有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100262D
ニデック株式会社 事業等のリスク (2014年3月期)
NIDECの経営成績、株価、財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、次のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてNIDECが判断したものであります。
(1)ハードディスクドライブ業界への依存
NIDECは情報機器業界の中でも特にハードディスクドライブ(以下「HDD」)業界に依存しております。HDDの需要低迷や価格低下はNIDECの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
情報機器業界がソリッド・ステート・ドライブ(以下「SSD」)等のHDD以外の記憶装置を採用することにより、HDDの需要が今後さらに低下する恐れがあります。仮にタブレットコンピュータやスマートフォンといったパーソナルコンピュータ(以下「PC」)の機能を合わせもつSSD搭載製品がHDDを搭載するネットブック等小型PCの需要を代替した場合、HDD需要が減少する可能性があります。また、将来SSDがHDDに対し価格優位性を備えるようになった場合もHDD需要の減少要因となり、NIDECのHDD用スピンドルモータ売上の低下に結びつく可能性があります。
経済低迷時には、HDD用スピンドルモータの顧客(以下「HDDメーカー」)がNIDECを含むサプライヤーからの在庫購入量を低減または在庫購入時期を延期する可能性があります。HDDメーカーが価格引下げ、在庫縮小、体制の再構築、マーケットシェア拡大戦略を推進するとHDD平均価格の下落が加速します。
HDDメーカーの多くはJIT方式の在庫管理プロセスを採用していることからNIDECはHDDメーカーの生産施設またはその近隣に在庫を保有する場合があります。顧客要求に即時対応できる十分な在庫を保持するためには相当の資本や費用が必要になります。そして、需要がNIDECの予想を大幅に下回る場合には、在庫の陳腐化や価格低下のリスクが高まり、NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
HDDメーカーが、その構造改革の一環として、合併または事業の再編成を通じてコストや在庫の削減を図ることによりHDD用スピンドルモータへの価格圧力が強まり、NIDECの収益低下に繋がる可能性があります。また、HDDメーカーがNIDECの競合相手を調達先として指定すればNIDECの販売量が低下する可能性があります。HDDメーカーによるこのような構造改革が生じれば、NIDECの業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)情報機器産業への依存
NIDECの売上の多くは情報機器やその周辺機器に依存しております。NIDECは、製品の多角化を図り、家電、自動車用モータといった新規市場への参入努力を続けておりますが、引き続きこの依存状態は継続するであろうと予測しております。例えば2012年度には、消費者支出が弱まったことやHDDからSSDへのシフトにより、HDD関連市場、光ディスク関連市場が深刻な需要減少に見舞われ、NIDECの売上高は重大な悪影響を受けました。今後も、同市場の減退がNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、情報機器及びその周辺機器の市場は次のような要因によりさらに悪化する恐れがあります。
・急速な技術の変化
・新しいデータストレージ手法の出現
・新製品の頻繁なリリースと短い製品ライフサイクル
・熾烈な価格競争と価格破壊
・在庫水準の変動
・周期的かつ季節的な市場動向が原因となり生じる過剰生産と生産抑制
・生産コストと生産高の変動
・設備投資及び製品開発による多大な支出
(3)主要顧客グループへの集中
NIDECのHDD用スピンドルモータの売上は一部の主要顧客に依存しております。NIDECは、当面の間、主要顧客への売上がNIDECの売上全体の中で高い割合を占め続けるものと考えております。仮に、既存顧客が我々への注文を継続しなくなった場合、新規顧客による受注で補うことができない恐れがあります。すなわち、NIDECの事業、経営成績、財政状態は以下に掲げる場合に悪影響を受ける可能性があります。
・主要顧客が注文を著しく減少、延滞、またはキャンセルした場合
・主要顧客が次世代製品を含めて、競合他社が生産した製品を選択し、または主要顧客自身が開発した内製部品を選択した場合
・特定の主要顧客が操業悪化や財政難に陥った場合
さらに、HDDメーカー同士が合併する等、HDD業界自体の再編成が行われた場合、再編成後のHDDメーカーがNIDECに対する価格交渉力を強めたり、または部材供給を競合他社に委ねたりすることにより、NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4)特定の国または地域への生産・開発拠点の集中
NIDECの生産拠点はタイ、中国等、開発拠点は日本等の一部の国または地域に偏在しております。こうした国・地域の多くはハイテク技術の誘致に積極的であったため、NIDECの主要顧客、サプライチェーンを含む多数のIT企業が集結しております。これらの国または地域で地震や洪水等の大規模な災害や政治不安等が発生すると、例えば、2011年10月にタイ国で発生した大洪水がNIDEC及びその顧客、サプライチェーンに深刻な被害を与えましたように、情報機器業界をはじめとするIT産業全体に甚大な影響を与える可能性があり、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5)販売価格下落のリスク
NIDECが供給するあらゆる製品市場において、NIDECは、今後も製品価格の値下げの圧力を受けると予想しております。特にHDD業界は競争が激しく、競争力がありかつ時機を逃さず市場に投入された製品でさえ、製品寿命よりも早く製品価格が下落する場合があります。一般に、供給量の増加、技術の陳腐化、HDDメーカー間の価格競争の激化はHDD用スピンドルモータの製品価格への下方圧力となります。同時に、新興国における需要拡大による原材料価格の高騰はコスト増加要因になります。また、情報機器業界は低価格製品が普及する傾向にあります。そして、価格の下落がNIDECの予想を大幅に超えて長期に渡る場合、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
このような環境下で、もし原価低減や低価格での新製品開発が実現できなければ、NIDECの収益性維持が困難になる可能性があります。
(6)部品サプライヤーに係るリスク
NIDECは、アルミニウムやレアアース等の原材料及び電子回路、磁石、コネクタ等組立部品を外部から調達しております。こうした原材料、組立部品が価格高騰により十分に調達できない場合、NIDECの生産能力が制限されます。また、サプライヤーの経営状態が悪化した場合にも、NIDECの原材料、組立部品調達に悪影響を及ぼす恐れがあります。さらに原材料や部品の使用条件に関わる各国政府の政策変化または追加的開示義務が発生した場合、これら原材料及び部品の調達に支障が生じる可能性があります。例えば、コンゴ民主共和国及びその周辺国で採取された紛争鉱物の利用に関する開示規制により、NIDECのサプライヤーが限定される可能性があり、また鉱物の出所を十分に確認できない場合には、顧客や投資家から厳しい評価を受ける可能性があります。原材料や部品の調達が制限されれば、代替材料を提供してくれるサプライヤーを確保したり、当該原材料・部品の使用量低減を可能にする設計及び技術の開発を行なうために、多くの資源を投入する必要性に迫られる恐れがあります。こうした調達不足が長期間に渡りかつ代替部品のサプライヤーを見つけることもできない場合、NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
(7)競合
NIDECの主要製品の既存市場では、シェア拡大を目指す競合他社との価格競争が激化しています。一方、NIDECが将来的な事業拡大を試みている車載、家電、商業、産業用部品市場における競合他社はNIDECよりも大規模な資金力、生産技術力、製造能力、販売力、マーケティング力、サービス力とサポート源を有し、また、十分な知名度や長期に渡る顧客との良好な関係を維持している可能性があります。また、電気自動車部品やハイブリッド自動車部品等の新興市場では新規参入企業との激しい競争が予想されます。
NIDECの主要既存市場で競争力を維持し、将来的な事業拡大を試みているその他の市場で競争力を高めるため、NIDECは研究開発分野への多額な投資を継続し、タイムリーな新製品の開発を行うとともに、生産技術力、製造能力、販売力、マーケティング力、サービス力とサポート源を拡大していくことで既存製品をさらに改善していく必要があると考えております。
NIDECは次のような場合に、市場における競合優位性を確立または維持できない可能性があり、その結果NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
・市場がNIDECの予測を超える速度で発展した結果、需要拡大等の市場変化への対応において競合他社がNIDECの能力を上回った場合
・NIDECの製品が環境規制等に適合できなかったり、顧客ニーズを満たすために必要な技術進歩を達成できない場合
・競合他社が技術革新を起こし製造効率の強化または開発努力を行った結果、NIDECの技術や製造効率を上回った場合
・NIDECの競合企業同士の合併によりNIDECの競争力が相対的に弱まった場合
・必要な投資を継続・強化するための財産的、技術的、人的な資源を調達できない場合
(8)新製品開発リスク
NIDECの顧客はカスタマイズ製品を決められた納期内に確実に提供するよう要求します。仮にNIDECが設計から製造、納入に至る新製品の商品化に失敗した場合、顧客ニーズを充足することができません。より高性能な製品をより短い納期で納入することへの顧客からの要求はますます強まっており、そうした顧客要求を満たせなければNIDECは信頼を失い、販売シェアが縮小すると同時に売上高と利益率は低下し、新製品の事業及び市場の拡大を妨げることになります。
さらに、NIDECが多額の投資を経て開発した製品を搭載した顧客製品が予期したとおりに商品化されまたは販売されなかった場合、NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9)製品の品質に関するリスク
NIDECは最先端のモータやその他の電子・光学部品を製造しております。NIDECの製品が組み込まれている最終製品が万一大量に故障した場合、消費者からの苦情、不良品の回収、さらに損害賠償請求訴訟等が起こりえます。事業拡大を試みている車載及び家電・商業・産業用モータ及びその他の部品の市場では、安全で高品質な製品を提供できない場合、人命に係る事故へ繋がる可能性があり、法令上のリコールが適用される他、社会的要請としても特に高い安全性が要求されます。このような場合、たとえ最終製品の故障がNIDEC製品の不具合に起因していなくても、NIDEC製品の品質が疑われる場合があります。その結果、顧客との取引関係の悪化、NIDECのブランドイメージの毀損、行政処分、販売の落込み及び不良品回収等の損失費用により経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、訴訟に伴う負荷が正確な経営判断の阻害要因となる可能性があります。
NIDECは損害賠償請求訴訟等に備え、保険を付しておりますが、これらの保険では対応しきれない賠償請求が将来的に発生する、またはNIDECの希望どおりに保険が適用されない可能性があります。保険の適用範囲を超える賠償請求や、大規模な製品回収が発生した場合、NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10)海外拠点での事業活動に係るリスク
NIDECは中国、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、メキシコ、インドネシア等で製造、販売、開発を行なっております。また、インド、ブラジル等の新興国市場へも新規参入を行い、事業の拡大を図っております。これらの国々は、経済的、社会的、またはその他のインフラを整備している段階にあるため、様々な不確定要素の影響を受けやすくなっております。これらの国々の政治、社会、経済状況下では、NIDECの製品をコスト上効率よく製造するための環境を維持できるかどうか定かではありません。さらに、これらの地域の政治当局は、NIDECがその地で事業活動を展開することに対し、経済的、法的またはその他の面で困難な状況を生み出したり、実践的でないものにしたり、不可能にしたりする規制や制限を課す可能性があります。
そして、海外における事業活動は、次のような外国取引に関する様々なリスクをNIDECにもたらすため、それらがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
・海外市場における関係産業の景気悪化または沈滞
・国際通貨の変動
・ゼネストや労働条件の混乱
・中国、タイ等における労働力不足と賃金水準の上昇
・政治不安
・貿易制限や関税の変更
・グローバルな経営活動を行える人材の確保の困難
・一般的に長期の債権回収期間
・法律や規制の予想しえない制定または改正
・特定の国における比較的弱い知的財産の保護
・不利に取り扱われる恐れのある税制
・文化、商習慣の相違
・関税、輸送費用、その他の価格競争力を低下させる負担費用
・投資効果の実現までに要する長い期間と多額の資金
(11)構造改革に係るリスク
2012年度には、NIDECはPC関連、デジタルカメラ関連、液晶パネル製造関連等の主力製品の急激かつ大幅な需要減少といった厳しい経済環境に直面し、これら主要製品の売上減少や生産設備の稼働率低下に見舞われました。これに応じて、NIDECは収益性を改善するため構造改革を実施し、構造改革費用を計上致しました。
将来においても収益性改善のために構造改革を実施することがあるかもしれません。例えば、NIDEC製品に対する需要がさらに低下したり大量の注文キャンセルが起きれば、たな卸資産の評価減が発生します。もし稼働率が生産能力を下回る状況が続き、十分なキャッシュ・フローを生み出せない状況が継続した場合には、関連資産につき更なる減損損失を認識する可能性があります。さらに、万一収益性の改善効果が想定通りに上がらず、これら営業権や資産の見積り公正価値が簿価を下回った場合、NIDECは更なる減損損失を計上する可能性があります。このような構造改革費用は主に売上原価、販売費及び一般管理費、その他販売費に計上され、営業利益・当期純利益や財政状態に影響を及ぼします。
(12)四半期の業績比較におけるリスク
NIDECは四半期ごとの売上や経営成績の変動が大きい場合があり、今後もこの変動が続き得ると考えております。そのため、四半期ごとの経営成績を比較することはそれほど有用性が高くないかもしれません。また、このような比較により判断される将来の傾向は、信頼のよりどころとならないかもしれません。NIDECの経営成績は、次にあげる主要な要因によって、四半期ごとに変動する場合があります。
・情報機器、家電、商業、産業用を含めた、NIDECの製品を購入または使用する業界での周期的及び季節的な製品需要の変動
・NIDECの海外子会社の経営成績、外貨建て資産、負債に関する為替レートの変動による影響
・NIDECの製造能力とその限界
・短期的なNIDECの製品または顧客、競合の変化
・短期的な主要な注文のキャンセルまたは納期の延期
・新製品や戦略的製品に対する顧客の注文遅延
・とりわけ限られた調達先からの部品、原材料の短期間での調達可能性及び価格の変動
(13)先行投資に係るリスク
NIDECでは、通常、顧客の先行注文、コミットメント、数量予想と自社の需要調査を総合的に評価したうえで生産、在庫計画を策定しますが、競争の熾烈化や季節的需要サイクルの変化その他要因により顧客製品の需要が減少すると、顧客が要求する納入数量が大幅に変動し予測が極めて困難になります。十分な生産量と生産性を確保する必要から受注に先駆けて生産設備を拡張することがあります。今後NIDECは新興国を中心に設備投資を拡大する方針であり、生産能力が需要を著しく上回った場合、稼動損による償却負担の増加または過剰在庫によるたな卸資産の評価減がNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。他方、もしNIDECが需要を過小に見積もり必要な設備投資を行わなかった場合、顧客の需要を満たせずにシェアを失う可能性があります。
また、部品や材料を調達する際の長いリードタイムを考慮してサプライヤーへ材料を先行注文することがあるため、実際の受注数量が予想に満たない場合は過剰在庫が生じ予期せぬたな卸資産の評価減を招く可能性があります。
さらに、営業費用を需要の急減に即応して削減する余地は限られているため、需要減により売上高が想定を下回ると経営成績全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
(14)M&Aに係るリスク
NIDECはNIDECの事業の成長に必要な技術、製品、販売網、顧客基盤を所有する他社の買収や他社への資本提携を通じて大幅な成長を達成してまいりました。同時に必要に応じて既存の関係会社や出資会社への出資比率を高め事業効率の向上を図っております。NIDECの買収や出資活動が成就しなかった場合、NIDECの製品ラインナップ、販売網、顧客基盤の拡大計画が停滞したり、成長率が低下したりする可能性があります。買収や資本提携を成功させるためには、買収した事業の効率的な統合が重要です。しかし、買収した事業がNIDECの予想どおりに収益を生むという確証はありません。NIDECは今後の買収や資本提携を成功させるために必要な条件を次のように考えております。
・NIDECとのシナジー効果による買収した事業の製品の製造及び販売の拡大
・買収した事業の製品に対する顧客の継続的な需要
・買収した事業の経営、製品、社員に関するNIDECの統合能力
・買収した事業におけるキーパーソンの保持
・買収した事業における財務面や経営面でのNIDECの管理能力
・買収した事業からの報告体制及び買収した事業の法令遵守体制の整備
・買収対象企業の正確な事前調査(財務及び法務デューデリジェンス)
・事前調査の過程でNIDECに悪影響を与える買収対象企業の負債を特定する能力
こうした買収、出資活動はNIDECの事業に重要な影響を与え得る不確定要素です。例えば、出資先企業の業績が悪化した場合、投資価値が毀損する可能性があります。出資先企業が拠点を置く国の政府による経済政策、法律、規制、または会計基準の変更が出資先企業に適用されることでNIDECの業績へ多大な影響が及ぶ可能性があります。NIDECが出資先企業の非支配持分株主である場合、通常その会社の資産や経営に対する決定権がありません。従って、重要な意思決定には他の株主や出資者の同意を得るか、または出資比率を上げることにより経営権を獲得することが必要になります。
買収や出資の効果が得られないか、または適切な買収や出資の対象会社を見つけることができない場合、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(15)業務拡大による管理運営リスク
NIDECは、グループ会社の統合を含む事業成長に即応したマネジメント体制拡充の成否が将来の成功を左右する重要な要素の一つであると考えます。すなわち、NIDECは事業戦略として自律成長やM&Aによる事業規模の拡大を掲げておりますが、その実現にあたっては管理、運営、IT、財務資源、法令遵守等のマネジメント体制拡充に関する負担が増加すると予想されます。
これらの負担が想定以上に発生した場合、マネジメント体制の拡充が十分に行えず、NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(16)NIDEC社長である永守重信(氏)への依存
NIDECの継続的な成功は主にNIDECの創業者であり社長兼CEOの永守重信氏の能力と手腕に依存しております。永守氏は積極的にNIDECの経営に携わり、特に企業買収活動をはじめとした戦略的意思決定に関与しております。永守氏への依存を軽減するためデザインされた経営構造の確立過程で、永守氏の突然の離脱があった場合、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(17)企業目標達成に係るリスク
NIDECは安定的雇用環境の提供を軸とする継続的社会貢献を基本的経営理念の一つとして掲げ、その達成のために様々な施策を実施しております。そうした取り組みがNIDECのブランドイメージの向上に寄与していると認識しております。
NIDECの事業戦略は、自律成長及びM&Aによる事業規模の拡大を主軸に展開しておりますが、常にNIDECの経営陣が計画している収益性やリターンを得られるとは限りません。さらに、NIDECをとりまく現在または将来の事業環境の変化やその他の不確定要素が目標達成を困難にするかもしれません。
NIDECは現行の経営理念に添った成長を引き続き追及しますが、その過程で生じ得る業績低迷等の諸制約がNIDECの掲げる継続的社会貢献の阻害要因となり、結果的にNIDECのブランドイメージが損なわれる可能性があります。
(18)管理会計において米国会計基準による財務情報を利用していないことに伴うリスク
NIDECは、連結財務諸表で報告しているオペレーティング・セグメント(「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の連結財務諸表注記「25.セグメント情報」参照)から毎月報告される財務情報に基づいて、NIDECの業績を予測し、事業活動の意思決定を行っております。この月次のセグメント情報は各セグメントの所在国の会計原則に基づいて作成されております。例えば日本電産は日本基準を適用しており、シンガポール日本電産ではシンガポール会計基準が適用されております。つまり、NIDECのセグメントデータは米国の会計基準またはその他の単一の会計基準に基づいて作成されておりません。
加えて、財務会計で行う決算調整やその他の調整項目は月次のセグメント情報に含まれておりません。これら月次のセグメントデータの性質は、財務会計における米国会計基準調整後のセグメントデータと比べて、個別のセグメントや全体的な業績を相対的に評価することを困難にする可能性があります。
(19)法令・規制に係るリスク
NIDECの事業は、事業運営を行っている国内外における法令、規制、政策、行動規範、会計基準等の変更や解釈の差異に起因するコンプライアンスリスクを負っており、製品ラインナップの拡充またはビジネスの地理的拡大により、NIDECは各種産業、市場及び行政地区特有のリスクにさらされることになります。
NIDECは日本、アジア、北米、欧州、その他地域の環境法令を遵守しております。これら環境法令は大気汚染、水質汚濁、危険物質の対応、水質管理、リサイクル、温暖化防止、土壌及び地下水の汚染等に関連する規則を含みます。NIDECの事業の多くは環境法令に基づく営業許可を必要とし、それにより製造活動は制約され、法令遵守のための費用が発生します。こうした環境法令は当局により修正、改定、廃止される可能性があります。これらの法令が厳格化することにより環境法令の継続的遵守に必要な投資やその他の支出が増加し、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
また、NIDECの事業は国内外において独占禁止法、贈賄防止条約、反テロ法、知的財産権、消費者保護法、税法、輸出規制、関税法、海外貿易規制及び為替規制等の取引規制や市場規制を遵守する必要があります。NIDECは精密小型モータ市場における世界シェアが高いため、特に同市場の売上や製造に影響する規制、行政措置がNIDECの事業、経営成績、財政状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。NIDECの一部は普通株式を東京証券取引所に、また米国預託証券をニューヨーク証券取引所に上場しているため、金融商品取引法、米国証券取引法、その他法令及び会計基準等の適用を受けます。さらに、我々は新規市場開拓を行い続けており、法令遵守体制をより強化する必要があります。これら規制を遵守できない場合、その結果生じる罰金、社会的制裁、信用毀損、営業停止、さらには営業許可の剥奪がNIDECの事業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
こうした法律、規制、政策、自主行動規範、会計基準等の変更及びその影響を予測することは困難であり、新たな遵守体制整備のために追加的な財務、管理、人的資源が必要になる可能性があります。
(20)内部統制に係るリスク
上場企業であるNIDECにとって、事業運営及び資産管理に必要で効果的な内部統制システム、コンプライアンス機能、会計システムの整備は極めて重要であると認識しております。さらに、米国証券取引委員会登録企業が対象となる2002年米国サーベンス・オクスリー法においてNIDECは財務報告に関する内部統制システムを確立することを求められており、経営者は内部統制システムの効果を評価し開示する必要があります。また、会計監査人はNIDECの財務報告における内部統制システムの実効性に関する監査を行わなければなりません。日本国内においても同様の財務報告に関する内部統制義務が発生しております。NIDECの内部統制システムは、NIDEC全体の枠組みにおいて問題を特定し、その再発を防止する機能を有している必要があります。
また内部統制システムの設計、実施には多くの管理、人材、その他資源が必要になります。内部統制上の重大な欠陥、弱点が認められた場合、改善に要する新たな資源投入により追加的コストが発生する可能性があります。
さらに、財務報告に関わる内部統制に欠陥がある場合、NIDECは金融商品取引法や米国1934年証券取引法が要求する適時開示義務を充足できない可能性があり、その結果、市場におけるNIDECの評価が毀損する恐れがあります。欠陥の重大性や原因等の程度に応じて様々な法的責任が課せられ、米国証券取引法の違反に基づく米国証券取引委員会及び、金融商品取引法等の各種法律の違反に基づく国内金融庁による強制処分等の制裁対象となる等、米国や日本、その他の市場における資金調達力が制限される可能性があります。
(21)知的財産権に係る訴訟リスク
NIDECは、自社技術及びその他の知的財産を、特許権、商標権、著作権及びその他の知的財産権、さらには機密管理
や個別契約により保護しております。NIDECはこれらの知的財産権に関して次のようなリスクを負っております。
・NIDECは第三者からの知的財産権侵害の主張に対して反論をしていくためコストが必要になる場合があります。また、当該主張の結果、予め認識していない第三者の知的財産権を利用してしまったことによりNIDECに賠償責任が発生する場合や、差止命令によりNIDECの事業の継続が妨げられる場合があります。その結果、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
・NIDECの知的財産権の保護対策は十分でない可能性があります。
・NIDECより大規模な資源を有する競合他社を含むその他の企業が、独自に技術を開発するか、または優越する技術を獲得した場合、NIDECはこれら企業の知的財産を使用するためのロイヤリティを支払わなければならなくなる可能性があります。
・現行または将来の特許出願に関して、特許権を取得できなかったり、NIDEC自身が保有するまたは使用を許諾されている特許が無効になったり回避されたりすることで技術戦略上困難な状況に陥る可能性があります。
・特定の特許権の下で認められている権利では、NIDECに競争上の優位をもたらさない可能性や、適切に保護されない可能性、技術力の維持に繋がらない可能性があります。
・第三者による特許、重要な営業秘密、その他の知的財産権に関する侵害や無断使用に対して提起する訴訟に伴い多大なコストが必要になる可能性があります。
・NIDECの製品を製造及び販売している諸外国の法律が、NIDECの製品や知的財産権を、日本や米国の法律と同じ範囲で保護していない場合や、法律が存在したとしても効果的に施行されていない可能性があります。
(22)情報の流出
NIDECは、事業活動において顧客、他企業の機密情報及び取引先関係者、従業員の個人情報を保有しております。NIDECはこれらの機密情報に関してセキュリティ対策を行っておりますが、同情報が人的及び技術的な過失や違法または不正なアクセス等により漏洩した場合、機密情報を保護できなかったために発生する責任や規制措置の対象となる可能性があり、NIDECは競争上の優位性を喪失し、顧客や市場の信頼が失われ、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。加えてNIDECの営業活動やシステム、ブランドイメージに対する社会的信頼を落とすことになります。
(23)高度な専門性を有した人材の採用・保持
NIDECの事業は、多数の入れ替えることが非常に困難な上層部経営者、エンジニア等の継続的な雇用に依存しております。現在の市場シェアを維持し、将来の成長をサポートするため、NIDECは大多数の高度なスキルを持つ管理者、エンジニア、製造者、営業担当者、マーケティング担当者、サポート担当者及び管理担当者を追加雇用し、育成し、意識統一し、そして維持し続ける必要があります。世界的にこのような人材の獲得競争は極めて激しいため、NIDECがこのような追加の人材を引き付けそして維持することができない可能性があります。
(24)年金制度に係るリスク
NIDECの一部では、一定の要件を満たす従業員のための確定給付年金制度と確定拠出年金制度を併用している会社があります。特に、確定給付年金制度に関しては、年金資産の公正価値や年金資産の収益率が下落した場合、または、退職給付債務の計算の基礎となる想定値が変動した場合、損失が発生する可能性があります。また将来、既存の年金制度を変更し、従来は認識していない勤務費用が発生する可能性があります。そして、利率の変動、NIDECをとりまく環境の変化やその他の要因により、年金資産の積立状況や数理計算上の差異の償却に悪影響を与える可能性があります。さらに、将来の年金費用の計算に使用される想定値も変動する可能性があります。
(25)営業権及び長期性資産の減損
NIDECは、多額の営業権や有形固定資産等の長期性資産を保有しており、今後買収を通じてさらに営業権を保有する可能性があります。NIDECは米国会計基準に従って、これらの資産につき回復できない事態や状況の変化が発生した場合には、減損の調査を行います。この営業権や資産の見積り公正価値が簿価を下回った場合や十分なキャッシュ・フローを生み出さない場合は減損を認識しなければならないため、そのことがNIDECの経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(26)繰延税金資産の不確実性
NIDECは、米国会計基準に従って連結財務諸表を作成する過程で、繰延税金資産が将来の課税所得から回収される可能性を評価しなければならず、回収可能性が見込めない場合は評価性引当金を設定しなければなりません。経済状況や経営成績が悪化した場合、繰延税金資産の全てまたはその一部に関して回収可能性が見込めないと判断し、繰延税金資産を減少させることによりNIDECの利益が減少する可能性があります。
(27)為替リスク
NIDECの海外への売上の大部分は日本円以外の米国ドル、ユーロ、中国元、タイバーツ等の通貨で構成されており、各通貨に対する円の上昇は一般的に、NIDECの売上、営業利益、純利益に悪影響を及ぼします。日本円以外の通貨で運営している子会社の業績を連結財務諸表として統合した際、為替変動が大きく影響する可能性があります。
NIDECは売上と支出の通貨が異なる点において外国為替リスクを抱えております。このリスクを軽減するため、売上と仕入の通貨を合わせることにより為替リスクの軽減に取り組んでおります。例えば、もしある製品の売上が米国ドル建てであれば、この製品の生産に使用する材料や資源の購入を米国ドル建で購入するようにしております。また、NIDECは日本円と比較した場合の外貨の価値変動に対する取引リスクの一部をヘッジするために為替予約を結んでおります。それでもなお、NIDECは為替リスクにさらされています。
(28)金利の変動に係るリスク
NIDECは、固定利率と変動利率の長期債権や有利子負債を保有しており、それらの金利変動やキャッシュ・フロー増減リスクを防ぐため、金利スワップや他の契約を締結することがあります。その場合、ヘッジされていない部分に関して、支払利息や受取利息、金融資産・負債の価値に影響する金利の変動リスクにさらされる可能性があります。
(29)経済状況の変動
NIDECの製品を販売している国または地域の予期せぬ景気変動は、NIDECの製品需要に悪影響を及ぼす可能性があります。特に世界的景気後退や顧客の購買意欲低下はNIDECの製品需要減退を招く要因となります。NIDECの製品はPCや家電、自動車等の最終製品に組み込まれているため消費動向に左右され、経済状況の悪化はNIDECの売上に悪影響を与える可能性があります。例えば2012年度の経営成績は一部の欧州における信用収縮や財政危機、及び消費支出の縮小により世界経済が悪化し、NIDECの経営成績に重大な影響を及ぼしました。今後経済環境の悪化がさらに進んだ場合、NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
(30)債権回収のリスク
NIDECは、顧客やビジネス・パートナーに対して信用リスクの緩和や管理のための対策を実施しておりますが、NIDECもしくはNIDECの顧客の主要市場における経済状況の変化により予想を超える水準で倒産や債務不履行が発生した場合、または顧客が計画通りに支払いできない状況に陥った場合、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(31)有価証券の減損の可能性
NIDECは、日本及び海外の株式を保有しております。これらの株価は変動性があり、経済状況やその他の要因により大幅に下落する可能性があります。その場合、当該有価証券について減損損失を計上する可能性があります。米国会計基準に従って、売却可能有価証券の未実現有価証券評価損益増減額は純資産の部におけるその他の包括利益累計額の項目として表示し、一時的でない株式価値の下落が生じた場合は損失として認識しており、日本国内または海外の株価が下落した場合、株主資本が減少する可能性があります。
(32)資金の流動性に係るリスク
NIDECは自社の資本支出やM&Aに関する資金を金融機関からの借入や金融市場からの直接調達に依存しております。金融市況の変化やその他の要因により金融機関が貸付枠、信用供与枠額や条件を圧縮した場合、またはNIDECがそれまでと同等またはより良い条件で取引可能な代替的資金調達源を見つけることができない場合、そのことがNIDECの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、NIDECの財政状態が悪化した結果、信用格付機関がNIDECの信用格付けを大幅に引下げた場合や経済状況の後退により投資家の意欲が減少した場合、NIDECが必要な資金を必要な時期に、希望する条件で調達できない可能性があり、資金調達がより制限されるとともに、資金繰り費用が大幅に増加する可能性があります。この場合、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(33)偶発的リスク
NIDECが事業を展開する国内外において、自然災害、火災、公衆衛生、戦争、テロ行為やその他の人的災害が発生した場合、政治的、経済的不安定を招き、NIDECやサプライヤー、顧客に損害を与える可能性があります。仮にインフラに甚大な損害を及ぼしたり電力不足をもたらすような大規模な自然災害、あるいは感染病の流行が発生すれば、従業員が勤務できなくなったり、顧客からの受注が低下したり、サプライヤーの生産活動が阻害されることでNIDECの事業に悪影響が及ぶ可能性があります。また、NIDECの事業に必要不可欠なネットワーク及び情報システムは、停電、自然災害、テロ行為、ハードウェアやソフトウェアの不具合、コンピュータウィルスによる攻撃、不正侵入により被害を受ける可能性があります。例えば、2011年3月11日に発生した東日本大震災は情報機器業界や自動車業界を含む主要産業のサプライチェーンを混乱させました。また、2011年10月にはNIDEC主力製品の生産拠点であるタイ国において洪水が発生し、顧客を含むサプライチェーンの生産及び調達状況に影響を与えました。これらの事態の全てを回避することは困難です。これらの事態が発生した場合には、NIDECの生産活動及び販売活動に大きな支障をきたし、製品の納入が遅れ、サプライヤーから材料や部品を入手することが困難となり、製造工場の修復に多大な費用が必要となります。
さらに、NIDECは様々な種類の資産、死傷及び他のリスクについての第三者保険を付しております。これらの保険の種類及び保険額はその有用性、コスト、自家保険による補償範囲を勘案し決定します。NIDECの保険契約は、控除条件、適用範囲及び除外項目の対象となる場合があり、その結果、自家保険と同等の補填金額に留まる可能性もあります。NIDECが加入する保険の適用範囲と補償金額はほぼ業界水準と考えておりますが、保険対象外の損失が増加すればNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
(34)株価下落のリスク
NIDECの発行済普通株式は、東京証券取引所にて売買可能です。大株主によるNIDEC株式の大量の市場売却や、そのような売却の可能性は、NIDECの普通株式の市価を低下させ、NIDECが有価証券を発行または売却して追加資本を捻出する際の妨げとなる可能性があります。さらに、NIDECは将来、追加の資本支出、運転資金、研究開発、または買収用の資金を捻出するため、有価証券を発行または売却する可能性があります。NIDECが現金または普通株式で追加の関係会社株式の購入を行うことも考えられます。NIDECはNIDEC株式に転換可能な有価証券を発行する可能性もあり、これらの事態が発生した場合、NIDECの株式価値が希釈化し、NIDECの株価に悪影響を与える可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてNIDECが判断したものであります。
(1)ハードディスクドライブ業界への依存
NIDECは情報機器業界の中でも特にハードディスクドライブ(以下「HDD」)業界に依存しております。HDDの需要低迷や価格低下はNIDECの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
情報機器業界がソリッド・ステート・ドライブ(以下「SSD」)等のHDD以外の記憶装置を採用することにより、HDDの需要が今後さらに低下する恐れがあります。仮にタブレットコンピュータやスマートフォンといったパーソナルコンピュータ(以下「PC」)の機能を合わせもつSSD搭載製品がHDDを搭載するネットブック等小型PCの需要を代替した場合、HDD需要が減少する可能性があります。また、将来SSDがHDDに対し価格優位性を備えるようになった場合もHDD需要の減少要因となり、NIDECのHDD用スピンドルモータ売上の低下に結びつく可能性があります。
経済低迷時には、HDD用スピンドルモータの顧客(以下「HDDメーカー」)がNIDECを含むサプライヤーからの在庫購入量を低減または在庫購入時期を延期する可能性があります。HDDメーカーが価格引下げ、在庫縮小、体制の再構築、マーケットシェア拡大戦略を推進するとHDD平均価格の下落が加速します。
HDDメーカーの多くはJIT方式の在庫管理プロセスを採用していることからNIDECはHDDメーカーの生産施設またはその近隣に在庫を保有する場合があります。顧客要求に即時対応できる十分な在庫を保持するためには相当の資本や費用が必要になります。そして、需要がNIDECの予想を大幅に下回る場合には、在庫の陳腐化や価格低下のリスクが高まり、NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
HDDメーカーが、その構造改革の一環として、合併または事業の再編成を通じてコストや在庫の削減を図ることによりHDD用スピンドルモータへの価格圧力が強まり、NIDECの収益低下に繋がる可能性があります。また、HDDメーカーがNIDECの競合相手を調達先として指定すればNIDECの販売量が低下する可能性があります。HDDメーカーによるこのような構造改革が生じれば、NIDECの業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)情報機器産業への依存
NIDECの売上の多くは情報機器やその周辺機器に依存しております。NIDECは、製品の多角化を図り、家電、自動車用モータといった新規市場への参入努力を続けておりますが、引き続きこの依存状態は継続するであろうと予測しております。例えば2012年度には、消費者支出が弱まったことやHDDからSSDへのシフトにより、HDD関連市場、光ディスク関連市場が深刻な需要減少に見舞われ、NIDECの売上高は重大な悪影響を受けました。今後も、同市場の減退がNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、情報機器及びその周辺機器の市場は次のような要因によりさらに悪化する恐れがあります。
・急速な技術の変化
・新しいデータストレージ手法の出現
・新製品の頻繁なリリースと短い製品ライフサイクル
・熾烈な価格競争と価格破壊
・在庫水準の変動
・周期的かつ季節的な市場動向が原因となり生じる過剰生産と生産抑制
・生産コストと生産高の変動
・設備投資及び製品開発による多大な支出
(3)主要顧客グループへの集中
NIDECのHDD用スピンドルモータの売上は一部の主要顧客に依存しております。NIDECは、当面の間、主要顧客への売上がNIDECの売上全体の中で高い割合を占め続けるものと考えております。仮に、既存顧客が我々への注文を継続しなくなった場合、新規顧客による受注で補うことができない恐れがあります。すなわち、NIDECの事業、経営成績、財政状態は以下に掲げる場合に悪影響を受ける可能性があります。
・主要顧客が注文を著しく減少、延滞、またはキャンセルした場合
・主要顧客が次世代製品を含めて、競合他社が生産した製品を選択し、または主要顧客自身が開発した内製部品を選択した場合
・特定の主要顧客が操業悪化や財政難に陥った場合
さらに、HDDメーカー同士が合併する等、HDD業界自体の再編成が行われた場合、再編成後のHDDメーカーがNIDECに対する価格交渉力を強めたり、または部材供給を競合他社に委ねたりすることにより、NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4)特定の国または地域への生産・開発拠点の集中
NIDECの生産拠点はタイ、中国等、開発拠点は日本等の一部の国または地域に偏在しております。こうした国・地域の多くはハイテク技術の誘致に積極的であったため、NIDECの主要顧客、サプライチェーンを含む多数のIT企業が集結しております。これらの国または地域で地震や洪水等の大規模な災害や政治不安等が発生すると、例えば、2011年10月にタイ国で発生した大洪水がNIDEC及びその顧客、サプライチェーンに深刻な被害を与えましたように、情報機器業界をはじめとするIT産業全体に甚大な影響を与える可能性があり、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5)販売価格下落のリスク
NIDECが供給するあらゆる製品市場において、NIDECは、今後も製品価格の値下げの圧力を受けると予想しております。特にHDD業界は競争が激しく、競争力がありかつ時機を逃さず市場に投入された製品でさえ、製品寿命よりも早く製品価格が下落する場合があります。一般に、供給量の増加、技術の陳腐化、HDDメーカー間の価格競争の激化はHDD用スピンドルモータの製品価格への下方圧力となります。同時に、新興国における需要拡大による原材料価格の高騰はコスト増加要因になります。また、情報機器業界は低価格製品が普及する傾向にあります。そして、価格の下落がNIDECの予想を大幅に超えて長期に渡る場合、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
このような環境下で、もし原価低減や低価格での新製品開発が実現できなければ、NIDECの収益性維持が困難になる可能性があります。
(6)部品サプライヤーに係るリスク
NIDECは、アルミニウムやレアアース等の原材料及び電子回路、磁石、コネクタ等組立部品を外部から調達しております。こうした原材料、組立部品が価格高騰により十分に調達できない場合、NIDECの生産能力が制限されます。また、サプライヤーの経営状態が悪化した場合にも、NIDECの原材料、組立部品調達に悪影響を及ぼす恐れがあります。さらに原材料や部品の使用条件に関わる各国政府の政策変化または追加的開示義務が発生した場合、これら原材料及び部品の調達に支障が生じる可能性があります。例えば、コンゴ民主共和国及びその周辺国で採取された紛争鉱物の利用に関する開示規制により、NIDECのサプライヤーが限定される可能性があり、また鉱物の出所を十分に確認できない場合には、顧客や投資家から厳しい評価を受ける可能性があります。原材料や部品の調達が制限されれば、代替材料を提供してくれるサプライヤーを確保したり、当該原材料・部品の使用量低減を可能にする設計及び技術の開発を行なうために、多くの資源を投入する必要性に迫られる恐れがあります。こうした調達不足が長期間に渡りかつ代替部品のサプライヤーを見つけることもできない場合、NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
(7)競合
NIDECの主要製品の既存市場では、シェア拡大を目指す競合他社との価格競争が激化しています。一方、NIDECが将来的な事業拡大を試みている車載、家電、商業、産業用部品市場における競合他社はNIDECよりも大規模な資金力、生産技術力、製造能力、販売力、マーケティング力、サービス力とサポート源を有し、また、十分な知名度や長期に渡る顧客との良好な関係を維持している可能性があります。また、電気自動車部品やハイブリッド自動車部品等の新興市場では新規参入企業との激しい競争が予想されます。
NIDECの主要既存市場で競争力を維持し、将来的な事業拡大を試みているその他の市場で競争力を高めるため、NIDECは研究開発分野への多額な投資を継続し、タイムリーな新製品の開発を行うとともに、生産技術力、製造能力、販売力、マーケティング力、サービス力とサポート源を拡大していくことで既存製品をさらに改善していく必要があると考えております。
NIDECは次のような場合に、市場における競合優位性を確立または維持できない可能性があり、その結果NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
・市場がNIDECの予測を超える速度で発展した結果、需要拡大等の市場変化への対応において競合他社がNIDECの能力を上回った場合
・NIDECの製品が環境規制等に適合できなかったり、顧客ニーズを満たすために必要な技術進歩を達成できない場合
・競合他社が技術革新を起こし製造効率の強化または開発努力を行った結果、NIDECの技術や製造効率を上回った場合
・NIDECの競合企業同士の合併によりNIDECの競争力が相対的に弱まった場合
・必要な投資を継続・強化するための財産的、技術的、人的な資源を調達できない場合
(8)新製品開発リスク
NIDECの顧客はカスタマイズ製品を決められた納期内に確実に提供するよう要求します。仮にNIDECが設計から製造、納入に至る新製品の商品化に失敗した場合、顧客ニーズを充足することができません。より高性能な製品をより短い納期で納入することへの顧客からの要求はますます強まっており、そうした顧客要求を満たせなければNIDECは信頼を失い、販売シェアが縮小すると同時に売上高と利益率は低下し、新製品の事業及び市場の拡大を妨げることになります。
さらに、NIDECが多額の投資を経て開発した製品を搭載した顧客製品が予期したとおりに商品化されまたは販売されなかった場合、NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9)製品の品質に関するリスク
NIDECは最先端のモータやその他の電子・光学部品を製造しております。NIDECの製品が組み込まれている最終製品が万一大量に故障した場合、消費者からの苦情、不良品の回収、さらに損害賠償請求訴訟等が起こりえます。事業拡大を試みている車載及び家電・商業・産業用モータ及びその他の部品の市場では、安全で高品質な製品を提供できない場合、人命に係る事故へ繋がる可能性があり、法令上のリコールが適用される他、社会的要請としても特に高い安全性が要求されます。このような場合、たとえ最終製品の故障がNIDEC製品の不具合に起因していなくても、NIDEC製品の品質が疑われる場合があります。その結果、顧客との取引関係の悪化、NIDECのブランドイメージの毀損、行政処分、販売の落込み及び不良品回収等の損失費用により経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、訴訟に伴う負荷が正確な経営判断の阻害要因となる可能性があります。
NIDECは損害賠償請求訴訟等に備え、保険を付しておりますが、これらの保険では対応しきれない賠償請求が将来的に発生する、またはNIDECの希望どおりに保険が適用されない可能性があります。保険の適用範囲を超える賠償請求や、大規模な製品回収が発生した場合、NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10)海外拠点での事業活動に係るリスク
NIDECは中国、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、メキシコ、インドネシア等で製造、販売、開発を行なっております。また、インド、ブラジル等の新興国市場へも新規参入を行い、事業の拡大を図っております。これらの国々は、経済的、社会的、またはその他のインフラを整備している段階にあるため、様々な不確定要素の影響を受けやすくなっております。これらの国々の政治、社会、経済状況下では、NIDECの製品をコスト上効率よく製造するための環境を維持できるかどうか定かではありません。さらに、これらの地域の政治当局は、NIDECがその地で事業活動を展開することに対し、経済的、法的またはその他の面で困難な状況を生み出したり、実践的でないものにしたり、不可能にしたりする規制や制限を課す可能性があります。
そして、海外における事業活動は、次のような外国取引に関する様々なリスクをNIDECにもたらすため、それらがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
・海外市場における関係産業の景気悪化または沈滞
・国際通貨の変動
・ゼネストや労働条件の混乱
・中国、タイ等における労働力不足と賃金水準の上昇
・政治不安
・貿易制限や関税の変更
・グローバルな経営活動を行える人材の確保の困難
・一般的に長期の債権回収期間
・法律や規制の予想しえない制定または改正
・特定の国における比較的弱い知的財産の保護
・不利に取り扱われる恐れのある税制
・文化、商習慣の相違
・関税、輸送費用、その他の価格競争力を低下させる負担費用
・投資効果の実現までに要する長い期間と多額の資金
(11)構造改革に係るリスク
2012年度には、NIDECはPC関連、デジタルカメラ関連、液晶パネル製造関連等の主力製品の急激かつ大幅な需要減少といった厳しい経済環境に直面し、これら主要製品の売上減少や生産設備の稼働率低下に見舞われました。これに応じて、NIDECは収益性を改善するため構造改革を実施し、構造改革費用を計上致しました。
将来においても収益性改善のために構造改革を実施することがあるかもしれません。例えば、NIDEC製品に対する需要がさらに低下したり大量の注文キャンセルが起きれば、たな卸資産の評価減が発生します。もし稼働率が生産能力を下回る状況が続き、十分なキャッシュ・フローを生み出せない状況が継続した場合には、関連資産につき更なる減損損失を認識する可能性があります。さらに、万一収益性の改善効果が想定通りに上がらず、これら営業権や資産の見積り公正価値が簿価を下回った場合、NIDECは更なる減損損失を計上する可能性があります。このような構造改革費用は主に売上原価、販売費及び一般管理費、その他販売費に計上され、営業利益・当期純利益や財政状態に影響を及ぼします。
(12)四半期の業績比較におけるリスク
NIDECは四半期ごとの売上や経営成績の変動が大きい場合があり、今後もこの変動が続き得ると考えております。そのため、四半期ごとの経営成績を比較することはそれほど有用性が高くないかもしれません。また、このような比較により判断される将来の傾向は、信頼のよりどころとならないかもしれません。NIDECの経営成績は、次にあげる主要な要因によって、四半期ごとに変動する場合があります。
・情報機器、家電、商業、産業用を含めた、NIDECの製品を購入または使用する業界での周期的及び季節的な製品需要の変動
・NIDECの海外子会社の経営成績、外貨建て資産、負債に関する為替レートの変動による影響
・NIDECの製造能力とその限界
・短期的なNIDECの製品または顧客、競合の変化
・短期的な主要な注文のキャンセルまたは納期の延期
・新製品や戦略的製品に対する顧客の注文遅延
・とりわけ限られた調達先からの部品、原材料の短期間での調達可能性及び価格の変動
(13)先行投資に係るリスク
NIDECでは、通常、顧客の先行注文、コミットメント、数量予想と自社の需要調査を総合的に評価したうえで生産、在庫計画を策定しますが、競争の熾烈化や季節的需要サイクルの変化その他要因により顧客製品の需要が減少すると、顧客が要求する納入数量が大幅に変動し予測が極めて困難になります。十分な生産量と生産性を確保する必要から受注に先駆けて生産設備を拡張することがあります。今後NIDECは新興国を中心に設備投資を拡大する方針であり、生産能力が需要を著しく上回った場合、稼動損による償却負担の増加または過剰在庫によるたな卸資産の評価減がNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。他方、もしNIDECが需要を過小に見積もり必要な設備投資を行わなかった場合、顧客の需要を満たせずにシェアを失う可能性があります。
また、部品や材料を調達する際の長いリードタイムを考慮してサプライヤーへ材料を先行注文することがあるため、実際の受注数量が予想に満たない場合は過剰在庫が生じ予期せぬたな卸資産の評価減を招く可能性があります。
さらに、営業費用を需要の急減に即応して削減する余地は限られているため、需要減により売上高が想定を下回ると経営成績全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
(14)M&Aに係るリスク
NIDECはNIDECの事業の成長に必要な技術、製品、販売網、顧客基盤を所有する他社の買収や他社への資本提携を通じて大幅な成長を達成してまいりました。同時に必要に応じて既存の関係会社や出資会社への出資比率を高め事業効率の向上を図っております。NIDECの買収や出資活動が成就しなかった場合、NIDECの製品ラインナップ、販売網、顧客基盤の拡大計画が停滞したり、成長率が低下したりする可能性があります。買収や資本提携を成功させるためには、買収した事業の効率的な統合が重要です。しかし、買収した事業がNIDECの予想どおりに収益を生むという確証はありません。NIDECは今後の買収や資本提携を成功させるために必要な条件を次のように考えております。
・NIDECとのシナジー効果による買収した事業の製品の製造及び販売の拡大
・買収した事業の製品に対する顧客の継続的な需要
・買収した事業の経営、製品、社員に関するNIDECの統合能力
・買収した事業におけるキーパーソンの保持
・買収した事業における財務面や経営面でのNIDECの管理能力
・買収した事業からの報告体制及び買収した事業の法令遵守体制の整備
・買収対象企業の正確な事前調査(財務及び法務デューデリジェンス)
・事前調査の過程でNIDECに悪影響を与える買収対象企業の負債を特定する能力
こうした買収、出資活動はNIDECの事業に重要な影響を与え得る不確定要素です。例えば、出資先企業の業績が悪化した場合、投資価値が毀損する可能性があります。出資先企業が拠点を置く国の政府による経済政策、法律、規制、または会計基準の変更が出資先企業に適用されることでNIDECの業績へ多大な影響が及ぶ可能性があります。NIDECが出資先企業の非支配持分株主である場合、通常その会社の資産や経営に対する決定権がありません。従って、重要な意思決定には他の株主や出資者の同意を得るか、または出資比率を上げることにより経営権を獲得することが必要になります。
買収や出資の効果が得られないか、または適切な買収や出資の対象会社を見つけることができない場合、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(15)業務拡大による管理運営リスク
NIDECは、グループ会社の統合を含む事業成長に即応したマネジメント体制拡充の成否が将来の成功を左右する重要な要素の一つであると考えます。すなわち、NIDECは事業戦略として自律成長やM&Aによる事業規模の拡大を掲げておりますが、その実現にあたっては管理、運営、IT、財務資源、法令遵守等のマネジメント体制拡充に関する負担が増加すると予想されます。
これらの負担が想定以上に発生した場合、マネジメント体制の拡充が十分に行えず、NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(16)NIDEC社長である永守重信(氏)への依存
NIDECの継続的な成功は主にNIDECの創業者であり社長兼CEOの永守重信氏の能力と手腕に依存しております。永守氏は積極的にNIDECの経営に携わり、特に企業買収活動をはじめとした戦略的意思決定に関与しております。永守氏への依存を軽減するためデザインされた経営構造の確立過程で、永守氏の突然の離脱があった場合、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(17)企業目標達成に係るリスク
NIDECは安定的雇用環境の提供を軸とする継続的社会貢献を基本的経営理念の一つとして掲げ、その達成のために様々な施策を実施しております。そうした取り組みがNIDECのブランドイメージの向上に寄与していると認識しております。
NIDECの事業戦略は、自律成長及びM&Aによる事業規模の拡大を主軸に展開しておりますが、常にNIDECの経営陣が計画している収益性やリターンを得られるとは限りません。さらに、NIDECをとりまく現在または将来の事業環境の変化やその他の不確定要素が目標達成を困難にするかもしれません。
NIDECは現行の経営理念に添った成長を引き続き追及しますが、その過程で生じ得る業績低迷等の諸制約がNIDECの掲げる継続的社会貢献の阻害要因となり、結果的にNIDECのブランドイメージが損なわれる可能性があります。
(18)管理会計において米国会計基準による財務情報を利用していないことに伴うリスク
NIDECは、連結財務諸表で報告しているオペレーティング・セグメント(「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の連結財務諸表注記「25.セグメント情報」参照)から毎月報告される財務情報に基づいて、NIDECの業績を予測し、事業活動の意思決定を行っております。この月次のセグメント情報は各セグメントの所在国の会計原則に基づいて作成されております。例えば日本電産は日本基準を適用しており、シンガポール日本電産ではシンガポール会計基準が適用されております。つまり、NIDECのセグメントデータは米国の会計基準またはその他の単一の会計基準に基づいて作成されておりません。
加えて、財務会計で行う決算調整やその他の調整項目は月次のセグメント情報に含まれておりません。これら月次のセグメントデータの性質は、財務会計における米国会計基準調整後のセグメントデータと比べて、個別のセグメントや全体的な業績を相対的に評価することを困難にする可能性があります。
(19)法令・規制に係るリスク
NIDECの事業は、事業運営を行っている国内外における法令、規制、政策、行動規範、会計基準等の変更や解釈の差異に起因するコンプライアンスリスクを負っており、製品ラインナップの拡充またはビジネスの地理的拡大により、NIDECは各種産業、市場及び行政地区特有のリスクにさらされることになります。
NIDECは日本、アジア、北米、欧州、その他地域の環境法令を遵守しております。これら環境法令は大気汚染、水質汚濁、危険物質の対応、水質管理、リサイクル、温暖化防止、土壌及び地下水の汚染等に関連する規則を含みます。NIDECの事業の多くは環境法令に基づく営業許可を必要とし、それにより製造活動は制約され、法令遵守のための費用が発生します。こうした環境法令は当局により修正、改定、廃止される可能性があります。これらの法令が厳格化することにより環境法令の継続的遵守に必要な投資やその他の支出が増加し、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
また、NIDECの事業は国内外において独占禁止法、贈賄防止条約、反テロ法、知的財産権、消費者保護法、税法、輸出規制、関税法、海外貿易規制及び為替規制等の取引規制や市場規制を遵守する必要があります。NIDECは精密小型モータ市場における世界シェアが高いため、特に同市場の売上や製造に影響する規制、行政措置がNIDECの事業、経営成績、財政状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。NIDECの一部は普通株式を東京証券取引所に、また米国預託証券をニューヨーク証券取引所に上場しているため、金融商品取引法、米国証券取引法、その他法令及び会計基準等の適用を受けます。さらに、我々は新規市場開拓を行い続けており、法令遵守体制をより強化する必要があります。これら規制を遵守できない場合、その結果生じる罰金、社会的制裁、信用毀損、営業停止、さらには営業許可の剥奪がNIDECの事業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
こうした法律、規制、政策、自主行動規範、会計基準等の変更及びその影響を予測することは困難であり、新たな遵守体制整備のために追加的な財務、管理、人的資源が必要になる可能性があります。
(20)内部統制に係るリスク
上場企業であるNIDECにとって、事業運営及び資産管理に必要で効果的な内部統制システム、コンプライアンス機能、会計システムの整備は極めて重要であると認識しております。さらに、米国証券取引委員会登録企業が対象となる2002年米国サーベンス・オクスリー法においてNIDECは財務報告に関する内部統制システムを確立することを求められており、経営者は内部統制システムの効果を評価し開示する必要があります。また、会計監査人はNIDECの財務報告における内部統制システムの実効性に関する監査を行わなければなりません。日本国内においても同様の財務報告に関する内部統制義務が発生しております。NIDECの内部統制システムは、NIDEC全体の枠組みにおいて問題を特定し、その再発を防止する機能を有している必要があります。
また内部統制システムの設計、実施には多くの管理、人材、その他資源が必要になります。内部統制上の重大な欠陥、弱点が認められた場合、改善に要する新たな資源投入により追加的コストが発生する可能性があります。
さらに、財務報告に関わる内部統制に欠陥がある場合、NIDECは金融商品取引法や米国1934年証券取引法が要求する適時開示義務を充足できない可能性があり、その結果、市場におけるNIDECの評価が毀損する恐れがあります。欠陥の重大性や原因等の程度に応じて様々な法的責任が課せられ、米国証券取引法の違反に基づく米国証券取引委員会及び、金融商品取引法等の各種法律の違反に基づく国内金融庁による強制処分等の制裁対象となる等、米国や日本、その他の市場における資金調達力が制限される可能性があります。
(21)知的財産権に係る訴訟リスク
NIDECは、自社技術及びその他の知的財産を、特許権、商標権、著作権及びその他の知的財産権、さらには機密管理
や個別契約により保護しております。NIDECはこれらの知的財産権に関して次のようなリスクを負っております。
・NIDECは第三者からの知的財産権侵害の主張に対して反論をしていくためコストが必要になる場合があります。また、当該主張の結果、予め認識していない第三者の知的財産権を利用してしまったことによりNIDECに賠償責任が発生する場合や、差止命令によりNIDECの事業の継続が妨げられる場合があります。その結果、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
・NIDECの知的財産権の保護対策は十分でない可能性があります。
・NIDECより大規模な資源を有する競合他社を含むその他の企業が、独自に技術を開発するか、または優越する技術を獲得した場合、NIDECはこれら企業の知的財産を使用するためのロイヤリティを支払わなければならなくなる可能性があります。
・現行または将来の特許出願に関して、特許権を取得できなかったり、NIDEC自身が保有するまたは使用を許諾されている特許が無効になったり回避されたりすることで技術戦略上困難な状況に陥る可能性があります。
・特定の特許権の下で認められている権利では、NIDECに競争上の優位をもたらさない可能性や、適切に保護されない可能性、技術力の維持に繋がらない可能性があります。
・第三者による特許、重要な営業秘密、その他の知的財産権に関する侵害や無断使用に対して提起する訴訟に伴い多大なコストが必要になる可能性があります。
・NIDECの製品を製造及び販売している諸外国の法律が、NIDECの製品や知的財産権を、日本や米国の法律と同じ範囲で保護していない場合や、法律が存在したとしても効果的に施行されていない可能性があります。
(22)情報の流出
NIDECは、事業活動において顧客、他企業の機密情報及び取引先関係者、従業員の個人情報を保有しております。NIDECはこれらの機密情報に関してセキュリティ対策を行っておりますが、同情報が人的及び技術的な過失や違法または不正なアクセス等により漏洩した場合、機密情報を保護できなかったために発生する責任や規制措置の対象となる可能性があり、NIDECは競争上の優位性を喪失し、顧客や市場の信頼が失われ、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。加えてNIDECの営業活動やシステム、ブランドイメージに対する社会的信頼を落とすことになります。
(23)高度な専門性を有した人材の採用・保持
NIDECの事業は、多数の入れ替えることが非常に困難な上層部経営者、エンジニア等の継続的な雇用に依存しております。現在の市場シェアを維持し、将来の成長をサポートするため、NIDECは大多数の高度なスキルを持つ管理者、エンジニア、製造者、営業担当者、マーケティング担当者、サポート担当者及び管理担当者を追加雇用し、育成し、意識統一し、そして維持し続ける必要があります。世界的にこのような人材の獲得競争は極めて激しいため、NIDECがこのような追加の人材を引き付けそして維持することができない可能性があります。
(24)年金制度に係るリスク
NIDECの一部では、一定の要件を満たす従業員のための確定給付年金制度と確定拠出年金制度を併用している会社があります。特に、確定給付年金制度に関しては、年金資産の公正価値や年金資産の収益率が下落した場合、または、退職給付債務の計算の基礎となる想定値が変動した場合、損失が発生する可能性があります。また将来、既存の年金制度を変更し、従来は認識していない勤務費用が発生する可能性があります。そして、利率の変動、NIDECをとりまく環境の変化やその他の要因により、年金資産の積立状況や数理計算上の差異の償却に悪影響を与える可能性があります。さらに、将来の年金費用の計算に使用される想定値も変動する可能性があります。
(25)営業権及び長期性資産の減損
NIDECは、多額の営業権や有形固定資産等の長期性資産を保有しており、今後買収を通じてさらに営業権を保有する可能性があります。NIDECは米国会計基準に従って、これらの資産につき回復できない事態や状況の変化が発生した場合には、減損の調査を行います。この営業権や資産の見積り公正価値が簿価を下回った場合や十分なキャッシュ・フローを生み出さない場合は減損を認識しなければならないため、そのことがNIDECの経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(26)繰延税金資産の不確実性
NIDECは、米国会計基準に従って連結財務諸表を作成する過程で、繰延税金資産が将来の課税所得から回収される可能性を評価しなければならず、回収可能性が見込めない場合は評価性引当金を設定しなければなりません。経済状況や経営成績が悪化した場合、繰延税金資産の全てまたはその一部に関して回収可能性が見込めないと判断し、繰延税金資産を減少させることによりNIDECの利益が減少する可能性があります。
(27)為替リスク
NIDECの海外への売上の大部分は日本円以外の米国ドル、ユーロ、中国元、タイバーツ等の通貨で構成されており、各通貨に対する円の上昇は一般的に、NIDECの売上、営業利益、純利益に悪影響を及ぼします。日本円以外の通貨で運営している子会社の業績を連結財務諸表として統合した際、為替変動が大きく影響する可能性があります。
NIDECは売上と支出の通貨が異なる点において外国為替リスクを抱えております。このリスクを軽減するため、売上と仕入の通貨を合わせることにより為替リスクの軽減に取り組んでおります。例えば、もしある製品の売上が米国ドル建てであれば、この製品の生産に使用する材料や資源の購入を米国ドル建で購入するようにしております。また、NIDECは日本円と比較した場合の外貨の価値変動に対する取引リスクの一部をヘッジするために為替予約を結んでおります。それでもなお、NIDECは為替リスクにさらされています。
(28)金利の変動に係るリスク
NIDECは、固定利率と変動利率の長期債権や有利子負債を保有しており、それらの金利変動やキャッシュ・フロー増減リスクを防ぐため、金利スワップや他の契約を締結することがあります。その場合、ヘッジされていない部分に関して、支払利息や受取利息、金融資産・負債の価値に影響する金利の変動リスクにさらされる可能性があります。
(29)経済状況の変動
NIDECの製品を販売している国または地域の予期せぬ景気変動は、NIDECの製品需要に悪影響を及ぼす可能性があります。特に世界的景気後退や顧客の購買意欲低下はNIDECの製品需要減退を招く要因となります。NIDECの製品はPCや家電、自動車等の最終製品に組み込まれているため消費動向に左右され、経済状況の悪化はNIDECの売上に悪影響を与える可能性があります。例えば2012年度の経営成績は一部の欧州における信用収縮や財政危機、及び消費支出の縮小により世界経済が悪化し、NIDECの経営成績に重大な影響を及ぼしました。今後経済環境の悪化がさらに進んだ場合、NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
(30)債権回収のリスク
NIDECは、顧客やビジネス・パートナーに対して信用リスクの緩和や管理のための対策を実施しておりますが、NIDECもしくはNIDECの顧客の主要市場における経済状況の変化により予想を超える水準で倒産や債務不履行が発生した場合、または顧客が計画通りに支払いできない状況に陥った場合、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(31)有価証券の減損の可能性
NIDECは、日本及び海外の株式を保有しております。これらの株価は変動性があり、経済状況やその他の要因により大幅に下落する可能性があります。その場合、当該有価証券について減損損失を計上する可能性があります。米国会計基準に従って、売却可能有価証券の未実現有価証券評価損益増減額は純資産の部におけるその他の包括利益累計額の項目として表示し、一時的でない株式価値の下落が生じた場合は損失として認識しており、日本国内または海外の株価が下落した場合、株主資本が減少する可能性があります。
(32)資金の流動性に係るリスク
NIDECは自社の資本支出やM&Aに関する資金を金融機関からの借入や金融市場からの直接調達に依存しております。金融市況の変化やその他の要因により金融機関が貸付枠、信用供与枠額や条件を圧縮した場合、またはNIDECがそれまでと同等またはより良い条件で取引可能な代替的資金調達源を見つけることができない場合、そのことがNIDECの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、NIDECの財政状態が悪化した結果、信用格付機関がNIDECの信用格付けを大幅に引下げた場合や経済状況の後退により投資家の意欲が減少した場合、NIDECが必要な資金を必要な時期に、希望する条件で調達できない可能性があり、資金調達がより制限されるとともに、資金繰り費用が大幅に増加する可能性があります。この場合、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(33)偶発的リスク
NIDECが事業を展開する国内外において、自然災害、火災、公衆衛生、戦争、テロ行為やその他の人的災害が発生した場合、政治的、経済的不安定を招き、NIDECやサプライヤー、顧客に損害を与える可能性があります。仮にインフラに甚大な損害を及ぼしたり電力不足をもたらすような大規模な自然災害、あるいは感染病の流行が発生すれば、従業員が勤務できなくなったり、顧客からの受注が低下したり、サプライヤーの生産活動が阻害されることでNIDECの事業に悪影響が及ぶ可能性があります。また、NIDECの事業に必要不可欠なネットワーク及び情報システムは、停電、自然災害、テロ行為、ハードウェアやソフトウェアの不具合、コンピュータウィルスによる攻撃、不正侵入により被害を受ける可能性があります。例えば、2011年3月11日に発生した東日本大震災は情報機器業界や自動車業界を含む主要産業のサプライチェーンを混乱させました。また、2011年10月にはNIDEC主力製品の生産拠点であるタイ国において洪水が発生し、顧客を含むサプライチェーンの生産及び調達状況に影響を与えました。これらの事態の全てを回避することは困難です。これらの事態が発生した場合には、NIDECの生産活動及び販売活動に大きな支障をきたし、製品の納入が遅れ、サプライヤーから材料や部品を入手することが困難となり、製造工場の修復に多大な費用が必要となります。
さらに、NIDECは様々な種類の資産、死傷及び他のリスクについての第三者保険を付しております。これらの保険の種類及び保険額はその有用性、コスト、自家保険による補償範囲を勘案し決定します。NIDECの保険契約は、控除条件、適用範囲及び除外項目の対象となる場合があり、その結果、自家保険と同等の補填金額に留まる可能性もあります。NIDECが加入する保険の適用範囲と補償金額はほぼ業界水準と考えておりますが、保険対象外の損失が増加すればNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
(34)株価下落のリスク
NIDECの発行済普通株式は、東京証券取引所にて売買可能です。大株主によるNIDEC株式の大量の市場売却や、そのような売却の可能性は、NIDECの普通株式の市価を低下させ、NIDECが有価証券を発行または売却して追加資本を捻出する際の妨げとなる可能性があります。さらに、NIDECは将来、追加の資本支出、運転資金、研究開発、または買収用の資金を捻出するため、有価証券を発行または売却する可能性があります。NIDECが現金または普通株式で追加の関係会社株式の購入を行うことも考えられます。NIDECはNIDEC株式に転換可能な有価証券を発行する可能性もあり、これらの事態が発生した場合、NIDECの株式価値が希釈化し、NIDECの株価に悪影響を与える可能性があります。
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このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E01975] S100262D)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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