宮地エンジニアリンググループ株式会社 研究開発活動 (2014年3月期)

当社グループは、主に橋梁工事の建設コスト縮減、品質向上、橋梁新製品開発および既設橋梁の維持管理、鋼構造物の生産技術に関連した研究開発活動を行っております。
当社グループにおける研究開発活動は、連結子会社宮地エンジニアリング株式会社橋梁事業本部技術本部技術部および千葉工場技術研究所が中心となり推進しております。当連結会計年度における研究開発費の総額は50百万円となっており、主に橋梁事業セグメントで発生したものであります。
研究開発活動の概要は以下のとおりでありますが、各セグメントに区分できないため、セグメント別には記載しておりません。

(1)施工技術に関する研究
① 大規模更新に関する研究
高速道路各社では、大規模更新、大規模修繕に関する計画が相次いで公表されております。特に首都高速では2020年東京オリンピックに向けて急ピッチで大規模更新工事が本格化するものと予想されます。これに貢献できる、老朽化した橋梁や床版の架け替えを短期間で可能とする技術の研究・開発に取り組んでおります。
② 建築構造物の製作に関する研究
宮地エンジニアリング株式会社千葉工場は、Hグレード製作工場として、国土交通大臣認定を取得し、建築構造物の製作を行っております。本研究は、建築構造物の品質向上と製作コスト縮減に向けた製作技術の研究であります。

(2)新材料・新素材に関する研究開発
① 耐疲労性に優れた鋼材の疲労特性の研究
新しく開発された耐疲労性に優れた鋼材の疲労強度の確認と、疲労強度をさらに向上させる手法を実工事に適用することを目的とした研究であります。既に大型試験体を用いて鋼材の疲労強度を確認し、超音波ピーニング法により引っ張り残留応力を低減することで耐疲労性が向上することを確認しており、実工事での実績を重ね、改良事項等の検証を進めております。
② 新素材の施工性・耐久性の検討
高機能鋼材の実工事への適用に関する基礎的研究であり、現在は過去の研究に加え、より厚い高機能鋼材を対象に溶接施工性等の基礎的研究を継続しております。
③ FRPの橋梁構造物への適用に関する研究
橋梁の予防保全のための計画的な維持管理の必要性から、今後市場の拡大が予測されるFRP検査路について、コスト削減のための構造の合理化と耐食性のさらなる向上を目指して継続的に実験、調査を実施しております。また、橋梁保全の必要性から、「FRP合成床版」の技術を生かした新たな商品として、FRP拡幅床版の研究開発を官学との共同研究により実施しており、実構造物への適用を実現しました。さらに、FRP伸縮装置、FRP飛来塩分防護板についても、大学等との共同研究として要素試験、載荷試験を継続的に実施しており、早期の商品化を目指しております。

(3)構造・強度に関する研究開発
① 合成床版橋「QS Bridge」に関する技術検討
合成床版橋「QS Bridge」については多数の実用化を経て、コスト縮減のため設計(自動設計)から施工までの迅速化を図ってまいりました。また、その施工の合理化に関する技術について特許を取得しました。引き続き、さらなる構造と施工の合理化の検討を進めております。
② 鋼・コンクリート合成床版「QS Slab」に関する技術検討
橋梁床版の現場施工を簡易化するために鋼・コンクリート合成床版「QS Slab」を開発し、実用化しております。これまでの施工実績を踏まえて、さらなる施工性、経済性の向上のための構造の合理化検討とコンクリート充填確認等の品質確保のため非破壊検査方法に関する実橋調査等を進めてまいりました。当連結会計年度は、製作コスト縮減のため構造の合理化を実施しました。さらに、実工事における効果および改善事項を検証しております。
③ 腐食部材の非破壊検査および耐荷力・耐久性に関する研究
残存板厚測定にレ-ザ変位計の適用検討を行うとともに、大学との共同研究として腐食試験片を用いた基礎実験が完了し、実橋の余寿命評価へ有効な腐食鋼板の疲労強度評価法の検討結果をまとめ、技術提案に適用するため、実工事への試行準備を進めております。

(4)新製品・新技術に関する研究開発
① 橋梁のモニタリングシステムの適用に関する検討
既設構造物の延命化技術としてモニタリングシステム等の診断技術、耐荷力評価技術、補修・補強技術の開発、改良に取り組んでおります。特に光ファイバーを用いた経時モニタリングシステムは、既設構造物の延命化技術の第一歩である点検調査技術の一手法として適用検討を進めており、国土交通省および大学との共同研究の一環として国土交通省近畿地方整備局管内の有年橋にセンサーを設置し5年以上の長期モニタリングとモニタリング結果の評価方法についての共同研究も継続しております。さらに、最新のシステムの採用について検討を進めております。
② 複合・合成構造の研究開発
RCFT(鉄筋コンクリート充填鋼管)は合成構造部材であり、従来のCFT(コンクリート充填鋼管)と比較して耐荷力・靭性の向上が期待でき、橋梁への適用検討は完了しております。実際に同構造形式の受注を想定して設計手法の改良を継続しております。

(5)施工工法等に関わる研究、取り組み
① 複合ラーメン橋の施工工法に関する研究
実用化が増えてきているRC橋脚と鋼桁との複合ラ-メン橋について、より高度な技術改良に取り組んでおり、公共工事の建設コスト縮減を目指して基本となる架設技術(張り出し架設等)や、剛結部の新しい構造の検討を継続しております。
② 送り出し工法の合理化に関する研究
鉄道・道路を跨ぐ工事が多いことから、限られた時間内で安全に鋼桁を送り出すためのジャッキ装置付重量台車を開発し、この台車を用いて送り出し時の反力を自動計測・調整するシステムの開発・研究を進めてまいりました。現在、実工事に適用し、効果の検証・改善を行いながら、より安全な急速施工を目指しております。
③ 建築分野における大空間鉄骨建方の研究
当社グループの建築分野で得意としている競技場大屋根鉄骨やビル鉄骨のメガトラスなどの大空間構造物の建方について、以前より取り組んできたリフトアップ工法や移動ステージによる工法を実工事にて改良を加えながら、常に一歩進んだ技術をご提供できるよう研究しております。
④ 建築構造物免震化工事の研究
東日本大震災以降、加速する建築構造物の免震化工事に際し、以前より導入しているRC柱を切断する完全無水式ワイヤーソーの使用により、廃水・粉塵を出さない切断工法を実用化しており、また、OA機器による仮受けジャッキの荷重集中管理システムを用いて、安全施工を提供しております。