有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100TRSU (EDINETへの外部リンク)
Institution for a Global Society株式会社 事業の内容 (2024年3月期)
当社は、「分断なき持続可能な社会を実現するための手段を提供する」ことを企業パーパスとし、SDGsで掲げられる17の目標のうち特に、「4. 質の高い教育をみんなに」、「5. ジェンダー平等を実現しよう」、「8. 働きがいも経済成長も」、「10. 人や国の不平等をなくそう」を優先課題として、事業に取り組んでいます。
ビジョンとして、「人を幸せにする評価と教育で、幸せを作る人、をつくる。」を掲げ、個人が持つ多面的な能力を科学的に評価するシステム、評価データにもとづき成長を支援する教育コンテンツ、そして個人がデータを安全かつ主体的に活用するためのプラットフォームを学校法人、企業、自治体などのコミュニティに対して展開しています。当社サービスは、個人と組織のエンパワーメント(*)を支援し、Society5.0時代の産業基盤となるものと考えております。
変化の著しい昨今の社会情勢においては、学歴という単一の軸だけに頼った人材評価・育成は困難であるとの課題認識のもと、2010年にグローバルに活躍できる人材の育成を目的とした教育事業(塾の企画運営)で創業しました。その後、教育の変革には、人材評価を根本から変えることが必要との想いから、テクノロジーの活用によって多面的な能力を公平に評価する「GROW」を2016年に開発し、2017年以降AI搭載エンジンにより社員や採用候補者の気質(*)・コンピテンシー(*)・スキルを科学的に測定して能力を可視化する「GROW360」を企業の人事領域に拡大して参りました。幅広い業種の多階層(職種×職位)における人材の評価データが蓄積されたことから、採用など人事の一領域に限らず戦略的人事(*)分野での応用を進め、2019年には教育現場に向けて同様の人材評価システム「Ai GROW」の提供を開始しました。さらに2020年以降、今後ESGが進展し、持続的社会の実現に向けて、企業とステークホルダーの関係が変化し、個人が自ら情報を管理・利活用する方向に変化を遂げる中で、当社サービスがそのインフラとなることを目指して、慶應義塾大学経済学部附属経済研究所FinTEKセンターと共同で、個人が主体的かつ安全に自分自身のデータの利活用ができることを目的にブロックチェーン(*)技術を応用したプラットフォームの実証(2023年3月までの3年間)を実施しました。そして2023年10月より、その成果や知見を発展させた無償の学びと転職支援を一体化したサービス「ONGAESHIプロジェクト」を開始しました。
当社基幹システム「GROW」は、回答者自身の気質(性格)を潜在的な認知バイアス(*)を除去して正確に測る技術(特許取得)や、他者による評価を補正し忖度などの評価におけるバイアスを除去するためのAIアルゴリズム(特許取得)に強みがあり、公平で一貫した評価を行えることから、ハーバード・ビジネス・スクールのPeople Analytics(*)に関する代表ケースとしても取り上げられています(2017年8月25日「GROW: Using Artificial Intelligence to Screen Human Intelligence」)。また、ケンブリッジ大学や慶應義塾大学などとの共同研究をベースにして産官学連携でサービス開発に取り組んでおり、国内の大手企業や先進的な取り組みを行う学校法人のみならず、国際機関や海外の政府機関などでの導入実績があります。
当社グループの主なサービスと、各事業の内容は以下のとおりです。また、次の各事業は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」に掲げるセグメントの区分と同一であります。
(1)HR事業
HR事業では、企業の人材採用・育成・配置・組織開発を、人材評価システム、オンライン教材、コンサルティング、研修など、多岐にわたるサービスを組み合わせて支援しています。特に、AIによってバイアスを補正した人材評価データを取得、分析し、データに基づく人事を可能にする点に強みを持っています。
2023年6月発出の『経済財政運営と改革の基本方針2023(仮称)』の原案において、三位一体の労働市場改革の方針の中で、「リ・スキリングによる能力向上支援」、「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」、「成長分野への労働移動の円滑化」の施策が定められており、当社がソリューションを提供している人事評価・育成市場の環境は引き続き良好で、拡大を見込んでおります。また、人的資本に関する文脈では、2022年6月公表の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告において、有価証券報告書及び有価証券届出書の記載事項の改正内容に「人的資本、多様性に関する開示」が取り入れられ、企業は2023年3月期決算から対応が義務付けられることになりました。これにより、今後もますます人材評価データの蓄積と活用シーンは拡大が続くと見込んでおります。
2017年のGROW360開発後は、主に新卒採用で企業の人事部を中心に展開をしてまいりました。2019年以降は大企業の事業戦略に直結するサービス(組織開発・人的資本経営支援)も提供するようになり、人事部のみならず経営企画部、財務・IR部門との連携も進んでいます。2023年度当事業の実績では、総顧客数は79社(前年同期は62社)と大幅に増加し、顧客数は過去最多となりました。なお、主要なサービスは以下のとおりです。
① GROW360
「GROW360」は、スマートフォンを用いて受検する人材評価システム(サービス)です。被評価者自身の自己評価に加えて、他者による360度コンピテンシー評価も行います。評価に費やした時間、評価の偏りなどをもとに、AIアルゴリズム(特許取得)が評価データのバイアスを是正するほか、IAT(Implicit Association Test*。特許取得)を用いて本人の潜在的な性格をBIG5(*)による気質診断に基づき判定する人材分析システムであり、採用、人材育成、配置など企業の組織開発全般で活用されています。バイアス補正による公平で一貫した人材評価を、システムを通じて実施することで、1回1人あたり受検費用4,000円以下で提供しています。これにより、従来は特定の階層に限定して行われてきた360度評価を、大企業の全社員対象でも実施し、データ化を進めることが可能です。また、ダイバーシティ&インクルージョン(多様な人材を積極的に受容し、組織づくりに生かす取り組み)推進において無意識のバイアスが障壁となっているとの認識が社会で広く共有される中で、評価バイアスを補正したうえで精緻に気質・行動特性を評価できる点で顧客企業のニーズを捉え、導入が増えています。「GROW360」のユーザー(登録アカウント)数は83.8万人、累計他者評価件数(25項目のコンピテンシーを84問で評価。1人の被評価者に対し最低3人が他者評価を実施)は7,400万件(2024年3月末時点)となっています。
さらに、三井住友信託銀行との業務提携により、同社の取引先企業に対して、GROW360による能力の可視化・分析サービスの提供を開始致し、新たな顧客基盤の開拓を推進しています。
② 人的資本理論の実証化研究会
人的資本理論の実証化研究会(Human Capital and Corporate Value)は、2023年3月期決算から義務化される「人的資本の情報開示」に向けて、「そもそも人的資本が企業価値にどれだけ寄与するものか(人的資本の投資対効果)」を明らかにすることで、経営者へデータに基づいた人材施策の投資判断を促し、かつ投資家への戦略的な情報開示を実現するために発足しました。「人的資本」の概念を提唱したノーベル経済学者のゲーリー・ベッカー教授の理論の元、本研究会では人的資本を「能力」と捉えています。
これまで人材能力は測定・定量化が難しく、日本では人的資本の投資対効果の研究はあまり進んでいませんでしたが、本研究会では、当社の360度人材評価システム「GROW360」を活用し、社員の多様な能力を測定し、一橋大学 小野教授の人的資本理論に基づきながら、人材能力データ・財務データ等を含めた企業の実データを分析し、研究を進めています。なお、2024年3月期は33社が参画しています。
(2)教育事業
教育事業では、学校や教育機関向けに、生徒の能力と教育効果をAIで可視化する評価システム「Ai GROW」、Society5.0時代を切り拓く基礎となる非認知能力などを育むSTEAM教育(*)動画コンテンツ「GROW Academy」、新学習指導要領下で重視される探究型学習の効果を網羅的に評価する「探究力測定パッケージ」、AIを搭載したオンライン英語学習ツール「e-Spire」を利用したサービスの提供を行い、日本の次世代を担う人材育成支援を行っています。GROW Academyは、2023年度の経済産業省の「探究的な学び支援補助金(*)」対象サービスとして採択されました。
文部科学省が実現を目指すGIGAスクール構想(*)によって、公教育現場におけるICT(情報通信技術)環境が急速に整備され、タブレットで受検を行うAi GROWや、オンライン学習教材であるGROW Academyの活用シーンも大幅に拡大しました。また、教育現場での働き方改革という課題に対しても、日々相互評価でデータ蓄積するAi GROWにより、期末ごとの生徒の定性評価が自動生成され教員負担が大幅に低減されることから、採用が拡大しております(2024年3月末時点で、私立中高一貫、国公立中高、通信制高校、塾、小学校などを含めて240校超がAi GROWを有償導入)。
従来からの学校法人への直接のサービス提供に加えて、2020年以降は自治体や教育委員会などへのサービス提供も本格化しています。2024年3月期における当事業の実績では、顧客数(注)は370校(前年同期は335校)となり、顧客基盤が拡大しました。なお、主要なサービスは以下のとおりです。
① Ai GROW
GROW360と蓄積された人材評価をベースに、学校・教育機関向けに開発したシステムです。360度コンピテンシー評価と気質診断により、生徒・学生の能力と可能性に加え、さまざまな教育活動の教育効果を可視化することができます。カリキュラム・デザインやクラス・マネジメント、就職までを見据えた進路指導等、多面的な活用が可能です。GROW360と共通尺度で評価を行うことで、子どもから大人まで一貫した評価軸を実現しています。1年間いつでも利用可能なサブスクリプションモデルとして提供しており、Ai GROWのこれまでのユーザー(登録アカウント)数は24.1万人、累計他者評価件数は5,900万件(2024年3月末時点)となっています。2024年の文部科学省「学校教育総括」によると、当社が主なターゲットとしている全国の小学校4年生から高校生の生徒数は950万人となります。
さらに、AiGROWに株式会社JTBの知見を搭載した、学校行事や探究における教育活動の効果を測定するシステム「J’s GROW」の販売も開始し、新たな顧客基盤の開拓を推進しています。
② GROW Academy
生徒のコンピテンシーを伸ばすための動画コンテンツと学習指導案、ワークシートを、生徒の人数に関わらず、学校単位で提供しています。生徒のコンピテンシーを伸ばすためのフレームワークを、学校生活を舞台に設定したアニメ形式の動画で分かりやすい事例を交えて習得することができます。カリキュラムや生徒の習熟度に応じて自由に組み合わせて利用でき、指導案も完備しています。Ai GROWとの併用により、新学習指導要領でも求められているコンピテンシー・ベースの教育を実現できるコンテンツ構成です。
③ 探究力測定パッケージ
探究型学習の教育効果を可視化するための評価「探究力測定」、地域活性化×最先端テクノロジー
をベースにした探究学習プログラム「社会実装シミュレーション型プログラム」、探究レポートの「探究Navigator」をパッケージあるいは単体のサービスとしてスポット型で提供しています。Ai GROWとの併用により、新学習指導要領でも求められている探究型学習の成果を総合的に評価・教育することができます。
④ e-Spire
TOEFL®テストの構造に沿って設計されたオンライン英語学習プラットフォームです。VOCABULARY、READING、LISTENING、WRITING(AIによる自動判定付き)の4つのユニットで構成されています。各ユニットには単語や表現を限定した入門・初級レベルから英語の母語話者に近い上級レベルまで幅広い難易度の問題を用意しています。生徒は各自の英語力や学習ペースに合わせて、豊富な演習問題とトレーニングに自由に取り組むことができます。
(注)上記の顧客数は、サービス別で有償利用校数をカウントし、合算した延べ数(自治体案件なども学校ごとに個別カウント)。
(3)プラットフォーム/Web3事業
ビットコインのETFが米国SECで承認されるなど事業環境が急速に改善する中、同事業を世界で大きく広げることに向けた中長期的な戦略に基づき、2023年4月に暗号資産関連事業を行うことを目的に100%子会社であるONGAESHI Corporationを設立し、10月には「STARプロジェクト」(*)の後継として人材育成・採用一体型の新サービス「ONGAESHIプロジェクト」をローンチしました。当社はDAO(*)構築に向けて主にサービス開発・運営を担う形で参画しています。さらに、第4四半期連結会計期間には、ONGAESHIプロジェクトの海外展開を見据えて設立されたシンガポール法人BOUNDLESSEDU PTE.LTDへの出資を行い、同社へのシステム売却を実施しました。今後当社はONGAESHIシステム利用料を支払う形で日本でのビジネスを展開していきます。特に注力しているのは、深刻な人手不足が生じている業界や職種の育成です。これにおいては、人材の受け入れを希望する企業と協力し、人材育成を推進するモデルを展開しています。また、地方自治体の専門人材不足を解消するための育成モデルにも取り組んでいます。さらに、当社のWeb3技術やノウハウを活かし、新規事業立ち上げを支援するサービスの提供も予定しています。
当社の事業系統図は、以下のとおりであります。既存のHR・教育の2事業においては、企業や学校が直接の顧客となり、その社員や生徒がユーザーとなるビジネスモデルです。
用語集
ビジョンとして、「人を幸せにする評価と教育で、幸せを作る人、をつくる。」を掲げ、個人が持つ多面的な能力を科学的に評価するシステム、評価データにもとづき成長を支援する教育コンテンツ、そして個人がデータを安全かつ主体的に活用するためのプラットフォームを学校法人、企業、自治体などのコミュニティに対して展開しています。当社サービスは、個人と組織のエンパワーメント(*)を支援し、Society5.0時代の産業基盤となるものと考えております。
変化の著しい昨今の社会情勢においては、学歴という単一の軸だけに頼った人材評価・育成は困難であるとの課題認識のもと、2010年にグローバルに活躍できる人材の育成を目的とした教育事業(塾の企画運営)で創業しました。その後、教育の変革には、人材評価を根本から変えることが必要との想いから、テクノロジーの活用によって多面的な能力を公平に評価する「GROW」を2016年に開発し、2017年以降AI搭載エンジンにより社員や採用候補者の気質(*)・コンピテンシー(*)・スキルを科学的に測定して能力を可視化する「GROW360」を企業の人事領域に拡大して参りました。幅広い業種の多階層(職種×職位)における人材の評価データが蓄積されたことから、採用など人事の一領域に限らず戦略的人事(*)分野での応用を進め、2019年には教育現場に向けて同様の人材評価システム「Ai GROW」の提供を開始しました。さらに2020年以降、今後ESGが進展し、持続的社会の実現に向けて、企業とステークホルダーの関係が変化し、個人が自ら情報を管理・利活用する方向に変化を遂げる中で、当社サービスがそのインフラとなることを目指して、慶應義塾大学経済学部附属経済研究所FinTEKセンターと共同で、個人が主体的かつ安全に自分自身のデータの利活用ができることを目的にブロックチェーン(*)技術を応用したプラットフォームの実証(2023年3月までの3年間)を実施しました。そして2023年10月より、その成果や知見を発展させた無償の学びと転職支援を一体化したサービス「ONGAESHIプロジェクト」を開始しました。
当社基幹システム「GROW」は、回答者自身の気質(性格)を潜在的な認知バイアス(*)を除去して正確に測る技術(特許取得)や、他者による評価を補正し忖度などの評価におけるバイアスを除去するためのAIアルゴリズム(特許取得)に強みがあり、公平で一貫した評価を行えることから、ハーバード・ビジネス・スクールのPeople Analytics(*)に関する代表ケースとしても取り上げられています(2017年8月25日「GROW: Using Artificial Intelligence to Screen Human Intelligence」)。また、ケンブリッジ大学や慶應義塾大学などとの共同研究をベースにして産官学連携でサービス開発に取り組んでおり、国内の大手企業や先進的な取り組みを行う学校法人のみならず、国際機関や海外の政府機関などでの導入実績があります。
当社グループの主なサービスと、各事業の内容は以下のとおりです。また、次の各事業は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」に掲げるセグメントの区分と同一であります。
(1)HR事業
HR事業では、企業の人材採用・育成・配置・組織開発を、人材評価システム、オンライン教材、コンサルティング、研修など、多岐にわたるサービスを組み合わせて支援しています。特に、AIによってバイアスを補正した人材評価データを取得、分析し、データに基づく人事を可能にする点に強みを持っています。
2023年6月発出の『経済財政運営と改革の基本方針2023(仮称)』の原案において、三位一体の労働市場改革の方針の中で、「リ・スキリングによる能力向上支援」、「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」、「成長分野への労働移動の円滑化」の施策が定められており、当社がソリューションを提供している人事評価・育成市場の環境は引き続き良好で、拡大を見込んでおります。また、人的資本に関する文脈では、2022年6月公表の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告において、有価証券報告書及び有価証券届出書の記載事項の改正内容に「人的資本、多様性に関する開示」が取り入れられ、企業は2023年3月期決算から対応が義務付けられることになりました。これにより、今後もますます人材評価データの蓄積と活用シーンは拡大が続くと見込んでおります。
2017年のGROW360開発後は、主に新卒採用で企業の人事部を中心に展開をしてまいりました。2019年以降は大企業の事業戦略に直結するサービス(組織開発・人的資本経営支援)も提供するようになり、人事部のみならず経営企画部、財務・IR部門との連携も進んでいます。2023年度当事業の実績では、総顧客数は79社(前年同期は62社)と大幅に増加し、顧客数は過去最多となりました。なお、主要なサービスは以下のとおりです。
① GROW360
「GROW360」は、スマートフォンを用いて受検する人材評価システム(サービス)です。被評価者自身の自己評価に加えて、他者による360度コンピテンシー評価も行います。評価に費やした時間、評価の偏りなどをもとに、AIアルゴリズム(特許取得)が評価データのバイアスを是正するほか、IAT(Implicit Association Test*。特許取得)を用いて本人の潜在的な性格をBIG5(*)による気質診断に基づき判定する人材分析システムであり、採用、人材育成、配置など企業の組織開発全般で活用されています。バイアス補正による公平で一貫した人材評価を、システムを通じて実施することで、1回1人あたり受検費用4,000円以下で提供しています。これにより、従来は特定の階層に限定して行われてきた360度評価を、大企業の全社員対象でも実施し、データ化を進めることが可能です。また、ダイバーシティ&インクルージョン(多様な人材を積極的に受容し、組織づくりに生かす取り組み)推進において無意識のバイアスが障壁となっているとの認識が社会で広く共有される中で、評価バイアスを補正したうえで精緻に気質・行動特性を評価できる点で顧客企業のニーズを捉え、導入が増えています。「GROW360」のユーザー(登録アカウント)数は83.8万人、累計他者評価件数(25項目のコンピテンシーを84問で評価。1人の被評価者に対し最低3人が他者評価を実施)は7,400万件(2024年3月末時点)となっています。
さらに、三井住友信託銀行との業務提携により、同社の取引先企業に対して、GROW360による能力の可視化・分析サービスの提供を開始致し、新たな顧客基盤の開拓を推進しています。
② 人的資本理論の実証化研究会
人的資本理論の実証化研究会(Human Capital and Corporate Value)は、2023年3月期決算から義務化される「人的資本の情報開示」に向けて、「そもそも人的資本が企業価値にどれだけ寄与するものか(人的資本の投資対効果)」を明らかにすることで、経営者へデータに基づいた人材施策の投資判断を促し、かつ投資家への戦略的な情報開示を実現するために発足しました。「人的資本」の概念を提唱したノーベル経済学者のゲーリー・ベッカー教授の理論の元、本研究会では人的資本を「能力」と捉えています。
これまで人材能力は測定・定量化が難しく、日本では人的資本の投資対効果の研究はあまり進んでいませんでしたが、本研究会では、当社の360度人材評価システム「GROW360」を活用し、社員の多様な能力を測定し、一橋大学 小野教授の人的資本理論に基づきながら、人材能力データ・財務データ等を含めた企業の実データを分析し、研究を進めています。なお、2024年3月期は33社が参画しています。
(2)教育事業
教育事業では、学校や教育機関向けに、生徒の能力と教育効果をAIで可視化する評価システム「Ai GROW」、Society5.0時代を切り拓く基礎となる非認知能力などを育むSTEAM教育(*)動画コンテンツ「GROW Academy」、新学習指導要領下で重視される探究型学習の効果を網羅的に評価する「探究力測定パッケージ」、AIを搭載したオンライン英語学習ツール「e-Spire」を利用したサービスの提供を行い、日本の次世代を担う人材育成支援を行っています。GROW Academyは、2023年度の経済産業省の「探究的な学び支援補助金(*)」対象サービスとして採択されました。
文部科学省が実現を目指すGIGAスクール構想(*)によって、公教育現場におけるICT(情報通信技術)環境が急速に整備され、タブレットで受検を行うAi GROWや、オンライン学習教材であるGROW Academyの活用シーンも大幅に拡大しました。また、教育現場での働き方改革という課題に対しても、日々相互評価でデータ蓄積するAi GROWにより、期末ごとの生徒の定性評価が自動生成され教員負担が大幅に低減されることから、採用が拡大しております(2024年3月末時点で、私立中高一貫、国公立中高、通信制高校、塾、小学校などを含めて240校超がAi GROWを有償導入)。
従来からの学校法人への直接のサービス提供に加えて、2020年以降は自治体や教育委員会などへのサービス提供も本格化しています。2024年3月期における当事業の実績では、顧客数(注)は370校(前年同期は335校)となり、顧客基盤が拡大しました。なお、主要なサービスは以下のとおりです。
① Ai GROW
GROW360と蓄積された人材評価をベースに、学校・教育機関向けに開発したシステムです。360度コンピテンシー評価と気質診断により、生徒・学生の能力と可能性に加え、さまざまな教育活動の教育効果を可視化することができます。カリキュラム・デザインやクラス・マネジメント、就職までを見据えた進路指導等、多面的な活用が可能です。GROW360と共通尺度で評価を行うことで、子どもから大人まで一貫した評価軸を実現しています。1年間いつでも利用可能なサブスクリプションモデルとして提供しており、Ai GROWのこれまでのユーザー(登録アカウント)数は24.1万人、累計他者評価件数は5,900万件(2024年3月末時点)となっています。2024年の文部科学省「学校教育総括」によると、当社が主なターゲットとしている全国の小学校4年生から高校生の生徒数は950万人となります。
さらに、AiGROWに株式会社JTBの知見を搭載した、学校行事や探究における教育活動の効果を測定するシステム「J’s GROW」の販売も開始し、新たな顧客基盤の開拓を推進しています。
② GROW Academy
生徒のコンピテンシーを伸ばすための動画コンテンツと学習指導案、ワークシートを、生徒の人数に関わらず、学校単位で提供しています。生徒のコンピテンシーを伸ばすためのフレームワークを、学校生活を舞台に設定したアニメ形式の動画で分かりやすい事例を交えて習得することができます。カリキュラムや生徒の習熟度に応じて自由に組み合わせて利用でき、指導案も完備しています。Ai GROWとの併用により、新学習指導要領でも求められているコンピテンシー・ベースの教育を実現できるコンテンツ構成です。
③ 探究力測定パッケージ
探究型学習の教育効果を可視化するための評価「探究力測定」、地域活性化×最先端テクノロジー
をベースにした探究学習プログラム「社会実装シミュレーション型プログラム」、探究レポートの「探究Navigator」をパッケージあるいは単体のサービスとしてスポット型で提供しています。Ai GROWとの併用により、新学習指導要領でも求められている探究型学習の成果を総合的に評価・教育することができます。
④ e-Spire
TOEFL®テストの構造に沿って設計されたオンライン英語学習プラットフォームです。VOCABULARY、READING、LISTENING、WRITING(AIによる自動判定付き)の4つのユニットで構成されています。各ユニットには単語や表現を限定した入門・初級レベルから英語の母語話者に近い上級レベルまで幅広い難易度の問題を用意しています。生徒は各自の英語力や学習ペースに合わせて、豊富な演習問題とトレーニングに自由に取り組むことができます。
(注)上記の顧客数は、サービス別で有償利用校数をカウントし、合算した延べ数(自治体案件なども学校ごとに個別カウント)。
(3)プラットフォーム/Web3事業
ビットコインのETFが米国SECで承認されるなど事業環境が急速に改善する中、同事業を世界で大きく広げることに向けた中長期的な戦略に基づき、2023年4月に暗号資産関連事業を行うことを目的に100%子会社であるONGAESHI Corporationを設立し、10月には「STARプロジェクト」(*)の後継として人材育成・採用一体型の新サービス「ONGAESHIプロジェクト」をローンチしました。当社はDAO(*)構築に向けて主にサービス開発・運営を担う形で参画しています。さらに、第4四半期連結会計期間には、ONGAESHIプロジェクトの海外展開を見据えて設立されたシンガポール法人BOUNDLESSEDU PTE.LTDへの出資を行い、同社へのシステム売却を実施しました。今後当社はONGAESHIシステム利用料を支払う形で日本でのビジネスを展開していきます。特に注力しているのは、深刻な人手不足が生じている業界や職種の育成です。これにおいては、人材の受け入れを希望する企業と協力し、人材育成を推進するモデルを展開しています。また、地方自治体の専門人材不足を解消するための育成モデルにも取り組んでいます。さらに、当社のWeb3技術やノウハウを活かし、新規事業立ち上げを支援するサービスの提供も予定しています。
当社の事業系統図は、以下のとおりであります。既存のHR・教育の2事業においては、企業や学校が直接の顧客となり、その社員や生徒がユーザーとなるビジネスモデルです。
用語集
用語 | 用語の定義 |
Society 5.0 | サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)のこと。第5期科学技術基本計画(2016年度~2020年度)において、我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱された(出所:内閣府)。 |
エンパワーメント | 個人や組織が本来持っている潜在能力を引き出し、発揮させること。「権限委譲」や「能力開花」と訳される。社員に自発的な行動や判断を促し、本来持っている能力を発揮させることで、意思決定の迅速化や組織力の向上などが期待できます。 |
気質 | パーソナリティー。本人も認識できない生まれ持った潜在的な性格のこと。当社では、IAT(潜在連合テスト)技術を活用し、時間差・指の軌跡・間違いの回数などを基に、BIG5と呼ばれる最も代表的なパーソナリティ理論に基づいて気質診断を行います。 |
コンピテンシー | 思考力や判断力、創造力や表現力など個人の行動特性のこと。一般的に経験によって上がっていき、開発が可能な能力のことを指します。当社では、東京大学中原淳研究室(当時)と共同開発したコンピテンシーフレームワーク&モデルをもとに、最低3人からの360度評価に基づいて、25項目(認知・自己・他者・コミュニティの4領域)を測定します。 |
戦略的人事 | 労務管理、給与計算などの管理やオペレーション業務だけでなく、自社の経営戦略の実現に向けて、人的マネジメントを行っていくこと(出所:HRプロ)。 |
ブロックチェーン(BC) | インターネット上に構築された価値交換のための基盤技術のこと。通貨や不動産、株式やライセンスなどの価値(資産)をインターネット上で特定の管理者を介することなく安全かつ安価に取引できるようにする仕組み。 |
認知バイアス | 不合理な判断に繋がる、先入観や直感、願望などによる思考の偏りのこと。当社では、IAT技術の活用により、気質以外にも幅広い対立概念に対する認知バイアスの測定が可能で、実際にデジタル-リアルへの親和性などを測定するサービスを提供しています。 |
People Analytics | 人事に関する情報や数字を収集、分析し、客観的なデータを用いて、採用や教育、評価など一連の人事業務の意思決定に活用すること(出所:HRプロ)。 |
DX | デジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること(出所:経済産業省「DX推進指標」)。 |
IAT | Implicit Association Test(IAT、潜在連合テスト)は、社会心理学の分野において心的表象と対象物及び対象概念との潜在的な関連の強さを測る手法として、アンソニー・グリーンワルド、デビー・マギー、ジョーダン・シュワルツによって1998年に開発されました。偏見、固定観念、差別を見極めるための手法として、被検者の自己分析よりも信頼性の高い指標と考えられています。 |
BIG5 | 人間の性格を、5つの因子を用いて説明するパーソナリティ特性の分類法のこと。解放性(O)・誠実性(C)・外向性(E)・協調性(A)・神経症傾向(N)の5つの因子から、OCEANモデルとしても知られています。パーソナリティの対立軸に優劣はありませんが、傾向が強く出過ぎた時のリスクや、自身の気質から生じやすい行動特性を理解することが大切とされます。 |
イノベーションスコア | GROW360で定義している25項目のコンピテンシーのうち、特にゼロから1を生み出す(イノベーション)上で重要な6つのコンピテンシー(個人的実行力、外交性、課題設定、共感・傾聴力、創造性、地球市民)をもとに、イノベーションスコアを算出しています。 |
LMS | Learning Management System(LMS)は、eラーニングの実施に必要な学習管理システムのこと。 |
STEAM教育 | S(Science科学)、T(Technology技術)、E(Engineering工学)、A(Art芸術)、M(Mathematics数学)の頭文字を組み合わせた造語で、各教科での学習を実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な教育を指します。 |
探究的な学び支援補助金 | 学校等教育機関における探究学習や情報活用能力育成の高度化を推進すべく、探究学習や情報活用能力育成に資するサービスを提供する事業者に対し、事業費等に要する経費の一部を補助することにより、学校等設置者等と探究学習提供事業者の協力によるよりよい学校環境づくりを後押しすることを目的として、経済産業省が実施する事業。 |
GIGAスクール構想 | 児童生徒1人1台端末の整備及び校内通信ネットワークの整備によって、多様な子供たちを誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学びを全国の学校現場で持続的に実現させるために、文部科学省が2019年12月に発表した取り組み。 |
DAO | Decentralized Autonomous Organization(DAO、分散型自律組織)は、特定の所有者や管理者なしに、意思決定・事業推進ができるよう設計された組織のこと。ブロックチェーン上のプログラムであるスマートコントラクトを活用し、参加者が行う意思決定のための投票(ガバナンストークンを利用)の結果や、運営ルールなどを記録する。記録された情報は、誰でも閲覧可能かつ改ざんが困難で、透明性が高いことが特徴。 |
STARプロジェクト | ブロックチェーン技術を用いて個人が主体的かつ安全に自らの情報をコントロールするシステム(BCシステム)を構築し、慶應義塾大学経済学部附属経済研究所FinTEKセンターと共同で、学校、企業、自治体などでの個人情報の利活用を広げ、AIを活用することで教育・キャリア形成・人材育成支援を強化する実証事業。12団体の参画、8,671名の登録者、参画企業への採用選考参加400名を持って、2023年3月に無事に3か年の実証が完了いたしました。 |
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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