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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1004ZHP

有価証券報告書抜粋 三井物産株式会社 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2015年3月期)


研究開発活動メニュー株式の総数等

この財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、将来のリスク、不確実性及び仮定を伴う予測情報を含んでいます。4「事業等のリスク」などに記載された事項及びその他の要因により、当社及び連結子会社の実際の業績は、これらの予測情報から予測された内容とは大幅に異なる可能性があります。
(1)経営者の検討における重要な指標について
当社及び連結子会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローは、4「事業等のリスク」に述べる各項目の影響を受けますが、当連結会計年度末において当社の経営者は、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの動向を検討する上で、以下の指標が有用であると考えます。
①売上総利益、持分法による投資利益、EBITDA(*1)及び当期利益(親会社の所有者に帰属)
当社及び連結子会社は様々な商品と地域にわたる幅広い事業活動を展開し、そのリスク・リターンの形態も仲介取引から金属資源・エネルギーの権益事業まで多岐にわたります。当社及び連結子会社の経営成績及び事業の進捗を把握する上で、オペレーティング・セグメント別の売上総利益、持分法による投資利益、EBITDA及び当期利益(親会社の所有者に帰属)の変動要因に係る分析を重視しています。なお、当社及び連結子会社では、業績測定に係る基本指標として当期利益(親会社の所有者に帰属)を用いていることに加え、当連結会計年度より、経常的な収益力を測定する指標としてEBITDAを導入しております。
(*1)EBITDAは、連結損益計算書の売上総利益、販売費及び一般管理費、受取配当金、持分法による投資利益、並びに連結キャッシュ・フロー計算書の減価償却費及び無形資産等償却費の合計として算定しています。
②金属資源・エネルギーの価格及び需給の動向
当社及び連結子会社の経営成績に占める金属資源・エネルギー関連事業の重要性が高いことから、金属資源・エネルギーの市況及び持分生産量は、経営成績の重要な変動要因になります。金属資源・エネルギーの価格及び需給の動向に関する詳細については、「(3)経営成績に係る検討と分析 ③各オペレーティング・セグメントにおける経営成績」内の金属資源セグメント及びエネルギーセグメントの該当箇所を参照願います。
③キャッシュ・フロー水準、資本効率及び財務レバレッジ
当連結会計年度から始まった新中期経営計画(2014年5月公表)においては、創出したキャッシュ・フローを新規事業投資と株主還元にバランス良く配分するほか、資本効率の向上を図る方針です。当連結会計年度より、キャッシュ創出力を測定し資金再配分の原資を示す指標として、基礎営業キャッシュ・フロー(*2)を導入しております。
また、当社は、資本効率と資金調達に係わる安定性の観点から、株主資本(*3)の水準、並びに負債・資本構成の方針を定期的に策定し、その履行状況を検証しています。同時に個々の事業における環境の悪化に起因する想定損失の最大額に対するリスクバッファーの観点から株主資本の規模を検証しているほか、既存の有利子負債の再調達に加え、債務格付けの維持向上と資金調達上の安定性確保の観点から、財務レバレッジに留意しています。当社の資本管理については連結財務諸表注記事項9.「金融商品及び関連する開示 (6)リスク関連」を、財務戦略については「(4)流動性と資金調達の源泉」を参照願います。
(*2)基礎営業キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローから営業活動に係る資産・負債の増減によるキャッシュ・フローを除いた金額として算出されます。
(*3)連結財政状態計算書の親会社の所有者に帰属する持分合計を指します。

(2)経営環境
注:本項目は、2015年5月の決算公表時点の経営環境認識を掲載したものであり、当社の現在の経済環境認識と異なる記載が含まれている場合があります。

当連結会計年度及び今後の経営環境について概観します。
世界経済は、米国の堅調な景気拡大に牽引され、全体として緩やかに回復しました。
米国経済は、雇用の順調な改善、住宅市場の緩やかな回復、株価・地価上昇による資産効果、好調な企業業績を背景に、バランスのとれた成長を見せました。日本経済は、消費増税による影響が長引き2四半期連続のマイナス成長となりましたが、円安等による輸出持ち直しや雇用・所得環境の着実な改善などから緩やかながら持ち直しました。
欧州経済は、厳しい雇用環境などから横ばい圏で推移したものの、欧州中央銀行の量的緩和を契機に、金利低下やユーロ安、株価上昇など先行きの景気を押し上げる動きも現れています。
中国経済は、金融緩和など政策の下支えはあったものの、過剰生産能力の調整や不動産市況の軟化により成長率が鈍化しました。その他の新興国経済は、インドなどの資源輸入国においては、国際商品市況の下落を受けて購買力が増加するとともに、インフレ鎮静化による利下げが景気の好循環を生み出しつつある一方で、経常赤字や財政赤字などファンダメンタルズの改善が遅れた資源輸出国においては、国際商品市況の下落が成長を大きく押し下げました。
鉄鉱石価格のスポット指標であるFe 62% CFR North Chinaは、中国経済の成長率低下を背景に下落基調が続き、50米ドル/トン近辺まで下落しました。世界の石油需要の伸びが鈍化しているにも関わらず、OPECに減産の兆しが見えないことから、ドバイ原油スポット価格も10月以降下落のペースを早め、50米ドル/バレル割れまで急落しました。
今後の世界経済については、リスク要因として、中国経済の想定を超える減速、米国の利上げや資源価格の更なる下落を引き金とした新興国からの資本流出、ギリシャの債務問題の深刻化などが考えられるものの、米国の景気回復の他国経済への波及や、国際商品市況の下落による資源輸入国の購買力の増加、米国の利上げを勘案しても依然緩和的な先進国の金融環境に後押しされ、緩やかな回復を続けると見込まれます。

(3)経営成績に係る検討と分析
①連結損益計算書項目
収益
IFRSにおける収益は、商品販売や役務提供におけるリスクとリターンの帰属度合によって、売先に対する請求金額の総額で表示されるものと、対応する原価と相殺後の純額で表示されるものに区分されます。
・総額で収益表示される取引は、当該取引に関するリスクとリターンが主として契約当事者たる当社及び連結子会社に帰属する取引であり、商品販売または役務提供の主たる履行義務を負担する取引や、在庫リスクを負担する取引などが該当します。
・純額で収益表示される取引は、商品供給者及び役務提供者の実質的な代理人として販売取引を行う場合など、当社及び連結子会社に対するリスクとリターンの帰属度合が低い取引であり、手数料が取引量または取引額に対し定額または定率で定められている取引などが該当します。
当連結会計年度(当期)の収益は5兆4,049億円となり、前連結会計年度(前期)の5兆7,319億円から3,270億円(5.7%)の減少となりました。当社は、収益を商品販売による収益、役務提供による収益、その他の収益に分類し、対応する原価を区分表示しています。オペレーティング・セグメント別の収益を収益の区分に分類すると以下のとおりです。

セグメント
(単位:億円)
当期前期増減
商品販売による
収益
役務提供による
収益
その他の
収益
合計商品販売による
収益
役務提供による
収益
その他の
収益
合計商品販売による
収益
役務提供による
収益
その他の
収益
合計
鉄鋼製品1,26624531,514 1,833 365 3 2,201△567△1200△687
金属資源7,8436907,912 7,851 61 0 7,912△8800
機械・
インフラ
2,2791,3138474,439 2,198 1,189 715 4,10281124132337
化学品8,489374198,882 9,012 403 17 9,432△523△292△550
エネルギ-9,702441669,91214,486 75 △1814,543△4,784△31184△4,631
生活産業8,4311,243869,760 7,685 1,119 102 8,906746124△16854
次世代・
機能推進
3206532291,202 347 623 62 1,032△2730167170
米州7,9561172128,285 6,717 78 201 6,9961,23939111,289
欧州・
中東・
アフリカ
94016201,102 943 144 0 1,087△318015
アジア・
大洋州
9259701,022 994 97 0 1,091△6900△69
合計48,1514,3171,56254,03052,0664,154 1,08257,302△3,915163480△3,272
その他121518 1 2 16 1900△1△1
調整・
消去
02△11 1 △2 △1 △2△1403
連結合計48,1524,3211,57654,04952,068 4,154 1,09757,319△3,916167479△3,270

商品販売による収益
商品販売による収益は、総額で表示される商品販売取引からの収益であり、主に以下の取引により稼得されます。
・契約の当事者として行う多種多様な商品の販売
・金属、化学品、食料、機械などの幅広い製品の製造販売
・鉄鉱石、銅、石炭、石油・ガスなどの資源開発
・不動産の開発・販売
商品販売による収益は4兆8,152億円となり、前期の5兆2,068億円から3,916億円(7.5%)減少しました。
・エネルギーセグメントは4,784億円の減少となりました。石油トレーディング事業が取扱数量の減少により3,051億円減少したほか、三井石油の売却により2,279億円の減少となりました。一方、石油・ガス生産事業が生産数量の増加により418億円の増加となったほか、米国のガス物流事業子会社MMGSが取扱数量の増加により270億円の増加となりました。
・鉄鋼製品セグメントは、前期でLNGプロジェクト向けのラインパイプの出荷が概ね終了したほか、その他の鋼材の取扱数量も減少し、567億円の減少となりました。
・米州セグメントは、大豆の取扱数量が増加し、1,239億円の増加となりました。

役務提供による収益
役務提供による収益には、契約の当事者及び代理人として関わる様々な商品売買取引に関する手数料及び売買差益が含まれています。具体的には、以下の取引があげられます。
・物流ロジスティクスサービス、情報通信サービス、技術支援などの多種多様な役務提供に対する対価として手数料を受け取る取引
・売先と買先が予め特定された取引において契約の当事者として商品の売値と買値の差額を損益として計上する取引、製造家と需要家の契約締結斡旋や商品受渡の支援を行う取引
役務提供による収益は4,321億円となり、前期の4,154億円から167億円(4.0%)の増加となりました。


その他の収益
その他の収益には、主として、トレーディング目的で行われた商品デリバティブ取引と金融デリバティブ取引に係る収益、不動産、鉄道車両、船舶、航空機並びに機械装置などのリース取引に係る収益、並びに一般顧客向け金融に係る収益が含まれています。
その他の収益は1,576億円となり、前期の1,097億円から479億円(43.7%)の増加となりました。エネルギーセグメントの石油トレーディング事業が相場変動に伴うデリバティブ評価により189億円増加したほか、次世代・機能推進セグメントの商品デリバティブ取引に関連し雑損益に計上された為替損益の悪化95億円に対応する収益が増加しました。

売上総利益
売上総利益は8,458億円となり、前期の8,801億円から343億円(3.9%)の減益となりました。
・金属資源セグメントは548億円の減益となりました。豪州の鉄鉱石生産事業は、為替変動による影響、販売数量の増加、受取インフラ使用料の増加及びコスト低下が一部相殺したものの、価格下落により531億円の減益となりました。
・鉄鋼製品セグメントは131億円の減益となりました。前期でLNGプロジェクト向けのラインパイプの出荷が概ね終了したほか、その他の鋼材の取扱数量も減少しました。
・化学品セグメントは104億円の減益となりました。インドネシアのアンモニア製造事業会社Kaltim Pasifik Amoniakは、BOT(建設・運営・譲渡)契約に基づく資産譲渡により前期で事業を終了し、104億円の減益となりました。
・機械・インフラセグメントは154億円の増益となりました。新造船及び中古船の取引隻数が増加したほか、海外のプラントプロジェクトに関する口銭を計上しました。
・次世代・機能推進セグメントは148億円の増益となりました。当社の商品デリバティブ取引に関連し雑損益に計上された為替損益の悪化95億円に対応する売上総利益の増加がありました。また、Mitsui & Co. Commodity Risk Managementが前期のトレーディング不調の反動により61億円の増益となりました。
・米州セグメントは139億円の増益となりました。メチオニンの販売価格の上昇を主因にNovus Internationalが125億円の増益となりました。
詳細に係わる検討と分析は、「③各オペレーティング・セグメントにおける経営成績」を参照願います。

その他の収益・費用
販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は5,846億円の負担となり、前期の5,749億円から97億円(1.7%)の負担増となりました。
変動の内訳を社内管理上の費目別に見ると以下のとおりです。
(単位:億円)
費目別内訳人件費福利費旅費
交通費
交際費
会議費
通信情報費
当期2,95514734584488
前期2,90714333582512
増減額(*)484102△24












費目別内訳借地借家料減価償却費租税公課貸倒引当金
繰入額
諸雑費合計
当期2411501061701,1605,846
前期201145931021,2295,749
増減額(*)4051368△6997
(*)△は負担減

変動の内訳をオペレーティング・セグメント別に見ると以下のとおりです。
(単位:億円)
オペレーティング
・セグメント
鉄鋼製品金属資源機械・
インフラ
化学品エネルギー生活産業次世代・
機能推進
当期3584051,3187165981,392586
前期3764181,2426985791,294597
増減額(*)△18△1376181998△11

オペレーティング
・セグメント
米州欧州・中東・
アフリカ
アジア・
大洋州
合計その他調整・消去合計
当期6782122086,471123△7485,846
前期6492101946,25782△5905,749
増減額(*)2921421441△15897
(*)△は負担減

有価証券損益
有価証券損益は425億円の利益となり、前期の308億円の利益から117億円(38.0%)の増加となりました。
・当期は、航空関連の出資持分の売却益120億円を計上したほか、米国の銅鉱山事業会社Silver Bell Miningの出資持分の売却益91億円、及び上海森茂国際房地産の出資持分の売却益65億円を計上しました。また、TPV Technology株式の一部売却により、売却益及び残存保有持分の評価益を合計で62億円計上したほか、MBK Real Estateがシニアリビング事業に関わる投資持分の売却益49億円を計上しました。
・前期は、三井石油株式の売却益113億円及びMultigrain Tradingが保有するブラジルの港湾会社の株式売却益41億円を計上しました。また、日鐵商事が住金物産との合併により持分法適用外となったことに伴い、保有持分の評価益54億円を計上しました。このほか、株価の回復により、過年度に認識したPenske Automotive Group株式の評価損の戻入益84億円を計上した一方、株価の下落によりTPV Technology株式の評価損44億円を計上しました。また、チリのカセロネス銅鉱山を開発するMinera Lumina Copper Chileに対する投資の評価損26億円を計上しました。

固定資産評価損
固定資産評価損は799億円の損失となり、前期の600億円の損失から199億円(33.2%)の負担増となりました。
・当期は、原油価格の下落を反映し、Mitsui E&P Texasがイーグルフォード・シェールオイル・ガス事業に係る評価損589億円、Mitsui E&P UKが北海油田・ガス田事業に係る評価損138億をそれぞれ計上しました。
・前期は、Mitsui Coal Holdingsにおいて、石炭価格の下落を主因に石炭鉱山に係る評価損393億円を計上したほか、Mitsui E&P Texasが将来の見込生産量の見直しを主因にイーグルフォード・シェールオイル・ガス事業に係る評価損142億円を計上しました。
有形固定資産の減損損失については、連結財務諸表注記事項12.「有形固定資産 (2)減損損失」を参照願います。

固定資産処分損益
固定資産処分損益は14億円の利益となり、前期の164億円の利益から150億円(91.5%)の減少となりました。
・当期の内訳は小口の集積です。
・前期は、Mitsui E&P Middle East及びMitsui E&P Australiaがそれぞれエジプト及びニュージーランドの油田権益を売却し、合計で62億円の固定資産売却益を計上しました。また、物産不動産が国内のオフィスビルの売却益43億円を計上したほか、MBK Real Estateがシニアリビング施設の売却益43億円を計上しました。

雑損益
雑損益は349億円の損失となり、前期の217億円の損失から132億円(60.8%)の負担増となりました。
・当期は、原油・ガス生産事業などで349億円の探鉱費用を計上したほか、当社において、生活産業セグメントのコーヒー取引に係る収益及び売上総利益に対応する為替損失57億円を計上しました。また、Mitsui E&P UKが北海油田・ガス田事業に係る暖簾の減損損失48億を計上したほか、生活産業セグメントで関係会社の再編に係る費用を計上しました。一方、三井石油開発が外貨預金などに係る為替換算益67億円を計上したほか、当社において、次世代・機能推進セグメントの商品デリバティブ取引に係る収益及び売上総利益に対応する為替利益49億円を計上しました。
・前期は、原油・ガス生産事業などで202億円の探鉱費用を計上したほか、Mitsui Raw Materials Developmentが米ドル建て借入金の為替換算損失36億円を計上しました。また、当社において、三井石油株式の売却に関連して雑損失31億円を計上したほか、生活産業セグメントのコーヒー取引に係る収益及び売上総利益に対応する為替損失3億円を計上しました。一方、当社において、次世代・機能推進セグメントの商品デリバティブ取引に係る収益及び売上総利益に対応する為替利益144億円を計上したほか、三井石油開発が外貨預金などに係る為替換算益46億円を計上しました。

金融収益・費用
受取利息
受取利息は331億円となり、前期の336億円から5億円(1.5%)の減少となりました。


受取配当金
受取配当金は1,141億円となり、前期の1,240億円から99億円(8.0%)の減少となりました。
・LNGプロジェクト6案件(サハリンⅡ、カタールガス1、アブダビ、オマーン、カタールガス3及び赤道ギニア)からの受取配当金は合計で871億円となり、前期の962億円から91億円減少しました。アブダビプロジェクトからの受取配当金が増加した一方、サハリンⅡプロジェクトからの受取配当金が減少しました。

支払利息
支払利息は502億円となり、前期の492億円から10億円(2.0%)の負担増となりました。
当期及び前期における円及び米ドルの短期金利の水準は以下のとおりです(円は3ヶ月Tibor、米ドルは3ヶ月Liborの月末レートの単純平均)。

当期前期
0.19%0.22%
米ドル0.24%0.25%

持分法による投資利益
持分法による投資利益は1,446億円となり、前期の1,712億円から266億円(15.5%)の減少となりました。
・チリの銅鉱山事業会社Inversiones Mineras Acruxは、チリの税制改正により繰延税金負債を追加計上したことや銅価格の下落により192億円の減益となりました。
・Valeparは、前期にValeによる海外関係会社の法人税等の支払いに関するREFIS(滞納税回収プログラム)申請に伴う損失を計上した反動があった一方、鉄鉱石価格の下落や外貨建負債の為替評価損を計上した影響で154億円の減益となりました。
・豪州の鉄鉱石生産事業会社Robe River Mining Co.は、為替変動による影響、受取インフラ使用料の増加及びコスト削減が一部相殺したものの、鉄鉱石価格の下落により83億円の減益となりました。
・東洋エンジニアリングの減益を見込んだほか、IPP(独立系発電)事業が75億円の減益となりました。
・LPG(液化石油ガス)輸入・販売会社ENEOSグローブが、LPG価格の下落に伴う在庫評価損により57億円の減益となりました。
・カセロネス銅鉱山を開発するMinera Lumina Copper Chileは、当期に固定資産評価損123億円を計上した一方、前期に固定資産評価損168億円を計上した反動で、54億円の増益となりました。
・前期に、機械・インフラセグメントの欧州再生可能エネルギー事業で48億円の固定資産評価損を計上したほか、IPP以外のインフラ事業において38億円の固定資産評価損を計上しました。また、インドの医薬品製造受託事業会社Arch Pharmalabsが固定資産等の評価損42億円を計上しました。
詳細に係わる検討と分析は、「③各オペレーティング・セグメントにおける経営成績」を参照願います。

法人所得税
法人所得税は1,049億円の負担となり、前期の1,767億円の負担から718億円(40.6%)の負担減となりました。
・法人所得税前利益は4,318億円となり、前期の5,505億円から1,187億円(21.6%)減少したことに伴い、対応する法人所得税が減少しました。
・2015年4月1日以降に開始する事業年度に係る本邦の法人税率の引き下げに伴い、関連会社の未分配利益に係る繰延税金負債の取崩を主因に201億円の一過性の負担減がありました。
・当期において、リクルートホールディングス株式などFVTOCIの金融資産の売却により、その他の包括利益として認識される税金費用に関連して、法人所得税の負担が120億円減少しました。
・前期において、Mitsui E&P Australiaで油田生産設備改修に伴い生産量が減少した反動により、豪州の資源関連税の負担増がありました。
当期の実効税率は24.3%となり、前期の32.1%から、7.8ポイント減少しました。実効税率の上昇要因として、Mitsui E&P Australiaの資源関連税の負担増がありました。一方、低下要因として、本邦税制改正の影響、FVTOCIの売却に関連した法人所得税の負担減がありました。

当期利益
上記の結果、当期利益は3,269億円となり、前期の3,739億円から470億円(12.6%)の減少となりました。

当期利益(親会社の所有者に帰属)
親会社の所有者に帰属する当期利益は3,065億円となり、前期の3,501億円から436億円(12.5%)の減少となりました。

②EBITDA
当社では当期よりEBITDAを用いて経常的な収益力を測定しています。
EBITDAは、連結損益計算書の売上総利益、販売費及び一般管理費、受取配当金、持分法による投資利益、並びに連結キャッシュ・フロー計算書の減価償却費及び無形資産等償却費の合計として算定しています。

(単位:億円)当期前期増減
EBITDA(a+b+c+d+e) (*)7,8838,196△313
売上総利益a8,4588,801△343
販売費及び一般管理費b△5,846△5,749△97
受取配当金c1,1411,240△99
持分法による投資利益d1,4461,712△266
減価償却費及び無形資産等償却費e2,6842,191+493
(*) 四捨五入差異により縦計が合わないことがあります(以下同様)。

③各オペレーティング・セグメントにおける経営成績
当期及び前期におけるにおける各オペレーティング・セグメント別のEBITDA及び前期からの増減は以下のとおりです。

(単位:億円)当期前期増減
鉄鋼製品129218△89
金属資源1,5552,418△863
機械・インフラ550356+194
化学品181285△104
エネルギー4,3984,161+237
生活産業162202△40
次世代・機能推進△50△236+186
米州413263+150
欧州・中東・アフリカ△55△10
アジア・大洋州△25△3△22
合計7,3087,669△361
その他3278△46
調整・消去543449+94
連結合計7,8838,196△313

各オペレーティング・セグメントの経営成績に係る検討と分析は以下のとおりです。


鉄鋼製品

(単位:億円)当期前期増減
EBITDA129218△89
売上総利益380511△131
販売費及び一般管理費△358△376+18
受取配当金1915+4
持分法による投資利益7654+22
減価償却費及び無形資産等償却費1214△2
当期利益(親会社の所有者に帰属)85146△61

EBITDAは89億円の減少となりました。主な要因は以下のとおりです。
売上総利益は131億円の減益となりました。前期でLNGプロジェクト向けのラインパイプの出荷が概ね終了したほか、その他の鋼材の取扱数量も減少しました。
持分法による投資利益は22億円の増益となりました。
当期利益(親会社の所有者に帰属)は61億円の減益となりました。上記のほか、以下の要因がありました。
・前期に、日鐵商事が住金物産との合併により持分法適用外となったことに伴い、保有持分の評価益54億円を計上しました。
・LNGプロジェクト向けのラインパイプの取引に対応する為替損失が21億円改善しました。

金属資源

(単位:億円)当期前期増減
EBITDA1,5552,418△863
売上総利益1,4612,009△548
販売費及び一般管理費△405△418+13
受取配当金1817+1
持分法による投資利益9380△371
減価償却費及び無形資産等償却費472429+43
当期利益(親会社の所有者に帰属)609881△272

EBITDAは863億円の減少となりました。主な要因は以下のとおりです。
売上総利益は、豪州の鉄鉱石生産事業における価格下落の影響を受け、548億円の減益となりました。
なお、当期に適用された販売価格は、前期に続き当該四半期のスポット価格指標の平均や船積み月のスポット価格指標の平均など、より足元のスポット価格指標を反映した販売が主流となっています。
Mitsui Iron Ore Developmentの売上総利益は、為替変動による影響、受取インフラ使用料の増加及びコスト削減が一部相殺したものの、鉄鉱石価格の下落により428億円の減益となりました。また、Mitsui-Itochu Ironは、販売数量の増加、コスト削減及び為替変動による影響が一部相殺したものの、鉄鉱石価格の下落により104億円の減益となりました。
持分法による投資利益は371億円の減益となりました。
・チリの銅鉱山事業会社Inversiones Mineras Acruxは、チリの税制改正により繰延税金負債を追加計上したことや銅価格の下落により150億円の損失となり、前期の42億円の利益から192億円の減益となりました。
・Valeparは、253億円の損失となり、前期の99億円の損失から154億円の減益となりました。前期にValeによる海外関係会社の法人税等に関するREFIS(滞納税回収プログラム)への申請に伴う損失を計上した反動があった一方、鉄鉱石価格の下落や外貨建負債の為替評価損の計上がありました。

・Robe River Mining Co.は346億円となり、前期の429億円から83億円の減益となりました。鉄鉱石価格の下落を為替変動による影響、受取インフラ使用料の増加及びコスト削減が一部相殺しました。
・カセロネス銅鉱山を開発するMinera Lumina Copper Chileは112億円の損失となり、前期の166億円の損失から、54億円の増益となりました。当期に固定資産の評価損123億円を計上した一方、前期に計上した固定資産の評価損168億円の反動がありました。
減価償却費及び無形資産等償却費は43億円の増加となりました。
当期利益(親会社の所有者に帰属)は272億円の減益となりました。上記のほか、以下の要因がありました。
・前期に、Mitsui Coal Holdingsが石炭価格の下落を主因に石炭鉱山に係る評価損を393億円計上しました。
・2015年4月1日以降に開始する事業年度に係る本邦の法人税率の引き下げに伴い、関連会社の未分配利益に係る繰延税金負債の取崩を主因に71億円の一過性の負担減がありました。
・当期に、米国の銅鉱山事業会社Silver Bell Miningの出資持分の売却益45億円を計上しました。
・前期に、Mitsui Raw Materials Developmentが米ドル建て借入金の為替換算損失36億円を計上しました。
・前期に、Minera Lumina Copper Chileに対する投資の評価損26億円を計上しました。

鉄鉱石の短期及び長期の価格・需給、並びに当社持分生産量
- 短期の価格・需給
鉄鉱石のスポット取引の割合が増加したことに伴い取引価格の決定方法は多様化しており、一部に四半期毎に決定される指標価格を用いた販売もありますが、船積み月のスポット指標価格の平均など、より足元のスポット価格を反映した販売が主流となっています。
中国の粗鋼生産量は、2013年の8.15億トンから2014年の8.23億トンの微増にとどまり、今後も伸び率は鈍化することが見込まれております。スポット価格(粉鉱、Fe62% CFR North China)は、2013年初旬に150米ドル/トンまで上昇した後、約1年間もみ合いましたが、2014年初頭から中国経済の成長率低下を背景に下落基調が続き、2015年4月には47.5米ドル/トンまで下落しました。足元では、中国政府の景気支援策に対する期待感等から購買意欲が高まっており、2015年6月15日現在のスポット価格は64米ドル/トンに回復しております。
こうした鉄鉱石の価格変動は、当社の鉄鉱石関連の海外子会社及び持分法適用会社が保有する権益持分相当の生産量からの販売収入に直接的な変動を及ぼします。2016年3月期において、これによる連結損益計算書における当期利益(親会社の所有者に帰属)への影響額は、鉄鉱石US$1/トンあたりの価格変動により約30億円と概算しております。
当連結会計年度の1年間における当社鉄鉱石関連の海外連結子会社及び持分法適用会社の権益見合い生産量は54.9百万トンです。上記の影響額は、当連結会計年度末時点で、この権益見合いに対して2016年3月期の出荷量の増減を織り込み、一定の米ドル及びその他関連通貨の為替相場などを前提条件とした上で算出したものです。なお、一般に豪ドルや伯レアルなどの資源産出国の通貨は、輸出商品の市況に連動する傾向があり、この変動により当社連結子会社及び持分法適用会社の現地通貨建ての売上総利益は影響を受けることがあります。

- 中長期の価格・需給と当社持分生産量の動向
世界最大の粗鋼生産国である中国の伸び率は、2011年末より鈍化しているものの底堅く、中長期的には新興国の鋼材需要の伸びも加わり、鉄鉱石需要も底堅く推移するものと見込まれます。こうした需要に対応するため、当社は鉄鉱石の増産投資及び出荷能力の拡張投資を行っています。概要については、第3「設備の状況」1「設備投資等の概要」を参照願います。
但し、中国及び新興国の需要動向には不確定要素も多く、中長期的な時間軸における価格・需給見通しを明確に述べることは困難です。

石炭の短期及び長期の価格動向・需給、並びに当社持分権益生産量
- 短期の価格・需給
原料炭について、鉄鉱石と同様に、海外の主要金属資源事業会社と当社が推進する豪州における石炭(原料炭)の生産事業は、大口顧客である日本の製鉄メーカー他への長期販売契約を締結しています。取引価格の決定方法は、四半期価格・月次価格での契約締結など多様化が進んでいます。
2013年は石炭供給過剰感が増し、四半期毎の原料炭価格は下落基調が続き、2013年4~6月に適用された同指標価格は一部本邦製鉄会社と約172米ドル/トンで妥結したと報じられています。その後も同指標価格は下落し、2014年4~6月及び2015年4~6月に適用される同指標価格は、一部本邦製鉄会社と約120米ドル/トン及び約110米ドル/トンで妥結したと報じられています。
一般炭についても供給過剰による下落基調が続き、2014年3月期に適用された一般炭年間契約価格は約95米ドル/トンで妥結しました。2015年3月期の一般炭年間契約価格は約82米ドル/トンで妥結し、2016年3月期の年間価格は約68米ドル/トンで妥結しました。

こうした石炭の価格変動は、当社の石炭関連の海外子会社及び持分法適用会社が保有する権益持分相当の生産量からの販売収入に直接的な変動を及ぼします。当連結会計年度の1年間における当社石炭関連の海外連結会社及び持分法適用会社の権益見合い生産量は12.9百万トンです。なお、一般に豪ドルなどの資源産出国通貨は、輸出商品の市況との相関度が高い傾向にあり、この変動により当社連結子会社及び持分法適用会社の現地通貨建ての売上総利益は影響を受けることがあります。

- 中長期の価格・需給と当社持分生産量の動向
足元供給過剰状態となっておりますが、中国、ブラジル、インドを始めとする新興経済諸国の経済発展に伴う原料炭需要や、中国、インドを中心とした石炭火力発電用としての一般炭需要をあわせ需要は堅調に推移する一方で、市況低迷によるプロジェクトの新規開発や拡張計画の後ろ倒しにより供給が追い付かず、中長期的には需給は均衡する見込みです。
なお、中国をはじめとする新興経済諸国の需要動向も不確定要素も多く、中長期的な見通しを明確に述べることは困難です。

機械・インフラ

(単位:億円)当期前期増減
EBITDA550356+194
売上総利益1,3011,147+154
販売費及び一般管理費△1,318△1,242△76
受取配当金4135+6
持分法による投資利益330244+86
減価償却費及び無形資産等償却費196172+24
当期利益(親会社の所有者に帰属)457171+286

EBITDAは194億円の増加となりました。主な要因は以下のとおりです。
売上総利益は154億円の増益となりました。
・プロジェクト本部は、48億円の増益となりました。
・機械・輸送システム本部は、106億円の増益となりました。新造船及び中古船の取引隻数が増加しました。
販売費及び一般管理費は76億円の負担増となりました。
持分法による投資利益は86億円の増益となりました。
・プロジェクト本部は、18億円の増益となりました。
前期に、欧州の再生可能エネルギー事業で48億円の固定資産評価損を計上しました。また、IPP以外のインフラ事業において38億円の固定資産評価損を計上しました。
当期において、ブラジルのガス配給事業やメキシコの水事業が増益となった一方、東洋エンジニアリングで減益を見込んでいます。
また、IPP(独立系発電)事業の本セグメント持分は、全体で124億円となり、前期の195億円から71億円の減益となりました。
- 当期において、英国の老朽火力発電所に係る減損損失等を計上しました。
- 電力デリバティブ契約や燃料購入契約などに係る時価評価損益は5億円の利益となり、前期の19億円から14億円減少しました。
・機械・輸送システム本部は、68億円の増益となりました。北米の自動車関連事業が堅調に推移したほか、当期に持分を取得したブラジルの一般貨物輸送事業会社VLIの新規貢献がありました。
当期利益(親会社の所有者に帰属)は286億円の増益となりました。上記のほか、以下の要因がありました。
・当期において、航空関連の出資持分の売却益120億円を計上しました。
・2015年4月1日以降に開始する事業年度に係る本邦の法人税率の引き下げに伴い、関連会社の未分配利益に係る繰延税金負債の取崩を主因に52億円の一過性の負担減がありました。
・前期において、株価の回復により、過年度に認識したPenske Automotive Group株式の評価損の戻入益67億円を計上した反動がありました。

化学品

(単位:億円)当期前期増減
EBITDA181285△104
売上総利益701805△104
販売費及び一般管理費△716△698△18
受取配当金1218△6
持分法による投資利益7286△14
減価償却費及び無形資産等償却費11174+37
当期利益(親会社の所有者に帰属)3784△47

EBITDAは104億円の減少となりました。主な要因は以下のとおりです。
売上総利益は104億円の減益となりました。
・基礎化学品本部は、35億円の減益となりました。米国の電解事業会社Mitsui & Co. Texas Chlor-Alkaliは、市況悪化により60億円の減益となりました。
・機能化学品本部は、69億円の減益となりました。インドネシアのアンモニア製造事業会社Kaltim Pasifik Amoniakは、BOT(建設・運営・譲渡)契約に基づく資産譲渡により前期で事業を終了し、104億円の減益となりました。一方、農薬の販売は堅調に推移しました。
持分法による投資利益は14億円の減益となりました。
減価償却費及び無形資産等償却費は37億円の増加となりました。Mitsui & Co. Texas Chlor-Alkaliで45億円増加しました。
当期利益(親会社の所有者に帰属)は47億円の減益となりました。上記のほか、前期において、米国でのアルファオレフィン製造・販売事業の検討中止に伴う損失30億円を雑損益に計上しました。

エネルギー

(単位:億円)当期前期増減
EBITDA4,3984,161+237
売上総利益2,0271,998+29
販売費及び一般管理費△598△579△19
受取配当金9281,023△95
持分法による投資利益566601△35
減価償却費及び無形資産等償却費1,4751,118+357
当期利益(親会社の所有者に帰属)1,1971,884△687

EBITDAは237億円の増加となりました。主な要因は以下のとおりです。
当期及び前期の当社及び関係会社の経営成績に反映された原油価格の平均は、それぞれ103米ドル/バレル及び110米ドル/バレルと推計されます。
売上総利益は29億円の増益となりました。主な内訳は、以下のとおりです。
・Mitsui E&P Australiaは、前期に油田生産設備改修に伴い生産量が減少した反動により、244億円の増益となりました。
・Mitsui E&P Texasは生産量の増加により、81億円の増益となりました。
・Mitsui E&P USAは、コスト削減と生産量の増加により、45億円の増益となりました。
・Mitsui E&P Middle Eastは、円安の影響があった一方、生産コストの増加や前期にエジプトの油田権益を売却したことにより124億円の減益となりました。
・前期に三井石油を売却したことにより85億円の減益となりました。
受取配当金は95億円の減少となりました。LNGプロジェクト6案件(サハリンⅡ、カタールガス1、アブダビ、オマーン、カタールガス3及び赤道ギニア)からの受取配当金は合計で871億円となり、前期の962億円から91億円減少しました。アブダビプロジェクトからの受取配当金が増加した一方、サハリンⅡプロジェクトからの受取配当金が減少しました。
持分法による投資利益は35億円の減益となりました。ENEOSグローブがLPG価格の下落に伴う在庫評価損により前期の26億円から57億円の減益となりました。
減価償却費及び無形資産等償却費は357億円の増加となりました。米国のマーセラス及びイーグルフォード・シェールガス・オイル事業での増加42億円を含め、石油・ガス生産事業で378億円増加しました。
当期利益(親会社の所有者に帰属)は687億円の減益となりました。上記のほか、以下の要因がありました。
・当期において、原油価格の下落を反映し、Mitsui E&P Texasがイーグルフォード・シェールオイル・ガス事業に係る評価損589億円、Mitsui E&P UKが北海油田・ガス田事業に係る評価損138億円及び暖簾の減損損失48億円をそれぞれ計上しました。
・当期においてMitsui E&P Mozambique Area 1やMitsui E&P USAなどで333億円の探鉱費用を計上した一方、前期はMitsui E&P AustraliaやMitsui E&P Mozambique Area 1などで186億円の探鉱費用を計上しました。
・当期において、Mitsui E&P UKがイタリアにおける将来の税負担の見込みの変更に伴う繰延税金負債の取崩を47億円計上した一方、原油価格の下落に伴い北海油田・ガス田事業に係る繰延税金資産の取崩を58億円計上しました。
・前期において、Mitsui E&P Texasが将来の見込生産量の見直しを主因にイーグルフォード・シェールオイル・ガス事業に係る評価損142億円を計上しました。
・前期において、Mitsui E&P Middle East及びMitsui E&P Australiaがそれぞれエジプト及びニュージーランドの油田権益を売却し、合計で62億円の固定資産売却益を計上しました。
・2015年4月1日以降に開始する事業年度に係る本邦の法人税率の引き下げに伴い、関連会社の未分配利益に係る繰延税金負債の取崩を含め31億円の一過性の負担減がありました。

原油・ガスの短期及び長期の価格動向・需給、並びに当社持分生産量
- 短期の価格・需給
国際エネルギー機関(International Energy Agency)による報告(2015年5月発行)では、世界の原油需要は、2014年(暦年)が日量92.5百万バレル、2015年(暦年)の推定値が日量93.6百万バレルとされています。上記報告をはじめ、2015年5月現在における短期の原油需給に対する関係諸機関や企業の見解は以下のように集約されると考えられます。
・世界の石油需要は2009年4-6月期を底に緩やかな上昇が続いておりますが、2014年には欧州や中国を中心とした成長の鈍化から需要の伸びも弱まりました。一方、世界の石油供給量は米国のシェール・オイルやOPECを中心に増加のペースが強まり、2015年に入り需要の伸びが若干上昇する見込みの中でも、供給の成長ペースが需要の伸びを上回る傾向が短期的には続くと予想されています。
・原油価格(Brent)は、地政学リスクへの懸念から2012年2月に約126米ドル/バレルまで上昇した後、欧州の財政問題や中国等新興国の成長鈍化懸念により下落に転じ、2012年6月には一時90米ドル/バレルを割り込みました。地政学リスクの高まりや欧州経済復調への期待感、米国の追加量的緩和への期待感などを背景に原油価格は再度上昇に転じ、2014年9月までは100-120米ドル/バレルのレンジで推移しましたが、その後は弱まった需要の伸びに対して米国やOPECを中心に強い供給が維持され、2015年1月には46米ドル/バレル台まで下落しました。2015年6月15日現在約63米ドル/バレルで取引されています。
・原油価格(WTI)は、上記変動要因に加え米国内の需給バランスや、オクラホマ州クッシングにある集油所の在庫状況や輸送設備にも影響されます。2013年初頭はBrent原油に対して20米ドル/バレル以上低かったものの、現在では価格差は約3米ドル/バレル程度に縮小しており、2015年6月15日現在約60米ドル/バレルで取引されています。
・LNGの動向に関しては、新興国を中心としたLNG需要の増加傾向が続く中、2011年3月の東日本大震災による原子力発電所稼動停止以来LNG需要は高水準を維持しているものの、原油価格下落の影響を受けてアジア向けのLNGスポット価格は、2015年6月中旬においては7米ドル/百万BTU前半で推移しています。

米国SEC基準による当社の石油・ガスの持分生産量は、2014年3月期において年間75百万バレル(ガスをバレル換算、換算係数は原油1バレル=天然ガス5,800立方フィート、三井石油開発の非支配持分10百万バレルを含む)、2015年3月期において年間76百万バレル(三井石油開発の非支配持分11百万バレルを含む、本報告書提出日における暫定値)となりました。
なお、当社は、2016年3月期において、原油価格の変動が当社石油・ガス関連子会社及び関連会社の販売収入の変化を経由して連結損益計算書における当期利益(親会社の所有者に帰属)に及ぼす影響度はUS$1/バレルあたり27億円と推定しています。

金属資源と同様に、実際の経営成績は、各連結子会社及び持分法適用会社における実際の生産量及び生産費用、為替相場の変動などにより影響を受けます。

- 中長期の価格・需給と当社持分生産量の動向
中長期における原油の需給及び価格の動向は、短期的動向以上に不確定要素が大きく経営者として明確な見通しを検討することはできません。一方、LNG及び北米シェールガスについては、現在進行しつつある市場構造の変化を注視して当社は以下のとおり事業に取り組んでいます。
・従来、日本を含む極東の電力・ガス会社向け長期販売契約を中核に発展してきたLNG市場は、既存プロジェクトの拡張及び新規プロジェクト立ち上がりによる供給増加の一方、従来の極東中心から、欧州や南米、特に巨大市場としての中国及びインドに加え東南アジア諸国の需要が伸長しつつあり、需給両面からグローバル化が進むことが予想されます。更に市場間の需給調整が頻繁に行われ、LNGは従来に比べてより市場流動性の高い商品となっていくことが予想されます。
・当社は、LNG生産に係る権益について、供給安定性確保とソースの多様化を念頭に既存案件の増産や新規開発案件の追求にあたっています。
・米国において開発が活発化している非在来型ガスの一つであるシェールガスは、世界的に莫大な埋蔵量が確認されているものの、開発には大量の水が必要なほか、ガス井の近くにガス輸送のためのパイプライン敷設が必要などの制約により米国以外では短期間で急速に開発が進む可能性は低い見通しです。シェールガスを含む非在来型ガスの開発は米国の天然ガス需給に多大な影響を与え、その豊富な供給力から一部はLNGに加工され輸出されることが見込まれます。世界的にクリーンエネルギーとしての天然ガス需要が高まる中、中長期的には天然ガスとともにLNGの需要は伸張すると予想しています。
・米国天然ガス価格の指標となるHenry Hub価格は非在来型ガスの開発進展により低迷が続いており、今後も原油と比較し熱量換算ベースでは安価にて推移すると想定されますが、長期的には主に石炭等からの発電燃料置換えや、LNGや化学品原料としての需要が発生し、価格は緩やかに上昇することが見込まれます。

生活産業

(単位:億円)当期前期増減
EBITDA162202△40
売上総利益1,1621,140+22
販売費及び一般管理費△1,392△1,294△98
受取配当金4854△6
持分法による投資利益216193+23
減価償却費及び無形資産等償却費126109+17
当期利益(親会社の所有者に帰属)△27121△148

EBITDAは40億円の減少となりました。主な要因は以下のとおりです。
売上総利益は22億円の増益となりました。
・食糧本部は、18億円の減益となりました。Multigrain Tradingは集荷・販売の不調により81億円の減益となりました。
・食品事業本部は、71億円の増益となりました。当社のコーヒー取引に関連し当期及び前期において雑損益に計上された為替損益の悪化54億円に対応する売上総利益が増加したほか、国内の食品関連子会社が取扱数量の増加により増益となりました。
・コンシューマーサービス事業本部は、30億円の減益となりました。当期に台湾の通信販売事業会社ShopNetを売却した影響がありました
販売費及び一般管理費は98億円の負担増となりました。貸倒引当金を積み増したMultigrain Tradingで31億円増加したほか、国内の食品関連子会社で増加しました。
持分法による投資利益は23億円の増益となりました。
・食糧本部は、8億円の減益となりました。
・食品事業本部は、2億円の減益となりました。

・コンシューマーサービス事業本部は、34億円の増益となりました。前期において、インドの医薬品製造受託事業会社Arch Pharmalabsが固定資産等の評価損42億円を計上しました。
当期利益(親会社の所有者に帰属)は148億円の減益となりました。上記のほか、以下の要因がありました。
・当期において、上海森茂国際房地産の出資持分の売却益65億円を計上しました。
・当期及び前期において、当社のコーヒー取引に係る売上総利益に対応する為替損失57億円及び3億円を雑損益に計上しました。
・前期において、物産不動産が国内のオフィスビルの売却益43億円を計上したほか、Multigrain Tradingが保有するブラジルの港湾会社の株式売却益41億円を計上ました。
・当期において、関係会社の再編に伴う一過性の費用を雑損失に計上しました。

次世代・機能推進

(単位:億円)当期前期増減
EBITDA△50△236+186
売上総利益374226+148
販売費及び一般管理費△586△597+11
受取配当金5134+17
持分法による投資利益5749+8
減価償却費及び無形資産等償却費5352+1
当期利益(親会社の所有者に帰属)60△123+183

EBITDAは186億円の増加となりました。主な要因は以下のとおりです。
売上総利益は148億円の増益となりました。
・当社の商品デリバティブ取引に関連し当期及び前期において雑損益に計上された為替損益の悪化95億円に対応する売上総利益が増加しました。
・Mitsui & Co. Commodity Risk Managementは、前期のトレーディング不調の反動により61億円の増益となりました。
持分法による投資利益は8億円の増益となりました。
当期利益(親会社の所有者に帰属)は183億円の改善となりました。上記のほか、以下の要因がありました。
・当期及び前期において、当社の商品デリバティブ取引に係る売上総利益に対応する為替利益49億円及び144億円を雑損益に計上しました。
・当期において、TPV Technology 株式の一部売却により、売却益及び残存保有持分の評価益を合計で62億円計上しました。前期は、株価下落によりTPV Technology株式の評価損44億円を計上しました。
・当期において、過年度に認識したTPV Technology株式の評価損の無税化に伴い、59億円の税金負担の減少がありました。

米州

(単位:億円)当期前期増減
EBITDA413263+150
売上総利益926787+139
販売費及び一般管理費△678△649△29
受取配当金14△3
持分法による投資利益7540+35
減価償却費及び無形資産等償却費9081+9
当期利益(親会社の所有者に帰属)258137+121

EBITDAは150億円の増加となりました。主な要因は以下のとおりです。
売上総利益は139億円の増益となりました。メチオニンの販売価格の上昇により、Novus Internationalが125億円の増益となりました。
持分法による投資利益は35億円の増益となりました。
当期利益(親会社の所有者に帰属)は121億円の増益となりました。上記のほか、以下の要因がありました。
・当期において、MBK Real Estateがシニアリビング事業に関わる投資持分の売却益49億円を計上したほか、Silver Bell Miningの出資持分の売却益45億円を計上しました。
・前期において、MBK Real Estateがシニアリビング施設の売却益43億円を計上しました。

欧州・中東・アフリカ

(単位:億円)当期前期増減
EBITDA△55△10
売上総利益193188+5
販売費及び一般管理費△212△210△2
受取配当金37△4
持分法による投資利益614△8
減価償却費及び無形資産等償却費57△2
当期利益(親会社の所有者に帰属)344+30

EBITDAは10億円の減少となりました。主な要因は以下のとおりです。
売上総利益は5億円の増益となりました。
持分法による投資利益は8億円の減益となりました。
当期利益(親会社の所有者に帰属)は30億円の増益となりました。

アジア・大洋州

(単位:億円)当期前期増減
EBITDA△25△3△22
売上総利益122125△3
販売費及び一般管理費△208△194△14
受取配当金915△6
持分法による投資利益45450
減価償却費及び無形資産等償却費75+2
当期利益(親会社の所有者に帰属)305307△2

EBITDAは22億円の減少となりました。主な要因は以下のとおりです。
売上総利益は3億円の減益となりました。
持分法による投資利益は前期と同額の45億円となりました。
当期利益(親会社の所有者に帰属)は2億円の減益となりました。上記のほか、豪州の鉄鉱石生産事業及び石炭生産事業の本セグメント出資持分相当の利益寄与がありましたが、鉄鉱石及び石炭価格の下落に伴い減少しました。


(4)流動性と資金調達の源泉
会計基準に基づかない財務指標について
現預金差引後の有利子負債比率(ネットDER)
この流動性と資金調達の源泉の項目を含めて、本報告書ではネット有利子負債比率(ネットDER)に言及しています。当社は「ネット有利子負債」を株主資本(親会社の所有者に帰属する持分合計)で除した比率を「ネットDER」と呼んでいます。当社は「ネット有利子負債」を以下のとおり定義して、下表のとおり算出しています。
• 短期債務及び長期債務の合計により有利子負債を算出。
• 有利子負債から現金及び現金同等物、定期預金(3ヵ月超1年以内)を控除した金額を「ネット有利子負債」とする。
当社の経営者は、債務返済能力と株主資本利益率 (ROE)向上のために有利子負債と株主資本の関係を検討する目的から、ネットDERを投資家にとって有益な指標と考えており、下表のとおり「ネット有利子負債」及び「ネットDER」を算出しています。
当期末前期末
(億円)(億円)
短期債務2,9064,369
長期債務45,03339,742
有利子負債合計47,93944,111
(控除)現金及び現金同等物、定期預金(3ヵ月超1年以内)△14,117△12,323
ネット有利子負債33,82231,788
株主資本(親会社の所有者に帰属する持分合計)40,99838,158
ネットDER(倍)0.820.83

フリーキャッシュ・フロー
当社は、フリーキャッシュ・フローを営業活動により獲得されたキャッシュ・フローと投資活動に支出されたキャッシュ・フローの合計として定義しています。当社の経営者は、この指標を戦略的投資または負債返済に充当可能な資金の純額、或いは、資金調達にあたって外部借入への依存度合いを測る目的から、投資家に有用な指標と考えており、以下の表のとおりフリーキャッシュ・フローを算出しています。

(単位:億円)当期前期増減
営業活動によるキャッシュ・フロー6,4004,492+1,908
投資活動によるキャッシュ・フロー△3,864△6,598+2,734
フリーキャッシュ・フロー2,536△2,106+4,642

①資金調達の基本方針
当社の経営者は、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金調達の基本方針としており、主として本邦生保、銀行等からの長期借入金や社債の発行等により10年程度の長期資金を中心とした資金調達を行っています。同時に、長期資金の年度別償還額の集中を避けることで借り換えリスクの低減を図っています。さらに、プロジェクト案件等では政府系金融機関からの借入やプロジェクトファイナンスも活用しています。また事業展開に伴う資金需要に対する機動的な対応と、当社の有利子負債返済における金融情勢悪化の影響を最小限に抑えるためにも、十分な現金及び現金同等物を保有しています。現金及び現金同等物の保有額については厳密な目標水準を定めていませんが、金融情勢などを勘案しつつ、安全性並びに流動性の高い短期金融商品で運用しています。
国内100%子会社については原則国内資金調達拠点によるキャッシュマネージメントサービスを導入しており、資金調達一元化、余剰資金の有効活用、流動性の確保を図っています。また、海外100%子会社についても資金調達と運用は原則として当社資金調達拠点へ集約しており、結果として当連結会計年度末において連結有利子負債の4分の3程度が当社並びに資金調達拠点による調達となっています。

②資金調達手段
上記の当社資金調達の基本方針に則り、資金調達においては長期かつ安定的な資金確保という目的に合致する直接金融または間接金融の多様な手段の中から機動的に選択し、その時々の市場環境も考慮したうえで当社にとって有利な手段での資金調達を行っています。
当社は、内外金融機関との間で長期間に亘って築き上げてきた幅広く良好な関係に基づき、長期借入を中心に必要資金を調達しています。また、国際協力銀行などの政府系金融機関からも資金調達を行っており、プロジェクト案件ではプロジェクトファイナンス等も活用して必要資金を調達しています。
これに加えて、当社では3,000億円の社債発行登録枠並びに2兆4,000億円のコマーシャルペーパー発行枠という直接金融の調達手段も保有しており、良好な市場環境のもと有利な条件での資金調達を行っています。さらに、当社、Mitsui & Co. Financial Services (Asia)を発行体とする総額50億米ドルのユーロ・ミディアム・ターム・ノート発行プログラムを設定しており、Mitsui & Co. Financial Services (Asia)によるノートの発行には当社の支払保証を付しています。当連結会計年度末における国内社債及びユーロ・ミディアム・ターム・ノートの発行残高は、それぞれ3,250億円及び277億円となっています。また海外での短期の資金調達手段として、米国三井物産による15億米ドルの米国コマーシャルペーパープログラムをはじめ、その他の海外地域の一部でも同様のプログラムを保有しており、それぞれ時機をみて活用しています。なお、当社は長期かつ安定的な資金調達を一義としており、コマーシャルペーパーや短期借入金等に資金調達を依存していません。その結果として、当連結会計年度末における連結有利子負債に占める短期債務の比率は、6.1%となりました。
一部の連結子会社は金融機関に対してコミットメント・フィーを支払い、信用枠を設定していますが、前連結会計年度及び当連結会計年度において支払ったコミットメント・フィーの金額に重要性はありません。これらの信用枠を含めた短期銀行借入に係る未使用の信用枠につきましては、連結財務諸表注記事項16.「金融債務及び営業債務等に関する開示」を参照願います。
有利子負債の大半は円建て並びに米ドル建てでの調達によるものです。また、資産側の金利・通貨属性を考慮した上で、負債の金利条件や通貨を変換するために適宜、金利スワップや通貨スワップ、為替予約を締結しています。金利スワップ考慮後の有利子負債における固定金利比率は、現在の当社の資産と負債の状況に見合った水準と認識しています。
これらのデリバティブ取引に関しては、連結財務諸表注記事項9.「金融商品及び関連する開示」を参照願います。また、デリバティブ関連の流動性分析については、連結財務諸表注記事項16.「金融債務及び営業債務等に関する開示」を参照願います。
格付け
当社は、円滑な資金調達を行うため株式会社格付投資情報センター(R&I)、ムーディーズ・ジャパン株式会社(Moody's)、スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社(S&P)の3社から格付けを取得しています。当連結会計年度末現在の格付けは下記のとおりです。
R&IMoody'sS&P
短期格付けa-1+P-1A-1(**)
(長期)発行体格付けAA--A+
長期個別債務格付けAA-A2(*)-
プログラム格付け
(ミディアム・ターム・ノート格付け)
AA-A2A+
見通し安定的安定的安定的
(*)Moody’sにおける呼称は「長期債務格付け(シニア無担保)」です。
(**)S&Pにおける呼称は「短期発行体格付け」です。

当社としては引き続き健全な財務基盤を維持し、格付けの維持・向上に尽力していく方針です。
なお、格付けは当社からの情報あるいは格付機関が信頼できるとする情報に基づく各格付機関自身の判断による信用リスクの分析です。格付けは売買・保有の推奨ではなく、また格付機関によりいつでも変更・取り消しされる可能性があります。また格付け基準も格付機関毎に異なります。

③流動性の状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、1兆4,008億円となりました。この現金及び現金同等物の大半は円建てであり、当連結会計年度末の短期債務(2,906億円)と1年以内に返済予定の長期債務(4,727億円)の返済に必要な流動性を十分に満たしていると認識しています。
当連結会計年度の世界経済は、全体として、堅調な景気拡大を続ける米国に牽引され緩やかな回復となりました。米国連邦準備制度理事会による量的金融緩和は終了したものの、日欧をはじめとする先進各国の中央銀行による金融緩和政策が継続するなか、当社は資金調達の基本方針に則り金融機関との長期に亘る良好な関係や公的金融機関による各種施策を活用して必要資金の調達を着実に実行しました。しかしながら、米国の利上げのタイミングやその影響、中国をはじめとした新興国経済成長の鈍化、及び、商品市況の下落など、金融情勢の先行きに不透明感が残ることから、流動性については引続き注視していく必要があると認識しています。
上述資金調達の実行の結果、当連結会計年度末における有利子負債は4兆7,939億円(前連結会計年度末比3,828億円増)、連結有利子負債に占める長期債務の比率は、93.9%となりました。また、当連結会計年度末の長期債務の返済年限別内訳は次のとおりです。当連結会計年度末の長期債務の内訳と債務残高の利率については、連結財務諸表注記事項16.「金融債務及び営業債務等に関する開示」を参照願います。

返済年限1年以内1年超
2年以内
2年超
3年以内
3年超
4年以内
4年超
5年以内
5年超合計
金額(億円)4,7275,0574,7684,9444,74820,78945,033

当連結会計年度末の株主資本(親会社の所有者に帰属する持分合計)は4兆998億円となり前連結会計年度末比で2,840億円増加しました。ネット有利子負債は3兆3,822億円となり同2,034億円増加し、ネットDERは前連結会計年度末の0.83倍から0.82倍へ0.01ポイント低下しました。
また流動比率は、前連結会計年度末の149.6%に対し当連結会計年度末は166.5%となっています。
以上のような数値、及び資金調達環境から判断すると、当社の財務の健全性は引き続き確保されており、新中期経営計画に沿った投融資を含む当社の円滑な事業活動を行う上で、現時点で大きな支障はないと認識しています。
当社及び連結子会社は、主として第三者及び関連当事者のために、各種の支払保証を行っていますが、これらの保証において当社及び連結子会社の流動性に実質的な影響を及ぼすものはありません。将来の契約履行義務並びに保証等については連結財務諸表注記事項28.「偶発債務」を参照願います。
当社及び連結子会社は、個別プロジェクト案件等に対するノンリコースファイナンスなどを除き、金融機関との重要な金融取引において、期限の利益喪失となり得る財務比率制限、担保提供制限、追加債務負担制限、利益処分の制限等の財務制限条項を含む契約を締結しないことを基本方針としていることもあり、これらの財務制限条項において重要なものはありません。
連結子会社や持分法適用会社からの配当受取に関しては、その配当の有無が当社の流動性に大きな影響を与えるという状況にはないと認識しております。また、当該連結子会社及び持分法適用会社に適用される現地法制に照らして適切な純資産や配当可能利益がある限り、配当等による資金の受領を制限する契約または法制上の制限として重要なものはありません(一般的な源泉課税並びに現地税法に基づくその他の税金を除く)。
なお、当社及び連結子会社は、翌連結会計年度において、確定給付型年金制度に113億円を拠出する見込みです。

④投融資と財務政策
当連結会計年度の基礎営業キャッシュ・フローは、約6,600億円の資金獲得となりました。資産リサイクルは、約3,400億円の資金獲得となり、基礎営業キャッシュ・フローと合わせ、合計約1兆円の資金を獲得しました。一方で、約7,150億円の投融資(*)を実行しました。この内、既存事業とパイプライン案件への投融資額は約5,250億円となり、新規事業への投融資額は約1,900億円となりました。更なる成長のための新規事業への投資需要は引き続き旺盛ですが、優良な案件を厳選の上、最終判断に繋げています。当連結会計年度のキャッシュ・フロー詳細については、後述の⑥ キャッシュ・フローの状況を参照願います。

(*)当社は全社の投融資を「その他」及び「調整・消去」を除外したオペレーティング・セグメントの投資キャッシ
ュ・フローにより把握することとしています。前述の① 資金調達の基本方針及び③ 流動性の状況に述べた連結
グループ内における金融サービスは、「その他」セグメントにより行われており、投資活動によるキャッシュ・
フローにおける定期預金の増減やその他の投資の取得及び売却・償還には、「その他」セグメントの財務活動の
中での資金運用目的により行われるものが含まれます。オペレーティング・セグメント別の内訳は、後述の⑥キ
ャッシュ・フローの状況を参照願います。

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新中期経営計画初年度のキャッシュ・フロー実績や、最新の基礎営業キャッシュ・フローや資産リサイクルの見通しなどを元に、3年間累計のキャッシュ・フローの見通しを見直しました。
その結果、以下の図のとおり、基礎営業キャッシュ・フローは、3年間の累計で1兆7,000億円の水準を見込みます。資産リサイクルは新中期経営計画で想定するレンジの上方の目標値である9,000億円を見込み、これに基礎営業キャッシュ・フローを足し合わせた3年間のキャッシュ・インの総額は、新中期経営計画のレンジ内である2兆6,000億円を見込みます。
既存及びパイプライン案件は、既に推進方針が決定されているものが主体であるため、その投融資額は、新中期経営計画で示した1兆5,000億円から大きな変わりはありません。
足元の資源価格の下落は、当社の営業キャッシュ・フローに一定の影響を及ぼしますが、既存事業からの資金獲得の強化と戦略的資産リサイクルの促進によって、新中期経営計画に示したレベルのRecurring Free Cash Flow(経常的なフリーキャッシュ・フロー)を創出させる計画に変わりはありません。そして、投資規律の徹底によってフリーキャッシュ・フローの黒字化を実現し、「成長投資」と「株主還元」の両立を目指します。
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新中期経営計画については、3「対処すべき課題 (1)新中期経営計画(「Challenge & Innovation for 2020 ~三井物産プレミアムの実現~」)」を参照願います。既存の債務からの再調達については、前述の①資金調達の基本方針、及び② 資金調達手段を参照願います。
なお、最新のキャッシュ・フロー配分見通し(新中期経営計画3年間累計)には投融資の実行を決定していない案件が多く含まれており、これらの進捗は実際のキャッシュ・フローの状況及び財政状態に影響を与えます。

⑤資産及び負債並びに資本
2015年3月末の総資産は12兆2,029億円となり、2014年3月末の11兆4,913億円から7,116億円増加しました。
流動資産合計は4兆7,305億円となり、2014年3月末の4兆4,654億円から2,651億円増加しました。次世代・機能推進セグメントの商品デリバティブ取引及びエネルギーセグメントの原油トレーディング事業における相場変動の影響により、その他の金融資産が1,129億円増加しました。
流動負債は2兆8,411億円となり、2014年3月末の2兆9,847億円から1,436億円減少しました。前述の、その他の金融資産の増加に対応し、その他の金融負債が1,130億円増加しましたが、借入金の返済により、短期債務が1,463億円、一年以内に返済予定の長期債務が332億円それぞれ減少しました。
これらにより流動資産と流動負債の差額である運転資本(Working Capital)は1兆8,894億円となり、2014年3月末の1兆4,807億円から4,087億円増加しました。

非流動資産合計は7兆4,724億円となり、2014年3月末の7兆259億円から4,465億円増加しました。主な要因は以下のとおりです。(括弧内はオペレーティング・セグメント)
・持分法適用会社に対する投資は2兆7,913億円となり、2014年3月末の2兆4,488億円から3,425億円増加しました。主な要因は、以下のとおりです。
- 為替変動の影響により1,014億円増加
- 北米トラックリース・レンタル事業会社Penske Truck Leasingの20%持分取得により914億円増加(機械・インフラ)
- ブラジルの一般貨物輸送事業会社VLI の20%持分取得により701億円増加(機械・インフラ)
- 米国で天然ガス液化設備を建設・運営するCameron LNG Holdingsへの出資により136億円増加(エネルギー)
- ブラジルにおけるジラウ水力発電所を開発・運営するESBR Participaçõesへの追加支出により増加(機械・インフラ)
- ブラジルのOdebrecht TransPortと共同で行う旅客鉄道事業会社15%持分取得により100億円増加(機械・インフラ)
- 当期における持分法による投資利益の見合いで1,446億円増加した一方、持分法適用会社からの受取配当金受領により1,840億円減少

なお、2015年3月末及び2014年3月末における持分法適用会社に対する投資をオペレーティング・セグメント別に見ると以下のとおりです。
オペレーティング・セグメント2015年3月末2014年3月末増減
(億円)(億円)(億円)
鉄鋼製品916714+202
金属資源8,1628,696△534
機械・インフラ7,8125,649+2,163
化学品926773+153
エネルギー3,3822,866+516
生活産業2,9612,627+334
次世代・機能推進886715+171
米州785578+207
欧州・中東・アフリカ115140△25
アジア・大洋州2,1101,925+185
合計28,05524,683+3,372
その他△76△13
調整・消去△135△201+66
連結合計27,91324,488+3,425

・その他の投資は1兆5,298億円となり、2014年3月末の1兆5,547億円から249億円減少しました。主な要因は、以下のとおりです。
- 株価上昇により上場株式の公正価値が増加したものの、原油価格の下落によりLNGプロジェクトに対する投資の公正価値が減少し、FVTOCIの金融資産の公正価値評価で1,026億円減少
- 為替変動の影響により1,095億円増加
・営業債権及びその他の債権は4,251億円となり、2014年3月末の4,709億円から458億円の減少となりました。主な要因は、以下のとおりです。
- 米国三井物産における航空機及び機関車に係るファイナンスリース債権の売却により217億円減少(米州)
- GE Capitalとの米国の買収ファイナンス事業における長期貸付金の回収により117億円減少(次世代・機能推進)
・有形固定資産は2兆1,481億円となり、2014年3月末の2兆75億円から1,406億円の増加となりました。主な要因は、以下のとおりです。
- 米国のマーセラス及びイーグルフォード・シェールガス・オイル事業以外の石油・ガス生産事業で577億円増加(為替変動の影響による477億円の増加、及び北海油田・ガス田事業に係る減損認識による138億円の減少を含む)(エネルギー)
- 米国のメタノール製造事業で280億円増加(為替変動の影響による35億円の増加を含む)(化学品)
- 米国のタンクターミナル事業で214億円増加(為替変動の影響による95億円の増加を含む)(米州)
- 豪州の風力発電事業で141億円増加(為替変動の影響による8億円の減少を含む)(アジア・大洋州)
- 豪州の鉄鉱石生産事業で106億円増加(為替変動の影響による140億円の減少を含む)(金属資源)
- 米国のマーセラス及びイーグルフォード・シェールガス・オイル事業で68億円増加(為替変動の影響による444億円の増加、及び減損認識による589億円の減少を含む)(エネルギー)
- 米国の鉄道関連事業会社の持分法適用会社への異動に伴い223億円減少(機械・インフラ)
・無形資産は1,630億円となり、2014年3月末の1,442億円から188億円の増加となりました。農薬用殺菌剤事業買収により132億円増加(化学品)しました。

なお、有形固定資産の2015年3月末及び2014年3月末の残高をオペレーティング・セグメント別に見ると以下のとおりです。

オペレーティング・セグメント2015年3月末2014年3月末増減
(億円)(億円)(億円)
鉄鋼製品98137△39
金属資源5,1425,109+33
機械・インフラ2,1392,315△176
化学品1,4071,099+308
エネルギー8,1527,527+625
生活産業1,435896+539
次世代・機能推進398468△70
米州1,3661,116+250
欧州・中東・アフリカ3242△10
アジア・大洋州252110+142
合計20,42118,819+1,602
その他558535+23
調整・消去502721△219
連結合計21,48120,075+1,406

また、2015年3月末及び2014年3月末においてオペレーティング・リースに供されている有形固定資産の内訳は次のとおりです。


内訳2015年3月末2014年3月末
(億円)(億円)
不動産824699
船舶及び航空機861685
鉄道車輛及び機械装置6821,051
連結合計2,3672,435

非流動負債合計は4兆9,644億円となり、2014年3月末の4兆4,064億円から5,580億円の増加となりました。長期債務(1年以内返済予定分を除く)は4兆306億円となり、2014年3月末の3兆4,683億円から5,623億円の増加となりました。円安の影響のほか、米国のマーセラス及びイーグルフォード・シェールガス・オイル事業で長期借入金が増加しました。
親会社の所有者に帰属する持分合計は4兆998億円となり、2014年3月末の3兆8,158億円から2,840億円増加しました。
・利益剰余金は1,920億円の増加となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益により3,065億円増加したほか、以下の要因がありました。
- その他の資本の構成要素からの組替により540億円増加しました。このうち、FVTOCIの金融資産の組替により、リクルートホールディングス株式の売却による237億円を含め、388億円増加しました。
- 一方、配当金の支払いにより1,183億円減少したほか、自己株式の消却により502億円減少しました。
・その他の資本の構成要素は8,146億円となり、2014年3月末の7,666億円から480億円増加しました。
- ブラジルレアル安の一方、円に対する米ドル高に伴い、外貨換算調整勘定が1,248億円増加しました。
- FVTOCIの金融資産が505億円減少しました。株価上昇により上場株式の公正価値が増加したものの、原油価格の下落を反映しLNGプロジェクトに対する投資の公正価値が減少しました。また、利益剰余金への組替により388億円減少しました。
・消却により、親会社の所有者に帰属する持分の減算項目である自己株式が502億円減少しました。

⑥キャッシュ・フローの状況

(単位:億円)当期前期増減
営業活動によるキャッシュ・フロー6,4004,492+1,908
投資活動によるキャッシュ・フロー△3,864△6,598+2,734
財務活動によるキャッシュ・フロー△1,262△132△1,130
現金及び現金同等物の為替相場変動の影響額471176+295
現金及び現金同等物の増減1,745△2,062+3,807

営業活動によるキャッシュ・フロー

(単位:億円)当期前期増減
営業活動によるキャッシュ・フローa6,4004,492+1,908
営業活動に係る資産・負債の増減b△216△1,597+1,381
基礎営業キャッシュ・フローa-b6,6166,089+527

営業活動によるキャッシュ・フローは6,400億円の資金獲得となり、前期の4,492億円の資金獲得から1,908億円の増加となりました。
営業活動に係る資産・負債(Working Capital)の増減によるキャッシュ・フローは216億円の資金支出となり、前期の1,597億円の資金支出との比較では、1,381億円の資金収支の改善となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローから営業活動に係る資産・負債の増減によるキャッシュ・フローを除いた基礎営業キャッシュ・フローは6,616億円となり、前期の6,089億円から527億円の増加となりました。
・減価償却費及び無形資産等償却費は2,684億円となり、前期の2,191億円から493億円増加しました。
・関連会社からの配当金を含む配当金の受取額は2,916億円となり、前年同期の2,773億円から143億円増加しました。

基礎営業キャッシュ・フローのオペレーティング・セグメント別の内訳は以下のとおりです。

(単位:億円)当期前期増減
鉄鋼製品71113△42
金属資源1,5991,822△223
機械・インフラ696393+303
化学品135202△67
エネルギー3,4803,183+297
生活産業40155△115
次世代・機能推進61△23+84
米州252157+95
欧州・中東・アフリカ2519+6
アジア・大洋州6651+15
合計6,4256,072+353
その他/調整・消去19117+174
連結合計6,6166,089+527

投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動によるキャッシュ・フローは3,864億円の資金支出となり、前期の6,598億円の資金支出から2,734億円の資金支出の減少となりました。当期の内訳は以下のとおりです。(括弧内はオペレーティング・セグメント)
・持分法適用会社に対する投資等の取得・貸付及び売却・回収の純額は、1,554億円の資金支出となりました。主な支出はPenske Truck Leasingの20%持分取得による731億円(機械・インフラ)、VLIの20%持分取得による701億円(機械・インフラ)、ガーナ及びブラジル向けFPSOリース事業への融資306億円(機械・インフラ)、Cameron LNG Holdingsへの出資136億円(エネルギー)、ESBR Participaçõesへの出資(機械・インフラ)、及びブラジル旅客鉄道事業会社の15%持分取得による100億円(機械・インフラ)です。主な回収はガーナ及びブラジル向けFPSOリース事業への融資256億円(機械・インフラ)、Valeparの優先株の償還による201億円(金属資源)、Silver Bell Miningの出資持分の売却(金属資源及び米州)、及び航空関連の出資持分売却120億円(機械・インフラ)です。
・その他の投資の取得及び売却・償還の純額は、601億円の資金獲得となりました。主な回収は、リクルートホールディングス株式の売却による533億円(生活産業)、Burberry Group 株式の売却による118億円(生活産業)、及びGE Capitalとの米国の買収ファイナンス事業からの114億円(次世代・機能推進)の資金回収です。主な支出は、農薬用殺菌剤事業の買収による132億円(化学品)の資金支出です。
・長期貸付金の増加及び回収の純額は、600億円の資金獲得となりました。主な回収は、米国三井物産における航空機及び機関車に係るファイナンスリース債権の売却による209億円(米州)の資金回収です。
・有形固定資産等及び投資不動産の取得及び売却の純額は3,464億円の資金支出となりました。主な支出は以下の通りです。
- 米国のマーセラス及びイーグルフォード・シェールガス・オイル事業以外の石油・ガス生産事業合計で1,277億円(エネルギー)
- 豪州の鉄鉱石生産事業で563億円(金属資源)
- 米国のマーセラス及びイーグルフォード・シェールガス・オイル事業で507億円(エネルギー)
- 米国のメタノール製造事業で241億円(化学品)
- 米国のタンクターミナル事業で145億円(米州)
- 豪州の風力発電事業で143億円(アジア・大洋州)
- 豪州の石炭事業で126億円(金属資源)
主な回収は、Kaltim Pasifik Amoniakのアンモニア製造設備の売却による99億円(化学品)です。
これらの結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計であるフリーキャッシュ・フローは2,536億円の資金獲得となりました。

当期及び前期における上述の投資活動によるキャッシュ・フローをオペレーティング・セグメント別に見ると以下のとおりです。

投資活動によるキャッシュ・フロー(オペレーティング・セグメント別)

オペレーティング・セグメント当期
(億円)
前期
(億円)
鉄鋼製品△61△335
金属資源△317△1,877
機械・インフラ△1,738△1,289
化学品△370△183
エネルギー△1,847△3,000
生活産業457△193
次世代・機能推進127281
米州135△63
欧州・中東・アフリカ△13172
アジア・大洋州△167△110
合計△3,794△6,597
その他/調整・消去△70△1
連結合計△3,864△6,598

財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動によるキャッシュ・フローは1,262億円の資金支出となり、前期の132億円の資金支出から1,130億円の資金支出の増加となりました。当期は、配当金支払による1,183億円の資金支出があったほか、短期債務の調達減少による1,818億円の資金支出がありました。一方、長期債務の調達増加による1,972億円の資金獲得がありました。

当期の資金調達状況については、前述の②資金調達手段の頁を参照願います。

(5)重要な判断を要する会計方針及び見積り
重要な判断を要する会計方針及び見積りとは、会社の財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす会計方針及び会計上の見積りであり、かつ本質的に不確実な事柄に関する経営者の重要な、或いは主観的な判断を反映させることを要するものです。
IFRSに基づく連結財務諸表の作成にあたっては、経営者の判断の下、一定の前提条件に基づく見積りが必要となる場合がありますが、この前提条件の置き方などにより、連結財政状態計算書上の資産及び負債、連結損益計算書上の収益及び費用、または開示対象となる偶発債務などに重要な影響を及ぼすことがあります。
以下の各項目は、その認識及び測定にあたり、経営者の重要な判断及び会計上の見積りを必要とするものです。

非金融資産及び持分法適用会社に対する投資の減損
前連結会計年度及び当連結会計年度における、有形固定資産、暖簾及び耐用年数を確定できない無形資産を除く無形資産の減損損失計上額は600億円及び799億円であり、前連結会計年度末及び当連結会計年度末における減価償却累計額及び減損損失累計額控除後の帳簿価額は2兆2,122億円及び2兆3,809億円です。
前連結会計年度及び当連結会計年度における、持分法適用会社に対する投資の減損損失計上額は88億円及び41億円であり、対応する前連結会計年度末及び当連結会計年度末における帳簿価額は480億円及び70億円です。
非金融資産の減損(持分法適用会社に対する投資を含む)は、当社の連結損益計算書上の当期利益に対し重要な影響を及ぼすことがあります。
これらの減損は主に連結子会社における事業環境の悪化に伴う収益性の低下、事業内容見直し、及び持分法適用会社に対する投資の市場価格の下落などによるものです。

非金融資産の減損の兆候の有無の判定を行い、減損の兆候があると判断された場合には、資産または資金生成単位の回収可能価額を算定し、回収可能価額が帳簿価額を下回っている場合に、差額を減損損失として認識しています。
回収可能価額は処分費用控除後の公正価値と使用価値のうち、いずれか高い金額としています。
公正価値は市場性のある持分法適用会社に対する投資の場合は市場価格を、それ以外の場合は独立の第三者による評価結果を使用するなど、市場参加者間の秩序ある取引において成立し得る価格を合理的に見積り算定しております。
使用価値の算定に使用される将来キャッシュ・フローは、経営者により承認された経営計画や、それが入手できない場合は直近の非金融資産の状況を反映した操業計画に基づいて見積っています。この将来キャッシュ・フローの見積り方法として、以下の例があげられます。
・不動産について、直近の近隣不動産売却価額や賃料が合理的な期間継続するという前提を置く。
・工場設備にて製造している製品の将来にわたる一定期間の販売価格を、過去に於ける同期間の平均値やアナリストの分析資料等を勘案して見積る。
・石炭・原油等の資源事業に関わる開発設備及び鉱業権について、直近の確認埋蔵量等に基づく生産計画に沿って当該資産を使用して生産され、減損判定時点における先物価格を基にした価格、第三者による予想価格、もしくは長期販売契約上の販売価格で売却される前提を置く。
・顧客関係について、将来の一定期間の収益につき、過去に於ける収益への貢献度、解約率、及びアナリストの市況予想等を勘案して見積る。
使用価値の計算においては、割引率は、資金生成単位の固有のリスクを反映した市場平均と考えられる収益率を合理的に反映する率を使用しています。
非金融資産は、その性質や、所在地、所有者、操業者、収益性等の操業環境が異なるため、将来キャッシュ・フローの想定や、割引率の算定において考慮すべき各種の要因は、個別の非金融資産ごとに異なります。
過年度に認識した減損損失が、もはや存在しない又は減少している可能性を示す兆候の有無に関して、期末日に判定を行っております。こうした兆候が存在する場合、当社及び連結子会社は資産または資金生成単位の回収可能価額の見積りを行い、最後に減損損失が認識されて以降、資産の回収可能価額の決定に用いた仮定に変更がある場合にのみ、過去に認識した減損損失を連結損益計算書上の利益として戻入れております。

暖簾の減損
前連結会計年度及び当連結会計年度における、暖簾減損損失計上額は43億円及び58億円であり、対応する前連結会計年度末及び当連結会計年度末における帳簿価額は716億円及び735億円です。
暖簾は、企業結合のシナジーから便益を享受できると期待される資金生成単位または資金生成単位グループに配分し、年一回及び減損の兆候を示す事象が発生した時点で、減損テストを実施しています。
減損テストでは、暖簾及び暖簾を配分した資金生成単位または資金生成単位グループの帳簿価額合計を回収可能価額と比較し、帳簿価額合計が回収可能価額を上回る場合に、その差額を減損損失として認識します。回収可能価額の見積りは、非金融資産の減損と同様の見積り方法を用いております。

公正価値で測定する市場性ない資本性金融資産
公正価値で測定する市場性ない資本性金融資産については、主に評価差額をその他の包括利益に認識することを選択しています。前連結会計年度末及び当連結会計年度末における、市場性ないFVTOCIの金融資産の公正価値はそれぞれ9,906億円及び8,509億円です。
公正価値で測定する市場性ないFVTOCIの金融資産については、主に割引キャッシュ・フロー法、類似企業比較法またはその他の適切な評価方法を用いて評価しており、経営者が金額的重要性が高いと判断する場合には、外部の評価専門家の評価を利用しています。
また、割引キャッシュ・フロー法に使用される将来キャッシュ・フローは、非金融資産及び持分法に対する投資の減損と同様に、経営者により承認された経営計画などに基づいて見積っています。これらの見積りや仮定は、当社の連結包括利益計算書上のその他の包括利益に重要な影響を及ぼすことがあります。

繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性の判断の変更に伴う繰延税金資産の減額は、当社の連結損益計算書上の当期利益に重要な影響を及ぼすことがあります。前連結会計年度末及び当連結会計年度末における繰延税金資産残高は、それぞれ2,145億円及び2,500億円です。

当社は、繰延税金資産の回収可能性の評価を、有税償却に関する無税化の実現可能性や当社及び子会社の課税所得の予想など、現状入手可能な全ての将来情報を用いて判断しています。経営者は、回収可能と見込めないと判断した部分を除いて繰延税金資産を計上していますが、将来における課税所得の見積りの変更や、法定税率の変更などにより、回収可能額が変動する可能性があります。繰延税金資産の回収可能性の評価にあたり考慮している要因は次のとおりです。
・将来減算一時差異については繰延税金資産の計上とともに回収可能時期の見積りを行います。有価証券及び税務上償却されない固定資産の減損に係る繰延税金資産について、売却など処分の見込みのない場合、繰延税金資産の回収可能性が見込めないものとして繰延税金資産を計上しておりません。
・関係会社の将来減算一時差異や税務上の繰越欠損金等に係る繰延税金資産について回収可能性の評価を行います。このうち、近年に重要な税務上の欠損金を計上しており、かつ、当期も重要な税務上の欠損金が見込まれる関係会社については、納税主体の事業の特性に基づく将来課税所得発生の確実性及び所在地国における税務上の欠損金の失効期限等を勘案し、将来減算一時差異や税務上の繰越欠損金等に係る繰延税金資産の回収可能性の有無を判断しています。
・2010年3月期より、国税である法人税の申告において当社及び国内の100%出資子会社からなる企業グループを一つの課税単位とする連結納税制度を適用しており、国税については、当該連結納税グループの課税所得と実行可能なタックス・プランニングを考慮し、個別に繰延税金資産の回収可能性の見積りを行っています。その結果、回収が見込まれないと判断した部分に対しては繰延税金資産を計上しておりません。なお、地方税については、連結納税制度の対象となっていないため、個社の課税所得に基づき、回収可能性の判断を行っており、その結果、回収が見込まれないと判断した部分に対しては繰延税金資産を計上しておりません。
・2012年3月に豪州において拡大石油資源利用税が導入されました。同税制は2010年5月1日現在で保有する対象事業資産の税務上の簿価を同時点の時価まで引き上げ、将来的にその償却額を税務上損金算入する市場価値法を認めています。連結子会社及び持分法適用会社は、この市場価値法を適用し、対象事業資産の会計上の簿価と時価に引き上げられた税務上の簿価との差異について繰延税金資産を計上するとともに、資源価格等の前提や同税制上の繰越欠損金に対し法定利率を乗じることにより発生が見込まれる増加額等を考慮した上で、回収が見込めないと判断した部分については繰延税金資産を計上しておりません。

石油・ガス産出活動及び鉱物採掘活動における埋蔵量の見積り
埋蔵量は、当社及び連結子会社が保有している権益に対応した経済的かつ法的に採掘可能な生産物として見積られた量です。埋蔵量を算出するための見積り及び前提は以下の地質学的、技術的、経済的要因によって左右されます。
・地質学的要因:鉱物の分量、品位等
・技術的要因:生産技術、回収率、生産費用、輸送費用等
・経済的要因:生産物の需要、価格、為替レート等
埋蔵量の見積りに使用される経済的な前提は毎期変動し、かつ一連の生産活動の中で地質データの更新が行われることにより埋蔵量の見積り額は毎期変動することになります。報告された埋蔵量の変動は、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に対して各種の影響を及ぼします。具体的には、
・埋蔵量の変更に伴う将来キャッシュ・フローの見積りの変動により保有資産が減損する可能性があります。
・生産高比例法の分母の変動または経済的耐用年数の変動に伴い、連結損益計算書上の当該事業に係る減価償却費が変動する可能性があります。
・埋蔵量の見積りの変更が生産設備の廃棄や、原状回復義務、環境関係の資産除去債務の発生時期及び債務金額の増減に影響を与える可能性があります。

確定給付費用及び確定給付制度債務
従業員の確定給付費用及び確定給付制度債務は、割引率、退職率及び死亡率など年金数理計算上の基礎率に基づき見積られています。IFRSでは、実績と見積りとの差はその他の包括利益として認識後、即時に利益剰余金に振替えられるため、包括利益及び利益剰余金に影響を及ぼします。経営者は、この数理計算上の仮定を適切であると考えていますが、実績との差異や仮定の変動は将来の確定給付費用及び確定給付制度債務に影響します。
当社及び連結子会社の割引率は、各年度の測定日における高格付けの固定利付社債もしくは日本の長期国債の利回りに基づき決定しています。各測定日に決定した割引率は、測定日現在の確定給付制度債務及び翌年度の純期間費用を計算するために使用されます。
確定給付費用及び確定給付制度債務に関する見積りや前提条件については連結財務諸表注記事項19.「従業員給付」を参照願います。

研究開発活動株式の総数等


このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E02513] S1004ZHP)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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