有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100DP72
株式会社スリー・ディー・マトリックス 研究開発活動 (2018年4月期)
(1) 研究開発目的・体制
当社グループは、外科医療や再生医療の発展に寄与すべく、自己組織化ペプチド技術を外科領域では吸収性局所止血材、粘膜隆起材、後出血予防材や癒着防止材等、再生医療領域では歯槽骨再建材および創傷治癒材等、DDS領域ではsiRNA核酸医薬等のパイプラインへ応用し、製品化に向けた研究開発活動を行っております。
当社の研究開発活動は、製造販売承認申請と品質管理体制等を管掌する薬事開発部、臨床試験における臨床施設・治験医師・治験モニタリング等を担当する事業開発部の2部門で行っており、全体を代表取締役社長が統括・管掌する体制を取っております。また、必要に応じて適宜外部機関に対する一部検査・試験等の委託やCROを活用する等、少人数で効率的に研究開発が進められる体制を整備しております。子会社においても、当社のサポートの下で、外部の薬事コンサルタントなどの外部支援を得て、研究開発活動を進めております。
(2) 研究開発活動
当連結会計年度における当社グループの研究開発費の総額は562,327千円であり、主な研究開発活動として下記のとおり実施いたしました。
① 外科領域
A 吸収性局所止血材(TDM-621)
当社グループは、自己組織化ペプチド技術を基礎技術とした外科医療における吸収性局所止血材の世界展開に向け開発を進めております。2014年1月に欧州子会社がCEマーキングの指令適合について第三者認証機関からの認証を取得しました。これにより、EU加盟国での製品販売を開始しております。
このCEマーキングの認証は欧州だけでなくアジア、オセアニア、南米等グローバルに広く採用されており、同認証を用いて製品登録承認を取得することにより製品販売が可能となります。既にアジア、オセアニアではシンガポール、インドネシア、タイ、オーストラリアで登録承認を取得し、南米ではブラジル、メキシコ、コロンビアで登録承認を取得しております。
日本、米国、中国は製品販売に向けて各国内での臨床試験と製造販売承認取得が必要であり、各国での当局対応や試験開始に向け準備を進めております。日本においてはPMDAとの間で再度の臨床試験開始に向けた協議を継続しておりましたが、内視鏡的粘膜下層剥離術下の漏出性出血に対する止血効果等の有効性評価や安全性評価を含めた総合的判断を行うという治験計画を構築し、2017年4月に治験計画届をPMDAに提出し、2017年8月に臨床試験を開始しております。米国においては、臨床試験の開始に向けた米国FDAとプロトコルの協議を実施しております。
B 粘膜隆起材(TDM-641)・血管閉塞材(TDM-631)
当社グループは、TDM-621に続く外科領域のパイプラインとして、主にTDM-641の製品化に向けた研究開発を進めております。日本での臨床試験を開始いたしましたが、2015年2月に自主的に臨床試験を一時中断しております。その後、製品の優位性の検討を進める中、ペプチドに改良を加え一定程度の結果や成果が得られております。今後、PMDAとの協議再開を行い、早期の臨床試験開始に向けて研究試験を進めてまいります。
C 後出血予防材
内視鏡手術時に生じる後出血予防効果に関して、2017年12月に欧州の認証機関にCEマーキング適用追加の再申請を実施しております。その後、認証機関とは前向きな協議ができていることから、2019年4月期に認証を取得できると見込んでおります。
D 次世代止血材(TDM-623)
本止血材と異なる新規ペプチド配列を用いた開発品です。最終製品の製造バリデーションが概ね終了し、最終製品を用いた前臨床試験を実施中です。投資効果の最も高くなる臨床試験を検討中であり、方針決定後、速やかに臨床試験を開始する予定です。本止血材より止血効果に優れ、原価も大きく削減できる見込みであることから、将来的に次世代止血材を主力製品として市場に供給すべく開発を進めてまいります。
E 癒着防止材(TDM-651)
米国食品医薬品局(以下「FDA」という。)と協議を実施しておりましたが、耳鼻咽喉科領域において市販前届510(K)での申請が可能であることが確認できております。現在必要となる動物実験を実施しており、鼻腔内手術における止血及び癒着防止を適用範囲として、2019年4月期中に申請することを目指しております。
② 再生医療領域
A 歯槽骨再建材(TDM-711)
当社グループでは、自己組織化ペプチド技術を基礎技術とした再生医療領域における骨再建材の開発を進めております。TDM-711は米国子会社で開発・製品化を目指しており、2011年7月に米国FDAからIDEの承認を取得したことに続き、2012年2月に米国ハーバード大学の医学部・歯学部の付属研究所であフォーサイス・インスティテュート(Forsyth Institute)において臨床試験を開始いたしました。プロトコルに規定した15症例の施術が完了し骨形成に良好な結果やデータを得たことから、米国FDA承認後、次のフェーズでの臨床試験を実施しております。
B 創傷治癒材(TDM-511)
当社グループは、自己組織化ペプチド技術を基礎技術とした再生医療領域における皮膚再建材の開発を進めております。TDM-511は米国子会社で開発・製品化を目指しており、2014年10月に医療機器として市販前届510(k)を米国FDAに申請し、2015年2月に販売承認を得ました。TDM-511は、皮膚(表皮、表皮・真皮)からの出血を迅速に止血する局所止血材、皮膚の創傷部の再生環境を整え創傷治癒を促す創傷治癒材としての活用に加え、他薬剤とのコンビネーションによる治療効果の増大が期待できることから、熱傷治療、皮膚がん治療、美容整形分野での研究開発を進めております。
③ DDS領域
当社は界面活性ペプチド(A6K)を用い国立がん研究センターと新規癌治療技術の開発に向けて共同研究を行っており、癌細胞への徐放技術の確立に向け前臨床試験実施し、乳がん治療に向けたsiRNA核酸医薬のDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)を共同開発しております。主に国立がん研究センターとの「RPN2標的核酸医薬によるトリプルネガティブ乳がん治療」共同プロジェクトを実施しており、当社は自己組織化ペプチドA6KをsiRNA核酸医薬のDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)として提供しておりました。前連結会計年度より国立がん研究センター、同研究所と共同開発した新規siRNA核酸製剤「TDM-812(RPN2siRNA/A6K複合体)」を用いた国立がんセンターによる医師主導治験が開始され、現在も治験が継続されております。本治験の内容は治療抵抗性の乳がんで体表から触知できる局所腫瘤(かたまり)を有する患者さんを対象とした、世界で初めて人へ投与するファースト・イン・ヒューマンの治験です。
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