事業を展開しております。
なお、文中の事業区分は報告セグメントの区分と同一であります。


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(1) メタボロームとバイオマーカー
人間をはじめとする生物は、筋肉や臓器、骨といった多様な機能を持つ器官から成り立ちますが、これらはアミノ酸や脂質、核酸などの代謝物質(メタボライト)を共通の構成因子としており、代謝物質は全ての生命活動において欠かせない役割を担っています。代謝物質は食事により供給され、運動など日々の活動の中で消費されます。その機能に応じて体内や細胞内を移動し、多くの化学反応によって新しい物質へと作り替えられていきます。このような化学反応のことを代謝(メタボリズム)と呼び、この物質変換は代謝経路という一定の規則により成り立っています。代謝の仕組みを理解することは、私たち自身をより深く知ることに繋がります。
メタボローム解析は幅広い分野で利用されていますが、以下のような分野で代謝を理解する手法として活用されています。
・大学などの研究機関における疾患メカニズムの研究
・製薬企業における探索・薬理研究や毒性研究
・発酵を利用した物質生産を行っている企業における生産性の向上
・食品企業における成分分析や機能性の探索・確認

生命活動を営むためには、様々な機能を精緻に制御して”恒常性”を維持する仕組み(内的/外的な影響を最小限にし、一定に保つ仕組み)が備わっています。体温や心拍数が一時的に変化しても元に戻ることが、恒常性の身近な例と言えます。しかし、疾病に罹患することにより恒常性が破綻した場合、代謝物質などの構成要素にも影響が及び、健康の時とは異なる振る舞いを示すようになります。それがバイオマーカーです。バイオマーカーとして広く知られているものに、膵臓の機能指標となる血糖(糖尿病)や肝機能の指標となるγ-GTP(肝硬変等)、腫瘍マーカーとしてPSA(前立腺がん)やCA19-9(膵臓がん等)があります。バイオマーカーとは、特定の疾患に対して客観的に評価できる生体上の指標をいいます。
バイオマーカーは、疾患をモニターすることを目的に古くから研究されてきましたが、より高感度で一度に多くの物質を分析できる新しい方法の出現により、新たなバイオマーカーの研究成果が相次いで発表されています。メタボローム解析技術により、探索が進んでいるバイオマーカーには、以下のようなものがあります。
・疾患を予測するバイオマーカー
・治療の予後を予測するバイオマーカー
・投薬による副作用を予測するバイオマーカー
・投薬の効果を予測するバイオマーカー

(2) 当社グループ設立の経緯
生物学、医学分野において、オミクス(注1)は生体の網羅的情報を得る手法として重要です。2001年慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授は、生体内の低分子代謝物質(メタボローム)(注2)の測定方法を開発しました。このメタボローム測定法はキャピラリー電気泳動装置(Capillary Electrophoresis)と質量分析計(Mass Spectrometer)を組み合わせて測定するもので、頭文字をとってCE-MS法と呼ばれています。
曽我朋義教授の測定法は、生体内のイオン性代謝物質(注3)を、一斉に、かつ、網羅的に測定できる点で画期的な技術でした。メタボローム解析技術は、生物学基礎研究から医薬開発、疾患バイオマーカー(注4)開発等に用いられるため、本技術の社会的ニーズが見込まれました。
こうした技術の確立を背景に、当社グループは、CE-MS法の開発者である曽我朋義教授、冨田勝教授、慶應義塾大学等が中心となり、2003年7月に設立されました。当社グループは、慶應義塾大学のアントレプレナー資金制度により出資を受けた慶應義塾大学発ベンチャー企業の第1号となりました。

(3) ビジネスモデル
当社グループは、CE-MSを用いたメタボローム解析法をコア技術として、メタボローム解析事業で短中期的な収益を確保しつつ、そこで得られた資金をバイオマーカー事業に投下することで、より大きな収益の獲得を図ることを、中長期的な経営戦略と位置付けております。

(4) 事業内容
① メタボローム解析事業
本事業では、主に製薬や食品等の民間企業、大学や公的研究機関からメタボローム解析試験を受託しております。顧客は試料を当社へ送付し、当社は試料から代謝物質を抽出し、CE-MS等によるメタボローム解析のうえ、試験結果を報告書として納品します。当社グループのメタボローム解析サービスで得られた代謝物質データは、製薬企業や大学、研究所では基礎生物学研究から薬剤効果及び毒性の評価等、食品企業では発酵プロセスの律速段階解析や機能性食品の機能評価等に用いられ、顧客の研究開発進展に貢献しております。
当社は、メタボローム解析受託サービスをアジアにて展開するため、2011年6月に、韓国Young In Frontier Co., Ltd.と、韓国内におけるメタボローム解析サービス及びメタボロミクスキットの独占的販売権供与契約を締結しました。また、北米市場への展開のため、2012年10月に医学研究の集積地ともいえるアメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジ市に、販売子会社HMT-Aを、欧州市場への展開のため2017年5月にオランダ南ホラント州ライデンに販売子会社HMT-Eを設立し、がん研究向け解析サービスC-SCOPEを主力商品として販売活動を展開しております。

② バイオマーカー事業
血液などに含まれる代謝物質バイオマーカーは、疾患の早期診断や治療効果をモニタリングするための診断キット開発のシーズとなります。当社は、バイオマーカー事業を将来の成長事業と位置づけ、大学や診断薬企業との共同研究開発を通じて、メタボローム解析技術を用いたバイオマーカー探索及び診断キットの研究開発を進めております。
当社では、客観的診断が難しい中枢神経系疾患(気分障害や精神障害等)(注5)、メタボリックシンドローム(MetS)(注6)等社会問題化している疾病とその関連疾患に焦点を当てております。現在バイオマーカー及び診断キットの開発を進めている疾患は、大うつ病性障害(注7)、肝疾患、線維筋痛症(注8)、糖尿病性腎症(注9)です。疾患バイオマーカーを探索する対象疾病の選定においては、国内外の診断薬企業や製薬企業の研究者、開発担当者との情報交換を通して、社会が求める疾患診断法や新薬開発に関する情報を得て判断しております。
当社は、自社の研究開発を通じて得られたバイオマーカーや、外部より導入したバイオマーカーを用いて疾患の新たな診断方法を開発するとともに、製品開発・臨床開発等の過程を経て、体外診断用医薬品(注10)や診断機器の製造販売を行います。また開発過程において、共同研究先である製薬企業等から研究開発協力金やマイルストン収入を受領する他、上市後の販売に応じたロイヤリティを獲得することもあります。
なお、バイオマーカー事業は、2016年1月に設立したHMT-Bを中心に展開しております。

(注1)オミクス(omics)とは、生体内に存在する遺伝子及びその発現、タンパク質、代謝物質等を網羅的に解析し、生体内の挙動を理解しようとする研究アプローチです。遺伝子(gene)ではゲノミクス(genomics)、遺伝子発現(transcript)ではトランスクリプトミクス(transcriptomics)、タンパク質(protein)ではプロテオミクス(proteomics)、代謝物質(metabolite)ではメタボロミクス(metabolomics)と表現します。

(注2)ヒトや動植物の生体内には、生命活動の維持に必要なATP(アデノシン三リン酸)等の高エネルギー物質や有機酸、アミノ酸等、数多くの代謝物質が存在し、酵素による代謝物質の変換が活発に行われています。メタボロームとは、これら生体由来の代謝物質の総称です。個々の代謝物質を指す場合には、メタボライトと言うこともあります。

(注3)イオン性代謝物質とは、水溶液中で電荷を帯びる代謝物質を指します。例えば、食塩(NaCl)は水に溶けると、Na+(ナトリウムイオン)とCl-(塩化物イオン)に分かれます。イオン性代謝物質は、このように分子が分かれて電荷的な性質を持ち、CE-MS法は、こうしたイオン性代謝物質が電荷を帯びている性質を利用し、キャピラリー電気泳動装置で測定試料に含まれる代謝物質を分離します。

(注4)血液や尿等に含まれる物質で、疾患等による生体内の変化を定量的に評価するための指標を指します。糖尿病における血糖値、痛風における血液尿酸値等はバイオマーカーの一例です。

(注5)中枢神経系疾患とは、末梢神経系に対して神経細胞が集中している脳と脊髄の機能に関連した症状を持つ疾病を指します。精神疾患や脳症、脳炎のような脳機能障害、疼痛など広い疾病領域を含んでいます。

(注6)メタボリックシンドローム(MetS)は、代謝性症候群とも呼ばれ、代謝機能の異常により生じる内臓脂肪型肥満と高血糖、高血圧、脂質異常のうち2つ以上を合併した場合を指します。動脈硬化性疾患やその他の血管性疾患(腎症など)、臓器障害のリスクが高くなるため、予防が重要とされています。

(注7)大うつ病性障害は、精神障害の一つであり、睡眠障害、焦燥感、不安、食欲低下、抑うつ症状を特徴とします。アメリカ精神医学会や世界保健機関(WHO)から診断基準が示されていますが、基本的に医師の問診により診断されます。

(注8)線維筋痛症は、激しい全身疼痛を主訴とする原因不明の疾病で、疼痛部位における炎症等の病変は見られず、不眠、抑うつ症状等を伴うこともあります。発症の原因やメカニズムは不明ですが、外傷、感染、ストレスが引き金になることが多く、中枢神経系(下行性痛覚抑制経路)の障害によるものと考えられています。

(注9)糖尿病性腎症は、糖尿病を背景疾患とした細小血管障害です。高血糖による糸球体糖化や糸球体高血圧を原因として腎機能が障害を受け、腎症に進行します。糖尿病患者の尿中ミクロアルブミンをモニターし、陽性となった場合はACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬などの降圧剤による治療を行いますが、寛解率は低く、多くの患者がいずれ人工血液透析療法へ導入されます。

(注10)体外診断用医薬品とは、薬機法では「専ら疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品のうち、人又は動物の身体に直接使用されることのないものをいう」とされています。検査結果が医師の診断を補助できる点で、単なる研究用試薬とは区別されます。

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