有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100HHHV
株式会社ヴィッツ 事業の内容 (2019年8月期)
当社グループは当社(株式会社ヴィッツ)及び、連結子会社(株式会社アトリエ及び、株式会社ヴィッツ沖縄)で構成されております。
事業構造としては、主に製品メーカに対して組込ソフトウェアを提供する「組込システム事業」、シミュレーション環境を提供する「システムズエンジニアリング事業」及びSafety & Securityコンサルティングを提供する「機能安全開発事業」の3つを主たる業務としており、「その他」として子会社における研究事業の推進やソフトウェア開発の検証事業等を行っております(下図、「当社グループの事業セグメントと事業構成図」参照)。
なお、事業の区分は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。
当社グループの事業セグメントと事業構成図
当社は設立以来、「半歩先の技術で人々の生活を豊かにする」を企業理念として掲げております。人々が毎日利用する製品の多くは、組込システムと呼ばれる製品であり、その代表例は自動車、デジタル家電、白物家電、スマートデバイスなどがあげられます。これらの製品の機能や性能は組込ソフトウェアにより実現されております。当社グループは顧客企業から信頼されうる安全な組込ソフトウェアを提供するとともに、新しい社会で必要となる新技術や新たな課題へいち早く対応することにより、人々の生活を豊かにすることを支援いたします(下図、「未来社会を支える当社グループの技術と支援サービス」参照)。
未来社会を支える当社グループの技術と支援サービス
●組込システムと組込ソフトウェアとは
人々が日々の暮らしの中で利用する電子機器(電子制御を伴った電気炊飯器、デジタルテレビ、自動車 等々)のことを組込機器と呼びます。この組込機器は、マイクロコンピュータと呼ばれる小型のコンピュータを搭載し、このコンピュータを含むハードウェアとコンピュータを動作させるソフトウェアで構成されております。このハードウェアとソフトウェアを合わせて組込システムと呼び、ソフトウェアを組込ソフトウェアと呼びます。
一般的に組込システムは、機器を動作させるため長時間動作や省電力などの要求レベルが高く、また、自動車や大型機械などはその動作が人命を預かるため、信頼性・安全性などが要求されます。
また、組込機器の多くで利用する通信技術や安全性(SafetyやSecurity)技術はIoT/CPS世界実現のための必須の基盤技術であると当社グループは考えております。
安全性が重要とされる組込システムの開発支援のためには、コンサルティングなどの支援環境が必要となります。また、製品によっては現実社会での試験が困難(例えば、自動運転は安全性、社会許容性、法規などの問題で公道での試験が困難)であるものなどは、仮想環境などの支援環境が必要となります。国内のソフトウェア開発企業には、組込ソフトウェア開発企業、リアルタイムオペレーティングシステムを提供する企業、自動運転技術を提供する企業、機能安全や組込セキュリティ支援をする企業、仮想化技術(以下、「バーチャル環境」とする)それぞれを提供する企業は存在するものの、当社はこれらのすべてのサービスを1社(グループ)で提供することができるという特徴があります。
また、組込ソフトウェアは組込装置(例:自動車、家電など)と一体をなして開発されるために、大手メーカ又はその子会社が手掛けることがありますが、当社グループはこのような企業系列に属していない独立系の企業グループです。そのため系列や製品分野を超えた企業へのサービス提供が可能であります。
(1)組込システム事業
当社グループは、1997年の設立以来、組込システムに関するソフトウェア開発を事業基盤としております。組込システム事業の具体的な内容は、国内外顧客(産業機械メーカ、自動車メーカ、自動車部品メーカ、デジタル家電メーカ、建設機械メーカなど)に対して、組込ソフトウェアの受託開発業務「制御ソフトウェアエンジニアリングサービス」を提供しております。また、これら顧客企業向けにリアルタイムオペレーティングシステムに関する業務「リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)開発、販売」を実施しております。
近年、自動車をはじめ多くの機器がインターネットなどの外部ネットワークに接続し、新たなサービス提供を開始しつつあり、当該製品分野におけるセキュリティ課題が問題となっております。そこで当社グループでは、自動車メーカに「組込セキュリティサービス」、「組込セキュリティ教育」を提供しております。これら当社グループが提供するソリューションは、今後成長が期待されるIoT(Internet of Things)/CPS(Cyber Physical System)の基盤技術であり、下図、「組込技術は分野共通の中核技術」に示すように、個別産業分野の技術でなく、広く産業分野全域に必要な技術要素であります。そのため幅広い分野の様々な顧客企業を対象としております。
組込技術は分野共通の中核技術
組込システム事業の主な提供サービスの概要は以下のとおりとなります。
●制御ソフトウェアエンジニアリングサービス
当社が提供する自動車及び組込システム向けの制御ソフトウェアエンジニアリングサービスは、産業横断的に様々な産業で利用される基盤技術であります。特に、近年電子化が急速に進展する自動車関連向けの制御ソフトウェアエンジニアリングサービスは当社の中核技術となっております。また、当社は、自社で保有する自動車向けRTOS(欧州の規格で実質的な標準仕様であるAUTOSARやOSEK/VDX仕様のOS)のカスタマイズやインテグレーションサービスを自動車メーカや自動車部品メーカに提供しており、制御ソフトウェアエンジニアリングサービスとのシナジー効果を高めております。
●リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)開発、販売
当社グループは、主に自動車と産業機器に特化したオペレーティングシステムを自社開発し、販売提供しております。
自動車向けのRTOSは欧州の規格で実質的な標準仕様であるAUTOSARやOSEK/VDX仕様に準拠したものです。また、産業機械向けのRTOSは日本で仕様策定されたμITRON仕様に準拠したものになります。いずれもOWLS(オウルズ)という名称にて販売しております(Owls for Automotive, Owls for Industry)。また、機能安全に対応したRTOSやセキュリティ機能を付加したモデルもラインアップしております。
これらのRTOSはソフトウェア部品の製品として不特定多数の顧客企業に同一製品を販売しているため、顧客企業ごとに専用ソフトウェアを提供するソフトウェア開発支援サービスと比較して利益率が高いという特徴があります。
●自動運転技術研究と技術支援サービス
自動車や各種ロボットなどが自律的に動作し、人々の生活を支援する社会が現実味をおびてきました。
当社グループは、来るべき自律システム社会を支える基盤技術を得るため、経済産業省の研究事業を活用し、積雪路面での自動運転を実現するための技術研究を実施しております。この研究では世界的に研究が進められている“ダイナミックマップ”(※)が活用できない積雪路面で、雪道を判別し安全に走行するための基礎技術を開発し、その技術を過疎化地域で活用することを検討しております。
※ダイナミックマップとは高精度な三次元地図情報や動的に更新される道路状況などを組み合わせた地図情報です。自動運転ではカメラなどで認識した人工構造物(信号、センターライン、側溝など)とダイナミックマップ情報を比較して、自己位置を推定します。
当社グループは、自動車メーカ各社が自動運転をはじめとする自律システムを開発する場合に、当社が研究活動で得たセンサー技術や人工知能を活用した判断技術の提供を予定しております。提供先は自動運転車両開発メーカ及び自動運転車両への電装部品のサプライヤーとなります。
当社グループが実施している自動運転走行実験の様子
自動運転に必要なシミュレータ及びセンシング技術
※SLAM(Simultaneous Localization And Mapping):各種センサーなどを用いて移動中の自身の位置を測定し、
同時にローカルな地図を作成する機能。
●組込セキュリティサービス/組込セキュリティ教育
当社グループが提供する、組込セキュリティサービスにはコンサルティングと教育があります。
これまでインターネットに接続されていなかった装置が、近年、新たにネットワークに接続されてクラウド連携サービスを開始しております。その一例としてConnected Carといわれる自動車や、今後商品化が期待される自動運転車両があげられます。今後は外部ネットワークに接続される自動車が増えることが予想され、セキュリティ対応が必要になると当社グループは考えております。さらに自動車はセキュリティの脆弱性をつかれてハッキングされると、制御が乗っ取られる可能性があり、利用者の安全や公道上の安全などが脅かされる危険性があります。
当社グループは、国内大手自動車関連企業及び建設機械メーカ等が開発・生産する装置の組込セキュリティ対応に向けたコンサルティングサービス、ソフトウェアのセキュリティ対応モジュール提供、セキュリティ対応ソフトウェア開発支援サービスを提供しております。また、ソフトウェア開発におけるセキュリティ対策に必要な考えや活動を教育資料としてまとめており、この資料を利用した教育サービスを顧客企業などに提供しております。
また、当社グループは、新たに製品のセキュリティインシデント活動を担うSIRT支援サービスの需要増を受けて、沖縄にてエンジニア育成を行っており、機密情報、ノウハウは顧客ごとに守りつつ、米国発の脆弱性データベースの調査と対策など汎用的な作業を効率化し運用コスト低減に貢献するSIRT支援サービスを開始しました。
今後、自動車メーカや自動車部品メーカなどに幅広く提供することにより当社グループの事業拡大を実現する重要なサービスとして位置付けております。
(2)システムズエンジニアリング事業
システムズエンジニアリングとは「システムの実現を成功させることができる複数の専門分野にまたがるアプローチ及び手段」と定義されております。すなわち複数の専門分野(例えば、電気工学、機械工学、ソフトウェア工学など)を統合し、束ねるためのアプローチを指します(下図、「システムズエンジニアリングのイメージ図(自動運転システムを例にして説明)」参照)。
システムの定義は、「ハードウェア、ソフトウェア、人、情報、技術、サービスなどの支援要素で定義された目的を成し遂げるための、相互作用する要素を組み合わせたもの」であるため、システムズエンジニアリングは複数のシステムを並列・階層的に接続して目的を達成することになります。例えば自動運転システムは、自動車システム、交通システム、経路探査システム、人間行動システムなど多岐にわたるシステムを連携して実現される、システムズエンジニアリングにより解決するべきシステムであります。
自動車システムなど複雑なシステムに対して効率的な開発をするために、近年はモデルと呼ばれる表記法(様々なモデル表記が実在します)が用いられるようになってきております。当社グループは、設立3年目の1999年からモデル表記法を利用したモデルベース開発を実施しております。
具体的な内容としては、「自動運転/先進安全向けシミュレーション技術による開発支援」、「車載制御モデル開発」、「車載制御シミュレーション開発」などの事業を実施しております。
システムズエンジニアリングのイメージ図(自動運転システムを例にして説明)
システムズエンジニアリング事業の主な提供サービスの概要は以下のとおりとなります。
●自動運転/先進安全向けシミュレーション技術による開発支援
当社グループは、自動車関連企業を対象に、自動運転の検証を目的としたバーチャル環境技術を提供しております。
自動運転車両の開発には莫大な走行時間(走行距離)による検証が必要となりますが、日本では研究段階の車両を公道で走行させることができる地域が限られており、申請手続きも煩雑であるため、検証が進まないという課題があります。バーチャル環境は、コンピュータ上で公道走行と同じ環境を作ることができ、また、様々な天候状況なども再現できます。したがって、自動運転車両の研究開発にはバーチャル環境技術の活用は必須であるといえます。
当社が提供している自動運転シミュレータの例
●車載制御モデル開発/車載制御シミュレーション開発
当社グループが提供する「車載制御モデル開発/車載制御シミュレーション開発」は、自動車を構成する各種部品の動作をつかさどるソフトウェアをモデル表記図で作成するとともに、シミュレーションを活用して開発の早期化や品質向上を実現するための技術を提供しております。
中でも当社グループは自動車制御システムのラピッドプロトタイピング開発(製品開発で用いられる試作手法)であるHILSシステムを得意としております。HILSは、開発するシステムの周辺装置の完成を待つことなく、開発を進めることができます。下図「HILS(Hardware In the Loop Simulation )のシステム例」では、開発対象となるエンジンシステムの周辺装置には、トランスミッションなどの多くのシステムが必要となります。通常、自動車開発ではエンジンやトランスミッションなどは同時に開発されるため、エンジン開発でトランスミッションの開発完了を待つことはありません。そのような場合、HILSと呼ばれるシミュレータ技術を利用します。
この例では、エンジンECUのHILSモデルを示します。開発対象のエンジン制御(ソフトウェアもしくはモデル)を実際のECU上で動作させ、エンジンを通常動作させて試験を実施します。エンジンには各種センサー(O2センサー、温度センサー)が搭載されています。それらのセンサー類は実物もしくはプラントモデル内で模擬します。またエンジンと連携をするサブシステムや外部環境はプラントモデルを作成して、あたかも実際の環境であるかのようにエンジンシステムと連携します。これにより車両完成前であっても各種の試験を実施することができます。これらのシミュレーション環境を当社グループは提供しています。
●人工知能の安全活用技術の研究
自動運転車両を活用したサービスが現実味を帯びてまいりました。これら自律的な動作をする装置では、人間の判断の代わりに人工知能による判断が装置の動作を決定します。したがって、人工知能は常に正しい判断を下すことが求められます。
当社グループは経済産業省の研究事業を活用し、人工知能の安全活用技術に関する技術研究を実施しております。人工知能は通常のプログラムとは異なり判断ロジックが明確でないことから、安全分析方法、安全立証に関するガイドラインなどを作成する活動をしております。
また、2018年10月よりイギリス政府の研究予算を活用した“TIGARS Project”
(https://www.adelard.com/all-news/2018/10/22/tigars-uk-japan-project-on-assuring-autonomous-systems-underway/)を英国研究機関と開始しており、人工知能を用いた自動運転車両の安全性を客観的に立証する新たな分析手法の研究と説明責任を果たすためのガイドラインを作成しております。
(3)機能安全開発事業
当社グループは2008年から工作機械メーカ、自動車関連メーカなど製品の安全性が求められるメーカ向けに、機能安全(Safety & Security)コンサルティングを実施しております。
機能安全とは、コンピュータを用いた制御装置に対し、監視装置や防護装置などの付加機能によるリスクの低減を施すことです(下図、「本質安全と機能安全 ~踏切の安全例~」参照)。
自動車や電車などの装置は、人々の生活に不可欠な存在になっております。これらの装置は膨大なソフトウェアを利用して機能を提供しております。このような装置が何らかの問題(ハードウェアの故障やソフトウェアの不具合)で動作が不安定になったり機能を停止した場合には、人々に危害を及ぼす危険があります。例をあげると、自動車・電車などのブレーキが何らかの原因で動作しなくなった場合には、重大な事故につながりかねません。
当社グループは機能安全の考え方を規定した機能安全規格を取得(産業機械やプラント工場などの機能安全であるIEC 61508のソフトウェアプロセス認証を国内で初めて取得(2010年)、自動車の機能安全規格ISO 26262のソフトウェアプロセス認証を世界で初めて取得(2012年))しております。
機能安全開発事業の主な提供サービスの概要は以下のとおりとなります。
●コンサルティング/安全対策用技術コンテンツ販売
当社グループは、機能安全規格に対応したソフトウェア開発プロセスに関する認証を第三者認証機関であるドイツTÜV SÜDから取得しております。当該認証取得にあたって、安全なソフトウェア開発のための装置全体に何らかのソフトウェア防御策を施す技術的な対策と、ソフトウェアの不具合が少なくなるよう開発するための開発プロセスの2つの対応を習得しております。当該認証取得で得られた経験や規格への対応方法を活かして、機能安全規格に準拠した開発を行いたい企業にコンサルティングサービスを提供しております。
また、コンサルティングサービスのひとつとして機能安全規格に関する認証を取得したいと考える企業が認証に必要な各種ドキュメントや、機能安全規格に準拠するソフトウェア開発プロセスにかかる規定文書などを作成するサービスを提供しております。
さらに、安全対策用技術コンテンツ販売については、認証取得に必要なソフトウェア設計エビデンスのフォーマット、対策方法をまとめた資料などを販売しております。
●ソフトウェア開発支援ツール輸入、販売
機能安全をはじめ、信頼性の高いソフトウェアを設計するためには、人手による確認だけでは不十分です。当社は信頼性などを向上させるための支援ツールをドイツのソフトウェアツールメーカなどから輸入し、販売しております。
●教育サービス
当社グループは、機能安全規格の解説、安全性の考え方などの教育をセミナー形式で実施しております。
(4)その他
その他事業は、当社の子会社である「株式会社アトリエ」と「株式会社ヴィッツ沖縄」が行っており、いずれも当社との協業により実施しております。
●ソフトウェア開発に関する新技術及び規格調査
当社グループに必要な新技術の調査及びソフトウェア開発に関する新規格調査を行っております。ソフトウェア開発に関する進歩は急速に進んでおり、短期間で新たな対応規格が数多く公開されます。多くの規格は実施するべき項目が記載されておりますが、“なぜ実施する必要があるのか”といった規格の背景や、“どこまでやれば十分か”といった対応範囲などは明確に記載されていないのが現状です。
国立研究開発法人産業技術総合研究所に所属し、規格策定や調査を担当した技術メンバーが中心となり、新規格の調査を行い、顧客企業へ調査結果を提供するサービスを行っております。
●組込ソフトウェア評価・開発支援
沖縄県の若い人材を活用した組込ソフトウェア評価・開発支援を行っております。沖縄県はソフトウェア産業において現在発展途上の状況であるため、ソフトウェア開発などを実現するには技術者教育と開発などの経験が必要となります。
当社グループでは若年層技術者にソフトウェアの評価、組込機器の画面開発など、比較的開発が容易な部位を担当させるとともに、ソフトウェア開発の教育を実施しております。
評価や画面開発など多数の技術者を必要とする業務を若年技術者を活用することにより、当社グループ全体での開発コストの削減に寄与しております。
沖縄県は雇用費用が低いため、ソフトウェア開発の試験、組込機器の画面開発など、比較的要求される技術が低い開発を担当し、当社グループ全体での開発コストの削減に寄与しております。
[事業系統図]
[用語の定義]
本書記載内容に対する理解を容易にするために、また、正しい理解をいただくために、本書で使用する用語の定義と解説を以下に記載します。
(五十音順)
事業構造としては、主に製品メーカに対して組込ソフトウェアを提供する「組込システム事業」、シミュレーション環境を提供する「システムズエンジニアリング事業」及びSafety & Securityコンサルティングを提供する「機能安全開発事業」の3つを主たる業務としており、「その他」として子会社における研究事業の推進やソフトウェア開発の検証事業等を行っております(下図、「当社グループの事業セグメントと事業構成図」参照)。
なお、事業の区分は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。
当社グループの事業セグメントと事業構成図
当社は設立以来、「半歩先の技術で人々の生活を豊かにする」を企業理念として掲げております。人々が毎日利用する製品の多くは、組込システムと呼ばれる製品であり、その代表例は自動車、デジタル家電、白物家電、スマートデバイスなどがあげられます。これらの製品の機能や性能は組込ソフトウェアにより実現されております。当社グループは顧客企業から信頼されうる安全な組込ソフトウェアを提供するとともに、新しい社会で必要となる新技術や新たな課題へいち早く対応することにより、人々の生活を豊かにすることを支援いたします(下図、「未来社会を支える当社グループの技術と支援サービス」参照)。
未来社会を支える当社グループの技術と支援サービス
●組込システムと組込ソフトウェアとは
人々が日々の暮らしの中で利用する電子機器(電子制御を伴った電気炊飯器、デジタルテレビ、自動車 等々)のことを組込機器と呼びます。この組込機器は、マイクロコンピュータと呼ばれる小型のコンピュータを搭載し、このコンピュータを含むハードウェアとコンピュータを動作させるソフトウェアで構成されております。このハードウェアとソフトウェアを合わせて組込システムと呼び、ソフトウェアを組込ソフトウェアと呼びます。
一般的に組込システムは、機器を動作させるため長時間動作や省電力などの要求レベルが高く、また、自動車や大型機械などはその動作が人命を預かるため、信頼性・安全性などが要求されます。
また、組込機器の多くで利用する通信技術や安全性(SafetyやSecurity)技術はIoT/CPS世界実現のための必須の基盤技術であると当社グループは考えております。
安全性が重要とされる組込システムの開発支援のためには、コンサルティングなどの支援環境が必要となります。また、製品によっては現実社会での試験が困難(例えば、自動運転は安全性、社会許容性、法規などの問題で公道での試験が困難)であるものなどは、仮想環境などの支援環境が必要となります。国内のソフトウェア開発企業には、組込ソフトウェア開発企業、リアルタイムオペレーティングシステムを提供する企業、自動運転技術を提供する企業、機能安全や組込セキュリティ支援をする企業、仮想化技術(以下、「バーチャル環境」とする)それぞれを提供する企業は存在するものの、当社はこれらのすべてのサービスを1社(グループ)で提供することができるという特徴があります。
また、組込ソフトウェアは組込装置(例:自動車、家電など)と一体をなして開発されるために、大手メーカ又はその子会社が手掛けることがありますが、当社グループはこのような企業系列に属していない独立系の企業グループです。そのため系列や製品分野を超えた企業へのサービス提供が可能であります。
(1)組込システム事業
当社グループは、1997年の設立以来、組込システムに関するソフトウェア開発を事業基盤としております。組込システム事業の具体的な内容は、国内外顧客(産業機械メーカ、自動車メーカ、自動車部品メーカ、デジタル家電メーカ、建設機械メーカなど)に対して、組込ソフトウェアの受託開発業務「制御ソフトウェアエンジニアリングサービス」を提供しております。また、これら顧客企業向けにリアルタイムオペレーティングシステムに関する業務「リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)開発、販売」を実施しております。
近年、自動車をはじめ多くの機器がインターネットなどの外部ネットワークに接続し、新たなサービス提供を開始しつつあり、当該製品分野におけるセキュリティ課題が問題となっております。そこで当社グループでは、自動車メーカに「組込セキュリティサービス」、「組込セキュリティ教育」を提供しております。これら当社グループが提供するソリューションは、今後成長が期待されるIoT(Internet of Things)/CPS(Cyber Physical System)の基盤技術であり、下図、「組込技術は分野共通の中核技術」に示すように、個別産業分野の技術でなく、広く産業分野全域に必要な技術要素であります。そのため幅広い分野の様々な顧客企業を対象としております。
組込技術は分野共通の中核技術
組込システム事業の主な提供サービスの概要は以下のとおりとなります。
●制御ソフトウェアエンジニアリングサービス
当社が提供する自動車及び組込システム向けの制御ソフトウェアエンジニアリングサービスは、産業横断的に様々な産業で利用される基盤技術であります。特に、近年電子化が急速に進展する自動車関連向けの制御ソフトウェアエンジニアリングサービスは当社の中核技術となっております。また、当社は、自社で保有する自動車向けRTOS(欧州の規格で実質的な標準仕様であるAUTOSARやOSEK/VDX仕様のOS)のカスタマイズやインテグレーションサービスを自動車メーカや自動車部品メーカに提供しており、制御ソフトウェアエンジニアリングサービスとのシナジー効果を高めております。
●リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)開発、販売
当社グループは、主に自動車と産業機器に特化したオペレーティングシステムを自社開発し、販売提供しております。
自動車向けのRTOSは欧州の規格で実質的な標準仕様であるAUTOSARやOSEK/VDX仕様に準拠したものです。また、産業機械向けのRTOSは日本で仕様策定されたμITRON仕様に準拠したものになります。いずれもOWLS(オウルズ)という名称にて販売しております(Owls for Automotive, Owls for Industry)。また、機能安全に対応したRTOSやセキュリティ機能を付加したモデルもラインアップしております。
これらのRTOSはソフトウェア部品の製品として不特定多数の顧客企業に同一製品を販売しているため、顧客企業ごとに専用ソフトウェアを提供するソフトウェア開発支援サービスと比較して利益率が高いという特徴があります。
●自動運転技術研究と技術支援サービス
自動車や各種ロボットなどが自律的に動作し、人々の生活を支援する社会が現実味をおびてきました。
当社グループは、来るべき自律システム社会を支える基盤技術を得るため、経済産業省の研究事業を活用し、積雪路面での自動運転を実現するための技術研究を実施しております。この研究では世界的に研究が進められている“ダイナミックマップ”(※)が活用できない積雪路面で、雪道を判別し安全に走行するための基礎技術を開発し、その技術を過疎化地域で活用することを検討しております。
※ダイナミックマップとは高精度な三次元地図情報や動的に更新される道路状況などを組み合わせた地図情報です。自動運転ではカメラなどで認識した人工構造物(信号、センターライン、側溝など)とダイナミックマップ情報を比較して、自己位置を推定します。
当社グループは、自動車メーカ各社が自動運転をはじめとする自律システムを開発する場合に、当社が研究活動で得たセンサー技術や人工知能を活用した判断技術の提供を予定しております。提供先は自動運転車両開発メーカ及び自動運転車両への電装部品のサプライヤーとなります。
当社グループが実施している自動運転走行実験の様子
自動運転に必要なシミュレータ及びセンシング技術
※SLAM(Simultaneous Localization And Mapping):各種センサーなどを用いて移動中の自身の位置を測定し、
同時にローカルな地図を作成する機能。
●組込セキュリティサービス/組込セキュリティ教育
当社グループが提供する、組込セキュリティサービスにはコンサルティングと教育があります。
これまでインターネットに接続されていなかった装置が、近年、新たにネットワークに接続されてクラウド連携サービスを開始しております。その一例としてConnected Carといわれる自動車や、今後商品化が期待される自動運転車両があげられます。今後は外部ネットワークに接続される自動車が増えることが予想され、セキュリティ対応が必要になると当社グループは考えております。さらに自動車はセキュリティの脆弱性をつかれてハッキングされると、制御が乗っ取られる可能性があり、利用者の安全や公道上の安全などが脅かされる危険性があります。
当社グループは、国内大手自動車関連企業及び建設機械メーカ等が開発・生産する装置の組込セキュリティ対応に向けたコンサルティングサービス、ソフトウェアのセキュリティ対応モジュール提供、セキュリティ対応ソフトウェア開発支援サービスを提供しております。また、ソフトウェア開発におけるセキュリティ対策に必要な考えや活動を教育資料としてまとめており、この資料を利用した教育サービスを顧客企業などに提供しております。
また、当社グループは、新たに製品のセキュリティインシデント活動を担うSIRT支援サービスの需要増を受けて、沖縄にてエンジニア育成を行っており、機密情報、ノウハウは顧客ごとに守りつつ、米国発の脆弱性データベースの調査と対策など汎用的な作業を効率化し運用コスト低減に貢献するSIRT支援サービスを開始しました。
今後、自動車メーカや自動車部品メーカなどに幅広く提供することにより当社グループの事業拡大を実現する重要なサービスとして位置付けております。
(2)システムズエンジニアリング事業
システムズエンジニアリングとは「システムの実現を成功させることができる複数の専門分野にまたがるアプローチ及び手段」と定義されております。すなわち複数の専門分野(例えば、電気工学、機械工学、ソフトウェア工学など)を統合し、束ねるためのアプローチを指します(下図、「システムズエンジニアリングのイメージ図(自動運転システムを例にして説明)」参照)。
システムの定義は、「ハードウェア、ソフトウェア、人、情報、技術、サービスなどの支援要素で定義された目的を成し遂げるための、相互作用する要素を組み合わせたもの」であるため、システムズエンジニアリングは複数のシステムを並列・階層的に接続して目的を達成することになります。例えば自動運転システムは、自動車システム、交通システム、経路探査システム、人間行動システムなど多岐にわたるシステムを連携して実現される、システムズエンジニアリングにより解決するべきシステムであります。
自動車システムなど複雑なシステムに対して効率的な開発をするために、近年はモデルと呼ばれる表記法(様々なモデル表記が実在します)が用いられるようになってきております。当社グループは、設立3年目の1999年からモデル表記法を利用したモデルベース開発を実施しております。
具体的な内容としては、「自動運転/先進安全向けシミュレーション技術による開発支援」、「車載制御モデル開発」、「車載制御シミュレーション開発」などの事業を実施しております。
システムズエンジニアリングのイメージ図(自動運転システムを例にして説明)
システムズエンジニアリング事業の主な提供サービスの概要は以下のとおりとなります。
●自動運転/先進安全向けシミュレーション技術による開発支援
当社グループは、自動車関連企業を対象に、自動運転の検証を目的としたバーチャル環境技術を提供しております。
自動運転車両の開発には莫大な走行時間(走行距離)による検証が必要となりますが、日本では研究段階の車両を公道で走行させることができる地域が限られており、申請手続きも煩雑であるため、検証が進まないという課題があります。バーチャル環境は、コンピュータ上で公道走行と同じ環境を作ることができ、また、様々な天候状況なども再現できます。したがって、自動運転車両の研究開発にはバーチャル環境技術の活用は必須であるといえます。
当社が提供している自動運転シミュレータの例
●車載制御モデル開発/車載制御シミュレーション開発
当社グループが提供する「車載制御モデル開発/車載制御シミュレーション開発」は、自動車を構成する各種部品の動作をつかさどるソフトウェアをモデル表記図で作成するとともに、シミュレーションを活用して開発の早期化や品質向上を実現するための技術を提供しております。
中でも当社グループは自動車制御システムのラピッドプロトタイピング開発(製品開発で用いられる試作手法)であるHILSシステムを得意としております。HILSは、開発するシステムの周辺装置の完成を待つことなく、開発を進めることができます。下図「HILS(Hardware In the Loop Simulation )のシステム例」では、開発対象となるエンジンシステムの周辺装置には、トランスミッションなどの多くのシステムが必要となります。通常、自動車開発ではエンジンやトランスミッションなどは同時に開発されるため、エンジン開発でトランスミッションの開発完了を待つことはありません。そのような場合、HILSと呼ばれるシミュレータ技術を利用します。
この例では、エンジンECUのHILSモデルを示します。開発対象のエンジン制御(ソフトウェアもしくはモデル)を実際のECU上で動作させ、エンジンを通常動作させて試験を実施します。エンジンには各種センサー(O2センサー、温度センサー)が搭載されています。それらのセンサー類は実物もしくはプラントモデル内で模擬します。またエンジンと連携をするサブシステムや外部環境はプラントモデルを作成して、あたかも実際の環境であるかのようにエンジンシステムと連携します。これにより車両完成前であっても各種の試験を実施することができます。これらのシミュレーション環境を当社グループは提供しています。
●人工知能の安全活用技術の研究
自動運転車両を活用したサービスが現実味を帯びてまいりました。これら自律的な動作をする装置では、人間の判断の代わりに人工知能による判断が装置の動作を決定します。したがって、人工知能は常に正しい判断を下すことが求められます。
当社グループは経済産業省の研究事業を活用し、人工知能の安全活用技術に関する技術研究を実施しております。人工知能は通常のプログラムとは異なり判断ロジックが明確でないことから、安全分析方法、安全立証に関するガイドラインなどを作成する活動をしております。
また、2018年10月よりイギリス政府の研究予算を活用した“TIGARS Project”
(https://www.adelard.com/all-news/2018/10/22/tigars-uk-japan-project-on-assuring-autonomous-systems-underway/)を英国研究機関と開始しており、人工知能を用いた自動運転車両の安全性を客観的に立証する新たな分析手法の研究と説明責任を果たすためのガイドラインを作成しております。
(3)機能安全開発事業
当社グループは2008年から工作機械メーカ、自動車関連メーカなど製品の安全性が求められるメーカ向けに、機能安全(Safety & Security)コンサルティングを実施しております。
機能安全とは、コンピュータを用いた制御装置に対し、監視装置や防護装置などの付加機能によるリスクの低減を施すことです(下図、「本質安全と機能安全 ~踏切の安全例~」参照)。
自動車や電車などの装置は、人々の生活に不可欠な存在になっております。これらの装置は膨大なソフトウェアを利用して機能を提供しております。このような装置が何らかの問題(ハードウェアの故障やソフトウェアの不具合)で動作が不安定になったり機能を停止した場合には、人々に危害を及ぼす危険があります。例をあげると、自動車・電車などのブレーキが何らかの原因で動作しなくなった場合には、重大な事故につながりかねません。
当社グループは機能安全の考え方を規定した機能安全規格を取得(産業機械やプラント工場などの機能安全であるIEC 61508のソフトウェアプロセス認証を国内で初めて取得(2010年)、自動車の機能安全規格ISO 26262のソフトウェアプロセス認証を世界で初めて取得(2012年))しております。
機能安全開発事業の主な提供サービスの概要は以下のとおりとなります。
●コンサルティング/安全対策用技術コンテンツ販売
当社グループは、機能安全規格に対応したソフトウェア開発プロセスに関する認証を第三者認証機関であるドイツTÜV SÜDから取得しております。当該認証取得にあたって、安全なソフトウェア開発のための装置全体に何らかのソフトウェア防御策を施す技術的な対策と、ソフトウェアの不具合が少なくなるよう開発するための開発プロセスの2つの対応を習得しております。当該認証取得で得られた経験や規格への対応方法を活かして、機能安全規格に準拠した開発を行いたい企業にコンサルティングサービスを提供しております。
また、コンサルティングサービスのひとつとして機能安全規格に関する認証を取得したいと考える企業が認証に必要な各種ドキュメントや、機能安全規格に準拠するソフトウェア開発プロセスにかかる規定文書などを作成するサービスを提供しております。
さらに、安全対策用技術コンテンツ販売については、認証取得に必要なソフトウェア設計エビデンスのフォーマット、対策方法をまとめた資料などを販売しております。
●ソフトウェア開発支援ツール輸入、販売
機能安全をはじめ、信頼性の高いソフトウェアを設計するためには、人手による確認だけでは不十分です。当社は信頼性などを向上させるための支援ツールをドイツのソフトウェアツールメーカなどから輸入し、販売しております。
●教育サービス
当社グループは、機能安全規格の解説、安全性の考え方などの教育をセミナー形式で実施しております。
(4)その他
その他事業は、当社の子会社である「株式会社アトリエ」と「株式会社ヴィッツ沖縄」が行っており、いずれも当社との協業により実施しております。
●ソフトウェア開発に関する新技術及び規格調査
当社グループに必要な新技術の調査及びソフトウェア開発に関する新規格調査を行っております。ソフトウェア開発に関する進歩は急速に進んでおり、短期間で新たな対応規格が数多く公開されます。多くの規格は実施するべき項目が記載されておりますが、“なぜ実施する必要があるのか”といった規格の背景や、“どこまでやれば十分か”といった対応範囲などは明確に記載されていないのが現状です。
国立研究開発法人産業技術総合研究所に所属し、規格策定や調査を担当した技術メンバーが中心となり、新規格の調査を行い、顧客企業へ調査結果を提供するサービスを行っております。
●組込ソフトウェア評価・開発支援
沖縄県の若い人材を活用した組込ソフトウェア評価・開発支援を行っております。沖縄県はソフトウェア産業において現在発展途上の状況であるため、ソフトウェア開発などを実現するには技術者教育と開発などの経験が必要となります。
当社グループでは若年層技術者にソフトウェアの評価、組込機器の画面開発など、比較的開発が容易な部位を担当させるとともに、ソフトウェア開発の教育を実施しております。
評価や画面開発など多数の技術者を必要とする業務を若年技術者を活用することにより、当社グループ全体での開発コストの削減に寄与しております。
沖縄県は雇用費用が低いため、ソフトウェア開発の試験、組込機器の画面開発など、比較的要求される技術が低い開発を担当し、当社グループ全体での開発コストの削減に寄与しております。
[事業系統図]
[用語の定義]
本書記載内容に対する理解を容易にするために、また、正しい理解をいただくために、本書で使用する用語の定義と解説を以下に記載します。
(五十音順)
用語 | 用語の定義 |
インテグレーション | インテグレーションとは統合の意味をもつ英単語です。 複数の要素を組み合わせて1つに統合することを意味します。 本文書では、コンピュータシステム上にリアルタイムオペレーティングシステムや他のサービスプログラムと、機能実現をするアプリケーションプログラムを統合することを意味しています。 |
開発プロセス | ソフトウェア開発において、開発プロセスとは、ソフトウェアの開発手順や工程、要因、成果物、進め方などの基本的な考えを定義したもの。 |
仮想化技術(バーチャル環境) | 一般にはコンピュータのリソースを抽象化する技術を示す。 本書では、自動車の設計開発や検証過程で実車を用いず、コンピュータを用いたシミュレーションや、自動運転技術の向上のために必要な走行テストをコンピュータ上で実現するための技術を仮想化技術と定義する。 |
機能安全 | 「監視装置や防護装置などの付加機能によるリスク低減策」であり、安全方策(安全を確保する為の考え方)の1つである。人間、財産、環境などに危害を及ぼすリスクを、機能や装置の働きにより、許容可能なまでに低減する一つの手法である。 |
機能安全規格 | コンピュータを利用して装置を制御する場合のシステムレベルでの安全性立証をする安全規格を指す。一般産業機器向けの基本規格(IEC 61508)や自動車向け規格(ISO 26262)がある。 |
組込システム | 特定の機能を実現するために機械や装置等に組み込まれるコンピュータシステムを指す。PC等の汎用的なシステムと対比され、特定の機能を実現する目的で組み込まれる。産業用機器、医療用機器、家庭用機器等、制御を必要とする多くの製品に用いられている。 |
用語 | 用語の定義 |
組込セキュリティ | 単にソフトウェアのセキュリティはIT系を指すことが多い。 組込セキュリティはITセキュリティと守るべき資産や動作環境などが異なるため、同種の対応では実施できないため区別される。ここでは組込システムを対象としたセキュリティを組込セキュリティとしている。 |
組込ソフトウェア | 組込システムは、ハードウェアとソフトウェアから構成されており、組込ソフトウェアはソフトウェア部位を示す。 特定機能を実現するために開発されており、汎用のもの、独自のもの、両方を組み合わせたものがある。 |
形式手法 | ソフトウェア工学における数学を基盤としたソフトウェア及びハードウェアシステムの仕様記述、開発、検証の技術である。 |
システムズエンジニアリング | システムの実現を成功させることができる複数の専門分野にまたがるアプローチ及び手段を指す。 システムズエンジニアリングは、技術分野には依存しない仕事の仕方である。ここで言うシステムとは、ハードウェア、ソフトウェア、情報、設備、組織、社会、人間など、相互作用し合う要素を組み合せたあらゆるものを含む。 |
自動運転技術 | 自動運転車とは、人間が運転操作を行わなくとも自動で走行できる自動車のことを指し、自動運転技術は自動運転車を実現するための多様な技術の集まりを指す。 |
人工知能 | 人間の知的能力をコンピュータ上で実現する、様々な技術・ソフトウェア・コンピュータシステムを指す。 |
セマンティックセグメンテーション | 画像認識技術の一種。ディープラーニング(深層学習)を中心とした機械学習を利用し、画像内の物を認識するもの。 |
センサーフュージョン | 検出するべき対象を確実に認識できるセンサーが存在しない場合、検出原理の異なる複数のセンサーを組み合わせて、認識を高める方法。 フュージョンは融合を示すため、センサー融合の意味を持つ。 |
ソフトウェア開発プロセス認証 | 本文中で使用する「ソフトウェア開発プロセス認証」とは、機能安全規格が要求する開発プロセスを十分に満たしたと第三者認証機関が判断した場合に認証される、認証書もしくは認証されたプロセスを示す。 |
プラットフォーム | コンピュータやシステムの基礎部分となるものを指す。通常、ハードウェア及び(又は)オペレーティングシステムを指す。 本書ではソフトウェアアプリケーションの基礎部分を指す。 |
モデル | 動作条件や機能などを図などで示すこと。 |
モデルベース開発 | シミュレーション技術を活用することで、品質と生産性の向上を両立させることができる開発プロセス。上流工程でモデルを作成し、シミュレーションを行うことで設計品質の向上効果がある。また、上流工程で作成したモデルはプログラムの自動生成、リアルタイムシミュレータ(HILS)を使った検証など、すべての工程で活用でき、生産性、品質向上に効果を発揮する。 |
ラピッドプロトタイピング開発 | 製品開発で用いられる試作の手法です。 高速(rapid)に試作(prototyping)することを目的とした開発手法を示します。本書で説明している、HILSシステムは、ラピッドプロトタイピング開発の一例となります。 |
リアルタイムオペレーティングシステム | Real-time operating systemの略称。 リアルタイムシステムのためのオペレーティングシステム(OS)である。OSの主要な機能である資源管理において、時間資源の優先度に基づく配分と実行時間の予測可能性を提供することに特化している。 |
AGL | Automotive Grade Linuxの略称。 The Linux Foundationが2012年に発足させたワーキンググループ。Connected Carの共通基盤となるLinuxベースのソフトウェアスタックを開発するオープンソース共同開発プロジェクトの名称。 |
用語 | 用語の定義 |
AUTOSAR | AUTomotive Open System ARchitectureの略称 2003年に発足した自動車業界のグローバル開発パートナーシップである。活動目的は、インフォテインメントを除く領域で、車載電子制御ユニット用の共通標準ソフトウェアアーキテクチャを策定、確立することである。さまざまな車種やプラットフォームに対応できる拡張性、ソフトウェアの可搬性、可用性への配慮、安全要求への対応、多種多様なパートナーとの協業、天然資源のサステナブルな利用、車両の「製品ライフサイクル」全般にわたる保守性などを目標とする。 なお、本書では当該用語を単に団体名称として使う場合と、当該団体が策定した各種仕様、さらには仕様に準拠したソフトウェアモジュールの名称として利用する。 |
Connected Car | 常時インターネットに接続できる機能を備えた自動車のこと。自動車がインターネットにつながることで、さまざまな情報を収集・活用できるだけでなく、自動車から情報を配信することもできる車両を指す。 |
CPS | Cyber-Physical Systemの略称。 現実世界(フィジカル空間)でのセンサーネットワークが生みだす膨大な観測データなどの情報について、サイバー空間の強力なコンピューティング能力と結びつけ数値化し定量的に分析することで、これまで「経験と勘」に頼っていた事象を効率化し、より高度な社会を実現するために、「あらゆる社会システムの効率化」「新産業の創出」「知的生産性の向上」などを目指すサービス及びシステムを指す。 |
ECU | Electronic Control Unitの略、Engine Control Unit の略の場合もある。 車に搭載されているコンピュータを指す。 現在販売されている自動車は、全て電子制御化されており、各センサーからの情報をECUがクルマの状況に合わせ、理想となる「燃料噴射量」を調整し、「点火時期」の進角・遅角、各「動弁機構」などを制御している。 また、エンジン制御だけではなく、AT、CVTなどトランスミッションの制御、ABS、EBDの制動系など、車の進化に伴いECUの役割も多様化している。 |
FlexRay | FlexRay Consortiumによって開発された、自動車などの車載ネットワーク(車載LAN)の通信プロトコル(ビークルバス)の1つである。 |
HILS | Hardware In the Loop Simulatorの略称。 主に自動車で発達した技術で、エンジンや車両挙動等を模擬した数式をリアルタイムに実行することで、実機を模擬したシミュレーションを行うことが可能な開発用シミュレータを指す。 |
IEC 61508 | IEC(国際電気標準会議)が制定した基本安全規格(basic safety publication)であり、プロセス産業における電気・電子・プログラマブル電子(Electrical・Electronic・Programmable Electronic)(以下、E/E/PE)機能安全に関する国際規格である。E/E/PEの機能又は故障・障害によって人命、環境、財産に大きな影響を与えるものなどを対象とする。機械だけで構成する装置はIEC 61508の対象外である。IEC 61508は、プラント、発電所、機械、鉄道、医療機器、家電やシステムのリスクを軽減するために使用するコンピュータ・ソフトウェアを含むE/E/PEによる安全性を高めるための機能安全規格である。 |
IEC 62443 | 制御システムを対象とするセキュリティに関する標準規格。 |
IoT | Internet of Thingsの略称。 様々な「モノ(物)」がインターネットに接続され(単に繋がるだけではなく、モノがインターネットのように繋がる)、情報交換することにより相互に制御する仕組みである。それによる社会の実現も指す。「物のインターネット」と表記された例もある。 |
IoTデバイス | IoTとしてインターネットに接続される機器を指す。 代表例:スマートフォン、ネットワークカメラなど。 |
ISO 26262 | 自動車の電気/電子に関する機能安全についての国際規格。IEC 61508を自動車分野に適用したもの。 |
MILS | Model In the Loop Simulatorの略称。 制御対象となる装置の動作をモデルで記述し、外部環境モデルと結合して動作させるシミュレーション環境を指す。 |
用語 | 用語の定義 |
OSEK | Offene Systeme und deren Schnittstellen für die Elektronik im Kraftfahrzeugの略称。 自動車制御を行うエンジンコントロールユニット(ECU)で用いるプログラムの業界標準作成を目標としてドイツの自動車産業が1993年に設立したプロジェクトである。 また、そのプロジェクトが規定したオペレーティングシステム仕様も指す。 本書ではオペレーティングシステム仕様を指す。 なお、OSEKと同様のプロジェクトであったVDXが協調路線をとり、OSEK/VDXとして表記する場合もある。 |
RTOS | 「リアルタイムオペレーティングシステム」参照。 |
SILS | Software In the Loop Simulatorの略称。 制御装置と制御対象等のシステム全体を、すべてソフトウェアでシミュレーションする事で、ソフトウェア環境のみで制御開発が可能となるシミュレータ環境を指す。 |
SIRT | Security Incident Response Teamの略称。 脆弱性情報を収集、分析を実施する組織を指す。 |
TÜV SÜD | 認証、試験、検査、ナレッジサービス、トレーニングビジネスを提供している世界第6位の第三者認証機関である。 |
μITRON | 組込システム向けのリアルタイムオペレーティングシステム(OS) の仕様名称です。 μは小型を意味し、マイコンと呼ばれる小型コンピュータで利用することを示しております。 ITRON は、産業向けのOSであるIndustrial TRON の略称であり、TRONは仕様を策定するプロジェクト団体の名称です。 |
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E34739] S100HHHV)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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