有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100ISRM (EDINETへの外部リンク)
SREホールディングス株式会社 事業の内容 (2020年3月期)
当社グループは、当社と、連結子会社1社(SRE AI Partners株式会社)及び持分法適用関連会社1社(株式会社マネジメント・シェルパ・ソリューション)により構成されております。また、ソニー株式会社及びZホールディングス株式会社はその他の関係会社であります。
当社グループの事業の歴史としましては、「不動産事業」、「ITプラットフォーム事業」、「AIソリューション事業」の順で発展してまいりました。実業(リアル)である「不動産事業」、ITの高度なテクノロジーとAI技術を基盤とした「ITプラットフォーム事業」及び「AIソリューション事業」の3つの事業を有機的に結合させた『AI×リアル』ソリューション事業を展開してまいりました。
「不動産事業」、「ITプラットフォーム事業」及び「AIソリューション事業」だけをそれぞれ行う事業者はありますが、当社が調べた限りではこれらの3つの事業を統合的に行っている事業者はなく、実業(リアル)を通じて得たデータ及び知見をAI技術やITにフィードバックし、それにより向上したAI技術やITを実業(リアル)に導入、またそこからフィードバックを得るという、3つの事業が相互に補完し合う強固なビジネスモデルを構築している点が、当社グループの強みであると考えております。
「不動産事業」においては、日本の不動産仲介ビジネスの従来の慣習を打破することをコンセプトとして、1人の社員が売主、買主の双方を担当せずにどちらか一方のみを担当し、担当する売主又は買主の利益のみを徹底追求する「エージェント制」を採用しております。なお、2018年度に当社が担当した不動産取引の契約額は、売主を担当する場合が9割以上を占めております。また、売主に対して不動産査定価格を提案する際には、不動産の市場動向、不動産の専有面積、築年数、間取り、階数、バルコニー方向などの住居条件、駅からの距離などの立地条件、居住中、空室、賃貸中などの入居状況など大量のデータをAI技術によって処理する「不動産価格推定エンジン」を活用し、恣意性を排した客観的な不動産査定価格を提示し、その上で、担当する社員の専門性を加味した不動産査定価格を提示しております。「エージェント制」と「不動産価格推定エンジン」の2つの特色を有することで、公平かつ客観的な不動産コンサルティングサービスを顧客に提供しております。
「ITプラットフォーム事業」としては、物件を売りたい売主からの問合せをインターネット上で集め、問合せがあった売主に対して「不動産価格推定エンジン」の提示する不動産査定価格を盛り込んだ査定書を提示し、不動産売却媒介契約を締結できた売主の物件をインターネット上で広告し買主を募集するといった一連の不動産仲介業務を、一気通貫で支援する不動産仲介会社向けのサービスを「おうちダイレクト」というITプラットフォームを通じて提供しております。「おうちダイレクト」を不動産仲介会社に提供することでその利用料をサブスクリプションフィー形式で頂き、不動産仲介に係る取引データを蓄積することができております。また、不動産仲介会社を通さずに個人が自らマンションの売出しを行うことができる個人向けサービスも提供しております。
「AIソリューション事業」では、「不動産事業」や「おうちダイレクト」を利用する不動産仲介会社を通じて得られた大量の不動産取引データをAI技術によって処理する「不動産価格推定エンジン」を、不動産仲介会社及び金融機関向けに提供しております。「ITプラットフォーム事業」において提供する「不動産価格推定エンジン」では、不動産売買価格のみを提供しておりますが、「AIソリューション事業」において提供する「不動産価格推定エンジン」においては、不動産売買価格のみならず、不動産賃貸の賃料を推定する機能なども提供しております。また、一人一人のお客様の希望に沿って、AIにより自動的にパーソナライズされたマーケティングメールを発送できるマーケティング支援ツールの提供も開始いたしました。さらに、不動産仲介会社及び金融機関のみならず電力業界や情報通信業界に対して、マーケティング活動、営業活動、人事業務、在庫管理業務といった顧客企業の様々な顕在的、潜在的な経営課題を、AI技術を用いて解決するコンサルティングサービスを提供しております。顧客企業の業務の過去の実績データを表形式に整理した上で、将来予測をAI技術により行うソフトウエアに入力すると、自動的に機械学習が実行され、顧客企業の経営課題を解決するための「AIによる将来予測ツール」が生成され、顧客企業は、「AIによる将来予測ツール」を業務に活用して将来予測を行うことで、業務の効率化を実現できるようになります。
当社は、第1期から第5期まで、「不動産事業」を中心に発展してまいりましたが、2017年より開始した不動産仲介会社向けの「ITプラットフォーム事業」及び2018年9月より開始した「AIソリューション事業」が順調な立ち上がりをみせていることから、今後は、「ITプラットフォーム事業」、特に「AIソリューション事業」を中長期的な成長ドライバーと位置付け、「不動産事業」から得られる実業の知見及び不動産取引オペレーションデータに加えて「ITプラットフォーム事業」から継続的に生成される豊富な不動産取引データを活用することで「不動産価格推定エンジン」の不動産仲介会社及び金融機関への利用拡大を図り、また、顧客企業の様々な顕在的、潜在的な経営課題を、AI技術を用いて解決するコンサルティングサービスを本格化することで、「AIソリューション事業」の成長を図ってまいります。
当社は、『AI×リアル』ソリューション事業の単一セグメントであり、セグメント情報を記載していないため、主要な事業内容について記載しております。
(1)不動産事業
当社グループは、不動産仲介サービス、IoTを活用したスマートホームサービスを展開しております。
① 不動産仲介サービス
不動産仲介サービスにおいては、専門性の高い不動産仲介エージェントが、大量の不動産取引データをAI技術によって処理する「不動産価格推定エンジン」を活用し、コンサルティングサービスを提供しております。
当社グループの不動産仲介サービスにおいては、売主、買主の双方を担当せずにどちらか一方のみを担当し、担当する売主又は買主の利益のみを徹底追求する「エージェント制」を採用しております。当社グループの「エージェント制」においては、当社グループの担当社員は売主及び買主のどちらか一方のお客様しか担当せず、当社グループが売主及び買主の両方を担当する場合においては売主と買主にそれぞれ異なる担当社員をエージェントとしてつけるため、各エージェントにおいては、お客様の意思決定に必要となる情報をすべて開示し、お客様の自由な意思決定による不動産売却又は購入を支援しております。
一般の不動産仲介業務においては、1人の営業担当者が売主及び買主の双方を担当し、売主及び買主の双方から不動産売買仲介手数料をいただく仕組みとなっており、より物件を高く売りたい売主、より物件を安く買いたい買主の双方が満足できない取引になる可能性は否めませんが、当社グループの「エージェント制」はどちらか一方のみの立場にたち、お客様を支援することで顧客満足度の高いコンサルティングサービスを提供しております。
不動産仲介サービスは、第1期からの祖業として当社グループの安定的な収益基盤であるとともに、「ITプラットフォーム事業」及び「AIソリューション事業」に対して、不動産実業の知見及び不動産取引オペレーションデータを継続的に提供する重要なサービスであると位置づけております。
② スマートホームサービス
スマートホームサービスにおいては、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社が提供するIoTサービス「MANOMA」を搭載した、主にファンドや法人に販売する収益型不動産「AIFLAT(アイフラット)」の施工・販売を行っております。
「AIFLAT(アイフラット)」では、本来の「MANOMA」に加えて、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社が提供するIoT機器「マルチファンクションライト」や超高速インターネット回線「NURO 光」も標準装備し、ホームセキュリティ機能、家電の遠隔コントロール機能、宅内における音声コントロール及びスマートロックの利用などが可能となっており、「AIFLAT(アイフラット)」のテーマであるIoTスマートホームを具現化しております。
スマートホームサービスは、当社グループの高収益なサービスであるとともに、IoT機器の利用頻度などの情報を利活用する上で重要なサービスであると位置づけております。
(2)ITプラットフォーム事業
当社グループは、不動産売買プラットフォームである「おうちダイレクト」を通じて、マンションの所有者が「不動産価格推定エンジン」の提示する推定成約価格などを参考に不動産仲介会社を通さずに自らインターネット上で直接マンションの売出しを行うことができるセルフ売却機能を提供しております。また、物件を売りたい売主からの問合せをインターネット上で集め、問合せがあった売主に対して「不動産価格推定エンジン」の提示する不動産査定価格を盛り込んだ査定書を提示し、不動産売却媒介契約を締結できた売主の物件をインターネット上で広告し買主を募集するといった一連の不動産仲介業務を一気通貫で支援する不動産仲介業務支援機能を提供しております。「おうちダイレクト」は、ヤフー株式会社と共同で提供しております。
[おうちダイレクトの2つのビジネスモデル]
不動産仲介業務支援機能として、①物件を売りたい売主からの問合せをインターネット上で集める集客機能、②問合せがあった売主に対して、「不動産価格推定エンジン」の提示する不動産査定価格のみならず周辺の物件の成約情報など売主の意思決定にあたって必要な情報も盛り込んだ査定書を作成する機能、③不動産仲介会社が不動産売却媒介契約を締結できた売主の物件をインターネット上に掲載して買主を募集する広告機能及び④AI技術による優良顧客特定機能の4つの機能を提供しております。
従来、大手不動産ポータルサイトのビジネスモデルは、不動産購入をSearch(検索・検討)しているユーザー向けに、不動産の広告情報を掲載する広告ビジネスであり、その後のTransaction(内見→申込→交渉→契約)プロセス全般に対して、AI技術やITによるサービスを提供しているとは言い難い状況でありました。これに対して、当社グループは、物件を売りたい売主からの問合せをインターネット上で集め、問合せがあった売主に対して「不動産価格推定エンジン」の提示する不動産査定価格を盛り込んだ査定書を提示し、不動産売却媒介契約を締結できた売主の物件をインターネット上で広告し買主を募集するといった一連の不動産仲介業務を一気通貫で支援する不動産仲介業務支援機能を提供しております。その結果、複数の不動産仲介会社に不動産仲介業務支援機能をご利用頂き、不動産仲介会社を通じて得たデータ及び知見をAI技術やITにフィードバックし、AI技術の精度やITの利便性をさらに向上させております。
[一般的な不動産仲介業務とおうちダイレクトの比較]
Search(検索・検討)領域においては、「おうちダイレクト」及びヤフー株式会社の運営する「Yahoo! 不動産」や「Yahoo! メール」などよりインターネットトラフィックを生成し、また、大手不動産ポータルサイトが参入していないTransaction(内見→申込→交渉→契約)領域においては、当社グループの不動産仲介サービス及び不動産仲介業務支援機能を利用する不動産仲介会社よりTransactionデータを収集できております。その結果、AI/ITサービスの質の向上につながり、プラットフォーム利用者がさらに増加することを目指しております。
(3)AIソリューション事業
2018年10月に、「AIソリューション事業」を行うための100%子会社であるSRE AI Partners株式会社を設立し、SRE AI Partners株式会社を通じて各種業界向けにAI技術を用いたソリューションサービスを提供しております。「AIソリューション事業」としては、AIクラウドサービス及びAIコンサルティングサービスの2つのサービスを展開しております。2018年10月に事業を開始しているため、事業活動期間としては短く、事業規模としては3つの事業の中では相対的に小さい状態であります。
(注)1.AIaaSは、AI as a Serviceの略称で、ユーザー側にソフトウエアをインストールするのではなく、クラウド側でAI技術を搭載したソフトウエアを稼働させ、ユーザーはネットワーク経由でソフトウエアの機能を活用できるサービスを指しております。
2.PoCは、Proof of Conceptの略称で、試作開発の前段階における検証やデモンストレーションを指しております。
① AIクラウドサービス
AIクラウドサービスは、ディープラーニング(深層学習)技術((注)1)を核とし、当社グループが持つ不動産査定のノウハウや不動産取引特有の知識を導入し開発した「不動産価格推定エンジン」など以下に記載するパッケージ化されたAIサービスを、クラウドを通じて提供するサービスであります。
「不動産価格推定エンジン」は、様々なパートナー企業と連携したデータとソニーグループのAI技術を融合し、高水準の推定精度を達成しております。また、毎週、最新のデータに基づいた機械学習((注)2)モデルの更新を行うことにより、常に最新の推定価格の取得が可能となっており、不動産会社向けのAI不動産査定書サービスや、当社グループとヤフー株式会社との共同事業である「おうちダイレクト」などに活用されております。
「不動産賃料推定エンジン」は、物件の所在地、立地、築年数、所在階、間取り、広さ等の様々な情報を基に月額賃料を推定できます。
「類似物件検索エンジン」は、物件情報から類似する情報の多さや類似度合いを総合的に判断して、類似物件を検索することができます。
「物件探索マップ」は、地図上に中古マンション物件の情報をマッピングしたソリューションとなっております。
(注)1.ディープラーニング(深層学習)技術とは、AI研究における分野のうちの1つで、人間の脳の構造を模した計算モデルを用いる点に特徴があり、人間の指示なしにAIが自ら学習し、データ量を増やすほどその精度が向上するものであります。
2.機械学習とは、AI研究における分野のうちの1つで、人が持つ学習能力をコンピュータで実現しようとする技術であり、コンピュータに大量のデータと特定のルールを与えてデータを解析して、規則性や関係性を見つけ出す手法であります。
② AIコンサルティングサービス
AIコンサルティングサービスは、マーケティング業務の効率化、営業活動の業務効率化、人事業務の効率化、需要供給予測による在庫最適化といった、顧客企業の様々な顕在的、潜在的な経営課題を「AIによる将来予測ツール」を用いて解決するコンサルティングサービスであります。
顧客企業の各業務における過去の実績データを表形式に整理したうえで、将来予測をAI技術により行うソフトウエアに入力すると、自動的に機械学習が実行され、顧客企業の経営課題を解決するための「AIによる将来予測ツール」が生成されます。顧客企業は「AIによる将来予測ツール」を業務に活用して将来予測を行うことで、業務の効率化を実現できるようになります。「AIによる将来予測ツール」は、予測精度や、予測に寄与したパラメータを、専門用語を排除してわかりやすく表示しており、直観的に操作できるユーザーインターフェイスを備えており、AI技術の高度な専門性がなくとも利用可能な、導入ハードルの低い、汎用性の高いツールとなっております。
一般的に、AI技術の導入にあたっては、「PoC」、「サーバー構築、モデル作成」、「システム化(顧客サービスへのインテグレーション)」を行い、その後実運用に進むのが通常のフローであります。そのため、導入にあたっての高いコストが導入障壁になっておりますが、当社グループでは、簡易的にAI技術を導入することで経営課題を解決することを希望される顧客には汎用的な「AIによる将来予測ツール」のみを比較的低コストで提供し、AI技術のシステムインテグレーションを希望する顧客には「システム化(顧客サービスへのインテグレーション)」まで提供するなど、顧客の要望に応じた柔軟なAI技術の提供が可能であり、大手企業から中小企業までのそれぞれのニーズにあわせた導入メニューを提供しております。
また、「AIソリューション事業」においては、AIクラウドサービスで獲得した顧客とのリレーションの中で、さらに当該顧客の顕在的、潜在的な経営課題を発見し、当該課題をAIコンサルティングサービスで解決するクロスセルを行っております。AIクラウドサービスである「不動産価格推定エンジン」を提供した不動産仲介会社より、優良顧客を効率的に選定したいとの経営課題を聞き、AIコンサルティングサービスである「AIによる将来予測ツール」を用いて解決したクロスセルの実例があります。
事業の系統図は、次のとおりであります。
なお、当社グループの報告セグメントの区分は、当連結会計年度において、『AI×リアル』ソリューション事業の単一セグメントとしておりましたが、翌連結会計年度より、「AIクラウド&コンサルティング」セグメント及び「不動産」セグメントに変更することといたしました。
これは、主に当社グループの2021年3月期中期計画において、今後の事業戦略の実現に適した体制を検討した結果、上記2セグメントでの組織体制構築が商品を開発する力とスピードを発揮する上で最適と判断し、当社グループにおける内部モニタリング単位を変更したことによるものであります。
「AIクラウド&コンサルティング」セグメントには、①AIクラウドサービス(ディープラーニング(深層学習)技術を核とするパッケージ化されたAIツールをクラウド上で提供するサービス)、②AIコンサルティングサービス(不動産仲介会社及び金融機関などが行うマーケティング活動、営業活動といった顧客企業の様々な顕在的、潜在的な経営課題を、AIによる予測ツールの作成・提供を通じて解決するコンサルティングサービス)及び③「おうちダイレクト」のAI及びITテクノロジーを活用した不動産会社向け業務支援サービスが含まれております。
「不動産」セグメントには、①不動産仲介サービス(高い専門性とテクノロジーの活用により、顧客満足度の高いコンサルティングサービス)、②「おうちダイレクト」における個人が自由に無料で不動産を売り出しできるサービス、③「おうちダイレクト」を活用した不動産仲介サービス及び④スマートホームサービス(収益型不動産「AIFLAT(アイフラット)」の販売)が含まれております。
当社グループの事業の歴史としましては、「不動産事業」、「ITプラットフォーム事業」、「AIソリューション事業」の順で発展してまいりました。実業(リアル)である「不動産事業」、ITの高度なテクノロジーとAI技術を基盤とした「ITプラットフォーム事業」及び「AIソリューション事業」の3つの事業を有機的に結合させた『AI×リアル』ソリューション事業を展開してまいりました。
「不動産事業」、「ITプラットフォーム事業」及び「AIソリューション事業」だけをそれぞれ行う事業者はありますが、当社が調べた限りではこれらの3つの事業を統合的に行っている事業者はなく、実業(リアル)を通じて得たデータ及び知見をAI技術やITにフィードバックし、それにより向上したAI技術やITを実業(リアル)に導入、またそこからフィードバックを得るという、3つの事業が相互に補完し合う強固なビジネスモデルを構築している点が、当社グループの強みであると考えております。
「不動産事業」においては、日本の不動産仲介ビジネスの従来の慣習を打破することをコンセプトとして、1人の社員が売主、買主の双方を担当せずにどちらか一方のみを担当し、担当する売主又は買主の利益のみを徹底追求する「エージェント制」を採用しております。なお、2018年度に当社が担当した不動産取引の契約額は、売主を担当する場合が9割以上を占めております。また、売主に対して不動産査定価格を提案する際には、不動産の市場動向、不動産の専有面積、築年数、間取り、階数、バルコニー方向などの住居条件、駅からの距離などの立地条件、居住中、空室、賃貸中などの入居状況など大量のデータをAI技術によって処理する「不動産価格推定エンジン」を活用し、恣意性を排した客観的な不動産査定価格を提示し、その上で、担当する社員の専門性を加味した不動産査定価格を提示しております。「エージェント制」と「不動産価格推定エンジン」の2つの特色を有することで、公平かつ客観的な不動産コンサルティングサービスを顧客に提供しております。
「ITプラットフォーム事業」としては、物件を売りたい売主からの問合せをインターネット上で集め、問合せがあった売主に対して「不動産価格推定エンジン」の提示する不動産査定価格を盛り込んだ査定書を提示し、不動産売却媒介契約を締結できた売主の物件をインターネット上で広告し買主を募集するといった一連の不動産仲介業務を、一気通貫で支援する不動産仲介会社向けのサービスを「おうちダイレクト」というITプラットフォームを通じて提供しております。「おうちダイレクト」を不動産仲介会社に提供することでその利用料をサブスクリプションフィー形式で頂き、不動産仲介に係る取引データを蓄積することができております。また、不動産仲介会社を通さずに個人が自らマンションの売出しを行うことができる個人向けサービスも提供しております。
「AIソリューション事業」では、「不動産事業」や「おうちダイレクト」を利用する不動産仲介会社を通じて得られた大量の不動産取引データをAI技術によって処理する「不動産価格推定エンジン」を、不動産仲介会社及び金融機関向けに提供しております。「ITプラットフォーム事業」において提供する「不動産価格推定エンジン」では、不動産売買価格のみを提供しておりますが、「AIソリューション事業」において提供する「不動産価格推定エンジン」においては、不動産売買価格のみならず、不動産賃貸の賃料を推定する機能なども提供しております。また、一人一人のお客様の希望に沿って、AIにより自動的にパーソナライズされたマーケティングメールを発送できるマーケティング支援ツールの提供も開始いたしました。さらに、不動産仲介会社及び金融機関のみならず電力業界や情報通信業界に対して、マーケティング活動、営業活動、人事業務、在庫管理業務といった顧客企業の様々な顕在的、潜在的な経営課題を、AI技術を用いて解決するコンサルティングサービスを提供しております。顧客企業の業務の過去の実績データを表形式に整理した上で、将来予測をAI技術により行うソフトウエアに入力すると、自動的に機械学習が実行され、顧客企業の経営課題を解決するための「AIによる将来予測ツール」が生成され、顧客企業は、「AIによる将来予測ツール」を業務に活用して将来予測を行うことで、業務の効率化を実現できるようになります。
当社は、第1期から第5期まで、「不動産事業」を中心に発展してまいりましたが、2017年より開始した不動産仲介会社向けの「ITプラットフォーム事業」及び2018年9月より開始した「AIソリューション事業」が順調な立ち上がりをみせていることから、今後は、「ITプラットフォーム事業」、特に「AIソリューション事業」を中長期的な成長ドライバーと位置付け、「不動産事業」から得られる実業の知見及び不動産取引オペレーションデータに加えて「ITプラットフォーム事業」から継続的に生成される豊富な不動産取引データを活用することで「不動産価格推定エンジン」の不動産仲介会社及び金融機関への利用拡大を図り、また、顧客企業の様々な顕在的、潜在的な経営課題を、AI技術を用いて解決するコンサルティングサービスを本格化することで、「AIソリューション事業」の成長を図ってまいります。
当社は、『AI×リアル』ソリューション事業の単一セグメントであり、セグメント情報を記載していないため、主要な事業内容について記載しております。
(1)不動産事業
当社グループは、不動産仲介サービス、IoTを活用したスマートホームサービスを展開しております。
① 不動産仲介サービス
不動産仲介サービスにおいては、専門性の高い不動産仲介エージェントが、大量の不動産取引データをAI技術によって処理する「不動産価格推定エンジン」を活用し、コンサルティングサービスを提供しております。
当社グループの不動産仲介サービスにおいては、売主、買主の双方を担当せずにどちらか一方のみを担当し、担当する売主又は買主の利益のみを徹底追求する「エージェント制」を採用しております。当社グループの「エージェント制」においては、当社グループの担当社員は売主及び買主のどちらか一方のお客様しか担当せず、当社グループが売主及び買主の両方を担当する場合においては売主と買主にそれぞれ異なる担当社員をエージェントとしてつけるため、各エージェントにおいては、お客様の意思決定に必要となる情報をすべて開示し、お客様の自由な意思決定による不動産売却又は購入を支援しております。
一般の不動産仲介業務においては、1人の営業担当者が売主及び買主の双方を担当し、売主及び買主の双方から不動産売買仲介手数料をいただく仕組みとなっており、より物件を高く売りたい売主、より物件を安く買いたい買主の双方が満足できない取引になる可能性は否めませんが、当社グループの「エージェント制」はどちらか一方のみの立場にたち、お客様を支援することで顧客満足度の高いコンサルティングサービスを提供しております。
不動産仲介サービスは、第1期からの祖業として当社グループの安定的な収益基盤であるとともに、「ITプラットフォーム事業」及び「AIソリューション事業」に対して、不動産実業の知見及び不動産取引オペレーションデータを継続的に提供する重要なサービスであると位置づけております。
② スマートホームサービス
スマートホームサービスにおいては、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社が提供するIoTサービス「MANOMA」を搭載した、主にファンドや法人に販売する収益型不動産「AIFLAT(アイフラット)」の施工・販売を行っております。
「AIFLAT(アイフラット)」では、本来の「MANOMA」に加えて、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社が提供するIoT機器「マルチファンクションライト」や超高速インターネット回線「NURO 光」も標準装備し、ホームセキュリティ機能、家電の遠隔コントロール機能、宅内における音声コントロール及びスマートロックの利用などが可能となっており、「AIFLAT(アイフラット)」のテーマであるIoTスマートホームを具現化しております。
スマートホームサービスは、当社グループの高収益なサービスであるとともに、IoT機器の利用頻度などの情報を利活用する上で重要なサービスであると位置づけております。
(2)ITプラットフォーム事業
当社グループは、不動産売買プラットフォームである「おうちダイレクト」を通じて、マンションの所有者が「不動産価格推定エンジン」の提示する推定成約価格などを参考に不動産仲介会社を通さずに自らインターネット上で直接マンションの売出しを行うことができるセルフ売却機能を提供しております。また、物件を売りたい売主からの問合せをインターネット上で集め、問合せがあった売主に対して「不動産価格推定エンジン」の提示する不動産査定価格を盛り込んだ査定書を提示し、不動産売却媒介契約を締結できた売主の物件をインターネット上で広告し買主を募集するといった一連の不動産仲介業務を一気通貫で支援する不動産仲介業務支援機能を提供しております。「おうちダイレクト」は、ヤフー株式会社と共同で提供しております。
[おうちダイレクトの2つのビジネスモデル]
不動産仲介業務支援機能として、①物件を売りたい売主からの問合せをインターネット上で集める集客機能、②問合せがあった売主に対して、「不動産価格推定エンジン」の提示する不動産査定価格のみならず周辺の物件の成約情報など売主の意思決定にあたって必要な情報も盛り込んだ査定書を作成する機能、③不動産仲介会社が不動産売却媒介契約を締結できた売主の物件をインターネット上に掲載して買主を募集する広告機能及び④AI技術による優良顧客特定機能の4つの機能を提供しております。
従来、大手不動産ポータルサイトのビジネスモデルは、不動産購入をSearch(検索・検討)しているユーザー向けに、不動産の広告情報を掲載する広告ビジネスであり、その後のTransaction(内見→申込→交渉→契約)プロセス全般に対して、AI技術やITによるサービスを提供しているとは言い難い状況でありました。これに対して、当社グループは、物件を売りたい売主からの問合せをインターネット上で集め、問合せがあった売主に対して「不動産価格推定エンジン」の提示する不動産査定価格を盛り込んだ査定書を提示し、不動産売却媒介契約を締結できた売主の物件をインターネット上で広告し買主を募集するといった一連の不動産仲介業務を一気通貫で支援する不動産仲介業務支援機能を提供しております。その結果、複数の不動産仲介会社に不動産仲介業務支援機能をご利用頂き、不動産仲介会社を通じて得たデータ及び知見をAI技術やITにフィードバックし、AI技術の精度やITの利便性をさらに向上させております。
[一般的な不動産仲介業務とおうちダイレクトの比較]
Search(検索・検討)領域においては、「おうちダイレクト」及びヤフー株式会社の運営する「Yahoo! 不動産」や「Yahoo! メール」などよりインターネットトラフィックを生成し、また、大手不動産ポータルサイトが参入していないTransaction(内見→申込→交渉→契約)領域においては、当社グループの不動産仲介サービス及び不動産仲介業務支援機能を利用する不動産仲介会社よりTransactionデータを収集できております。その結果、AI/ITサービスの質の向上につながり、プラットフォーム利用者がさらに増加することを目指しております。
(3)AIソリューション事業
2018年10月に、「AIソリューション事業」を行うための100%子会社であるSRE AI Partners株式会社を設立し、SRE AI Partners株式会社を通じて各種業界向けにAI技術を用いたソリューションサービスを提供しております。「AIソリューション事業」としては、AIクラウドサービス及びAIコンサルティングサービスの2つのサービスを展開しております。2018年10月に事業を開始しているため、事業活動期間としては短く、事業規模としては3つの事業の中では相対的に小さい状態であります。
2.PoCは、Proof of Conceptの略称で、試作開発の前段階における検証やデモンストレーションを指しております。
① AIクラウドサービス
AIクラウドサービスは、ディープラーニング(深層学習)技術((注)1)を核とし、当社グループが持つ不動産査定のノウハウや不動産取引特有の知識を導入し開発した「不動産価格推定エンジン」など以下に記載するパッケージ化されたAIサービスを、クラウドを通じて提供するサービスであります。
「不動産価格推定エンジン」は、様々なパートナー企業と連携したデータとソニーグループのAI技術を融合し、高水準の推定精度を達成しております。また、毎週、最新のデータに基づいた機械学習((注)2)モデルの更新を行うことにより、常に最新の推定価格の取得が可能となっており、不動産会社向けのAI不動産査定書サービスや、当社グループとヤフー株式会社との共同事業である「おうちダイレクト」などに活用されております。
「不動産賃料推定エンジン」は、物件の所在地、立地、築年数、所在階、間取り、広さ等の様々な情報を基に月額賃料を推定できます。
「類似物件検索エンジン」は、物件情報から類似する情報の多さや類似度合いを総合的に判断して、類似物件を検索することができます。
「物件探索マップ」は、地図上に中古マンション物件の情報をマッピングしたソリューションとなっております。
(注)1.ディープラーニング(深層学習)技術とは、AI研究における分野のうちの1つで、人間の脳の構造を模した計算モデルを用いる点に特徴があり、人間の指示なしにAIが自ら学習し、データ量を増やすほどその精度が向上するものであります。
2.機械学習とは、AI研究における分野のうちの1つで、人が持つ学習能力をコンピュータで実現しようとする技術であり、コンピュータに大量のデータと特定のルールを与えてデータを解析して、規則性や関係性を見つけ出す手法であります。
② AIコンサルティングサービス
AIコンサルティングサービスは、マーケティング業務の効率化、営業活動の業務効率化、人事業務の効率化、需要供給予測による在庫最適化といった、顧客企業の様々な顕在的、潜在的な経営課題を「AIによる将来予測ツール」を用いて解決するコンサルティングサービスであります。
顧客企業の各業務における過去の実績データを表形式に整理したうえで、将来予測をAI技術により行うソフトウエアに入力すると、自動的に機械学習が実行され、顧客企業の経営課題を解決するための「AIによる将来予測ツール」が生成されます。顧客企業は「AIによる将来予測ツール」を業務に活用して将来予測を行うことで、業務の効率化を実現できるようになります。「AIによる将来予測ツール」は、予測精度や、予測に寄与したパラメータを、専門用語を排除してわかりやすく表示しており、直観的に操作できるユーザーインターフェイスを備えており、AI技術の高度な専門性がなくとも利用可能な、導入ハードルの低い、汎用性の高いツールとなっております。
一般的に、AI技術の導入にあたっては、「PoC」、「サーバー構築、モデル作成」、「システム化(顧客サービスへのインテグレーション)」を行い、その後実運用に進むのが通常のフローであります。そのため、導入にあたっての高いコストが導入障壁になっておりますが、当社グループでは、簡易的にAI技術を導入することで経営課題を解決することを希望される顧客には汎用的な「AIによる将来予測ツール」のみを比較的低コストで提供し、AI技術のシステムインテグレーションを希望する顧客には「システム化(顧客サービスへのインテグレーション)」まで提供するなど、顧客の要望に応じた柔軟なAI技術の提供が可能であり、大手企業から中小企業までのそれぞれのニーズにあわせた導入メニューを提供しております。
また、「AIソリューション事業」においては、AIクラウドサービスで獲得した顧客とのリレーションの中で、さらに当該顧客の顕在的、潜在的な経営課題を発見し、当該課題をAIコンサルティングサービスで解決するクロスセルを行っております。AIクラウドサービスである「不動産価格推定エンジン」を提供した不動産仲介会社より、優良顧客を効率的に選定したいとの経営課題を聞き、AIコンサルティングサービスである「AIによる将来予測ツール」を用いて解決したクロスセルの実例があります。
事業の系統図は、次のとおりであります。
なお、当社グループの報告セグメントの区分は、当連結会計年度において、『AI×リアル』ソリューション事業の単一セグメントとしておりましたが、翌連結会計年度より、「AIクラウド&コンサルティング」セグメント及び「不動産」セグメントに変更することといたしました。
これは、主に当社グループの2021年3月期中期計画において、今後の事業戦略の実現に適した体制を検討した結果、上記2セグメントでの組織体制構築が商品を開発する力とスピードを発揮する上で最適と判断し、当社グループにおける内部モニタリング単位を変更したことによるものであります。
「AIクラウド&コンサルティング」セグメントには、①AIクラウドサービス(ディープラーニング(深層学習)技術を核とするパッケージ化されたAIツールをクラウド上で提供するサービス)、②AIコンサルティングサービス(不動産仲介会社及び金融機関などが行うマーケティング活動、営業活動といった顧客企業の様々な顕在的、潜在的な経営課題を、AIによる予測ツールの作成・提供を通じて解決するコンサルティングサービス)及び③「おうちダイレクト」のAI及びITテクノロジーを活用した不動産会社向け業務支援サービスが含まれております。
「不動産」セグメントには、①不動産仲介サービス(高い専門性とテクノロジーの活用により、顧客満足度の高いコンサルティングサービス)、②「おうちダイレクト」における個人が自由に無料で不動産を売り出しできるサービス、③「おうちダイレクト」を活用した不動産仲介サービス及び④スマートホームサービス(収益型不動産「AIFLAT(アイフラット)」の販売)が含まれております。
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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