有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100UG53 (EDINETへの外部リンク)
株式会社キャンバス 事業の内容 (2024年6月期)
当社は、抗がん剤の基礎研究(創薬コンセプトの検討、当該コンセプトに基づき構築した手法による医薬品候補化合物の選別、簡易動物実験、既に開発段階に進んだ抗がん剤候補化合物に関する基礎データの収集・解析等。)、早期臨床開発(臨床試験開始申請直前に実施する「前臨床試験」ならびに臨床試験の前半部分。)および後期臨床開発(新薬承認申請を目指す臨床試験の後半部分。)に取り組んでいる創薬企業です。なお、当社は、医薬品事業の単一セグメントです。
(1) 基本戦略
当社は、自社独特の創薬アプローチを活かした抗がん剤の基礎研究および臨床開発に取り組む、創薬ベンチャー企業です。
特定領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬基盤技術(「創薬エンジン」とも呼ばれます。)を基に実施することで技術とプロダクトの両方を自社で創出するのが「創薬企業」であり、創薬プラットフォームを持たず開発途上の化合物を外部から導入して一定の開発ののち製薬企業へ導出する企業とは大きく異なるビジネスモデルを志向しています。
この付加価値の高いビジネスモデルを完成させ、企業価値の最大化を図るための、当社の基本戦略は次のとおりです。
・当社独自の創薬アプローチを活かした研究開発に特化集中する。
・当社の有する薬剤スクリーニング法により創出・獲得した複数の医薬品候補化合物によって、開発パイプラインを構築する。
・抗がん剤の開発経験が豊富で当社の開発戦略に合致するCRO等の外部専門機関、科学顧問団を活用する。
・当社の権利を最大限確保するため、開発パイプラインの特性や開発段階、当社の財務体力等に応じ、自社で後期開発段階まで進めるほか、適切な戦略提携を製薬企業等との間で行うことによって、価値連鎖を補完・完結する。
当社は、上記の戦略を適切に実行することにより、医薬品候補化合物の開発を速やかに進め、いち早く上市して当社の企業価値を高めるとともに、当社の開発リスクを分散低減していきたいと考えています。
(2) 創薬事業
一般に創薬(新薬の創出)は、
(ア) 創薬コンセプト(科学的根拠に立脚し、ある方法によって疾患を治療し得ると考え、その作用を有する化合物等が新しい医薬品になり得るとする仮説。)に基づいて候補化合物を探索・選別する「探索」段階
(イ) (ア)で獲得された候補化合物について試験管内や動物での実験を実施し候補化合物の分子構造等を調整する「最適化」段階
(ウ) 臨床試験開始申請に必要なデータを揃える前臨床試験を実施する「前臨床試験」段階
(エ) 規制当局の許可を得て臨床試験(医薬品としての承認を得るために行うヒト試験。)を実施する「臨床試験」段階
の順に進行します。
臨床試験段階はさらに、主に候補化合物の安全性を確認する第1相試験、比較的少数の患者様で候補化合物の有効性・安全性および用法用量を探索的に検討する第2相試験、医薬品として薬効を証明する第3相試験に大別されます。
通常の医薬品において臨床第1相試験は健康なボランティアを被験者としますが、当社が開発を目指す抗がん剤の領域では、抗がん剤に多い重篤な副作用への懸念から、末期がん患者ボランティアの方を被験者として臨床第1相試験を実施します。このため、第1相試験の前半では主に安全性を確認しつつ薬効の手応えのあるがん腫を選定し、当該がん腫に絞り込んで薬効を探る「拡大相試験」を第1相試験の後半に実施する手法が多く採られます。この手法によるCBP501臨床第1b相試験の結果から、膵臓がんをCBP501臨床第2相試験の対象に選定し、現在はCBP501の有効性・安全性および用法用量を検討する臨床第2相試験を成功裏に終え、次相臨床試験の準備を進めています。
(3) 当社の開発パイプライン
「開発パイプライン」とは、創薬製薬領域において、開発中の医薬品候補化合物群を指す語です。
一般に医薬品開発は成功確率が低く、リスク分散の意味でいかに豊富で有望なパイプラインを継続的に有するかが製薬企業や創薬企業の中長期的な企業価値の基本となります。
新たなパイプラインを確保する方法は、当社のような創薬企業にとっては専ら自らの創薬コンセプトに基づいた新規候補化合物の「探索」「最適化」となります。製薬企業等においては、自社による創出のほか、創薬企業等との提携に基づくライセンスによるパイプライン獲得が図られます。
創薬企業の長期的な目的は新薬の承認獲得とその売上による収益獲得です。
しかし、それに至るために必要な長期間かつ莫大な資金(一般にひとつの医薬品を開発するために必要な期間は約15年・必要な資金は数百億円といわれます。)を独力で確保することは難しく、多くの場合、短期中期的な目標として、自社で開発中の候補化合物について製薬企業等との提携を成立させ当該候補化合物を相手方開発パイプラインのひとつとすることによるライセンス収益の獲得と財務基盤の安定・強化を目指すこととなります。
しかしながら、その状況は変わりつつあり、創薬企業が製薬企業等と提携するのでなく投資家や市場から資金を調達して独力で新薬承認獲得まで進む開発戦略が採用されるケースが増加しています。
この変化の要因としては、
① 製薬企業の多くが「承認された又は承認が確実となった超後期開発品」や「新しい作用機序やモダリティ(治療手段)の早期開発品」に集中した提携方針を採用するようになり、最もリスクとリターンの大きな開発途上の候補化合物に関する提携意欲が薄れていること
② 臨床試験の平均的な規模が比較的小さくなったことと、投資家や市場からの資金調達環境が大幅に改善されたこととが相まって、必ずしも製薬企業の資金に頼らずとも新薬承認獲得までの開発が可能になったこと
③ 製薬企業との提携は必ずしも最速かつ成功確率最大の開発進行に寄与せず、むしろ阻害要因にもなりかねないと知られてきたこと
などが挙げられます。
したがって現在、創薬企業はこれらの選択肢の中から、各パイプラインに最適な開発戦略を立案することが求められています。
当社の開発パイプラインは次のとおりです。
《CBP501》
CBP501は、当社独自のスクリーニング(薬剤探索)から獲得された、蛋白質カルモジュリンの制御機能を調整し複数の作用により免疫コールド(がんを攻撃するT細胞の乏しい状態。)ながんを免疫ホット(T細胞が存在しがんを攻撃できる状態。)ながんにすることで抗がん活性を示す、独特の抗がん剤(免疫着火剤)です。
過去の試験で得られたデータから、免疫系抗がん剤との併用により薬効を高める効果が期待できることがわかりました。現在は免疫チェックポイント阻害抗体との併用による臨床第2相試験(対象:膵臓がん)を終え、次相臨床試験の準備を進めています。
《CBS9106》
当社が創出した可逆的CRM1(XPO1)阻害剤であるCBS9106は、前臨床試験を終了した段階で、同化合物の開発・製造・商業化にかかる全世界(当初は日本および中国・台湾・韓国を除いていましたが、2018年8月にこれら除外地域をなくす修正を実施しました。)における独占的権利を米国Stemline Therapeutics, Inc.に供与するライセンス契約を締結しました。
現在Stemline社は、CBS9106(felezonexor)の臨床第1相試験を完了し、次相臨床試験の計画が進められています。
《後続パイプライン》
上記2つの臨床開発段階のパイプラインのほか、がんの治癒を目指す新しいコンセプトから創出し前臨床試験のための準備を開始したCBT005、CBP501の研究開発過程で新たに得られた知見を踏まえて創出したCBP-A08、静岡県立大学との共同研究により最適化を進めているIDO/TDO阻害剤など、新規候補化合物の創出・開発パイプラインの拡充に向けて、探索研究を実施しています。
※表中の■は自社による進捗、□は他社による進捗を示す。
(4) 当社事業の当面の課題と施策
当社事業における当面の課題と施策は、概ね優先順位順に次のとおりです。
① CBP501について開発を加速し、成功確率を最大化する。
当社は現在、最先行の抗がん剤候補化合物CBP501に関して、製薬企業等との提携関係に依存しない「創薬パイプライン型」の開発を志向しています。
② 基礎研究を継続し、既存パイプラインに関する知見を深め、次世代パイプラインの創出を図る。
当社は、臨床開発段階のプロジェクトのほか、前述のとおり、基礎研究活動を絶えず実施しています。
また、研究開発にかかる知的財産権の管理等の費用も継続的に発生しています。
これらの取組みは、当社の中長期的な収益獲得と企業価値向上に欠かせないものですが、それらの成果による現実の収益を獲得するまでには一定の期間を要することから、間接金融による資金調達は極めて困難です。したがって、これらの課題と施策を可能とするための直接金融による継続的な資金調達も併せて当面の優先的な課題と施策のひとつと位置づけています。
(5) 製薬企業との戦略提携を含む開発体制の選択
医薬品の開発プロセスは、通常、長い期間と莫大な費用を必要とします。
このことから、当社のような創薬企業が、基礎研究・臨床開発・製造・上市・販売および上市後のフォローアップなどを単独で行うことは困難であることから、製薬企業等との間で適切な提携関係を構築し、固定費の増加を回避しつつ将来の継続的な開発・承認・上市に至る体制の確保を図るのが一般的な戦略であるとこれまで一般に言われ、早期臨床開発と後期臨床開発の役割分担の形が世界的な標準となっていると言われてきました。
しかしながら前述のとおり、①製薬企業等の提携方針の変化に伴う開発途上化合物に対する提携意欲の低下、②臨床試験の規模が比較的小さくなったことと創薬企業の資金調達環境が大幅に改善されたことから製薬企業の資金に頼らずとも新薬承認獲得までの開発が可能になったこと、③製薬企業との提携は最速かつ成功確率最大の開発進行に寄与せず、むしろ阻害要因にもなりかねないと知られてきたこと、などの理由から、この状況は大きく変化し、創薬企業は製薬企業等との提携に依存しない各パイプラインに最適な開発戦略を立案・選択することが求められています。
一方で、創薬企業と製薬企業等との戦略提携は、両者のリスク分担や利益配分などの考え方を反映し、特許等の排他的な実施権を供与する対価としてロイヤルティを得る形態(いわゆるライセンスアウト)のみならず、さまざまなバリエーションが存在しており、化合物の特性や開発の状況等に応じてこれらを活用することももちろん考えられます。
現在当社は、CBP501に関しては、2010年6月に武田薬品工業株式会社との共同事業化契約を解消した後、臨床試験を当社単独で進めてきました。現在は、承認申請までの臨床試験完遂を目指す資金調達を実施するとともに、すべての臨床試験を当社のリスク負担で実施し中長期的な企業価値の最大化を図る「創薬パイプライン型」開発を志向しています。これと並行して、地域等を区切った部分的な新規提携パートナーの獲得を目指す活動も進めています。
一方、CBS9106については、2014年12月、Stemline社と全世界(当初は日本および中国・台湾・韓国を除いていましたが、2018年8月にこれら除外地域をなくす修正を実施しました。)における独占的権利を供与するライセンス契約を締結し、戦略提携に基づき当社にとって比較的リスクの小さな開発体制を選択しました。現在同社は、CBS9106(felezonexor)の臨床第1相試験を完了し、次相臨床試験の計画が進められています。
(6) 研究開発における外部機関との連携
当社は、がん領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬エンジンを基に実施する創薬企業として、基礎研究から臨床開発・上市に至る各ステップにおいて、外部との提携関係(委受託関係を含みます。)を活用しています。
基礎研究および最適化の段階においては、最適化の過程で必要となる新規候補化合物の合成業務を、この領域において経験豊富な企業に委託しています。また前述の次世代化合物の創出に向けて、東京大学医学部附属病院およびファルマバレープロジェクト(一般財団法人ふじのくに医療城下町推進機構、静岡県立大学)との共同研究を進めています。
臨床開発においては、抗がん剤の臨床開発に専門性を持つ大手CROとの緊密な提携関係を構築しています。
また、当社は、抗がん剤の臨床開発にかかる経験を豊富に持つなど当社の研究開発への貢献が期待できる科学者による科学顧問会議(SAB)を組成しています。SABのチェアマンであるダニエル・D・ヴァンホフ教授は、全米がん学会会長・米国がん治療学会会長を歴任した著名ながん臨床研究者で、これまで20年以上にわたり多数の抗がん剤の臨床試験に携わっています。同氏を議長とするSABミーティングは、2002年3月の発足以来、概ね年2回定期的に開催され、当社の研究開発全般に関する情報交換や議論を行っています。
(1) 基本戦略
当社は、自社独特の創薬アプローチを活かした抗がん剤の基礎研究および臨床開発に取り組む、創薬ベンチャー企業です。
特定領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬基盤技術(「創薬エンジン」とも呼ばれます。)を基に実施することで技術とプロダクトの両方を自社で創出するのが「創薬企業」であり、創薬プラットフォームを持たず開発途上の化合物を外部から導入して一定の開発ののち製薬企業へ導出する企業とは大きく異なるビジネスモデルを志向しています。
この付加価値の高いビジネスモデルを完成させ、企業価値の最大化を図るための、当社の基本戦略は次のとおりです。
・当社独自の創薬アプローチを活かした研究開発に特化集中する。
・当社の有する薬剤スクリーニング法により創出・獲得した複数の医薬品候補化合物によって、開発パイプラインを構築する。
・抗がん剤の開発経験が豊富で当社の開発戦略に合致するCRO等の外部専門機関、科学顧問団を活用する。
・当社の権利を最大限確保するため、開発パイプラインの特性や開発段階、当社の財務体力等に応じ、自社で後期開発段階まで進めるほか、適切な戦略提携を製薬企業等との間で行うことによって、価値連鎖を補完・完結する。
当社は、上記の戦略を適切に実行することにより、医薬品候補化合物の開発を速やかに進め、いち早く上市して当社の企業価値を高めるとともに、当社の開発リスクを分散低減していきたいと考えています。
(2) 創薬事業
一般に創薬(新薬の創出)は、
(ア) 創薬コンセプト(科学的根拠に立脚し、ある方法によって疾患を治療し得ると考え、その作用を有する化合物等が新しい医薬品になり得るとする仮説。)に基づいて候補化合物を探索・選別する「探索」段階
(イ) (ア)で獲得された候補化合物について試験管内や動物での実験を実施し候補化合物の分子構造等を調整する「最適化」段階
(ウ) 臨床試験開始申請に必要なデータを揃える前臨床試験を実施する「前臨床試験」段階
(エ) 規制当局の許可を得て臨床試験(医薬品としての承認を得るために行うヒト試験。)を実施する「臨床試験」段階
の順に進行します。
臨床試験段階はさらに、主に候補化合物の安全性を確認する第1相試験、比較的少数の患者様で候補化合物の有効性・安全性および用法用量を探索的に検討する第2相試験、医薬品として薬効を証明する第3相試験に大別されます。
通常の医薬品において臨床第1相試験は健康なボランティアを被験者としますが、当社が開発を目指す抗がん剤の領域では、抗がん剤に多い重篤な副作用への懸念から、末期がん患者ボランティアの方を被験者として臨床第1相試験を実施します。このため、第1相試験の前半では主に安全性を確認しつつ薬効の手応えのあるがん腫を選定し、当該がん腫に絞り込んで薬効を探る「拡大相試験」を第1相試験の後半に実施する手法が多く採られます。この手法によるCBP501臨床第1b相試験の結果から、膵臓がんをCBP501臨床第2相試験の対象に選定し、現在はCBP501の有効性・安全性および用法用量を検討する臨床第2相試験を成功裏に終え、次相臨床試験の準備を進めています。
(3) 当社の開発パイプライン
「開発パイプライン」とは、創薬製薬領域において、開発中の医薬品候補化合物群を指す語です。
一般に医薬品開発は成功確率が低く、リスク分散の意味でいかに豊富で有望なパイプラインを継続的に有するかが製薬企業や創薬企業の中長期的な企業価値の基本となります。
新たなパイプラインを確保する方法は、当社のような創薬企業にとっては専ら自らの創薬コンセプトに基づいた新規候補化合物の「探索」「最適化」となります。製薬企業等においては、自社による創出のほか、創薬企業等との提携に基づくライセンスによるパイプライン獲得が図られます。
創薬企業の長期的な目的は新薬の承認獲得とその売上による収益獲得です。
しかし、それに至るために必要な長期間かつ莫大な資金(一般にひとつの医薬品を開発するために必要な期間は約15年・必要な資金は数百億円といわれます。)を独力で確保することは難しく、多くの場合、短期中期的な目標として、自社で開発中の候補化合物について製薬企業等との提携を成立させ当該候補化合物を相手方開発パイプラインのひとつとすることによるライセンス収益の獲得と財務基盤の安定・強化を目指すこととなります。
しかしながら、その状況は変わりつつあり、創薬企業が製薬企業等と提携するのでなく投資家や市場から資金を調達して独力で新薬承認獲得まで進む開発戦略が採用されるケースが増加しています。
この変化の要因としては、
① 製薬企業の多くが「承認された又は承認が確実となった超後期開発品」や「新しい作用機序やモダリティ(治療手段)の早期開発品」に集中した提携方針を採用するようになり、最もリスクとリターンの大きな開発途上の候補化合物に関する提携意欲が薄れていること
② 臨床試験の平均的な規模が比較的小さくなったことと、投資家や市場からの資金調達環境が大幅に改善されたこととが相まって、必ずしも製薬企業の資金に頼らずとも新薬承認獲得までの開発が可能になったこと
③ 製薬企業との提携は必ずしも最速かつ成功確率最大の開発進行に寄与せず、むしろ阻害要因にもなりかねないと知られてきたこと
などが挙げられます。
したがって現在、創薬企業はこれらの選択肢の中から、各パイプラインに最適な開発戦略を立案することが求められています。
当社の開発パイプラインは次のとおりです。
《CBP501》
CBP501は、当社独自のスクリーニング(薬剤探索)から獲得された、蛋白質カルモジュリンの制御機能を調整し複数の作用により免疫コールド(がんを攻撃するT細胞の乏しい状態。)ながんを免疫ホット(T細胞が存在しがんを攻撃できる状態。)ながんにすることで抗がん活性を示す、独特の抗がん剤(免疫着火剤)です。
過去の試験で得られたデータから、免疫系抗がん剤との併用により薬効を高める効果が期待できることがわかりました。現在は免疫チェックポイント阻害抗体との併用による臨床第2相試験(対象:膵臓がん)を終え、次相臨床試験の準備を進めています。
《CBS9106》
当社が創出した可逆的CRM1(XPO1)阻害剤であるCBS9106は、前臨床試験を終了した段階で、同化合物の開発・製造・商業化にかかる全世界(当初は日本および中国・台湾・韓国を除いていましたが、2018年8月にこれら除外地域をなくす修正を実施しました。)における独占的権利を米国Stemline Therapeutics, Inc.に供与するライセンス契約を締結しました。
現在Stemline社は、CBS9106(felezonexor)の臨床第1相試験を完了し、次相臨床試験の計画が進められています。
《後続パイプライン》
上記2つの臨床開発段階のパイプラインのほか、がんの治癒を目指す新しいコンセプトから創出し前臨床試験のための準備を開始したCBT005、CBP501の研究開発過程で新たに得られた知見を踏まえて創出したCBP-A08、静岡県立大学との共同研究により最適化を進めているIDO/TDO阻害剤など、新規候補化合物の創出・開発パイプラインの拡充に向けて、探索研究を実施しています。
化合物 | 併用 | 対象 | 探索 創出 | 最適化 | 前臨床 試験 | 臨床試験 | 提携・ 共同研究 | ||
第1相 | 第2相 | 第3相 | |||||||
CBP501 | シスプラチン・ ニボルマブ | 膵臓がん3次治療 | ■■■■ | ■■■■ | ■■■■ | ■■■■ | ■■■■ | ||
CBS9106 (felezonexor) | なし | 固形がん | ■■■■ | ■■■■ | ■■■■ | □□□□ | Stemline社 | ||
CBT005 | 未定 | ■■■■ | ■■■■ | ■ | |||||
CBP-A08 | 未定 | ■■■■ | ■■■■ | ||||||
IDO/TDO阻害剤 | 未定 | □□□□ | ■■ | 静岡県立大 |
(4) 当社事業の当面の課題と施策
当社事業における当面の課題と施策は、概ね優先順位順に次のとおりです。
① CBP501について開発を加速し、成功確率を最大化する。
当社は現在、最先行の抗がん剤候補化合物CBP501に関して、製薬企業等との提携関係に依存しない「創薬パイプライン型」の開発を志向しています。
② 基礎研究を継続し、既存パイプラインに関する知見を深め、次世代パイプラインの創出を図る。
当社は、臨床開発段階のプロジェクトのほか、前述のとおり、基礎研究活動を絶えず実施しています。
また、研究開発にかかる知的財産権の管理等の費用も継続的に発生しています。
これらの取組みは、当社の中長期的な収益獲得と企業価値向上に欠かせないものですが、それらの成果による現実の収益を獲得するまでには一定の期間を要することから、間接金融による資金調達は極めて困難です。したがって、これらの課題と施策を可能とするための直接金融による継続的な資金調達も併せて当面の優先的な課題と施策のひとつと位置づけています。
(5) 製薬企業との戦略提携を含む開発体制の選択
医薬品の開発プロセスは、通常、長い期間と莫大な費用を必要とします。
このことから、当社のような創薬企業が、基礎研究・臨床開発・製造・上市・販売および上市後のフォローアップなどを単独で行うことは困難であることから、製薬企業等との間で適切な提携関係を構築し、固定費の増加を回避しつつ将来の継続的な開発・承認・上市に至る体制の確保を図るのが一般的な戦略であるとこれまで一般に言われ、早期臨床開発と後期臨床開発の役割分担の形が世界的な標準となっていると言われてきました。
しかしながら前述のとおり、①製薬企業等の提携方針の変化に伴う開発途上化合物に対する提携意欲の低下、②臨床試験の規模が比較的小さくなったことと創薬企業の資金調達環境が大幅に改善されたことから製薬企業の資金に頼らずとも新薬承認獲得までの開発が可能になったこと、③製薬企業との提携は最速かつ成功確率最大の開発進行に寄与せず、むしろ阻害要因にもなりかねないと知られてきたこと、などの理由から、この状況は大きく変化し、創薬企業は製薬企業等との提携に依存しない各パイプラインに最適な開発戦略を立案・選択することが求められています。
一方で、創薬企業と製薬企業等との戦略提携は、両者のリスク分担や利益配分などの考え方を反映し、特許等の排他的な実施権を供与する対価としてロイヤルティを得る形態(いわゆるライセンスアウト)のみならず、さまざまなバリエーションが存在しており、化合物の特性や開発の状況等に応じてこれらを活用することももちろん考えられます。
現在当社は、CBP501に関しては、2010年6月に武田薬品工業株式会社との共同事業化契約を解消した後、臨床試験を当社単独で進めてきました。現在は、承認申請までの臨床試験完遂を目指す資金調達を実施するとともに、すべての臨床試験を当社のリスク負担で実施し中長期的な企業価値の最大化を図る「創薬パイプライン型」開発を志向しています。これと並行して、地域等を区切った部分的な新規提携パートナーの獲得を目指す活動も進めています。
一方、CBS9106については、2014年12月、Stemline社と全世界(当初は日本および中国・台湾・韓国を除いていましたが、2018年8月にこれら除外地域をなくす修正を実施しました。)における独占的権利を供与するライセンス契約を締結し、戦略提携に基づき当社にとって比較的リスクの小さな開発体制を選択しました。現在同社は、CBS9106(felezonexor)の臨床第1相試験を完了し、次相臨床試験の計画が進められています。
(6) 研究開発における外部機関との連携
当社は、がん領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬エンジンを基に実施する創薬企業として、基礎研究から臨床開発・上市に至る各ステップにおいて、外部との提携関係(委受託関係を含みます。)を活用しています。
基礎研究および最適化の段階においては、最適化の過程で必要となる新規候補化合物の合成業務を、この領域において経験豊富な企業に委託しています。また前述の次世代化合物の創出に向けて、東京大学医学部附属病院およびファルマバレープロジェクト(一般財団法人ふじのくに医療城下町推進機構、静岡県立大学)との共同研究を進めています。
臨床開発においては、抗がん剤の臨床開発に専門性を持つ大手CROとの緊密な提携関係を構築しています。
また、当社は、抗がん剤の臨床開発にかかる経験を豊富に持つなど当社の研究開発への貢献が期待できる科学者による科学顧問会議(SAB)を組成しています。SABのチェアマンであるダニエル・D・ヴァンホフ教授は、全米がん学会会長・米国がん治療学会会長を歴任した著名ながん臨床研究者で、これまで20年以上にわたり多数の抗がん剤の臨床試験に携わっています。同氏を議長とするSABミーティングは、2002年3月の発足以来、概ね年2回定期的に開催され、当社の研究開発全般に関する情報交換や議論を行っています。
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