有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100257X
株式会社リニカル 事業の内容 (2014年3月期)
(1)当社グループの事業の内容について
当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社(株式会社リニカル)及び連結子会社であるLINICAL USA,INC.、LINICAL TAIWAN CO., LTD.、LINICAL KOREA CO., LTD.、P-pro. Korea Co., Ltd.で構成され、製薬会社の医薬品開発における治験の一部を受託する医薬品開発業務受託事業(CRO事業)を主たる業務としており、その他に、医療機関向け医薬品販売支援事業(CSO(注1)事業)を展開しております。
なお、次の区分は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。
① CRO事業
近年、製薬会社は、先発医薬品(新薬)の特許切れや薬価下落の問題を背景として、多額の研究開発費を投じて、新薬開発に挑んでおります。このような中、製薬会社のCROに対するアウトソーシングのニーズが高まっているものと当社グループは考えております。
既存のCROは、製薬会社が有する様々なニーズに応えるため、業務内容を多角化すると共に業務形態も多角化させ、治験業務全般の受託や臨床開発モニター(CRA)(注2)の派遣等、あるいはそれらの混合型などのビジネスモデルを展開しております。
しかしながら、当社グループは同業他社との差別化を図り、製薬会社から高い評価を獲得するためには、業務内容や業務形態を多角化するよりも、選択と集中を推し進めることが重要であると考えております。実際にCRO先進国といわれる欧米では特定領域の治験に特化することにより製薬会社から高い評価を得ているCROが存在しております。
このような考えの下、当社グループは、医薬品開発の中でも難易度・重要度の高いフェーズⅡ及びフェーズⅢにおけるモニタリング業務並びにそれに付随する品質管理業務及びコンサルティング業務に特化し、100%受託型の業務形態を取っております。
② CSO事業
当社グループは、CRO事業で得たノウハウを活かすことができる事業として、医薬品開発業務の下流に当たる製造販売後の市場において、医療機関向け医薬品販売支援(CSO)事業を展開しております。
(注1)CSO(Contract Sales Organization)とは、医薬品販売業務受託機関と訳されます。製薬会社が行う医薬品の販売・マーケティング業務の一部を代行、支援する企業のことをいいます。
(注2)CRA(Clinical Research Associate)とは、臨床開発モニターと訳されます。医薬品開発段階での治験が、薬事法その他の関連法令及び治験実施計画書を遵守して行われているかどうかを監視(モニタリング)する担当者のことをいいます。
当社グループの事業系統図は次のとおりであります。
[事業系統図]
(注)2014年4月に、LINICAL KOREA CO., LTD.は、P-pro. Korea Co., Ltd.を吸収合併しております。
(2)製薬会社における医薬品の研究開発の概要
製薬会社の医薬品開発には、先発医薬品(新薬)の特許が切れた後に他の製薬会社が同じ成分で発売する安価な後発医薬品(ジェネリック医薬品)の発売が可能になることや医薬品の価格改定による薬価下落の問題があり、さらに、新薬として製品化するまでの成功確率が低いという特徴があるため、製薬会社は多額の研究開発費を投じて、次々に新薬の開発に挑んでおります。
なお、製薬会社における医薬品の研究開発の概要は以下のとおりであります。
医薬品の研究開発は上記に示したとおり、研究(①~②)と開発(③~④)との2つの段階に大別されます。研究段階では主に新規の化合物を探すことから始まり、基礎研究(①)にて新規物質の創製・医薬品候補物質の選別を行い、非臨床試験(動物実験)(②)にて実験動物を用いてその化合物の生体への作用及び安全性の検討を行います。開発段階では、研究によって証明された化合物がどの疾患に適応するか、どのような用量であれば安全かつ有効に使用できるか、どのように既存治療薬との差別化を行うかを企画し、治験を通じて検証します(③)。そうして研究・開発のすべての段階を経て規制当局によって承認されると新薬の販売が開始されることになります(④)。
なお、販売が開始された新薬について、治験で判明しなかった副作用を広範囲に追跡調査するため、製薬会社は製造販売後調査(⑤)を行っております。
以上が製薬会社における医薬品の研究開発の概略ですが、特に治験については、規制当局の定めたガイドラインに沿って治験実施計画書(注3)に様々な基準を設定し、これに従って実施する必要があります。このため、医薬品の研究開発期間の長期化や、研究開発費の増大の主な原因となっています。
(注3)治験実施計画書とは、プロトコルともいい、治験を実施するにあたって、治験を実施する医療機関、治験を依頼する製薬会社その他、その治験にかかわる関係者が遵守しなければならない事項を網羅的に記載した計画書を指し、治験依頼者(製薬会社)により作成されます。
(3)製薬会社及びCROにおける治験の概要
治験とは、製薬会社が新薬候補物質についてヒトに対する有効性及び安全性を確認し、厚生労働省から医薬品としての認可を受けることを目的として実施する臨床試験であり、医療機関において健常成人や患者を被験者として実施されます。
なお、製薬会社及びCROにおける治験の概要は以下の通りであります。
治験は医薬品開発のためには不可欠なものであり、治験依頼者(製薬会社)は、フェーズⅠ~Ⅲまでのすべてのステージで、医療機関において法令に則り倫理的・科学的に治験が行われているかどうかを確認(モニタリング)することが法令で義務付けられております。このことから、製薬会社は治験を成功させる(その薬物の用法・用量を決定し、人体での有効性・安全性について既存治療薬との差別化を実証する)ため、膨大な費用、時間、労力を費やすこととなります。
なお、フェーズⅡに関しては、通常治験の目的と対象となる患者数の規模により、前期(Ⅱa)及び後期(Ⅱb)に段階を区分して実施されており、このフェーズⅡのうち患者にとって最適な用法・用量を決定する後期フェーズⅡ試験(Ⅱb)及び既存薬との有効性を比較するフェーズⅢ試験が、目標患者数、実施医療機関数も多く、期間・費用・労力のかかる難易度の高い治験となっています。
また、治験の業務内容は、主要業務であるモニタリング業務及びそれに付随する品質管理業務、コンサルティング業務のほか、治験薬が投与された症例の有効性・安全性データが記載された症例報告書(注4)を入力しデータベース化するデータマネジメント業務、治験実施計画書・届出書類・治験によって得られたデータをまとめた申請書類など監督官庁に提出する各種文書の作成を行うメディカルライティング業務、及び治験の実施状況を調査して治験データの信頼性の保証を目的とする監査業務等から構成され、多岐に亘っております。
(注4)症例報告書とは、治験実施計画書に規定されているすべての情報を記録するために、被験者ごとに作成される報告書(電子記録のものも含む)をいいます。
(4)当社グループにおけるモニタリング業務、品質管理業務及びコンサルティング業務の概要
モニタリング業務とは、治験の主要業務であり、製薬会社またはCROのモニタリング担当者であるCRAが、医療機関の治験実施可能性の調査、医療機関への治験の依頼、法令に基づく治験実施に関する契約(製薬会社、医療機関及びCROとの3者契約)の締結手続き、治験責任医師等に対する治験薬概要書(注5)及び治験実施計画書の説明、医療機関への治験薬の搬入、治験実施時の薬事法・GCP(注6)等の法令及び治験実施計画書の遵守状況の確認、治験の進捗管理、治験データの確認及び症例報告書の回収、治験薬の回収などを行う業務をいいます。
品質管理業務とは、CRAが作成したモニタリング報告書や入手した手続書類、症例報告書の記載形式や記載内容について、品質管理担当者が関連法規、治験実施計画書及び治験標準業務手順書(注7)等に則った適切性のチェックを行う業務をいいます。
コンサルティング業務とは、製薬会社に対して医薬品開発に係る各種コンサルティングを行う業務をいい、具体的には、治験実施計画書の内容及び治験実施方法等に関する提案や新薬候補物質に関する治験の実施可能性及び治験実施計画等についての調査・報告を行う業務をいいます。
当社グループにおけるモニタリング業務、品質管理業務及びコンサルティング業務の概要については以下の通りであります。
(注5)治験薬概要書とは、治験実施期間中の被験者の管理に必要な知識を提供するために作成される書類で、その内容は治験薬に関する非臨床試験及び治験の結果を編集したものとなっております。
(注6)GCP(Good Clinical Practice)とは直訳では「適正な治験の実施」を指す包括概念ですが、本邦においては、これを定めた厚生労働省令である「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」及び「医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令」(1997年3月27日付)並びにこれらの運用通知をいいます。
(注7)治験標準業務手順書とは、治験が、倫理的な配慮のもとに科学的に適正に実施され、かつ臨床試験結果の信頼性が確保されるように、医薬品開発の基本的な業務手順を体系的にまとめた手順書のことをいい、GCPに基づいて作成されます。
(5)当社グループの事業の特徴
当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社(株式会社リニカル)及び連結子会社であるLINICAL USA, INC.、LINICAL TAIWAN CO., LTD.、LINICAL KOREA CO., LTD.及びP-pro. Korea Co., Ltd.で構成され、製薬会社の医薬品開発における治験の一部を受託する医薬品開発業務受託事業(CRO事業)を主たる業務としており、その他に、医療機関向け医薬品販売支援事業(CSO事業)を展開しております。
なお、2014年4月に、LINICAL KOREA CO., LTD.は、P-pro. Korea Co., Ltd.を吸収合併しております。
① CRO事業
1997年3月の法改正(新GCP)においてCROの定義が明文化されて以来、その社会的認知度も徐々に向上し、人材の確保・育成がなされ、CRO業界は医薬品の基礎研究から非臨床試験、治験、製造販売後臨床試験など医薬品開発のすべての段階において製薬会社から受託を得られるまでに成長してきたものと当社グループでは考えております。
しかしながら、特に大手製薬会社は、迅速に治験を進めることにより新薬を早期に開発するために、単なるアウトソーシング先としてのCROではなく、自社開発部門とほぼ同等の能力を有し、同等の立場で医薬品開発を実行・支援できるCROを求めていると、当社グループでは想定しております。
そのような中、当社グループは人材面において、国内大手製薬会社で医薬品開発経験を有するメンバーが中心となって創業し、医薬品開発の経験者の中途採用を積極的に実施したことを背景として、現在では大手製薬会社との継続的な取引関係を構築しております。
また、当社グループは前述のとおり、製薬会社の医薬品開発のパートナーとしてのCROを実現するためには、業務内容や業務形態の選択と集中を推し進めることが重要であるという考えに基づき事業展開を行っているため、当社グループのCRO事業は以下のような特徴を有しております。
イ.特定業務への特化及び治験段階の特化
治験の業務は、前述のとおり多岐に亘り、一方の治験段階も製造販売後調査も含めるとフェーズⅠ~Ⅳに及びます。これらすべてを網羅的に受託することは当社グループの持つ医薬品開発の知識・技術・経験等の経営資源を分散させることになり、顧客である製薬会社のニーズに対して十分に応えることができなくなると考えております。
従いまして、当社グループでは、医薬品開発ノウハウの分散を防ぎ、当社グループの持つ知識・技術・経験を有効活用し、顧客のニーズに応えるため、治験の主要業務であるモニタリング業務及び品質管理業務並びにこれらにかかるコンサルティング業務に特化した100%受託型の業務形態を取っております。
また、治験段階においては、治験の主たる段階であり、特に利益率の高いフェーズⅡ、フェーズⅢに特化して事業を展開しております(ただし、がん領域についてはフェーズⅠからフェーズⅣまでを対象としております)。
ロ.特定の顧客への特化
大手製薬会社は常に医薬品の開発・承認申請業務に着手しており、最新の医薬品開発情報を豊富に所有しているという特徴を有しております。当社グループは国内市場においてこれらの情報をタイムリーに入手し、更なる知識・技術・経験を積み上げていくため、原則として大手製薬会社に特化して取引を行っております。
また、製薬会社は、それぞれにその医薬品開発手法及び治験標準業務手順書が独自のものであるという特徴を有しているため、当社グループが多数の製薬会社と取引を行った場合に、それぞれの開発手法及び治験標準業務手順書に対応する必要が生じます。取引先を限られた大手製薬会社各社に特化することは、手法・手順が多数存在することにより発生するエラーやミスを回避し、治験の品質を高め、競争力を向上させる効果が期待できるものと考えております。
ハ.治験領域の拡大
製薬各社がアンメット・メディカル・ニーズに対応するために開発パイプラインを増加させている以下の領域については専門部署を設置し、業務受託を行っております。
(イ)がん領域
がん領域プロジェクトは一般的に重篤な症例が対象となるため、安全性情報報告を中心に慎重かつ迅速な対応が必要になります。よって、がん領域での経験が豊富なマネージャーとCRAを配置し、ノウハウを集約して継続的な受託を実現しております。
(ロ)中枢神経系(CNS)領域
CNS領域プロジェクトは有効性評価の標準化が難しいため、この領域での経験と高いスキルが求められます。よって、この領域での経験が豊富なマネージャーとCRAを配置し、ノウハウを集約することで、これまでの受託実績に加え、今後開発パイプラインの増加が予想される領域・疾患の受託にも成功しております。
② CSO事業
CRO事業が医薬品の開発業務を受託するのに対して、CSO事業では医薬品の販売支援業務を受託しております。当事業においても、CRO事業同様、自社営業部門と同等の能力を有し、医薬品の販売を支援できるパートナーを求めていると、当社グループでは想定しております。
CSO業界では、一般的に、製薬会社に医薬品情報担当者(MR)を派遣する「コントラクトMR」事業が主流となっておりますが、当社グループでは、大手製薬会社での医薬品営業経験を有するメンバーを中心に主に受託型の業務形態を取っております。
また、当社グループのCSO事業は、CRO事業で得たノウハウを活かし、より専門性の求められる業務を受託することで、同業他社との差別化を図っております。部署の名称も「MCR(メディカルコミュニケーションアンドリサーチ)事業部」と称し、従来のMR業務とは一線を画した以下の医薬品販売支援サービスを提供しております。
イ.プロダクト・マーケティング(リエゾン)業務
この業務は、クライアントが未経験又は経験不足である領域の新製品を販売開始する場合に、クライアントに代わって新規医療機関や医師の開拓を行い、また、特定地域や特定領域の営業・学術サポートを行ったり、他社製品との差別化を行うため、その戦略を提案し、実行しております。
ロ.製造販売後データの企画・収集業務
この業務は、他社との製品の差別化を行う戦略のための医師主導臨床研究、製造販売後調査等の企画・実行を行います。
当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社(株式会社リニカル)及び連結子会社であるLINICAL USA,INC.、LINICAL TAIWAN CO., LTD.、LINICAL KOREA CO., LTD.、P-pro. Korea Co., Ltd.で構成され、製薬会社の医薬品開発における治験の一部を受託する医薬品開発業務受託事業(CRO事業)を主たる業務としており、その他に、医療機関向け医薬品販売支援事業(CSO(注1)事業)を展開しております。
なお、次の区分は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。
① CRO事業
近年、製薬会社は、先発医薬品(新薬)の特許切れや薬価下落の問題を背景として、多額の研究開発費を投じて、新薬開発に挑んでおります。このような中、製薬会社のCROに対するアウトソーシングのニーズが高まっているものと当社グループは考えております。
既存のCROは、製薬会社が有する様々なニーズに応えるため、業務内容を多角化すると共に業務形態も多角化させ、治験業務全般の受託や臨床開発モニター(CRA)(注2)の派遣等、あるいはそれらの混合型などのビジネスモデルを展開しております。
しかしながら、当社グループは同業他社との差別化を図り、製薬会社から高い評価を獲得するためには、業務内容や業務形態を多角化するよりも、選択と集中を推し進めることが重要であると考えております。実際にCRO先進国といわれる欧米では特定領域の治験に特化することにより製薬会社から高い評価を得ているCROが存在しております。
このような考えの下、当社グループは、医薬品開発の中でも難易度・重要度の高いフェーズⅡ及びフェーズⅢにおけるモニタリング業務並びにそれに付随する品質管理業務及びコンサルティング業務に特化し、100%受託型の業務形態を取っております。
② CSO事業
当社グループは、CRO事業で得たノウハウを活かすことができる事業として、医薬品開発業務の下流に当たる製造販売後の市場において、医療機関向け医薬品販売支援(CSO)事業を展開しております。
(注1)CSO(Contract Sales Organization)とは、医薬品販売業務受託機関と訳されます。製薬会社が行う医薬品の販売・マーケティング業務の一部を代行、支援する企業のことをいいます。
(注2)CRA(Clinical Research Associate)とは、臨床開発モニターと訳されます。医薬品開発段階での治験が、薬事法その他の関連法令及び治験実施計画書を遵守して行われているかどうかを監視(モニタリング)する担当者のことをいいます。
当社グループの事業系統図は次のとおりであります。
[事業系統図]
(注)2014年4月に、LINICAL KOREA CO., LTD.は、P-pro. Korea Co., Ltd.を吸収合併しております。
(2)製薬会社における医薬品の研究開発の概要
製薬会社の医薬品開発には、先発医薬品(新薬)の特許が切れた後に他の製薬会社が同じ成分で発売する安価な後発医薬品(ジェネリック医薬品)の発売が可能になることや医薬品の価格改定による薬価下落の問題があり、さらに、新薬として製品化するまでの成功確率が低いという特徴があるため、製薬会社は多額の研究開発費を投じて、次々に新薬の開発に挑んでおります。
なお、製薬会社における医薬品の研究開発の概要は以下のとおりであります。
医薬品の研究開発は上記に示したとおり、研究(①~②)と開発(③~④)との2つの段階に大別されます。研究段階では主に新規の化合物を探すことから始まり、基礎研究(①)にて新規物質の創製・医薬品候補物質の選別を行い、非臨床試験(動物実験)(②)にて実験動物を用いてその化合物の生体への作用及び安全性の検討を行います。開発段階では、研究によって証明された化合物がどの疾患に適応するか、どのような用量であれば安全かつ有効に使用できるか、どのように既存治療薬との差別化を行うかを企画し、治験を通じて検証します(③)。そうして研究・開発のすべての段階を経て規制当局によって承認されると新薬の販売が開始されることになります(④)。
なお、販売が開始された新薬について、治験で判明しなかった副作用を広範囲に追跡調査するため、製薬会社は製造販売後調査(⑤)を行っております。
以上が製薬会社における医薬品の研究開発の概略ですが、特に治験については、規制当局の定めたガイドラインに沿って治験実施計画書(注3)に様々な基準を設定し、これに従って実施する必要があります。このため、医薬品の研究開発期間の長期化や、研究開発費の増大の主な原因となっています。
(注3)治験実施計画書とは、プロトコルともいい、治験を実施するにあたって、治験を実施する医療機関、治験を依頼する製薬会社その他、その治験にかかわる関係者が遵守しなければならない事項を網羅的に記載した計画書を指し、治験依頼者(製薬会社)により作成されます。
(3)製薬会社及びCROにおける治験の概要
治験とは、製薬会社が新薬候補物質についてヒトに対する有効性及び安全性を確認し、厚生労働省から医薬品としての認可を受けることを目的として実施する臨床試験であり、医療機関において健常成人や患者を被験者として実施されます。
なお、製薬会社及びCROにおける治験の概要は以下の通りであります。
治験は医薬品開発のためには不可欠なものであり、治験依頼者(製薬会社)は、フェーズⅠ~Ⅲまでのすべてのステージで、医療機関において法令に則り倫理的・科学的に治験が行われているかどうかを確認(モニタリング)することが法令で義務付けられております。このことから、製薬会社は治験を成功させる(その薬物の用法・用量を決定し、人体での有効性・安全性について既存治療薬との差別化を実証する)ため、膨大な費用、時間、労力を費やすこととなります。
なお、フェーズⅡに関しては、通常治験の目的と対象となる患者数の規模により、前期(Ⅱa)及び後期(Ⅱb)に段階を区分して実施されており、このフェーズⅡのうち患者にとって最適な用法・用量を決定する後期フェーズⅡ試験(Ⅱb)及び既存薬との有効性を比較するフェーズⅢ試験が、目標患者数、実施医療機関数も多く、期間・費用・労力のかかる難易度の高い治験となっています。
また、治験の業務内容は、主要業務であるモニタリング業務及びそれに付随する品質管理業務、コンサルティング業務のほか、治験薬が投与された症例の有効性・安全性データが記載された症例報告書(注4)を入力しデータベース化するデータマネジメント業務、治験実施計画書・届出書類・治験によって得られたデータをまとめた申請書類など監督官庁に提出する各種文書の作成を行うメディカルライティング業務、及び治験の実施状況を調査して治験データの信頼性の保証を目的とする監査業務等から構成され、多岐に亘っております。
(注4)症例報告書とは、治験実施計画書に規定されているすべての情報を記録するために、被験者ごとに作成される報告書(電子記録のものも含む)をいいます。
(4)当社グループにおけるモニタリング業務、品質管理業務及びコンサルティング業務の概要
モニタリング業務とは、治験の主要業務であり、製薬会社またはCROのモニタリング担当者であるCRAが、医療機関の治験実施可能性の調査、医療機関への治験の依頼、法令に基づく治験実施に関する契約(製薬会社、医療機関及びCROとの3者契約)の締結手続き、治験責任医師等に対する治験薬概要書(注5)及び治験実施計画書の説明、医療機関への治験薬の搬入、治験実施時の薬事法・GCP(注6)等の法令及び治験実施計画書の遵守状況の確認、治験の進捗管理、治験データの確認及び症例報告書の回収、治験薬の回収などを行う業務をいいます。
品質管理業務とは、CRAが作成したモニタリング報告書や入手した手続書類、症例報告書の記載形式や記載内容について、品質管理担当者が関連法規、治験実施計画書及び治験標準業務手順書(注7)等に則った適切性のチェックを行う業務をいいます。
コンサルティング業務とは、製薬会社に対して医薬品開発に係る各種コンサルティングを行う業務をいい、具体的には、治験実施計画書の内容及び治験実施方法等に関する提案や新薬候補物質に関する治験の実施可能性及び治験実施計画等についての調査・報告を行う業務をいいます。
当社グループにおけるモニタリング業務、品質管理業務及びコンサルティング業務の概要については以下の通りであります。
(注5)治験薬概要書とは、治験実施期間中の被験者の管理に必要な知識を提供するために作成される書類で、その内容は治験薬に関する非臨床試験及び治験の結果を編集したものとなっております。
(注6)GCP(Good Clinical Practice)とは直訳では「適正な治験の実施」を指す包括概念ですが、本邦においては、これを定めた厚生労働省令である「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」及び「医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令」(1997年3月27日付)並びにこれらの運用通知をいいます。
(注7)治験標準業務手順書とは、治験が、倫理的な配慮のもとに科学的に適正に実施され、かつ臨床試験結果の信頼性が確保されるように、医薬品開発の基本的な業務手順を体系的にまとめた手順書のことをいい、GCPに基づいて作成されます。
(5)当社グループの事業の特徴
当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社(株式会社リニカル)及び連結子会社であるLINICAL USA, INC.、LINICAL TAIWAN CO., LTD.、LINICAL KOREA CO., LTD.及びP-pro. Korea Co., Ltd.で構成され、製薬会社の医薬品開発における治験の一部を受託する医薬品開発業務受託事業(CRO事業)を主たる業務としており、その他に、医療機関向け医薬品販売支援事業(CSO事業)を展開しております。
なお、2014年4月に、LINICAL KOREA CO., LTD.は、P-pro. Korea Co., Ltd.を吸収合併しております。
① CRO事業
1997年3月の法改正(新GCP)においてCROの定義が明文化されて以来、その社会的認知度も徐々に向上し、人材の確保・育成がなされ、CRO業界は医薬品の基礎研究から非臨床試験、治験、製造販売後臨床試験など医薬品開発のすべての段階において製薬会社から受託を得られるまでに成長してきたものと当社グループでは考えております。
しかしながら、特に大手製薬会社は、迅速に治験を進めることにより新薬を早期に開発するために、単なるアウトソーシング先としてのCROではなく、自社開発部門とほぼ同等の能力を有し、同等の立場で医薬品開発を実行・支援できるCROを求めていると、当社グループでは想定しております。
そのような中、当社グループは人材面において、国内大手製薬会社で医薬品開発経験を有するメンバーが中心となって創業し、医薬品開発の経験者の中途採用を積極的に実施したことを背景として、現在では大手製薬会社との継続的な取引関係を構築しております。
また、当社グループは前述のとおり、製薬会社の医薬品開発のパートナーとしてのCROを実現するためには、業務内容や業務形態の選択と集中を推し進めることが重要であるという考えに基づき事業展開を行っているため、当社グループのCRO事業は以下のような特徴を有しております。
イ.特定業務への特化及び治験段階の特化
治験の業務は、前述のとおり多岐に亘り、一方の治験段階も製造販売後調査も含めるとフェーズⅠ~Ⅳに及びます。これらすべてを網羅的に受託することは当社グループの持つ医薬品開発の知識・技術・経験等の経営資源を分散させることになり、顧客である製薬会社のニーズに対して十分に応えることができなくなると考えております。
従いまして、当社グループでは、医薬品開発ノウハウの分散を防ぎ、当社グループの持つ知識・技術・経験を有効活用し、顧客のニーズに応えるため、治験の主要業務であるモニタリング業務及び品質管理業務並びにこれらにかかるコンサルティング業務に特化した100%受託型の業務形態を取っております。
また、治験段階においては、治験の主たる段階であり、特に利益率の高いフェーズⅡ、フェーズⅢに特化して事業を展開しております(ただし、がん領域についてはフェーズⅠからフェーズⅣまでを対象としております)。
ロ.特定の顧客への特化
大手製薬会社は常に医薬品の開発・承認申請業務に着手しており、最新の医薬品開発情報を豊富に所有しているという特徴を有しております。当社グループは国内市場においてこれらの情報をタイムリーに入手し、更なる知識・技術・経験を積み上げていくため、原則として大手製薬会社に特化して取引を行っております。
また、製薬会社は、それぞれにその医薬品開発手法及び治験標準業務手順書が独自のものであるという特徴を有しているため、当社グループが多数の製薬会社と取引を行った場合に、それぞれの開発手法及び治験標準業務手順書に対応する必要が生じます。取引先を限られた大手製薬会社各社に特化することは、手法・手順が多数存在することにより発生するエラーやミスを回避し、治験の品質を高め、競争力を向上させる効果が期待できるものと考えております。
ハ.治験領域の拡大
製薬各社がアンメット・メディカル・ニーズに対応するために開発パイプラインを増加させている以下の領域については専門部署を設置し、業務受託を行っております。
(イ)がん領域
がん領域プロジェクトは一般的に重篤な症例が対象となるため、安全性情報報告を中心に慎重かつ迅速な対応が必要になります。よって、がん領域での経験が豊富なマネージャーとCRAを配置し、ノウハウを集約して継続的な受託を実現しております。
(ロ)中枢神経系(CNS)領域
CNS領域プロジェクトは有効性評価の標準化が難しいため、この領域での経験と高いスキルが求められます。よって、この領域での経験が豊富なマネージャーとCRAを配置し、ノウハウを集約することで、これまでの受託実績に加え、今後開発パイプラインの増加が予想される領域・疾患の受託にも成功しております。
② CSO事業
CRO事業が医薬品の開発業務を受託するのに対して、CSO事業では医薬品の販売支援業務を受託しております。当事業においても、CRO事業同様、自社営業部門と同等の能力を有し、医薬品の販売を支援できるパートナーを求めていると、当社グループでは想定しております。
CSO業界では、一般的に、製薬会社に医薬品情報担当者(MR)を派遣する「コントラクトMR」事業が主流となっておりますが、当社グループでは、大手製薬会社での医薬品営業経験を有するメンバーを中心に主に受託型の業務形態を取っております。
また、当社グループのCSO事業は、CRO事業で得たノウハウを活かし、より専門性の求められる業務を受託することで、同業他社との差別化を図っております。部署の名称も「MCR(メディカルコミュニケーションアンドリサーチ)事業部」と称し、従来のMR業務とは一線を画した以下の医薬品販売支援サービスを提供しております。
イ.プロダクト・マーケティング(リエゾン)業務
この業務は、クライアントが未経験又は経験不足である領域の新製品を販売開始する場合に、クライアントに代わって新規医療機関や医師の開拓を行い、また、特定地域や特定領域の営業・学術サポートを行ったり、他社製品との差別化を行うため、その戦略を提案し、実行しております。
ロ.製造販売後データの企画・収集業務
この業務は、他社との製品の差別化を行う戦略のための医師主導臨床研究、製造販売後調査等の企画・実行を行います。
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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