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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100LVP4 (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 株式会社リボミック 事業の内容 (2021年3月期)


沿革メニュー関係会社の状況

当社は、アプタマー創薬技術に関するプラットフォームである「RiboARTシステム(Ribomic Aptamer Refined Therapeutics System)」をベースとした創薬事業を展開している創薬プラットフォーム系バイオベンチャーです。

(1)当事業年度の主要なトピックス
①RBM-007について
(i)RBM-007 (抗FGF2アプタマー)の臨床開発
当社では、自社で創製したRBM-007(FGF2に結合し、その作用を阻害するアプタマー)を、自社での臨床開発のテーマに選び、「滲出型加齢黄斑変性症(Wet Age-related Macular Degeneration、wet AMD)」と「軟骨無形成症(Achondroplasia、ACH)」の治療薬としての臨床開発を進めております。

(ii)RBM-007の臨床開発の状況
a)滲出型加齢黄斑変性症(wet AMD)
1)第2相臨床試験※1(試験略称名:TOFU試験)
過年度に実施した第1/2a相臨床試験(試験略称名:SUSHI試験)の結果を受けて、2019年12月より、RBM-007
の複数回投与による臨床POC※2確認を目的としたTOFU試験が米国で開始され、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて2020年3月後半から5月上旬にかけて一時的に新規患者登録を中断いたしましたが、現在では予定患者登録数(81名)のうち68名(84%)の患者登録が完了しており(2021年6月26日現在)、計画通り2021年12月までに試験を完了する予定です。この試験は、wet AMD患者を対象に、①RBM-007硝子体内注射の単剤投与群、②既存薬としてアイリーアⓇアフリベルセプト硝子体内注射との併用投与群と、③アイリーアⓇ硝子体内注射の単剤投与群との間で、有効性と安全性を比較評価する無作為化二重盲検試験です。本試験は、比較薬であるアイリーアⓇの単剤投与③に対して、RBM-007の単剤投与①やRBM-007とアイリーアⓇの併用投与②による視力の改善効果を検証することが目的ですが、TOFU試験が完了する12月以降に結果が明らかになる予定です。

2)TOFU Extension試験(試験略称名:RAMEN試験)
TOFU試験の進捗に基づき、長期的な薬理作用に関する知見を得る目的で、追加試験(RAMEN試験)の被験者への投与を2020年10月より開始いたしました。RAMEN試験はオープン試験で、TOFU試験を完了した約40名の被験者に対して、追加のRBM-007の硝子体内投与を一ヶ月間隔で計4回行います。本試験の目的は、追加投与に伴う安全性と有効性、とりわけRBM-007の瘢痕形成抑制効果に関する知見を収集することです。
現在wet AMDの治療に使用されている既存薬(VEGF阻害剤)には、失明の原因となる網膜の瘢痕形成を抑制する作用がありません。瘢痕形成の評価には長期間の観察が必要なため、試験期間を延長したRAMEN試験によってRBM-007の瘢痕抑制に関する示唆が得られれば、臨床的に重要な結果となります。本試験は、TOFU試験と同様に、2021年12月までに完了することを目標としております。

b)軟骨無形成症(ACH)
1)第1相臨床試験
本プロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成(2015年度から合計6年間)を受け、2020年4月、新薬の治験計画届出書をPMDAに提出し、2020年7月、RBM-007の安全性、忍容性及び薬物動態を調べることを目的として、国内の1治験施設において、合計24名の健康成人男性を対象とする第1相臨床試験を開始し、2021年5月に投与完了いたしました。なお、本プロジェクトは2021年度から3年間、AMEDの希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業として実施されます。

c)推進体制
当社の臨床開発については、30年以上の豊富な臨床開発経験を有する池上直隆氏(執行役員臨床開発部長、2020年10月より研究開発本部長に就任)が日本での臨床開発を、2021年3月から新薬開発と事業提携の経験が豊富なPadma Bezwada博士(RIBOMIC USA Inc. CEO)が米国での臨床開発を陣頭指揮し、臨床医や製品開発のエキスパートを含む外部の協力も得て進めております。
今後もRBM-007の開発推進に向け、一層の体制整備を図ってまいります。

②共同研究契約
(i)ビタミンC60バイオリサーチ株式会社との間の共同研究開発契約に基づき、化粧品原料候補の創製・開発に関
する共同研究を実施し、現在までに有望なアプタマーの創製に成功しており、実用化へ一歩進んでおります。

(ii)2021年2月、あすか製薬株式会社と、産婦人科領域で重要な役割を担う特定のホルモン受容体を標的とした創薬研究開発に関する複数年間の共同研究開発契約を締結し、共同研究を進めております。
③資金調達
2020年1月に発行したSMBC日興証券株式会社を割当先とする第15回新株予約権の行使は、2020年7月に完了し、総額約55億円(当事業年度では約50億円)を調達いたしました。本調達資金は、①RBM-007のwet AMD及びACHを対象とした臨床開発費用(臨床開発のための薬剤合成費用を含む)、②RBM-003の心不全を対象とした非臨床試験※3費用、③RBM-010の変形性関節症を対象とした非臨床試験費用、④新規技術開発費用(製剤化技術開発・導入他)等に充当する計画で、現在その計画に従い研究開発を進めております。

(2)当社のビジネスモデルと収益計上の時期
①当社のビジネスモデル
当社の事業は、以下の自社創薬と共同研究の2事業より構成されており、創薬探索のビジネスから臨床開発のビジネスまでの事業展開を進めております。
(i)自社創薬(自社創薬事業)
一定の開発段階まで自社独自、または、大学等研究機関と共同で医薬候補となるアプタマーを開発し、その後、その成果を製薬企業にライセンス・アウト※4し、ライセンス対価(基本的に、契約締結時に受け取る契約一時金、開発進行に伴うマイルストーン収入※5、及び製品上市後の売上に応じたロイヤルティー)を得る事業です。

(ii)製薬企業との共同研究(共同研究事業)
アプタマー医薬の研究を提携製薬企業と共同で行い、当社が分担する業務に応じて提携先から支払われる研究費を収入として得る事業です。さらに、共同研究では、一定の開発段階に達した時点で提携先の製薬企業に当社分の権利をライセンス・アウトし、相応の契約一時金やマイルストーン収入等を得てまいります。
上記二つの事業をバランスよく実施することで、以下の成果あるいは効果が期待できます。

1) 共同研究を実施することにより、自社創薬のビジネスモデルに伴うライセンス・アウトの不確実性による
収益の不安定化というリスクを低減できる
2) 共同研究先の新薬開発のノウハウ※6、経験を知得できる
3) 共同研究が順調に進む場合、ライセンス・アウトの実現可能性が高い
4) POCを取得した自社開発品のライセンス・アウトにより大きな収益を期待できる
5) 事業を全体として拡大できる

当社の事業の系統図は以下のとおりです。

<事業の系統図>
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※:対価収入のうちライセンス・アウトの対価には、当社が製薬企業より受け取る①契約締結時の一時金、②開発の進捗に応じたマイルストーン収入、③製品発売後の売上に対するロイヤルティーがあります。

当社は、上記の自社創薬事業に付随する事業として、医薬品以外への応用可能性を秘めたアプタマーの実用化検討も行っております。その一環として、抗体※7であるIgGに特異的に結合する性質を有したアプタマーを、工業用資材(抗体医薬※7の精製剤等)として開発する事業や、アプタマーを利用した化粧品原料の開発を進めています。

②事業活動に伴う収益計上の時期
当社のビジネスモデルにおいて、自社創薬及び共同研究とも収益を計上できるのは、ライセンス契約や共同研究契約の締結後です。以下の図は、その場合の収益計上のタイミングを示しています。

<自社創薬及び共同研究における一般的な収益計上のタイミング>
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注:上記の図は、一般的なケースとして当社が想定している事業収益計上のタイミングを表すものです。
個別の契約により受取回数等が異なる場合があります。

(3)事業戦略
当社は、アプタマー創薬に関する当社の競争優位性や強みを梃子として、以下の基本ポリシーのもとで、研究開発を推進しております。
① 自社創薬におけるパイプラインの一層の拡充と進展を図り、研究成果をいち早く知財化して競争優位性を維持、強化しライセンス・アウトを目指す。
② 共同研究を積極的に展開し、早期での収益の確保及びライセンス・アウトを目指す。
③ アプタマー医薬品としての特性を最大限に生かしうる開発品や疾患については、過大な経済的負担を避けつつ、付加価値を高める観点から臨床POC取得のための臨床試験を実施し、収益の最大化を図る。
④ アプタマー創薬における当社の「RiboARTシステム」の更なる向上、発展を図るべく、次のアプタマーの創製
にチャレンジする。
1)アゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)
2)細胞内への取り込み可能な(DDS※8作用を有する)アプタマー
3)細胞膜複数回貫通型のタンパク質(GPCR受容体等)と結合するアプタマー
4)次世代シークエンサーとコンピューター科学を利用したアプタマー探索の人工知能技術の開発
5)脳関門通過技術の開発と神経疾患治療への応用
⑤ 大学や研究機関との緊密な連携を図り、大学や研究機関での基礎研究成果を医薬品開発に応用するトランスレーショナル・リサーチ※9を推進することにより、アカデミアにおける研究成果をいち早くアプタマー創薬に活かす。

(4)医薬品市場におけるアプタマー医薬
①アプタマー医薬を含む核酸医薬※10の市場
医薬品は、その素材から、1)低分子、2)ワクチン、3)生物製剤、4)核酸、5)細胞、6)遺伝子に分類されますが、この中で最も新しく、技術革新が進展しているのが、生物製剤の中の抗体医薬と、核酸を成分とする核酸医薬、並びに細胞を利用する再生医療や遺伝子治療です。
そのような中、アプタマーを含む核酸医薬は、作用メカニズム及び投与方法が類似していることから、現在巨大な市場を形成しつつある抗体医薬に続く次世代の医薬品として注目されており、核酸医薬の世界の売上高は、2019年が約3000億円であり、抗体医薬の2019年の売上高約16兆円に比べてまだまだ小さな額ですが、抗体医薬と

の比較優位性から2030年には、約2兆円に拡大する(mRNAコロナウイルスワクチンを除く)と想定されています。因みに2021年3月現在の上市済核酸医薬品は以下の通りです。

上市済核酸医薬品
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上市済mRNAコロナウイルスワクチン
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アプタマーについては、2004年12月に世界初のアプタマー医薬で、眼科領域の疾患である加齢黄斑変性症(AMD)を適応症とする「マクジェンⓇ」が米国FDAに承認され、逐次世界各国で承認を得て、世界的な製薬企業であるファイザー社から(日本では2008年10月)発売されています。しかし、現在、全世界で「マクジェンⓇ」以外のアプタマー医薬は市販されていません。また、第2相臨床試験(Phase2試験)~第3相臨床試験(Phase3試験)の後期臨床ステージにある開発中のアプタマー医薬品目数も抗体医薬品に比較すると些少です。この背景には、アプタマーの創製に不可欠な技術であるSELEX法に関する基本特許が日欧では2011年6月まで、米国では2014年9月まで存続し、製薬会社がアプタマー創薬に向けた研究が自由にできなかったことが挙げられます。
核酸医薬には、アプタマーの他に、アンチセンス、デコイ、siRNA、microRNA、mRNAなどの種類があり、現在の開発の主流はアンチセンスですが、依然として幾つかの課題(化学修飾※11、DDS及び製造と品質管理)が指摘されています。
今後、核酸医薬の中軸を担うのは、化学修飾が容易で細胞内へのDDS技術が不要で、抗体と類似した作用メカニズムを持つことから応用範囲の広いアプタマー医薬であり、そのアプタマー医薬の中で、当社のRBM-007プログラムが世界の最先端に位置していると当社は考えております。アプタマーを創薬のシーズとするのは、標的となるタンパク質分子への結合という点で似たような作用を持つ抗体医薬と比較しても、その結合活性が非常に高いことや、様々な化学修飾によって活性や体内動態等を改善することが可能だからです。なお、抗体医薬との比較は、次の項を参照下さい。

②アプタマー医薬と抗体医薬の比較
アプタマー医薬は分子標的薬※12として、抗体を成分とする抗体医薬と、作用メカニズム及び投与方法が類似しています。従って、アプタマー医薬の最大の競合品は抗体医薬になります。アプタマー医薬市場の成否は、抗体医薬との比較のなかで、その違いを明確にし、どう差別化するかにかかっています。抗体医薬は、マウス等で作製した抗体をヒトで異物として排除されにくいように加工した後、これを産生する特殊な細胞を大量に培養し、精製して医薬品原料にします。その起源が生物試料であることから生物製剤に分類されます。これに対し、アプタマー医薬はその成分であるRNA※13を化学合成して製造することから合成医薬品に分類されます。
以下は抗体医薬と比較したアプタマー医薬の特徴ですが、アプタマー医薬は、科学技術の進歩とともにその長所が認識され、抗体に続く次世代の新薬の核として開発が進むものと当社は期待しております。

<アプタマー医薬と抗体医薬の比較> (当社作成)
項目アプタマー医薬抗体医薬
標的タンパク質に対する結合力抗体の1,000倍は可能強い
創薬ターゲットの種類極めて多様抗原タンパクに限定
製造化学合成法細胞培養法
コスト(製造コスト低減の容易さ)比較的高価
(製造コスト低減の可能性あり)
比較的高価
(製造コストの低減は難しい)
抗原性/免疫排除起きにくい起きる
製剤の可逆性・安定性強い弱い
体内動態(長時間作用)苦手、限界あり良い、得意
中和剤可能(アンチセンスの利用)不可能
短期作用性得意困難
加工・化学修飾容易困難

(5)パイプラインについて
創薬事業(自社創薬及び共同研究)のパイプラインの最優先プロジェクトは下記のとおりです。

〈パイプライン : 優先度の高い自社開発品>
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①自社創薬パイプライン
(ⅰ) RBM-007(抗FGF2アプタマー):線維芽細胞増殖因子2を阻害する多用途治療薬の開発
a) 開発の背景
線維芽細胞増殖因子2(Fibroblast Growth Factor 2、FGF2)は、様々な臓器や器官の形成や再生、並びにそれらの正常な機能を維持する上で大切な役目を果たす「善玉タンパク質」だと長く考えられてきました。その一方で、FGF2が過剰に産生されたり、その作用が増強したりすると、骨の正常な維持に不都合が生じる可能性が学術論文で示唆されていました。
しかし、FGF2に関する研究は、その発見から40年余の歴史があるにも拘わらず、抗体や低分子を含めてFGF2に対する優れた阻害剤が開発できませんでした。その理由は、FGF2はヒトでは22種類の類縁タンパク質からなるFGFファミリーの一員で、ヒトと動物で高度に保存されているため、抗体を含め特異的な阻害剤の創製は極めて困難だったからです。この結果、FGF2を阻害した場合の病気の発症や悪化に関する研究は進展せず、FGF2阻害剤の新薬候補品としての価値は見出されていませんでした。
当社は、骨疾患におけるFGF2の役割を明らかにする目的で、FGF2に対する阻害性アプタマーの創製と解析を実施しました。その結果、FGF2に対して高い特異性と強力な阻害活性を有するアプタマーを創製することに成功し(化合物番号「RBM-007」を付与)、これまで未解明だったFGF2の生理的な機能を解明するとともに、FGF2阻害剤の多面的な用途を明らかにすることに成功しました(米国遺伝子細胞治療学会の機関誌である「Molecular Therapy」誌2016年11月号と「Molecular Therapy Nucleic Acids」誌2019年9月号に掲載、並びに一つの物質特許と二つの関連特許を出願しております)。これにより、本アプタマーは、骨粗鬆症やリウマチなどの「骨疾患」や癌の骨転移に伴う「癌性疼痛」に対する治療薬となりうる可能性が明らかになりました。同時に、「加齢黄斑変性症」及び「軟骨無形成症」に対する新規治療薬となりうることも明らかとなりました。

b-1) 滲出型加齢黄斑変性症(wet AMD)の病理と既存治療薬の問題点
加齢によって網膜の中心部にある黄斑に障害が起き、見ようとするところが見えにくくなる疾患で、進行すると失明することがあり、欧米では失明原因の第1位で、日本でも第3位の失明原因となっています。その病理は、次の図に示されるように、加齢や紫外線・タバコの紫煙等が原因となって、網膜に炎症がおき、黄斑部に血管新生が誘導されて、視神経の膜構造が損傷されるために発症します。

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wet AMDの市場では、「ルセンティスⓇ」や「アイリーアⓇ」等の血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬が第一選択薬としての地位を確立(既存薬の全世界市場規模は約1.2兆円)しておりますが、wet AMD患者の約1/3はVEGF阻害薬が奏功せず、奏功した患者も長期治療の過程で、その薬効が次第に減弱し、やがて失明に向かう多くの患者がいることが臨床的に明らかにされています。また、患者への負担が大きい硝子体(眼球)内注射の間隔を延ばすことが可能な治療薬の開発も求められています。
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既存の加齢黄斑変性症治療薬である抗VEGF薬では効果が十分に得られていない原因の一つとして瘢痕化が挙げられています。上図に示すように、RBM-007は血管新生の抑制作用のみならず、瘢痕化の抑制という作用を合わせ持つことが動物モデルの試験で明らかになっているため(非臨床POC確認)、既存薬にはない新規作用機序が治験によって証明された場合、既存の治療薬(VEGF阻害薬)が奏功しない(又は奏功しなくなった)患者にも奏功する、他の薬剤に対して競争力のある新薬となるものと期待しております。
RBM-007によるwet AMDの治療においては、薬剤を眼球内(硝子体)に注射するため、投与薬剤量が少なくてすみ、また大半の薬剤が眼球内に留まるため、コスト的にも安全性においても、当社による開発に適していると考えております。

b-2) RBM-007を用いた滲出型加齢黄斑変性症(wet AMD)に対する臨床試験
米国における臨床試験の実施を目的として、当社100%子会社 RIBOMIC USA Inc.を米国Berkeleyに設立し(2017年8月)、複数の網膜疾患専門医を構成員とする当社科学諮問委員会での議論を経て、実施に向けた準備を進めました。
・第1/2a 相臨床試験(試験略称名:SUSHI試験): wet AMDを対象にした臨床試験として、SUSHI試験を2018年10月から2019年7月にかけて米国で実施しました。本試験は、RBM-007の3用量(3コホート)を、計9人の難治性wet AMDの被験者に対して、単回投与(硝子体内注射)し、安全性、忍容性を確認することを主な目的として、米国西海岸の複数の治験施設において実施いたしました。
その結果、全ての用量において、主要評価項目(安全性と忍容性の確認)を達成し、あわせて副次的評価項目において薬効を示唆する結果も認められました。

・第2相臨床試験(試験略称名:TOFU試験):この結果を受けて、2019年12月より、RBM-007の複数回投与による臨床POC確認を目的としたTOFU試験を米国で開始し、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて2020年3月後半から5月上旬にかけて一時的に新規患者登録を中断いたしましたが、現在では予定患者登録数(81名)のうち68名(84%)の患者登録が完了しており(2021年6月26日現在)、計画通り2021年12月までに試験を完了する予定です。この試験は、wet AMD患者を対象に、①RBM-007硝子体内注射の単剤投与群、②既存薬としてアイリーアⓇ(アフリベルセプト)硝子体内注射との併用投与群と、③アイリーアⓇ硝子体内注射の単剤投与群との間で、有効性と安全性を比較評価する無作為化二重盲検試験です。合計81名の被験者に対して、米国の複数の治験サイトで実施するもので、既存薬に対するRBM-007の優位性が証明されることを期待しています。

・TOFU Extension試験(試験略称名:RAMEN試験)
TOFU試験の進捗に基づき、長期的な薬理作用に関する知見を得る目的で、追加試験(RAMEN試験)の被験者への投与を開始いたしました。RAMEN試験はオープン試験で、TOFU試験を完了した約40名の被験者に対して、追加のRBM-007の硝子体内投与を一ヶ月間隔で計4回行います。本試験の目的は、追加投与に伴う安全性と有効性、とりわけRBM-007の瘢痕形成抑制効果に関する知見を収集することです。
現在wet AMDの治療に使用されている既存薬(VEGF阻害剤)には、失明の原因となる網膜の瘢痕形成を抑制する作用がありません。瘢痕形成の評価には長期間の観察が必要なため、試験期間を延長したRAMEN試験によってRBM-007の瘢痕抑制に関する示唆が得られれば、臨床的に重要な結果となります。本試験は、TOFU試験と同様に、2021年12月までに完了することを目標としております。

また、これと並行して進めてきた国内外の製薬企業との提携協議の結果、2020年3月、韓国AJU薬品株式会社との間で、韓国・東南アジア地域におけるRBM-007のwet AMDを適応疾患とするライセンス契約を締結いたしました。今後、臨床開発と並行して、国内外の製薬企業との提携協議をさらに進めてまいります。

c-1) RBM-007を用いた軟骨無形成症(ACH)の病理と治療法
軟骨無形成症は、新生児約25,000人に対して1人の発生率の希少疾患で、有効な治療薬が存在せず、Unmet Medical Needsの疾患となっており、新規な薬剤の開発が求められております。この疾患は、FGF受容体のひとつであるFGFR3におきた突然変異によって発症する、四肢短縮による低身長を主な症状とする希少疾患で、現在まで有効な治療薬が開発されておらず、本邦では、治療には成長ホルモンが使用されていますが、効果は十分とは言えず、骨延長術(足の骨を切断して引き離した状態で固定し、骨の形成を促す)といった非常に厳しい治療が幼い子供に施されることもあり、新薬が待ち望まれています。

c-2)RBM-007を用いた軟骨無形成症(ACH)に関する薬理試験
これまでに、当社は、軟骨無形成症モデルマウス(FGFR3の遺伝子を疾患変異型に人為的に改変したマウス)を用いた薬理試験において、RBM-007は低身長改善効果を示し、軟骨無形成症に対する本薬剤の非臨床POCを確認することに成功しております。また、軟骨無形成症患者由来のiPSC(人工多能性幹細胞)は軟骨細胞への分化が不全になっていることが知られていますが、iPS細胞を試験管内で培養する際に、RBM-007を添加することで、軟骨細胞への分化が可能となり、さらには、免疫不全マウスにこの分化細胞を移植すると、マウスの体内で軟骨組織が形成されることを証明しております(大阪大学医学部との共同研究)。これらの結果から、RBM-007が、軟骨無形成症に対する新薬となりうることが強く示唆されました。

c-3)RBM-007を用いた軟骨無形成症(ACH)を適応症とする臨床試験
軟骨無形成症に関するプロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援(2015年度からの6年間)を受け、2020年4月、新薬の治験計画届出書をPMDAに提出し、2020年7月、第1相臨床試験を開始いたしました。第1相臨床試験は、RBM-007の安全性、忍容性及び薬物動態を調べることを目的として、国内の1治験施設において、合計24名の健康成人男性を対象に実施し、2021年5月に投与を完了いたしました。なお、本プロジェクトは2021年度から3年間AMEDの希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業として実施されます。また、RBM-007を用いた細胞試験や動物試験でのACH治療薬としての効果については、2021年5月米国科学誌 Science Translational Medicine電子版に論文が掲載されました。

以上のRBM-007に加えて、当社は、既存パイプラインを継続的、重層的に拡大し中長期的に成長するために、特に優れた薬効が確認されているRBM-003、RBM-010、並びにRBM-011を、RBM-007に次ぐ重点開発プログラムと位置づけております。以下にプロジェクトの優先度順に概要をまとめます。

(ii)RBM-011(抗IL-21(インターロイキン21)アプタマー):肺動脈性肺高血圧症に対する新薬の開発
RBM-011が対象とする肺動脈性肺高血圧症は、難治性呼吸器疾患に認定されている原因不明の病気であり、肺動脈壁が肥厚して血管の狭窄が進行した結果、全身への血液や酸素の供給に障害が生じ、最終的には心不全から死に至ることのある重篤な疾患です。プロスタグランジンI2製剤などの既存治療薬が十分な効果を発揮しない患者の予後は依然として極めて悪い状態です。これらの既存治療薬は、いずれも血管を拡張させる作用を持つものであり、血管壁の肥厚を抑制する作用を持つ薬はなく、その開発が強く望まれています。
AMEDの難治性疾患実用化研究事業の一環として助成を受けて(2017年度から3年間)、当社が創製したRBM-011の共同研究を肺動脈性肺高血圧症の国内での専門医療機関である国立研究開発法人国立循環器病研究センター(国循)と進め、動物実験において、肺動脈壁の肥厚に対して、顕著な抑制効果を持つことが明らかになり、2020年度から3年間のAMEDの治験準備(ステップ1)研究として助成を受け、国循と密に連携して、本剤を臨床試験に進めるべく開発を進めております。
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抗IL-21アプタマーによる肺動脈壁の肥厚抑制効果を確認
(左:通常マウスの肺の血管。中央:モデルマウスの血管。右:RBM-011投与後のモデルマウスの血管)

(iii) RBM-003(抗キマーゼアプタマー):心不全に対する新薬の開発
心筋梗塞直後、Chymase(キマーゼ)は肥満細胞と心筋細胞等の組織損傷部位から分泌され、アンジオテンシンII等の活性化をとおして、心筋に悪影響を及ぼすことが知られています。ハムスターを用いた冠動脈結紮による心筋梗塞急性期モデルにおいて、RBM-003の投与は梗塞後のキマーゼ陽性肥満細胞の集積並びにキマーゼ活性を抑制し、顕著な心機能改善効果を示しました(非臨床POC確認、米国遺伝子細胞治療学会の機関誌である「Molecular Therapy Nucleic Acids」誌2019年1月号に掲載)。RBM-003は、冠動脈結紮の前投与のみならず、後投与においても顕著な心機能改善効果を示し、冠動脈結紮を行った実験動物(ハムスター)の生存率を著しく改善いたしました。現在、急性心不全に対する医薬品は存在せず、Unmet Medical Needsの疾患となっています。RBM-003は他のキマーゼ阻害剤と比べて非常に強い酵素阻害活性を持つことが確認されており、急性心不全に対する即効性の注射薬の開発を目指して、今後の研究開発を加速してまいります。

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(iv) RBM-010(抗ADAMTS5アプタマー):変形性関節症に対する新薬の開発
RBM-010は、当社と大正製薬株式会社との共同研究で創製された製品で、変形性関節症の増悪因子の一つであるADAMTS5(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs 5)の働きを抑制する作用があります。変形性関節症は、種々の原因により、膝や足の付け根、肘、肩等の関節に痛みや腫れ等の症状が生じ、その
後関節の変形をきたす病気です。現在、治療法としては痛みや腫れを和らげる薬の服用や関節置換術などの手術しかなく、根治する薬はありません。日本には、変形性関節症を有している人が、2,500万人以上、また、世界では、変形性関節症の患者が約2億4,000万人以上と推定されており、今後高齢化に伴いさらに増加が予測されています。
RBM-010(抗ADAMTS5アプタマー)はその根治療法に道を開く可能性があり、現在、局所投与による徐放性製剤の開発に取り組んでおります。
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(v) その他のパイプライン
a) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療用アプタマーの開発
世界的なパンデミックとなっているCOVID-19に対して、多くの企業や研究機関が精力的にワクチンの開発を進めた結果、欧米が先行するかたちでワクチンの接種が急ピッチで進んでおります。しかしながら、変異ウイルス等の出現や供給不足を含む様々な障害が解決されないために、未だその終息の見通しが立つには至っておりません。一刻も早い感染症克服のためには、当社は、ワクチン開発と並行して治療薬の開発が不可欠であると考えており、COVID-19に対するアプタマー創薬研究を精力的に継続しております。
COVID-19の原因ウイルスSARS-CoV-2は、ウイルス表面のスパイクタンパク質(Sタンパク質)がヒトの細胞表面にある受容体(ACE2タンパク質)に結合することによって感染が開始され、その後細胞内に侵入し増殖することが明らかになっていますが、当社は、Sタンパク質やACE2タンパク質に結合することによって、Sタンパク質とACE2タンパク質の結合を阻害し、ウイルスの細胞内への侵入を阻止するような活性を持つアプタマーに、治療薬としての効果が期待出来るものと考えております。
現在までに、多数の候補配列情報を取得、表面プラズモン共鳴法を用いたスクリーニング※14によって、抗Sタンパク質アプタマーの候補(Sタンパク質に対する結合、並びに宿主受容体ACE2への結合阻害活性を持つアプタマー)を複数特定することに成功しております(ヒット化合物の取得)。また、東京大学医科学研究所・アジア感染症研究拠点(研究代表者:合田仁特任准教授)との共同研究により、培養細胞を用いたin vitro※15試験において、取得された抗Sタンパク質アプタマーの中に、シュードタイプウイルス(水疱性口内炎ウイルスの粒子表面にSARS-CoV-2のSタンパク質を作らせた偽型ウイルス)の感染を抑制する活性を確認いたしました。今後は、取得されたヒットアプタマーから最適候補を選別して動物モデルでの感染阻害効果を検証する予定です。

②自社創薬に付随するパイプライン
当社は、創薬以外へのアプタマーの応用も行っております。
その一つに、IgGアプタマーがあります。IgGはヒト血清中に最も多く存在(70~75%)する免疫グロブリンで、抗体医薬として実用化されています。
当社は、IgGの特定の部分(定常部)に結合するアプタマーを取得し、これが抗体医薬の分離精製に利用できることを証明いたしました。これに伴い、過年度においてIgGアプタマー樹脂及びカラムの試作品を作成し、製薬企業や大学等にモニター用としてサンプル提供を行っております。
また、本アプタマーに関する事業の進展に伴い、新規の製品コード「RBM-101」を付して、今後、国内外の大手製薬企業へのライセンス・アウトを含めた事業化を目指してまいります。
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上記のほかに、アプタマー医薬品の汎用性をさらに活かすため、コンピューター科学を応用した技術開発(以下「国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)委託事業」)等を継続して進めております。2018年度から開始されたJST委託事業においては、早稲田大学と共同し、バイオインフォマティクスを駆使したアプタマー探索技術(RaptRanker)を開発いたしました。RaptRankerを用いることにより、当社のアプタマー創薬プロセスを効率化し、創薬期間の短縮及び成功率の向上につなげることができます。さらに、2021年3月、本事業が「AI アプタマー創薬プロジェクト」としてJSTに採択され、2021年4月から3年間、早稲田大学と共同で、当社が手掛ける RNA アプタマーの創薬のプロセスを、深層学習などの人工知能技術を活用することで自動化し、創薬期間の短縮及び創薬成功率の向上を実現させることを目指し、研究を進めてまいります。
また、難しい創薬標的である膜受容体GPCRに対する汎用的なアプタマー創製法の開発を、AMEDの支援のもと、東京大学医科学研究所と共同して進めてきましたが、その研究成果が米国科学アカデミー紀要(2021年4月)に掲載されました。今後のGPCR創薬にあらたな道を拓くものと期待しております。

(6)アライアンスの状況について

① アライアンスの状況
現在の当社のアライアンス状況は、以下の通りです。
(i) ライセンス・アウト済みのもの
区分パイプラインターゲット導出先権利地域適応症
自社創薬RBM-004NGF(神経成長因子)藤本製薬株式会社全世界疼痛
自社創薬RBM-007FGF2(線維芽細胞増殖因子2)韓国AJU薬品株式会社韓国及び
東南アジア
滲出型加齢黄斑変性

(ii)アプタマー創薬に関する主たる共同研究
パートナー名称共同研究概要
ビタミンC60バイオリサーチ
株式会社
2019年1月に締結した共同研究契約に基づく、アプタマー技術を活用した化粧品原料候補の創製・開発に関する共同研究。
あすか製薬株式会社2021年2月に締結した共同研究開発契約に基づく、「RiboART システム」を用いた産婦人科領域で重要な役割を担う特定のホルモン受容体に作用するアプタマー医薬品の研究開発に関する共同研究

②アライアンス戦略
当社は、自社創薬製品については、製品の特性や、自社での臨床開発の実施可能性、市場性等に鑑みて、もっとも効果的なライセンス・アウト時期を見定め、非臨床段階、若しくは自社で臨床試験を実施しPOCを取得した後にライセンス・アウトすることを事業スキームとしております。
また、当社はこれまで共同研究やライセンス・アウトに連動して、複数の共同研究先及びライセンス先と資本提携も実施し、より強固で統合的な事業推進を図ってまいりました。
今後は、アプタマー創薬に取り組む企業の拡大が見込まれ、それに伴う事業チャンスを活かすために、事業開発部を中心に営業活動の地域を海外にも積極的に広げ、共同研究やライセンス・アウトの機会の拡大を図ってまいります。

③アライアンスの推進体制
自社創薬品目のライセンス・アウト実現のためには、可能性の高い提携候補先の選定、候補先での導入決定を促す試験成績・データ(製品差別化のポイント、製品売上高の予測、競合品に対する優位性等)の創出、製薬企業側のニーズの把握など、専門的な能力、経験が必要です。このため、当社では医薬品業界での新薬の開発及びライセンスの経験と実績のある人材を社内に擁し、また研究開発や知財に関する社外専門家も活用できる体制を構築しており、アライアンスの実現に向けた体制を整えております。また、2021年3月からRIBOMIC USA Inc.の新CEOに就任したPadma Bezwada氏は前職のXOMA社BD副社長として多くの事業提携を成功させた実績を有しており、当社のアライアンス実現に対する大きな貢献を期待しています。

(7)知財戦略
創薬プラットフォーム系バイオベンチャーである当社にとって、開発する製品が特許により保護されていることが、自社開発のみならず他社とのライセンスや共同研究を実現する上で不可欠です。
当社の知財戦略は、開発する製品に関するものと、開発技術に関するものとに峻別し、以下のような異なる対応をしております。

①自社創薬品目及び共同研究品目に対する知財戦略
RNAを成分とするアプタマーは配列の違いによって、同一標的分子(疾患関連タンパク質)について権利範囲の抵触しない複数の物質特許が成立する可能性があります。よってプロジェクトごとの物質特許の取得を前提としています。
標的分子との結合力が強くかつ当該標的分子の生理作用に対する阻害活性の高いアプタマーだけでなく、その周辺の化合物もカバーする特許権の成立を目指します。具体的には、無数にある核酸配列の中から結合力及び阻害活性の高いアプタマーに共通する構造や配列を探索し、その共通構造・共通配列を特許化することで、広い権利を押さえることを基本戦略としています。さらに非臨床試験・臨床試験の経過により得られるデータに基づき、製剤特許や用途特許の出願を実施し、実質的な特許期間を延ばす戦略を採っています。
一方共同研究品目については提携先との共同出願となるのが通例ですが、ライセンス・アウトに伴い、開発や事業化についての独占的実施権を提携先に付与しても、当該特許に対する自社権利は維持する(共有とする)方針を基本といたします。
なお特許出願国については、日米欧を中心として、中国、韓国、インド、ブラジル等の医薬品市場の規模が大きく、または将来の市場拡大が見込まれる国や地域をカバーすることを方針としております。

②「RiboARTシステム」に対する知財戦略
「RiboARTシステム」のコアとなる技術(アプタマーの取得、短鎖化や化学修飾等の最適化※16)の中には、特許化が可能な技術も含まれていると当社は考えておりますが、特許化は技術公開という代償を伴い、当社の特許化された技術を使用して他社がアプタマーを取得したとしても、それが当社の特許技術を使用したことを立証することは困難です。
従って、当社では、原則としてアプタマー医薬品候補物については、物質特許を取得する方針でありますが、「RiboARTシステム」を構築する技術自体は、特許化による競争優位性が確保されるものを除きノウハウあるいは営業秘密※6として秘匿し、優位性の確保に努めます。なお、当社はノウハウあるいは営業秘密が社外に流出しないよう、役職員や取引先との間で秘密保持義務等を定めた契約を締結し、厳重な情報管理に努めております。

③主要な特許の状況
当社が保有者となる、当社の研究開発に関する主要な特許の状況は以下のとおりであります。

<自社創薬品目に関する主要な特許>
対象パイプライン発明の名称出願または特許番号保有者登録状況
RBM-003キマーゼに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2018/044132
当社-
RBM-004NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2009/066457
(特許第5602020号)
当社・藤本製薬株式会社日本・米国・欧州他にて成立済
NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2011/057105
(特許第5027956号)
当社・藤本製薬株式会社日本・米国・欧州他にて成立済
NGFに対するアプタマー及びその用途PCT/JP2012/75252
(特許第6118724号)
当社・藤本製薬株式会社日本・米国・欧州他にて成立済
RBM-007FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2015/058992当社日本・米国・欧州・中国・香港(中国経由)・ロシア・南アフリカにて成立済
アプタマー製剤PCT/JP2019/025766当社-
THERAPEUTIC AGENT FOR SUBRETINAL HYPERREFLECTIVE MATERIAL OR RETINAL DISEASE WITH SUBRETINAL HYPERREFLECTIVE MATERIAL (FGF2に結合するアプタマー又はその塩基を含む、網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤)Provisional Application in US Application Number: 62970842当社-
RBM-006オートタキシンに結合しオートタキシンの生理活性を阻害するアプタマー及びその利用PCT/JP2015/062561当社-
RBM-010ADAMTS5に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2018/
041746
当社-
RBM-001骨形成や骨代謝の異常に関連する疾患の治療薬PCT/JP2020/020294当社-
RBM-011IL-21に対するアプタマー及びその使用特願2020-104831当社-


<ライセンス・アウト品目に関する主要な特許>
対象パイプライン発明の名称出願または特許番号保有者登録状況
RBM-004NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2009/066457
(特許第5602020号)
当社・藤本製薬株式会社日本・米国・欧州他にて成立済
NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2011/057105
(特許第5027956号)
当社・藤本製薬株式会社日本・米国・欧州他にて成立済
NGFに対するアプタマー及びその用途PCT/JP2012/75252
(特許第6118724号)
当社・藤本製薬株式会社日本・米国・欧州他にて成立済
RBM-007FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2015/058992
当社日本・米国・欧州・中国・香港(中国経由)・ロシア・南アフリカにて成立済
アプタマー製剤PCT/JP2019/025766当社-
THERAPEUTIC AGENT FOR SUBRETINAL HYPERREFLECTIVE MATERIAL OR RETINAL DISEASE WITH SUBRETINAL HYPERREFLECTIVE MATERIAL (FGF2に結合するアプタマー又はその塩基を含む、網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤)Provisional Application in US Application Number: 62970842
当社-

<その他プロジェクトに関する主要な特許>
対象パイプライン発明の名称出願または特許番号保有者登録状況
RBM-101免疫グロブリンGに結合する核酸とその利用法PCT/JP2006/313811
(特許第4910195号)
当社日本、米国にて成立済

(8)創薬体制
①アカデミアでの研究成果の取り込みと連携及び共同研究
当社は、発足の経緯から、東京大学医科学研究所で培ってきたRNA科学やアプタマーに関する成果を実用化するため、トランスレーショナル・リサーチを継続的に実施してきました。
東京大学との共同研究は現在も継続し、同医科学研究所内に「RNA医科学」社会連携研究部門を設置して、同研究所内の動物試験施設や、その他の高度試験装置を使用できる恵まれた環境を維持してきました。これにより技術、信頼性の観点から、高レベルの研究体制を整備しております。
当社は、東京大学以外にも、大阪大学、順天堂大学、大阪医科大学等、あるいはチェコ共和国のMasaryk大学のアカデミアとも共同研究を実施し、疾患に関連するタンパク質の学術的な裏付けを得ると同時に、各種動物試験の実施、アプタマーの分析等における連携を図っております。

②的確な研究開発マネジメント
当社では、新薬開発ステージに応じた試験研究の内容、当該試験結果のクライテリアの設定、知的財産戦略等について、新薬開発のノウハウを熟知したスタッフによる定期的なレビューなどの研究開発マネジメントを実施しております。

③人的ネットワーク
アプタマーを含む核酸医薬の研究開発は日進月歩の状況にあり、世界的に競争が加速しています。当社は核酸科学やアプタマーに関する研究者・研究機関との世界的規模の人的ネットワークを通じて、最新の研究動向の把握や国内外の臨床医とのネットワーク構築にも努めております。

④アプタマー創製のスペシャリスト
当社では、社員の約7割が、化学、分子生物学、細胞生物学、工学、薬学、医学等の分野での専門家(研究員)であり、研究員の約半数は博士号の保持者です。これらの研究員は、アプタマー医薬に特化した研究開発に従事しており、この分野では強力な布陣を敷いております。
さらに、大手製薬企業で研究開発、臨床開発や知財・ライセンス事業の経験を長く積んだ社員も擁しており、臨床開発やライセンスに連なる基礎・探索研究の方向づけや知財戦略を展開しております。

(9)ESG(環境/社会/企業統治)に関する取り組み
昨今の資本市場では、長期持続的な企業の成長を評価する上で不可欠な観点として、ESG(Environment/環境、Social/社会、Governance/企業統治)といった非財務情報への関心が高まっています。当社は、ESGに関して次のような方針で取り組んでまいります。
①E(環境)
当社は、IT整備によるペーパーレス等の省資源や研究資源の管理、並びに分別廃棄を徹底した厳格な廃棄物管理に注力いたします。また、社外で実施されているリサイクル活動にも積極的に参加するなどの取り組みも合わせて推進してまいります。

②S(社会)
当社は、難病や未だに薬のない病気(Unmet Medical Needs)に対する新薬を開発して、世界の医療と人々の健康に貢献するというミッション実現に向けた事業活動を展開しているため、「Social」は事業活動そのものと考えております。その中で、特に、現在世界的なパンデミックとなっている新型コロナウイルス(COVID-19)感染症に対するアプタマー治療薬の開発は、アプタマーの卓越した優位性を発揮すべき当社の使命であると考えており、1日も早く候補アプタマーの創製を実現するために努力してまいります。
また、主に東京大学の学部生で構成されるBIOMOD Team Tokyoを支援し、次世代の研究者育成に関しても貢献をしております。

③G(企業統治)
・コーポレート・ガバナンスの強化
当社は、アプタマー創薬企業としてアプタマーを素材とする新薬を次々と創製し、継続的な成長と企業価値の最大化を図り、医薬品開発を通して社会に貢献できる企業を目指しております。このような企業として社会的責任を果たしていくために、今般社外取締役を1名増員し3名体制にしている他、コーポレートガバナンス・コードへの対応も継続して進めてまいりましたが、今後もコーポレート・ガバナンス体制の強化により経営の健全性や透明性の向上を継続的に図っていくことは、最も重要な課題の一つであると認識し、取り組んでまいります。
・組織体制の整備と人材の育成・登用
当社は、上記の課題に対応し、当社事業の継続的な発展を実現するためには、それに対応する組織体制の整備と、人材の育成・登用を図ることが重要と考えており、必要に応じて組織体制の強化を図ってまいりました。その一環として、2021年5月1日付で、研究開発本部内に治験薬の合成や管理を専門とする「CMC開発部」を新設し、管理本部内の「管理部」と「経営企画部」を新たに「財務経理部」と「人事総務部」に改組して、機動的な組織体制を整えました。今後も事業構造や事業展開等を勘案したうえで必要な人材を育成し必要なポジションに登用する他、豊富な経験を有する人材の採用、外部ノウハウの活用などにも積極的に取り組んでまいります。

(10)参考資料(技術紹介)
①アプタマー医薬について
核酸であるRNAは、生物の体内では、DNA上の遺伝情報の配列のコピーとして、タンパク質の合成の鋳型として使用されます。しかしRNAは、そうした遺伝情報のコピーとしての役割だけではなく、「様々な立体構造を形成する」という重要な特性を有しています(RNAの造形力※17)。この造形力を利用して、病気の要因となるタンパク質に結合してその働きを阻害あるいは調節できるRNA分子(アプタマー)を創製し、医薬品として開発したものが「アプタマー医薬」です。標的にフィットするという意味のラテン語の「aptus」が由来となり「アプタマー」と呼ばれております。
アプタマー医薬は核酸を成分とすることから核酸医薬の一種になります。しかし、細胞内に入らなければ効果を発揮しない他の核酸医薬とは異なり、細胞内に導入する必要がないので非常に効率的です。アプタマー医薬としてこれまでに上市された製品は、2004年12
<形状捕捉図>
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月に米国食品医薬品局(米国FDA)が承認した「マクジェンⓇ」(加齢黄斑変性症に対する治療薬)のみで、アプタマー医薬の市場は未開拓の領域といえます。

②「RiboARTシステム」
当社の「RiboARTシステム」は、RNAの生化学的性質の把握、特に潜在的なRNAの造形力の掘り起こし、アプタマーの構想・デザイン、アプタマーの創製から医薬候補アプタマーの仕上げまでをカバーする当社独自のアプタマー創薬の技術プラットフォームです。「RiboARTシステム」は広汎な分野に応用可能な技術であるため、特定の疾患や領域に特化されないアプタマーの創製を行っております。
「RiboARTシステム」においてコアとなる技術は、1)目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するポテンシーの高いアプタマーを取得する技術(SELEX法運用技術)と、2)取得したアプタマーを臨床開発品として最適化する技術です。このコア技術が、意図した薬効を示すポテンシーのアプタマーを取得・創製するうえで大きな効果を発揮します。
本システムでは、取得したアプタマーを新薬候補品となり得るように、加工プロセスによって、標的への結合力を103~104倍に増強するとともに、この技術を標準化しており、これが当社の技術的な強みと認識しております。
当社は、他の会社に先んじてSELEX法を利用した研究を開始したことによる現在の技術的優位性に安住することなく、5年先、10年先の技術動向を見据え、新たなSELEX法や、抗体で難しいとされる受容体に直接作用するアゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)、さらに細胞内に他の医薬を運搬するためのDDSに利用可能なアプタマー等の実現を目指しております。

<RiboARTシステムの概念図>
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選抜:目標とする標的タンパク質に結合するアプタマーをSELEX法により選抜
分析:選抜したアプタマーの標的タンパク質への結合特性を分析
加工:アプタマーを工業的、経済的に利用できるよう短鎖化したり、品質や薬効向上のために化学修飾を実施
試験:細胞試験や動物試験によりアプタマーの薬理効果を評価
評価:動物を用いてアプタマーの毒性を評価

(ⅰ)アプタマーの取得技術(SELEX法運用技術)
アプタマー創薬のコアとなる技術の一つは、目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するアプタマーを取得するSELEX法に関する技術です。この方法は日欧では2011年6月まで、米国では2014年9月まで特許で守られ、権利者(アルケミックス社)からライセンスを取得しない限り、SELEX法を実施して自由にアプタマーを取得することはできませんでした。
当社は、この特許が国内で有効であった2006年10月より、権利者から実施ライセンスを受け、様々なSELEX法を駆使してアプタマーを取得する経験を積んでまいりました。
日米欧での上記特許失効後は、誰でもアプタマーの取得にSELEX法を実施することが可能となりました。しかし、目標とするタンパク質に結合し、意図した薬効を示すポテンシーのあるアプタマーを取得するには、標的タンパク質の特性分析、最適な核酸プールの構築に始まり、様々な条件下でのSELEX法の実施経験やノウハウが必要となります。当社の「RiboARTシステム」はこれらを集大成した創薬技術です。
SELEX法とはRNAの造形力を利用して、目的とするアプタマーを探し出すための技術で、様々なタンパク質を標的に使用できる汎用性が特徴です。具体的には、様々なタイプのRNA分子を標的のタンパク質と何度も結合→解離→増幅→再結合を繰り返すことで、より強く結合するRNA分子のみを“進化”させる技術です。この方法は、以下に示す魚釣りに似ています。

a)4種類の塩基(A・U・G・C)がランダムに配列されたRNA(様々なタイプの魚)の入ったプール(釣り堀)に標的となるタンパク質を「餌」にして、結合する(食いつく)特定のRNA(数十万種の魚)を釣り上げます。
b)釣ったRNA(魚)からタンパク質(餌)を外し、増幅して(養殖して数を増やす)、再度プールの中に放し、同じタンパク質(餌)で釣りを繰り返します。早く食いついた数十から数十万種のRNA(魚)を増幅(養殖)し、再度、釣りを行います。
c)このサイクルを10数回行うことによって、標的タンパク質に強く特異的に結合するアプタマー(最も早く餌に食いつく魚)を数種類選択することができます(右図参照)。
<SELEX法のイメージ>

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SELEX法を利用したアプタマーの創製(取得)には、最初にプールに放つ魚群の選定(核酸ライブラリーの構築)や釣り方(試験方法等)について、長年の経験・実績によるところが多く、当社はSELEX法に関して、世界でも有数の高度かつ広汎な技術を有しております。特に、核酸ライブラリーを作る際に、多様な修飾が施された修飾塩基を、4種類あるいはその一部に使用して、ライブラリーの多様性を拡充することが重要かつ効果的です。
また、近年、核酸配列の分析技術(シークエンス解析法)が格段に進歩した結果、次世代型のシークエンス装置を使えば、短時間に少量のサンプルから、百万程度の配列を読むことが可能です。当社は、この次世代型シークエンス装置とコンピューター処理を用いて、数百万の配列情報からアプタマー候補を抽出するHT-SELEX(high-throughput SELEX)法を開発し、運用しております。

(ⅱ)アプタマーの最適化技術
アプタマーの最適化技術は、in vitro や in vivo ※15試験でのスクリーニングから、より効果が高い(標的タンパク質に強く結合し、そのタンパク質の生理作用を高度に阻害する)アプタマーを創製し、アプタマーの改良技術を駆使して、臨床開発品として完成させるものです。
これには、アプタマーに特化したスクリーニング手法だけでなく、取得したアプタマーの特質と用途に応じた個別の最適化(短鎖化、化学修飾、doped SELEX(部分的に配列をランダム化して行うSELEX)等)技術が必要で、当社の最大の強みは、この分野での豊富な知識と経験並びに技能が蓄積していることであります。
また、的確な最適化には、標的タンパク質の特性(分子量、立体構造、電気化学的性質、類縁タンパク質(サブタイプ)の有無等)に応じた最適化のデザイン力が必須です。当社では、このデザイン力に関しても研究実績を蓄積してまいりました。これに加えて、アプタマーと標的タンパク質の複合体での立体構造を基にしてより強力なアプタマーのデザインも行うなど、アプタマーの最適化技術に関し常に技術力の向上を図っております。
このような、短鎖化や化学修飾等による最適化作業を、in vitro や in vivo 試験で効果を確認しつつ繰り返し、より優れた臨床開発品へとアプタマーを磨き上げていきます。

(ⅲ)アプタマーの最適化(改変・改良等)の問題点
核酸を成分とするアプタマーは体内に投与されると生体内の核酸分解酵素により速やかに分解されます。そのため、薬効を得るために体内での作用時間を延ばす必要があり、様々な改良を加えて酵素耐性の向上を図り、また、体外への排出の抑制を図ります。このアプタマーを医薬品として最適な化合物に仕上げる技術を欠くと、開発の中断や終了を余儀なくされます。アプタマーは、最適化を図っても抗体のように1~2ケ月間も作用させることは困難で、基本的には急性期、あるいは短期間を挟む間欠投与の適した疾患、あるいは治療法が皆無の疾患が、その本領を最も発揮できる対象だといえます。このため、同一のタンパク質を標的とする抗体と競合する場合、アプタマーは抗体が適していない疾患や投与方法をデザインすることが肝要です。

(ⅳ)アプタマーの製造法、品質規格の設定、品質管理等のノウハウ
核酸医薬、特にアプタマー医薬は、これまで「マクジェンⓇ」が承認、販売されていますが、アプタマー医薬自体の歴史が比較的浅く、薬事規制面でも、原薬アプタマーや完成品の品質規格に関する規制内容は標準化されていません。
特にCMC(Chemistry, Manufacturing and Control:原薬及び治験薬の製造管理)の分野では、個々のアプタマーごとに薬事承認や臨床試験の開始までに必要な試験やその方法、分析方法等を企画し、場合によっては薬事当局との協議が必要になります。当社は、そのために必要な、以下の分野の知識、経験も有しております。
・アプタマーを医薬品化するために不可欠な製造方法、品質規格の設定、品質管理
・核酸やアプタマーのような高分子化合物の分析、核酸の塩基配列の解析法

(ⅴ)アプタマーの安全性・毒性の評価・検討に関するノウハウ
アプタマーを動物に投与した時の毒性は、核酸が本来持っている毒性とターゲットタンパク質を阻害したことによる毒性に分けられます。核酸が本来持っている毒性の代表例は、大量に投与した場合に、血液凝固の阻害が起こることです。当社はこのような核酸特有の毒性を考慮しながらアプタマー作りを行っており、以下の経験を有しております。
・アプタマーの血中や臓器中での濃度測定
・ラットを用いた毒性試験
・サルを用いた毒性試験

③当社の新薬開発プロセス
新薬の研究開発は、下記の図に示すように、製品の上市までに、10数年の長い年月と数百億円もの多額の資金を要します。
この新薬の研究開発は、通常、臨床試験前の段階と臨床試験に二分され、さらに臨床試験前の段階は、大きく以下に分けられます。
1)新薬候補と考えられる化合物を考案、創製し、その中から様々な手法を用いて適切な化合物をスクリーニ
ングする基礎・探索研究の段階
2)選定された化合物について、臨床試験に進むために必須の試験を行う非臨床試験の段階

当社では、新薬開発プロセスの中の(1)基礎・探索研究、及び(2)非臨床試験の段階において、「RiboARTシステム」を運用しアプタマー医薬の開発を行っています。標的タンパク質の種類や特性、適応疾患などによって差は生じるものの、「RiboARTシステム」の活用により、従来なら5~8年かかる基礎・探索研究及び非臨床試験の期間(1年前後のGLP試験※18の期間を含む)の内、標的タンパク質の決定からGLP試験を開始するための予備毒性試験※19ステージまでを、約3~4年で実施可能(当社実績)であると考えております。

<新薬開発プロセス>
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(11)参考資料(用語解説)
※1 : 臨床試験新薬についての製造販売承認を取得するには、ヒトでの有効性及び安全性を確認する臨床試験が不可欠です。この場合、通常、以下の3段階があります。第一段階は、少数の健常人を対象として、動物実験等により安全性の確認を終えた化合物について、その安全性や体内での動態等を確認する試験であり、第1相臨床試験(Phase 1試験)と呼ばれています。
第一段階をクリアすると、次の段階は少数の患者(被験者)を対象として、薬効と安全性を確認する第2相臨床試験(Phase 2試験)に入ります。この試験のステージは、通常、2ステップがとられ、最初のステップは、少数の被験者について主に薬効を確認する段階です。この試験はPhase 2a試験と呼ばれます。さらに被験者数を増やし、有効性と安全性のバランスを取るために最適な用量を確認するための複数の用量を設定して行うPhase 2b試験があります。
最後の段階は、多くの被験者を対象として行う第3相臨床試験(Phase 3試験)です。
なお、臨床試験は、承認取得の前だけでなく、承認の取得後も当局から承認の条件として実施が求められる場合があります。この時の試験は市販後臨床試験と呼ばれています。
※2 : POC
POC(Proof of Concept)とは、新薬の開発段階において、ある化合物がヒトでの臨床試験(通常は少数の患者を対象としたPhase 2a試験)において意図した薬効と安全性の基準をクリアすることをいいます。
※3 : 非臨床試験臨床試験開始前に行われる試験を非臨床試験と言い、例えば予備毒性試験やGLP試験が含まれます。
※4 : ライセンス・
アウト
特許や開発中の製品に関する権利を他の会社に供与したり、譲渡したりすることを意味し、「導出」ともいいます。供与する権利の内容としては特許の実施権や使用権、さらにかかる特許によって保護されている製品の開発、及び製造・販売する権利などがあります。
※5 : マイルストーン収入医薬品の開発は、非臨床試験→第1相臨床試験(Phase 1)→第2相臨床試験a(Phase 2a)→第2相臨床試験b(Phase 2b)→第3相臨床試験(Phase 3)→申請→承認→発売というステップを踏んで進行します。
開発途上の医薬品のライセンスにおいては、この開発の節目を「マイルストーン」といい、それに到達したとき、あるいはその段階に入るときにライセンスの対価の一部がライセンサーに対し支払われる取引が普及しています。これによる収入を、「マイルストーン収入」といい、開発ステージが進むにつれて、商品化への確率が高まるため、マイルストーンの収入が増加するのが一般的です。
※6 : ノウハウ、営業秘密ノウハウ(Know-How)とは「単独でまたは結合して、工業目的に役立つある種の技術を完成し、またはそれを実際に応用するために必要な秘密の技術的知識と経験、またはそれらの集積」(国際商業会議所の定義)をいい、営業秘密とは①秘密に管理されていること、②有用な情報であること、③公然と知られていないこと、の3要件を満たす技術上、営業上の情報(不正競争防止法第2条第6項の定義に基づく)のことです。
※7 : 抗体、抗体医薬抗体とは、体内で特定の異物(抗原)に結合してその物質を体内から排除するように働くタンパク質をいいます。この排除システムを抗原抗体反応といい、我々の体内に自然に備わっている防御システムです。
抗体医薬とはこの仕組を医薬品として応用するもので、具体的には、疾患の原因となっているサイトカインなどのタンパク質を抗原として認識する抗体を産生する細胞(主に動物の)を造り出し、その後、この細胞を培養して該当する抗体を取り出し、精製加工します。但し、ヒト以外の動物、例えばマウスの細胞が産生する抗体(マウス抗体)をそのままヒトに使用できない場合があるため、動物からとれた抗体をヒト型に組み替える技術が発達しています。
現在、臨床開発されている抗体医薬の多くは、このヒト化抗体、若しくはヒト抗体です。さらに、複数の抗原を狙ったものや持続時間の長期化のためにPEGと結合させたコンジュゲート抗体なども開発の俎上にのっています。
なお、抗体類似の構造を持ち作用・機能面においても抗体と類似するFc融合タンパク質は、広い意味で抗体医薬の一種に含むこともあります。
この抗体医薬は、難治疾患に対する確かな効果と安全性、高薬価、さらに技術開発があいまって市場が急伸しており、近年、世界的な開発競争が激化しています。
※8 : DDS薬剤の副作用の原因のひとつに、薬剤が標的臓器以外に作用することがあげられます。DDS(Drug Delivery System)とは、この問題を解決するために、薬剤が標的臓器に、適切な濃度で到達、作用できるように、剤形を工夫したシステムをいいます。
※9 : トランスレー
ショナル・リサーチ
大学や研究機関による基礎的な医学・薬学研究の成果を疾患の治療や新薬の開発に応用するための研究をいいます。
生命科学やバイオテクノロジーの飛躍的な発展に伴い、世界的に大学での研究成果を早期に実現化に向ける動きが加速しています。薬の場合、例えば新薬の候補となる物質が大学の研究室で発見されたとしても、それをヒトでの臨床試験に繋げるには化合物の最適化(より効果があり、安全性の高いモノに改良すること)、様々な動物実験、各種試験用のサンプルの製造等、多くの課題、ハードルがあります。この基礎から臨床試験に至る一連の橋渡しのための研究がトランスレーショナル・リサーチです。

※10 : 核酸医薬1970年代以降、ヒトの遺伝子の研究が進展し、核酸が医薬品になるかもしれないという期待は1980年代に生まれました。しかし、当時は核酸、特にRNAを医薬に応用するための基礎的な技術が整備されておらず、しかもRNAという核酸の特性や立体構造等の学術的な理解も浅かったために、長期にわたる膨大な資金や人材の投入とは裏腹に核酸医薬の開発は実を結びませんでした。
しかし、その苦い教訓の中でも、RNAの加工技術の開発という地味な仕事がアカデミアや少数のベンチャー企業で継続されました。その結果、1998年に世界初となるアンチセンス医薬(VitraveneⓇ[一般名 ホミビルセン],エイズ患者のサイトメガロウイルス性網膜炎用の局所投与剤)が承認され、その後、2004年にアプタマー医薬であるマクジェンⓇ、2013年に2番目となるアンチセンス医薬(KynamroⓇ[一般名 ミポメルセン])が家族性高脂血症薬として承認されました。2016年にはデュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象としたEXONDYS51TM[一般名 エテプリルセン]、脊椎性筋萎縮症を対象としたスピンラザⓇ[一般名 ヌシネルセン]が相次いで承認され、さらに、2018年には家族性トランスサイレチン (TTR) アミロイドーシスを対象とした世界初となるsiRNA医薬(オンパットロⓇ [一般名 パチシラン])が承認され、アンチセンスやsiRNAを用いた核酸医薬品の開発が活発に進められています。
現在、研究開発中の核酸医薬には下記の表に示すものがあり、その中で主要な核酸医薬品の作用機序について下記の図に示しています。
分類基本構造標的作用機序
アプタマー一本鎖RNA/DNAタンパク質タンパク質に結合して生理作用を阻害
アンチセンス一本鎖DNAmRNAmRNAに結合して翻訳を阻害
デコイ核酸二本鎖DNA転写因子転写因子をトラップして転写を阻害
リボザイム一本鎖RNAmRNA酵素として働きmRNAを切断し、発現抑制
siRNA二本鎖RNAmRNAmRNAに結合しmRNAの不安定化による発現抑制
miRNA一本鎖RNAmRNAmRNAに結合しmRNAの不安定化や翻訳阻害による発現抑制
antimiRNA一本鎖RNA/DNAmiRNAmiRNAに結合してその活性を阻害
mRNA一本鎖RNAリボゾーム
(鋳型作用)
タンパク質合成の鋳型として働き、目的とするタンパク質を合成
エキソンスキッピング一本鎖RNA/DNAmRNA前駆体遺伝子異常部位をスキップするようにスプライシングを調整
CpGオリゴ一本鎖DNATLR自然免疫の活性化
<主要な核酸医薬品の作用機序>
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※11 : 化学修飾品質や薬効向上のために、化合物の一部の分子や原子を他の分子や原子に置換したり、新たな分子や原子を結合させることをいいます。
※12 : 分子標的薬生体内で疾患に関連する遺伝子やそれが係わるタンパク質等(サイトカイン、成長因子等)を標的としてその活動を阻害したり活性化することを狙った医薬品をいいます。抗体医薬もアプタマー医薬も分子標的薬の一種といえます。
※13 : RNA遺伝情報は生命の設計図ですが、アデニン(A)チミン(T)グアニン(G)シトシン(C)という4種類の塩基の配列として、DNA(デオキシリボ核酸)という(2重螺旋構造の)核酸の中にコードされています。
ヒトならば30億塩基の配列がヒトを作り上げる全情報です。この塩基の並びはタンパク質のアミノ酸の配列を指定して、生命活動を司る様々なタンパク質を産生します。その時、DNAの配列情報は、一旦、アデニン(A)チミン(T)の代わりのウラシル(U)グアニン(G)シトシン(C)の塩基配列に置き換えて、RNA(リボ核酸)という核酸にコピーされ(この過程を「転写」といいます)、その遺伝情報のコピーを使ってタンパク質を合成します(この過程を「翻訳」といいます)。
そのため、分子生物学の黎明期から、RNAは単なる遺伝情報のコピーに過ぎないという思い込みが、世界的にも支配的でした。しかし、10数年前から、この考えは誤りであることが様々な研究によって明らかになってきました。特に立体構造を作って働く機能性RNAの生体内での役割が注目を集めています。
※14 : スクリーニン
新薬の開発過程において、多数の化合物の中から目的とする化合物(薬効を示し安全性が高いもの)を選び出す作業のことです。
※15 : in vitro 、in
vivo
in vitro (イン・ビトロ)とは、技術用語で「試験管内で」という意味です。In vitro 試験は、試験管内で、ヒトや動物のタンパク質、細胞や組織を用いて、薬物の効果や作用等を調べる試験をいいます。当社では、得られたアプタマーのタンパク質との相互作用の確認試験や細胞・組織を用いた薬効確認試験がこれに該当します。
in vivo (イン・ビボ)とは、「生体内で」という意味です。In vivo 試験とは、マウスやラット等の実験動物を用いて、生体内での薬物の作用や効果、安全性・毒性等を調べる試験をいいます。当社では、得られたアプタマーの薬効確認試験や安全性・毒性の評価試験がこれに該当します。
※16 : 最適化医薬品の開発過程において、in vitro 試験等によって薬効のある化合物が得られたとしても、より効果が優れ、安全性の高い化合物を得るための様々な工夫がなされます。このプロセスは最適化と呼ばれます。アプタマー医薬に関しては、長大な核酸配列の中から効果や安全性に関係のない部分をカットする短鎖化、核酸分解酵素の作用を阻止するための化学修飾、腎臓からの早期の排出を抑えるための化合物(ポリエチレングルコールなど)との結合などがその例です。
※17 : RNAの造形力当社は、アプタマーとIgGとの結合体の結晶構造をX線解析法によって明らかにしてNucleic Acids Res誌に発表いたしました(2010年、図参照)。
その結果、既存のアプタマーではRNAのリン酸の負電荷と、標的タンパク質の正電荷のアミノ酸領域とが電気的な相互作用によって結合するものしか知られていませんでしたが(図の右の事例)、IgGアプタマーはこれまでの常識を覆して、アプタマーが標的にフィットするしなやかな形状を作って、電気的な相互作用を使わずに、水素結合やファンデルワールス力のような多様な結合を利用して強く標的に結合することが明らかにされました。
つまり、RNAには、これまで予想もされなかった「しなやかな造形力」が備わっていることの証しです。このような基礎的な研究は、応用という点からも重要です。特に、医薬品の標的となるタンパク質は、必ずしもRNAと結合しやすい正電荷のアミノ酸が表面に多いとは限らないため、これらの基礎研究の成果は、非常に多くのタンパク質がRNAアプタマーの創薬ターゲットとなりうるということを示唆するものです。
また標的タンパクの捕捉方法について抗体医薬と比較した場合、アプタマーの特徴は、標的とするタンパク質の形状にフィットする立体構造を形成してその活性を調節する「形状捕捉」にあります。抗体医薬がタンパク質を構成する多数のアミノ酸の中から6~10個のアミノ酸の配列(エピトープと呼ばれる)を認識して標的タンパク質に結合するのに対して、アプタマーの標的タンパク質を捉える方法は大きく異なるといえます。
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<アプタマーとIgG結合体の結晶構造>

※18 : GLP試験GLP(Good Laboratory Practice)とは、医薬品の安全性に関する非臨床試験(急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、催奇形性、その他の毒性試験)の実施に関する試験の質を担保する基準のことをいいます。この基準は「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」で定められています。なお、日本のGLPと同様な規制は欧米等でも実施されています。このGLPに準拠して行う試験をGLP試験といいます。
※19 : 予備毒性試験
GLP試験に入る前に、的確なGLP試験を実施するためのデータ入手を目的として行う試験です。本試験で薬剤の毒性の概略を把握し、GLP試験での投与用量の設定根拠の情報を得ることができます。

沿革関係会社の状況


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