有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1002A0V
株式会社アドバンテスト 事業等のリスク (2014年3月期)
アドバンテストの事業に関連するリスクは、以下のとおりです。
●アドバンテストの事業と業績は半導体産業の顕著に変動する需要に影響されます。
アドバンテストの事業は、半導体設計製造会社(IDM)、ファブレス半導体企業、ファウンドリーおよびテストハウスの設備投資に大きく依存しております。これらの企業の設備投資および一般投資は、主に半導体に対する現在および将来の需要、ならびに半導体を利用した製品に対する需要によって決定されます。かかる需要は世界経済の全体的な状況の影響を大きく受けます。今日までの経験として、半導体業界の不況時において、一般的に半導体メーカーのテストシステム投資を含む設備投資は、半導体の世界的な出荷額の減少率よりも大きく減少します。半導体業界では、過剰在庫の時期が繰返し発生するなど今まで周期的な動きを示しており、そのことがアドバンテストの製品を含め、半導体業界のテストシステムに対する需要にしばしば深刻な影響を与えてきました。特にメモリ半導体の市場は非メモリ半導体に比べ、より需要の変動が大きいと思われます。当連結会計年度において、アドバンテストの半導体・部品テストシステムの売上高のうち、メモリ半導体用テストシステムの売上高は、前年の17.6%から14.5ポイント増加し、32.1%を占めております。したがって、メモリ半導体市場の市況は、今後もアドバンテストの事業と業績に対して悪影響を与える可能性があります。
世界的な半導体市場は、2009年も引き続き金融危機に端を発する世界経済不況の影響を受け、前年比9.0%の減少となりました。しかし2010年は、前年のマイナス成長の反動に加え、新興国の旺盛な電子機器の需要により、前年比31.8%の増加と大幅に回復しました。2011年は、世界経済の低迷、東日本大震災やタイの洪水による一時的な電子機器生産活動の低迷などにより、前年比0.4%の増加に留まりました。2012年は、南欧諸国の債務問題に起因した欧州経済の停滞の長期化や、これまで世界経済の下支え役を担ってきた中国経済の減速などにより前年比2.7%の減少となりました。2013年は、製品毎に多少の差はあったものの全体では堅調に推移し、前年比4.8%の増加となりました。非メモリ半導体の世界的売上は、2009年は、前年からの金融危機に端を発する世界経済不況の影響を大きく受け、前年比で10.3%の減少となりました。2010年は、デジタル家電やスマートフォン、タブレットPCなどの各種電子機器需要の盛り上がりを背景に、前年比26.0%の増加となりました。2011年もスマートフォン、タブレット型端末などの需要の盛り上がりなどにより、前年比4.4%の増加となりました。2012年も引き続きモバイル機器市場の活発な動きを背景に、通信用半導体やLCDドライバ等の半導体が好調に推移したものの、その他の電気機器の低迷から、前年比1.8%の減少となりました。2013年は、スマートフォンやタブレット型端末などが堅調に推移し、前年比1.7%の増加となりました。メモリ半導体の世界的売上は、2009年はPC市場およびスマートフォン等の携帯電話市場が堅調だったものの、世界的な景気低迷からマイナス成長となり、前年比で3.3%の減少となりました。2010年は、携帯機器に搭載されるモバイル用DRAMの需要が堅調に推移したため、前年比55.4%の増加となりました。2011年は、パソコンなどの機器の需要沈滞に端を発したDRAM価格の下落などにより、前年比12.7%の減少となりました。2012年も引き続き、パソコンなどの機器の需要が低調に推移したことにより、前年比6.2%の減少となりました。2013年は、低価格スマートフォン向けのDRAMやLPDDR等の需要の高まりなどにより、前年比17.6%の増加となりました。
半導体市場の顕著な需要の変動は、以下の様々な要因から影響を受けます。
· 世界経済の全体的な状況
· 通信インフラ投資の水準およびタブレット型端末やスマートフォンなどの通信端末の需要の動向
· パソコンおよびデータサーバ業界の需要
· 薄型テレビ、DVD/Blu-rayディスクレコーダーおよび携帯音楽プレーヤー、電子書籍等のモバイルツールを含むデジタル・コンシューマー機器に対する消費者の需要
· 自動車業界の需要
· 半導体業界の動向
2009年度のアドバンテストの売上は、半導体価格の上昇や稼働率の高まりを背景として、各半導体メーカーの設備投資が徐々に再開されましたが、前年度後半の受注が低調に推移した影響により、前年比30.6%減の53,225百万円となりました。2010年度は、円高の進展や価格競争の激化などの厳しい事業環境におかれましたが、半導体市場が好転したため、売上は前年比87.2%増の99,634百万円、当期純利益は3,163百万円となりました。2011年度はアプリケーション・プロセッサやCMOSイメージセンサなど、非メモリ半導体市場における成長分野での需要増に対する販売の拡大、2011年7月に買収したVerigy Ltd. (以下、Verigy社)の強みを活かした欧米の顧客への販売の拡大および通信用半導体市場において増加する顧客需要に応える顧客満足度の高い製品の提供などの結果、売上は前年比41.6%増の141,048百万円となりました。ただし、利益面においては、Verigy社との統合関連費用や投資有価証券の評価損を計上したことなどにより、当期純損失が2,195百万円となりました。前連結会計年度は半導体試験装置市場における最大セグメントである通信用半導体向けを中心に拡販に努め、その結果当社の市場シェアは上昇しました。しかし、半導体市場の減速に伴う顧客の設備投資縮小による半導体試験装置需要の減少を補うまでには至らず、売上は前年比5.8%減の132,903百万円となりました。また製品の売上構成比の悪化などにより、当期純損失は3,821百万円となりました。当連結会計年度は、半導体製造装置において、非メモリ半導体用を中心に昨夏より一部主要顧客の設備投資が大幅に抑制されたため、売上は前年比15.8%減の111,878百万円となりました。損益面については、売上の減少に加え、円安進行に伴い外貨建てコストが増加したこと、事業環境の変化を踏まえて長期性資産の減損や棚卸評価損を計上したことなどにより、当期純損失は35,540百万円となりました。
以上のようにアドバンテストの業績は、引き続き半導体業界の顕著な需要変動に大きな影響を受けると考えられます。そのため、今後半導体業界の景況がどのように推移していくかは予想できませんが、半導体業界における大規模な不況が発生した場合には、アドバンテストの財務状況と事業成績は、悪影響を受けることとなります。近年の半導体価格はDRAMなど一部底入れの兆しはありますが、半導体の供給過剰により、半導体の価格水準が低下した場合、半導体メーカーの収益が悪化し、半導体メーカーの設備投資がさらに抑制され、アドバンテストの業績に影響を及ぼすことがあります。
●アドバンテストが顧客の技術面の要求に応える新製品をタイムリーにかつ競争力ある価格で投入しなかった場合、既存の製品が陳腐化し、財務状況と業績に影響を及ぼします。
アドバンテストは、技術変化が激しく、新製品・サービスの導入が頻繁であり、製品ライフサイクルが不定で予測しにくく、業界基準が常時進歩するいくつかの業界に向けて製品を販売しております。当社製品への将来の需要の大部分は、現在設置されているシステムでは十分に対応できない、新しい試験ニーズを生み出す半導体の技術革新によるものであると、アドバンテストは予測しております。このような技術革新に対する顧客のニーズと市場環境に対応した低コスト化や高効率化の顧客のニーズは、以下のとおりであります。
· より高度なメモリ半導体、ロジックまたはアナログ回路を搭載した非メモリ半導体に対応したソリューション
· 大小のモーター駆動を制御するパワー・デバイスのテスト・ソリューション
· TSV技術により、三次元に高集積化されたICや小型化、高性能化を実現するためにRF、ロジックおよびメモリチップを一つのパッケージに収めた複合ICに対応したソリューション
· より高速に、正確に、安定的にデバイスを搬送するメカトロニクス関連製品
· 半導体チップに組み込まれる自己診断回路を用いた試験技術に対応したソリューション
· 試験チップ周辺回路に搭載される診断回路を用いた試験技術に対応したソリューション
· 顧客の後工程テストの技術革新によるテスト時間短縮に対応した、メカトロニクス製品
· 故障時の迅速な対応と修理に要する時間の最短化
· 顧客のテストコストを削減できるようなトータル・ソリューション
· 最先端のフォトマスクの計測および観察に対応したソリューション
また、アドバンテストは、半導体・部品テストシステムをはじめとする当社製品への需要が、パソコンや高速無線および有線通信のデータ・サービスならびにデジタル・コンシューマー機器、さらにタブレット型端末やスマートフォンなどの通信端末およびデータサーバに対する需要の水準に、強く影響されると考えています。これらの製品とサービスに使用されている技術の発展により、新しいテストシステムが必要となると思われます。アドバンテストが新技術を用いた機器を試験、測定できるテストシステムを迅速に投入しなければ、既存の製品とサービスは時間の経過につれ技術的に陳腐化します。
アドバンテストが顧客の技術面の要求に競争力のある価格で応えられない場合、または適合性のある製品をタイムリーに提供できない場合、競合先の製品または代替の技術ソリューションにより置き換えられる可能性があります。顧客が要求した性能基準を満たした製品を受入れ可能な価格で提供できないと、その顧客におけるアドバンテストの評価が大きく損なわれることになります。かかる評価の低下により、将来その顧客に対する製品やサービスの営業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
●下請業者に対する依存、部品および部分品に関して独占的または少数のサプライヤーへの依存を原因に、規格に合った製品をタイムリーに提供できない可能性があります。
アドバンテストは、その製品の製造に関し、組立作業の一部を下請業者に委託しております。また、アドバンテストの半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連製品における多くの部品は、アドバンテストの仕様に沿ってサプライヤーが製造したものであります。下請業者とサプライヤーへの依存により、アドバンテストによる生産工程に対する管理は届きにくく、生産能力の不足、出荷遅れ、基準未満の品質、労働力の不足、高コストなど、重要なリスクに直面することになります。さらに、アドバンテストは、一部の部品または部分品に関して、1社または少数のサプライヤーに依存しております。アドバンテストは、ほとんどのサプライヤーと長期間の供給契約を結んでおらず、ほとんどの部品および部分品を個別の発注で購入しております。サプライヤーが部品または部分品を必要な数量または満足できる価格で提供できなくなる、あるいはサプライヤーの事業の撤退等により、既に採用または今後採用するカスタム部品および汎用部品の生産もしくは販売が中止となった場合、アドバンテストは条件に合った代替品を見つけて仕入れなければならず、それができなければ、テストシステムの供給能力が損なわれる可能性があります。半導体または特殊部品の市場においては、過去に需要に対し供給が不足した時期があります。また、大規模な災害や電力不足が発生した場合も部品が不足する可能性があります。下請業者またはサプライヤーを選び、適切な代替部品または部分品を選定するのは時間のかかる作業であるため、顧客の要求に合った製品をタイムリーに提供できなくなる可能性があります。アドバンテストは過去において、仕入先がアドバンテストの仕様に合った部品を提供できなかったこと、またはその他の部品不足を原因にスケジュールどおりに製品を出荷できなかったことがあります。また、経済環境の悪化により下請業者とサプライヤーの財政状態が悪化し、アドバンテストの需要を充足できなくなる可能性があります。
●アドバンテストは激しい競争に直面しており、シェアを維持、拡大できない場合は、アドバンテストのビジネスが損なわれる可能性があります。
アドバンテストは世界中で激しい競争に直面しております。アドバンテストの主要な競合企業は、半導体・部品テストシステムの市場においては、Teradyne, Inc.、LTX-Credence Corporation、UniTest Inc. および EXICON Ltd.等があります。メカトロニクス関連の市場においては、テスト・ハンドラでは、Delta Design, Inc.、TechWing Inc.、セイコーエプソン株式会社 および Mirae Corporation 等、デバイス・インタフェースでは、TSE Co., Ltd.、Semes Co., Ltd. および SL-link Co., Ltd.等と競合しております。一部の競合企業はアドバンテストよりも多くの資金その他の資源を有しております。
アドバンテストはその事業において、テストコストの削減につながる半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連製品を望む顧客からの圧力が強まるなど、多くの課題に直面しております。デバイス・インタフェースについては、競合企業にコア技術部品の供給ベンダーが買収されたり、PCB製造技術が流出した場合、顧客のテストコストの削減や、製品の性能の実現が困難になります。
アドバンテストが競争に打ち勝ち、シェアを維持、拡大していくためには、継続的にそのビジネス・プロセスを改良して製品コストを削減する、あるいは全体的なテストコストを低減させる必要があります。また、アドバンテストは、競合他社が今後も価格と性能の向上した新製品を投入し、そのカスタマ・サービス/サポートの提供を増強し続けたり、新規参入企業による低価格テスタの投入などを予想しております。競争が大幅に激化した場合、アドバンテストの利益幅が縮小し、利益が減少する可能性があります。
●アドバンテストは、策定した戦略や中期計画の目標を達成できない可能性があります。
アドバンテストは、2014年度を最終年度とする中期経営目標「ACT2014」を策定し、その達成に向けて取り組んできました。しかし世界的な景気後退の影響、半導体業界の低迷や中期経営目標発表後に発生したその他の要因により、アドバンテストの翌連結会計年度の業績は、当初の目標を大きく下回ると見込まれています。中期目標の達成は、アドバンテストや顧客に影響を及ぼす経済や市場の動向、競合状況、設備投資水準、アドバンテスト製品の需要と為替レートの変動を含む様々な内外の要因に影響されます。したがって、発表される目標値(適時修正される)は、将来の業績予測として見なすべきではありません。中期経営目標達成のためのアドバンテストの戦略とその実行が成功する、戦略の実行が意図する結果をもたらす、中期経営目標またはそれ以外の目標(定量的、定性的を問わない、適時修正される。)が期限までに達成される、あるいはそれらの目標が将来経営陣によって変更されないという保証はありません。
●半導体・部品テストシステム事業およびメカトロニクス関連事業の市場の急拡大に伴う需要に対応しきれない場合には、将来の市場シェアおよび業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
アドバンテストは、製品に使用する部品をサプライヤーから調達しておりますが、それらのサプライヤーは、製造ラインおよび人員削減による生産能力の適正化を実施してきました。そのため、今後半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連事業の市場が急激に拡大した場合には、回復局面を活かすために人員増を含む生産能力を大幅に増強することや、需要が増加する部品を、サプライヤーから適時適切に確保することが必要となってきます。需要の回復の際、製品需要の予期せぬ増加に対応しきれない場合、アドバンテストが既存の大口顧客を失う、または今まで取引関係の少なかった、あるいは全く無かった潜在的な大口顧客と強い関係を築く機会を失う結果となる可能性があります。このような機会損失は、アドバンテストの将来の市場シェアおよび業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
●アドバンテストの売上高は、上位顧客の数社が大きな割合を占めるため、これらの1社または数社を顧客として失うことや設備投資の変動が、アドバンテストの事業に影響を及ぼす可能性があります。また、これらの上位顧客の財務状態が悪化した場合、売上債権の回収リスクが発生します。
アドバンテストの成功は、重要顧客との関係を継続的に発展させ管理することにかかっております。現在ではこれらの少数の顧客がアドバンテストの売上高の大きな割合を占めております。最上位顧客による売上高は、2011年度の売上高全体の約29%、前連結会計年度の同約14%および当連結会計年度の同約15%を占めております。顧客上位5社による売上高は、2011年度の売上高全体の約56%、前連結会計年度の同約37%および当連結会計年度の同約36%を占めております。これら主要顧客の1社または数社を失うことや主要顧客の設備投資の変動が、アドバンテストの事業に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、多額の債権を有する顧客の財政状態が悪化し、アドバンテストが期限どおりの支払が得られない場合、アドバンテストの事業、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
●アドバンテストの製品は価格低下圧力を受けております。
アドバンテストが事業において受けている価格低下圧力は、営業利益率に悪影響を及ぼしております。半導体の需要が数量ベースで増加している時においても、半導体価格の低下は進行しているため、半導体・部品テストシステム事業およびメカトロニクス関連製品に対する価格低下圧力が続いております。アドバンテストの顧客である半導体メーカーやテストハウスは、急激な半導体価格の低下が起きている時期に、生産能力を増強しようとしながらも、設備投資額を抑えようとします。デジタル・コンシューマー機器とパソコン市場に加え、スマートフォンやタブレット型端末などのモバイル機器市場およびデータサーバ市場における競争激化により価格が低下し、それによりアドバンテストの製品にも強い値下げ圧力がかかります。半導体価格の低下が止まらない場合、顧客は既存の設備の改造や使い方の工夫により、新品の設備投資を抑える可能性もあります。今後、価格低下圧力がさらに強まれば、アドバンテストの将来の財務状況と事業成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
●アドバンテストは新製品の開発コストを回収できない可能性があります。
既存製品の改良と新世代製品の開発は、ほとんどの場合多額な費用を必要とします。さらに、半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連製品の購入決定は高額な投資を伴うため、一般的に販売活動に要する期間が長く、販売に至るまで多大な支出と営業活動を必要とします。アドバンテストが製品を改良し新世代の製品を投入したとしても、顧客ニーズの変化、競合他社による新技術・新機能搭載製品の投入、顧客による異なる試験機能を必要とする新製品投入、または顧客の製品がアドバンテストの期待する速度、レベルで成長しないことにより短期間で時代遅れとなれば、開発と営業の費用を上回る売上高を上げられない可能性があります。非メモリ半導体製品の市場投入の頻度はメモリ半導体製品よりも高いため、非メモリ半導体用テストシステムに関しては、一般的にこのリスクは特に大きいと思われます。場合によっては、アドバンテストは業界動向を先取りし、顧客側の製品実用化よりも先に製品の開発を行わなければなりません。そのためアドバンテストは、革新的技術のビジネス上の実現可能性を判断する前に、多額の投資を行わなければなりません。したがって、アドバンテストの顧客がそれらの製品を迅速に投入できない場合や、またはそれらの製品が市場に受け入れられない場合、アドバンテストは販売量の増加による製品開発投資のコストの回収に失敗する可能性があります。
●アドバンテストの主な製品の市場は極めて集中しており、販売機会が限られているため、アドバンテストが製品の売上を拡大できない可能性があります。
半導体・部品テストシステム事業の中でも、特にメモリ半導体用テストシステムの市場は極めて集中したものであり、少数の大きな半導体メーカーとファウンドリーおよびテストハウスが業界全体の売上に大きな割合を占めております。このような業界状況は、近年の半導体業界において、大手の半導体メーカー、ファウンドリーおよびテストハウスによる小規模企業の買収や事業の統廃合などの再編が進むことにより、一層加速していると考えられます。アドバンテストの売上の増加は、大口顧客から受注を獲得し増加させることができるかどうかに大きく依存します。また、半導体メーカーの統廃合により過剰な設備が中古市場に流れ、製品の販売機会を失うリスクがあります。
●為替変動が収益性に影響を及ぼす可能性があります。
アドバンテストの売上高の大半は日本国外の顧客への販売によるものです。当連結会計年度の売上高の89.1%は、海外顧客への製品売上によるものです。当連結会計年度の売上高のうち約61%は、米ドルを主とする円以外の外貨によるものです。アドバンテストが販売にあたり使用する外国の通貨(主に米ドルであるが、僅かながら他の外貨を含む)に対して、円高に転じた場合、アドバンテストの製品価格は米ドルまたはかかるその他の外貨ベースでは上昇し、かかる国での売上に打撃を与えます。
なおユーロについては、現状ユーロ建ての売上よりも費用の発生額の方が大きいため、円安水準で推移した場合、収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、円と外貨(特に米ドル)の間の大きな為替変動により、海外において円建てで販売される製品価格を引き下げなければならない場合や、また米ドルやその他の外貨建てで販売される製品売上の円相当額が減少した場合には、収益性に影響を及ぼす可能性があります。これらの変動により、アドバンテストの製品価格が相対的に高くなり、潜在的な顧客による発注の取消しまたは先送りが生じる可能性があります。過去において、アドバンテストが販売にあたり使用する外貨と円との間の為替レートに、大きな変動が生じたことがあります。
また、子会社の報告通貨の外国為替レートが円に対して変動した場合、アドバンテストの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。外国為替レートの変動は、アドバンテストの連結財務諸表の報告通貨である円に換算する必要のある外貨建ての金額に影響し、為替変動の向きによってはアドバンテスト全体の財政状態、経営成績および純資産の状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
●アドバンテストの主要な研究開発施設、生産施設、情報技術関連施設、製造委託先またはサプライヤーの施設が巨大な損害を被った場合、業績に重大な打撃を受けることになります。
アドバンテストの半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連事業の主要な研究開発施設、生産施設ならびにサービスの拠点の多くは、特に群馬県と埼玉県に集中しております。また、主要な基幹システムサーバーとネットワークのハブは、ISMS(情報セキュリティマネージメントシステム)の承認を受けたシステムセンタに設置され、さらに、日本の一部の事業所にもローカルにネットワークサーバーが設置されております。日本は2011年3月に東日本大震災が発生したように、頻繁に地震が起こる可能性の高い地域であります。
これらの施設、特に半導体・部品テストシステムの工場が巨大な損害を受けた場合、アドバンテストの事業に支障を来し、製造、出荷および収益に遅れが生じ、施設の修理または建て直しのために巨額の費用が発生します。アドバンテストは、地震以外の原因によるほとんどの潜在的な損失をカバーする保険に加入しておりますが、これらの保険は起こり得る損失すべてを十分にカバーしない可能性があります。また、アドバンテストの製造委託先、サプライヤーの施設、または情報サービス網の施設が同様の重大な損害を受けた場合も、アドバンテストの事業に支障を来す可能性があります。
アドバンテストは、大規模災害等の危機発生時に備え、各部門で対応手順書を定めていますが、さらに、基幹事業を停止させないこと、停止した場合でも重要な設備を含め可能な限り短期間で再開させることを目的として、事業継続計画(Business Continuity Plan)を策定し実施しております。しかしこの事業継続計画が有効に機能しない場合には、大規模災害等の危機発生時にアドバンテストの基幹業務が停止し、再開に長期間を要する可能性があります。
●アドバンテストは、Verigy社との事業統合の成果を十分には出せない可能性があります。
アドバンテストは、2011年7月にVerigy社を買収し、2012年4月に完全統合しました。この統合により、変化の激しい半導体関連市場において、高品質で幅広い範囲の製品の開発・販売による顧客ニーズの充足や、安定的な財務基盤に基づく技術革新を通じた顧客ニーズへの対応が可能となり、持続的な成長を実現しつつあると考えております。
しかし、2つの異なる企業の事業統合は複雑であり、業務プロセスの一本化までには、さらに一定の時間を要するものもあります。また業務プロセスが一本化されたとしても、期待されている事業統合の成果が出ない可能性があります。以下を含め、事業統合の様々なプロセスで、困難な状況が引き起こされる可能性があります。
· 二社の異なる研究開発、生産、販売、保守プロセスおよび業務システムの統合
· 二社間の重複する部門やプロセスによって引き起こされる非効率性の解消
· 企業文化と使用言語が異なる二社の融合
以上を含め、困難な状況が起きた場合、アドバンテストの将来の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、アドバンテストは、2011年7月にVerigy 社から引き継いだ社員に対し、アドバンテストのストック・オプションを付与しています。社員がこのストック・オプションの権利を大量に行使した場合、アドバンテスト株主の議決権および一株当りの総資産ならびに株価に希薄化の影響を与える可能性があります。
●アドバンテストの事業は、国際的な事業展開に伴う経済的、政治的またはその他のリスクを有します。
アドバンテストは世界中で部品の調達、製品の生産および販売を行うため、その事業は国際的な事業展開に伴うリスクを有しております。アドバンテストの当連結会計年度の総売上高に対し、台湾、中国および韓国への売上が大半を占めるアジア地域(日本を除く)は73.0%、米州は9.6%、欧州は6.5%を占めております。海外事業での売上高は、今後も継続して売上高全体の大きな割合を占めると予想されます。また、アドバンテストの販売・サポートの子会社は米州、欧州および台湾、シンガポール、韓国、中国等のアジア諸国に展開し、サプライヤーや生産工場も韓国やマレーシアなどの海外に展開しております。したがって、アドバンテストの将来の業績は、以下を含む様々な要因から悪影響を受ける可能性があります。
· アドバンテストが部品を調達し、製品を生産および販売する国における政治的、経済的な混乱、紛争、自然災害、疫病またはその他のカントリー・リスク
· 貿易保護政策と輸出入の許認可制度
· 税法の改定による潜在的なマイナス影響
· 移転価格税制等の国際税務に関するリスク
· 事業展開が広範囲に及ぶための人事・管理面の困難性
· 異なる知的財産保護制度
· 遠隔地であることおよび法規制が異なることによる売上債権回収の困難性
· テロ・戦争あるいは政治や経済の両方もしくはいずれかにおける外国との関係悪化等による社会的・政治的混乱が発生するリスク
· アドバンテストのサプライヤーや生産工場が、機械加工および組み立てのインフラのレベルが発展途上の国にある場合の調達および生産における品質低下のリスク
●長期性資産およびのれんの対象事業の将来キャッシュ・フローの見込みによっては、多額の減損を計上し、アドバンテストの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
長期性資産について、減損の兆候があり、かつ資産の帳簿価額を回収できない可能性がある等の場合、当該長期性資産について帳簿価額を公正価値まで減額し、当該減少額を損失として計上する可能性があります。
なおアドバンテストは、当連結会計年度に事業環境の変化を踏まえ、将来の期待されるキャッシュ・フローを見直した結果、有形固定資産および無形資産に関する減損損失を13,495百万円計上しました。
また、アドバンテストの連結貸借対照表には、米国会計基準に基づき相当額ののれんが計上されています。のれんについては、1年に1回減損テストを実施しており、減損テストにおいて、のれんの対象となっている事業ののれんを含む公正価値が当該帳簿価額を下回っている場合、のれんの額を再度算定し直し、現在ののれんの額と再算定したのれんの額の差額を減損として認識することになります。したがって、長期性資産やのれんの対象事業の将来キャッシュ・フローの見込みによっては、多額の減損を計上し、アドバンテストの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
●アドバンテストは、設備投資を回収できない可能性があります。
アドバンテストは、設備投資を継続的に行っていますが、前連結会計年度から当連結会計年度にかけて、韓国の大手顧客への販売シェア拡大のため、韓国に新工場を建設し2013年5月に操業を開始しました。 このような設備投資に対して、顧客の設備投資の抑制により想定した販売規模を達成できない、あるいは競合他社との激しい競争による製品単価の下落などにより、アドバンテストが設備投資を回収することが出来ない、または回収出来るとしても想定より長い期間を要する可能性があります。そのような場合、当該資産が減損の対象になり、アドバンテストの収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
●東日本大震災と同様の災害が発生した場合、アドバンテストのビジネスが損なわれる可能性があります。
2011年3月11日に発生した東日本大震災と同様の災害が発生し、サプライヤーの施設が被災したり、サプライヤーの施設で電力やガス、水道などの公共サービスが停止された場合や、国内産業に必要かつ十分なエネルギー供給ができなくなった場合、アドバンテストは必要とする部品が調達できず、製品供給が市場の要求に対応できない可能性があります。また、半導体市場、家電製品、各種コンピュータ機器や自動車など半導体と関連の深い最終製品の市況の動向も、不透明な状況に陥る可能性があります。これらの要因により、アドバンテストのビジネスが損なわれる可能性があります。
福島第一原子力発電所の事故で経験したように、地震や津波により原子力発電所が甚大な被害を受けることにより、放射性物質が大量に漏洩し、アドバンテストの製品に放射性物質が付着したり、あるいはアドバンテストの主要拠点における事業活動に制約がかかった場合、または原子力発電所の運転停止等により長時間にわたり電力供給が不安定になった場合、製品の競争力が損なわれたり、製品供給が市場の需要に対応できず、アドバンテストのビジネスが損なわれる可能性があります。
●アドバンテストの財務状況および事業成績は、その営業・販売力およびブランド力に関係する要因からマイナスの影響を受ける可能性があります。
アドバンテストの財務状況および事業成績は、その営業・販売力およびブランド力に関係する以下のような要因からマイナスの影響を受ける可能性があります。
· 半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス製品の長期間にわたる販売プロセス
· 半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス製品市場の比較的に少ない総販売台数
· 顧客側による発注キャンセルまたは設備投資の先送り
· 顧客の財務状況を原因とする売掛金回収の遅延や貸倒れおよび貸倒引当金の増加
· 製品保証費や棚卸資産評価損に必要な引当金額の増加
· アドバンテスト製品の性能または信頼性の事実上または風評上の低下、またはそのことによるブランド力の低下
●アドバンテストで利用されている化学物質に対して規制が強化され、その対策のために多額の費用が発生する可能性があります。
アドバンテストが利用している化学物質の中で、その製造、処理および販売に関し、日本の政府機関や外国の様々な業界組織、またはその他の規制機関の環境関連法と規則が適用されるものがあります。そしてこれらの規制機関は、アドバンテストが使用する化学物質に対して、適用される既存の規制強化や、新たな規制に乗り出す可能性があります。アドバンテストは、製品に組み込む部材に含まれる有害物質の排除を進めておりますが、製品の信頼性の確保を優先するため、電子部品の取付けに鉛を含むはんだを使用しております。また、半導体・部品テストシステムやメカトロニクス関連製品の冷却方式では、使用に関わる法的規制を受けていないフッ素系液体を一部使用しております。アドバンテストは、製品の安全性や信頼性の確保を第一に、製品の環境対策を進め、化学物質の使用における規制を遵守していると考えておりますが、特定の国において規制要件が変更された場合にはかかる変更に対応しなければなりません。新しい要件への対応のために多額の費用がかかる可能性があります。関連する政府または業界規制への対応が出来ない場合、販売の継続または拡大の妨げとなる可能性があります。
●第三者がその知的財産をアドバンテストによって侵害されたと主張する可能性があり、その結果アドバンテストが高額な賠償、裁判費用またはライセンス料を支払わなければならなくなり、製品を販売できなくなる可能性があります。
アドバンテストは意図しないまま第三者の知的財産権を侵害し、その結果侵害の責任を負わされる可能性があります。今日まで、アドバンテストに対して知的財産権侵害に関わる重大な申立てが行われたことはありません。しかし、特許またはその他の知的財産権の侵害をめぐる裁判は、多大な出費と時間を伴い、経営陣または重要な人材がアドバンテストの事業運営に注力できなくなる可能性があります。アドバンテストが勝訴できなかった場合、多額の賠償金の支払、ライセンス料の支払、製品または工程の変更、製品の製造中止または工程の使用中止などを余儀なくされる可能性があります。ライセンスは非常に高価な場合もあり、または全く取得できない場合もあります。第三者の知的財産権を侵害しないように製品または工程に変更を加えることは、多大な出費を要する場合や、実行不可能な場合があります。
●アドバンテストの知的財産権を侵害している疑いのある製品を入手し調査することは困難なため、アドバンテストが知的財産権を保護できない可能性があります。
アドバンテストは、その独自の権利を保護するために、各国で取得した特許権、実用新案権、意匠権、商標権および著作権などに依存しております。例えば、アドバンテストはデバイス・インタフェース市場において、模造品を販売するメーカーに対して特許権および実用新案権に基づく法的手段を講じ、場合によっては販売を差し止めてきました。しかし、知的財産権が侵害されていると思われる製品を入手し調査することは一般的に困難であります。そのため、保有している知的財産権によって自社の権利を十分に保護していると保証できるわけではありませんが、アドバンテストはその知的財産権を第三者の侵害から保護することに積極的であり、今後も引き続きその知的財産権を監視し、権利行使を行ってまいります。
●技術労働力市場は競争が激しいため、アドバンテストが技術者やその他の重要スタッフを採用し保持できない場合は、その事業に支障を来します。
アドバンテストの今後の成功は、その研究開発部門およびカスタマ・サービス/サポート部門で適任のエンジニアを採用し保持できるかにもよります。これらの人材を十分に採用し保持できなかった場合、事業の維持と拡大が不可能になります。現在の役員や従業員の雇用を維持し、将来に必要と思われる追加の人材を採用するためには、賃金制度やその他の人事諸制度の見直しが必要となってくる可能性もあります。
●アドバンテストの情報技術ネットワークやシステムが被害を受けたり妨害されたり停止した場合、業務の継続を妨げ、社会的信用を失いかつ多額の費用負担が発生する可能性があります。
アドバンテストは、機密データを含む電子情報の処理、送信、蓄積のために、また製造、研究開発、サプライチェーンの管理、販売、会計などを含む様々なビジネス活動およびそのサポートのために、第三者によって管理されているものも含め、様々な情報技術ネットワークやシステムに頼っています。アドバンテストは情報セキュリティ委員会および総務・法務部が、情報セキュリティ対策の方針制定を行っております。また、情報技術ネットワークやシステムについては、前述の方針に基づき、IT部門が構築・運用しております。しかし、ハッカーやコンピューターウイルスによる攻撃、情報セキュリティシステムの誤用、不注意な使用、事故や災害などがあった場合には、当社が実施する防御を超え、業務の継続を妨げ、情報の漏洩やその情報が改竄される恐れがあるだけでなく、法的請求、訴訟、損害責任、罰金を払う義務などが発生し、アドバンテストの社会的信用、業績および財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
●アドバンテストは、製品の欠陥や製造物責任による顧客の信用の喪失などにより、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
アドバンテストは、ISO9000など世界的に認められている品質管理基準にしたがって製品の生産を行っておりますが、これらの製品について欠陥が無いという保証はありません。また、製造物責任賠償については、保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできる保証はありません。製品の欠陥により大規模な事故が発生した場合や、当社の製品に障害が発生したり、障害対応が不適切だったことにより、顧客の信用を失ったり、顧客対応費用が増大したり、損害賠償請求を受けたりする場合には、アドバンテストの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
●アドバンテストの事業と業績は半導体産業の顕著に変動する需要に影響されます。
アドバンテストの事業は、半導体設計製造会社(IDM)、ファブレス半導体企業、ファウンドリーおよびテストハウスの設備投資に大きく依存しております。これらの企業の設備投資および一般投資は、主に半導体に対する現在および将来の需要、ならびに半導体を利用した製品に対する需要によって決定されます。かかる需要は世界経済の全体的な状況の影響を大きく受けます。今日までの経験として、半導体業界の不況時において、一般的に半導体メーカーのテストシステム投資を含む設備投資は、半導体の世界的な出荷額の減少率よりも大きく減少します。半導体業界では、過剰在庫の時期が繰返し発生するなど今まで周期的な動きを示しており、そのことがアドバンテストの製品を含め、半導体業界のテストシステムに対する需要にしばしば深刻な影響を与えてきました。特にメモリ半導体の市場は非メモリ半導体に比べ、より需要の変動が大きいと思われます。当連結会計年度において、アドバンテストの半導体・部品テストシステムの売上高のうち、メモリ半導体用テストシステムの売上高は、前年の17.6%から14.5ポイント増加し、32.1%を占めております。したがって、メモリ半導体市場の市況は、今後もアドバンテストの事業と業績に対して悪影響を与える可能性があります。
世界的な半導体市場は、2009年も引き続き金融危機に端を発する世界経済不況の影響を受け、前年比9.0%の減少となりました。しかし2010年は、前年のマイナス成長の反動に加え、新興国の旺盛な電子機器の需要により、前年比31.8%の増加と大幅に回復しました。2011年は、世界経済の低迷、東日本大震災やタイの洪水による一時的な電子機器生産活動の低迷などにより、前年比0.4%の増加に留まりました。2012年は、南欧諸国の債務問題に起因した欧州経済の停滞の長期化や、これまで世界経済の下支え役を担ってきた中国経済の減速などにより前年比2.7%の減少となりました。2013年は、製品毎に多少の差はあったものの全体では堅調に推移し、前年比4.8%の増加となりました。非メモリ半導体の世界的売上は、2009年は、前年からの金融危機に端を発する世界経済不況の影響を大きく受け、前年比で10.3%の減少となりました。2010年は、デジタル家電やスマートフォン、タブレットPCなどの各種電子機器需要の盛り上がりを背景に、前年比26.0%の増加となりました。2011年もスマートフォン、タブレット型端末などの需要の盛り上がりなどにより、前年比4.4%の増加となりました。2012年も引き続きモバイル機器市場の活発な動きを背景に、通信用半導体やLCDドライバ等の半導体が好調に推移したものの、その他の電気機器の低迷から、前年比1.8%の減少となりました。2013年は、スマートフォンやタブレット型端末などが堅調に推移し、前年比1.7%の増加となりました。メモリ半導体の世界的売上は、2009年はPC市場およびスマートフォン等の携帯電話市場が堅調だったものの、世界的な景気低迷からマイナス成長となり、前年比で3.3%の減少となりました。2010年は、携帯機器に搭載されるモバイル用DRAMの需要が堅調に推移したため、前年比55.4%の増加となりました。2011年は、パソコンなどの機器の需要沈滞に端を発したDRAM価格の下落などにより、前年比12.7%の減少となりました。2012年も引き続き、パソコンなどの機器の需要が低調に推移したことにより、前年比6.2%の減少となりました。2013年は、低価格スマートフォン向けのDRAMやLPDDR等の需要の高まりなどにより、前年比17.6%の増加となりました。
半導体市場の顕著な需要の変動は、以下の様々な要因から影響を受けます。
· 世界経済の全体的な状況
· 通信インフラ投資の水準およびタブレット型端末やスマートフォンなどの通信端末の需要の動向
· パソコンおよびデータサーバ業界の需要
· 薄型テレビ、DVD/Blu-rayディスクレコーダーおよび携帯音楽プレーヤー、電子書籍等のモバイルツールを含むデジタル・コンシューマー機器に対する消費者の需要
· 自動車業界の需要
· 半導体業界の動向
2009年度のアドバンテストの売上は、半導体価格の上昇や稼働率の高まりを背景として、各半導体メーカーの設備投資が徐々に再開されましたが、前年度後半の受注が低調に推移した影響により、前年比30.6%減の53,225百万円となりました。2010年度は、円高の進展や価格競争の激化などの厳しい事業環境におかれましたが、半導体市場が好転したため、売上は前年比87.2%増の99,634百万円、当期純利益は3,163百万円となりました。2011年度はアプリケーション・プロセッサやCMOSイメージセンサなど、非メモリ半導体市場における成長分野での需要増に対する販売の拡大、2011年7月に買収したVerigy Ltd. (以下、Verigy社)の強みを活かした欧米の顧客への販売の拡大および通信用半導体市場において増加する顧客需要に応える顧客満足度の高い製品の提供などの結果、売上は前年比41.6%増の141,048百万円となりました。ただし、利益面においては、Verigy社との統合関連費用や投資有価証券の評価損を計上したことなどにより、当期純損失が2,195百万円となりました。前連結会計年度は半導体試験装置市場における最大セグメントである通信用半導体向けを中心に拡販に努め、その結果当社の市場シェアは上昇しました。しかし、半導体市場の減速に伴う顧客の設備投資縮小による半導体試験装置需要の減少を補うまでには至らず、売上は前年比5.8%減の132,903百万円となりました。また製品の売上構成比の悪化などにより、当期純損失は3,821百万円となりました。当連結会計年度は、半導体製造装置において、非メモリ半導体用を中心に昨夏より一部主要顧客の設備投資が大幅に抑制されたため、売上は前年比15.8%減の111,878百万円となりました。損益面については、売上の減少に加え、円安進行に伴い外貨建てコストが増加したこと、事業環境の変化を踏まえて長期性資産の減損や棚卸評価損を計上したことなどにより、当期純損失は35,540百万円となりました。
以上のようにアドバンテストの業績は、引き続き半導体業界の顕著な需要変動に大きな影響を受けると考えられます。そのため、今後半導体業界の景況がどのように推移していくかは予想できませんが、半導体業界における大規模な不況が発生した場合には、アドバンテストの財務状況と事業成績は、悪影響を受けることとなります。近年の半導体価格はDRAMなど一部底入れの兆しはありますが、半導体の供給過剰により、半導体の価格水準が低下した場合、半導体メーカーの収益が悪化し、半導体メーカーの設備投資がさらに抑制され、アドバンテストの業績に影響を及ぼすことがあります。
●アドバンテストが顧客の技術面の要求に応える新製品をタイムリーにかつ競争力ある価格で投入しなかった場合、既存の製品が陳腐化し、財務状況と業績に影響を及ぼします。
アドバンテストは、技術変化が激しく、新製品・サービスの導入が頻繁であり、製品ライフサイクルが不定で予測しにくく、業界基準が常時進歩するいくつかの業界に向けて製品を販売しております。当社製品への将来の需要の大部分は、現在設置されているシステムでは十分に対応できない、新しい試験ニーズを生み出す半導体の技術革新によるものであると、アドバンテストは予測しております。このような技術革新に対する顧客のニーズと市場環境に対応した低コスト化や高効率化の顧客のニーズは、以下のとおりであります。
· より高度なメモリ半導体、ロジックまたはアナログ回路を搭載した非メモリ半導体に対応したソリューション
· 大小のモーター駆動を制御するパワー・デバイスのテスト・ソリューション
· TSV技術により、三次元に高集積化されたICや小型化、高性能化を実現するためにRF、ロジックおよびメモリチップを一つのパッケージに収めた複合ICに対応したソリューション
· より高速に、正確に、安定的にデバイスを搬送するメカトロニクス関連製品
· 半導体チップに組み込まれる自己診断回路を用いた試験技術に対応したソリューション
· 試験チップ周辺回路に搭載される診断回路を用いた試験技術に対応したソリューション
· 顧客の後工程テストの技術革新によるテスト時間短縮に対応した、メカトロニクス製品
· 故障時の迅速な対応と修理に要する時間の最短化
· 顧客のテストコストを削減できるようなトータル・ソリューション
· 最先端のフォトマスクの計測および観察に対応したソリューション
また、アドバンテストは、半導体・部品テストシステムをはじめとする当社製品への需要が、パソコンや高速無線および有線通信のデータ・サービスならびにデジタル・コンシューマー機器、さらにタブレット型端末やスマートフォンなどの通信端末およびデータサーバに対する需要の水準に、強く影響されると考えています。これらの製品とサービスに使用されている技術の発展により、新しいテストシステムが必要となると思われます。アドバンテストが新技術を用いた機器を試験、測定できるテストシステムを迅速に投入しなければ、既存の製品とサービスは時間の経過につれ技術的に陳腐化します。
アドバンテストが顧客の技術面の要求に競争力のある価格で応えられない場合、または適合性のある製品をタイムリーに提供できない場合、競合先の製品または代替の技術ソリューションにより置き換えられる可能性があります。顧客が要求した性能基準を満たした製品を受入れ可能な価格で提供できないと、その顧客におけるアドバンテストの評価が大きく損なわれることになります。かかる評価の低下により、将来その顧客に対する製品やサービスの営業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
●下請業者に対する依存、部品および部分品に関して独占的または少数のサプライヤーへの依存を原因に、規格に合った製品をタイムリーに提供できない可能性があります。
アドバンテストは、その製品の製造に関し、組立作業の一部を下請業者に委託しております。また、アドバンテストの半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連製品における多くの部品は、アドバンテストの仕様に沿ってサプライヤーが製造したものであります。下請業者とサプライヤーへの依存により、アドバンテストによる生産工程に対する管理は届きにくく、生産能力の不足、出荷遅れ、基準未満の品質、労働力の不足、高コストなど、重要なリスクに直面することになります。さらに、アドバンテストは、一部の部品または部分品に関して、1社または少数のサプライヤーに依存しております。アドバンテストは、ほとんどのサプライヤーと長期間の供給契約を結んでおらず、ほとんどの部品および部分品を個別の発注で購入しております。サプライヤーが部品または部分品を必要な数量または満足できる価格で提供できなくなる、あるいはサプライヤーの事業の撤退等により、既に採用または今後採用するカスタム部品および汎用部品の生産もしくは販売が中止となった場合、アドバンテストは条件に合った代替品を見つけて仕入れなければならず、それができなければ、テストシステムの供給能力が損なわれる可能性があります。半導体または特殊部品の市場においては、過去に需要に対し供給が不足した時期があります。また、大規模な災害や電力不足が発生した場合も部品が不足する可能性があります。下請業者またはサプライヤーを選び、適切な代替部品または部分品を選定するのは時間のかかる作業であるため、顧客の要求に合った製品をタイムリーに提供できなくなる可能性があります。アドバンテストは過去において、仕入先がアドバンテストの仕様に合った部品を提供できなかったこと、またはその他の部品不足を原因にスケジュールどおりに製品を出荷できなかったことがあります。また、経済環境の悪化により下請業者とサプライヤーの財政状態が悪化し、アドバンテストの需要を充足できなくなる可能性があります。
●アドバンテストは激しい競争に直面しており、シェアを維持、拡大できない場合は、アドバンテストのビジネスが損なわれる可能性があります。
アドバンテストは世界中で激しい競争に直面しております。アドバンテストの主要な競合企業は、半導体・部品テストシステムの市場においては、Teradyne, Inc.、LTX-Credence Corporation、UniTest Inc. および EXICON Ltd.等があります。メカトロニクス関連の市場においては、テスト・ハンドラでは、Delta Design, Inc.、TechWing Inc.、セイコーエプソン株式会社 および Mirae Corporation 等、デバイス・インタフェースでは、TSE Co., Ltd.、Semes Co., Ltd. および SL-link Co., Ltd.等と競合しております。一部の競合企業はアドバンテストよりも多くの資金その他の資源を有しております。
アドバンテストはその事業において、テストコストの削減につながる半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連製品を望む顧客からの圧力が強まるなど、多くの課題に直面しております。デバイス・インタフェースについては、競合企業にコア技術部品の供給ベンダーが買収されたり、PCB製造技術が流出した場合、顧客のテストコストの削減や、製品の性能の実現が困難になります。
アドバンテストが競争に打ち勝ち、シェアを維持、拡大していくためには、継続的にそのビジネス・プロセスを改良して製品コストを削減する、あるいは全体的なテストコストを低減させる必要があります。また、アドバンテストは、競合他社が今後も価格と性能の向上した新製品を投入し、そのカスタマ・サービス/サポートの提供を増強し続けたり、新規参入企業による低価格テスタの投入などを予想しております。競争が大幅に激化した場合、アドバンテストの利益幅が縮小し、利益が減少する可能性があります。
●アドバンテストは、策定した戦略や中期計画の目標を達成できない可能性があります。
アドバンテストは、2014年度を最終年度とする中期経営目標「ACT2014」を策定し、その達成に向けて取り組んできました。しかし世界的な景気後退の影響、半導体業界の低迷や中期経営目標発表後に発生したその他の要因により、アドバンテストの翌連結会計年度の業績は、当初の目標を大きく下回ると見込まれています。中期目標の達成は、アドバンテストや顧客に影響を及ぼす経済や市場の動向、競合状況、設備投資水準、アドバンテスト製品の需要と為替レートの変動を含む様々な内外の要因に影響されます。したがって、発表される目標値(適時修正される)は、将来の業績予測として見なすべきではありません。中期経営目標達成のためのアドバンテストの戦略とその実行が成功する、戦略の実行が意図する結果をもたらす、中期経営目標またはそれ以外の目標(定量的、定性的を問わない、適時修正される。)が期限までに達成される、あるいはそれらの目標が将来経営陣によって変更されないという保証はありません。
●半導体・部品テストシステム事業およびメカトロニクス関連事業の市場の急拡大に伴う需要に対応しきれない場合には、将来の市場シェアおよび業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
アドバンテストは、製品に使用する部品をサプライヤーから調達しておりますが、それらのサプライヤーは、製造ラインおよび人員削減による生産能力の適正化を実施してきました。そのため、今後半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連事業の市場が急激に拡大した場合には、回復局面を活かすために人員増を含む生産能力を大幅に増強することや、需要が増加する部品を、サプライヤーから適時適切に確保することが必要となってきます。需要の回復の際、製品需要の予期せぬ増加に対応しきれない場合、アドバンテストが既存の大口顧客を失う、または今まで取引関係の少なかった、あるいは全く無かった潜在的な大口顧客と強い関係を築く機会を失う結果となる可能性があります。このような機会損失は、アドバンテストの将来の市場シェアおよび業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
●アドバンテストの売上高は、上位顧客の数社が大きな割合を占めるため、これらの1社または数社を顧客として失うことや設備投資の変動が、アドバンテストの事業に影響を及ぼす可能性があります。また、これらの上位顧客の財務状態が悪化した場合、売上債権の回収リスクが発生します。
アドバンテストの成功は、重要顧客との関係を継続的に発展させ管理することにかかっております。現在ではこれらの少数の顧客がアドバンテストの売上高の大きな割合を占めております。最上位顧客による売上高は、2011年度の売上高全体の約29%、前連結会計年度の同約14%および当連結会計年度の同約15%を占めております。顧客上位5社による売上高は、2011年度の売上高全体の約56%、前連結会計年度の同約37%および当連結会計年度の同約36%を占めております。これら主要顧客の1社または数社を失うことや主要顧客の設備投資の変動が、アドバンテストの事業に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、多額の債権を有する顧客の財政状態が悪化し、アドバンテストが期限どおりの支払が得られない場合、アドバンテストの事業、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
●アドバンテストの製品は価格低下圧力を受けております。
アドバンテストが事業において受けている価格低下圧力は、営業利益率に悪影響を及ぼしております。半導体の需要が数量ベースで増加している時においても、半導体価格の低下は進行しているため、半導体・部品テストシステム事業およびメカトロニクス関連製品に対する価格低下圧力が続いております。アドバンテストの顧客である半導体メーカーやテストハウスは、急激な半導体価格の低下が起きている時期に、生産能力を増強しようとしながらも、設備投資額を抑えようとします。デジタル・コンシューマー機器とパソコン市場に加え、スマートフォンやタブレット型端末などのモバイル機器市場およびデータサーバ市場における競争激化により価格が低下し、それによりアドバンテストの製品にも強い値下げ圧力がかかります。半導体価格の低下が止まらない場合、顧客は既存の設備の改造や使い方の工夫により、新品の設備投資を抑える可能性もあります。今後、価格低下圧力がさらに強まれば、アドバンテストの将来の財務状況と事業成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
●アドバンテストは新製品の開発コストを回収できない可能性があります。
既存製品の改良と新世代製品の開発は、ほとんどの場合多額な費用を必要とします。さらに、半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連製品の購入決定は高額な投資を伴うため、一般的に販売活動に要する期間が長く、販売に至るまで多大な支出と営業活動を必要とします。アドバンテストが製品を改良し新世代の製品を投入したとしても、顧客ニーズの変化、競合他社による新技術・新機能搭載製品の投入、顧客による異なる試験機能を必要とする新製品投入、または顧客の製品がアドバンテストの期待する速度、レベルで成長しないことにより短期間で時代遅れとなれば、開発と営業の費用を上回る売上高を上げられない可能性があります。非メモリ半導体製品の市場投入の頻度はメモリ半導体製品よりも高いため、非メモリ半導体用テストシステムに関しては、一般的にこのリスクは特に大きいと思われます。場合によっては、アドバンテストは業界動向を先取りし、顧客側の製品実用化よりも先に製品の開発を行わなければなりません。そのためアドバンテストは、革新的技術のビジネス上の実現可能性を判断する前に、多額の投資を行わなければなりません。したがって、アドバンテストの顧客がそれらの製品を迅速に投入できない場合や、またはそれらの製品が市場に受け入れられない場合、アドバンテストは販売量の増加による製品開発投資のコストの回収に失敗する可能性があります。
●アドバンテストの主な製品の市場は極めて集中しており、販売機会が限られているため、アドバンテストが製品の売上を拡大できない可能性があります。
半導体・部品テストシステム事業の中でも、特にメモリ半導体用テストシステムの市場は極めて集中したものであり、少数の大きな半導体メーカーとファウンドリーおよびテストハウスが業界全体の売上に大きな割合を占めております。このような業界状況は、近年の半導体業界において、大手の半導体メーカー、ファウンドリーおよびテストハウスによる小規模企業の買収や事業の統廃合などの再編が進むことにより、一層加速していると考えられます。アドバンテストの売上の増加は、大口顧客から受注を獲得し増加させることができるかどうかに大きく依存します。また、半導体メーカーの統廃合により過剰な設備が中古市場に流れ、製品の販売機会を失うリスクがあります。
●為替変動が収益性に影響を及ぼす可能性があります。
アドバンテストの売上高の大半は日本国外の顧客への販売によるものです。当連結会計年度の売上高の89.1%は、海外顧客への製品売上によるものです。当連結会計年度の売上高のうち約61%は、米ドルを主とする円以外の外貨によるものです。アドバンテストが販売にあたり使用する外国の通貨(主に米ドルであるが、僅かながら他の外貨を含む)に対して、円高に転じた場合、アドバンテストの製品価格は米ドルまたはかかるその他の外貨ベースでは上昇し、かかる国での売上に打撃を与えます。
なおユーロについては、現状ユーロ建ての売上よりも費用の発生額の方が大きいため、円安水準で推移した場合、収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、円と外貨(特に米ドル)の間の大きな為替変動により、海外において円建てで販売される製品価格を引き下げなければならない場合や、また米ドルやその他の外貨建てで販売される製品売上の円相当額が減少した場合には、収益性に影響を及ぼす可能性があります。これらの変動により、アドバンテストの製品価格が相対的に高くなり、潜在的な顧客による発注の取消しまたは先送りが生じる可能性があります。過去において、アドバンテストが販売にあたり使用する外貨と円との間の為替レートに、大きな変動が生じたことがあります。
また、子会社の報告通貨の外国為替レートが円に対して変動した場合、アドバンテストの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。外国為替レートの変動は、アドバンテストの連結財務諸表の報告通貨である円に換算する必要のある外貨建ての金額に影響し、為替変動の向きによってはアドバンテスト全体の財政状態、経営成績および純資産の状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
●アドバンテストの主要な研究開発施設、生産施設、情報技術関連施設、製造委託先またはサプライヤーの施設が巨大な損害を被った場合、業績に重大な打撃を受けることになります。
アドバンテストの半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連事業の主要な研究開発施設、生産施設ならびにサービスの拠点の多くは、特に群馬県と埼玉県に集中しております。また、主要な基幹システムサーバーとネットワークのハブは、ISMS(情報セキュリティマネージメントシステム)の承認を受けたシステムセンタに設置され、さらに、日本の一部の事業所にもローカルにネットワークサーバーが設置されております。日本は2011年3月に東日本大震災が発生したように、頻繁に地震が起こる可能性の高い地域であります。
これらの施設、特に半導体・部品テストシステムの工場が巨大な損害を受けた場合、アドバンテストの事業に支障を来し、製造、出荷および収益に遅れが生じ、施設の修理または建て直しのために巨額の費用が発生します。アドバンテストは、地震以外の原因によるほとんどの潜在的な損失をカバーする保険に加入しておりますが、これらの保険は起こり得る損失すべてを十分にカバーしない可能性があります。また、アドバンテストの製造委託先、サプライヤーの施設、または情報サービス網の施設が同様の重大な損害を受けた場合も、アドバンテストの事業に支障を来す可能性があります。
アドバンテストは、大規模災害等の危機発生時に備え、各部門で対応手順書を定めていますが、さらに、基幹事業を停止させないこと、停止した場合でも重要な設備を含め可能な限り短期間で再開させることを目的として、事業継続計画(Business Continuity Plan)を策定し実施しております。しかしこの事業継続計画が有効に機能しない場合には、大規模災害等の危機発生時にアドバンテストの基幹業務が停止し、再開に長期間を要する可能性があります。
●アドバンテストは、Verigy社との事業統合の成果を十分には出せない可能性があります。
アドバンテストは、2011年7月にVerigy社を買収し、2012年4月に完全統合しました。この統合により、変化の激しい半導体関連市場において、高品質で幅広い範囲の製品の開発・販売による顧客ニーズの充足や、安定的な財務基盤に基づく技術革新を通じた顧客ニーズへの対応が可能となり、持続的な成長を実現しつつあると考えております。
しかし、2つの異なる企業の事業統合は複雑であり、業務プロセスの一本化までには、さらに一定の時間を要するものもあります。また業務プロセスが一本化されたとしても、期待されている事業統合の成果が出ない可能性があります。以下を含め、事業統合の様々なプロセスで、困難な状況が引き起こされる可能性があります。
· 二社の異なる研究開発、生産、販売、保守プロセスおよび業務システムの統合
· 二社間の重複する部門やプロセスによって引き起こされる非効率性の解消
· 企業文化と使用言語が異なる二社の融合
以上を含め、困難な状況が起きた場合、アドバンテストの将来の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、アドバンテストは、2011年7月にVerigy 社から引き継いだ社員に対し、アドバンテストのストック・オプションを付与しています。社員がこのストック・オプションの権利を大量に行使した場合、アドバンテスト株主の議決権および一株当りの総資産ならびに株価に希薄化の影響を与える可能性があります。
●アドバンテストの事業は、国際的な事業展開に伴う経済的、政治的またはその他のリスクを有します。
アドバンテストは世界中で部品の調達、製品の生産および販売を行うため、その事業は国際的な事業展開に伴うリスクを有しております。アドバンテストの当連結会計年度の総売上高に対し、台湾、中国および韓国への売上が大半を占めるアジア地域(日本を除く)は73.0%、米州は9.6%、欧州は6.5%を占めております。海外事業での売上高は、今後も継続して売上高全体の大きな割合を占めると予想されます。また、アドバンテストの販売・サポートの子会社は米州、欧州および台湾、シンガポール、韓国、中国等のアジア諸国に展開し、サプライヤーや生産工場も韓国やマレーシアなどの海外に展開しております。したがって、アドバンテストの将来の業績は、以下を含む様々な要因から悪影響を受ける可能性があります。
· アドバンテストが部品を調達し、製品を生産および販売する国における政治的、経済的な混乱、紛争、自然災害、疫病またはその他のカントリー・リスク
· 貿易保護政策と輸出入の許認可制度
· 税法の改定による潜在的なマイナス影響
· 移転価格税制等の国際税務に関するリスク
· 事業展開が広範囲に及ぶための人事・管理面の困難性
· 異なる知的財産保護制度
· 遠隔地であることおよび法規制が異なることによる売上債権回収の困難性
· テロ・戦争あるいは政治や経済の両方もしくはいずれかにおける外国との関係悪化等による社会的・政治的混乱が発生するリスク
· アドバンテストのサプライヤーや生産工場が、機械加工および組み立てのインフラのレベルが発展途上の国にある場合の調達および生産における品質低下のリスク
●長期性資産およびのれんの対象事業の将来キャッシュ・フローの見込みによっては、多額の減損を計上し、アドバンテストの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
長期性資産について、減損の兆候があり、かつ資産の帳簿価額を回収できない可能性がある等の場合、当該長期性資産について帳簿価額を公正価値まで減額し、当該減少額を損失として計上する可能性があります。
なおアドバンテストは、当連結会計年度に事業環境の変化を踏まえ、将来の期待されるキャッシュ・フローを見直した結果、有形固定資産および無形資産に関する減損損失を13,495百万円計上しました。
また、アドバンテストの連結貸借対照表には、米国会計基準に基づき相当額ののれんが計上されています。のれんについては、1年に1回減損テストを実施しており、減損テストにおいて、のれんの対象となっている事業ののれんを含む公正価値が当該帳簿価額を下回っている場合、のれんの額を再度算定し直し、現在ののれんの額と再算定したのれんの額の差額を減損として認識することになります。したがって、長期性資産やのれんの対象事業の将来キャッシュ・フローの見込みによっては、多額の減損を計上し、アドバンテストの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
●アドバンテストは、設備投資を回収できない可能性があります。
アドバンテストは、設備投資を継続的に行っていますが、前連結会計年度から当連結会計年度にかけて、韓国の大手顧客への販売シェア拡大のため、韓国に新工場を建設し2013年5月に操業を開始しました。 このような設備投資に対して、顧客の設備投資の抑制により想定した販売規模を達成できない、あるいは競合他社との激しい競争による製品単価の下落などにより、アドバンテストが設備投資を回収することが出来ない、または回収出来るとしても想定より長い期間を要する可能性があります。そのような場合、当該資産が減損の対象になり、アドバンテストの収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
●東日本大震災と同様の災害が発生した場合、アドバンテストのビジネスが損なわれる可能性があります。
2011年3月11日に発生した東日本大震災と同様の災害が発生し、サプライヤーの施設が被災したり、サプライヤーの施設で電力やガス、水道などの公共サービスが停止された場合や、国内産業に必要かつ十分なエネルギー供給ができなくなった場合、アドバンテストは必要とする部品が調達できず、製品供給が市場の要求に対応できない可能性があります。また、半導体市場、家電製品、各種コンピュータ機器や自動車など半導体と関連の深い最終製品の市況の動向も、不透明な状況に陥る可能性があります。これらの要因により、アドバンテストのビジネスが損なわれる可能性があります。
福島第一原子力発電所の事故で経験したように、地震や津波により原子力発電所が甚大な被害を受けることにより、放射性物質が大量に漏洩し、アドバンテストの製品に放射性物質が付着したり、あるいはアドバンテストの主要拠点における事業活動に制約がかかった場合、または原子力発電所の運転停止等により長時間にわたり電力供給が不安定になった場合、製品の競争力が損なわれたり、製品供給が市場の需要に対応できず、アドバンテストのビジネスが損なわれる可能性があります。
●アドバンテストの財務状況および事業成績は、その営業・販売力およびブランド力に関係する要因からマイナスの影響を受ける可能性があります。
アドバンテストの財務状況および事業成績は、その営業・販売力およびブランド力に関係する以下のような要因からマイナスの影響を受ける可能性があります。
· 半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス製品の長期間にわたる販売プロセス
· 半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス製品市場の比較的に少ない総販売台数
· 顧客側による発注キャンセルまたは設備投資の先送り
· 顧客の財務状況を原因とする売掛金回収の遅延や貸倒れおよび貸倒引当金の増加
· 製品保証費や棚卸資産評価損に必要な引当金額の増加
· アドバンテスト製品の性能または信頼性の事実上または風評上の低下、またはそのことによるブランド力の低下
●アドバンテストで利用されている化学物質に対して規制が強化され、その対策のために多額の費用が発生する可能性があります。
アドバンテストが利用している化学物質の中で、その製造、処理および販売に関し、日本の政府機関や外国の様々な業界組織、またはその他の規制機関の環境関連法と規則が適用されるものがあります。そしてこれらの規制機関は、アドバンテストが使用する化学物質に対して、適用される既存の規制強化や、新たな規制に乗り出す可能性があります。アドバンテストは、製品に組み込む部材に含まれる有害物質の排除を進めておりますが、製品の信頼性の確保を優先するため、電子部品の取付けに鉛を含むはんだを使用しております。また、半導体・部品テストシステムやメカトロニクス関連製品の冷却方式では、使用に関わる法的規制を受けていないフッ素系液体を一部使用しております。アドバンテストは、製品の安全性や信頼性の確保を第一に、製品の環境対策を進め、化学物質の使用における規制を遵守していると考えておりますが、特定の国において規制要件が変更された場合にはかかる変更に対応しなければなりません。新しい要件への対応のために多額の費用がかかる可能性があります。関連する政府または業界規制への対応が出来ない場合、販売の継続または拡大の妨げとなる可能性があります。
●第三者がその知的財産をアドバンテストによって侵害されたと主張する可能性があり、その結果アドバンテストが高額な賠償、裁判費用またはライセンス料を支払わなければならなくなり、製品を販売できなくなる可能性があります。
アドバンテストは意図しないまま第三者の知的財産権を侵害し、その結果侵害の責任を負わされる可能性があります。今日まで、アドバンテストに対して知的財産権侵害に関わる重大な申立てが行われたことはありません。しかし、特許またはその他の知的財産権の侵害をめぐる裁判は、多大な出費と時間を伴い、経営陣または重要な人材がアドバンテストの事業運営に注力できなくなる可能性があります。アドバンテストが勝訴できなかった場合、多額の賠償金の支払、ライセンス料の支払、製品または工程の変更、製品の製造中止または工程の使用中止などを余儀なくされる可能性があります。ライセンスは非常に高価な場合もあり、または全く取得できない場合もあります。第三者の知的財産権を侵害しないように製品または工程に変更を加えることは、多大な出費を要する場合や、実行不可能な場合があります。
●アドバンテストの知的財産権を侵害している疑いのある製品を入手し調査することは困難なため、アドバンテストが知的財産権を保護できない可能性があります。
アドバンテストは、その独自の権利を保護するために、各国で取得した特許権、実用新案権、意匠権、商標権および著作権などに依存しております。例えば、アドバンテストはデバイス・インタフェース市場において、模造品を販売するメーカーに対して特許権および実用新案権に基づく法的手段を講じ、場合によっては販売を差し止めてきました。しかし、知的財産権が侵害されていると思われる製品を入手し調査することは一般的に困難であります。そのため、保有している知的財産権によって自社の権利を十分に保護していると保証できるわけではありませんが、アドバンテストはその知的財産権を第三者の侵害から保護することに積極的であり、今後も引き続きその知的財産権を監視し、権利行使を行ってまいります。
●技術労働力市場は競争が激しいため、アドバンテストが技術者やその他の重要スタッフを採用し保持できない場合は、その事業に支障を来します。
アドバンテストの今後の成功は、その研究開発部門およびカスタマ・サービス/サポート部門で適任のエンジニアを採用し保持できるかにもよります。これらの人材を十分に採用し保持できなかった場合、事業の維持と拡大が不可能になります。現在の役員や従業員の雇用を維持し、将来に必要と思われる追加の人材を採用するためには、賃金制度やその他の人事諸制度の見直しが必要となってくる可能性もあります。
●アドバンテストの情報技術ネットワークやシステムが被害を受けたり妨害されたり停止した場合、業務の継続を妨げ、社会的信用を失いかつ多額の費用負担が発生する可能性があります。
アドバンテストは、機密データを含む電子情報の処理、送信、蓄積のために、また製造、研究開発、サプライチェーンの管理、販売、会計などを含む様々なビジネス活動およびそのサポートのために、第三者によって管理されているものも含め、様々な情報技術ネットワークやシステムに頼っています。アドバンテストは情報セキュリティ委員会および総務・法務部が、情報セキュリティ対策の方針制定を行っております。また、情報技術ネットワークやシステムについては、前述の方針に基づき、IT部門が構築・運用しております。しかし、ハッカーやコンピューターウイルスによる攻撃、情報セキュリティシステムの誤用、不注意な使用、事故や災害などがあった場合には、当社が実施する防御を超え、業務の継続を妨げ、情報の漏洩やその情報が改竄される恐れがあるだけでなく、法的請求、訴訟、損害責任、罰金を払う義務などが発生し、アドバンテストの社会的信用、業績および財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
●アドバンテストは、製品の欠陥や製造物責任による顧客の信用の喪失などにより、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
アドバンテストは、ISO9000など世界的に認められている品質管理基準にしたがって製品の生産を行っておりますが、これらの製品について欠陥が無いという保証はありません。また、製造物責任賠償については、保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできる保証はありません。製品の欠陥により大規模な事故が発生した場合や、当社の製品に障害が発生したり、障害対応が不適切だったことにより、顧客の信用を失ったり、顧客対応費用が増大したり、損害賠償請求を受けたりする場合には、アドバンテストの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
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このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E01950] S1002A0V)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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