有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100YF0X (EDINETへの外部リンク)
株式会社リボミック 事業の内容 (2026年3月期)
当社は、抗体に継ぐ次世代新薬として期待されているアプタマー(核酸医薬の一種)に特化して医薬品の研究開発を行うバイオベンチャーです。当社は、アプタマー創製に関する総合的な技術や知識、経験、ノウハウ等からなる創薬プラットフォームである当社独自の「RiboART SystemⓇ」を活用して、革新的なアプタマー医薬の研究開発(「アプタマー創薬」)を行っております。
当社の企業理念は「Unmet Medical Needs(未だに満足すべき治療法のない疾患領域の医療ニーズ)に応えること」であり、眼科疾患と希少疾患を重点領域と定め当事業年度においても様々な取り組みを進めてまいりました。
その具体的な進捗を下記に要約いたします。
(1)当事業年度の主要なトピックス
創薬事業では、当社が自社で創製した医薬品の研究開発を行い、製薬企業等へのライセンス・アウトを通じた収
益獲得を目指しております。現在、umedaptanib pegolの開発が最も進んでおり、当社創薬事業の中核の医薬品と
しての開発を進めております。
①「umedaptanib pegol」(抗FGF2アプタマー、RBM-007の国際一般名)による臨床開発の狙い
当社では、自社で創製したumedaptanib pegol(FGF2に結合し、その作用を阻害するアプタマー)を、自社での臨床開発のテーマに選び、「軟骨無形成症(Achondroplasia、ACH)」と「滲出型加齢黄斑変性(Wet Age-related Macular Degeneration、wet AMD)」の治療薬としての開発を進めております。
②開発状況、及び既存治療法との比較
(ⅰ)軟骨無形成症(ACH)
・臨床試験の進捗
ACHに関するプロジェクトは、2021年度から3年間、国立研究開発法人日本医療研究開発機構()の希少疾病用医薬品指定前支援事業として助成を受け、ACHの小児患者(5~14歳)における、身長の伸びを含む臨床的基礎データの取得と第2相臨床試験の被験者選定を目的とした第2相観察試験、及びumedaptanib pegolを26週投与した場合の有効性と安全性を探索的に評価する第2相臨床試験、及びumedaptanib pegolを長期投与した場合の有効性と安全性を評価する第2相長期投与試験の3つの臨床試験を実施いたしました。
第2相観察試験については、2022年11月に患者の登録を開始し、東京、岡山及び関西地区の8施設で13名の患者を組み入れ、2024年12月に最終症例の観察期間が完了しました。さらに、第2相臨床試験については、2023年4月に投与を開始、コホート1(低用量群、6名、1回/週の0.3mg/kg皮下投与、26週)とコホート2(高用量群、6名、1回/2週の0.6mg/kg皮下投与、26週)の2群に分けて実施し、2025年9月に投与が完了いたしました。
また、2026年3月、第2相臨床試験の統計解析が完了し、その結果の概要は下記の通り。
・試験結果の概要
● 主要評価項目である年間身長伸展速度について、途中休薬のあった1名を除き、コホート1の投与完了5名及びコホート2の投与完了6名の計11名を解析対象として評価した結果、投与開始前(観察期間)と比較した投与後の年間身長伸展速度の変化量(ΔAHV)の平均は+1.4cm/年となり、探索的解析として統計学的有意差が認められた(p=0.04)
● コホート1では5名中3名で、コホート2では6名中5名で治療後のΔAHVの変化量が投与開始前のΔAHVよりも増加した。うち4名のΔAHVは+2.0、+3.3、+4,6、+5.0cm/年と顕著な増加を示した。これらΔAHVの増加は、同一条件での長期投与試験においても継続している。
● ボックスゾゴⓇ投与歴のある被験者においてもΔAHVの改善が観察された(3名中2名)。
● 副次評価項目として身長Zスコア、血清中骨代謝マーカー、体格検査(頭囲、腹囲、上腕長、前腕長、大腿長、下腿長及びアームスパン)、及び身体の体型バランスを探索的に評価した結果、本試験の範囲では有効性を示唆する一貫した傾向は観察されなかった。また、骨年齢、大腿骨成長板の形成状態、臨床所見に基づく肘関節及び股関節の所見、及びタナー発達分類においては、次試験に進む上での障害となる事象は観察されなかった。
● 本薬剤との関連性有と判定された有害事象として、注射部位の疼痛(1例)、注射部位の腫脹(1例)、頭痛(1例)、関節痛(1例)、及び知覚過敏(1例)が発生したが、いずれも短期間かつ軽微であり、これら以外で治験中止に至る重篤な有害事象は観察されなかった。
以上の結果から、umedaptanib pegolの第2相臨床試験において、有効性が確認されるとともに、安全性についても開発継続の観点から重要な治験が得られました。これらは、ACH治療薬としての概念実証(Proof of ConceptPOC)を支持するもので、詳細解析の結果は、医学専門誌に論文掲載する予定です。
なお、第2相臨床試験を完了した12名のうち11名は、同一投与条件の第2相長期投与試験に移行しており、現在は8名に対して継続して被験薬の有効性及び安全性を評価しており、これまでにumedaptanib pegolを投与したACH小児患者において、安全性に関する懸念は発生しておりません。
また、コホート1での結果に基づいて、厚生労働省に対して、希少疾病用医薬品指定(ODD)申請を行い、2025年5月に指定承認されました。これに伴い、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBN)に対して、助成金の交付申請を行い、今年度助成される金額は39,160千円となりました。
2026年3月、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)に対し、第3相臨床試験(2~14歳の小児患者16名、1回/週の1mg/kg皮下投与、単剤試験、52週)の治験申請を提出し、実施許諾を得ました。
現在、第3相臨床試験に向けて施設との契約手続き等を進めております。2026年6月に最初の患者登録を見込んでおります。
・ACHの既存治療法と課題
ACHは四肢短縮による低身長を主な症状とする希少疾患で、厚生労働省から難病指定を受けております。
umedaptanib pegolは疾患モデルマウスを利用した実験で、体長の短縮を約50%回復する効果を示しました。さらに、軟骨細胞への分化誘導が欠損していることが知られているACH患者由来のiPS細胞(人工多能性幹細胞)について、umedaptanib pegol存在下で、その分化誘導が回復することも確認いたしました(非臨床POC獲得)※1。本邦ではこれまで治療薬として成長ホルモンが使用されてきましたが、その効果は十分とは言えず、骨延長術(足の骨を切断して引き離した状態で固定し、骨の形成を促す)といった非常に厳しい治療が幼い子供に施されることもあり、効果の高い新薬が待ち望まれていました。
ようやく、2022年6月にACH治療薬としてBioMarin社のボックスゾゴⓇの製造販売が承認されました。しかし、その効果は十分とは言えず、毎日の投与が必要となっているため、小児のACH患者にとって、もっと効果が強く、皮下注射の間隔が長く取れる新薬の開発が望まれています。
※1:Kimura T, Bosakova M, Nonaka Y, et al.: RNA aptamer restores defective bone growth in FGFR3-related skeletal dysplasia. Sci. Transl. Med., 13, eaba4226 (2021)
(ⅱ)滲出型加齢黄斑変性(wet AMD)
・臨床試験
umedaptanib pegolの複数回投与による臨床POC獲得を目的とした第2相臨床試験(試験略称名:TOFU試験)を米国で実施いたしました(被験者86名)。TOFU試験は、標準治療の抗VEGF治療歴のあるwet AMD患者を対象に、①umedaptanib pegolの硝子体内注射による単剤投与群、②既存の抗VEGF薬であるaflibercept(商品名アイリーアⓇ)とumedaptanib pegolの硝子体内注射による併用投与群、及び③afliberceptの硝子体内注射による単剤投与群の3群間で、umedaptanib pegolの有効性及び安全性をafliberceptと比較評価する、無作為化二重盲検試験でした。
また、TOFU試験の進捗に基づき、長期投与に伴う本薬剤の有効性と安全性、及び瘢痕形成を含む網膜の構造異常に対する効果を評価する目的で、umedaptanib pegolを単剤で投与するオープン試験としてのTOFU試験の延長試験(試験略称名:RAMEN試験)を行いました。RAMEN試験では、TOFU試験を完了した22名の被験者に対して、追加のumedaptanib pegolの硝子体内投与を1ヶ月間隔で計4回行いました。
さらに、治療歴のないwet AMD患者を対象にumedaptanib pegolの単独投与の有効性及び安全性を評価することを目的に、米国で医師主導治験(試験略称名:TEMPURA試験)を実施いたしました(被験者5名)。
これらの結果は、英国王立眼科学会誌Eyeに2報の論文として掲載されました※2,3。
その要約は以下のとおりです。
[論文要点]
・いずれの試験においても、umedaptanib pegolによる安全性に関する問題は発生しなかった。
・治療歴のないwet AMD患者においては、umedaptanib pegolの投与により、劇的な治癒例を含め、視力や網膜厚の 改善が確認された(TEMPURA試験)。
・抗VEGF標準治療歴のあるwet AMD患者においては、umedaptanib pegol単剤投与、及びumedaptanib pegolとafliberceptの併用投与において、aflibercept単剤投与を上回る臨床有効性は観察されなかったものの、umedaptanib pegolの効果はafliberceptに対して非劣勢であり、症状の進行抑制が確認された(TOFU試験)。
・すべての試験を通じ、umedaptanib pegolはすでに形成された瘢痕(線維化)を除去する作用はなかったものの、瘢痕形成を抑制する効果が確認された。
[今後の開発方針]
現在標準治療となっている抗VEGF薬には、瘢痕化抑制作用がないため、既存療法の大きな Unmet Medical Needsになっています。そのため、今後、umedaptanib pegolを用いた未治療のwet AMD患者に対する臨床試験において瘢痕化抑制効果を証明することができれば、既存療法との重要な差別化ポイントとなり、“first-line”の新薬の実現に近づくものと考えます。そのため、他企業との提携・ファンド等からの資金調達を含めて検討してまいります。
※2:Pereira DS, Akita K, et al: Safety and tolerability of intravitreal umedaptanib pegol (anti-FGF2) for neovascular age-related macular degeneration (nAMD): a phase 1, open label study. Eye, 2024 Apr;38(6):1149-1154.
※3:Pereira DS, Maturi RK, et al.: Clinical proof of concept for anti-FGF2 therapy in exudative age-related macular degeneration (nAMD): phase 2 trials in treatment-naïve and anti-VEGF pretreated patients.Eye, 2024 Apr;38(6):1140-1148.
(ⅲ)眼科領域における適応疾患の拡大
umedaptanib pegolのwet AMD臨床試験におけるPOCを獲得していることから、本剤が他の未だ治療法のない眼科疾患に対して有効であることが動物実験で示されれば、umedaptanib pegolの適応拡大として速やかに臨床試験が可能となります。その観点から、日本大学とumedaptanib pegolのPVR(後述③RBM-006(抗Autotaxin(オートタキシン)アプタマー、増殖性硝子体網膜症(PVR)等の網膜疾患)への適応拡大を目的とした共同研究を実施しておりましたが、臨床病態に近い有効な動物モデルの確立に至る事が出来ず、2025年5月31日にて共同研究を終了しております。
umedaptanib pegolに関しては別途複数の眼科疾患モデルを用いて薬理試験を継続中であり、糖尿病網膜症(DR)モデルを用いた薬理試験において、umedaptanib pegolを投与した際に、眼底出血の発生が有意に抑制されることが確認されました。これはumedaptanib pegolが血管安定化作用を有し、糖尿病網膜症の進行を抑える効果があることを示唆するものであり、糖尿病網膜症の主要な合併症である糖尿病黄斑浮腫に対しても有効性を示す可能性が考えられることから、当社は糖尿病黄斑浮腫への展開も含めて様々な可能性を検討しております。
なお、umedaptanib pegolの糖尿病網膜症に対する用途特許を2025年9月に特許出願しております。
③RBM-006(抗Autotaxin(オートタキシン)アプタマー、増殖性硝子体網膜症(PVR)等の網膜疾患)
RBM-006が対象とする増殖性硝子体網膜症は、網膜剥離や糖尿病網膜症の放置、網膜剥離の手術によって併発する網膜疾患です。多種の細胞が網膜表面や網膜内、硝子体腔内で増殖膜を形成し、当該増殖膜が収縮することによって網膜に皺壁(しゅうへき)形成や牽引性網膜剥離が生じ、重篤な視力障害や失明に至ります。硝子体手術などの治療によっても重篤な視力障害や失明に至る事が多く、また現在のところ有効な医薬品は存在しません。
当社は、日本大学医学部視覚科学分野・長岡泰司教授(現 旭川医科大学教授)との共同研究において、ブタPVRモデルにおける抗オートタキシンアプタマーの効果を検討した結果、当該アプタマーが網膜細胞の増殖を抑制すること、及び当該モデルにおける増殖膜の形成を抑制し網膜剥離を抑制する効果があることが明らかになり、その成果が学術誌International Journal of Molecular Sciencesに掲載されました※4。
Autotaxinは様々な生理機能を有する脂質メディエーターであるLPA(リゾホスファチジン酸)を産生する重要な酵素で、その機能異常は多くの疾患につながることが知られています。中でも、眼科疾患においては、緑内障、滲出型加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、硝子体網膜症等の発症に関与することが示唆されており、当社はアプタマーを用いて、これらの眼科疾患に対する新規治療薬の開発を目指しております。
その取り組みの中で、umedaptanib pegolと同一の糖尿病網膜症(DR)モデルを用いた薬理試験において、眼底出血の発生が有意に抑制されることが確認されました。これはRBM-006が血管安定化作用を有し、糖尿病網膜症の進行を抑える効果があることを強く示唆するものであります。
以上の動物試験から、umedaptanib pegolとRBM-006の2剤において、糖尿病網膜症に対して有効性が示唆されており、今後その開発優先度については、総合的な評価に基づき判断してまいります。
また、RBM-006については、既存の抗オートタキシンアプタマーの活性を凌駕し、かつ鎖長も短い新規抗オートタキシンアプタマーの創製に成功したことから、2026年1月、新規物質特許の出願をしております。
※4:Hanazaki H, Yokota H, et al.: The effect of anti-autotaxin aptamers on the development of proliferative vitreoretinopathy. Int. J. Mol. Sci. 24, 15926 (2023).
④RBM-011(抗IL-21(インターロイキン21)アプタマー、肺動脈性肺高血圧症)
RBM-011が対象とする肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、難病に指定されている病気であり、肺動脈壁が肥厚して血管の狭窄が進行した結果、高血圧をきたして全身への血液や酸素の供給に障害が生じ、最終的には心不全から死に至ることのある重篤な疾患です。
当社は、国立研究開発法人国立循環器病研究センター(国循)との共同研究として、AMEDの支援のもと、抗IL-21アプタマーを用いたPAH治療薬の開発を実施してきました。その結果、抗IL-21アプタマーがPAHモデル動物において、肺動脈壁の肥厚を顕著に抑制することが明らかになり、2020年6月に特許出願をしております。その後、当該特許は、2025年12月に日本において、2026年3月に米国において査定を受けております。
また、原薬合成を終え、毒性試験も完了して、第1相臨床試験が実施可能な準備が完了しており、導出に向け事業開発活動を実施しております。
創薬支援事業では、当社が保有するアプタマー創薬基盤技術を活用し、製薬企業等との共同研究を通じて創薬活動を支援しております。共同研究により得られた研究成果やノウハウを基に、創薬支援技術の高度化及び提供領域の拡大を図るとともに、研究受託収入や契約一時金等の獲得を通じた早期の収益化を目指しております。
①共同研究契約に基づく取り組み
共同研究契約に基づく取り組みとしては、当社の創薬基盤技術を活用し、製薬企業等と共働して医薬品創製に向け研究開発を進めており、現在、3件の共同研究プロジェクトが進行しております。
a)リードファーマ株式会社との共同研究
リードファーマ株式会社は、中枢神経系疾患領域における医薬品研究開発に強みを有する創薬企業です。当社は同社と、中枢神経系疾患を対象とした新規治療薬の創出を目的として、当社の創薬基盤技術を活用した共同研究を実施しております。
本共同研究では、中枢神経系疾患における創薬研究を進める上で重要となる中枢領域への薬剤送達や創薬標的への作用最適化等の課題に対し、当社の創薬基盤技術とリードファーマ株式会社の当該分野における知見・研究実績を組み合わせることで、その解決を図っております。両社の技術的強みを相互に活かしながら研究開発を進めることにより、将来的な医薬品開発につながる研究成果の創出を目指しております。
b)日産化学株式会社との共同研究
日産化学株式会社は、化学分野を基盤としてヘルスケア分野においても研究開発を展開し、核酸創薬に関する独自の技術基盤を有する企業です。当社は同社と、当社が保有する創薬基盤技術を日産化学株式会社の核酸関連技術に適用することにより、新たな創薬基盤の構築を目指す共同研究を実施しております。
本共同研究では、当社創薬基盤技術の有用性評価および核酸医薬分野への応用可能性について検討を進めており、両社がそれぞれ有する技術的強みを組み合わせることで、将来的な医薬品創出につながる基盤技術の確立を目指しております。基礎的な研究段階を中心とした評価・検討を行っておりますが、得られた知見を踏まえ、今後の研究展開の拡張や適応拡大についても検討していく方針です。
c)SK Plasma Co.,Ltd.との共同研究
SK Plasma Co.,Ltd.は、韓国のバイオ医薬品企業であり、血漿分画製剤を中心に医薬品の研究開発、製造および販売を行っている企業です。当社は同社と、当社が保有する創薬基盤技術を活用し、アプタマーを医薬関連成分と組み合わせた新たな創薬アプローチの可能性を検討することを目的とした共同研究を実施しております。
本共同研究では、SK Plasma Co.,Ltd.が研究開発する薬物と当社のアプタマー技術を組み合わせた複合体の創出に取り組み、当該複合体が有する特性や応用可能性について評価を進めております。両社がこれまでに蓄積してきた研究開発に関する知見を活用することで、将来的な医薬品開発につながる研究成果の創出を目指しております。
d)三菱商事ライフサイエンス株式会社との共同研究
三菱商事ライフサイエンス株式会社(旧:ビタミンC60バイオリサーチ株式会社)は、食品原料、健康素材、化粧品原薬などのライフサイエンス事業を展開する三菱商事のグループ会社で、フラーレンを化粧品原料として製造販売する世界で唯一のメーカーです。
本共同研究では、との共同研究開発契約に基づき、化粧品原料候補の創製・開発を目的とした共同研究を実施してきました。
その結果、紫外線やストレスなどが引き金となり過剰分泌されることでシワ形成やたるみを引き起こす原因となる可能性がある、免疫系の重要な細胞である好中球から分泌されるエラスターゼ(タンパク質分解酵素)を阻害するアプタマー(抗好中球エラスターゼアプタマー)の創製・開発に成功しており、日本国特許庁に対して、2025年1月に共同で特許出願をいたしました。このような成果を踏まえ、本共同研究に一つの区切りがついたと考えられ、2026年3月契約を終了しております。なお、先方とは引き続き共同出願特許の取り扱い及び権利活用の方針(第三者へのライセンス許諾等を含む)について、検討を進めております。
②業務委託契約等に基づく取り組み
業務委託契約等に基づく取組としては、当社の創薬基盤技術の有用性評価および応用可能性の検討を目的として、製薬企業等に対する材料提供や技術情報の共有を行っております。これらの取組には、国内製薬企業を含む複数の企業が提携候補先として含まれており、当社技術の評価を通じて、将来的な共同研究契約への発展を見据えた関係構築を進めております。なお、個別の相手先および取組内容の詳細については、機密保持の観点から開示しておりません。
当社は、創薬事業及び創薬支援事業の双方を支える共通基盤として、創薬基盤技術の研究開発に取り組んでおります。これらの基盤技術は、自社創薬パイプラインの創出及び価値向上に資するだけでなく、製薬企業等との共同研究や技術提供を通じた創薬支援事業の展開にも活用されております。当社は、基盤技術の継続的な高度化を図る事で、両事業の競争力強化及び中長期的な価値向上を目指しております。
①DDSアプタマー技術
DDS(Drug Delivery System)とは、薬剤の体内動態や分布を制御することで、有効性を高めるとともに、副作用や投与負担を軽減する技術であり、核酸医薬品をはじめとする次世代モダリティの実用化に不可欠な要素です。特に、薬剤を特定の組織へ選択的に送達する技術の重要性が高まる中、アプタマーは高い結合特異性と化学的安定性を有し、さらに化学合成による高い設計自由度を備えています。これらの特性を活かし、アプタマーを標的組織を認識するセンサーとして用いることで、さまざまな薬剤を狙った臓器へ送達するDDSの創出が期待されます。
(ⅰ)光免疫療法への応用
当社は、2023年9月に慈恵大学と共同研究を開始し、アプタマーの光免疫療法への応用について培養細胞試験で有望な成果を得ました。これを受け、2025年12月には関西医科大学を加えた三社連携体制を構築し、動物試験を含む研究を加速しております。
(ⅱ)siRNA核酸デリバリーへの応用
東京大学及び早稲田大学との共同研究により、デングウイルス膜タンパク質に結合するアプタマーとsiRNAを融合したキメラ核酸を開発いたしました。本分子は複数血清型に対し増殖抑制効果を示し、2024年12月に学術誌へ成果を報告しております。※5
(ⅲ)アプタマー修飾ナノ粒子への応用
当社は、アプタマーの高い標的結合能を活用し、LNP表面に修飾することで送達指向性を付与したDDS技術を開発いたしました。脳などへの核酸送達を可能とする本技術について、2025年6月に特許出願し、学会発表も行っております。
※5:Amano R, Takahashi M, et al.: A chimeric RNA consisting of siRNA and aptamer for inhibiting dengue virus replication. NAR Molecular Medicine. 1(4):ugae025 (2024).
②AIアプタマー技術
当社は、早稲田大学と共同で、バイオインフォマティクス及びAIを活用したアプタマー創薬基盤技術の開発を推進してきました。HT SELEXデータを解析するアプタマー選抜技術「RaptRanker」を開発し※6、さらに深層学習を用いた配列生成技術「RaptGen」により、既存データに含まれない新規高親和性配列の創出を可能としました※7。近年は大規模言語モデルを活用した結合活性予測技術「RaptScore」を確立し、任意配列の評価や最適化を可能としています※8。また、量子計算とAIを融合した技術を活用し、核酸配列最適化を題材とした次世代創薬基盤の確立に取り組んでいます。これらの技術は当社創薬基盤への統合を進めており、研究開発効率の向上に寄与しています。
※6:Ishida R, Adachi T, et al.: RaptRanker: in silico RNA aptamer selection from HT-SELEX experiment based on local sequence and structure information. Nucl. Acids. Res., 48, e82 (2020).
※7:Iwano N, Adachi T, et al.: Generative aptamer discovery using RaptGen. Nat. Comput. Sci., 2, 378–386 (2022).
※8:Kimura-Yamazaki A, Adachi T, Nakamura S, Nakamura Y, Hamada M: RaptScore: a large languagemodel-based algorithm for versatile aptamer evaluation. Nucleic Acids Research, Volume 54, Issue2, 27 January 2026, gkaf1480 (2026).
③製剤化技術開発
当社は、アプタマーとポリエチルオキサゾリン(PEOZ)とのコンジュゲートが優れた体内動態を示し、PEGの代替化合物となることを見出し、2024年4月に特許出願をいたしました。
さらに、味の素株式会社との共同研究契約を2023年10月に締結し、味の素株式会社が有する抗体-薬物複合体製造技術AJICAPⓇを利用して、免疫グロプリンの部分タンパク質であるFc領域に対して核酸アプタマーを共有結合させて、血中半減期の飛躍的な延長に成功し、2025年3月に特許出願をいたしました。
本技術により、核酸アプタマーが抗体医薬と同等の血中滞留性を獲得できれば、アプタマー医薬品の開発が飛躍的に発展するものと考えております。なお、味の素株式会社との共同研究契約は2025年3月31日に終了しております。
(2)当社のビジネスモデルと収益計上の時期
①当社のビジネスモデル
当社の事業は、以下の創薬事業と創薬支援事業の2事業により構成されております。創薬探索から上市までをビジネスとして進めております。
(ⅰ)創薬事業
自社又は大学等研究機関と共同研究で医薬候補となるアプタマーを開発し、その成果を製薬企業にライセンス・アウトし、ライセンス対価(契約締結時に受け取る契約一時金、開発進行に伴うマイルストーン収入、及び製品上市後の売上に応じたロイヤルティー)を得る事業です。
(ⅱ)創薬支援事業
自社が開発した創薬プラットフォーム技術(例えばDDSシステム)を利用して、製薬企業や研究機関等から提示される研究開発課題や標的分子に対して創薬を支援することで、提携先から支払われる研究費あるいはプラットフォーム技術の導出によるライセンス対価を収入とする事業です。
上記二つの事業をバランスよく実施することで、以下の成果あるいは効果が期待できます。
1)収益構造の安定化と成長機会の両立
創薬事業においては、ライセンス契約や開発進展に応じたマイルストーン収入及び販売後のロイヤリティといった中長期的かつ高付加価値な収益の獲得が可能と考えております。一方で、創薬支援事業においては、研究受託や技術提供に基づく安定的な収益を確保する事が可能と考えております。そのため、両事業を併せて展開することで、短期的収益の確保と中長期的な成長機会の創出を両立することで、経営基盤の安定化効果が期待できます。
2)技術基盤の高度化及び競争優位性の強化
創薬支援事業で蓄積される多様なターゲットや用途に関する知見やデータは、創薬事業における研究開発の高度化に資するものと考えております。また、創薬事業で創出したアプタマーや技術は、創薬支援事業における提案力・事業開発能力の向上に繋がると考えております。そのため、当社独自技術の高度化や技術の差別化が期待できます。
3) 研究開発リスクの分散
創薬事業は高い成長性が期待できる一方で、開発期間の長期化や成果の不確実性といったリスクを伴います。一方で、創薬支援事業は比較的リスクが低く、安定的な収益確保によるキャッシュフローの安定化に寄与いたします。両事業をバランスよく運用することで、全体としての事業リスクの分散及び財務基盤の安定化が期待できます。
4) パートナーシップ機会の拡大
創薬支援事業を通じて構築される製薬企業や研究機関との関係は、将来的な共同研究や創薬事業における導出機会に繋がると考えており、事業機会の拡充が期待できます。
②事業活動に伴う収益計上の時期
当社のビジネスモデルにおいて、収益計上できるのは、創薬事業については、ライセンス契約や共同研究契約の締結後であり、創薬支援事業については、早い段階での研究受託収入や契約一時金の獲得を通じた早期の収益が見込めます。以下の図は、その場合の収益計上のタイミングを示しています。
※:上記の図は、一般的なケースとして当社が想定している事業収益計上のタイミングを表すものです。
個別の契約により受取回数等が異なる場合があります。
(3)事業戦略
当社は、アプタマー創薬に関する当社の競争優位性や強みを梃子として、以下の基本ポリシーのもとで、研究開発を推進しております。
①自社創薬におけるパイプラインの一層の拡充と進展を図り、研究成果をいち早く知財化して競争優位性を維持、強化しライセンス・アウトを目指す。
②創薬支援事業を推進させ、早期の収益確保を目指す。
③アプタマー医薬品としての特性を最大限に生かしうる開発品や疾患については、過大な経済的負担を避けつつ、付加価値を高める観点から臨床POC取得のための臨床試験を実施し、収益の最大化を図る。
④アプタマー創薬における当社の「RiboART SystemⓇ」の更なる向上、発展を図るべく、次のアプタマーの創製にチャレンジする。
1)アゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)
2)細胞内への取り込み可能な(DDS作用を有する)アプタマー
3)細胞膜複数回貫通型のタンパク質(GPCR受容体等)と結合するアプタマー
4)次世代シークエンサーとコンピューター科学を利用したアプタマー探索の人工知能技術の開発
5)脳関門通過技術の開発と神経疾患治療への応用
6)ポリエチレングリコール(PEG)の代替となる(体内動態制御技術)アプタマー
7)DDS技術を応用した眼科疾患治療薬の開発
⑤大学や研究機関との緊密な連携を図り、大学や研究機関での基礎研究成果を医薬品開発に応用するトランスレーショナル・リサーチを推進することにより、アカデミアにおける研究成果をいち早くアプタマー創薬に活かす。
(4)医薬品市場におけるアプタマー医薬
①アプタマー医薬を含む核酸医薬の市場
医薬品は、その素材から、1)低分子、2)ワクチン、3)生物製剤、4)核酸、5)細胞、6)遺伝子に分類されますが、この中で最も新しく、技術革新が進展しているのが、生物製剤の中の抗体医薬と、核酸を成分とする核酸医薬、並びに細胞を利用する再生医療や遺伝子治療です。
そのような中、アプタマーを含む核酸医薬は、作用メカニズム及び投与方法が類似していることから、現在巨大な市場を形成している抗体医薬に続く次世代の医薬品として注目されており、2024年の核酸医薬の全世界の市場規模は146億USDとされております。2024年の抗体医薬の全世界の市場規模は2,426億USDとなっており、抗体医薬と比較し、まだまだ小さな市場ですが、抗体医薬との比較優位性から2031年には217億USDに成長すると予測されております。
②世界におけるアプタマー医薬品の臨床開発動向
MacugenⓇは世界初のwet AMD治療薬として承認されましたが、その後VEGFを標的とする抗体や可溶性のデコイ
(おとり)受容体を利用した、さらに有効な医薬(LucentisⓇ、EyleaⓇ、AvastinⓇ等)が開発されて、現在、MacugenⓇはほとんど使用されなくなりました。2004年のMacugenⓇの成功の後、20年間、アプタマー医薬品の開発は停滞しましたが、ようやく最近、補体C5に対するアプタマー(ARC1905: IZERVAYTM)が萎縮型加齢黄斑変性(dryAMD)に有効であることが、第3相試験で証明され、2023年8月米国で承認され、2025年8月日本でも条件付きで承認されました。IZERVAYTMを開発したIVERIC Bio社は、アステラス製薬に総額約8,000億円で買収されております。MacugenⓇやIZERVAYTM、そしてumedaptanib pegolがいずれも眼科疾患に対して奏功したことから、アプタマーは眼科疾患にフィットするモダリティ(治療手段)であることが強く示唆されました。眼は閉鎖系の小さな器官であるため硝子体内投与に必要な薬剤量が少なく、全身への薬剤の暴露が少なく安全性にも優れているため、眼科疾患に対する新薬の開発はアプタマーに最適な疾患だと考えております。
当社のACH治療薬開発におけるumedaptanib pegolの全身投与は、アプタマーの全身投与としては世界初の成功事
例(POC)となるもので、今後は、眼科疾患にとどまらず、全身性のアプタマー医薬品の開発が推進されるものと
期待するところです。
アプタマー臨床開発パイプライン
:眼科疾患を対象とするアプタマー
核酸医薬には、アプタマーの他に、アンチセンス、デコイ、siRNA、microRNA、mRNAなどの種類があり、現在の開発の主流はアンチセンスですが、依然として幾つかの課題(化学修飾、DDS及び製造と品質管理)が指摘されています。
今後、核酸医薬の中軸を担うのは、化学修飾が容易で、通常、抗体と同様に細胞外で機能するアプタマー医薬であり、そのアプタマー医薬の中でも、当社のumedaptanib pegolプログラムが世界の最先端に位置していると当社は考えております。アプタマーは、標的となるタンパク質分子への結合という点で似たような作用を持つ抗体医薬と比較して、その結合活性が非常に高いことや、様々な化学修飾によって活性や体内動態等を改善するという優位点があります。なお、抗体医薬との比較は、次の項を参照下さい。
③アプタマー医薬と抗体医薬の比較
アプタマー医薬は分子標的薬として、抗体を成分とする抗体医薬と、作用メカニズム及び投与方法が類似しています。従って、アプタマー医薬の最大の競合品は抗体医薬になります。アプタマー医薬市場の成否は、抗体医薬との比較のなかで、その違いを明確にし、どう差別化するかにかかっています。抗体医薬は、マウス等で作製した抗体をヒトで異物として排除されにくいように加工した後、これを産生する特殊な細胞を大量に培養し、精製して医薬品原料にします。その起源が生物試料であることから生物製剤に分類されます。これに対し、アプタマー医薬はその成分であるRNAを化学合成して製造することから合成医薬品に分類されます。
以下は抗体医薬と比較したアプタマー医薬の特徴ですが、アプタマー医薬は、科学技術の進歩とともにその長所が認識され、抗体に続く次世代の新薬の核として開発が進むものと当社は期待しております。
(当社作成)
(5)知財戦略
創薬プラットフォーム系バイオベンチャーである当社にとって、開発する製品及びプラットフォーム技術を適切な方法により保護されていることが、自社開発のみならず他社とのライセンスや共同研究を実現する上で不可欠です。
当社の知財戦略は、事業開発(製品パイプライン)に関するものと、研究開発(基本及びプラットフォーム技術)に関するものとに峻別し、以下のような異なる対応をしております。
①事業開発(自社創薬品目及び共同研究品目)に対する知財戦略
RNAを成分とするアプタマーは配列の違いによって、同一標的分子(疾患関連タンパク質)についても、既存特許に対して抵触しない複数の物質特許が成立する可能性があります。よってプロジェクトごとの開発品を含む物質特許の取得を前提としています。
当社は標的分子との結合力が強くかつ当該標的分子の生理作用に対する阻害活性の高いアプタマーだけでなく、その周辺の化合物もカバーする特許権の成立を目指します。具体的には、無数にある核酸配列の中から結合力及び阻害活性の高いアプタマーに共通する構造や配列を探索し、その共通構造・共通配列を特許化(オープン知財化)することで、広い権利を押さえることを基本戦略としています。さらに非臨床試験・臨床試験の経過により得られるデータに基づき、製剤特許や用途特許の出願を実施し、実質的な特許期間を延ばす戦略を採っています。
一方共同研究品目については、まずは提携先との共同出願となるのが通例ですが、ライセンス・アウトに伴い、開発や事業化についての独占的実施権を提携先に付与しても、当該特許に対する自社権利は維持する(共有とする)方針を基本といたします。
なお特許出願国については、日米欧を中心として、中国、韓国、インド等の医薬品市場の規模が大きく、又は将来の市場拡大が見込まれる国や地域をカバーすることを方針としております。
②研究開発技術(基本及び「RiboART SystemⓇ」)に対する知財戦略
「RiboART SystemⓇ」のコアとなる技術(アプタマーの取得、短鎖化や化学修飾等の最適化)の中には、特許化が可能な技術も含まれていると当社は考えておりますが、特許化は技術公開という代償を伴い、当社の特許化された技術を使用して他社がアプタマーを取得したとしても、それが当社の特許技術を使用したことを立証することは困難です。
従って、当社では、原則としてアプタマー医薬品候補物については、物質特許を取得する方針でありますが、「RiboART SystemⓇ」を構築する技術自体は、特許化による競争優位性が確保されるものを除きノウハウあるいは営業秘密として秘匿し、クローズ(秘匿化)知財と位置付けて優位性の確保に努めます。なお、当社はノウハウあるいは営業秘密が社外に流出しないよう、役職員や取引先との間で秘密保持義務等を定めた契約を締結し、厳重な情報管理に努めております。
③主要な特許の状況
当社が保有者となる、当社の研究開発に関する主要な特許の状況は以下のとおりであります。
(6)創薬体制
①アカデミアでの研究成果の取り込みと連携及び共同研究
当社は、発足の経緯から、東京大学医科学研究所で培ってきたRNA科学やアプタマーに関する成果を実用化するため、トランスレーショナル・リサーチを継続的に実施してきました。
東京大学との共同研究の他、早稲田大学、慈恵大学、関西医科大学などのアカデミアとも共同研究を実施し、疾患に関連するタンパク質の学術的な裏付けを得ると同時に、各種動物試験の実施、新規アプタマー技術の開発や分析等における連携を図っております。
②的確な研究開発マネジメント
当社では、新薬開発ステージに応じた試験研究の内容、当該試験結果のクライテリアの設定、知的財産戦略等について、新薬開発のノウハウを熟知したスタッフによる定期的なレビューなどの研究開発マネジメントを実施しております。
③人的ネットワーク
アプタマーを含む核酸医薬の研究開発は日進月歩の状況にあり、世界的に競争が加速しています。当社は核酸科学やアプタマーに関する研究者・研究機関との世界的規模の人的ネットワークを通じて、最新の研究動向の把握や国内外の臨床医とのネットワーク構築にも努めております。
④アプタマー創製のスペシャリスト
当社では、社員の約3分の2が、化学、分子生物学、細胞生物学、工学、薬学、医学等の分野での専門家(研究員)であり、研究員の約半数は博士号の保持者です。これらの研究員は、アプタマー医薬に特化した研究開発に従事しており、この分野では強力な布陣を敷いております。
さらに、製薬及び関連企業で研究開発、臨床開発の経験を長く積んだ社員も擁しており、臨床開発やライセンスに連なる基礎・探索研究の方向づけや知財戦略を展開しております。
(7)ESG(環境/社会/企業統治)に関する取り組み
昨今の資本市場では、長期持続的な企業の成長を評価する上で不可欠な観点として、ESG(Environment/環境、Social/社会、Governance/企業統治)といった非財務情報への関心が高まっています。当社は、ESGに関して次のような方針で取り組んでまいります。
①E(環境)
当社は、医薬品事業に携わる企業として研究資源の管理、並びに分別廃棄を徹底した厳格な廃棄物管理に注力いたします。また、IT整備によるペーパーレス等の省資源や社外で実施されているリサイクル活動にも積極的に参加するなどの取り組みも合わせて推進してまいります。
②S(社会)
当社は、難病や未だに薬のない病気(Unmet Medical Needs)に対する新薬を開発して、世界の医療と人々の健康に貢献するというミッション実現に向けた事業活動を展開しているため、「Social」は事業活動そのものと考えています。希少疾患である軟骨無形成症治療薬の開発はその一例です。
また、企業として働きやすい環境づくりやダイバーシティを尊重するとともに、学会参加や論文発表を通してイノベーション創出にも貢献したいと考えております。
③G(企業統治)
・コーポレート・ガバナンスの強化
当社は、アプタマー創薬企業としてアプタマーを素材とする新薬を次々と創製し、継続的な成長と企業価値の最大化を図り、医薬品開発を通して社会に貢献できる企業を目指しており、コーポレート・ガバナンス体制の強化により経営の健全性や透明性の向上を継続的に図っていくことは、最も重要な課題の一つであると認識し、取り組んでまいります。
また、研修やe-learningを積極的に受講する事を通して法令や社内規程を遵守するコンプライアンスを重視するとともに、個別面談や説明会を通して様々なステークホルダーとのコミュニケーションも図ってまいります。
(8)参考資料(技術紹介)
①アプタマー医薬について
②「RiboART SystemⓇ」
当社の「RiboART SystemⓇ」は、RNAの生化学的性質の把握、特に潜在的なRNAの造形力の掘り起こし、アプタマーの構想・デザイン、アプタマーの創製から医薬候補アプタマーの仕上げまでをカバーする当社独自のアプタマー創薬の技術プラットフォームです。「RiboART SystemⓇ」は広汎な分野に応用可能な技術であるため、特定の疾患や領域に特化されないアプタマーの創製を行っております。
「RiboART SystemⓇ」においてコアとなる技術は、1)目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するポテンシーの高いアプタマーを取得する技術(SELEX法運用技術)と、2)取得したアプタマーを臨床開発品として最適化する技術です。このコア技術が、意図した薬効を示すポテンシーのアプタマーを取得・創製するうえで大きな効果を発揮します。
本システムでは、取得したアプタマーを新薬候補品となり得るように、加工プロセスによって、標的への結合力を103~104倍に増強するとともに、この技術を標準化しており、これが当社の技術的な強みと認識しております。
当社は、他の会社に先んじてSELEX法を利用した研究を開始したことによる現在の技術的優位性に安住することなく、5年先、10年先の技術動向を見据え、新たなSELEX法や、抗体で難しいとされる受容体に直接作用するアゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)、さらに細胞内に他の医薬を運搬するためのDDSに利用可能なアプタマー等の実現を目指しております。
<SELEX法のイメージ>
③当社の新薬開発プロセス
新薬の研究開発は、下記の図に示すように、製品の上市までに、10数年の長い年月と数百億円もの多額の資金を要します。
この新薬の研究開発は、通常、臨床試験前の段階と臨床試験に二分され、さらに臨床試験前の段階は、大きく以下に分けられます。
1)新薬候補と考えられる化合物を考案、創製し、その中から様々な手法を用いて適切な化合物をスクリーニングする基礎・探索研究の段階
2)選定された化合物について、臨床試験に進むために必須の試験を行う非臨床試験の段階
当社では、新薬開発プロセスの中の(1)基礎・探索研究、及び(2)非臨床試験の段階において、「RiboART SystemⓇ」を運用しアプタマー医薬の開発を行っています。標的タンパク質の種類や特性、適応疾患などによって差は生じるものの、「RiboART SystemⓇ」の活用により、従来なら5~8年かかる基礎・探索研究及び非臨床試験の期間(1年前後のGLP試験の期間を含む)の内、標的タンパク質の決定からGLP試験を開始するための予備毒性試験ステージまでを、約3~4年で実施可能(当社実績)であると考えております。
<新薬開発プロセス>
(9)参考資料(用語解説) アルファベット、50音順
当社の企業理念は「Unmet Medical Needs(未だに満足すべき治療法のない疾患領域の医療ニーズ)に応えること」であり、眼科疾患と希少疾患を重点領域と定め当事業年度においても様々な取り組みを進めてまいりました。
その具体的な進捗を下記に要約いたします。
(1)当事業年度の主要なトピックス
| 創薬事業 |
創薬事業では、当社が自社で創製した医薬品の研究開発を行い、製薬企業等へのライセンス・アウトを通じた収
益獲得を目指しております。現在、umedaptanib pegolの開発が最も進んでおり、当社創薬事業の中核の医薬品と
しての開発を進めております。
①「umedaptanib pegol」(抗FGF2アプタマー、RBM-007の国際一般名)による臨床開発の狙い
当社では、自社で創製したumedaptanib pegol(FGF2に結合し、その作用を阻害するアプタマー)を、自社での臨床開発のテーマに選び、「軟骨無形成症(Achondroplasia、ACH)」と「滲出型加齢黄斑変性(Wet Age-related Macular Degeneration、wet AMD)」の治療薬としての開発を進めております。
②開発状況、及び既存治療法との比較
(ⅰ)軟骨無形成症(ACH)
・臨床試験の進捗
ACHに関するプロジェクトは、2021年度から3年間、国立研究開発法人日本医療研究開発機構()の希少疾病用医薬品指定前支援事業として助成を受け、ACHの小児患者(5~14歳)における、身長の伸びを含む臨床的基礎データの取得と第2相臨床試験の被験者選定を目的とした第2相観察試験、及びumedaptanib pegolを26週投与した場合の有効性と安全性を探索的に評価する第2相臨床試験、及びumedaptanib pegolを長期投与した場合の有効性と安全性を評価する第2相長期投与試験の3つの臨床試験を実施いたしました。
第2相観察試験については、2022年11月に患者の登録を開始し、東京、岡山及び関西地区の8施設で13名の患者を組み入れ、2024年12月に最終症例の観察期間が完了しました。さらに、第2相臨床試験については、2023年4月に投与を開始、コホート1(低用量群、6名、1回/週の0.3mg/kg皮下投与、26週)とコホート2(高用量群、6名、1回/2週の0.6mg/kg皮下投与、26週)の2群に分けて実施し、2025年9月に投与が完了いたしました。
また、2026年3月、第2相臨床試験の統計解析が完了し、その結果の概要は下記の通り。
・試験結果の概要
● 主要評価項目である年間身長伸展速度について、途中休薬のあった1名を除き、コホート1の投与完了5名及びコホート2の投与完了6名の計11名を解析対象として評価した結果、投与開始前(観察期間)と比較した投与後の年間身長伸展速度の変化量(ΔAHV)の平均は+1.4cm/年となり、探索的解析として統計学的有意差が認められた(p=0.04)
● コホート1では5名中3名で、コホート2では6名中5名で治療後のΔAHVの変化量が投与開始前のΔAHVよりも増加した。うち4名のΔAHVは+2.0、+3.3、+4,6、+5.0cm/年と顕著な増加を示した。これらΔAHVの増加は、同一条件での長期投与試験においても継続している。
● ボックスゾゴⓇ投与歴のある被験者においてもΔAHVの改善が観察された(3名中2名)。
● 副次評価項目として身長Zスコア、血清中骨代謝マーカー、体格検査(頭囲、腹囲、上腕長、前腕長、大腿長、下腿長及びアームスパン)、及び身体の体型バランスを探索的に評価した結果、本試験の範囲では有効性を示唆する一貫した傾向は観察されなかった。また、骨年齢、大腿骨成長板の形成状態、臨床所見に基づく肘関節及び股関節の所見、及びタナー発達分類においては、次試験に進む上での障害となる事象は観察されなかった。
● 本薬剤との関連性有と判定された有害事象として、注射部位の疼痛(1例)、注射部位の腫脹(1例)、頭痛(1例)、関節痛(1例)、及び知覚過敏(1例)が発生したが、いずれも短期間かつ軽微であり、これら以外で治験中止に至る重篤な有害事象は観察されなかった。
以上の結果から、umedaptanib pegolの第2相臨床試験において、有効性が確認されるとともに、安全性についても開発継続の観点から重要な治験が得られました。これらは、ACH治療薬としての概念実証(Proof of ConceptPOC)を支持するもので、詳細解析の結果は、医学専門誌に論文掲載する予定です。
なお、第2相臨床試験を完了した12名のうち11名は、同一投与条件の第2相長期投与試験に移行しており、現在は8名に対して継続して被験薬の有効性及び安全性を評価しており、これまでにumedaptanib pegolを投与したACH小児患者において、安全性に関する懸念は発生しておりません。
また、コホート1での結果に基づいて、厚生労働省に対して、希少疾病用医薬品指定(ODD)申請を行い、2025年5月に指定承認されました。これに伴い、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBN)に対して、助成金の交付申請を行い、今年度助成される金額は39,160千円となりました。
2026年3月、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)に対し、第3相臨床試験(2~14歳の小児患者16名、1回/週の1mg/kg皮下投与、単剤試験、52週)の治験申請を提出し、実施許諾を得ました。
現在、第3相臨床試験に向けて施設との契約手続き等を進めております。2026年6月に最初の患者登録を見込んでおります。
・ACHの既存治療法と課題
ACHは四肢短縮による低身長を主な症状とする希少疾患で、厚生労働省から難病指定を受けております。
umedaptanib pegolは疾患モデルマウスを利用した実験で、体長の短縮を約50%回復する効果を示しました。さらに、軟骨細胞への分化誘導が欠損していることが知られているACH患者由来のiPS細胞(人工多能性幹細胞)について、umedaptanib pegol存在下で、その分化誘導が回復することも確認いたしました(非臨床POC獲得)※1。本邦ではこれまで治療薬として成長ホルモンが使用されてきましたが、その効果は十分とは言えず、骨延長術(足の骨を切断して引き離した状態で固定し、骨の形成を促す)といった非常に厳しい治療が幼い子供に施されることもあり、効果の高い新薬が待ち望まれていました。
ようやく、2022年6月にACH治療薬としてBioMarin社のボックスゾゴⓇの製造販売が承認されました。しかし、その効果は十分とは言えず、毎日の投与が必要となっているため、小児のACH患者にとって、もっと効果が強く、皮下注射の間隔が長く取れる新薬の開発が望まれています。
※1:Kimura T, Bosakova M, Nonaka Y, et al.: RNA aptamer restores defective bone growth in FGFR3-related skeletal dysplasia. Sci. Transl. Med., 13, eaba4226 (2021)
(ⅱ)滲出型加齢黄斑変性(wet AMD)
・臨床試験
umedaptanib pegolの複数回投与による臨床POC獲得を目的とした第2相臨床試験(試験略称名:TOFU試験)を米国で実施いたしました(被験者86名)。TOFU試験は、標準治療の抗VEGF治療歴のあるwet AMD患者を対象に、①umedaptanib pegolの硝子体内注射による単剤投与群、②既存の抗VEGF薬であるaflibercept(商品名アイリーアⓇ)とumedaptanib pegolの硝子体内注射による併用投与群、及び③afliberceptの硝子体内注射による単剤投与群の3群間で、umedaptanib pegolの有効性及び安全性をafliberceptと比較評価する、無作為化二重盲検試験でした。
また、TOFU試験の進捗に基づき、長期投与に伴う本薬剤の有効性と安全性、及び瘢痕形成を含む網膜の構造異常に対する効果を評価する目的で、umedaptanib pegolを単剤で投与するオープン試験としてのTOFU試験の延長試験(試験略称名:RAMEN試験)を行いました。RAMEN試験では、TOFU試験を完了した22名の被験者に対して、追加のumedaptanib pegolの硝子体内投与を1ヶ月間隔で計4回行いました。
さらに、治療歴のないwet AMD患者を対象にumedaptanib pegolの単独投与の有効性及び安全性を評価することを目的に、米国で医師主導治験(試験略称名:TEMPURA試験)を実施いたしました(被験者5名)。
これらの結果は、英国王立眼科学会誌Eyeに2報の論文として掲載されました※2,3。
その要約は以下のとおりです。
[論文要点]
・いずれの試験においても、umedaptanib pegolによる安全性に関する問題は発生しなかった。
・治療歴のないwet AMD患者においては、umedaptanib pegolの投与により、劇的な治癒例を含め、視力や網膜厚の 改善が確認された(TEMPURA試験)。
・抗VEGF標準治療歴のあるwet AMD患者においては、umedaptanib pegol単剤投与、及びumedaptanib pegolとafliberceptの併用投与において、aflibercept単剤投与を上回る臨床有効性は観察されなかったものの、umedaptanib pegolの効果はafliberceptに対して非劣勢であり、症状の進行抑制が確認された(TOFU試験)。
・すべての試験を通じ、umedaptanib pegolはすでに形成された瘢痕(線維化)を除去する作用はなかったものの、瘢痕形成を抑制する効果が確認された。
[今後の開発方針]
現在標準治療となっている抗VEGF薬には、瘢痕化抑制作用がないため、既存療法の大きな Unmet Medical Needsになっています。そのため、今後、umedaptanib pegolを用いた未治療のwet AMD患者に対する臨床試験において瘢痕化抑制効果を証明することができれば、既存療法との重要な差別化ポイントとなり、“first-line”の新薬の実現に近づくものと考えます。そのため、他企業との提携・ファンド等からの資金調達を含めて検討してまいります。
※2:Pereira DS, Akita K, et al: Safety and tolerability of intravitreal umedaptanib pegol (anti-FGF2) for neovascular age-related macular degeneration (nAMD): a phase 1, open label study. Eye, 2024 Apr;38(6):1149-1154.
※3:Pereira DS, Maturi RK, et al.: Clinical proof of concept for anti-FGF2 therapy in exudative age-related macular degeneration (nAMD): phase 2 trials in treatment-naïve and anti-VEGF pretreated patients.Eye, 2024 Apr;38(6):1140-1148.
(ⅲ)眼科領域における適応疾患の拡大
umedaptanib pegolのwet AMD臨床試験におけるPOCを獲得していることから、本剤が他の未だ治療法のない眼科疾患に対して有効であることが動物実験で示されれば、umedaptanib pegolの適応拡大として速やかに臨床試験が可能となります。その観点から、日本大学とumedaptanib pegolのPVR(後述③RBM-006(抗Autotaxin(オートタキシン)アプタマー、増殖性硝子体網膜症(PVR)等の網膜疾患)への適応拡大を目的とした共同研究を実施しておりましたが、臨床病態に近い有効な動物モデルの確立に至る事が出来ず、2025年5月31日にて共同研究を終了しております。
umedaptanib pegolに関しては別途複数の眼科疾患モデルを用いて薬理試験を継続中であり、糖尿病網膜症(DR)モデルを用いた薬理試験において、umedaptanib pegolを投与した際に、眼底出血の発生が有意に抑制されることが確認されました。これはumedaptanib pegolが血管安定化作用を有し、糖尿病網膜症の進行を抑える効果があることを示唆するものであり、糖尿病網膜症の主要な合併症である糖尿病黄斑浮腫に対しても有効性を示す可能性が考えられることから、当社は糖尿病黄斑浮腫への展開も含めて様々な可能性を検討しております。
なお、umedaptanib pegolの糖尿病網膜症に対する用途特許を2025年9月に特許出願しております。
③RBM-006(抗Autotaxin(オートタキシン)アプタマー、増殖性硝子体網膜症(PVR)等の網膜疾患)
RBM-006が対象とする増殖性硝子体網膜症は、網膜剥離や糖尿病網膜症の放置、網膜剥離の手術によって併発する網膜疾患です。多種の細胞が網膜表面や網膜内、硝子体腔内で増殖膜を形成し、当該増殖膜が収縮することによって網膜に皺壁(しゅうへき)形成や牽引性網膜剥離が生じ、重篤な視力障害や失明に至ります。硝子体手術などの治療によっても重篤な視力障害や失明に至る事が多く、また現在のところ有効な医薬品は存在しません。
当社は、日本大学医学部視覚科学分野・長岡泰司教授(現 旭川医科大学教授)との共同研究において、ブタPVRモデルにおける抗オートタキシンアプタマーの効果を検討した結果、当該アプタマーが網膜細胞の増殖を抑制すること、及び当該モデルにおける増殖膜の形成を抑制し網膜剥離を抑制する効果があることが明らかになり、その成果が学術誌International Journal of Molecular Sciencesに掲載されました※4。
Autotaxinは様々な生理機能を有する脂質メディエーターであるLPA(リゾホスファチジン酸)を産生する重要な酵素で、その機能異常は多くの疾患につながることが知られています。中でも、眼科疾患においては、緑内障、滲出型加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、硝子体網膜症等の発症に関与することが示唆されており、当社はアプタマーを用いて、これらの眼科疾患に対する新規治療薬の開発を目指しております。
その取り組みの中で、umedaptanib pegolと同一の糖尿病網膜症(DR)モデルを用いた薬理試験において、眼底出血の発生が有意に抑制されることが確認されました。これはRBM-006が血管安定化作用を有し、糖尿病網膜症の進行を抑える効果があることを強く示唆するものであります。
以上の動物試験から、umedaptanib pegolとRBM-006の2剤において、糖尿病網膜症に対して有効性が示唆されており、今後その開発優先度については、総合的な評価に基づき判断してまいります。
また、RBM-006については、既存の抗オートタキシンアプタマーの活性を凌駕し、かつ鎖長も短い新規抗オートタキシンアプタマーの創製に成功したことから、2026年1月、新規物質特許の出願をしております。
※4:Hanazaki H, Yokota H, et al.: The effect of anti-autotaxin aptamers on the development of proliferative vitreoretinopathy. Int. J. Mol. Sci. 24, 15926 (2023).
④RBM-011(抗IL-21(インターロイキン21)アプタマー、肺動脈性肺高血圧症)
RBM-011が対象とする肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、難病に指定されている病気であり、肺動脈壁が肥厚して血管の狭窄が進行した結果、高血圧をきたして全身への血液や酸素の供給に障害が生じ、最終的には心不全から死に至ることのある重篤な疾患です。
当社は、国立研究開発法人国立循環器病研究センター(国循)との共同研究として、AMEDの支援のもと、抗IL-21アプタマーを用いたPAH治療薬の開発を実施してきました。その結果、抗IL-21アプタマーがPAHモデル動物において、肺動脈壁の肥厚を顕著に抑制することが明らかになり、2020年6月に特許出願をしております。その後、当該特許は、2025年12月に日本において、2026年3月に米国において査定を受けております。
また、原薬合成を終え、毒性試験も完了して、第1相臨床試験が実施可能な準備が完了しており、導出に向け事業開発活動を実施しております。
| 創薬支援事業 |
創薬支援事業では、当社が保有するアプタマー創薬基盤技術を活用し、製薬企業等との共同研究を通じて創薬活動を支援しております。共同研究により得られた研究成果やノウハウを基に、創薬支援技術の高度化及び提供領域の拡大を図るとともに、研究受託収入や契約一時金等の獲得を通じた早期の収益化を目指しております。
①共同研究契約に基づく取り組み
共同研究契約に基づく取り組みとしては、当社の創薬基盤技術を活用し、製薬企業等と共働して医薬品創製に向け研究開発を進めており、現在、3件の共同研究プロジェクトが進行しております。
a)リードファーマ株式会社との共同研究
リードファーマ株式会社は、中枢神経系疾患領域における医薬品研究開発に強みを有する創薬企業です。当社は同社と、中枢神経系疾患を対象とした新規治療薬の創出を目的として、当社の創薬基盤技術を活用した共同研究を実施しております。
本共同研究では、中枢神経系疾患における創薬研究を進める上で重要となる中枢領域への薬剤送達や創薬標的への作用最適化等の課題に対し、当社の創薬基盤技術とリードファーマ株式会社の当該分野における知見・研究実績を組み合わせることで、その解決を図っております。両社の技術的強みを相互に活かしながら研究開発を進めることにより、将来的な医薬品開発につながる研究成果の創出を目指しております。
b)日産化学株式会社との共同研究
日産化学株式会社は、化学分野を基盤としてヘルスケア分野においても研究開発を展開し、核酸創薬に関する独自の技術基盤を有する企業です。当社は同社と、当社が保有する創薬基盤技術を日産化学株式会社の核酸関連技術に適用することにより、新たな創薬基盤の構築を目指す共同研究を実施しております。
本共同研究では、当社創薬基盤技術の有用性評価および核酸医薬分野への応用可能性について検討を進めており、両社がそれぞれ有する技術的強みを組み合わせることで、将来的な医薬品創出につながる基盤技術の確立を目指しております。基礎的な研究段階を中心とした評価・検討を行っておりますが、得られた知見を踏まえ、今後の研究展開の拡張や適応拡大についても検討していく方針です。
c)SK Plasma Co.,Ltd.との共同研究
SK Plasma Co.,Ltd.は、韓国のバイオ医薬品企業であり、血漿分画製剤を中心に医薬品の研究開発、製造および販売を行っている企業です。当社は同社と、当社が保有する創薬基盤技術を活用し、アプタマーを医薬関連成分と組み合わせた新たな創薬アプローチの可能性を検討することを目的とした共同研究を実施しております。
本共同研究では、SK Plasma Co.,Ltd.が研究開発する薬物と当社のアプタマー技術を組み合わせた複合体の創出に取り組み、当該複合体が有する特性や応用可能性について評価を進めております。両社がこれまでに蓄積してきた研究開発に関する知見を活用することで、将来的な医薬品開発につながる研究成果の創出を目指しております。
d)三菱商事ライフサイエンス株式会社との共同研究
三菱商事ライフサイエンス株式会社(旧:ビタミンC60バイオリサーチ株式会社)は、食品原料、健康素材、化粧品原薬などのライフサイエンス事業を展開する三菱商事のグループ会社で、フラーレンを化粧品原料として製造販売する世界で唯一のメーカーです。
本共同研究では、との共同研究開発契約に基づき、化粧品原料候補の創製・開発を目的とした共同研究を実施してきました。
その結果、紫外線やストレスなどが引き金となり過剰分泌されることでシワ形成やたるみを引き起こす原因となる可能性がある、免疫系の重要な細胞である好中球から分泌されるエラスターゼ(タンパク質分解酵素)を阻害するアプタマー(抗好中球エラスターゼアプタマー)の創製・開発に成功しており、日本国特許庁に対して、2025年1月に共同で特許出願をいたしました。このような成果を踏まえ、本共同研究に一つの区切りがついたと考えられ、2026年3月契約を終了しております。なお、先方とは引き続き共同出願特許の取り扱い及び権利活用の方針(第三者へのライセンス許諾等を含む)について、検討を進めております。
②業務委託契約等に基づく取り組み
業務委託契約等に基づく取組としては、当社の創薬基盤技術の有用性評価および応用可能性の検討を目的として、製薬企業等に対する材料提供や技術情報の共有を行っております。これらの取組には、国内製薬企業を含む複数の企業が提携候補先として含まれており、当社技術の評価を通じて、将来的な共同研究契約への発展を見据えた関係構築を進めております。なお、個別の相手先および取組内容の詳細については、機密保持の観点から開示しておりません。
| 基盤技術研究 |
当社は、創薬事業及び創薬支援事業の双方を支える共通基盤として、創薬基盤技術の研究開発に取り組んでおります。これらの基盤技術は、自社創薬パイプラインの創出及び価値向上に資するだけでなく、製薬企業等との共同研究や技術提供を通じた創薬支援事業の展開にも活用されております。当社は、基盤技術の継続的な高度化を図る事で、両事業の競争力強化及び中長期的な価値向上を目指しております。
①DDSアプタマー技術
DDS(Drug Delivery System)とは、薬剤の体内動態や分布を制御することで、有効性を高めるとともに、副作用や投与負担を軽減する技術であり、核酸医薬品をはじめとする次世代モダリティの実用化に不可欠な要素です。特に、薬剤を特定の組織へ選択的に送達する技術の重要性が高まる中、アプタマーは高い結合特異性と化学的安定性を有し、さらに化学合成による高い設計自由度を備えています。これらの特性を活かし、アプタマーを標的組織を認識するセンサーとして用いることで、さまざまな薬剤を狙った臓器へ送達するDDSの創出が期待されます。
(ⅰ)光免疫療法への応用
当社は、2023年9月に慈恵大学と共同研究を開始し、アプタマーの光免疫療法への応用について培養細胞試験で有望な成果を得ました。これを受け、2025年12月には関西医科大学を加えた三社連携体制を構築し、動物試験を含む研究を加速しております。
(ⅱ)siRNA核酸デリバリーへの応用
東京大学及び早稲田大学との共同研究により、デングウイルス膜タンパク質に結合するアプタマーとsiRNAを融合したキメラ核酸を開発いたしました。本分子は複数血清型に対し増殖抑制効果を示し、2024年12月に学術誌へ成果を報告しております。※5
(ⅲ)アプタマー修飾ナノ粒子への応用
当社は、アプタマーの高い標的結合能を活用し、LNP表面に修飾することで送達指向性を付与したDDS技術を開発いたしました。脳などへの核酸送達を可能とする本技術について、2025年6月に特許出願し、学会発表も行っております。
※5:Amano R, Takahashi M, et al.: A chimeric RNA consisting of siRNA and aptamer for inhibiting dengue virus replication. NAR Molecular Medicine. 1(4):ugae025 (2024).
②AIアプタマー技術
当社は、早稲田大学と共同で、バイオインフォマティクス及びAIを活用したアプタマー創薬基盤技術の開発を推進してきました。HT SELEXデータを解析するアプタマー選抜技術「RaptRanker」を開発し※6、さらに深層学習を用いた配列生成技術「RaptGen」により、既存データに含まれない新規高親和性配列の創出を可能としました※7。近年は大規模言語モデルを活用した結合活性予測技術「RaptScore」を確立し、任意配列の評価や最適化を可能としています※8。また、量子計算とAIを融合した技術を活用し、核酸配列最適化を題材とした次世代創薬基盤の確立に取り組んでいます。これらの技術は当社創薬基盤への統合を進めており、研究開発効率の向上に寄与しています。
※6:Ishida R, Adachi T, et al.: RaptRanker: in silico RNA aptamer selection from HT-SELEX experiment based on local sequence and structure information. Nucl. Acids. Res., 48, e82 (2020).
※7:Iwano N, Adachi T, et al.: Generative aptamer discovery using RaptGen. Nat. Comput. Sci., 2, 378–386 (2022).
※8:Kimura-Yamazaki A, Adachi T, Nakamura S, Nakamura Y, Hamada M: RaptScore: a large languagemodel-based algorithm for versatile aptamer evaluation. Nucleic Acids Research, Volume 54, Issue2, 27 January 2026, gkaf1480 (2026).
③製剤化技術開発
当社は、アプタマーとポリエチルオキサゾリン(PEOZ)とのコンジュゲートが優れた体内動態を示し、PEGの代替化合物となることを見出し、2024年4月に特許出願をいたしました。
さらに、味の素株式会社との共同研究契約を2023年10月に締結し、味の素株式会社が有する抗体-薬物複合体製造技術AJICAPⓇを利用して、免疫グロプリンの部分タンパク質であるFc領域に対して核酸アプタマーを共有結合させて、血中半減期の飛躍的な延長に成功し、2025年3月に特許出願をいたしました。
本技術により、核酸アプタマーが抗体医薬と同等の血中滞留性を獲得できれば、アプタマー医薬品の開発が飛躍的に発展するものと考えております。なお、味の素株式会社との共同研究契約は2025年3月31日に終了しております。
(2)当社のビジネスモデルと収益計上の時期
①当社のビジネスモデル
当社の事業は、以下の創薬事業と創薬支援事業の2事業により構成されております。創薬探索から上市までをビジネスとして進めております。
(ⅰ)創薬事業
自社又は大学等研究機関と共同研究で医薬候補となるアプタマーを開発し、その成果を製薬企業にライセンス・アウトし、ライセンス対価(契約締結時に受け取る契約一時金、開発進行に伴うマイルストーン収入、及び製品上市後の売上に応じたロイヤルティー)を得る事業です。
(ⅱ)創薬支援事業
自社が開発した創薬プラットフォーム技術(例えばDDSシステム)を利用して、製薬企業や研究機関等から提示される研究開発課題や標的分子に対して創薬を支援することで、提携先から支払われる研究費あるいはプラットフォーム技術の導出によるライセンス対価を収入とする事業です。
上記二つの事業をバランスよく実施することで、以下の成果あるいは効果が期待できます。
1)収益構造の安定化と成長機会の両立
創薬事業においては、ライセンス契約や開発進展に応じたマイルストーン収入及び販売後のロイヤリティといった中長期的かつ高付加価値な収益の獲得が可能と考えております。一方で、創薬支援事業においては、研究受託や技術提供に基づく安定的な収益を確保する事が可能と考えております。そのため、両事業を併せて展開することで、短期的収益の確保と中長期的な成長機会の創出を両立することで、経営基盤の安定化効果が期待できます。
2)技術基盤の高度化及び競争優位性の強化
創薬支援事業で蓄積される多様なターゲットや用途に関する知見やデータは、創薬事業における研究開発の高度化に資するものと考えております。また、創薬事業で創出したアプタマーや技術は、創薬支援事業における提案力・事業開発能力の向上に繋がると考えております。そのため、当社独自技術の高度化や技術の差別化が期待できます。
3) 研究開発リスクの分散
創薬事業は高い成長性が期待できる一方で、開発期間の長期化や成果の不確実性といったリスクを伴います。一方で、創薬支援事業は比較的リスクが低く、安定的な収益確保によるキャッシュフローの安定化に寄与いたします。両事業をバランスよく運用することで、全体としての事業リスクの分散及び財務基盤の安定化が期待できます。
4) パートナーシップ機会の拡大
創薬支援事業を通じて構築される製薬企業や研究機関との関係は、将来的な共同研究や創薬事業における導出機会に繋がると考えており、事業機会の拡充が期待できます。
②事業活動に伴う収益計上の時期
当社のビジネスモデルにおいて、収益計上できるのは、創薬事業については、ライセンス契約や共同研究契約の締結後であり、創薬支援事業については、早い段階での研究受託収入や契約一時金の獲得を通じた早期の収益が見込めます。以下の図は、その場合の収益計上のタイミングを示しています。
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※:上記の図は、一般的なケースとして当社が想定している事業収益計上のタイミングを表すものです。
個別の契約により受取回数等が異なる場合があります。
(3)事業戦略
当社は、アプタマー創薬に関する当社の競争優位性や強みを梃子として、以下の基本ポリシーのもとで、研究開発を推進しております。
①自社創薬におけるパイプラインの一層の拡充と進展を図り、研究成果をいち早く知財化して競争優位性を維持、強化しライセンス・アウトを目指す。
②創薬支援事業を推進させ、早期の収益確保を目指す。
③アプタマー医薬品としての特性を最大限に生かしうる開発品や疾患については、過大な経済的負担を避けつつ、付加価値を高める観点から臨床POC取得のための臨床試験を実施し、収益の最大化を図る。
④アプタマー創薬における当社の「RiboART SystemⓇ」の更なる向上、発展を図るべく、次のアプタマーの創製にチャレンジする。
1)アゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)
2)細胞内への取り込み可能な(DDS作用を有する)アプタマー
3)細胞膜複数回貫通型のタンパク質(GPCR受容体等)と結合するアプタマー
4)次世代シークエンサーとコンピューター科学を利用したアプタマー探索の人工知能技術の開発
5)脳関門通過技術の開発と神経疾患治療への応用
6)ポリエチレングリコール(PEG)の代替となる(体内動態制御技術)アプタマー
7)DDS技術を応用した眼科疾患治療薬の開発
⑤大学や研究機関との緊密な連携を図り、大学や研究機関での基礎研究成果を医薬品開発に応用するトランスレーショナル・リサーチを推進することにより、アカデミアにおける研究成果をいち早くアプタマー創薬に活かす。
(4)医薬品市場におけるアプタマー医薬
①アプタマー医薬を含む核酸医薬の市場
医薬品は、その素材から、1)低分子、2)ワクチン、3)生物製剤、4)核酸、5)細胞、6)遺伝子に分類されますが、この中で最も新しく、技術革新が進展しているのが、生物製剤の中の抗体医薬と、核酸を成分とする核酸医薬、並びに細胞を利用する再生医療や遺伝子治療です。
そのような中、アプタマーを含む核酸医薬は、作用メカニズム及び投与方法が類似していることから、現在巨大な市場を形成している抗体医薬に続く次世代の医薬品として注目されており、2024年の核酸医薬の全世界の市場規模は146億USDとされております。2024年の抗体医薬の全世界の市場規模は2,426億USDとなっており、抗体医薬と比較し、まだまだ小さな市場ですが、抗体医薬との比較優位性から2031年には217億USDに成長すると予測されております。
②世界におけるアプタマー医薬品の臨床開発動向
MacugenⓇは世界初のwet AMD治療薬として承認されましたが、その後VEGFを標的とする抗体や可溶性のデコイ
(おとり)受容体を利用した、さらに有効な医薬(LucentisⓇ、EyleaⓇ、AvastinⓇ等)が開発されて、現在、MacugenⓇはほとんど使用されなくなりました。2004年のMacugenⓇの成功の後、20年間、アプタマー医薬品の開発は停滞しましたが、ようやく最近、補体C5に対するアプタマー(ARC1905: IZERVAYTM)が萎縮型加齢黄斑変性(dryAMD)に有効であることが、第3相試験で証明され、2023年8月米国で承認され、2025年8月日本でも条件付きで承認されました。IZERVAYTMを開発したIVERIC Bio社は、アステラス製薬に総額約8,000億円で買収されております。MacugenⓇやIZERVAYTM、そしてumedaptanib pegolがいずれも眼科疾患に対して奏功したことから、アプタマーは眼科疾患にフィットするモダリティ(治療手段)であることが強く示唆されました。眼は閉鎖系の小さな器官であるため硝子体内投与に必要な薬剤量が少なく、全身への薬剤の暴露が少なく安全性にも優れているため、眼科疾患に対する新薬の開発はアプタマーに最適な疾患だと考えております。
当社のACH治療薬開発におけるumedaptanib pegolの全身投与は、アプタマーの全身投与としては世界初の成功事
例(POC)となるもので、今後は、眼科疾患にとどまらず、全身性のアプタマー医薬品の開発が推進されるものと
期待するところです。
アプタマー臨床開発パイプライン
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核酸医薬には、アプタマーの他に、アンチセンス、デコイ、siRNA、microRNA、mRNAなどの種類があり、現在の開発の主流はアンチセンスですが、依然として幾つかの課題(化学修飾、DDS及び製造と品質管理)が指摘されています。
今後、核酸医薬の中軸を担うのは、化学修飾が容易で、通常、抗体と同様に細胞外で機能するアプタマー医薬であり、そのアプタマー医薬の中でも、当社のumedaptanib pegolプログラムが世界の最先端に位置していると当社は考えております。アプタマーは、標的となるタンパク質分子への結合という点で似たような作用を持つ抗体医薬と比較して、その結合活性が非常に高いことや、様々な化学修飾によって活性や体内動態等を改善するという優位点があります。なお、抗体医薬との比較は、次の項を参照下さい。
③アプタマー医薬と抗体医薬の比較
アプタマー医薬は分子標的薬として、抗体を成分とする抗体医薬と、作用メカニズム及び投与方法が類似しています。従って、アプタマー医薬の最大の競合品は抗体医薬になります。アプタマー医薬市場の成否は、抗体医薬との比較のなかで、その違いを明確にし、どう差別化するかにかかっています。抗体医薬は、マウス等で作製した抗体をヒトで異物として排除されにくいように加工した後、これを産生する特殊な細胞を大量に培養し、精製して医薬品原料にします。その起源が生物試料であることから生物製剤に分類されます。これに対し、アプタマー医薬はその成分であるRNAを化学合成して製造することから合成医薬品に分類されます。
以下は抗体医薬と比較したアプタマー医薬の特徴ですが、アプタマー医薬は、科学技術の進歩とともにその長所が認識され、抗体に続く次世代の新薬の核として開発が進むものと当社は期待しております。
(当社作成)
| 項目 | アプタマー医薬 | 抗体医薬 |
| 標的タンパク質に対する結合力 | 抗体の1,000倍は可能 | 強い |
| 創薬ターゲットの種類 | 極めて多様 | 抗原タンパクに限定 |
| 製造方法 | 化学合成法 | 細胞培養法 |
| コスト(製造コスト低減の容易さ) | 比較的高価 (製造コスト低減の可能性あり) | 比較的高価 (製造コストの低減は難しい) |
| 抗原性/免疫排除 | 起きにくい | 起きる |
| 製剤の可逆性・安定性 | 高い | 低い |
| 体内動態(長時間作用) | 苦手、限界あり | 良い |
| 中和 | 可能(アンチセンスの利用) | 不可能 |
| 短期作用性 | 得意 | 困難 |
| 加工・化学修飾 | 容易 | 困難 |
(5)知財戦略
創薬プラットフォーム系バイオベンチャーである当社にとって、開発する製品及びプラットフォーム技術を適切な方法により保護されていることが、自社開発のみならず他社とのライセンスや共同研究を実現する上で不可欠です。
当社の知財戦略は、事業開発(製品パイプライン)に関するものと、研究開発(基本及びプラットフォーム技術)に関するものとに峻別し、以下のような異なる対応をしております。
①事業開発(自社創薬品目及び共同研究品目)に対する知財戦略
RNAを成分とするアプタマーは配列の違いによって、同一標的分子(疾患関連タンパク質)についても、既存特許に対して抵触しない複数の物質特許が成立する可能性があります。よってプロジェクトごとの開発品を含む物質特許の取得を前提としています。
当社は標的分子との結合力が強くかつ当該標的分子の生理作用に対する阻害活性の高いアプタマーだけでなく、その周辺の化合物もカバーする特許権の成立を目指します。具体的には、無数にある核酸配列の中から結合力及び阻害活性の高いアプタマーに共通する構造や配列を探索し、その共通構造・共通配列を特許化(オープン知財化)することで、広い権利を押さえることを基本戦略としています。さらに非臨床試験・臨床試験の経過により得られるデータに基づき、製剤特許や用途特許の出願を実施し、実質的な特許期間を延ばす戦略を採っています。
一方共同研究品目については、まずは提携先との共同出願となるのが通例ですが、ライセンス・アウトに伴い、開発や事業化についての独占的実施権を提携先に付与しても、当該特許に対する自社権利は維持する(共有とする)方針を基本といたします。
なお特許出願国については、日米欧を中心として、中国、韓国、インド等の医薬品市場の規模が大きく、又は将来の市場拡大が見込まれる国や地域をカバーすることを方針としております。
②研究開発技術(基本及び「RiboART SystemⓇ」)に対する知財戦略
「RiboART SystemⓇ」のコアとなる技術(アプタマーの取得、短鎖化や化学修飾等の最適化)の中には、特許化が可能な技術も含まれていると当社は考えておりますが、特許化は技術公開という代償を伴い、当社の特許化された技術を使用して他社がアプタマーを取得したとしても、それが当社の特許技術を使用したことを立証することは困難です。
従って、当社では、原則としてアプタマー医薬品候補物については、物質特許を取得する方針でありますが、「RiboART SystemⓇ」を構築する技術自体は、特許化による競争優位性が確保されるものを除きノウハウあるいは営業秘密として秘匿し、クローズ(秘匿化)知財と位置付けて優位性の確保に努めます。なお、当社はノウハウあるいは営業秘密が社外に流出しないよう、役職員や取引先との間で秘密保持義務等を定めた契約を締結し、厳重な情報管理に努めております。
③主要な特許の状況
当社が保有者となる、当社の研究開発に関する主要な特許の状況は以下のとおりであります。
| 対象パイプライン | 発明の名称 | 国際出願番号 (国内特許番号) | 保有者 | 登録状況 |
| RBM-003 | キマーゼに対するアプタマー及びその使用 | PCT/JP2018/044132 | 当社 | 米中で特許・維持 |
| RBM-006 | オートタキシンに結合しオートタキシンの生理活性を阻害するアプタマー及びその利用 | PCT/JP2015/062561 (特許第6586669号) | 当社 | 日本のみ特許を維持 |
| RBM-007 | FGF2に対するアプタマー及びその使用 | PCT/JP2015/058992 (特許第6634554号) | 当社 | 日本・米国・欧州各国・中国・オーストラリア・香港・イスラエル・メキシコ・シンガポール・カナダ・インド・韓国にて特許・維持 |
| アプタマー製剤 | PCT/JP2019/025766 (特許第7340264号) | 当社 | 日本・欧州各国・香港・シンガポール・台湾・中国・メキシコで特許・維持 | |
| 網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤 | PCT/JP2021/004215 | 当社 | 台湾で特許・維持 | |
| RBM-010 | ADAMTS5に対するアプタマー及びその使用 | PCT/JP2018/041746 | 当社 | 中国・イスラエル・にて特許・維持 |
| RBM-011 | IL21に対するアプタマー及びその使用 | PCT/JP2021/023023 (特許7797016号) | 当社 | 日本・米国で特許・維持 |
| 対象パイプライン | 発明の名称 | 国際出願番号 (国内特許番号) | 保有者 | 登録状況 |
| RBM-007 | FGF2に対するアプタマー及びその使用 | PCT/JP2015/058992 (特許第6634554号) | 当社 | 日本・米国・欧州各国・中国・オーストラリア・香港・イスラエル・メキシコ・シンガポール・カナダ・インド・韓国にて特許・維持 |
| アプタマー製剤 | PCT/JP2019/025766 (特許第7340264号) | 当社 | 日本・欧州各国・香港・シンガポール・台湾・中国・メキシコで特許・維持 | |
| 網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤 | PCT/JP2021/004215 | 当社 | 台湾で特許・維持 |
| 対象パイプライン | 発明の名称 | 国際出願番号 (国内特許番号) | 保有者 | 登録状況 |
| TGFβ1に対するアプタマー及びその使用 | PCT/JP2020/026755 (特許7664627号) | 当社 | 日本で特許・維持 | |
| アプタマー及びポリエチルオキサゾリンのコンジュゲート | PCT/JP2025/002178 | 当社 | 台湾で特許査定 |
(6)創薬体制
①アカデミアでの研究成果の取り込みと連携及び共同研究
当社は、発足の経緯から、東京大学医科学研究所で培ってきたRNA科学やアプタマーに関する成果を実用化するため、トランスレーショナル・リサーチを継続的に実施してきました。
東京大学との共同研究の他、早稲田大学、慈恵大学、関西医科大学などのアカデミアとも共同研究を実施し、疾患に関連するタンパク質の学術的な裏付けを得ると同時に、各種動物試験の実施、新規アプタマー技術の開発や分析等における連携を図っております。
②的確な研究開発マネジメント
当社では、新薬開発ステージに応じた試験研究の内容、当該試験結果のクライテリアの設定、知的財産戦略等について、新薬開発のノウハウを熟知したスタッフによる定期的なレビューなどの研究開発マネジメントを実施しております。
③人的ネットワーク
アプタマーを含む核酸医薬の研究開発は日進月歩の状況にあり、世界的に競争が加速しています。当社は核酸科学やアプタマーに関する研究者・研究機関との世界的規模の人的ネットワークを通じて、最新の研究動向の把握や国内外の臨床医とのネットワーク構築にも努めております。
④アプタマー創製のスペシャリスト
当社では、社員の約3分の2が、化学、分子生物学、細胞生物学、工学、薬学、医学等の分野での専門家(研究員)であり、研究員の約半数は博士号の保持者です。これらの研究員は、アプタマー医薬に特化した研究開発に従事しており、この分野では強力な布陣を敷いております。
さらに、製薬及び関連企業で研究開発、臨床開発の経験を長く積んだ社員も擁しており、臨床開発やライセンスに連なる基礎・探索研究の方向づけや知財戦略を展開しております。
(7)ESG(環境/社会/企業統治)に関する取り組み
昨今の資本市場では、長期持続的な企業の成長を評価する上で不可欠な観点として、ESG(Environment/環境、Social/社会、Governance/企業統治)といった非財務情報への関心が高まっています。当社は、ESGに関して次のような方針で取り組んでまいります。
①E(環境)
当社は、医薬品事業に携わる企業として研究資源の管理、並びに分別廃棄を徹底した厳格な廃棄物管理に注力いたします。また、IT整備によるペーパーレス等の省資源や社外で実施されているリサイクル活動にも積極的に参加するなどの取り組みも合わせて推進してまいります。
②S(社会)
当社は、難病や未だに薬のない病気(Unmet Medical Needs)に対する新薬を開発して、世界の医療と人々の健康に貢献するというミッション実現に向けた事業活動を展開しているため、「Social」は事業活動そのものと考えています。希少疾患である軟骨無形成症治療薬の開発はその一例です。
また、企業として働きやすい環境づくりやダイバーシティを尊重するとともに、学会参加や論文発表を通してイノベーション創出にも貢献したいと考えております。
③G(企業統治)
・コーポレート・ガバナンスの強化
当社は、アプタマー創薬企業としてアプタマーを素材とする新薬を次々と創製し、継続的な成長と企業価値の最大化を図り、医薬品開発を通して社会に貢献できる企業を目指しており、コーポレート・ガバナンス体制の強化により経営の健全性や透明性の向上を継続的に図っていくことは、最も重要な課題の一つであると認識し、取り組んでまいります。
また、研修やe-learningを積極的に受講する事を通して法令や社内規程を遵守するコンプライアンスを重視するとともに、個別面談や説明会を通して様々なステークホルダーとのコミュニケーションも図ってまいります。
(8)参考資料(技術紹介)
①アプタマー医薬について
| 核酸であるRNAは、生物の体内では、DNA上の遺伝情報の配列のコピーとして、タンパク質の合成の鋳型として使用されます。しかしRNAは、そうした遺伝情報のコピーとしての役割だけではなく、「様々な立体構造を形成する」という重要な特性を有しています(RNAの造形力)。この造形力を利用して、病気の要因となるタンパク質に結合してその働きを阻害あるいは調節できるRNA分子(アプタマー)を創製し、医薬品として開発したものが「アプタマー医薬」です。標的にフィットするという意味のラテン語の「aptus」が由来となり「アプタマー」と呼ばれております。 アプタマー医薬は核酸を成分とすることから核酸医薬の一種になります。しかし、細胞内に入らなければ効果を発揮しない他の核酸医薬とは異なり、細胞内に導入する必要がないので非常に効率的です。 | <形状捕捉図>
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②「RiboART SystemⓇ」
当社の「RiboART SystemⓇ」は、RNAの生化学的性質の把握、特に潜在的なRNAの造形力の掘り起こし、アプタマーの構想・デザイン、アプタマーの創製から医薬候補アプタマーの仕上げまでをカバーする当社独自のアプタマー創薬の技術プラットフォームです。「RiboART SystemⓇ」は広汎な分野に応用可能な技術であるため、特定の疾患や領域に特化されないアプタマーの創製を行っております。
「RiboART SystemⓇ」においてコアとなる技術は、1)目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するポテンシーの高いアプタマーを取得する技術(SELEX法運用技術)と、2)取得したアプタマーを臨床開発品として最適化する技術です。このコア技術が、意図した薬効を示すポテンシーのアプタマーを取得・創製するうえで大きな効果を発揮します。
本システムでは、取得したアプタマーを新薬候補品となり得るように、加工プロセスによって、標的への結合力を103~104倍に増強するとともに、この技術を標準化しており、これが当社の技術的な強みと認識しております。
当社は、他の会社に先んじてSELEX法を利用した研究を開始したことによる現在の技術的優位性に安住することなく、5年先、10年先の技術動向を見据え、新たなSELEX法や、抗体で難しいとされる受容体に直接作用するアゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)、さらに細胞内に他の医薬を運搬するためのDDSに利用可能なアプタマー等の実現を目指しております。
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| 選抜: | 目標とする標的タンパク質に結合するアプタマーをSELEX法により選抜 |
| 分析: | 選抜したアプタマーの標的タンパク質への結合特性を分析 |
| 加工: | アプタマーを工業的、経済的に利用できるよう短鎖化したり、品質や薬効向上のために化学修飾を実施 |
| 試験: | 細胞試験や動物試験によりアプタマーの薬理効果を評価 |
| 評価: | 動物を用いてアプタマーの毒性を評価 |
<SELEX法のイメージ>
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③当社の新薬開発プロセス
新薬の研究開発は、下記の図に示すように、製品の上市までに、10数年の長い年月と数百億円もの多額の資金を要します。
この新薬の研究開発は、通常、臨床試験前の段階と臨床試験に二分され、さらに臨床試験前の段階は、大きく以下に分けられます。
1)新薬候補と考えられる化合物を考案、創製し、その中から様々な手法を用いて適切な化合物をスクリーニングする基礎・探索研究の段階
2)選定された化合物について、臨床試験に進むために必須の試験を行う非臨床試験の段階
当社では、新薬開発プロセスの中の(1)基礎・探索研究、及び(2)非臨床試験の段階において、「RiboART SystemⓇ」を運用しアプタマー医薬の開発を行っています。標的タンパク質の種類や特性、適応疾患などによって差は生じるものの、「RiboART SystemⓇ」の活用により、従来なら5~8年かかる基礎・探索研究及び非臨床試験の期間(1年前後のGLP試験の期間を含む)の内、標的タンパク質の決定からGLP試験を開始するための予備毒性試験ステージまでを、約3~4年で実施可能(当社実績)であると考えております。
<新薬開発プロセス>
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(9)参考資料(用語解説) アルファベット、50音順
| DDS | 薬剤の副作用の原因のひとつに、薬剤が標的臓器以外に作用することがあげられます。DDS(Drug Delivery System)とは、この問題を解決するために、薬剤が標的臓器に、適切な濃度で到達、作用できるように、剤形を工夫したシステムをいいます。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| GLP試験 | GLP(Good Laboratory Practice)とは、医薬品の安全性に関する非臨床試験(急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、催奇形性、その他の毒性試験)の実施に関する試験の質を担保する基準のことをいいます。この基準は「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」で定められています。なお、日本のGLPと同様な規制は欧米等でも実施されています。このGLPに準拠して行う試験をGLP試験といいます。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| POC | POC(Proof of Concept)とは、新薬の開発段階において、ある化合物がヒトでの臨床試験(通常は少数の患者を対象としたPhase 2a試験)において意図した薬効を有することが示されることをいいます。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| RNA | 遺伝情報は生命の設計図ですが、アデニン(A)チミン(T)グアニン(G)シトシン(C)という4種類の塩基の配列として、DNA(デオキシリボ核酸)という(2重螺旋構造の)核酸の中にコードされています。 ヒトならば30億塩基の配列がヒトを作り上げる全情報です。この塩基の並びはタンパク質のアミノ酸の配列を指定して、生命活動を司る様々なタンパク質を産生します。その時、DNAの配列情報は、一旦、アデニン(A)チミン(T)の代わりのウラシル(U)グアニン(G)シトシン(C)の塩基配列に置き換えて、RNA(リボ核酸)という核酸にコピーされ(この過程を「転写」といいます)、その遺伝情報のコピーを使ってタンパク質を合成します(この過程を「翻訳」といいます)。 そのため、分子生物学の黎明期から、RNAは単なる遺伝情報のコピーに過ぎないという思い込みが、世界的にも支配的でした。しかし、四半世紀前から、この考えは誤りであることが様々な研究によって明らかになってきました。特に立体構造を作って働く機能性RNAの生体内での役割が注目を集めています。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| RNAの造形力 | 当社は、アプタマーとIgGとの結合体の結晶構造をX線解析法によって明らかにしてNucleic Acids Res誌に発表いたしました(2010年、図参照)。 その結果、既存のアプタマーではRNAのリン酸の負電荷と、標的タンパク質の正電荷のアミノ酸領域とが電気的な相互作用によって結合するものしか知られていませんでしたが(図の右の事例)、IgGアプタマーはこれまでの常識を覆して、アプタマーが標的にフィットするしなやかな形状を作って、電気的な相互作用を使わずに、水素結合やファンデルワールス力のような多様な結合を利用して強く標的に結合することが明らかにされました。 つまり、RNAには、これまで予想もされなかった「しなやかな造形力」が備わっていることの証しです。このような基礎的な研究は、応用という点からも重要です。特に、医薬品の標的となるタンパク質は、必ずしもRNAと結合しやすい正電荷のアミノ酸が表面に多いとは限らないため、これらの基礎研究の成果は、非常に多くのタンパク質がRNAアプタマーの創薬ターゲットとなりうるということを示唆するものです。 また標的タンパクの捕捉方法について抗体医薬と比較した場合、アプタマーの特徴は、標的とするタンパク質の形状にフィットする立体構造を形成してその活性を調節する「形状捕捉」にあります。抗体医薬がタンパク質を構成する多数のアミノ酸の中から6~10個のアミノ酸の配列(エピトープと呼ばれる)を認識して標的タンパク質に結合するのに対して、アプタマーの標的タンパク質を捉える方法は大きく異なるといえます。
<アプタマーとIgG結合体の結晶構造> | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 化学修飾 | 品質や薬効向上のために、化合物の一部の分子や原子を他の分子や原子に置換したり、新たな分子や原子を結合させることをいいます。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 核酸医薬 | 1970年代以降、ヒトの遺伝子の研究が進展し、核酸が医薬品になるかもしれないという期待は1980年代に生まれました。しかし、当時は核酸、特にRNAを医薬に応用するための基礎的な技術が整備されておらず、しかもRNAという核酸の特性や立体構造等の学術的な理解も浅かったために、長期にわたる膨大な資金や人材の投入とは裏腹に核酸医薬の開発は実を結びませんでした。 しかし、その苦い教訓の中でも、RNAの加工技術の開発という地味な仕事がアカデミアや少数のベンチャー企業で継続されました。その結果、1998年に世界初となるアンチセンス医薬(VitraveneⓇ[一般名 ホミビルセン],エイズ患者のサイトメガロウイルス性網膜炎用の局所投与剤)が承認され、その後、2004年にアプタマー医薬であるマクジェンⓇ、2013年に2番目となるアンチセンス医薬(KynamroⓇ[一般名 ミポメルセン])が家族性高脂血症薬として承認されました。2016年にはデュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象としたEXONDYS51TM[一般名 エテプリルセン]、脊椎性筋萎縮症を対象としたスピンラザⓇ[一般名 ヌシネルセン]が相次いで承認され、さらに、2018年には家族性トランスサイレチン (TTR) アミロイドーシスを対象とした世界初となるsiRNA医薬(オンパットロⓇ [一般名 パチシラン])が承認され、アンチセンスやsiRNAを用いた核酸医薬品の開発が活発に進められています。 現在、研究開発中の核酸医薬には下記の表に示すものがあり、その中で主要な核酸医薬品の作用機序について下記の図に示しています。
<主要な核酸医薬品の作用機序>
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| 抗体、抗体医薬 | 抗体とは、体内で特定の異物(抗原)に結合してその物質を体内から排除するように働くタンパク質をいいます。この排除システムを抗原抗体反応といい、我々の体内に自然に備わっている防御システムです。 抗体医薬とはこの仕組を医薬品として応用するもので、具体的には、疾患の原因となっているサイトカインなどのタンパク質を抗原として認識する抗体を産生する細胞(主に動物の)を造り出し、その後、この細胞を培養して該当する抗体を取り出し、精製加工します。但し、ヒト以外の動物、例えばマウスの細胞が産生する抗体(マウス抗体)をそのままヒトに使用できない場合があるため、動物からとれた抗体をヒト型に組み替える技術が発達しています。 現在、臨床開発されている抗体医薬の多くは、このヒト化抗体、若しくはヒト抗体です。さらに、複数の抗原を狙ったものや持続時間の長期化のためにPEGと結合させたコンジュゲート抗体なども開発の俎上にのっています。 なお、抗体類似の構造を持ち作用・機能面においても抗体と類似するFc融合タンパク質は、広い意味で抗体医薬の一種に含むこともあります。 この抗体医薬は、難治疾患に対する確かな効果と安全性、高薬価、さらに技術開発があいまって市場が急伸しており、近年、世界的な開発競争が激化しています。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 最適化 | 医薬品の開発過程において、in vitro# 試験等によって薬効のある化合物が得られたとしても、より効果が優れ、安全性の高い化合物を得るための様々な工夫がなされます。このプロセスは最適化と呼ばれます。アプタマー医薬に関しては、長大な核酸配列の中から効果や安全性に関係のない部分をカットする短鎖化、核酸分解酵素の作用を阻止するための化学修飾、腎臓からの早期の排出を抑えるための化合物(ポリエチレングルコールなど)との結合などがその例です。 #「in vitro」は「試験管内で」を意味する技術用語 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| スクリーニング | 新薬の開発過程において、多数の化合物の中から目的とする化合物(薬効を示し安全性が高いもの)を選び出す作業のことです。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| トランスレーショナ ル・リサーチ | 大学や研究機関による基礎的な医学・薬学研究の成果を疾患の治療や新薬の開発に応用するための研究をいいます。 生命科学やバイオテクノロジーの飛躍的な発展に伴い、世界的に大学での研究成果を早期に実現化に向ける動きが加速しています。薬の場合、例えば新薬の候補となる物質が大学の研究室で発見されたとしても、それをヒトでの臨床試験に繋げるには化合物の最適化(より効果があり、安全性の高いモノに改良すること)、様々な動物実験、各種試験用のサンプルの製造等、多くの課題、ハードルがあります。この基礎から臨床試験に至る一連の橋渡しのための研究がトランスレーショナル・リサーチです。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ノウハウ、営業秘密 | ノウハウ(Know-How)とは「単独で又は結合して、工業目的に役立つある種の技術を完成し、又はそれを実際に応用するために必要な秘密の技術的知識と経験、又はそれらの集積」(国際商業会議所の定義)をいい、営業秘密とは①秘密に管理されていること、②有用な情報であること、③公然と知られていないこと、の3要件を満たす技術上、営業上の情報(不正競争防止法第2条第6項の定義に基づく)のことです。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 非臨床試験 | 臨床試験開始前に行われる試験を非臨床試験と言い、例えば予備毒性試験やGLP試験が含まれます。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 分子標的薬 | 生体内で疾患に関連する遺伝子やそれが係わるタンパク質等(サイトカイン、成長因子等)を標的としてその活動を阻害したり活性化することを狙った医薬品をいいます。抗体医薬もアプタマー医薬も分子標的薬の一種といえます。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| マイルストーン収入 | 医薬品の開発は、非臨床試験→第1相臨床試験(Phase 1)→第2相臨床試験a(Phase 2a)→第2相臨床試験b(Phase 2b)→第3相臨床試験(Phase 3)→申請→承認→発売というステップを踏んで進行します。 開発途上の医薬品のライセンスにおいては、この開発の節目を「マイルストーン」といい、それに到達したとき、あるいはその段階に入るときにライセンスの対価の一部がライセンサーに対し支払われる取引が普及しています。これによる収入を、「マイルストーン収入」といい、開発ステージが進むにつれて、商品化への確率が高まるため、マイルストーンの収入が増加するのが一般的です。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 予備毒性試験 | GLP試験に入る前に、的確なGLP試験を実施するためのデータ入手を目的として行う試験です。本試験で薬剤の毒性の概略を把握し、GLP試験での投与用量の設定根拠の情報を得ることができます。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ライセンス・アウト | 特許や開発中の製品に関する権利を他の会社に供与したり、譲渡したりすることを意味し、「導出」ともいいます。供与する権利の内容としては特許の実施権や使用権、さらにかかる特許によって保護されている製品の開発、及び製造・販売する権利などがあります。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 臨床試験 | 新薬についての製造販売承認を取得するには、ヒトでの有効性及び安全性を確認する臨床試験が不可欠です。この場合、通常、以下の3段階があります。第一段階は、少数の健常人を対象として、動物実験等により安全性の確認を終えた化合物について、その安全性や体内での動態等を確認する試験であり、第1相臨床試験(Phase 1試験)と呼ばれています。 第一段階をクリアすると、次の段階は少数の患者(被験者)を対象として、薬効と安全性を確認する第2相臨床試験(Phase 2試験)に入ります。この試験のステージは、通常、2ステップがとられ、最初のステップは、少数の被験者について主に薬効を確認する段階です。この試験はPhase 2a試験と呼ばれます。さらに被験者数を増やし、有効性と安全性のバランスを取るために最適な用量を確認するための複数の用量を設定して行うPhase 2b試験があります。 最後の段階は、新薬の承認申請を前に、多数の患者を対象として、それまでの試験で見出された「有効性」と「安全性」を最終的に証明・確定することを目的として行う第3相臨床試験(Phase 3試験)です。 なお、臨床試験は、承認取得の前だけでなく、承認の取得後も当局から承認の条件として実施が求められる場合があります。この時の試験は市販後臨床試験と呼ばれています。 |
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E30865] S100YF0X)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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