有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1001Z4I
株式会社日本取引所グループ 事業等のリスク (2014年3月期)
対処すべき課題メニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
以下、当社グループの事業その他に関し、リスク要因となる可能性があると考えられる事項を記載しておりますが、これらのリスクは必ずしもすべてのリスクを網羅したものではなく、提出日現在では想定していないリスクや重要性が低いと考えられるリスクも、今後、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、必ずしもリスク要因には該当しないと考えられる事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。
なお、記載事項のうち将来に関する事項は、提出日現在において入手可能な情報等に基づいて判断したものであります。
(1)経営体制の特徴等について
① 企業理念等について
取引所金融商品市場の運営については、金融商品取引法において、「有価証券の売買及び市場デリバティブ取引を公正かつ円滑にし、並びに投資者の保護に資するよう運営されなければならない」と規定されており、当社グループでは、以下の内容を企業理念として、事業を遂行いたします。
・ 私たちは、公共性・信頼性の確保、利便性・効率性・透明性の高い市場基盤の構築、創造的・魅力的なサービスの提供により、市場の持続的な発展を図り、豊かな社会の実現に貢献します。
・ 私たちは、これらを通じて、投資者を始めとする市場利用者の支持及び信頼の増大が図られ、その結果として、利益がもたらされるものと考えます。
② 取締役会の構成について
当社では、経営の監視・監督機能と業務執行機能を制度上明確に分離し、経営監視・監督機能の強化及び経営の透明性の向上を図るため、委員会設置会社形態を採用しており、経営監視・監督機能の中心的役割を担う取締役会は、経営の透明性及びアカウンタビリティの向上を図り、業務執行の妥当性を監督する機能を強化する観点から、過半を社外取締役で構成しております(2014年3月31日現在の取締役14名中、8名が社外取締役)。
当社では、上場会社の役員等、法律専門家、公認会計士及び学識経験者を社外取締役として選任しており、各人はそれぞれの分野で高い見識を認められた人材であることから、経営に多面的な社外の視点を積極的に取り入れることができる充実した体制が構築されているものと認識しております。
また、公共性・公益性の高い清算・決済インフラの提供主体として、中立的かつ利用者の意見を反映させた業務運営を実現する観点から、株式会社日本証券クリアリング機構の取締役会についても社外取締役を中心とした構成としており、過半を参加者である証券会社や公益団体から選任しております。
当社グループは、収益の多くを証券会社や上場会社から得ていることから、当社グループと証券会社や上場会社は利害が対立する可能性がありますが、当社グループでは、市場の利用者である証券会社や上場会社等のステークホルダーの意見等を経営に反映していくことが、市場全体の安全性・利便性・効率性の維持・改善に寄与し、ひいては当社グループの企業価値の向上にも資するものと認識しております。
③ 持株会社であることについて
当社は持株会社であるため、収入は、経営管理料収入や子会社や関連会社からの配当金に大きく依存しますが、法律上又は事業上の制約により、当社への子会社や関連会社からの配当金の支払いは制限される可能性があります。
当社の子会社である日本取引所自主規制法人は、金融商品取引法において、営利の目的をもって業務を行ってはならない旨、規定されていることから配当を行うことができず、また、子会社である株式会社日本証券クリアリング機構は、清算機関としての企業の継続性及び決済履行保証スキーム(「(5)決済履行確保の仕組みについて」参照)の機能確保の観点から、一定の剰余金を確保する必要があります。(「金融市場インフラのための原則」(2012年4月:国際決済銀行・支払決済システム委員会、証券監督者国際機構専門委員会の共同報告書)においても、「(より複雑なリスク特性を伴う清算業務に従事しているCCPは)極端であるが現実に起こり得る市場環境において最大の総信用エクスポージャーをもたらす可能性がある2先の参加者とその関係法人の破綻を含み、かつこれに限定されない広範な潜在的ストレスシナリオを十分にカバーするだけの追加的な財務資源を保持すべきである。」との原則が掲げられております。)
当社グループは、配当について「取引所としての競争力強化と自主規制機能の向上のためのシステム開発や清算機関としてのリスクへの備えを目的とした内部留保の重要性に留意しつつ、安定的かつ継続的な配当を実施することを基本とし、具体的には、配当性向を40%程度とすること」を目標としておりますが、当社の子会社や関連会社が、当社に配当を行うだけの十分な収益やキャッシュ・フローを確保できなかった場合には、当社の株主に対する配当が困難もしくは不可能となる可能性があります。
(2)法令等による規制等について
① 免許制の事業であることについて
当社グループは金融商品取引法及び関連する諸法令の規制の下、事業を行っております。
当社は、金融商品取引法が定める内閣総理大臣の認可(以下、「取引所持株会社認可」といいます。)を受けた「金融商品取引所持株会社」であり、当社の子会社である株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所は、同法が定める内閣総理大臣の免許(以下、「取引所業免許」といいます。)を受けて、取引所金融商品市場を開設・運営する「金融商品取引所」であります。なお、株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所は、同法が定める内閣総理大臣の認可(以下、「自主規制業務の委託認可」といいます。)を受けて、自主規制業務を日本取引所自主規制法人に委託しており、日本取引所自主規制法人は同法が定める内閣総理大臣の認可(以下、「自主規制業務認可」といいます。)を受けて、自主規制業務を行っております。
また、株式会社日本証券クリアリング機構は、同法が定める内閣総理大臣の免許を受けて、金融商品取引清算機関として金融商品債務引受業等を行っております。
さらに、金融商品取引清算機関の総株主の議決権の100分の20(その財務及び営業の方針の決定に対して重要な影響を与えることが推測される事実として内閣府令で定める事実がある場合には、100分の15)以上の数の議決権を取得し、若しくは保有しようとする場合、あらかじめ、内閣総理大臣の認可を受けなければならないとされており、当社及び株式会社日本証券クリアリング機構は当該認可を受けております。
現時点におきましては、上記免許又は認可が取消しとなるような事由は発生しておりませんが、将来、何らかの理由により、同法が定める取消事由等に該当し、内閣総理大臣より免許又は認可の取消処分を受けることとなった場合又は業務の全部若しくは一部の停止等の処分を受けることとなった場合等には、当社グループの事業運営及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
② 業務内容の制限等について
金融商品取引法において、金融商品取引所持株会社である当社は、子会社である株式会社金融商品取引所等の経営管理を行うこと及びこれに附帯する業務のほか、他の業務を行うことができないとされており、金融商品取引所である株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所は、取引所金融商品市場の開設及びこれに附帯する業務以外の業務を行うこと、自主規制法人である日本取引所自主規制法人は、自主規制業務及びこれに附帯する業務以外の業務を行うことを禁止されており、業務範囲が制限されております。同様に、金融商品取引清算機関である株式会社日本証券クリアリング機構も、金融商品債務引受業等及びこれに附帯する業務のほか、他の業務を営むことができないとされており、内閣総理大臣の承認を受けた場合にのみ、金融商品債務引受業に関連する業務を行うことができるとされております。
また、子会社につきましても、金融商品取引所持株会社及び金融商品取引所は、取引所金融商品市場の開設及びこれに附帯する業務を行う会社以外の会社を子会社としてはならないとされており、内閣総理大臣の認可を受けた場合にのみ、取引所金融商品市場の開設に関連する業務を行う会社を子会社とすることができることとされております。
このほか、株式会社東京証券取引所、株式会社大阪取引所、日本取引所自主規制法人及び株式会社日本証券クリアリング機構は、定款、業務規程、受託契約準則、業務方法書を変更する場合には、内閣総理大臣の認可が必要である旨、定められているなど、当社グループは法令による広範な規制の下、業務を行っております。
これらの規制は、有価証券の売買及び市場デリバティブ取引を公正かつ円滑にし、並びに投資者の保護に資することを目的としており、必ずしも当社の株主を保護することを目的とはしていないため、将来、何らかの理由により、業務上必要な認可が得られないような場合には、当社グループが必要とする施策を実行できず、事業機会を逸失するなど、当社グループの事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。
③ 当社の発行済株式の取得及び所有に係る制限等について
金融商品取引法において、金融商品取引所持株会社である当社が発行する株式につきましては、認可金融商品取引業協会、金融商品取引所、金融商品取引所持株会社、商品取引所、商品取引所持株会社又は地方公共団体その他政令で定める者を除いて、何人も、総株主の議決権の100分の20(その財務及び営業の方針の決定に対して重要な影響を与えることが推測される事実として内閣府令で定める事実がある場合には、100分の15)以上の数の議決権(取得又は保有の態様その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものを除きます。以下、「対象議決権」といいます。)を取得し、又は保有してはならないとされております。
また、総株主の議決権の100分の5を超える対象議決権の保有者となった者は、内閣府令で定めるところにより、対象議決権保有割合、保有の目的その他内閣府令で定める事項を記載した対象議決権保有届出書を、遅滞なく、内閣総理大臣に提出しなければならないものとされております。
④ 法改正による影響等について
当社グループの事業に関連する法規制の導入・改正・撤廃や法規制の執行に関する方針の変更は、直接的に又はその結果生じる市場環境の変化を通じて、当社グループに悪影響を及ぼす可能性があります。
例えば、規制内容の変更に伴う競争環境の変化や証券税制の変更は、当社グループの市場シェアや取引量の減少に繋がる可能性があります。
将来における法規制の変更内容及びそれが当社グループの事業に与える影響を予測することは困難であり、当社グループがコントロールしうるものでもありませんが、新たな規制等が実施された場合には、当社グループの業務遂行や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(3)収益構造の特徴等について
① 金融市場の動向による影響について
当社グループの営業収益のうち、「取引参加料金」及び「証券決済関係収入」(それぞれ2014年3月期の連結営業収益に占める割合が46.6%、17.5%)は有価証券やデリバティブ商品の売買代金・取引高の水準に、「上場関係収入」(同10.6%)は上場する企業の時価総額や資金調達額、新規上場会社数の水準などにそれぞれ大きく依拠しております。
したがって、当社グループの収益は、有価証券やデリバティブ商品の流通市場並びに有価証券の発行市場の動向、ひいては世界的な金融市場の動向や国内外の経済情勢の影響を大きく受けることとなります。
特に、上場会社の大多数は日本企業であることから、日本経済の状況が当社グループの業績に及ぼす影響は大きく、景気の低迷等により、流通市場及び発行市場を取り巻く環境が悪化し、現物市場及びデリバティブ市場における取引量、上場企業の時価総額、資金調達額等が減少した場合には、当社グループの業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
また、流通市場や発行市場の動向は、経済環境その他様々な要因により大きく変動する場合があるため、その動向を精緻に予測することは非常に困難です。
② 外国人投資家の動向による影響について
2013年1月~12月における外国人投資家の取引量は、株式の売買代金では5割程度を占め、デリバティブ取引の主力商品である日経225先物やTOPIX先物の取引高においては過半を超えるなど、重要な割合を占めております。
したがって、日本経済、日本企業一般の株価パフォーマンス又は為替レートの状況や規制強化等により、外国人投資家にとっての日本市場への投資魅力が減退し、取引量が減少することとなった場合には、当社グループの事業運営及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
③ システム投資について
近年のIT技術の発展により金融商品取引所もシステムの高度化が進んでおり、その安定性・処理性能等が市場間競争における優位性確保に大きな影響を及ぼす状況となっております。
当社グループでは、現物市場の売買システムとして、高速性・信頼性・拡張性を兼ね備えた「arrowhead」を、デリバティブ市場の取引システムとして、世界標準の取引機能と世界水準の注文処理性能を兼ね備えた「J-GATE」をそれぞれ稼働しております。
今後も、金融テクノロジーの発達に伴う投資手法の高度化・多様化等、刻々と変化を続ける利用者のニーズに適切に対応し、金融商品取引所としての競争力を維持していくためには、ITに関する設備投資を継続し、取引システム等の改良に努めていく必要があり、「arrowhead」については、2015年度に、「J-GATE」については、2016年度にそれぞれリプレースを予定しております。
しかしながら、これらの設備投資により、必ずしも直ちに収益が拡大するとは限らず、市況の悪化等により、コストに見合う収益を生み出すことができなかった場合には、当社グループの業績が圧迫されるとともに、その後における追加的な設備投資に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 自主規制機能について
投資者が取引所金融商品市場に安心して参加するためには、市場が公正で信頼できるものである必要があり、市場の公正性・信頼性を確保するためには、自主規制機能が適切に発揮されることが不可欠です。
当社グループの企業体としての利害と市場の公正性との間の利益相反問題の回避に万全を期するとともに、その実効性を確保するため、持株会社の傘下に市場運営会社(株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所)と自主規制法人(日本取引所自主規制法人)を置いており、日本取引所自主規制法人は株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所からの委託を受けて自主規制業務を行っております。
この自主規制業務の委託料については、金融商品取引法において、自主規制法人が委託を受けた自主規制業務を行うために適正かつ明確な算出方法が委託契約に定められていることが求められていることから、長期かつ固定的な金額を基本としております。
当社グループでは、自主規制機能は市場運営と密接不可分な市場開設者としての機能の根幹であり、市場についての一種の品質保証であるとともに、市場のブランドを維持向上させるものであると認識しており、中長期的に収益の獲得・向上に資するものであると考えておりますが、短期的には、自主規制機能の発揮が営利性の追求と相反する側面があるとともに、市場環境の悪化等により、当社グループの経営成績が順調に進展しない場合には、自主規制機能にかかる業務に必要な経営資源を投入した結果、当社グループの業績が圧迫される可能性があります。
また、金融商品取引所との比較において自主規制業務に関する負担が著しく低い私設取引システム(いわゆるPTS。以下、「PTS」といいます。)等との競争においては、コスト構造上、不利に働く可能性があります。
(4)取引システムについて
現物及びデリバティブの売買・清算並びにこれらに関連する業務は、システムを通じて処理されていることから、市場の安定性・信頼性を維持するためには、取引システムの安定稼働が必須の要件となっております。
また、近年、金融テクノロジーの発展に伴い、取引システムは高度化してきており、取引システムの性能が、取引所ビジネスにおける競争力の源泉となっております。
当社グループでは、過去にシステム障害やキャパシティの不足により売買停止に至ったことがありますが、将来、同様の事態が発生する可能性を完全に否定することはできません。
利用者の要望に適切に対応することができず、取引システムの性能が他の取引所等の提供するシステムに劣後することとなった場合又はシステム障害等の発生により、市場の信頼性が毀損した場合には、取引量が減少し、当社グループの事業、財政状態、経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(5)決済履行確保の仕組みについて
日本には東京証券取引所をはじめ、有価証券の売買を行うための金融商品取引所1が4つありますが、これらの取引所における有価証券の売買については、すべて株式会社日本証券クリアリング機構が清算業務を行っております。同社は、PTS2における有価証券の売買についても、清算業務の対象としております。また、大阪取引所における先物・オプション取引についても、同社が清算を行っており、さらには、店頭デリバティブ取引であるCDS取引及び金利スワップ取引並びに国債店頭取引も清算業務の対象としております。
株式会社日本証券クリアリング機構は清算機関として市場参加者が行った取引の債務を負担し、債権・債務の当事者となって、決済の履行を保証しております。これにより、市場参加者は取引相手方の信用リスクを意識せずに取引を行うことが可能となりますが、一方で、清算参加者が決済不履行を起こした場合でも、株式会社日本証券クリアリング機構には他の清算参加者との決済を履行する義務があります。
このため、同社では、清算参加者の決済不履行に伴い損失が生じた場合には、決済不履行を発生させた清算参加者の担保等によりその損失を補填する自己責任原則を基本としつつ、万が一不足が生じる場合には、株式会社日本証券クリアリング機構の自己資金を充てるほか、他の清算参加者にも負担を求める損失補償制度を設けております。
清算参加者が決済不履行を起こした場合、株式会社日本証券クリアリング機構は、当該清算参加者を当事者とする債務の引受け又は負担の停止並びに株式会社日本証券クリアリング機構が当該清算参加者に引き渡すべき有価証券及び金銭の引渡しを停止するとともに、引渡しを停止した有価証券及び金銭を、当該清算参加者の決済不履行の弁済に充当します。なお、株式会社日本証券クリアリング機構では、他の清算参加者との決済について、資金決済銀行に対して確保している流動性供給枠などを利用してこれを履行します。
以上の処理後においても、株式会社日本証券クリアリング機構の損失が解消されない場合には、以下に記載する方法により、損失の補填を行います。なお、この補填は、有価証券の売買、先物・オプション取引、CDS取引、金利スワップ取引及び国債店頭取引のそれぞれの清算に係る損失について、不履行清算参加者の清算資格に応じて、個別に行います。
決済不履行発生時の有価証券の売買及び先物・オプション取引の清算に係る損失については、次に掲げる順序により、補填を行います。
① 不履行清算参加者が預託している担保(清算基金3等の清算預託金や取引証拠金4)による補填
② 金融商品取引所等の損失補償による補填5
③ 株式会社日本証券クリアリング機構による補填
④ 不履行清算参加者以外の清算基金による補填(先物・オプション取引のみ)
⑤ 不履行清算参加者以外による相互保証
したがって、清算参加者の決済不履行により、株式会社日本証券クリアリング機構に損失が生じた場合で、上記①の対応によっても、同社の損失を補填しえない場合には、②については、損失補償契約に定められた金額(現物取引:104億円、先物・オプション取引:174億円)を上限として、株式会社東京証券取引所又は株式会社大阪取引所が補填を行うことにより、また、③については、株式会社日本証券クリアリング機構が証券取引等決済保証準備金として積み立てた金額(2014年3月末時点での金額は128億円)を上限として補填を行うことにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。
また、決済不履行発生時のCDS取引及び金利スワップ取引の清算に係る損失については、次に掲げる順序により、補填を行います。
① 不履行清算参加者が預託している担保(当初証拠金6及びCDS清算基金又は金利スワップ清算基金7)による補填
② 株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第一階層決済保証準備金)
③ 不履行清算参加者以外の清算参加者の清算基金及び株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第二階層決済保証準備金)
④ 不履行清算参加者以外の清算参加者の特別清算料8による補填
⑤ 破綻後における変動証拠金9等の累計が勝ち方の不履行清算参加者以外の清算参加者による補填
したがって、清算参加者のCDS取引又は金利スワップ取引に係る決済不履行により、株式会社日本証券クリアリング機構に損失が生じた場合で、上記①までの対応によっても、同社の損失を補填しえないときには、CDS取引及び金利スワップ取引それぞれの清算業務について、②については、株式会社日本証券クリアリング機構が第一階層決済保証準備金として積み立てている各20億円を上限として補填することにより、③については、株式会社日本証券クリアリング機構が第二階層決済保証準備金として積み立てている各20億円を上限として補填することにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。
なお、国債店頭取引についても、清算参加者の決済不履行に伴う損失が発生した場合、不履行清算参加者から預託を受けた当初証拠金等によってその損失を補填する制度を基本としつつ、万が一不足が生じる場合には、株式会社日本証券クリアリング機構の自己資金を充てるほか、原取引の相手方に対し事後的に損失の負担を求める等、不履行清算参加者以外の清算参加者が損失を補填する決済保証制度を設けておりますが、清算機関等に関する国際的な基準である「金融市場インフラのための原則」などの国際的な規制動向を踏まえたものとすべく、現在、清算基金制度の導入や不履行清算参加者以外の清算参加者による損失負担の具体的な方法の見直しを検討しているところであり、決済不履行時に株式会社日本証券クリアリング機構が補填する金額についても、今後決定することを予定しております。
(6)ライセンス契約について
① シカゴ・マーカンタイル取引所とのSPAN利用に関するライセンス契約について
株式会社日本証券クリアリング機構は、先物・オプション取引の証拠金を受け入れておりますが、証拠金計算方式として、シカゴ・マーカンタイル取引所が開発したSPAN方式を採用しております。
同方式を採用するに際し、シカゴ・マーカンタイル取引所との間でSPANの利用に関するライセンス契約を締結しておりますが、不測の事態により当該契約が解消された場合には、SPAN方式に代わる証拠金計算方式の採用に伴うシステム改造負担等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 株式会社日本経済新聞社等との日経平均株価利用許諾契約について
当社グループのデリバティブ市場の主力商品である日経平均株価先物、日経225mini及び日経平均株価オプションに関しては、原資産である日経平均株価の利用許諾について株式会社日本経済新聞社との間で利用許諾契約を締結しております。
株式会社大阪取引所は株式会社日経新聞社に対し、日経平均株価先物取引、日経225mini及び日経平均株価オプション取引に関する利用許諾契約に基づき、契約基本料の他、取引高に応じて月額対価を支払っております。当該契約は、一方の当事者による契約義務不履行の場合や、議決権の過半数の株式譲渡又は取得、合併といった事由による当該契約関連事業の支配権に重大な変動が生じた場合等には、他方の当事者が通知を行うことにより当該契約を解約することができる内容となっておりますが、一方の当事者が契約を終了させる通知を行わない場合は、現在締結している契約の満了日である2015年12月末から5年間ずつ自動更新されることとなっております。また、株式会社日経新聞社はやむを得ない事由が生じたときは、株式会社大阪取引所の了承を条件に日経平均株価の編集及び公表を廃止することができます。仮に上記の事由により、当該契約が終了した場合、株式会社大阪取引所は日経平均株価先物取引、日経225mini及び日経平均株価オプション取引の中断、あるいは中止を余儀なくされ、この場合、当社グループの経営成績が大きな影響を受ける可能性があります。
その他、当該契約に関して、当社グループの経営成績が大きな影響を受ける可能性がある事態が生じる場合としては、以下のようなものが考えられます。
・ 利用許諾料については当該契約の他に別途締結している覚書により、契約基本料の他、1先物取引及び1オプション取引当たり一定額を月額対価として株式会社大阪取引所が株式会社日経新聞社へ支払うこととなっておりますが、当該覚書の内容については、株式会社大阪取引所と株式会社日経新聞社が協議のうえ、変更される可能性があります。当該利用許諾料が大幅に変更された場合には、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
・ 当該契約は独占契約ではないため、今後、国内外において株式会社大阪取引所以外の者が株式会社日経新聞社との間で日経平均株価利用許諾契約を締結し、利用権を取得する可能性があります。株式会社大阪取引所以外の者が日経平均株価の利用権を取得し国内外において日経平均株価先物・オプション取引を行い、その利便性が高い等の事情により大阪取引所市場の取引高が減少した場合、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(7)競合について
① 現物市場に関する他の証券取引所、取引所外取引との競合について
現物取引及び上場企業の誘致等における競合は激しさを増してきており、市場の流動性、取引の執行にかかるスピード・コスト、取引システムの性能、取引参加者や上場会社に提供される商品やサービスの多様性、規制環境など、様々な分野において、今後も競合の激化は進展していくものと認識しております。
現状、当社グループにおける株式売買代金は、2013年1~12月における国内上場株式の売買代金の9割超を占めており、日本における取引所外取引(PTS及び証券会社内部のクロッシング等)は1割に満たず、諸外国と比較すると低い水準となっておりますが、近年、PTSにおける取引量は増加傾向にあり、将来的には当社グループのシェアを奪う脅威となる可能性があります。
当社グループがこうした競争環境に適切に対応できず、市場の流動性、取引量、上場会社数等が減少した場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
また、近年、世界的に取引所業界は激しい価格競争にも晒されております。競合他社が当社グループよりも低い手数料等でのサービスの提供を開始し、当社グループにおいても、取引や上場にかかる手数料の引下げ等を行う必要が生じた場合には、当社グループの収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
② シンガポール取引所の日経平均株価先物取引・オプション取引との競合について
大阪取引所市場における日経平均株価先物取引は主にシンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引と競合しております。シンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引は、大阪取引所市場における日経平均株価先物取引と同じく、我が国株式市場を代表する指数である日経平均株価を対象とした株価指数先物取引です。
過去3年間の大阪取引所市場及びシンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引の取引高は、次のとおりです。
(注1)大阪取引所市場及びシンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引には、それぞれ日経225mini及びMini Nikkei 225 Index Futuresを含みます。ただし、これらは、取引金額換算では大阪取引所市場における日経平均株価先物取引の10分の1であるため、実際の取引高の10分の1としております。
(注2)シンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引(Mini Nikkei 225 Index Futuresを除きます。)は、取引金額換算では大阪取引所市場における日経平均株価先物取引の半分であるため、実際の取引高の半分を記載しております。
指数オプション取引に関しては、大阪取引所市場における日経平均株価オプション取引が主に競合している商品として、シンガポール取引所市場の日経平均株価オプション取引があります。
過去3年間の大阪取引所市場及びシンガポール取引所市場の日経平均株価オプション取引の取引高は、次のとおりです。
(注)シンガポール取引所市場の日経平均株価オプション取引は、取引換算額では大阪取引所市場における日経平均株価オプション取引の半分であるため、実際の取引高の半分を記載しております。
2013年度の大阪取引所市場における日経平均先物取引及び日経平均株価オプション取引の取引高は、シンガポール取引所市場のそれを上回っておりますが、今後の市場参加者の動向によっては、大阪取引所市場の利用者がシンガポール取引所市場に移ることで大阪取引所市場における取引高が減少し、当社グループの収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 取引所間の経営統合について
取引所業界においては、2007年から2008年にかけて、欧米を中心にNYSEグループとユーロネクスト、ロンドン証券取引所とイタリア取引所、NasdaqとOMX等の国境を越えた取引所間の合従連衡の動きが見られました。
その後しばらくは目立った動きは見られませんでしたが、2010年10月にシンガポール取引所とオーストラリア証券取引所が経営統合を発表すると、2011年2月にはロンドン証券取引所グループとカナダのTMXグループ、ドイツ取引所とNYSEユーロネクストが相次いで経営統合を発表し、さらにはこれらの経営統合案に対抗するかたちで、カナダの銀行や年金基金から構成されるメイプル・グループがTMXグループの買収案を、Nasdaq OMXグループとインターコンチネンタル取引所が共同でNYSEユーロネクストの買収案を提示するなど、国際的な取引所再編を巡る動きが再燃しました。
しかしながら、シンガポール取引所とオーストラリア証券取引所は、オーストラリアの財務相が本経営統合提案を正式に却下したことから統合を断念し、また、Nasdaq OMX・インターコンチネンタル取引所は規制当局から承認が得られないことが確実になったこと、ロンドン証券取引所グループは株主の承認が得られない可能性が高まったことから、それぞれ提案を取り下げております。
結果としては、国境を越えた取引所間の統合は実現されませんでしたが、2012年12月にはインターコンチネンタル取引所によるNYSEユーロネクストの買収が発表され、2013年11月に同買収が完了しており、今後も国際的な取引所間の再編が起こる可能性があります。
他の取引所の経営統合による当社グループの事業への影響を予測することは困難ですが、国際的な取引所間の統合や提携が実現した場合には、より優れたサービスの提供やコスト削減につながる可能性があり、当社グループが競争優位性を失う可能性があるとともに、当社グループの国際的なプレゼンスの低下に繋がる懸念もあります。
(8)危機管理への取組みについて
当社グループでは、市場開設者という社会インフラとしての責務を果たすべく、様々なリスクが発現した場合においても、事業を可能な限り継続し、止むを得ず中断する場合においても可能な限り早期に再開できるよう、BCP(緊急時事業継続計画)を策定しており、堅実かつ安定的な事業継続体制の整備に努めております。
しかしながら、地震・風水害・火災等の自然災害、電力・通信等の社会インフラの停止、物理的破壊行為・サイバーテロ等のテロ行為又は新型インフルエンザを始めとする疫病の蔓延等により、想定を上回る被害を受け、事業を長期的に中断せざるをえないこととなった場合には、甚大な経済的損失を被るとともに、社会的信用の低下等、深刻な事態をもたらす可能性があります。
また、事業の中断に至らなかった場合においても、被害の状況によっては、多額の回復費用が必要となり、当社グループの財政状態、経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(9)訴訟に関するリスク等について
① 法令遵守に関するリスクについて
当社グループでは、取引参加者、上場会社等の企業情報や個人情報を保有しているほか、様々な経営情報等の内部情報を保有しております。当社グループの多くの役職員は、金融商品取引法においても秘密保持義務が課せられており、万一、役職員の故意又は過失により、情報漏えいといった事態が発生した場合には、監督官庁から処分等を科される可能性があるとともに、損害を被った市場利用者等から損害賠償等を求められる可能性もあります。
当社グループの事業は公共インフラとしての信頼性に支えられており、また、上場会社に対して、適時適切な情報開示の徹底や内部者取引を未然に防止するための体制整備を要請する立場にもあることから、当社グループ自らが範となり、他の上場会社に求めている内容と同等以上の情報管理・適時開示体制を構築していく必要があります。
したがって、当社グループでは、情報漏えいをはじめ、役職員の故意又は過失による法令違反行為を防止するための取組みに注力しておりますが、これらの取組みがすべての法令違反行為の発見・防止に対して有効であるとは限らず、役職員による法令違反行為を常に排除できるとは限りません。
役職員による法令違反行為が現実のものとなった場合には、監督官庁からの行政処分や市場利用者等からの損害賠償請求等、行政上又は司法上の制裁が科される可能性があるとともに、社会的信用の低下等により、当社グループの事業運営に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
② 訴訟に関するリスクについて
当社グループの事業は様々な法的責任に晒されており、これらには、役職員等又はコンピュータ・システムによる業務運営の中で、過誤が発生するリスク(いわゆるオペレーショナル・リスク)の顕在化による法的責任も含まれます。
オペレーショナル・リスクには、例えば次のようなものが考えられます。
・ 役職員が法令や当社グループの定款、業務規程その他の諸規則等に定められた適正な業務遂行(必要な市場規制措置等)を過誤等により怠る又は誤った措置を行うリスク
・ 障害や大規模災害によるシステム停止又はシステムに誤作動が発生するリスク
・ 役職員又はシステム運用業務委託先の過誤等により取引が中断されるリスク
・ 当社グループが算出を行っているTOPIX等の株価指数や統計情報等、配信を行う各種情報に誤謬が生じるリスク
上記のリスクが顕在化した場合には、監督官庁から処分等を科される可能性があるとともに、損害を被った市場利用者から損害賠償等を求められる可能性もあります。
当社グループでは、規則や契約等において、利用者が損害を受けた場合であっても、当社グループに故意又は重過失がある場合を除き、損害賠償の責を負わない旨を定めておりますが、オペレーショナル・リスクの顕在化を含むなんらかの要因により訴訟が提起された場合には、訴訟費用が多額にのぼる可能性があるとともに、訴訟において当社グループに不利な決定がなされた場合には、訴訟に伴う損害賠償のみならず、社会的な信用の低下等を通じて、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ みずほ証券株式会社との訴訟について
2005年12月8日に発生したみずほ証券株式会社によるジェイコム株式会社株式の誤発注事件に関して、みずほ証券株式会社から提起されておりました、当社の連結子会社である株式会社東京証券取引所に対する415億円の損害賠償請求事件について、2013年7月24日、東京高等裁判所より、同社に賠償金(107億円及び遅延損害金)の支払いを命ずる第一審判決の一部を変更するとともに、同判決に基づく強制執行を免れるために株式会社東京証券取引所が支払った132億円と本判決による認容額128億円との差額3億円を同社に返還することをみずほ証券株式会社に命ずる旨の控訴審判決が言い渡されました。
当判決を不服として、最高裁判所に対し、みずほ証券株式会社が上告の提起及び上告受理の申立てを、株式会社東京証券取引所が附帯上告の提起及び附帯上告受理の申立てを行っており、現在係争中であります。
訴訟の結果によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10)レピュテーショナル・リスクについて
当社グループでは、社会的な信用力やブランド力を、競争力の源泉の一つとして認識しております。
当社グループの社会的な信用は、システム及び自主規制業務等における過誤等、当社グループに起因する様々な要因のみならず、取引参加者や上場会社等の市場参加者又はその他の第三者による不法行為等によっても毀損される可能性があります。
当社グループの社会的な信用の毀損は、取引高の減少や発行会社の当社グループが開設する市場への上場を妨げる要因となる可能性があり、ひいては、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(11)保有するシンガポール取引所株式について
株式会社東京証券取引所グループは、2007年6月に、シンガポール取引所との緊密な提携関係の構築を目的として、シンガポール取引所に上場する同社株式53,051千株を取得(発行済株式の4.99%に相当。取得金額374億円)しましたが、同社株式の下落に伴い、2009年3月に207億円の投資有価証券評価損を計上しております。
当社グループでは、今後もシンガポール取引所との間で、当社グループの収益の向上に寄与する連携等について協議を進めていく方針ですが、シンガポール取引所株式の株価や為替の変動は、当社グループの純資産や包括利益に影響を及ぼすとともに、再度、評価損の計上を余儀なくされるような状況となった場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、必ずしもリスク要因には該当しないと考えられる事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。
なお、記載事項のうち将来に関する事項は、提出日現在において入手可能な情報等に基づいて判断したものであります。
(1)経営体制の特徴等について
① 企業理念等について
取引所金融商品市場の運営については、金融商品取引法において、「有価証券の売買及び市場デリバティブ取引を公正かつ円滑にし、並びに投資者の保護に資するよう運営されなければならない」と規定されており、当社グループでは、以下の内容を企業理念として、事業を遂行いたします。
・ 私たちは、公共性・信頼性の確保、利便性・効率性・透明性の高い市場基盤の構築、創造的・魅力的なサービスの提供により、市場の持続的な発展を図り、豊かな社会の実現に貢献します。
・ 私たちは、これらを通じて、投資者を始めとする市場利用者の支持及び信頼の増大が図られ、その結果として、利益がもたらされるものと考えます。
② 取締役会の構成について
当社では、経営の監視・監督機能と業務執行機能を制度上明確に分離し、経営監視・監督機能の強化及び経営の透明性の向上を図るため、委員会設置会社形態を採用しており、経営監視・監督機能の中心的役割を担う取締役会は、経営の透明性及びアカウンタビリティの向上を図り、業務執行の妥当性を監督する機能を強化する観点から、過半を社外取締役で構成しております(2014年3月31日現在の取締役14名中、8名が社外取締役)。
当社では、上場会社の役員等、法律専門家、公認会計士及び学識経験者を社外取締役として選任しており、各人はそれぞれの分野で高い見識を認められた人材であることから、経営に多面的な社外の視点を積極的に取り入れることができる充実した体制が構築されているものと認識しております。
また、公共性・公益性の高い清算・決済インフラの提供主体として、中立的かつ利用者の意見を反映させた業務運営を実現する観点から、株式会社日本証券クリアリング機構の取締役会についても社外取締役を中心とした構成としており、過半を参加者である証券会社や公益団体から選任しております。
当社グループは、収益の多くを証券会社や上場会社から得ていることから、当社グループと証券会社や上場会社は利害が対立する可能性がありますが、当社グループでは、市場の利用者である証券会社や上場会社等のステークホルダーの意見等を経営に反映していくことが、市場全体の安全性・利便性・効率性の維持・改善に寄与し、ひいては当社グループの企業価値の向上にも資するものと認識しております。
③ 持株会社であることについて
当社は持株会社であるため、収入は、経営管理料収入や子会社や関連会社からの配当金に大きく依存しますが、法律上又は事業上の制約により、当社への子会社や関連会社からの配当金の支払いは制限される可能性があります。
当社の子会社である日本取引所自主規制法人は、金融商品取引法において、営利の目的をもって業務を行ってはならない旨、規定されていることから配当を行うことができず、また、子会社である株式会社日本証券クリアリング機構は、清算機関としての企業の継続性及び決済履行保証スキーム(「(5)決済履行確保の仕組みについて」参照)の機能確保の観点から、一定の剰余金を確保する必要があります。(「金融市場インフラのための原則」(2012年4月:国際決済銀行・支払決済システム委員会、証券監督者国際機構専門委員会の共同報告書)においても、「(より複雑なリスク特性を伴う清算業務に従事しているCCPは)極端であるが現実に起こり得る市場環境において最大の総信用エクスポージャーをもたらす可能性がある2先の参加者とその関係法人の破綻を含み、かつこれに限定されない広範な潜在的ストレスシナリオを十分にカバーするだけの追加的な財務資源を保持すべきである。」との原則が掲げられております。)
当社グループは、配当について「取引所としての競争力強化と自主規制機能の向上のためのシステム開発や清算機関としてのリスクへの備えを目的とした内部留保の重要性に留意しつつ、安定的かつ継続的な配当を実施することを基本とし、具体的には、配当性向を40%程度とすること」を目標としておりますが、当社の子会社や関連会社が、当社に配当を行うだけの十分な収益やキャッシュ・フローを確保できなかった場合には、当社の株主に対する配当が困難もしくは不可能となる可能性があります。
(2)法令等による規制等について
① 免許制の事業であることについて
当社グループは金融商品取引法及び関連する諸法令の規制の下、事業を行っております。
当社は、金融商品取引法が定める内閣総理大臣の認可(以下、「取引所持株会社認可」といいます。)を受けた「金融商品取引所持株会社」であり、当社の子会社である株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所は、同法が定める内閣総理大臣の免許(以下、「取引所業免許」といいます。)を受けて、取引所金融商品市場を開設・運営する「金融商品取引所」であります。なお、株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所は、同法が定める内閣総理大臣の認可(以下、「自主規制業務の委託認可」といいます。)を受けて、自主規制業務を日本取引所自主規制法人に委託しており、日本取引所自主規制法人は同法が定める内閣総理大臣の認可(以下、「自主規制業務認可」といいます。)を受けて、自主規制業務を行っております。
また、株式会社日本証券クリアリング機構は、同法が定める内閣総理大臣の免許を受けて、金融商品取引清算機関として金融商品債務引受業等を行っております。
さらに、金融商品取引清算機関の総株主の議決権の100分の20(その財務及び営業の方針の決定に対して重要な影響を与えることが推測される事実として内閣府令で定める事実がある場合には、100分の15)以上の数の議決権を取得し、若しくは保有しようとする場合、あらかじめ、内閣総理大臣の認可を受けなければならないとされており、当社及び株式会社日本証券クリアリング機構は当該認可を受けております。
現時点におきましては、上記免許又は認可が取消しとなるような事由は発生しておりませんが、将来、何らかの理由により、同法が定める取消事由等に該当し、内閣総理大臣より免許又は認可の取消処分を受けることとなった場合又は業務の全部若しくは一部の停止等の処分を受けることとなった場合等には、当社グループの事業運営及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
許認可等の名称 | 根拠条文 | 会社名 | 有効期限 | 免許又は認可の取消事由 |
取引所持株会社認可 | 金融商品取引法 第106条の10第1項 | 株式会社日本取引所グループ | なし | 同法 第106条の26、第106条の28第1項 |
取引所業免許 | 同法 第80条 | 株式会社東京証券取引所 株式会社大阪取引所 | なし | 同法 第134条第1項、第148条、第152条第1項 |
自主規制業務の委託認可 | 同法 第85条第1項 | 株式会社東京証券取引所 株式会社大阪取引所 | なし | 同法 第153条の2 |
自主規制業務認可 | 同法 第102条の14 | 日本取引所自主規制法人 | なし | 同法 第153条の4 |
金融商品債務引受業免許 | 同法 第156条の2 | 株式会社日本証券クリアリング機構 | なし | 同法 第156条の17第1項、第2項 |
金融商品取引清算機関の主要株主認可 | 同法 第156条の5の5 | 株式会社日本取引所グループ 株式会社日本証券クリアリング機構 | なし | 同法 第156条の5の9第1項 |
② 業務内容の制限等について
金融商品取引法において、金融商品取引所持株会社である当社は、子会社である株式会社金融商品取引所等の経営管理を行うこと及びこれに附帯する業務のほか、他の業務を行うことができないとされており、金融商品取引所である株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所は、取引所金融商品市場の開設及びこれに附帯する業務以外の業務を行うこと、自主規制法人である日本取引所自主規制法人は、自主規制業務及びこれに附帯する業務以外の業務を行うことを禁止されており、業務範囲が制限されております。同様に、金融商品取引清算機関である株式会社日本証券クリアリング機構も、金融商品債務引受業等及びこれに附帯する業務のほか、他の業務を営むことができないとされており、内閣総理大臣の承認を受けた場合にのみ、金融商品債務引受業に関連する業務を行うことができるとされております。
また、子会社につきましても、金融商品取引所持株会社及び金融商品取引所は、取引所金融商品市場の開設及びこれに附帯する業務を行う会社以外の会社を子会社としてはならないとされており、内閣総理大臣の認可を受けた場合にのみ、取引所金融商品市場の開設に関連する業務を行う会社を子会社とすることができることとされております。
このほか、株式会社東京証券取引所、株式会社大阪取引所、日本取引所自主規制法人及び株式会社日本証券クリアリング機構は、定款、業務規程、受託契約準則、業務方法書を変更する場合には、内閣総理大臣の認可が必要である旨、定められているなど、当社グループは法令による広範な規制の下、業務を行っております。
これらの規制は、有価証券の売買及び市場デリバティブ取引を公正かつ円滑にし、並びに投資者の保護に資することを目的としており、必ずしも当社の株主を保護することを目的とはしていないため、将来、何らかの理由により、業務上必要な認可が得られないような場合には、当社グループが必要とする施策を実行できず、事業機会を逸失するなど、当社グループの事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。
③ 当社の発行済株式の取得及び所有に係る制限等について
金融商品取引法において、金融商品取引所持株会社である当社が発行する株式につきましては、認可金融商品取引業協会、金融商品取引所、金融商品取引所持株会社、商品取引所、商品取引所持株会社又は地方公共団体その他政令で定める者を除いて、何人も、総株主の議決権の100分の20(その財務及び営業の方針の決定に対して重要な影響を与えることが推測される事実として内閣府令で定める事実がある場合には、100分の15)以上の数の議決権(取得又は保有の態様その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものを除きます。以下、「対象議決権」といいます。)を取得し、又は保有してはならないとされております。
また、総株主の議決権の100分の5を超える対象議決権の保有者となった者は、内閣府令で定めるところにより、対象議決権保有割合、保有の目的その他内閣府令で定める事項を記載した対象議決権保有届出書を、遅滞なく、内閣総理大臣に提出しなければならないものとされております。
④ 法改正による影響等について
当社グループの事業に関連する法規制の導入・改正・撤廃や法規制の執行に関する方針の変更は、直接的に又はその結果生じる市場環境の変化を通じて、当社グループに悪影響を及ぼす可能性があります。
例えば、規制内容の変更に伴う競争環境の変化や証券税制の変更は、当社グループの市場シェアや取引量の減少に繋がる可能性があります。
将来における法規制の変更内容及びそれが当社グループの事業に与える影響を予測することは困難であり、当社グループがコントロールしうるものでもありませんが、新たな規制等が実施された場合には、当社グループの業務遂行や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(3)収益構造の特徴等について
① 金融市場の動向による影響について
当社グループの営業収益のうち、「取引参加料金」及び「証券決済関係収入」(それぞれ2014年3月期の連結営業収益に占める割合が46.6%、17.5%)は有価証券やデリバティブ商品の売買代金・取引高の水準に、「上場関係収入」(同10.6%)は上場する企業の時価総額や資金調達額、新規上場会社数の水準などにそれぞれ大きく依拠しております。
したがって、当社グループの収益は、有価証券やデリバティブ商品の流通市場並びに有価証券の発行市場の動向、ひいては世界的な金融市場の動向や国内外の経済情勢の影響を大きく受けることとなります。
特に、上場会社の大多数は日本企業であることから、日本経済の状況が当社グループの業績に及ぼす影響は大きく、景気の低迷等により、流通市場及び発行市場を取り巻く環境が悪化し、現物市場及びデリバティブ市場における取引量、上場企業の時価総額、資金調達額等が減少した場合には、当社グループの業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
また、流通市場や発行市場の動向は、経済環境その他様々な要因により大きく変動する場合があるため、その動向を精緻に予測することは非常に困難です。
② 外国人投資家の動向による影響について
2013年1月~12月における外国人投資家の取引量は、株式の売買代金では5割程度を占め、デリバティブ取引の主力商品である日経225先物やTOPIX先物の取引高においては過半を超えるなど、重要な割合を占めております。
したがって、日本経済、日本企業一般の株価パフォーマンス又は為替レートの状況や規制強化等により、外国人投資家にとっての日本市場への投資魅力が減退し、取引量が減少することとなった場合には、当社グループの事業運営及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
③ システム投資について
近年のIT技術の発展により金融商品取引所もシステムの高度化が進んでおり、その安定性・処理性能等が市場間競争における優位性確保に大きな影響を及ぼす状況となっております。
当社グループでは、現物市場の売買システムとして、高速性・信頼性・拡張性を兼ね備えた「arrowhead」を、デリバティブ市場の取引システムとして、世界標準の取引機能と世界水準の注文処理性能を兼ね備えた「J-GATE」をそれぞれ稼働しております。
今後も、金融テクノロジーの発達に伴う投資手法の高度化・多様化等、刻々と変化を続ける利用者のニーズに適切に対応し、金融商品取引所としての競争力を維持していくためには、ITに関する設備投資を継続し、取引システム等の改良に努めていく必要があり、「arrowhead」については、2015年度に、「J-GATE」については、2016年度にそれぞれリプレースを予定しております。
しかしながら、これらの設備投資により、必ずしも直ちに収益が拡大するとは限らず、市況の悪化等により、コストに見合う収益を生み出すことができなかった場合には、当社グループの業績が圧迫されるとともに、その後における追加的な設備投資に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 自主規制機能について
投資者が取引所金融商品市場に安心して参加するためには、市場が公正で信頼できるものである必要があり、市場の公正性・信頼性を確保するためには、自主規制機能が適切に発揮されることが不可欠です。
当社グループの企業体としての利害と市場の公正性との間の利益相反問題の回避に万全を期するとともに、その実効性を確保するため、持株会社の傘下に市場運営会社(株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所)と自主規制法人(日本取引所自主規制法人)を置いており、日本取引所自主規制法人は株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所からの委託を受けて自主規制業務を行っております。
この自主規制業務の委託料については、金融商品取引法において、自主規制法人が委託を受けた自主規制業務を行うために適正かつ明確な算出方法が委託契約に定められていることが求められていることから、長期かつ固定的な金額を基本としております。
当社グループでは、自主規制機能は市場運営と密接不可分な市場開設者としての機能の根幹であり、市場についての一種の品質保証であるとともに、市場のブランドを維持向上させるものであると認識しており、中長期的に収益の獲得・向上に資するものであると考えておりますが、短期的には、自主規制機能の発揮が営利性の追求と相反する側面があるとともに、市場環境の悪化等により、当社グループの経営成績が順調に進展しない場合には、自主規制機能にかかる業務に必要な経営資源を投入した結果、当社グループの業績が圧迫される可能性があります。
また、金融商品取引所との比較において自主規制業務に関する負担が著しく低い私設取引システム(いわゆるPTS。以下、「PTS」といいます。)等との競争においては、コスト構造上、不利に働く可能性があります。
(4)取引システムについて
現物及びデリバティブの売買・清算並びにこれらに関連する業務は、システムを通じて処理されていることから、市場の安定性・信頼性を維持するためには、取引システムの安定稼働が必須の要件となっております。
また、近年、金融テクノロジーの発展に伴い、取引システムは高度化してきており、取引システムの性能が、取引所ビジネスにおける競争力の源泉となっております。
当社グループでは、過去にシステム障害やキャパシティの不足により売買停止に至ったことがありますが、将来、同様の事態が発生する可能性を完全に否定することはできません。
利用者の要望に適切に対応することができず、取引システムの性能が他の取引所等の提供するシステムに劣後することとなった場合又はシステム障害等の発生により、市場の信頼性が毀損した場合には、取引量が減少し、当社グループの事業、財政状態、経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(5)決済履行確保の仕組みについて
日本には東京証券取引所をはじめ、有価証券の売買を行うための金融商品取引所1が4つありますが、これらの取引所における有価証券の売買については、すべて株式会社日本証券クリアリング機構が清算業務を行っております。同社は、PTS2における有価証券の売買についても、清算業務の対象としております。また、大阪取引所における先物・オプション取引についても、同社が清算を行っており、さらには、店頭デリバティブ取引であるCDS取引及び金利スワップ取引並びに国債店頭取引も清算業務の対象としております。
株式会社日本証券クリアリング機構は清算機関として市場参加者が行った取引の債務を負担し、債権・債務の当事者となって、決済の履行を保証しております。これにより、市場参加者は取引相手方の信用リスクを意識せずに取引を行うことが可能となりますが、一方で、清算参加者が決済不履行を起こした場合でも、株式会社日本証券クリアリング機構には他の清算参加者との決済を履行する義務があります。
このため、同社では、清算参加者の決済不履行に伴い損失が生じた場合には、決済不履行を発生させた清算参加者の担保等によりその損失を補填する自己責任原則を基本としつつ、万が一不足が生じる場合には、株式会社日本証券クリアリング機構の自己資金を充てるほか、他の清算参加者にも負担を求める損失補償制度を設けております。
清算参加者が決済不履行を起こした場合、株式会社日本証券クリアリング機構は、当該清算参加者を当事者とする債務の引受け又は負担の停止並びに株式会社日本証券クリアリング機構が当該清算参加者に引き渡すべき有価証券及び金銭の引渡しを停止するとともに、引渡しを停止した有価証券及び金銭を、当該清算参加者の決済不履行の弁済に充当します。なお、株式会社日本証券クリアリング機構では、他の清算参加者との決済について、資金決済銀行に対して確保している流動性供給枠などを利用してこれを履行します。
以上の処理後においても、株式会社日本証券クリアリング機構の損失が解消されない場合には、以下に記載する方法により、損失の補填を行います。なお、この補填は、有価証券の売買、先物・オプション取引、CDS取引、金利スワップ取引及び国債店頭取引のそれぞれの清算に係る損失について、不履行清算参加者の清算資格に応じて、個別に行います。
決済不履行発生時の有価証券の売買及び先物・オプション取引の清算に係る損失については、次に掲げる順序により、補填を行います。
① 不履行清算参加者が預託している担保(清算基金3等の清算預託金や取引証拠金4)による補填
② 金融商品取引所等の損失補償による補填5
③ 株式会社日本証券クリアリング機構による補填
④ 不履行清算参加者以外の清算基金による補填(先物・オプション取引のみ)
⑤ 不履行清算参加者以外による相互保証
したがって、清算参加者の決済不履行により、株式会社日本証券クリアリング機構に損失が生じた場合で、上記①の対応によっても、同社の損失を補填しえない場合には、②については、損失補償契約に定められた金額(現物取引:104億円、先物・オプション取引:174億円)を上限として、株式会社東京証券取引所又は株式会社大阪取引所が補填を行うことにより、また、③については、株式会社日本証券クリアリング機構が証券取引等決済保証準備金として積み立てた金額(2014年3月末時点での金額は128億円)を上限として補填を行うことにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。
1 有価証券の売買を行うための金融商品取引所:東京証券取引所、名古屋証券取引所、札幌証券取引所及び福岡証券取引所 2 PTS:SBIジャパンネクスト証券株式会社及びチャイエックス・ジャパン株式会社が運営するPTS 3 清算基金:清算参加者の株式会社日本証券クリアリング機構に対する債務の履行を確保するため、清算参加者に預託を義務付けているものです。その所要額は、例えば、有価証券の売買については、DVP決済を採用していることにより元本リスクが排除されていることを踏まえ、過去の価格変動及び各清算参加者の未決済残高の実績に基づき、再構築費用リスクをカバーするように計算されます。 4 取引証拠金:清算参加者の株式会社日本証券クリアリング機構に対する先物・オプション取引に係る債務の履行を確保するため、清算参加者に預託を義務付けているもので、その所要額は、先物・オプション取引の建玉について、SPAN®※で計算した額から、ネット・オプション価値の総額を差し引いて得た額以上となります。 ※ SPAN® :CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)が開発した証拠金計算方法で、The Standard Portfolio Analysis of Riskの略。先物・オプション取引全体の建玉から生じるリスクに応じて証拠金額が計算されます。
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また、決済不履行発生時のCDS取引及び金利スワップ取引の清算に係る損失については、次に掲げる順序により、補填を行います。
① 不履行清算参加者が預託している担保(当初証拠金6及びCDS清算基金又は金利スワップ清算基金7)による補填
② 株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第一階層決済保証準備金)
③ 不履行清算参加者以外の清算参加者の清算基金及び株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第二階層決済保証準備金)
④ 不履行清算参加者以外の清算参加者の特別清算料8による補填
⑤ 破綻後における変動証拠金9等の累計が勝ち方の不履行清算参加者以外の清算参加者による補填
したがって、清算参加者のCDS取引又は金利スワップ取引に係る決済不履行により、株式会社日本証券クリアリング機構に損失が生じた場合で、上記①までの対応によっても、同社の損失を補填しえないときには、CDS取引及び金利スワップ取引それぞれの清算業務について、②については、株式会社日本証券クリアリング機構が第一階層決済保証準備金として積み立てている各20億円を上限として補填することにより、③については、株式会社日本証券クリアリング機構が第二階層決済保証準備金として積み立てている各20億円を上限として補填することにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。
なお、国債店頭取引についても、清算参加者の決済不履行に伴う損失が発生した場合、不履行清算参加者から預託を受けた当初証拠金等によってその損失を補填する制度を基本としつつ、万が一不足が生じる場合には、株式会社日本証券クリアリング機構の自己資金を充てるほか、原取引の相手方に対し事後的に損失の負担を求める等、不履行清算参加者以外の清算参加者が損失を補填する決済保証制度を設けておりますが、清算機関等に関する国際的な基準である「金融市場インフラのための原則」などの国際的な規制動向を踏まえたものとすべく、現在、清算基金制度の導入や不履行清算参加者以外の清算参加者による損失負担の具体的な方法の見直しを検討しているところであり、決済不履行時に株式会社日本証券クリアリング機構が補填する金額についても、今後決定することを予定しております。
6 当初証拠金:各清算参加者の株式会社日本証券クリアリング機構に対するCDS取引又は金利スワップ取引に係る債務の履行を確保するため、清算参加者に預託を義務付けているもので、その所要額は、それぞれの取引について清算参加者が破綻した場合に、そのポジション処理が完了するまでの間に価格(金利スワップ取引についてはイールド・カーブ)が変動することにより想定される損失額に、一定のリスクをカバーする額を加算して計算されます。 7 CDS清算基金・金利スワップ清算基金:各清算参加者の株式会社日本証券クリアリング機構に対するCDS清算業務又は金利スワップ取引清算業務に係る債務(他の清算参加者の決済不履行により株式会社日本証券クリアリング機構に生じた損失を補填するために負担する債務を含みます)に充てる目的で預託を義務付けているものです。その所要額は、極端ではあるが現実に起こりうる市場環境下において複数の清算参加者が決済不履行を起こした場合等に、当該不履行清算参加者が預託する証拠金等が不足することで発生する損失をカバーするよう計算されます。 8 不履行清算参加者以外の清算参加者の特別清算料:不履行清算参加者以外の清算参加者が、各清算参加者の清算基金所要額を上限として補填します。 9 変動証拠金:各清算参加者のポジションについて、日々算出する正味現在価値の前日からの変動分を、日々、変動証拠金として現金により授受します。変動分が負となる清算参加者は株式会社日本証券クリアリング機構に支払い、正となる清算参加者は株式会社日本証券クリアリング機構から受け取ります。 |
(6)ライセンス契約について
① シカゴ・マーカンタイル取引所とのSPAN利用に関するライセンス契約について
株式会社日本証券クリアリング機構は、先物・オプション取引の証拠金を受け入れておりますが、証拠金計算方式として、シカゴ・マーカンタイル取引所が開発したSPAN方式を採用しております。
同方式を採用するに際し、シカゴ・マーカンタイル取引所との間でSPANの利用に関するライセンス契約を締結しておりますが、不測の事態により当該契約が解消された場合には、SPAN方式に代わる証拠金計算方式の採用に伴うシステム改造負担等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 株式会社日本経済新聞社等との日経平均株価利用許諾契約について
当社グループのデリバティブ市場の主力商品である日経平均株価先物、日経225mini及び日経平均株価オプションに関しては、原資産である日経平均株価の利用許諾について株式会社日本経済新聞社との間で利用許諾契約を締結しております。
株式会社大阪取引所は株式会社日経新聞社に対し、日経平均株価先物取引、日経225mini及び日経平均株価オプション取引に関する利用許諾契約に基づき、契約基本料の他、取引高に応じて月額対価を支払っております。当該契約は、一方の当事者による契約義務不履行の場合や、議決権の過半数の株式譲渡又は取得、合併といった事由による当該契約関連事業の支配権に重大な変動が生じた場合等には、他方の当事者が通知を行うことにより当該契約を解約することができる内容となっておりますが、一方の当事者が契約を終了させる通知を行わない場合は、現在締結している契約の満了日である2015年12月末から5年間ずつ自動更新されることとなっております。また、株式会社日経新聞社はやむを得ない事由が生じたときは、株式会社大阪取引所の了承を条件に日経平均株価の編集及び公表を廃止することができます。仮に上記の事由により、当該契約が終了した場合、株式会社大阪取引所は日経平均株価先物取引、日経225mini及び日経平均株価オプション取引の中断、あるいは中止を余儀なくされ、この場合、当社グループの経営成績が大きな影響を受ける可能性があります。
その他、当該契約に関して、当社グループの経営成績が大きな影響を受ける可能性がある事態が生じる場合としては、以下のようなものが考えられます。
・ 利用許諾料については当該契約の他に別途締結している覚書により、契約基本料の他、1先物取引及び1オプション取引当たり一定額を月額対価として株式会社大阪取引所が株式会社日経新聞社へ支払うこととなっておりますが、当該覚書の内容については、株式会社大阪取引所と株式会社日経新聞社が協議のうえ、変更される可能性があります。当該利用許諾料が大幅に変更された場合には、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
・ 当該契約は独占契約ではないため、今後、国内外において株式会社大阪取引所以外の者が株式会社日経新聞社との間で日経平均株価利用許諾契約を締結し、利用権を取得する可能性があります。株式会社大阪取引所以外の者が日経平均株価の利用権を取得し国内外において日経平均株価先物・オプション取引を行い、その利便性が高い等の事情により大阪取引所市場の取引高が減少した場合、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(7)競合について
① 現物市場に関する他の証券取引所、取引所外取引との競合について
現物取引及び上場企業の誘致等における競合は激しさを増してきており、市場の流動性、取引の執行にかかるスピード・コスト、取引システムの性能、取引参加者や上場会社に提供される商品やサービスの多様性、規制環境など、様々な分野において、今後も競合の激化は進展していくものと認識しております。
現状、当社グループにおける株式売買代金は、2013年1~12月における国内上場株式の売買代金の9割超を占めており、日本における取引所外取引(PTS及び証券会社内部のクロッシング等)は1割に満たず、諸外国と比較すると低い水準となっておりますが、近年、PTSにおける取引量は増加傾向にあり、将来的には当社グループのシェアを奪う脅威となる可能性があります。
当社グループがこうした競争環境に適切に対応できず、市場の流動性、取引量、上場会社数等が減少した場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
また、近年、世界的に取引所業界は激しい価格競争にも晒されております。競合他社が当社グループよりも低い手数料等でのサービスの提供を開始し、当社グループにおいても、取引や上場にかかる手数料の引下げ等を行う必要が生じた場合には、当社グループの収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
② シンガポール取引所の日経平均株価先物取引・オプション取引との競合について
大阪取引所市場における日経平均株価先物取引は主にシンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引と競合しております。シンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引は、大阪取引所市場における日経平均株価先物取引と同じく、我が国株式市場を代表する指数である日経平均株価を対象とした株価指数先物取引です。
過去3年間の大阪取引所市場及びシンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引の取引高は、次のとおりです。
年度 | 大阪取引所市場 | シンガポール取引所市場 |
2011年度 | 29,371,654単位 | 13,676,997単位 |
2012年度 | 37,506,240単位 | 15,589,656単位 |
2013年度 | 53,561,632単位 | 18,081,211単位 |
(注2)シンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引(Mini Nikkei 225 Index Futuresを除きます。)は、取引金額換算では大阪取引所市場における日経平均株価先物取引の半分であるため、実際の取引高の半分を記載しております。
指数オプション取引に関しては、大阪取引所市場における日経平均株価オプション取引が主に競合している商品として、シンガポール取引所市場の日経平均株価オプション取引があります。
過去3年間の大阪取引所市場及びシンガポール取引所市場の日経平均株価オプション取引の取引高は、次のとおりです。
年度 | 大阪取引所市場 | シンガポール取引所市場 |
2011年度 | 41,907,719単位 | 1,246,472単位 |
2012年度 | 53,277,810単位 | 2,856,806単位 |
2013年度 | 52,419,426単位 | 5,114,293単位 |
2013年度の大阪取引所市場における日経平均先物取引及び日経平均株価オプション取引の取引高は、シンガポール取引所市場のそれを上回っておりますが、今後の市場参加者の動向によっては、大阪取引所市場の利用者がシンガポール取引所市場に移ることで大阪取引所市場における取引高が減少し、当社グループの収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 取引所間の経営統合について
取引所業界においては、2007年から2008年にかけて、欧米を中心にNYSEグループとユーロネクスト、ロンドン証券取引所とイタリア取引所、NasdaqとOMX等の国境を越えた取引所間の合従連衡の動きが見られました。
その後しばらくは目立った動きは見られませんでしたが、2010年10月にシンガポール取引所とオーストラリア証券取引所が経営統合を発表すると、2011年2月にはロンドン証券取引所グループとカナダのTMXグループ、ドイツ取引所とNYSEユーロネクストが相次いで経営統合を発表し、さらにはこれらの経営統合案に対抗するかたちで、カナダの銀行や年金基金から構成されるメイプル・グループがTMXグループの買収案を、Nasdaq OMXグループとインターコンチネンタル取引所が共同でNYSEユーロネクストの買収案を提示するなど、国際的な取引所再編を巡る動きが再燃しました。
しかしながら、シンガポール取引所とオーストラリア証券取引所は、オーストラリアの財務相が本経営統合提案を正式に却下したことから統合を断念し、また、Nasdaq OMX・インターコンチネンタル取引所は規制当局から承認が得られないことが確実になったこと、ロンドン証券取引所グループは株主の承認が得られない可能性が高まったことから、それぞれ提案を取り下げております。
結果としては、国境を越えた取引所間の統合は実現されませんでしたが、2012年12月にはインターコンチネンタル取引所によるNYSEユーロネクストの買収が発表され、2013年11月に同買収が完了しており、今後も国際的な取引所間の再編が起こる可能性があります。
他の取引所の経営統合による当社グループの事業への影響を予測することは困難ですが、国際的な取引所間の統合や提携が実現した場合には、より優れたサービスの提供やコスト削減につながる可能性があり、当社グループが競争優位性を失う可能性があるとともに、当社グループの国際的なプレゼンスの低下に繋がる懸念もあります。
(8)危機管理への取組みについて
当社グループでは、市場開設者という社会インフラとしての責務を果たすべく、様々なリスクが発現した場合においても、事業を可能な限り継続し、止むを得ず中断する場合においても可能な限り早期に再開できるよう、BCP(緊急時事業継続計画)を策定しており、堅実かつ安定的な事業継続体制の整備に努めております。
しかしながら、地震・風水害・火災等の自然災害、電力・通信等の社会インフラの停止、物理的破壊行為・サイバーテロ等のテロ行為又は新型インフルエンザを始めとする疫病の蔓延等により、想定を上回る被害を受け、事業を長期的に中断せざるをえないこととなった場合には、甚大な経済的損失を被るとともに、社会的信用の低下等、深刻な事態をもたらす可能性があります。
また、事業の中断に至らなかった場合においても、被害の状況によっては、多額の回復費用が必要となり、当社グループの財政状態、経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(9)訴訟に関するリスク等について
① 法令遵守に関するリスクについて
当社グループでは、取引参加者、上場会社等の企業情報や個人情報を保有しているほか、様々な経営情報等の内部情報を保有しております。当社グループの多くの役職員は、金融商品取引法においても秘密保持義務が課せられており、万一、役職員の故意又は過失により、情報漏えいといった事態が発生した場合には、監督官庁から処分等を科される可能性があるとともに、損害を被った市場利用者等から損害賠償等を求められる可能性もあります。
当社グループの事業は公共インフラとしての信頼性に支えられており、また、上場会社に対して、適時適切な情報開示の徹底や内部者取引を未然に防止するための体制整備を要請する立場にもあることから、当社グループ自らが範となり、他の上場会社に求めている内容と同等以上の情報管理・適時開示体制を構築していく必要があります。
したがって、当社グループでは、情報漏えいをはじめ、役職員の故意又は過失による法令違反行為を防止するための取組みに注力しておりますが、これらの取組みがすべての法令違反行為の発見・防止に対して有効であるとは限らず、役職員による法令違反行為を常に排除できるとは限りません。
役職員による法令違反行為が現実のものとなった場合には、監督官庁からの行政処分や市場利用者等からの損害賠償請求等、行政上又は司法上の制裁が科される可能性があるとともに、社会的信用の低下等により、当社グループの事業運営に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
② 訴訟に関するリスクについて
当社グループの事業は様々な法的責任に晒されており、これらには、役職員等又はコンピュータ・システムによる業務運営の中で、過誤が発生するリスク(いわゆるオペレーショナル・リスク)の顕在化による法的責任も含まれます。
オペレーショナル・リスクには、例えば次のようなものが考えられます。
・ 役職員が法令や当社グループの定款、業務規程その他の諸規則等に定められた適正な業務遂行(必要な市場規制措置等)を過誤等により怠る又は誤った措置を行うリスク
・ 障害や大規模災害によるシステム停止又はシステムに誤作動が発生するリスク
・ 役職員又はシステム運用業務委託先の過誤等により取引が中断されるリスク
・ 当社グループが算出を行っているTOPIX等の株価指数や統計情報等、配信を行う各種情報に誤謬が生じるリスク
上記のリスクが顕在化した場合には、監督官庁から処分等を科される可能性があるとともに、損害を被った市場利用者から損害賠償等を求められる可能性もあります。
当社グループでは、規則や契約等において、利用者が損害を受けた場合であっても、当社グループに故意又は重過失がある場合を除き、損害賠償の責を負わない旨を定めておりますが、オペレーショナル・リスクの顕在化を含むなんらかの要因により訴訟が提起された場合には、訴訟費用が多額にのぼる可能性があるとともに、訴訟において当社グループに不利な決定がなされた場合には、訴訟に伴う損害賠償のみならず、社会的な信用の低下等を通じて、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ みずほ証券株式会社との訴訟について
2005年12月8日に発生したみずほ証券株式会社によるジェイコム株式会社株式の誤発注事件に関して、みずほ証券株式会社から提起されておりました、当社の連結子会社である株式会社東京証券取引所に対する415億円の損害賠償請求事件について、2013年7月24日、東京高等裁判所より、同社に賠償金(107億円及び遅延損害金)の支払いを命ずる第一審判決の一部を変更するとともに、同判決に基づく強制執行を免れるために株式会社東京証券取引所が支払った132億円と本判決による認容額128億円との差額3億円を同社に返還することをみずほ証券株式会社に命ずる旨の控訴審判決が言い渡されました。
当判決を不服として、最高裁判所に対し、みずほ証券株式会社が上告の提起及び上告受理の申立てを、株式会社東京証券取引所が附帯上告の提起及び附帯上告受理の申立てを行っており、現在係争中であります。
訴訟の結果によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10)レピュテーショナル・リスクについて
当社グループでは、社会的な信用力やブランド力を、競争力の源泉の一つとして認識しております。
当社グループの社会的な信用は、システム及び自主規制業務等における過誤等、当社グループに起因する様々な要因のみならず、取引参加者や上場会社等の市場参加者又はその他の第三者による不法行為等によっても毀損される可能性があります。
当社グループの社会的な信用の毀損は、取引高の減少や発行会社の当社グループが開設する市場への上場を妨げる要因となる可能性があり、ひいては、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(11)保有するシンガポール取引所株式について
株式会社東京証券取引所グループは、2007年6月に、シンガポール取引所との緊密な提携関係の構築を目的として、シンガポール取引所に上場する同社株式53,051千株を取得(発行済株式の4.99%に相当。取得金額374億円)しましたが、同社株式の下落に伴い、2009年3月に207億円の投資有価証券評価損を計上しております。
当社グループでは、今後もシンガポール取引所との間で、当社グループの収益の向上に寄与する連携等について協議を進めていく方針ですが、シンガポール取引所株式の株価や為替の変動は、当社グループの純資産や包括利益に影響を及ぼすとともに、再度、評価損の計上を余儀なくされるような状況となった場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
対処すべき課題財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
- 有価証券報告書 抜粋メニュー
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- 生産、受注及び販売の状況
- 対処すべき課題
- 事業等のリスク
- 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
- 株式の総数等
- 発行済株式総数、資本金等の推移
- 株価の推移
- 最近6月間の月別最高・最低株価
- 株式所有者別状況
- 役員の状況
- コーポレートガバナンス状況
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E03814] S1001Z4I)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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