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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1007QN8

有価証券報告書抜粋 株式会社医学生物学研究所 研究開発活動 (2016年3月期)


事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

当社グループでは2015年6月より企業改革プロジェクトをスタートし、業績のV字回復を目指して持続的成長を可能とする種々の成長戦略を検討してまいりました。その検討結果を基に、2020年度に至る中期計画を策定し、2016年4月より実行段階に移っております。当社グループの目指すところは、「先端診断分野で存在感のあるグローバルニッチ企業」であり、達成への鍵となるのが当社グループの研究開発活動であります。
中期計画においては、従来の研究開発活動の在り方を見直し、臨床検査薬事業を当社の中核事業と位置付け、将来の検査薬シーズの提供をライフサイエンス・トランスレーショナルリサーチ(Life Science Translational Research:LSTR)事業が担うとする役割分担を明確にいたしました。また、これら事業を支える基盤技術として、抗原/抗体技術があり、今後この基盤技術開発にも積極的に資源投入を行う予定でおります。2015年11月及び2016年4月に、当社グループの研究開発体制の再編を実施し、中期計画の達成に向けて整備を終えた段階です。
当期は、上記中期計画策定と並行し、新規の臨床検査薬及びLSTR試薬の開発、ならびに抗体医薬のシーズ抗体のライセンス活動を行っております。
当連結会計年度における研究開発費は前期比0.2%増の12億37百万円で、主な進展は以下のとおりです。
(1) 臨床検査薬
① 自己免疫疾患検査試薬
自己免疫疾患検査試薬は当社のコア事業であり、従来より継続して新規項目の開発に注力しております。当期は、皮膚筋炎診断薬3製品(MESACUP™ anti-MDA5テスト、MESACUP™ anti-Mi-2テスト、MESACUP™ anti-TIF-1γテスト)の開発、上市を行いました。
皮膚筋炎は指定難病(306疾患)に認定されている自己免疫疾患の一種である慢性疾患で、皮膚紅斑や筋力低下、全身倦怠などの症状を呈し、その40~50%で間質性肺炎を併発することが知られています。
本疾患はその症状や検出される自己抗体の種類により複数の病型に分類され、その治療方法も異なるため、自己抗体の種類特定は重要な臨床的意義を持ちます。
特にanti-MDA5抗体陽性患者は高率で致死性の急速進行性間質性肺炎を併発するため、治療方針決定に際してその検出は非常に重要です。
② がん関連検査試薬(BCA225測定試薬)
血清中のBCA225は原発進行乳がん患者及び再発・転移乳がん患者において高い頻度で高値を示しますが、健常者、良性乳腺疾患患者、乳がん術後非再発患者では高値を示す例が少ないという結果が得られています。そのため、乳がん切除後の患者血清中において、BCA225測定値の上昇とがんの再発に相関関係があることから、術後モニタリングに有用な検査となっています。当社では従来からELISA法の検査薬を販売しておりましたが、2015年5月より自動化に対応したCLEIA法の臨床検査薬も販売を開始いたしました。これにより、より大量な検体の迅速処理が可能となり、市場の要望に対応した製品となりました。
③ ラテックス検査薬
かねてよりお客様から、迅速かつ多量の検体の測定が可能なラテックス検査薬開発の要望を頂いてまいりました。2015年11月に診断薬開発ユニットの中にラテックス開発プロジェクトを設置し、要望に応える体制といたしました。ラテックス検査薬開発では、既に実績を有する捷和泰生物科技有限公司(J&W、北京、JSR株式会社(JSR)と万泰生物薬業股份有限公司の合弁会社)と連携を図りながら、高感度、高性能の検査薬開発に注力しております。
④ 遺伝子検査試薬
大腸がん治療に用いられている抗体医薬は、RAS(KRAS及びNRAS)遺伝子の変異が存在すると期待した効果が得られにくいため、投与前にRAS遺伝子変異検査をすることで保険適用となっています。
「MEBGEN™ RASKETキット」は大腸がんの組織中のRAS遺伝子のエクソン2、3、4変異を簡便に検出する試薬で、変異の有無をPCR-rSSO法(xMAP(Luminex)法)を用いて迅速かつ客観的に判定します。最大96検体を約4時間半で測定することが可能で、大腸がん治療の抗体医薬の有効性を投与前に短時間で予測できるようになりました。「MEBGEN™ RASKETキット」は、国内初のRAS遺伝子変異を1チューブで検出するマルチプレックス検査薬です。
さらに2015年6月にBRAF遺伝子における変異の有無を判定するキット「GENOSEARCH™ BRAF」(臨床研究用)を発売しました。BRAF遺伝子の34変異を1チューブで検出でき、わずか50ngのDNAから、約4時間半で最大96検体を測定・解析することができます。

(2) 基礎研究用試薬
① MHCテトラマー試薬
がんなどの免疫細胞治療で重要な役割を果たす、抗原特異的細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T Lymphocyte:CTL)の検出試薬である「MHCテトラマー」の開発・販売に継続して注力しました。当連結会計年度では約120品目を開発し、これらの製品は、国内に加えて米国子会社(BION Enterprises Ltd.)でも高品質な試薬生産を行い、全世界に販売しております。
また、ペプチド・ワクチン療法のシーズとなる新規CTLエピトープを同定し、4件の特許を出願しました。なかでも札幌医科大学との共同研究では、がん幹細胞抗原BORISに対して複数の人種で有用な新規CTLエピトープを多数同定し、国際出願しました。さらに、CTL移入療法のシーズとなるT細胞受容体遺伝子の出願を終えました。
② 蛍光タンパク質
当社は、蛍光タンパク質ベクターと蛍光タンパク質に対する抗体を多数取り揃えております。2013年より販売している「Fluoppi™」は、タンパク質同士の相互作用(Protein-protein interaction, PPI)を、生きた細胞でリアルタイムに観察できるツールです。蛍光タンパク質とタグ技術を利用した当社の独自開発技術で、従来法に比べて使い方が簡便で、イメージングを専門とする研究者以外の方々も簡単にPPIを観察できます。
また、「Fucci」は、理化学研究所で開発された、細胞周期の進行をリアルタイムで観察できる蛍光プローブです。2種の蛍光タンパク質が組み込まれており、従来法では不可能であった細胞の増殖や分化、がん細胞の挙動などの生命現象の時間的、空間的なパターンをイメージングすることができる技術です。
当期では、製品販売に加え、技術導出事業の取り組みを行ってまいりました。従来は国内中心の開発、事業活動でしたが、海外製薬メーカー、創薬ベンチャーへの技術・製品紹介に軸足を移し、開発・マーケティングの加速を目的に、2016年3月に「創薬技術開発プロジェクト」を設置し、事業拡大に注力しております。

(3) 抗体医薬
当社ではかねてより、特異性が高く、高アフィニティーかつヒト型の抗体を得る種々の技術開発に取り組んでまいりました。例えばヒト融合パートナー細胞「SPYMEG」、人工リンパ節技術、ファージ・ディスプレイ技術などに成果として結びついております。
「SPYMEG」はヒトモノクローナル抗体を取得する有力なツールであり、デングウイルスの感染患者の末梢血単核球(デングウイルスに対する抗体を産生する細胞)と「SPYMEG」を材料に、細胞融合法を用いて数十種類の完全ヒト抗デングウイルス抗体の開発に成功しております。これらの抗体は、デングウイルス4つの型すべてに対して顕著に中和活性を有しており、初期感染の治療はもちろん、再感染時においても効果を発揮することが期待されます。
現在当社では、社外KOL(Key Opinion Leader)と共同で、目的とする抗体産生クローンを極めて短時間で取得できる新たな手法の開発に取り組んでおり、近々実用化が期待されています。また、当期は抗体医薬シーズのライセンス活動を強化し、その成果として複数の製薬メーカーへの導出に成功、あるいは近々成約の見込みの状況です。今後も抗体医薬シーズについてのライセンス活動を積極的に行っていく計画を持っております。
当社の抗体作製技術は、当社における臨床検査薬、LSTR試薬の基盤となる技術であると同時に、上記のように新規技術開発への取り組み、抗体医薬シーズを創製する基礎となるものであります。2015年11月に抗体開発ユニットを創設し、分散しておりました抗体開発機能を伊那研究所 駒ケ根分室に統合して、開発の効率化に着手いたしました。

(4) リキッド・バイオプシー開発チーム設置
近年、診断や治療の先端医療分野においてゲノミクス、プロテオミクス技術の応用に続き、エクソソームをはじめとするリキッド・バイオプシー(Liquid Biopsy:LB)の利用が注目を集めており、LB関連製品(検査薬、治療薬)の市場が急速に拡大することが予想されています。当社及びJSRライフサイエンス株式会社(LSC)においても、LB分野のLSTR製品を戦略的開発テーマに位置づけております。LSCとエクソソームの抽出キットであるExoCap™を上市し、市場において好評価を得ると共に、本分野のKOLである研究機関(研究者)との間で、次世代LB関連製品の開発に着手しております。一方、当社においてもエクソソーム関連の高アフィニティー抗体群の開発に成功しており、既に上市しております。
欧米中心にLB分野での開発競争が激しくなっており、当社もLB分野の開発を加速することを目的に、2015年11月にLSCの筑波研究所に共同でLB開発チームを立ち上げました。LSCは素材(含粒子)設計/開発技術、修飾技術に優れ、かつJSRの海外子会社であるJSR Micro, Inc.(米国)、JSR Micro N.V.(ベルギー)など海外にマーケティングチャンネルを有しております。当社は抗体開発/製造技術、ならびにLBキット開発技術に優れ、数多くの国内外KOLとの太いパイプを有しております。これら両社の優れた技術、機能を統合することで、先端LB関連製品の開発、上市を加速し、LB分野の先導企業となることを目指しております。

(5) 東京大学 医科学研究所との社会連携研究部門『システム免疫学』設置
国立大学法人 東京大学 医科学研究所と共同研究契約を締結し、同研究所国際粘膜ワクチン開発研究センターに、社会連携研究部門『システム免疫学(システム・イムノロジー)』を設置しております。粘膜免疫の基礎研究をベースに、大学の臨床各科と連携して各種免疫疾患の全ゲノム解析・DNAビッグデータを解読し、病因との関係を探索しつつ、“メディカルインフォマティクス”に精通した研究者の早急な育成を目指した活動を継続しております。
当社は、これまで自己免疫疾患を中心とした免疫疾患関連の検査薬を数多く発売してきましたが、システム・イムノロジーとの共同研究を通じて、自己免疫疾患のみならず自然免疫、粘膜免疫、がん免疫、免疫寛容等の免疫系全般に関して得られる情報から、革新的な臨床検査薬、医薬品、研究用試薬等の開発を目指しております。
当期は、腸管微生物群のゲノム解析の前段として、検体処理方法の検討を行い、手法の最適化に成功いたしました。近々本手法を使用して、ゲノム解析へと研究開発を進める予定でおります。

(6) 顧みられない熱帯病(NTDs)プロジェクト
当社では、国立大学法人 長崎大学と独立行政法人 国立国際医療研究センターとの連携で、2012年度より「途上国におけるイノベーションを促進する国際協力の戦略的推進」事業において「貧困層を中心とする複数感染症の一括・同時診断技術開発のアフリカ拠点整備とその技術を用いた多種感染症の広域監視網と統合的感染症対策基盤の構築」プロジェクトを推進しています。本事業は、1997年のG8北海道洞爺湖サミットの際に日本政府がアフリカ支援の重要性を表明したことにより始まり、文部科学省の科学技術戦略推進予算で実施されています。
「顧みられない熱帯病:Neglected Tropical Diseases, NTDs」とは、熱帯地域の貧困層を中心として蔓延する17種類の寄生虫や細菌の感染症(住血吸虫、エキノコッカス、トリパノソーマなど)で、三大感染症(エイズ、マラリア、結核)に比べて世界からあまり関心が向けられず、十分な対策が取られていません。本事業は、NTDsを含む複数感染症を一括同時診断する技術を実用化し、アフリカでの拠点整備と感染状況を把握する仕組みの構築を目指しているプロジェクトです。その中で当社は診断キットの開発と製品供給の役割を担っています。
2016年1月にJoint Symposium (2nd International Symposium)がケニアのナイロビにて開催されました。当社からも2名が参加し、本事業に係る成果を発表いたしました。

事業等のリスク財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析


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