有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S10027T3
株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング 事業の内容 (2014年3月期)
当社は、「医療の質的変化をもたらすティッシュ・エンジニアリングをベースに、組織再生による根本治療を目指し、21世紀の医療そのものを変えてゆく事業を展開する」ことを会社設立の趣旨とするバイオベンチャー企業であり、再生医療製品及び関連製品の開発、製造、販売を主要な事業目的としています。
当社は、提出日現在において連結子会社及び非連結子会社を保有していません。
(1) 当社事業の根幹となる技術
当社では、社名の由来であるティッシュ・エンジニアリング(組織工学)技術を活用しています。近年、細胞培養や生体材料工学等における技術進歩により、生物から採取した細胞を用いて、体外での細胞培養、組織・臓器の再形成、新たな機能の付加あるいは機能の修復等が試みられるようになりましたが、このような組織の再生を実現するための技術がティッシュ・エンジニアリング技術と呼ばれるものであり、当社事業の根幹となる技術であります。
当社では、当該技術を活用することにより、ヒトの細胞を培養して組織や臓器を作り出し、これを医療用途及び研究用途に提供することを事業目的としています。
ティッシュ・エンジニアリングを実現するためには、生きた細胞、人工的に作られた材料・素材、細胞や生体に影響をもたらす種々の生理活性物質が必要であり、医学・工学・理学・薬学等の異分野間研究交流も必要とされます。さらに、我が国では、ティッシュ・エンジニアリング技術により作り出された組織や臓器を、製品として医療目的で製造・販売するためには、薬事法のもとで厚生労働省からの許認可が必要であります。この許認可には、製造ならびに品質管理に関する基準が含まれており、当社が保有している製造施設・設備、創業以来の研究開発活動で培ってきた製造方法、品質管理に関するノウハウ、そして販売に関する組織体制やノウハウも、当社事業の根幹となる技術であるといえます。
また、細胞培養に用いる細胞は、その由来に応じて、自家細胞(本人)、同種細胞(本人以外)、異種細胞(ヒト以外の動物)に分類されますが(注3)、当社では患者本人から採取したヒト組織・細胞を用いることをひとつの特徴としています。自家培養組織の移植は、一般的に免疫拒絶反応が少なく、生体への生着能率が高いといわれており、当社が培った細胞培養技術も当社事業の根幹となる技術と位置付けられます。
(注3) 移植の種類により、自家移植、同種移植、異種移植に分類されます。また、同種移植と異種移植は、総称して他家移植とも呼ばれます。
自家移植: 患者から採取した組織・細胞を本人に移植すること。
同種移植: 本人以外の組織・臓器を移植すること。
異種移植: ヒト以外の動物の組織・臓器を移植すること。
(2) 当社の事業領域と事業化の段階
当社は、薬事法の適用を受ける再生医療製品事業と、薬事法の適用を受けない研究開発支援事業を展開しており、開発する製品毎に事業化の段階が異なっております。
なお、上記の2事業は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。
[A] 再生医療製品事業
再生医療とは、従来の薬物治療とは異なり、われわれの身体に備わっている組織の再生能力を引き出すことであり、失われた組織や臓器の機能を、細胞を使って回復させることに主眼をおいた医療であります。当社は、自家培養技術を利用した再生医療製品を開発し、当該開発製品を医療機関向けに医療目的で製造販売することを主な事業目的としています。
ヒト細胞・組織を利用したすべての再生医療製品は製造・販売を行うため、薬事法に則り、厚生労働省から承認を取得する必要があります。各種書類の審査は、厚生労働省所管の独立行政法人医薬品医療機器総合機構が担当します。なお、厚生労働省は、再生医療製品の承認プロセスの一つである確認申請制度を廃止し、その代替として2011年7月1日から薬事戦略相談制度を導入しました。
現在、当社は、自家培養表皮ジェイス(重症熱傷用)と自家培養軟骨ジャックを上市済であり、自家培養角膜上皮、自家培養表皮ジェイス(表皮水疱症用)、自家培養表皮ジェイス(巨大色素性母斑用)については、事業化を進めています。
再生医療製品の薬事審査プロセスを図示すると、以下のとおりになります。
再生医療製品の薬事審査プロセス
(補足説明) (旧)薬事審査プロセスでの確認申請制度は、2011年6月に廃止され、その代替として同年7月より(新)薬事審査プロセスとして、薬事戦略相談制度が導入されました。
治験、製造販売承認申請の各プロセス直前の準備段階では、独立行政法人医薬品医療機器総合機構が提供する各種相談制度を活用することが推奨されています。但し、当該相談制度の活用は、必須ではありません。
当社が開発を進めている再生医療製品は、いずれも薬事法上の「医療機器」に該当しますが、製品の開発、薬事承認のプロセスは、医薬品のそれらに類似しています。薬事審査プロセスにおける各フェーズの要件は、次のとおりであります。
《基礎研究》 ティッシュ・エンジニアリングの3要素といわれている細胞、材料、生理活性物質を一定時間、適切な環境において組み合わせることで、組織再生に関する探索的研究を行います。当該基礎研究は、我が国においては、大学等の研究機関が先導しています。当社は、国内外における大学等の研究機関との共同研究をとおして、基礎研究を行っています。
《前臨床試験》 非臨床試験とも呼ばれます。基礎研究で選定されたティッシュ・エンジニアリングの3要素に加え、臨床における実際の移植を想定した様々な条件を、動物を用いて検討します。この過程をとおして、ヒトに移植した場合の安全性と有効性を予測します。なお、当社は、自社で試験を行う方法と、試験受託会社に委託する方法の組み合わせにより、前臨床試験を行っています。
《確認申請》 厚生省(現、厚生労働省)による通知である1999年7月30日付医薬発第906号「細胞・組織を利用した医療用具又は医薬品の品質及び安全性の確保について」、及び2000年12月26日付医薬発第1314号「ヒト又は動物由来成分を原料として製造される医薬品等の品質及び安全性の確保について」に基づき、ヒトの細胞・組織を利用した製品は、治験を開始する前に確認申請を厚生労働省に提出し、確認申請の適合を受ける
必要があります。実際の審査は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構が行います。
当該確認申請の目的は、治験を実施する前に、ヒト細胞組織利用製品の安全性と品質を確認することです。
なお、確認申請制度は2011年6月に廃止され、その代替として同年7月より薬事戦略相談制度が導入されました。
《薬事戦略相談》 薬事戦略相談制度は、2011年7月から導入されました。独立行政法人医薬品医療機器総合機構によると「日本発の革新的医薬品・医療機器の創出に向けて、現状では有望なシーズを発見した大学・研究機関、ベンチャー企業等が製品化につなげるための開発戦略に不案内であることから、薬事戦略相談制度はそれら有望性の高いシーズの実用化に向けて、シーズ発見後の大学・研究機関、ベンチャー企業を主な対象とし、医薬品・医療機器候補選定の最終段階から臨床開発初期試験に至るまでに必要な試験・治験計画策定等に関する相談への指導・助言を行う。また、従来、確認申請制度で対応してきたヒト又は動物由来の細胞・組織を加工(薬剤処理、生物学的特性改変、遺伝子工学的改変等をいう)した医薬品・医療機器の開発初期段階からの品質及び安全性に係る相談への指導・助言も行う」とされています。
《治験(臨床試験)》 前臨床試験の結果、動物での安全性や有効性が確認された製品を実際に臨床試験として患者に適用することにより、当該製品の安全性と有効性を評価します。治験を始める前に、治験の進め方(プロトコルという)を纏めた治験計画届を独立行政法人医薬品医療機器総合機構に提出し、受理された後に治験実施となります。ヒト細胞組織利用製品における治験実施症例数は、当該治験計画届において定義されます。
《製造販売承認申請》 治験の結果、医療機器としての有用性が確認されると、厚生労働省に製造販売承認申請を提出します。治験を通じて得られたすべてのデータを纏めて独立行政法人医薬品医療機器総合機構に提出し、対象製品について厳密な審査を受けます。審査の過程では、製造業者となる企業がQMS(Quality Management System、医療機器の製造管理及び品質管理の基準)に従った適切な製造施設・設備を保有しているか、またその運用方法が適切に行われているかについてのQMS適合性調査が、独立行政法人医薬品医療機器総合機構によって行われます。申請書類とQMS適合性調査の双方による審査を経て、最終的に厚生労働省から承認を取得した段階で、対象製品の製造販売が可能となります。
《保険収載》 我が国の医療制度を支えるシステムとして、医療機関が保険診療を行う場合の診療報酬制度があります。保険の適用を希望する場合には、製造業者等は製造販売承認を受けた後に保険適用希望書を厚生労働省に提出し、審査を受けます。審査の結果、保険適用が認められることを保険収載といいます。
《製造販売後対応》 製造販売承認を得た医療機器であっても、一般的に新規性の高い製品においては、より安全に使用できるように、製造販売後の一定期間内(注:期間は厚生労働大臣が指定する)は、販売した医療機器の調査を行う必要があり、その結果を厚生労働省に報告することが義務付けられています。例えば、継続的にその使用状況に関して情報収集のための調査(使用成績調査)を実施する必要があるほか、場合によっては使用成績調査と並行して、販売している製品の安全性や有効性を再度確認するための製造販売後臨床試験の実施を求められることもあります。
再生医療分野では、2013年4月に、再生医療の普及を迅速に進めるための再生医療推進法が国会で可決承認されました。これを受け、同年11月には、再生医療製品や医療機器の承認手続きを簡素化する医薬品医療機器等法(薬事法等の一部を改正する法律)と、iPS細胞(人工多能性幹細胞)など細胞を用いた再生医療を安全で迅速に提供するための再生医療等安全性確保法が成立し、公布されました。当社は、今後発出される政省令の動向を踏まえ、再生医療製品の開発を進めます。
[B] 研究開発支援事業
一般に、種々の外用医薬品や化粧品の開発に際しては、原材料の安全性や該当製品の有効性を確認する等の目的により、動物を用いた試験が実施されています。当社では、再生医療製品の開発を通じて蓄積したティッシュ・エンジニアリング技術と製造ノウハウに基づいて研究用ヒト培養組織を開発・製造し、動物実験を代替する研究用試薬ラボサイトシリーズとして化粧品及び医薬品製造会社等に販売しています。
なお、薬事法においては、医薬品等(医療機器を含む)は「ヒト若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること又はヒト若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされているもの」と定義されています。当社が開発・製造を行う研究用ヒト培養組織等は、この定義に該当しないため、研究開発支援事業については薬事法の適用は受けません。当該製品は研究用試薬に分類され、現在、製品販売による収入を計上しております。
2013年7月に、ラボサイト エピ・モデル24を用いた皮膚刺激性試験に関する試験法が、標準法の一つとしてOECD(経済協力開発機構)の試験法ガイドラインTG439へ収載されました。また、OECDが推進する眼刺激性試験の標準化を目指した共同研究を進めています。
(3) 個別事業・製品の内容
[A] 自家培養表皮ジェイス
① 事業化の背景
1975(昭和50)年、米国マサチューセッツ工科大学(当時)のHoward Green教授らは、ヒトの正常な表皮細胞の培養方法を確立しました。彼らはヒト表皮細胞を培養する際に、特殊な細胞(3T3-J2細胞)を使うことで、きわめて良好な培養環境を作り出したのです。この方法によると、ヒトの表皮細胞が十分に増殖し、皮膚類似の膜状構造を呈します。さらに、この膜状に培養された培養表皮が臨床応用され、種々の皮膚欠損症例に有用であることが明らかになってきました。1984(昭和59)年、重症熱傷(注4)を負った米国の2人の幼児に対して、わずかに残った皮膚から培養表皮を作製・移植した報告が、大きな注目を集めました。
当社は、患者本人の細胞を培養することで得られる培養表皮により、免疫拒絶反応を引き起こす可能性が少なく、あるいはドナーとなる方を待つ必要もない新しい移植医療の第一歩として、自家培養表皮の開発を、会社設立直後から開始しました。当社は、Green教授自身から、前述の特殊な細胞である3T3-J2細胞を譲受して事業化を進めてきました。
(注4) 重症熱傷とは、生命に影響をもたらす可能性が高いと考えられるほど広範囲におよぶ熱傷のことをいい、種々の分類によって数値的に定義されています。また顔面や気道の損傷、種々の骨折、その他電撃による損傷なども重症熱傷という定義に含まれます。
② 当社の自家培養表皮の特長等
当社は、培養表皮作製に関する基本技術について名古屋大学大学院医学系研究科の上田実教授の指導を受けた後、培養表皮の開発者である米国ハーバード大学医学部のHoward Green教授から直接的な技術指導を受けると同時に同教授から3T3-J2細胞の譲渡を受けました。加えて、自社で自家培養表皮の開発を進める過程においては、Green教授のもとで実際に細胞培養を実施してきたイタリアの角膜バンクである当時ベネトアイバンクに所属していたMichele De Luca博士から、実務レベルでの詳細技術について直接指導を受け、品質の高い培養表皮を作製する技術及び経験を蓄積してきました。
当社の自家培養表皮は患者に移植して治療するシート状の組織であり、そのほとんどが患者の表皮細胞で構成されています。また、正常な皮膚組織1cm2程度から、約3週間の培養期間を通じ、1000cm2を超える培養表皮を作製することが可能であり、少量の皮膚組織から大量の移植組織を作ることができるため、広範囲におよぶ熱傷の治療方法として有用であるとされます。
自家培養表皮の作製・移植フローは次のようになります。
自家培養表皮の作製・移植
③ 自家培養表皮ジェイスの概要
自家培養表皮ジェイスは、2002年3月に治験前の確認申請の適合を受け、2003年9月より治験を開始し、2004年10月に厚生労働省へ重症熱傷を適応対象とした自家培養表皮の製造承認申請書(2005年4月に改正された薬事法では製造販売承認申請という)を提出しました。製造承認申請の提出後、2005年1月に優先審査(注5)の認定を取得しました。
再生医療分野は我が国において新しい技術ならびに産業領域であることも影響して、規制当局による審査は長期間に亘りましたが、当社は2007年10月に自家培養表皮ジェイス(JACE: J-TEC Autologous
Cultured Epidermis)の製造承認を取得しました。当該承認の概要は下記のとおりでありますが、ヒト細胞組織利用製品として、我が国における初めての製造承認となりました。なお当社は、旧薬事法の下で自家培養表皮の申請を行ったため、改正薬事法の下では製造販売承認を取得したものとみなされます。
承認番号:21900BZZ00039000
一般的名称:ヒト自家移植組織(自家培養表皮)
販売名:ジェイス
形状、構造及び原理:患者自身の皮膚組織を採取し、分離した表皮細胞を培養してシート状に形成して患者自身に使用する「自家培養表皮」である。本品は再構築された真皮に移植され、生着し上皮化することにより創を閉鎖する。
適応対象 :自家植皮のための恵皮面積が確保できない重篤な広範囲熱傷で、かつ、受傷面積として深達性II度及びIII度熱傷創の合計面積が体表面積の30%以上の熱傷
また、自家培養表皮ジェイスの承認に際しては、「重症熱傷症例を適切に治療できる医療機関において十分な知識・経験のある医師が治療を行うこと」、「有効性及び安全性を確認するための製造販売後臨床試験の実施と並行して再審査期間(7年)中の全症例を対象とした使用成績調査を実施すること」、「最終製品を少なくとも30年間保存すること」等の条件が課せられました。
なお、患者の費用負担を軽減するためには保険収載されることが重要であり、2009年1月より保険適用を受けております。
(注5) 優先審査とは、希少疾病用医薬品の指定を受けた医薬品の他、次のいずれかの要件に該当する医薬品等について、優先的に審査することです。
a)適用疾病が重篤であると認められること。
b)既存の医薬品等と比較して、有効性又は安全性が医療上明らかに優れていると認められること。
④ その他
当社は、自家培養表皮ジェイスの適応拡大として、表皮水疱症及び巨大色素性母斑の治療を目的とした治験を進めました。ジェイスは、表皮水疱症の治療を目的とした希少疾病用医療機器に指定されています。なお、巨大色素性母斑については、医師主導の治験を支援していたものを企業治験として引き継ぐことにより、承認取得を目指します。
[B] 自家培養軟骨ジャック
① 事業化の背景
膝や肘の関節軟骨は、血管がないために、ケガなどで一度損傷を受けると自然には治りません。また、これらを薬などで治療することは非常に困難です。さらに、健常者でも、加齢とともに膝・肘の関節軟骨は薄くなっていきます。
近年、スポーツの普及によるケガに起因するものや、加齢に伴って生じたものなど、種々の関節異常が増加傾向にあります。当社が開発する培養軟骨は、このような患者のQOL(Quality of Life, 生活の質)向上に大きく貢献すると考え、事業化を進めてきました。
② 当社の自家培養軟骨の特長等
当社は、自家培養軟骨移植術に早くから着目し、事業化の可能性を探索してきました。培養軟骨移植術は整形外科領域において損傷軟骨の修復方法として注目されています。その中で、広島大学医学部の越智光夫教授の開発した方法は、アテロコラーゲンというゲル状の物質の中で軟骨細胞を三次元培養することで移植組織を作る方法であり、この方法によれば、軟骨細胞が本来持っている性質を維持したまま培養することが可能となります。本法により移植される軟骨細胞は一定の形状を持つ組織として維持されており、移植後に漏出することがない点が、当社製品の競争優位性を担うものと考えています。三次元培養法を用い、患者自身の関節(非荷重部)から少量採取した軟骨細胞を、アテロコラーゲンゲルの中で約4週間培養し、軟骨欠損部に移植します。当社は多くの臨床研究を通じてその有用性を明らかにした越智教授から直接指導を受け、当該自家培養軟骨の開発を行ってきました。
当社の自家培養軟骨は、膝の関節軟骨損傷を治療する円盤状組織であり、アテロコラーゲンゲルと患者の軟骨細胞、及び細胞が産生する軟骨基質により構成されています。
自家培養軟骨の作製・移植フローは次のようになります。
自家培養軟骨の作製・移植(膝関節)
③ 自家培養軟骨ジャックの概要
自家培養軟骨ジャックは、2004年2月に治験前の確認申請の適合を受け、2004年5月より治験を開始し、2009年8月に厚生労働省へ膝関節の全層軟骨欠損を適応対象とした自家培養軟骨の製造販売承認申請書を提出しました。
自家培養表皮同様に、再生医療分野は我が国において新しい技術ならびに産業領域であることも影響して、規制当局による審査は長期間に亘りましたが、当社は2012年7月に自家培養軟骨ジャック(JACC: J-TEC Autologous Cultured Cartilage)の製造販売承認を取得しました。当該承認の概要は下記のとおりでありますが、整形外科領域における我が国初のヒト細胞組織利用製品となりました。
承認番号:22400BZX00266000
一般的名称:ヒト自家移植組織(自家培養軟骨)
販売名:ジャック
形状、構造及び原理:患者から採取した健常な軟骨組織より分離した軟骨細胞を、アテロコラーゲンゲルに包埋して培養し、患者自身に適用する自家培養軟骨である。
軟骨細胞を含むアテロコラーゲンゲルを欠損部に移植することにより、臨床症状を緩和する。
適応対象 :膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の臨床症状の緩和。ただし、他に治療法がなく、かつ軟骨欠損面積が4cm2以上の軟骨欠損部位に適用する場合に限る。
また、自家培養軟骨ジャックの承認に際しては、「膝関節の外傷性軟骨欠損症及び離断性骨軟骨炎の治療に関する十分な知識・経験を有する医師及び施設において治療を行うこと」、「製造販売後の一定期間は、本品の使用症例の全例を対象に使用成績調査を実施し、本品の有効性及び安全性に関するデータを収集すること」等の条件が課せられました。
なお、患者の費用負担を軽減するためには保険収載されることが重要であり、2013年4月より保険適用を受けております。
[C] 自家培養角膜上皮
① 事業化の背景
人間の五感のうち、最も情報量が多い感覚器は視覚です。角膜は瞳の表面を覆っている膜で、視力を妨げないように透明度の高い構造をしています。また、角膜のもととなる細胞は角膜輪部(瞳の周囲の部分)に存在し、ここから新しい角膜ができます。何らかの理由によって、この角膜輪部が重度の損傷を受けた場合、透明な角膜が維持できず、角膜の瘢痕化(結膜化)をきたします。結膜によって透明度を失った目は、大幅に視力が失われます。このような患者にとり視力を回復することは、QOLの向上につながります。当社は、会社設立以来蓄積してきた自家培養表皮の技術を活用することにより、かつては治療法が存在しなかった患者の視力を回復する事業に取り組んでいます。
② 当社の自家培養角膜上皮の特長等
自家培養角膜上皮の移植は、アイバンクから提供される角膜の同種移植では治すことができなかった傷害を治療することを目的としております。前述のとおり、角膜輪部には角膜上皮幹細胞が存在しております。そこで、角膜輪部に損傷を受けた患者はこれら幹細胞がないために、同種角膜(亡くなった方から献眼されたアイバンクの角膜)を移植しても症状は悪化し、従来は治療法がありませんでした。
このような状況において、角膜輪部に損傷を受けた患者に自家培養角膜上皮を移植する方法が、1997(平成9)年にイタリアのGraziella Pellegrini博士とMichele De Luca博士らによって世界で初めて示されました。当社は、イタリアの角膜バンクで幹細胞の研究を行っているベネトアイバンクから技術を導入し、現在は2人のイタリア人博士の技術指導を受けております。
さらに、2011(平成23)年1月には、株式会社セルシードと「個別共同研究開発契約」を締結し、同社の保有する細胞シート工学の技術・ノウハウを用いた温度応答性培養器材を使用することとし、製品仕様の一部を変更し、開発を進めております。
角膜疾患として、角膜上皮幹細胞疲弊症を対象としております。但し、患者本人の正常な輪部組織が1mm2以上残存していることが条件となります。
③ 受託開発の状況
当社は、自家培養角膜上皮の開発において株式会社ニデックからの開発委託を受けており、同社からその対価として、開発委託費の支払を受けております。
当委託による本開発の結果生じた知的財産権は、当社と株式会社ニデックとの共有となりますが、製造販売承認後の販売権は、株式会社ニデックに帰属します。
[D] 研究開発支援事業
当社は、研究開発支援事業として、再生医療製品の開発を通じて蓄積したティッシュ・エンジニアリング技術と製造ノウハウを水平展開することにより、医療用途ではなく研究用途で使用される製品を提供しています。現在の主な展開製品としては、研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズがあります。
① 事業化の背景
一般に、種々の外用医薬品や化粧品の開発に際し、原材料の安全性や該当する製品の有効性を担保する目的で、動物を用いた試験が実施されています。しかしながら、動物実験を通じたこれら試験データの収集についてはいくつかの課題が明らかになってきました。たとえば、動物とヒトとの種間格差が存在するために、各種実験データが真に人体への影響を外挿しているか否かという点については、多くの議論が交わされています。そのため、可能な限り、ヒトの細胞・組織で研究を進めるべきであるという意見も増えてきました。さらに、EU欧州連合では、動物実験を通じて開発した化粧品の販売を、2009(平成21)年までに全面的に禁止(注6)され、同年3月より施行されております。
当社は、医療用の自家培養表皮の開発を通じて蓄積した高度な培養技術を有しております。この技術を研究用の培養組織開発に水平展開することにより、表皮モデルとしてラボサイト エピ・モデルの開発に成功し、2005年4月から販売を開始しております。その後、当社は製品ラインナップの拡充を図っております。
(注6) 1998(平成10)年までに実験動物を用いて安全性を評価した化粧品原料及び最終製品の販売を禁止するというEU指令(Council Directive 93/35/EEC)の施行が延期されてきましたが、2003(平成15)年1月に、全身的作用に関する一部の試験を除き、動物を用いるすべての安全性試験を2009(平成21)年までに禁止するという法律がヨーロッパ議会で決定され、同年3月より施行されております。
② 製品の仕様等
ラボサイト エピ・モデルは、ヒトの正常な表皮細胞を培養し重層化した三次元モデルであり、基底層、有棘層(ゆうきょくそう)、顆粒層、角質層から構成され、ヒト皮膚に類似した構造をしています。また、ロット間のバラツキが少ない再現性の高い製品です。
ラボサイト エピ・モデルの断面図
当該製品は、ヒトの皮膚に適用される外用医薬品や化粧品の開発、皮膚科医の基礎研究、化成品原材料の安全性研究等に有用な材料であると同時に、動物を使った皮膚試験を代替し、以下に示す領域での使用が想定されます。
- 皮膚代謝性試験: 皮膚細胞の酵素等による物質の代謝を調べる試験、皮膚組織の基礎研究
- 皮膚刺激性試験: 化学物質に皮膚刺激性があるかどうかを調べる試験、医薬品・化粧品等の安全性試験
- 経皮吸収試験 : 化学物質等の皮膚透過性を調べる試験、医薬品・化粧品の皮膚への浸潤検討
- 皮膚腐食性試験: 化学物質の安全性を調べる試験、化学会社の取扱物質の安全性検討
2013年7月に、ラボサイト エピ・モデル24を用いた皮膚刺激性試験に関する試験法が、標準法の一つとしてOECD(経済協力開発機構)の試験法ガイドラインTG439へ収載されました。また、OECDが推進する眼刺激性試験の標準化を目指した共同研究を進めています。
③ 製造体制の概況
研究用ヒト培養組織については、当社は自社内の生産設備を使用し、製造しております。細胞培養には、温度・湿度・気圧の管理に加え、発塵を防止し無菌環境を実現する施設が必要であります。当社ではこうした条件を満たす生産設備を保有しております。予期せぬウイルスによる汚染が発生しないように、医療用の培養製品の製造を行う施設と研究用ヒト培養組織を製造する施設とを、明確に分離しています。
研究用ヒト培養組織の製造には、細胞培養に関する知識と教育を受けた技術者が従事しています。また、当社の品質マネジメントシステムに従って品質管理を行い、その品質を保証しています。出荷検査に合格した製品は、適切な包装を行い、当社が開発した輸送環境を均一に保つ輸送容器に梱包して、顧客に配送されます。
④ 販売体制の概況
研究用ヒト培養組織については、当社営業担当者が、市場開拓と販売を行っております。既存顧客である化粧品、製薬、化学薬品の各メーカー、ならびに安全性試験受託機関等への売上拡大を図る一方で、新規顧客の開拓を行っています。販売体制は、直販体制を主としながら、特定地域においては代理店体制をとっています。現在、ラボサイトシリーズとして、エピ・モデル、エピ・モデル6D、エピ・キット、メラノ・モデル及び角膜モデルを販売しています。
当社は、提出日現在において連結子会社及び非連結子会社を保有していません。
(1) 当社事業の根幹となる技術
当社では、社名の由来であるティッシュ・エンジニアリング(組織工学)技術を活用しています。近年、細胞培養や生体材料工学等における技術進歩により、生物から採取した細胞を用いて、体外での細胞培養、組織・臓器の再形成、新たな機能の付加あるいは機能の修復等が試みられるようになりましたが、このような組織の再生を実現するための技術がティッシュ・エンジニアリング技術と呼ばれるものであり、当社事業の根幹となる技術であります。
当社では、当該技術を活用することにより、ヒトの細胞を培養して組織や臓器を作り出し、これを医療用途及び研究用途に提供することを事業目的としています。
ティッシュ・エンジニアリングを実現するためには、生きた細胞、人工的に作られた材料・素材、細胞や生体に影響をもたらす種々の生理活性物質が必要であり、医学・工学・理学・薬学等の異分野間研究交流も必要とされます。さらに、我が国では、ティッシュ・エンジニアリング技術により作り出された組織や臓器を、製品として医療目的で製造・販売するためには、薬事法のもとで厚生労働省からの許認可が必要であります。この許認可には、製造ならびに品質管理に関する基準が含まれており、当社が保有している製造施設・設備、創業以来の研究開発活動で培ってきた製造方法、品質管理に関するノウハウ、そして販売に関する組織体制やノウハウも、当社事業の根幹となる技術であるといえます。
また、細胞培養に用いる細胞は、その由来に応じて、自家細胞(本人)、同種細胞(本人以外)、異種細胞(ヒト以外の動物)に分類されますが(注3)、当社では患者本人から採取したヒト組織・細胞を用いることをひとつの特徴としています。自家培養組織の移植は、一般的に免疫拒絶反応が少なく、生体への生着能率が高いといわれており、当社が培った細胞培養技術も当社事業の根幹となる技術と位置付けられます。
(注3) 移植の種類により、自家移植、同種移植、異種移植に分類されます。また、同種移植と異種移植は、総称して他家移植とも呼ばれます。
自家移植: 患者から採取した組織・細胞を本人に移植すること。
同種移植: 本人以外の組織・臓器を移植すること。
異種移植: ヒト以外の動物の組織・臓器を移植すること。
(2) 当社の事業領域と事業化の段階
当社は、薬事法の適用を受ける再生医療製品事業と、薬事法の適用を受けない研究開発支援事業を展開しており、開発する製品毎に事業化の段階が異なっております。
なお、上記の2事業は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。
事業領域 | 製品 | 事業化の段階 |
再生医療製品事業 (薬事法適用事業) | 自家培養表皮ジェイス (重症熱傷用) | 製造承認を取得(製造販売承認に相当) 保険収載され、製品販売収入を計上 |
自家培養軟骨ジャック | 製造販売承認を取得 保険収載され、製品販売収入を計上 | |
自家培養角膜上皮 | 研究開発中(薬事戦略相談の実施中) 受託開発収入を計上 | |
自家培養表皮ジェイス (表皮水疱症用) | 適応拡大のための治験実施 | |
自家培養表皮ジェイス (巨大色素性母斑用) | 適応拡大のための治験実施 (医師主導治験を企業治験として引き継ぎ) | |
研究開発支援事業 (薬事法非適用事業) | 研究用ヒト培養組織 ラボサイトシリーズ | 製品販売収入を計上 |
[A] 再生医療製品事業
再生医療とは、従来の薬物治療とは異なり、われわれの身体に備わっている組織の再生能力を引き出すことであり、失われた組織や臓器の機能を、細胞を使って回復させることに主眼をおいた医療であります。当社は、自家培養技術を利用した再生医療製品を開発し、当該開発製品を医療機関向けに医療目的で製造販売することを主な事業目的としています。
ヒト細胞・組織を利用したすべての再生医療製品は製造・販売を行うため、薬事法に則り、厚生労働省から承認を取得する必要があります。各種書類の審査は、厚生労働省所管の独立行政法人医薬品医療機器総合機構が担当します。なお、厚生労働省は、再生医療製品の承認プロセスの一つである確認申請制度を廃止し、その代替として2011年7月1日から薬事戦略相談制度を導入しました。
現在、当社は、自家培養表皮ジェイス(重症熱傷用)と自家培養軟骨ジャックを上市済であり、自家培養角膜上皮、自家培養表皮ジェイス(表皮水疱症用)、自家培養表皮ジェイス(巨大色素性母斑用)については、事業化を進めています。
再生医療製品の薬事審査プロセスを図示すると、以下のとおりになります。
再生医療製品の薬事審査プロセス
(補足説明) (旧)薬事審査プロセスでの確認申請制度は、2011年6月に廃止され、その代替として同年7月より(新)薬事審査プロセスとして、薬事戦略相談制度が導入されました。
治験、製造販売承認申請の各プロセス直前の準備段階では、独立行政法人医薬品医療機器総合機構が提供する各種相談制度を活用することが推奨されています。但し、当該相談制度の活用は、必須ではありません。
当社が開発を進めている再生医療製品は、いずれも薬事法上の「医療機器」に該当しますが、製品の開発、薬事承認のプロセスは、医薬品のそれらに類似しています。薬事審査プロセスにおける各フェーズの要件は、次のとおりであります。
《基礎研究》 ティッシュ・エンジニアリングの3要素といわれている細胞、材料、生理活性物質を一定時間、適切な環境において組み合わせることで、組織再生に関する探索的研究を行います。当該基礎研究は、我が国においては、大学等の研究機関が先導しています。当社は、国内外における大学等の研究機関との共同研究をとおして、基礎研究を行っています。
《前臨床試験》 非臨床試験とも呼ばれます。基礎研究で選定されたティッシュ・エンジニアリングの3要素に加え、臨床における実際の移植を想定した様々な条件を、動物を用いて検討します。この過程をとおして、ヒトに移植した場合の安全性と有効性を予測します。なお、当社は、自社で試験を行う方法と、試験受託会社に委託する方法の組み合わせにより、前臨床試験を行っています。
《確認申請》 厚生省(現、厚生労働省)による通知である1999年7月30日付医薬発第906号「細胞・組織を利用した医療用具又は医薬品の品質及び安全性の確保について」、及び2000年12月26日付医薬発第1314号「ヒト又は動物由来成分を原料として製造される医薬品等の品質及び安全性の確保について」に基づき、ヒトの細胞・組織を利用した製品は、治験を開始する前に確認申請を厚生労働省に提出し、確認申請の適合を受ける
必要があります。実際の審査は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構が行います。
当該確認申請の目的は、治験を実施する前に、ヒト細胞組織利用製品の安全性と品質を確認することです。
なお、確認申請制度は2011年6月に廃止され、その代替として同年7月より薬事戦略相談制度が導入されました。
《薬事戦略相談》 薬事戦略相談制度は、2011年7月から導入されました。独立行政法人医薬品医療機器総合機構によると「日本発の革新的医薬品・医療機器の創出に向けて、現状では有望なシーズを発見した大学・研究機関、ベンチャー企業等が製品化につなげるための開発戦略に不案内であることから、薬事戦略相談制度はそれら有望性の高いシーズの実用化に向けて、シーズ発見後の大学・研究機関、ベンチャー企業を主な対象とし、医薬品・医療機器候補選定の最終段階から臨床開発初期試験に至るまでに必要な試験・治験計画策定等に関する相談への指導・助言を行う。また、従来、確認申請制度で対応してきたヒト又は動物由来の細胞・組織を加工(薬剤処理、生物学的特性改変、遺伝子工学的改変等をいう)した医薬品・医療機器の開発初期段階からの品質及び安全性に係る相談への指導・助言も行う」とされています。
《治験(臨床試験)》 前臨床試験の結果、動物での安全性や有効性が確認された製品を実際に臨床試験として患者に適用することにより、当該製品の安全性と有効性を評価します。治験を始める前に、治験の進め方(プロトコルという)を纏めた治験計画届を独立行政法人医薬品医療機器総合機構に提出し、受理された後に治験実施となります。ヒト細胞組織利用製品における治験実施症例数は、当該治験計画届において定義されます。
《製造販売承認申請》 治験の結果、医療機器としての有用性が確認されると、厚生労働省に製造販売承認申請を提出します。治験を通じて得られたすべてのデータを纏めて独立行政法人医薬品医療機器総合機構に提出し、対象製品について厳密な審査を受けます。審査の過程では、製造業者となる企業がQMS(Quality Management System、医療機器の製造管理及び品質管理の基準)に従った適切な製造施設・設備を保有しているか、またその運用方法が適切に行われているかについてのQMS適合性調査が、独立行政法人医薬品医療機器総合機構によって行われます。申請書類とQMS適合性調査の双方による審査を経て、最終的に厚生労働省から承認を取得した段階で、対象製品の製造販売が可能となります。
《保険収載》 我が国の医療制度を支えるシステムとして、医療機関が保険診療を行う場合の診療報酬制度があります。保険の適用を希望する場合には、製造業者等は製造販売承認を受けた後に保険適用希望書を厚生労働省に提出し、審査を受けます。審査の結果、保険適用が認められることを保険収載といいます。
《製造販売後対応》 製造販売承認を得た医療機器であっても、一般的に新規性の高い製品においては、より安全に使用できるように、製造販売後の一定期間内(注:期間は厚生労働大臣が指定する)は、販売した医療機器の調査を行う必要があり、その結果を厚生労働省に報告することが義務付けられています。例えば、継続的にその使用状況に関して情報収集のための調査(使用成績調査)を実施する必要があるほか、場合によっては使用成績調査と並行して、販売している製品の安全性や有効性を再度確認するための製造販売後臨床試験の実施を求められることもあります。
再生医療分野では、2013年4月に、再生医療の普及を迅速に進めるための再生医療推進法が国会で可決承認されました。これを受け、同年11月には、再生医療製品や医療機器の承認手続きを簡素化する医薬品医療機器等法(薬事法等の一部を改正する法律)と、iPS細胞(人工多能性幹細胞)など細胞を用いた再生医療を安全で迅速に提供するための再生医療等安全性確保法が成立し、公布されました。当社は、今後発出される政省令の動向を踏まえ、再生医療製品の開発を進めます。
[B] 研究開発支援事業
一般に、種々の外用医薬品や化粧品の開発に際しては、原材料の安全性や該当製品の有効性を確認する等の目的により、動物を用いた試験が実施されています。当社では、再生医療製品の開発を通じて蓄積したティッシュ・エンジニアリング技術と製造ノウハウに基づいて研究用ヒト培養組織を開発・製造し、動物実験を代替する研究用試薬ラボサイトシリーズとして化粧品及び医薬品製造会社等に販売しています。
なお、薬事法においては、医薬品等(医療機器を含む)は「ヒト若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること又はヒト若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされているもの」と定義されています。当社が開発・製造を行う研究用ヒト培養組織等は、この定義に該当しないため、研究開発支援事業については薬事法の適用は受けません。当該製品は研究用試薬に分類され、現在、製品販売による収入を計上しております。
2013年7月に、ラボサイト エピ・モデル24を用いた皮膚刺激性試験に関する試験法が、標準法の一つとしてOECD(経済協力開発機構)の試験法ガイドラインTG439へ収載されました。また、OECDが推進する眼刺激性試験の標準化を目指した共同研究を進めています。
(3) 個別事業・製品の内容
[A] 自家培養表皮ジェイス
① 事業化の背景
1975(昭和50)年、米国マサチューセッツ工科大学(当時)のHoward Green教授らは、ヒトの正常な表皮細胞の培養方法を確立しました。彼らはヒト表皮細胞を培養する際に、特殊な細胞(3T3-J2細胞)を使うことで、きわめて良好な培養環境を作り出したのです。この方法によると、ヒトの表皮細胞が十分に増殖し、皮膚類似の膜状構造を呈します。さらに、この膜状に培養された培養表皮が臨床応用され、種々の皮膚欠損症例に有用であることが明らかになってきました。1984(昭和59)年、重症熱傷(注4)を負った米国の2人の幼児に対して、わずかに残った皮膚から培養表皮を作製・移植した報告が、大きな注目を集めました。
当社は、患者本人の細胞を培養することで得られる培養表皮により、免疫拒絶反応を引き起こす可能性が少なく、あるいはドナーとなる方を待つ必要もない新しい移植医療の第一歩として、自家培養表皮の開発を、会社設立直後から開始しました。当社は、Green教授自身から、前述の特殊な細胞である3T3-J2細胞を譲受して事業化を進めてきました。
(注4) 重症熱傷とは、生命に影響をもたらす可能性が高いと考えられるほど広範囲におよぶ熱傷のことをいい、種々の分類によって数値的に定義されています。また顔面や気道の損傷、種々の骨折、その他電撃による損傷なども重症熱傷という定義に含まれます。
② 当社の自家培養表皮の特長等
当社は、培養表皮作製に関する基本技術について名古屋大学大学院医学系研究科の上田実教授の指導を受けた後、培養表皮の開発者である米国ハーバード大学医学部のHoward Green教授から直接的な技術指導を受けると同時に同教授から3T3-J2細胞の譲渡を受けました。加えて、自社で自家培養表皮の開発を進める過程においては、Green教授のもとで実際に細胞培養を実施してきたイタリアの角膜バンクである当時ベネトアイバンクに所属していたMichele De Luca博士から、実務レベルでの詳細技術について直接指導を受け、品質の高い培養表皮を作製する技術及び経験を蓄積してきました。
当社の自家培養表皮は患者に移植して治療するシート状の組織であり、そのほとんどが患者の表皮細胞で構成されています。また、正常な皮膚組織1cm2程度から、約3週間の培養期間を通じ、1000cm2を超える培養表皮を作製することが可能であり、少量の皮膚組織から大量の移植組織を作ることができるため、広範囲におよぶ熱傷の治療方法として有用であるとされます。
自家培養表皮の作製・移植フローは次のようになります。
自家培養表皮の作製・移植
③ 自家培養表皮ジェイスの概要
自家培養表皮ジェイスは、2002年3月に治験前の確認申請の適合を受け、2003年9月より治験を開始し、2004年10月に厚生労働省へ重症熱傷を適応対象とした自家培養表皮の製造承認申請書(2005年4月に改正された薬事法では製造販売承認申請という)を提出しました。製造承認申請の提出後、2005年1月に優先審査(注5)の認定を取得しました。
再生医療分野は我が国において新しい技術ならびに産業領域であることも影響して、規制当局による審査は長期間に亘りましたが、当社は2007年10月に自家培養表皮ジェイス(JACE: J-TEC Autologous
Cultured Epidermis)の製造承認を取得しました。当該承認の概要は下記のとおりでありますが、ヒト細胞組織利用製品として、我が国における初めての製造承認となりました。なお当社は、旧薬事法の下で自家培養表皮の申請を行ったため、改正薬事法の下では製造販売承認を取得したものとみなされます。
承認番号:21900BZZ00039000
一般的名称:ヒト自家移植組織(自家培養表皮)
販売名:ジェイス
形状、構造及び原理:患者自身の皮膚組織を採取し、分離した表皮細胞を培養してシート状に形成して患者自身に使用する「自家培養表皮」である。本品は再構築された真皮に移植され、生着し上皮化することにより創を閉鎖する。
適応対象 :自家植皮のための恵皮面積が確保できない重篤な広範囲熱傷で、かつ、受傷面積として深達性II度及びIII度熱傷創の合計面積が体表面積の30%以上の熱傷
また、自家培養表皮ジェイスの承認に際しては、「重症熱傷症例を適切に治療できる医療機関において十分な知識・経験のある医師が治療を行うこと」、「有効性及び安全性を確認するための製造販売後臨床試験の実施と並行して再審査期間(7年)中の全症例を対象とした使用成績調査を実施すること」、「最終製品を少なくとも30年間保存すること」等の条件が課せられました。
なお、患者の費用負担を軽減するためには保険収載されることが重要であり、2009年1月より保険適用を受けております。
(注5) 優先審査とは、希少疾病用医薬品の指定を受けた医薬品の他、次のいずれかの要件に該当する医薬品等について、優先的に審査することです。
a)適用疾病が重篤であると認められること。
b)既存の医薬品等と比較して、有効性又は安全性が医療上明らかに優れていると認められること。
④ その他
当社は、自家培養表皮ジェイスの適応拡大として、表皮水疱症及び巨大色素性母斑の治療を目的とした治験を進めました。ジェイスは、表皮水疱症の治療を目的とした希少疾病用医療機器に指定されています。なお、巨大色素性母斑については、医師主導の治験を支援していたものを企業治験として引き継ぐことにより、承認取得を目指します。
[B] 自家培養軟骨ジャック
① 事業化の背景
膝や肘の関節軟骨は、血管がないために、ケガなどで一度損傷を受けると自然には治りません。また、これらを薬などで治療することは非常に困難です。さらに、健常者でも、加齢とともに膝・肘の関節軟骨は薄くなっていきます。
近年、スポーツの普及によるケガに起因するものや、加齢に伴って生じたものなど、種々の関節異常が増加傾向にあります。当社が開発する培養軟骨は、このような患者のQOL(Quality of Life, 生活の質)向上に大きく貢献すると考え、事業化を進めてきました。
② 当社の自家培養軟骨の特長等
当社は、自家培養軟骨移植術に早くから着目し、事業化の可能性を探索してきました。培養軟骨移植術は整形外科領域において損傷軟骨の修復方法として注目されています。その中で、広島大学医学部の越智光夫教授の開発した方法は、アテロコラーゲンというゲル状の物質の中で軟骨細胞を三次元培養することで移植組織を作る方法であり、この方法によれば、軟骨細胞が本来持っている性質を維持したまま培養することが可能となります。本法により移植される軟骨細胞は一定の形状を持つ組織として維持されており、移植後に漏出することがない点が、当社製品の競争優位性を担うものと考えています。三次元培養法を用い、患者自身の関節(非荷重部)から少量採取した軟骨細胞を、アテロコラーゲンゲルの中で約4週間培養し、軟骨欠損部に移植します。当社は多くの臨床研究を通じてその有用性を明らかにした越智教授から直接指導を受け、当該自家培養軟骨の開発を行ってきました。
当社の自家培養軟骨は、膝の関節軟骨損傷を治療する円盤状組織であり、アテロコラーゲンゲルと患者の軟骨細胞、及び細胞が産生する軟骨基質により構成されています。
自家培養軟骨の作製・移植フローは次のようになります。
自家培養軟骨の作製・移植(膝関節)
③ 自家培養軟骨ジャックの概要
自家培養軟骨ジャックは、2004年2月に治験前の確認申請の適合を受け、2004年5月より治験を開始し、2009年8月に厚生労働省へ膝関節の全層軟骨欠損を適応対象とした自家培養軟骨の製造販売承認申請書を提出しました。
自家培養表皮同様に、再生医療分野は我が国において新しい技術ならびに産業領域であることも影響して、規制当局による審査は長期間に亘りましたが、当社は2012年7月に自家培養軟骨ジャック(JACC: J-TEC Autologous Cultured Cartilage)の製造販売承認を取得しました。当該承認の概要は下記のとおりでありますが、整形外科領域における我が国初のヒト細胞組織利用製品となりました。
承認番号:22400BZX00266000
一般的名称:ヒト自家移植組織(自家培養軟骨)
販売名:ジャック
形状、構造及び原理:患者から採取した健常な軟骨組織より分離した軟骨細胞を、アテロコラーゲンゲルに包埋して培養し、患者自身に適用する自家培養軟骨である。
軟骨細胞を含むアテロコラーゲンゲルを欠損部に移植することにより、臨床症状を緩和する。
適応対象 :膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の臨床症状の緩和。ただし、他に治療法がなく、かつ軟骨欠損面積が4cm2以上の軟骨欠損部位に適用する場合に限る。
また、自家培養軟骨ジャックの承認に際しては、「膝関節の外傷性軟骨欠損症及び離断性骨軟骨炎の治療に関する十分な知識・経験を有する医師及び施設において治療を行うこと」、「製造販売後の一定期間は、本品の使用症例の全例を対象に使用成績調査を実施し、本品の有効性及び安全性に関するデータを収集すること」等の条件が課せられました。
なお、患者の費用負担を軽減するためには保険収載されることが重要であり、2013年4月より保険適用を受けております。
[C] 自家培養角膜上皮
① 事業化の背景
人間の五感のうち、最も情報量が多い感覚器は視覚です。角膜は瞳の表面を覆っている膜で、視力を妨げないように透明度の高い構造をしています。また、角膜のもととなる細胞は角膜輪部(瞳の周囲の部分)に存在し、ここから新しい角膜ができます。何らかの理由によって、この角膜輪部が重度の損傷を受けた場合、透明な角膜が維持できず、角膜の瘢痕化(結膜化)をきたします。結膜によって透明度を失った目は、大幅に視力が失われます。このような患者にとり視力を回復することは、QOLの向上につながります。当社は、会社設立以来蓄積してきた自家培養表皮の技術を活用することにより、かつては治療法が存在しなかった患者の視力を回復する事業に取り組んでいます。
眼の各部名称 角膜の構造 |
② 当社の自家培養角膜上皮の特長等
自家培養角膜上皮の移植は、アイバンクから提供される角膜の同種移植では治すことができなかった傷害を治療することを目的としております。前述のとおり、角膜輪部には角膜上皮幹細胞が存在しております。そこで、角膜輪部に損傷を受けた患者はこれら幹細胞がないために、同種角膜(亡くなった方から献眼されたアイバンクの角膜)を移植しても症状は悪化し、従来は治療法がありませんでした。
このような状況において、角膜輪部に損傷を受けた患者に自家培養角膜上皮を移植する方法が、1997(平成9)年にイタリアのGraziella Pellegrini博士とMichele De Luca博士らによって世界で初めて示されました。当社は、イタリアの角膜バンクで幹細胞の研究を行っているベネトアイバンクから技術を導入し、現在は2人のイタリア人博士の技術指導を受けております。
さらに、2011(平成23)年1月には、株式会社セルシードと「個別共同研究開発契約」を締結し、同社の保有する細胞シート工学の技術・ノウハウを用いた温度応答性培養器材を使用することとし、製品仕様の一部を変更し、開発を進めております。
角膜疾患として、角膜上皮幹細胞疲弊症を対象としております。但し、患者本人の正常な輪部組織が1mm2以上残存していることが条件となります。
③ 受託開発の状況
当社は、自家培養角膜上皮の開発において株式会社ニデックからの開発委託を受けており、同社からその対価として、開発委託費の支払を受けております。
当委託による本開発の結果生じた知的財産権は、当社と株式会社ニデックとの共有となりますが、製造販売承認後の販売権は、株式会社ニデックに帰属します。
[D] 研究開発支援事業
当社は、研究開発支援事業として、再生医療製品の開発を通じて蓄積したティッシュ・エンジニアリング技術と製造ノウハウを水平展開することにより、医療用途ではなく研究用途で使用される製品を提供しています。現在の主な展開製品としては、研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズがあります。
① 事業化の背景
一般に、種々の外用医薬品や化粧品の開発に際し、原材料の安全性や該当する製品の有効性を担保する目的で、動物を用いた試験が実施されています。しかしながら、動物実験を通じたこれら試験データの収集についてはいくつかの課題が明らかになってきました。たとえば、動物とヒトとの種間格差が存在するために、各種実験データが真に人体への影響を外挿しているか否かという点については、多くの議論が交わされています。そのため、可能な限り、ヒトの細胞・組織で研究を進めるべきであるという意見も増えてきました。さらに、EU欧州連合では、動物実験を通じて開発した化粧品の販売を、2009(平成21)年までに全面的に禁止(注6)され、同年3月より施行されております。
当社は、医療用の自家培養表皮の開発を通じて蓄積した高度な培養技術を有しております。この技術を研究用の培養組織開発に水平展開することにより、表皮モデルとしてラボサイト エピ・モデルの開発に成功し、2005年4月から販売を開始しております。その後、当社は製品ラインナップの拡充を図っております。
(注6) 1998(平成10)年までに実験動物を用いて安全性を評価した化粧品原料及び最終製品の販売を禁止するというEU指令(Council Directive 93/35/EEC)の施行が延期されてきましたが、2003(平成15)年1月に、全身的作用に関する一部の試験を除き、動物を用いるすべての安全性試験を2009(平成21)年までに禁止するという法律がヨーロッパ議会で決定され、同年3月より施行されております。
② 製品の仕様等
ラボサイト エピ・モデルは、ヒトの正常な表皮細胞を培養し重層化した三次元モデルであり、基底層、有棘層(ゆうきょくそう)、顆粒層、角質層から構成され、ヒト皮膚に類似した構造をしています。また、ロット間のバラツキが少ない再現性の高い製品です。
ラボサイト エピ・モデルの断面図
当該製品は、ヒトの皮膚に適用される外用医薬品や化粧品の開発、皮膚科医の基礎研究、化成品原材料の安全性研究等に有用な材料であると同時に、動物を使った皮膚試験を代替し、以下に示す領域での使用が想定されます。
- 皮膚代謝性試験: 皮膚細胞の酵素等による物質の代謝を調べる試験、皮膚組織の基礎研究
- 皮膚刺激性試験: 化学物質に皮膚刺激性があるかどうかを調べる試験、医薬品・化粧品等の安全性試験
- 経皮吸収試験 : 化学物質等の皮膚透過性を調べる試験、医薬品・化粧品の皮膚への浸潤検討
- 皮膚腐食性試験: 化学物質の安全性を調べる試験、化学会社の取扱物質の安全性検討
2013年7月に、ラボサイト エピ・モデル24を用いた皮膚刺激性試験に関する試験法が、標準法の一つとしてOECD(経済協力開発機構)の試験法ガイドラインTG439へ収載されました。また、OECDが推進する眼刺激性試験の標準化を目指した共同研究を進めています。
③ 製造体制の概況
研究用ヒト培養組織については、当社は自社内の生産設備を使用し、製造しております。細胞培養には、温度・湿度・気圧の管理に加え、発塵を防止し無菌環境を実現する施設が必要であります。当社ではこうした条件を満たす生産設備を保有しております。予期せぬウイルスによる汚染が発生しないように、医療用の培養製品の製造を行う施設と研究用ヒト培養組織を製造する施設とを、明確に分離しています。
研究用ヒト培養組織の製造には、細胞培養に関する知識と教育を受けた技術者が従事しています。また、当社の品質マネジメントシステムに従って品質管理を行い、その品質を保証しています。出荷検査に合格した製品は、適切な包装を行い、当社が開発した輸送環境を均一に保つ輸送容器に梱包して、顧客に配送されます。
④ 販売体制の概況
研究用ヒト培養組織については、当社営業担当者が、市場開拓と販売を行っております。既存顧客である化粧品、製薬、化学薬品の各メーカー、ならびに安全性試験受託機関等への売上拡大を図る一方で、新規顧客の開拓を行っています。販売体制は、直販体制を主としながら、特定地域においては代理店体制をとっています。現在、ラボサイトシリーズとして、エピ・モデル、エピ・モデル6D、エピ・キット、メラノ・モデル及び角膜モデルを販売しています。
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