有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100T6RZ (EDINETへの外部リンク)
株式会社AVILEN 事業の内容 (2023年12月期)
当社は、2018年に創業し、「データとアルゴリズムで、人類を豊かにする」というパーパスのもと、当社が独自開発した技術コアモジュール(※7)である「AVILEN AI」を活用したAIソフトウエアの開発、実装、またAIドリブンなビルドアップコンテンツ(DXやAIを推進するための組織開発や人材育成コンテンツ)も提供することで、企業のAI活用/DX推進を一気通貫で支援する「AIソリューション事業」を展開しております。
当社が目指す姿は、多くの企業に対し「AIソフトウエアユニット」に関わるサービスを提供するために、AI推進に既に着手をしているAI-Readyな企業だけでなく、これからAI推進に着手するAI-Ready以前の企業に対しても、ビルドアップコンテンツを提供することで、アセスメントや方針策定等のデジタル組織・人材の開発を行い、要件定義から実際のデータの利活用を見据えたデータ基盤となるデータ・プラットフォームの設計と実装を支援し、更にはAIソフトウエアの実装・活用(顧客企業における新規事業の創出や業務効率化のために課題の特定から企画、PoC(※8)、開発・実装まで行う)を推進し、当該企業や資本業務提携先とのパートナリングにより共同開発したパッケージ型ソフトウエアを拡販・普及を実現し、データ×AIで豊かな未来を実現することを目指しております。
当社はAIソリューション事業の単一セグメントとして、「AIソフトウエアユニット」、「ビルドアップユニット」という2つのサービスを提供しております(「ユニット」とはAIソフトウエア及びビルドアップそれぞれのサービスの総称)。「AIソフトウエアユニット」として自社開発技術コアモジュールである「AVILEN AI」を活用し、ビジネスプロセスへのAI実装・データ利活用を支援し、「ビルドアップユニット」として組織のアセスメントやロードマップの策定、経営者や従業員、経営企画やエンジニア等部門横断的なAI人材の育成による組織開発を支援し、両ユニットにまたがるサービスとしてD&A戦略コンサルティング(データ及びアナリティクスと事業戦略策定の繋ぎこみを行うコンサルティング)を提供しております。なお、「AIソフトウエアユニット」においては法人向け、「ビルドアップユニット」においては法人及び個人向けにサービスを提供しております。両ユニット共に主にフロー収益ですが、「AIソフトウエアユニット」の一部サービスにおいてはストック収益となっております。
当社は、月間25万PV(当事業年度の月間PVの平均値)の自社メディアの「AI Trend」を活用することで、効率的なリード顧客(見込み顧客)の獲得(2023年12月末時点で上場企業グループを含む大手企業を中心に累計700社以上の法人顧客と取引実施)が可能となっております。当社は、多くの企業に対し「AIソフトウエアユニット」に関わるサービスを提供するために、「ビルドアップユニット」にコンテンツのクロスセルや他部門への拡大による深耕(IT部門で領域特化研修、営業部門でG検定対策研修を実施する等)を進めて、顧客とのリレーション構築を行い、企業が抱える経営課題を特定しつつ、「AIソフトウエアユニット」において、AI・データサイエンスの観点でデータの利活用により業務効率化等の新たな価値を創造するAIソリューションを提供できるというビジネスモデルを構築しております。
(1)当社の特徴と優位性
当社の特徴と優位性は、「①特定の業界に限定されない顧客の課題を捉え、マルチモーダル(※9)なAIソフトウエアの開発を可能にする技術コアモジュール」、「②潜在的なAI/DX市場を創出し、高い継続率を実現するビジネスモデル」、「③業界全体が抱える成長ボトルネックを解消する「AVILEN DS-Hub」のエコサイクル」、及び「④高いブランド認知による顧客獲得能力」にあります。
①特定の業界に限定されない顧客の課題を捉え、マルチモーダルなAIソフトウエアの開発を可能にする技術コアモジュール
当社は9つの自社開発技術コアモジュールである「AVILEN AI」を有し、幅広い技術領域をカバーしております。コアモジュールがあることで効率的な開発を可能としております。最新論文や最先端のテクノロジーをリサーチする社内の体制(AVILEN Research)を構築しており、常にコアモジュールをアップデートすることが可能となっております。また、特定の業界に限定されない顧客の課題を捉え、AIソフトウエアを提供しております。単一のモジュールでは解決できない課題に対しては、複数のモジュールを組み合わせたマルチモーダルなAIソフトウエアの開発も可能としております。また、2023年4月には、コアモジュールである「Instructea」とChatGPTを組み合わせたSaaSプロダクトである「ChatMee」の販売を開始しており、生成AIビジネスへの展開も進めております。
②潜在的なAI/DX市場を創出し、高い継続率を実現するビジネスモデル
AIビジネス市場はまだ導入段階で長期的な発展が期待されております。AI導入の目的は業務効率化や生産性向上等その利用範囲・目的も幅広い一方で、慢性的なAI人材の需給ギャップが顕在化しており、企業はAIの導入が急がれるも、専門人材の採用難等から同時に人材の育成を行うことによる、AI/DX組織への変革が求められています。
当社は、AI推進に既に着手をしているAI-Readyな企業だけでなく、これからAI推進に着手するAI-Ready以前の企業に対してもビルドアップコンテンツを提供することで、潜在的なAI/DX市場を創出することが可能となっております。
また、「ビルドアップユニット」及び「AIソフトウエアユニット」のビジネスを展開することで、顧客内でのビルドアップコンテンツのクロスセル、そして他部門への拡大による深耕、さらにビルドアップコンテンツを活用しながら企業が抱える経営課題を特定しつつ、AI・データサイエンスの観点でAIソフトウエアを開発することで顧客と幅広い業務領域で取引ができるため、結果としてAI技術の導入サービスのみを提供するビジネスモデルと比較して高い継続率を実現し、LTV(※10)を拡大することが可能となっています。
③業界全体が抱える成長ボトルネックを解消する「AVILEN DS-Hub」のエコサイクル
AIビジネス市場は、人材不足が機会(ニーズ)であり脅威(ボトルネック)となっている状況であり、ベンダー側、ユーザー側の両社において慢性的な人材不足が顕在化しており、社内人材を育成、或いは中途採用が主流となっています。
当社は、社内のデータサイエンティスト・エンジニアに加え、237名(2023年12月末時点)のデータサイエンティスト・エンジニア集団である「AVILEN DS-Hub」を組織しています。在籍メンバーは、当社が独自開発した技術スクリーニングテストを通過した人材になります。「AVILEN DS-Hub」は主にデータサイエンス領域を研究している学生メンバーで構成されており、在籍メンバーは個別に当社と業務委託契約を締結し、当社の「AIソフトウエアユニット」におけるコーディング業務や技術的サポート(技術調査や技術適用)、「ビルドアップユニット」におけるコンテンツ開発や受講者からのアルゴリズム(※11)等に関わる質問対応等の業務を行うとともに、当社の安定した採用ルートの確保にも繋がっており、「AVILEN DS-Hub」から累計で25名のデータサイエンティスト・エンジニアを採用しています。「AVILEN DS-Hub」で経験を積んだ後に正社員として採用するため、即戦力人材の獲得、採用コストの低減、高いエンゲージメントとリテンションに繋がっています。
④高いブランド認知による顧客獲得能力
当社は、月間25万PV(当事業年度の月間PVの平均値)の自社メディアの「AI Trend」、一般社団法人日本ディープラーニング協会が実施するE資格において、当社が提供するE資格講座の受講者の7期連続合格者数1位(2021#1~2024#1)という実績等により効率的に顧客獲得が出来ており、2023年12月期は170社の新規法人顧客(2023年12月期に初めて取引開始した法人顧客)を獲得しました。
結果として、創業6期目で製造業界や金融業界、物流業界、情報通信業界及びサービス業界等といった各産業の上場企業をはじめとした企業との取引が「AIソフトウエアユニット」、「ビルドアップユニット」それぞれのサービスで複合的に進展しており、LTVも上昇傾向にあります。
(2)当社が展開するサービス及びソリューションの内容
①AIソフトウエアユニット
当社は、企業が抱える経営課題を特定し、AI・データサイエンスの観点でデータの利活用により業務効率化等の新たな価値を創造するソリューションを提供しています。金融、インフラ、製造業、サービスといった様々な業界の既存オペレーションを理解したうえで、当社のコアモジュールを活用したカスタマイズ型ソフトウエアを提供しております。なお、コアモジュールは効率的な開発を可能とするアルゴリズムになります。
また、当社は「AIソフトウエアユニット」で開発されたサービスのうち、汎用性の高いサービスをパッケージ型ソフトウエア(SaaS)として業界横展開をしております。2023年4月にコアモジュールである「Instructea」とChatGPTを組み合わせたSaaSプロダクトである「ChatMee」を開発・販売開始しており、生成AIビジネスへの展開も進めております。
画像やパッケージデザインを自動生成するアルゴリズムを搭載したコアモジュール 開発事例)画像生成、パッケージデザイン自動生成 | ||
ChatGPTなどのLLM(※12)を扱い自然言語処理をするためのアルゴリズムを搭載したコアモジュール 開発事例)「ChatMee」 | ||
手書き文字や非定型帳票、図面等をデジタル化するためのアルゴリズムを搭載したコアモジュール 開発事例)機械部品の図面認識、広告チラシのデジタライズ化 | ||
インフラ等建造物の異常・損傷を検知するためのアルゴリズムを搭載したコアモジュール 開発事例)大型設備の点検自動化、ケーブル異常検知 | ||
時系列データを分析し、予測するためのアルゴリズムを搭載したコアモジュール 開発事例)「AI Seed」、パッケージデザイン分析 |
②ビルドアップユニット
顧客企業におけるAI/DXに関わる組織及び人材の現状評価から必要人材(ビジネス領域及びエンジニア領域)の育成まで、AIの実装を実現するための組織開発に必要なアセスメント・方針策定・ロードマップ策定・エグゼキューション・人材育成に関わるパッケージ化されたサービスを一気通貫で提供しております。
具体的には、法人・個人向けにeラーニングをベースとしたAIに関するパッケージ化された研修サービス(動画講義、講義資料)を提供しております。2023年12月期の売上割合は法人向けが87.5%となっております。また、研修サービスは、社内人材を中心に独自に制作しております。
サービス名 | 対象 | サービス概要 |
AI/DX組織開発ロードマップ | 法人 | AI/DXを推進するための組織・人材開発を下記4つのSTEPで支援するサービス。 STEP1:目指すべき姿の設定(自社で必要とされる人材を明確化し、その人材が持つべきスキルセットを定義) STEP2:現状分析(現状分析から不足ポイントを明確化) STEP3:育成計画策定(社内の人材育成ロードマップ策定) STEP4:採用計画策定(採用による人材獲得ロードマップを策定) |
ChatGPTビジネス研修 | 法人/個人 | 法人/個人のChatGPTに対するリテラシーを向上させ、ChatGPTの業務への導入・活用のためのポイントを効率的に学習するサービス。 |
AIビジネス研修 | 法人/個人 | 前提知識ゼロからAIリテラシーを習得し、AI推進手順に沿って課題や注意点を学び、企画ワークで自社へのAI活用を企画し、自社でAI開発プロジェクトを企画できるレベルまで育成することを目指すサービス。 |
DXリテラシー研修 | 法人/個人 | 前提知識ゼロからDXリテラシーを習得し、立案した施策を推進することができるレベルまで育成することを目指すサービス。 |
G検定対策講座 | 法人/個人 | G検定の試験出題範囲に準拠したG検定の合格を目指すサービス。 |
E資格講座 | 法人/個人 | E資格の試験出題範囲に準拠したE資格の合格を目指す。専属アドバイザーのコンサルティングサービスを活用し効率的に学習するサービス。 |
AIエンジニア 武者修行研修 | 法人 | 9ヶ月間の座学(eラーニング+演習)と実践学習(PBL※13・Kaggle※14・OJT※15)を通じて、AI開発案件にアサイン可能なレベルのAI・データサイエンススキルを学ぶサービス。 |
データサイエンティスト 研修 | 法人/個人 | データ分析業務に必須の知識を厳選し、最短スピードで基礎を習得できるサービス。 |
ディープラーニング 領域特化研修 | 法人/個人 | Pythonや機械学習(※16)の基礎を身につけた後、さらに専門性の高い領域に特化したデータサイエンス応用研修。 |
用語集
注釈番号 | 用語 | 用語の定義 |
※1 | DX | Digital Transformationの略称であり、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することをいう。 |
※2 | AI | Artificial Intelligenceの略称であり、人間にしかできなかったような高度に知的な作業や判断を、コンピュータを中心とする人工的なシステムにより行えるようにしたものをいう。 |
※3 | ディープラーニング | ディープラーニング(深層学習)とは、人間が自然に行うタスクをコンピュータに学習させる機械学習の手法のひとつ。 |
※4 | Microsoft for Startups | Microsoftが提供する革新的な技術やサービスを有するスタートアップ企業のサービス立ち上げから顧客開拓まで伴走する無料支援プログラム。 |
※5 | ChatGPT | OpenAI社が2022年11月に公開した人間的な会話の成立を目指した人工知能に類するコンピュータプログラム。 |
※6 | SaaS | Software as a Serviceの略称で、クラウドサーバーにあるソフトウエアをインターネットを経由してユーザーが利用できるサービス。 |
※7 | コアモジュール | 当社の過去のAI関連開発におけるアルゴリズムの集合体。 |
※8 | PoC | Proof of Conceptの略称で、新たなアイデアやコンセプトの実現可能性やそれによって得られる効果などについて検証すること。 |
※9 | マルチモーダル | 様々な種類の情報を利用して高度な判断を行うAI。例えば、音声、画像、テキストなどの複数の情報を組み合わせて判断するAI等。 |
※10 | LTV | Life Time Valueの略称で、「顧客生涯価値」と訳される。一社の顧客が取引を始めてから終わりまでの期間(顧客ライフサイクル)内にどれだけの利益をもたらすのかを算出した指標。 |
※11 | アルゴリズム | ある特定の問題を解いたり、課題を解決したりするための計算手順や処理手順をいう。 |
※12 | LLM | Large Language Modelsの略称で、巨大なデータセットとディープラーニング技術を用いて構築された大規模言語モデル。 |
※13 | PBL | Project Based Learningの略称で、知識の暗記などのような受動的な学習ではなく、自ら問題を発見し解決する能力を養うことを目的とした教育法のこと。 |
※14 | Kaggle | 企業や政府などの組織とデータ分析を行うデータサイエンティスト/機械学習エンジニアを繋げるプラットフォーム。 |
※15 | OJT | On-the-Job Trainingの略称で、実践を通じて業務知識を身につける育成手法。 |
※16 | 機械学習 | コンピュータが大量のデータを学習し、分類や予測などのタスクを遂行するアルゴリズムやモデルを自動的に構築する技術をいう。 |
[事業系統図]
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