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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100G7RN

有価証券報告書抜粋 清水建設株式会社 研究開発活動 (2019年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等

当社グループの当連結会計年度における研究開発費は125億円であり,うち当社の研究開発費は123億円である。研究開発活動は当社の技術研究所と建築総本部,土木総本部等の技術開発部署で行われており,その内容は主に当社建設事業に係るものである。
当社は,建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより,多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や,さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも,幅広く積極的に取り組んでいる。技術研究所を中心とした研究開発活動は,基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており,異業種企業,公的研究機関,国内外の大学との技術交流,共同開発も積極的に推進している。
当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりである。

(1)生産技術・i-Construction
①「シミズ・スマート・サイト」の導入
人とロボットが協働して建設作業を行う次世代型生産システム「Shimz Smart Site(シミズ・スマート・サイト)」の建設現場への適用を開始した。初適用した新大阪の現場では,水平スライドクレーン「Exter」で資材を搬入し,水平搬送ロボット「Robo-Carrier」によって,天井ボードとエアコンユニットを20フロア分,各階50~60パレット,計1,000~1,200パレットを搬送した。また,多能工ロボット「Robo-Buddy」が,ロビーや一部の客室天井を施工した。今後,首都圏の大規模現場へ水平展開するとともに,ロボット開発を加速し,導入現場の拡大を図る。

②IoT,AI技術によるトンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」の開発に着手
今後想定される熟練技能労働者の大量離職を見据え,生産性の向上と一層の安全性確保を目的として,ICT,IoT,人工知能(AI)などの最新技術を活用した次世代型トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」の開発に着手した。本システムは,ヒューマンエラーをセンシング技術でカバーする「支援的保護システム」,AI等を組み込んだ建設機械と相番作業者が協調しながら安全な協働作業を実現する「Safety2.0」のコンセプトを導入する。また,熟練工が持つ経験知を定量化し,AIによる建設機械の自動運転等を実現することで,大幅な省人化・省力化を図る。

③AIにより掘進計画を最適化する「シールド掘進計画支援システム」を開発
シールドトンネル工事の掘進計画をAIで最適化する「シールド掘進計画支援システム」を名古屋工業大学と共同で開発した。AIが試行錯誤しながら自己学習することで最適解を導く強化学習手法により,トンネル線形に応じたシールド機操作の計画値,セグメントの配置計画を導き出すことができる。トンネル掘進開始前の計画段階のみならず,施工段階における日々の掘進管理への活用も可能となる。

④振動を可視化し切羽を監視する「切羽崩落振動監視レーダーシステム」を開発
ミリ波レーダーを用いて,切羽全面をモニタリングする切羽崩落振動監視レーダーシステムを開発した。物体表面を面的に探査しながら目視では確認できない微細な振動挙動を捉えることができるミリ波レーダーによって,崩落の予兆検知が可能となる。本システムの現場適用を進めるとともに,崩落・落石現象が発生する以前の予兆条件をデジタルデータとして蓄積し,将来の無人化施工技術の構築につなげていく。

⑤山岳トンネル工事の業務を効率化する「リアルタイム遠隔立会システム」を開発
山岳トンネル工事における検査・管理業務の合理化を目指し,タブレット端末を用いたリアルタイム遠隔立会システムを開発し,現場に適用した。本システムは,建設現場の働き方改革が官民を挙げて進められている中,ICTを活用して物理的な距離を克服し,発注者・施工者双方の検査・管理業務の生産性向上を図るツールであり,発注者の検査員が現場に赴くことなく,遠隔地の端末上で施工状況の確認から記録写真・帳票類の承認に至る一連の検査プロセスを完結できる。

⑥騒音下におけるコミュニケーションツール「骨伝導ヘッドセット」を開発
トンネル内の騒音下においても,入坑者が防じんマスクや防音耳栓を着用したままの状態で円滑にコミュニケーションできる通話システム「骨伝導ヘッドセット(仮称)」を開発した。骨伝導は音声をこめかみの骨を介して聴覚神経に伝える仕組みであり,通話時に保護具の脱着が不要であるうえ,通話がトンネル内の騒音の影響を受けることがない。使用者は,マスクを着用したまま通信相手の名前を声にするだけで,音声認識AIアプリが自動的に通話相手を選定し,通話を開始できる。

⑦ICTにより工事を自動化する「ダムコンクリート自動打設システム」を開発
軌索式ケーブルクレーンを利用するダムコンクリートの打設工事を対象とした「ダムコンクリート自動打設システム」を開発した。ダム工事において総工費の約6割を占めるコンクリート打設工事における,コンクリートの製造から運搬・打設に至る一連の繰り返し作業を完全自動化できる。施工監理者が事前に作成した打設計画を入力するだけで使い始められ,リアルタイムの打設状況をタブレット端末から確認することができる。

(2)品質管理技術
①物理特性の化学的評価手法「CW-QUIC」を開発
既製杭の先端部を支持層と一体化するソイルセメントの強度を化学的に評価する技術「CW-QUIC」を開発・実用化した。ソイルセメントの強度を,セメントと水の混合比率並びにセメント含有量から求める技術であり,従来の圧縮強度試験では数日を要していた判定時間がわずか1時間程度,費用も従来試験同等であるうえ,現場で即座に確認できる。今後は既製杭を採用する全現場に展開するとともに,本技術の外部へのライセンス供与を予定している。

②既存杭の活用に不可欠な杭長診断法「コンピタ」を開発
地中に打設された基礎杭の頭部を打撃するだけで杭の全長を正確に推定できる杭長診断法「コンピタ」を開発した。近年,市街地等の建替工事においてニーズが高まっている既存杭の再利用に向けて,杭の先端が支持層に到達していることの確認は不可欠である。コンピタは,周辺地盤における表層から支持層に至る各地層の土質の影響を考慮したモデルを構築し,三次元有限要素解析で弾性波伝播速度の変化を評価することで,杭長を精度よく推定する。日本建築センターより杭長診断法として初の技術評定を取得した。

③基礎梁開孔部補強工法により基礎を合理化する「大開孔基礎梁工法」を開発
鉄筋コンクリート造の基礎梁に貫通孔を設けるための工法「大開孔基礎梁工法」を㈱鴻池組,㈱錢高組,東急建設㈱,コーリョー建販㈱と共同開発した。これまでの工法に比べて基礎梁せいを抑えることができるため,基礎部の掘削土量やコンクリート量を削減でき,コスト削減や工期短縮も見込める。日本建築総合試験所より,本工法の信頼性を認証する建築技術性能証明を取得している。

④ICTによる品質検査システム「遮水シート施工検査支援システム」を開発
廃棄物処分場などに敷設する遮水シートの品質検査結果を管理する「遮水シート施工検査支援システム」を㈱菱友システムズと共同開発・実用化した。タブレット端末とGNSS衛星測位システムによって,クラウドサーバに保存した遮水シート図面上に色別した検査済箇所と不具合箇所を見える化し,リアルタイム確認を可能とした。検査箇所の重複や検査漏れを防止するとともに,手作業で行っていた検査記録作業の効率化を図ることができる。

⑤触媒添加型ポリウレタン系止水材「NLクイック」を開発
地下のコンクリート構造物に生じた漏水を短時間かつ確実に抑える止水材「NLクイック」を,ピングラウト協議会とともに開発・実用化した。NLクイックは,加水反応型ポリウレタン樹脂に専用触媒を添加した止水材で,触媒量で反応時間を制御することができるため,漏水状況に応じた使い分けが可能となり,止水工事の生産性向上が期待できる。今後,ピングラウト協議会会員企業への展開・普及を進め,インフラ構造物の長寿命化への貢献を目指す。

(3)環境・設備技術
①CO2フリー水素の利用実証「ゼロエミッション・水素タウン連携研究室」を設立
建物や街区の低炭素化,災害に強いまちづくりを目指して,産業技術総合研究所とともに「清水建設‐産総研 ゼロエミッション・水素タウン連携研究室」を設立した。産総研の水素吸蔵合金を核とした水素貯蔵技術と当社のエネルギーマネジメント技術の融合によるイノベーションを推進し,CO2フリー水素の地産地消を狙った水素エネルギー利用システムの実証を通じて,ゼロエミッション・水素タウンの構築を目指す。

②AIによるサーバ室管理システム「SMTクラウド」を開発・事業化
サーバ室の温度環境制御をクラウドからリアルタイムで行うサービス「SMT(Smart Management Technology)クラウド」を,三谷産業㈱と共同で開発した。本サービス導入によって最大25%程度の省エネ効果が見込まれるとともに,温度環境を遠隔から見える化することで管理業務の大幅削減を実現した。また,空調制御機能の大部分をクラウドに集約しAIを活用することで,サーバ室の運用変更や空調機器更新に伴うシステム調整にも速やかに対応することができる。

③3DモデルによるZEBシミュレーションツール「ZEB Visualizer」を開発
ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)実現に向けて,施設の省エネルギー性能をシミュレーションするコンピュテーショナル・デザインツール「ZEB Visualizer」を開発・実用化した。本ツールを使うことで,従来手法では困難であった設計初期段階における性能評価指標の算出を迅速に行うことができる。設計建築物の一次エネルギー消費量を計算し,ZEBの達成度合いを確認しながら,複数のデザイン案を繰り返しシミュレーションすることで提案の最適化が可能となる。

④病院物流動線計画支援システム「サプライくん」を開発
病院内の複雑な物流動線をわかりやすく見える化する病院物流動線計画支援システム「サプライくん」を開発・実用化した。当社が培ってきた病院運営経験に基づくノウハウを活かし,医療材料,薬剤,リネンなどの物品カテゴリー別に,搬送の時間帯や頻度などをデータベース化し,標準的な院内物流方式をモデルとして初期設定することで,簡単な操作で短時間に物流動線を評価・見える化できる。今後,本技術とBIMとの連動を目指すとともに,コンサルティング業務を積極的に展開していく。

(4)新領域技術
①次世代の素材「ロジックス構造材」の産学共同研究開始
鉄筋コンクリートに代わる新素材「ロジックス構造材」の開発を目的に,北海道大学と次世代高性能材料に関する産学共同研究に着手した。コンクリートに生じるひび割れや鉄筋の腐食など,これまで解決が困難であった鉄筋コンクリート構造物の問題点を克服する新素材を開発する。2021年3月末までの第1フェーズでは,コンクリートの分子(ナノ)レベルから構造体(マクロ)レベルにいたる各レベルで生じる化学・物理現象を統合して,時間の経過とともに変化する鉄筋コンクリートの物性をシミュレーションする技術を構築し,続く第2フェーズではロジックス構造材の開発を具体化させる予定である。

②自動運転車両の安全・効率的な走行を支援する施設側システムの実証開始
完全自動運転技術を導入した施設・街区内移動システムの構築を目指し,自動運転車両の安全かつスムーズな走行を施設側からサポートする管制・監視システムを構築,システムの実効性を検証する実証実験に着手した。敷地内での自動運転の鍵となる高精度三次元マップを整備するとともに,構内建物群のBIMデータの施設情報と自動運転車両の位置,走行状態などの情報を一元管理する。今後は,車両とエレベーターの統合制御技術や,歩行者ナビゲーションシステムとの連携技術などの開発・実証実験にも取り組む。


③スリム耐火ウッドの高性能化と適用
優れた耐火性能を備えたスリムな木質柱「スリム耐火ウッド」の2時間耐火仕様について,国土交通大臣認定を取得した。スリム耐火ウッドは,競合製品より20%以上細いことを特長として菊水化学工業㈱と共同開発した。2時間耐火認定取得により,最大14階建ての建築物の木質柱として使用可能となる。あわせて,スリム耐火ウッド柱と鉄骨梁を接合した木質ハイブリッド架構「シミズハイウッド」の2時間の耐火性能も独自に実施した耐火実験により確認し,名古屋市内に建設する中層集合住宅に初適用した。

④木目調打放しコンクリートへのアート型枠の適用
1,000㎡を超える杉板型枠による木目調打放しコンクリートの施工に,東洋アルミニウム㈱と共同開発した超撥水型枠「アート型枠」を適用した。近年,ニーズが高まっている木目調コンクリートにおける施工上の課題である,コンクリート表面の気泡痕や型枠付着を,蓮の葉の表面機構を模した超撥水層によって抑制する。アート型枠の製作コストは通常に比べて増加するものの,表面仕上げ工程の大幅削減により吸収し,トータルコストは同等以下となることを確認した。


事業等のリスク株式の総数等


このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E00053] S100G7RN)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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