有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1002ABC
日産自動車株式会社 研究開発活動 (2014年3月期)
事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループは、将来にわたって持続性のある車社会の実現に向けて、環境や安全など様々な分野での研究開発活動を積極的に行っている。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は5,006億円であった。
当社グループの研究開発体制及び活動成果は次のとおりである。
(1) 研究開発体制
当社グループの日本における研究開発は、日産テクニカルセンター(神奈川県厚木市)を中心に車両開発を日産車体(株)、(株)日産テクノ、日産ライトトラック(株)、ユニット開発を愛知機械工業(株)、ジヤトコ(株)などの関係各社が担当し、当社と密接な連携のもとで推進している。米欧地域においては、米国の北米日産会社、メキシコのメキシコ日産自動車会社、英国、ベルギーに拠点を持つ英国日産自動車製造会社、スペインの日産モトール・イベリカ会社において、一部車種のデザイン及び設計開発業務を行っている。2013年には米国 シリコンバレーに日産総合研究所シリコンバレーオフィスを開設し、自動運転車両の研究、最先端のICT(Information and Communication Technology)技術開発を行っている。
アジア地域では、中国の日産(中国)投資有限公司、東風汽車集団股份有限公司との合弁会社である東風汽車有限公司、台湾の裕隆汽車製造股份有限公司との合弁会社である裕隆日産汽車股份有限公司、タイのアジア・パシフィック日産自動車会社、インドのルノー日産テクノロジー&ビジネスセンターインディア社及び日産アショックレイランドテクノロジーズ(株)において一部車種のデザイン及び設計開発業務を行っている。2014年3月に発売したダットサン「GO」の開発は、インド市場向けに現地で行なった。また、アセアン地域の研究開発拠点であるアジア・パシフィック日産自動車会社では、2013年より新たな設備を追加し、現地の責任範囲を拡大することにより、同地域のお客さまニーズへの対応力を向上させた。
また、南米地域のブラジル日産自動車会社、南アフリカの日産サウスアフリカ会社においても現地生産車の一部開発業務を行っている。
ルノーと当社は、経営資源の効率化を目指し、両社間で行う次世代技術の研究領域における役割分担を再構築した。このプロジェクトにより、共通プラットフォームの採用、共通パワートレイン戦略の策定・実行、そして世界中の実験施設の適正化を加速させている。また、ダイムラーとの戦略的協力関係においては、パワートレインやプラットフォームの共用に取り組んでいる。さらに、ダイムラー、フォードと燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)技術の市販化を加速させるため共通のFCEVシステムの共同開発を行っている。
(2) 新商品の開発状況
国内では新型軽自動車「デイズ」「デイズルークス」を発売し、また「スカイライン」「エクストレイル」「ティアナ」のフルモデルチェンジを行った。海外では、北米において「インフィニティQ50」「ローグ」、中国において「エクストレイル」「ティアナ」、欧州において「キャシュカイ」等のフルモデルチェンジを行った。また、新興国向けに復活させたダットサンブランドの新型車ダットサン「GO」をインドで発売した。(3) 新技術の開発状況
環境面においては、新中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム2016」を発表し、「低炭素化」「再生可能エネルギーへの転換」「資源の多様化」という3つの重点領域を定めた。同時に、これらを推進するための重点活動として「ゼロ・エミッション車の普及」「低燃費車の拡大」「カーボンフットプリントの最小化」「新たに採掘する天然資源の最小化」「環境マネジメントの推進」という5つの活動テーマを掲げ、技術開発を行っている。「ゼロ・エミッション車の普及」では、2010年12月より日本と米国で販売を開始した100%電気自動車「日産リーフ」が、4大陸35か国へ販売拡大し、2014年3月には累計販売台数11万台、グローバルEVシェア48%を達成した。加えて、2014年度には100%電気商用車「e-NV200」を2車種目のEVとして欧州及び日本市場で販売開始する。
また、2013年7月には電気自動車から住宅への電力供給システム「LEAF to Home」を応用し、複数の「日産リーフ」を同時に接続できる“Vehicle to Building”の実証実験を日産先進技術開発センター(Nissan Advanced Technology Center:NATC/神奈川県厚木市)にて開始した。“Vehicle to Building”は最大6台の「日産リーフ」を同時に接続し、オフィスビルやマンションなどの建物に電力を供給するシステムで、電力需要がピークになる時間帯に給電することで、ピークカットによる電力コストの削減を可能にする。
一方、「低燃費車の拡大」では、日本、中国、欧州、米国で販売する日産車の燃費改善を進めている。「リチウムイオンバッテリー」「インテリジェントデュアルクラッチコントロールハイブリッドシステム」「エクストロニックCVT(無段変速機)」の3つをコア技術と位置づけ、車室内空間、用途、価格を考慮しながらクルマに最適な低燃費技術を採用し市場に投入する。2013年度は日本市場に投入した「デイズ」(*1)、米国市場に投入した「インフィニティQX60」(*2)、欧州市場に投入した「ノート」(*3)「キャシュカイ」(*4)がそれぞれクラストップとなる燃費を実現した。またインテリジェントデュアルクラッチコントロールハイブリッドシステムについては、従来型に比べ動力性能とエネルギー効率をより向上した後輪駆動(FR)車用システムを、「インフィニティQ50」「スカイライン」に搭載した。さらに、CVTとの組み合わせでコンパクト化を実現した前輪駆動(FF)車用システムを、米国市場で「パスファインダー」及び「インフィニティQX60」に初めて搭載した。
燃費向上のための車両軽量化も推進している。2013年度は、世界初開発の1.2GPa(ギガパスカル)級高成形性超ハイテン材(冷間プレス用超高張力鋼板)を「インフィニティQ50」「スカイライン」に採用し、同モデルは他の取り組みも含め約40kgの軽量化を実現した。
安全面においては、日産車がかかわる交通事故による死亡・重傷者数を2015年までに1995年比で半減させる目標を目指してきたが、日本、米国、英国ではすでに達成しており、現在は、死亡・重傷者数を2020年までにさらに半減させ、究極の目標として、実質ゼロにするという高い目標に向けて取り組んでいる。目標の達成に向けて、事故そのものの削減が重要と考え、「クルマが人を守る」という考え方“セーフティ・シールド”に基づき、人を危険に近づけないようクルマがサポートする技術開発を進めている。「インフィニティQ50」及び「スカイライン」では世界初となる「PFCW(前方衝突予測警報)」を搭載する等、車両の周囲360度の危険からドライバーを守ることを目指した「全方位運転支援システム」を実現した。また、前方車両との衝突回避を支援する「エマージェンシーブレーキ」の採用拡大を進めており、米国市場では「インフィニティQ50」、日本市場では「スカイライン」「セレナ」「ノート」「エクストレイル」、欧州市場では「キャシュカイ」に搭載した。
さらに、交通事故低減に大きな効果が期待できる自動運転技術を搭載した「Autonomous Drive」の試作車を8月に米国で公開し、2020年までに自動運転技術の市販化を目指すことを発表した。「Autonomous Drive」は、車両周囲のカメラ、レーザースキャナー、レーダー等により、周囲の車両、歩行者、信号や交通標識等を認識し、車載コンピューターで判断、モーターやステアリング、ブレーキなどを制御し自動で走行できる機能を備えている。
9月には、自動運転システムの実現に向け、公道実証実験を行うためのナンバープレートを日本で初めて取得した。この車両を用いて、11月には経済産業省が発案・企画した安部首相参加の自動運転技術公道実証に参加し、神奈川県のさがみ縦貫道路で実証実験を開始した。
当社は、環境・安全技術だけでなく、自動車本来の走る楽しさや、快適性・利便性を提供する技術開発にも力を入れている。例えば、ステアリングホイールの動きを電気信号に変換してタイヤを操舵する世界初のシステム「ダイレクトアダプティブステアリング」を「インフィニティQ50」「スカイライン」に搭載したほか、車両後部のカメラで撮影した自車後方の映像を表示する「スマート・ルームミラー」を2014年3月にジュネーブモーターショーで初公開した。
また、車両構造、コンポーネント、部品の大規模共用による量産効果を飛躍的に向上させる技術として2012年に発表した新世代車両設計技術「CMF(コモン・モジュール・ファミリー)」を、米国市場の「ローグ」、日本市場の「エクストレイル」、欧州市場の「キャシュカイ」に初採用した。
当社グループは、日産パワー88達成を目指し、今後も競争力のある商品、将来に向けた先端技術等のための研究開発活動に積極的に取り組んでいく。
*1:「デイズ」29.2km/L(JC08モード)、全高1550mm以上の軽ハイトワゴン
*2:「インフィニティQX60」26mpg(シティ・ハイウェイ走行のコンビモード)、7人乗りthe Ward's 2013 高級大型SUVセグメント
*3:「ノート」4.3L/100km(マニュアルトランスミッション採用モデル、欧州燃費基準)、Bセグメントガソリン車
*4:「キャシュカイ」5.6L/100km(ガソリン車、欧州燃費基準)、3.8L/100km(ディーゼルガソリン車、同基準)、ガソリン車・ディーゼルガソリン車のクロスオーバーSUVセグメント
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