有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S10025KU
株式会社ジャパンディスプレイ 事業の内容 (2014年3月期)
当社グループは、当社、海外製造子会社5社及び海外販売子会社10社で構成されており、主な事業内容は、中小型ディスプレイ及び関連製品の開発、設計、製造及び販売事業です。
ディスプレイは、電子機器の出力装置として文字、写真、動画等の画像を表示する電子部品です。当社グループの手掛ける中小型ディスプレイは、主としてスマートフォン、タブレット端末、車載用機器、医療機器、ゲーム機器、デジタルカメラ等に搭載されています。
当社グループの事業内容及び当社の関係会社の当該事業に係る位置付けは次の通りであります。
なお、当社グループの事業は、中小型ディスプレイ事業の単一セグメントであるため、事業別セグメント情報の記載を省略しています。
(1)研究開発・生産・販売体制
(研究開発体制)
当社グループは、統合前の3社各社から引き継いだ技術を更に発展させるとともに、新たな技術開発による市場の創造を目指しています。研究開発活動は、当社グループの本社部門である研究開発本部を中心に、生産本部、モバイル事業本部及び車載・C&I事業本部にて行われています。研究開発本部では全事業分野に関わる基礎的な要素技術及び事業拡大の基礎となる次世代技術の研究開発を行い、生産本部では生産性向上を狙った生産技術及びプロセス技術の開発に加え、生産性の革新的な向上に向けた活動に取り組んでいます。モバイル事業本部及び車載・C&I事業本部ではそれぞれの事業に係るアプリケーションや顧客からの要求に即した商品開発及び商品化に向けた部品・プロセス開発等を担うとともに、本部相互間の横断的な機能も有しており、技術ノウハウの素早い水平展開を行っています。また、ディスプレイ技術の開発に欠かせない顧客及び市場の潜在ニーズの探索及びニーズ実現のための要素技術の研究開発、人間工学的研究及び素材研究等を、大学や公的研究機関等との連携により積極的に推進しています。更に、国内外の幅広い顧客のニーズに対応するため、大学や公的研究機関に加え、部材・装置メーカー、技術ベンチャー等との共同開発を進めている他、開発の一部の委託も行っています。
(生産体制)
当社グループでは、主に中小型の液晶ディスプレイを生産しています。生産効率及び管理効率の最大化を図るため、液晶ディスプレイの製造工程を前工程と後工程に分け、グループ内にて事業分担をしています。
前工程は、マザーガラスと呼ばれる大型のガラス基板上にTFT(薄膜トランジスタ)のアレイ回路を作り込み、アレイ基板を製造するアレイ工程と、アレイ基板に液晶材料を滴下しカラーフィルター基板を重ね合わせるセル前工程からなります。後工程は、セル前工程で重ね合わせた基板を製品サイズに分断し、偏光板を貼付けて液晶セル(又は液晶パネル)を作るセル後工程と、液晶セルに液晶駆動用のドライバICやバックライトユニットを組付けて製品を仕上げるモジュール工程からなります。また、従来最終製品の組み立てを行うメーカーが担ってきた外付けタイプのタッチパネルやカバーガラスの貼り合せを、当社グループのモジュール工程で行うことが増えています。
[TFT液晶ディスプレイ製造工程図例]
当社グループでは、高度技術の集積である前工程は主として国内工場で担っており、茂原工場(千葉県茂原市)、石川サイト(石川県能美市及び同県能美郡)、深谷工場(埼玉県深谷市)、東浦工場(愛知県知多郡)及び鳥取工場(鳥取県鳥取市)の5生産拠点で量産を行っています。現在、スマートフォン及びタブレット端末向け等の高精細ディスプレイの生産は、主として茂原工場や石川サイト等のLTPS(低温ポリシリコン)ラインで行い、車載用機器・民生機器・産業用機器向けディスプレイの生産は、主として鳥取工場等のアモルファスシリコン(a-Si)ラインで行っています。また、各生産ラインではディスプレイの基板となるマザーガラスのサイズが異なっており、当社グループでは、生産品の仕様や受注数量、各ラインの稼働状況等を勘案のうえ、生産の割当てを行っています。
労働集約型の後工程については、製造子会社であるSuzhou JDI Electronics Inc.(中国)、Suzhou JDI Devices Inc.(中国)、Shenzhen JDI Inc.(中国)、Kaohsiung Opto-Electronics Inc.(台湾)、及びNanox Philippines Inc.(フィリピン)における生産に加え、海外の提携企業への委託にて大半の生産を行っています。一方、生産装置の自動化により、国内でも後工程における生産コストの低減が可能となったことや品質及び生産性の向上が見込めること等から、2013年度より後工程の一部を国内工場で開始しています。
なお、ガラス基板、偏光板、液晶ドライバIC等の部材は当社グループ外の専門メーカーから調達していますが、カラーフィルターやバックライトの一部は当社グループ内にて生産し、付加価値の取り込みを図っています。
液晶ディスプレイ用ガラス基板の世代、サイズ及び当社グループにおける前工程の生産拠点
(注) (a-Si)はアモルファスシリコンTFT技術採用工場を、(LTPS)は低温ポリシリコンTFT技術採用工場を表しています。
(販売体制)
当社グループはグローバルに事業を展開し、世界のスマートフォン販売台数上位のメーカーの大半と取引を行うなど、多くの顧客を有しています。顧客に密着した営業活動を行うため、海外販売子会社を米国、英国、ドイツ、香港、中国、台湾、韓国及びシンガポールに置き、国内では、東京の本社及び大阪の西日本オフィスに営業部門を置いています。営業本部は営業管理部、海外営業部、国内営業部の3部体制を敷いており、製品別、地域別に編成されています。商社経由の販売を極小化し、直販を拡大することで、顧客へのきめ細かいサービスの提供と顧客ニーズの吸い上げを目指しています。
特に、成長の著しい中国においては、中国市場でのビジネス拡大に不可欠な現地でのスピーディー且つ柔軟な対応を取ることのできる体制を構築するため、2013年11月、同国の中小型ディスプレイ市場において豊富な知識と経験を有する人材を筆頭とし、台湾・中国出身者を中心とする販売子会社Taiwan Display Inc.を設立しました。また、中国の顧客への営業、設計及び品質サポート機能の確立を図るため、2014年4月、同社の販売子会社を中国深圳に設立しました。
(2)中小型ディスプレイの特徴と市場動向
ディスプレイは身の回りの様々な機器に使われており、サイズや用途も多岐に渡りますが、サイズにより、主にテレビ、PCモニター、ノートブックPC等に搭載される大型ディスプレイと、スマートフォン、タブレット端末、車載用機器、ゲーム機器、デジタルカメラ等に搭載される中小型ディスプレイに大別されます。ディスプレイ業界では大型、中小型の双方を取り扱う企業が多く存在しますが、当社グループは中小型ディスプレイに注力しています。
当社グループが手掛けるディスプレイは、アプリケーション分野ごとに、「モバイル」「車載・C&I・その他」の2分野に大別しています。各分野の特徴と市場動向は次の通りです。
(モバイル分野)
当社グループの分類におけるモバイル分野には、スマートフォン、タブレット端末等のモバイル機器向けディスプレイが含まれます。
当分野は、Apple社のiOSやGoogle社のAndroidといったモバイル機器用オペレーティングシステムの登場や、高速データ通信のインフラ整備を背景としたモバイル機器の流通数量の拡大に加え、動画やゲーム等のWebコンテンツの充実を受けたモバイル機器の大画面化等により成長している分野です。また、当分野ではモバイル機器の高性能化に伴い、美しい画像表示や高感度なタッチ操作性等を備えた高性能ディスプレイの需要が増加しています。ディスプレイの性能は、端末メーカーにとって他社製品との差異化の源泉の一つとなっていることから、カスタム性が高く、高精細、広視野角、低消費電力、薄型、軽量、狭額縁等の様々な要求がなされています。最近では5型超の大画面、Full HD(400ppi超)の高精細液晶ディスプレイの需要が拡大しており、タブレット端末でも7型クラスのFull HD(300ppi超)や8型クラスのWQHD(300ppi超)のディスプレイの採用が始まっています。また当社グループでは、タッチセンサー機能を液晶セルに内蔵することで、薄型化、軽量化、センサー感度の向上を実現したPixel EyesTMや、光の3原色であるRGB(赤緑青)にW(白)を加え、バックライトの輝度制御を積極的に行うことで低消費電力化を実現したWhiteMagicTM等、顧客ニーズに合致した付加価値の高いディスプレイを提供しています。
スマートフォンやタブレット端末は、モデルチェンジが半年から1年と短いサイクルで行われ、多くの場合モデルチェンジごとにディスプレイの仕様も変わります。広い顧客基盤を持ち、多様なディスプレイを開発・生産する当社グループでは、潤沢な開発リソースを擁することで製品開発のサイクルを速め、各顧客にタイムリーに製品を提供する体制を確立しています。
(車載・C&I・その他分野)
当社グループの分類における車載・C&I・その他分野には、自動車のダッシュボードやカーナビゲーションシステムといった車載用機器、デジタルカメラやビデオカメラ、携帯型ゲーム機等の民生機器、レントゲン写真読影用モニター等の医療用機器、業務用装置等の産業用機器に使われるディスプレイが含まれます。なお、C&Iとは、Consumer(一般消費者用)and Industrial(産業用)の略語です。
オーディオやテレビ・DVD等の映像表示デバイスとして普及した車載用ディスプレイは、ナビゲーションシステムや安全性を高める付加機能としてのリアビューモニター等に採用されるディスプレイの他、ネットワーク接続によるエンターテイメントディスプレイとして、その市場の拡大を続けています。加えて近年は、スピードメーター、燃料計、運転手への警告等をデジタル表示するインストルメントパネル(インパネ)の搭載が高級車を中心に進んでいる他、それらの情報を目線を動かす必要のないフロントガラスに映し出すヘッドアップディスプレイ(HUD)を装備する車種も登場しており、これらのディスプレイは今後の市場拡大が見込まれています。車載用のディスプレイは、強い日差しの中や夜間でも見やすい画像表示を実現する高輝度・高コントラストといった光学特性の高さ、車内の厳しい温度条件に対応する広温度範囲動作保証(-30~85℃)や振動等への耐久性の高さ等、安全性確保の観点から要求される条件が非常に厳格であり、製品への信頼性確保が必須の分野です。そのうえで、自動車の電気制御の拡大に伴う低消費電力化、燃費向上のための軽量化、デザイン性を重視する高級車向けとして曲面フォルムや美しい黒表示等、性能・機能に対する要求水準も高まっています。車載用ディスプレイは、自動車の新モデルの開発期間に合わせて開発されること、及び厳しい信頼性の検証に時間を要することにより、顧客への技術提案から実際の販売まで数年を要します。また、耐久年数が長い自動車に搭載するため、長期の供給及びサポートが要求されます。当社グループでは、顧客が求める仕様へのきめ細かいカスタマイズ対応を行うとともに、長期の供給及びサポートをコミットし、安心して当社グループと取引していただける体制を構築しています。
デジタルカメラや携帯型ゲーム機等の民生機器は、機能においてスマートフォン等との競合が発生しており、今後大きな成長は見込みにくい分野です。しかしながら機器の高性能化によりスマートフォン等との差異化が図られており、搭載されるディスプレイについても高性能化への要求が高まっています。例えば、高級デジタルカメラには、写真画像にこだわりを持つユーザーの満足を得るためリアルな画像表示を実現し、屋外でも明るく見やすい高精細・高輝度なディスプレイが求められます。当社グループでは、このような需要を満たすため、消費電力を抑えて輝度を高めることが可能なWhiteMagicTM等、顧客ニーズを満たすディスプレイの提供を進めています。
産業用製品の医療用機器・業務用機器は、市場規模は小さいものの安定的な成長が見込まれる分野です。医療現場では、CT、MRI、マンモグラフィ等の医用画像診断装置の普及が進んでいますが、正確な診断のため、ディスプレイには広視野角、高い階調表現、高コントラスト表示等が必要とされています。当社グループはこれらの要求に応える技術力を有しており、顧客の要求にカスタマイズ対応可能な開発体制を整えています。
(3)当社グループが主に開発・生産する中小型ディスプレイの特徴
ディスプレイの分類の一つとして、非発光ディスプレイと発光ディスプレイがあります。前者の代表格が液晶ディスプレイ(LCD)であり、後者の代表格が有機EL(OLED)ディスプレイです。液晶とは、固体と液体の中間の特性を持つ物質で、電圧を加えると分子の並び方が変わる性質を持っています。この液晶の性質を電圧のオン・オフによって光(LED等のバックライト)の通過・遮断を制御するシャッターとして利用して画像を表示するのが液晶ディスプレイです。これに対し、有機ELディスプレイは、画素に電流を流すと自発光する有機化合物を用いて画像を表示します。当社グループでは、現時点では、LTPS技術を使った液晶ディスプレイの方が有機ELディスプレイよりも高精細化が進んでおり、主にスマートフォン向けに需要が拡大しているものと理解しており、LTPS液晶ディスプレイの生産に注力しています。一方、有機ELについても高精細ディスプレイの開発において一定の成果を得ており、将来の事業化を目指して試作ラインの構築を進めています。
ディスプレイの画像表示方式は、画素ごとに薄膜トランジスタ(TFT)を配置した方式が現在の主流となっています。薄膜トランジスタには、トランジスタの電極形成に非晶質のシリコンを用いたアモルファスシリコン(a-Si)TFTと、多結晶のシリコンを用いたポリシリコン(p-Si)TFTの他、酸化物半導体を使ったTFT等があります。ポリシリコンは電子が流れやすく、アモルファスシリコンや酸化物半導体と比べて大幅に高い電子移動度を実現できます。このため薄膜トランジスタの小型化による高精細化、開口率(光を通す面積)の向上による低消費電力化、周辺回路の基板上への取り込みによる狭額縁化が可能となっています。当社グループでは、ポリシリコンの中でも最高温度が摂氏500~600度以下の低温環境下で形成するLTPS TFT技術を採用し、高精細度が要求されるスマートフォンやタブレット端末向けディスプレイの生産を行っています。これに対し、車載用機器、民生機器、医療用機器向けのディスプレイは、現時点では主としてアモルファスシリコンTFT技術で生産しています。
(4)当社グループの事業における特徴
当社グループは、中小型ディスプレイ業界において次の点でユニークなポジションを確立していると理解しており、それが事業競争力の基盤となっていると考えています。
① 最終製品を持たず、中小型ディスプレイを専業とするビジネスモデル
モバイル機器の最終製品メーカーが自社製品に搭載するディスプレイの開発・生産を発注する際、当該メーカーは、発注先に対してディスプレイの仕様を開示します。しかし、発注先のディスプレイメーカーが自社または自社グループ内に自社ブランドの最終製品を持つ場合には、発注側にとっては、最終製品の競合となりうる者に対して自社の最終製品のディスプレイの仕様を開示することを意味します。この点、当社グループは最終製品メーカーを持たず、最終製品を生産する顧客と上記のように競合することがないため、顧客は安心して取引を行うことができます。また、当社グループは競合ディスプレイメーカーの多くが手掛けるテレビやPCモニター向けの大型ディスプレイを生産せず、スマートフォンやタブレット端末を中心とした中小型ディスプレイに注力しています。これにより、コモディティ化が進む大型ディスプレイ市場の影響を受けにくい他、全ての開発リソース及び資金を、よりカスタム性が高く、技術開発余地が大きく、更なる市場の拡大が期待される中小型ディスプレイ事業に集中することが可能となっています。
② 顧客ニーズを満たす技術力
当社グループの統合前の3社各社は、中小型ディスプレイ生産においてそれぞれが異なる技術に強みを有していました。当社グループは、各社よりこれら技術的強みと、それを担う優れた開発要員を引き継いでいます。
東芝モバイルディスプレイ(株)が得意としていたLTPS技術は、消費電力の低減、狭額縁の実現、コスト低減に有効であり、高性能モバイル機器に搭載されるディスプレイの生産に不可欠な技術となっています。当社グループは、東芝モバイルディスプレイ(株)で長期に亘り培われたプロセス技術を受け継ぎ、LTPS技術の特徴を活かした液晶ディスプレイの生産を行っています。
(株)日立製作所が世界で初めて開発し、(株)日立ディスプレイズが発展させたIPS液晶モードは、液晶の弱点である斜めから見たときの色変化を抑え、どの角度から見ても鮮明な画像を映し出す広視野角化技術です。タッチ入力との相性が良いという利点もあり、モバイル機器のみならず、車載機器向けにも採用が進んでいます。
ソニーモバイルディスプレイ(株)が得意としていたシステム技術は、美しい画像表示をするための信号処理技術です。この技術を活かし、同社ではタッチセンサー機能を液晶セルに内蔵したPixel EyesTMや、消費電力を低減したWhiteMagicTMを開発しました。当社グループにて改良されたこれらの製品は、スマートフォンやデジタルカメラ向けに採用が増加しています。また、タブレット端末向けのPixel EyesTMの開発も完了しています。
当社グループはこれらの技術を融合し、製品の更なる高度化を進めています。加えて、動画表示が可能な反射型カラーディスプレイ、高精細な有機ELディスプレイ及び、将来ニーズの高まりが期待されるシートディスプレイの開発に取り組み、進化を続ける顧客ニーズを満たすことを目指しています。
③ 幅広い顧客基盤
顧客ニーズを満たす技術力を備え、顧客と競合しない事業モデルを展開していることにより、当社グループは幅広い事業分野の顧客と密接な協業・取引関係を構築しています。当社グループは、ハイエンドスマートフォン市場でもプレゼンスを拡大している中国メーカーを含む国内外の主要モバイル機器メーカーの多くを顧客に持つ他、車載用機器向けでは大手電装メーカー、民生製品では国内エレクトロニクスメーカー等、幅広い顧客層を有しています。こうした数多くの顧客に提供する製品は大半がカスタム品であるため、当社グループでは、統合前の3社から引き継いだ開発リソースを最適配置することにより、それぞれの顧客の様々なニーズに対応していきます。また、幅広い顧客層を有していることで、市場全体の成長を捉えやすいポジションにあると当社グループは考えています。
④ LTPS液晶ディスプレイ需要を満たす生産能力
スマートフォン市場では5型クラスのサイズでFull HDのモデルが増えており、更に高い解像度のディスプレイの需要も増加しています。300ppi以上の高精細ディスプレイを、顧客からの低消費電力、狭額縁、薄型等の要求も満たしつつ高い歩留りで生産するには、現行のアモルファスシリコン技術では難易度が高く、LTPS技術の需要が高まっています。
当社グループはLTPS液晶ディスプレイの需要拡大を見込み、2013年6月、茂原工場(千葉県茂原市)に新設した世界最大クラス注の第6世代(ガラスサイズ 1500mm×1850mm)LTPSラインにおいて量産を開始しました。このラインの立ち上げにより、より多くの顧客からのLTPS液晶ディスプレイの需要に対応することが可能となり、今後のLTPS液晶ディスプレイの市場拡大にも寄与するものと考えています。
注:出所 NPD DisplaySearch (April 2014)
[事業系統図]
(2014年3月31日時点)
[用語集]
ディスプレイは、電子機器の出力装置として文字、写真、動画等の画像を表示する電子部品です。当社グループの手掛ける中小型ディスプレイは、主としてスマートフォン、タブレット端末、車載用機器、医療機器、ゲーム機器、デジタルカメラ等に搭載されています。
当社グループの事業内容及び当社の関係会社の当該事業に係る位置付けは次の通りであります。
なお、当社グループの事業は、中小型ディスプレイ事業の単一セグメントであるため、事業別セグメント情報の記載を省略しています。
(1)研究開発・生産・販売体制
(研究開発体制)
当社グループは、統合前の3社各社から引き継いだ技術を更に発展させるとともに、新たな技術開発による市場の創造を目指しています。研究開発活動は、当社グループの本社部門である研究開発本部を中心に、生産本部、モバイル事業本部及び車載・C&I事業本部にて行われています。研究開発本部では全事業分野に関わる基礎的な要素技術及び事業拡大の基礎となる次世代技術の研究開発を行い、生産本部では生産性向上を狙った生産技術及びプロセス技術の開発に加え、生産性の革新的な向上に向けた活動に取り組んでいます。モバイル事業本部及び車載・C&I事業本部ではそれぞれの事業に係るアプリケーションや顧客からの要求に即した商品開発及び商品化に向けた部品・プロセス開発等を担うとともに、本部相互間の横断的な機能も有しており、技術ノウハウの素早い水平展開を行っています。また、ディスプレイ技術の開発に欠かせない顧客及び市場の潜在ニーズの探索及びニーズ実現のための要素技術の研究開発、人間工学的研究及び素材研究等を、大学や公的研究機関等との連携により積極的に推進しています。更に、国内外の幅広い顧客のニーズに対応するため、大学や公的研究機関に加え、部材・装置メーカー、技術ベンチャー等との共同開発を進めている他、開発の一部の委託も行っています。
(生産体制)
当社グループでは、主に中小型の液晶ディスプレイを生産しています。生産効率及び管理効率の最大化を図るため、液晶ディスプレイの製造工程を前工程と後工程に分け、グループ内にて事業分担をしています。
前工程は、マザーガラスと呼ばれる大型のガラス基板上にTFT(薄膜トランジスタ)のアレイ回路を作り込み、アレイ基板を製造するアレイ工程と、アレイ基板に液晶材料を滴下しカラーフィルター基板を重ね合わせるセル前工程からなります。後工程は、セル前工程で重ね合わせた基板を製品サイズに分断し、偏光板を貼付けて液晶セル(又は液晶パネル)を作るセル後工程と、液晶セルに液晶駆動用のドライバICやバックライトユニットを組付けて製品を仕上げるモジュール工程からなります。また、従来最終製品の組み立てを行うメーカーが担ってきた外付けタイプのタッチパネルやカバーガラスの貼り合せを、当社グループのモジュール工程で行うことが増えています。
[TFT液晶ディスプレイ製造工程図例]
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当社グループでは、高度技術の集積である前工程は主として国内工場で担っており、茂原工場(千葉県茂原市)、石川サイト(石川県能美市及び同県能美郡)、深谷工場(埼玉県深谷市)、東浦工場(愛知県知多郡)及び鳥取工場(鳥取県鳥取市)の5生産拠点で量産を行っています。現在、スマートフォン及びタブレット端末向け等の高精細ディスプレイの生産は、主として茂原工場や石川サイト等のLTPS(低温ポリシリコン)ラインで行い、車載用機器・民生機器・産業用機器向けディスプレイの生産は、主として鳥取工場等のアモルファスシリコン(a-Si)ラインで行っています。また、各生産ラインではディスプレイの基板となるマザーガラスのサイズが異なっており、当社グループでは、生産品の仕様や受注数量、各ラインの稼働状況等を勘案のうえ、生産の割当てを行っています。
労働集約型の後工程については、製造子会社であるSuzhou JDI Electronics Inc.(中国)、Suzhou JDI Devices Inc.(中国)、Shenzhen JDI Inc.(中国)、Kaohsiung Opto-Electronics Inc.(台湾)、及びNanox Philippines Inc.(フィリピン)における生産に加え、海外の提携企業への委託にて大半の生産を行っています。一方、生産装置の自動化により、国内でも後工程における生産コストの低減が可能となったことや品質及び生産性の向上が見込めること等から、2013年度より後工程の一部を国内工場で開始しています。
なお、ガラス基板、偏光板、液晶ドライバIC等の部材は当社グループ外の専門メーカーから調達していますが、カラーフィルターやバックライトの一部は当社グループ内にて生産し、付加価値の取り込みを図っています。
液晶ディスプレイ用ガラス基板の世代、サイズ及び当社グループにおける前工程の生産拠点
世代 | ガラスサイズ(mm×mm) | 当社グループ前工程工場 |
第3世代 | 550×670 | 石川サイト(a-Si)、深谷工場(LTPS) |
第3.5世代 | 600×720 | 東浦工場(LTPS) |
第4世代 | 680×880 | 鳥取工場(a-Si) |
第4.5世代 | 730×920 | 茂原工場(a-Si/LTPS)、石川サイト(LTPS) |
第5.5世代 | 1300×1500 | 石川サイト(LTPS) |
第6世代 | 1500×1850 | 茂原工場(LTPS) |
(販売体制)
当社グループはグローバルに事業を展開し、世界のスマートフォン販売台数上位のメーカーの大半と取引を行うなど、多くの顧客を有しています。顧客に密着した営業活動を行うため、海外販売子会社を米国、英国、ドイツ、香港、中国、台湾、韓国及びシンガポールに置き、国内では、東京の本社及び大阪の西日本オフィスに営業部門を置いています。営業本部は営業管理部、海外営業部、国内営業部の3部体制を敷いており、製品別、地域別に編成されています。商社経由の販売を極小化し、直販を拡大することで、顧客へのきめ細かいサービスの提供と顧客ニーズの吸い上げを目指しています。
特に、成長の著しい中国においては、中国市場でのビジネス拡大に不可欠な現地でのスピーディー且つ柔軟な対応を取ることのできる体制を構築するため、2013年11月、同国の中小型ディスプレイ市場において豊富な知識と経験を有する人材を筆頭とし、台湾・中国出身者を中心とする販売子会社Taiwan Display Inc.を設立しました。また、中国の顧客への営業、設計及び品質サポート機能の確立を図るため、2014年4月、同社の販売子会社を中国深圳に設立しました。
(2)中小型ディスプレイの特徴と市場動向
ディスプレイは身の回りの様々な機器に使われており、サイズや用途も多岐に渡りますが、サイズにより、主にテレビ、PCモニター、ノートブックPC等に搭載される大型ディスプレイと、スマートフォン、タブレット端末、車載用機器、ゲーム機器、デジタルカメラ等に搭載される中小型ディスプレイに大別されます。ディスプレイ業界では大型、中小型の双方を取り扱う企業が多く存在しますが、当社グループは中小型ディスプレイに注力しています。
当社グループが手掛けるディスプレイは、アプリケーション分野ごとに、「モバイル」「車載・C&I・その他」の2分野に大別しています。各分野の特徴と市場動向は次の通りです。
(モバイル分野)
当社グループの分類におけるモバイル分野には、スマートフォン、タブレット端末等のモバイル機器向けディスプレイが含まれます。
当分野は、Apple社のiOSやGoogle社のAndroidといったモバイル機器用オペレーティングシステムの登場や、高速データ通信のインフラ整備を背景としたモバイル機器の流通数量の拡大に加え、動画やゲーム等のWebコンテンツの充実を受けたモバイル機器の大画面化等により成長している分野です。また、当分野ではモバイル機器の高性能化に伴い、美しい画像表示や高感度なタッチ操作性等を備えた高性能ディスプレイの需要が増加しています。ディスプレイの性能は、端末メーカーにとって他社製品との差異化の源泉の一つとなっていることから、カスタム性が高く、高精細、広視野角、低消費電力、薄型、軽量、狭額縁等の様々な要求がなされています。最近では5型超の大画面、Full HD(400ppi超)の高精細液晶ディスプレイの需要が拡大しており、タブレット端末でも7型クラスのFull HD(300ppi超)や8型クラスのWQHD(300ppi超)のディスプレイの採用が始まっています。また当社グループでは、タッチセンサー機能を液晶セルに内蔵することで、薄型化、軽量化、センサー感度の向上を実現したPixel EyesTMや、光の3原色であるRGB(赤緑青)にW(白)を加え、バックライトの輝度制御を積極的に行うことで低消費電力化を実現したWhiteMagicTM等、顧客ニーズに合致した付加価値の高いディスプレイを提供しています。
スマートフォンやタブレット端末は、モデルチェンジが半年から1年と短いサイクルで行われ、多くの場合モデルチェンジごとにディスプレイの仕様も変わります。広い顧客基盤を持ち、多様なディスプレイを開発・生産する当社グループでは、潤沢な開発リソースを擁することで製品開発のサイクルを速め、各顧客にタイムリーに製品を提供する体制を確立しています。
(車載・C&I・その他分野)
当社グループの分類における車載・C&I・その他分野には、自動車のダッシュボードやカーナビゲーションシステムといった車載用機器、デジタルカメラやビデオカメラ、携帯型ゲーム機等の民生機器、レントゲン写真読影用モニター等の医療用機器、業務用装置等の産業用機器に使われるディスプレイが含まれます。なお、C&Iとは、Consumer(一般消費者用)and Industrial(産業用)の略語です。
オーディオやテレビ・DVD等の映像表示デバイスとして普及した車載用ディスプレイは、ナビゲーションシステムや安全性を高める付加機能としてのリアビューモニター等に採用されるディスプレイの他、ネットワーク接続によるエンターテイメントディスプレイとして、その市場の拡大を続けています。加えて近年は、スピードメーター、燃料計、運転手への警告等をデジタル表示するインストルメントパネル(インパネ)の搭載が高級車を中心に進んでいる他、それらの情報を目線を動かす必要のないフロントガラスに映し出すヘッドアップディスプレイ(HUD)を装備する車種も登場しており、これらのディスプレイは今後の市場拡大が見込まれています。車載用のディスプレイは、強い日差しの中や夜間でも見やすい画像表示を実現する高輝度・高コントラストといった光学特性の高さ、車内の厳しい温度条件に対応する広温度範囲動作保証(-30~85℃)や振動等への耐久性の高さ等、安全性確保の観点から要求される条件が非常に厳格であり、製品への信頼性確保が必須の分野です。そのうえで、自動車の電気制御の拡大に伴う低消費電力化、燃費向上のための軽量化、デザイン性を重視する高級車向けとして曲面フォルムや美しい黒表示等、性能・機能に対する要求水準も高まっています。車載用ディスプレイは、自動車の新モデルの開発期間に合わせて開発されること、及び厳しい信頼性の検証に時間を要することにより、顧客への技術提案から実際の販売まで数年を要します。また、耐久年数が長い自動車に搭載するため、長期の供給及びサポートが要求されます。当社グループでは、顧客が求める仕様へのきめ細かいカスタマイズ対応を行うとともに、長期の供給及びサポートをコミットし、安心して当社グループと取引していただける体制を構築しています。
デジタルカメラや携帯型ゲーム機等の民生機器は、機能においてスマートフォン等との競合が発生しており、今後大きな成長は見込みにくい分野です。しかしながら機器の高性能化によりスマートフォン等との差異化が図られており、搭載されるディスプレイについても高性能化への要求が高まっています。例えば、高級デジタルカメラには、写真画像にこだわりを持つユーザーの満足を得るためリアルな画像表示を実現し、屋外でも明るく見やすい高精細・高輝度なディスプレイが求められます。当社グループでは、このような需要を満たすため、消費電力を抑えて輝度を高めることが可能なWhiteMagicTM等、顧客ニーズを満たすディスプレイの提供を進めています。
産業用製品の医療用機器・業務用機器は、市場規模は小さいものの安定的な成長が見込まれる分野です。医療現場では、CT、MRI、マンモグラフィ等の医用画像診断装置の普及が進んでいますが、正確な診断のため、ディスプレイには広視野角、高い階調表現、高コントラスト表示等が必要とされています。当社グループはこれらの要求に応える技術力を有しており、顧客の要求にカスタマイズ対応可能な開発体制を整えています。
(3)当社グループが主に開発・生産する中小型ディスプレイの特徴
ディスプレイの分類の一つとして、非発光ディスプレイと発光ディスプレイがあります。前者の代表格が液晶ディスプレイ(LCD)であり、後者の代表格が有機EL(OLED)ディスプレイです。液晶とは、固体と液体の中間の特性を持つ物質で、電圧を加えると分子の並び方が変わる性質を持っています。この液晶の性質を電圧のオン・オフによって光(LED等のバックライト)の通過・遮断を制御するシャッターとして利用して画像を表示するのが液晶ディスプレイです。これに対し、有機ELディスプレイは、画素に電流を流すと自発光する有機化合物を用いて画像を表示します。当社グループでは、現時点では、LTPS技術を使った液晶ディスプレイの方が有機ELディスプレイよりも高精細化が進んでおり、主にスマートフォン向けに需要が拡大しているものと理解しており、LTPS液晶ディスプレイの生産に注力しています。一方、有機ELについても高精細ディスプレイの開発において一定の成果を得ており、将来の事業化を目指して試作ラインの構築を進めています。
ディスプレイの画像表示方式は、画素ごとに薄膜トランジスタ(TFT)を配置した方式が現在の主流となっています。薄膜トランジスタには、トランジスタの電極形成に非晶質のシリコンを用いたアモルファスシリコン(a-Si)TFTと、多結晶のシリコンを用いたポリシリコン(p-Si)TFTの他、酸化物半導体を使ったTFT等があります。ポリシリコンは電子が流れやすく、アモルファスシリコンや酸化物半導体と比べて大幅に高い電子移動度を実現できます。このため薄膜トランジスタの小型化による高精細化、開口率(光を通す面積)の向上による低消費電力化、周辺回路の基板上への取り込みによる狭額縁化が可能となっています。当社グループでは、ポリシリコンの中でも最高温度が摂氏500~600度以下の低温環境下で形成するLTPS TFT技術を採用し、高精細度が要求されるスマートフォンやタブレット端末向けディスプレイの生産を行っています。これに対し、車載用機器、民生機器、医療用機器向けのディスプレイは、現時点では主としてアモルファスシリコンTFT技術で生産しています。
(4)当社グループの事業における特徴
当社グループは、中小型ディスプレイ業界において次の点でユニークなポジションを確立していると理解しており、それが事業競争力の基盤となっていると考えています。
① 最終製品を持たず、中小型ディスプレイを専業とするビジネスモデル
モバイル機器の最終製品メーカーが自社製品に搭載するディスプレイの開発・生産を発注する際、当該メーカーは、発注先に対してディスプレイの仕様を開示します。しかし、発注先のディスプレイメーカーが自社または自社グループ内に自社ブランドの最終製品を持つ場合には、発注側にとっては、最終製品の競合となりうる者に対して自社の最終製品のディスプレイの仕様を開示することを意味します。この点、当社グループは最終製品メーカーを持たず、最終製品を生産する顧客と上記のように競合することがないため、顧客は安心して取引を行うことができます。また、当社グループは競合ディスプレイメーカーの多くが手掛けるテレビやPCモニター向けの大型ディスプレイを生産せず、スマートフォンやタブレット端末を中心とした中小型ディスプレイに注力しています。これにより、コモディティ化が進む大型ディスプレイ市場の影響を受けにくい他、全ての開発リソース及び資金を、よりカスタム性が高く、技術開発余地が大きく、更なる市場の拡大が期待される中小型ディスプレイ事業に集中することが可能となっています。
② 顧客ニーズを満たす技術力
当社グループの統合前の3社各社は、中小型ディスプレイ生産においてそれぞれが異なる技術に強みを有していました。当社グループは、各社よりこれら技術的強みと、それを担う優れた開発要員を引き継いでいます。
東芝モバイルディスプレイ(株)が得意としていたLTPS技術は、消費電力の低減、狭額縁の実現、コスト低減に有効であり、高性能モバイル機器に搭載されるディスプレイの生産に不可欠な技術となっています。当社グループは、東芝モバイルディスプレイ(株)で長期に亘り培われたプロセス技術を受け継ぎ、LTPS技術の特徴を活かした液晶ディスプレイの生産を行っています。
(株)日立製作所が世界で初めて開発し、(株)日立ディスプレイズが発展させたIPS液晶モードは、液晶の弱点である斜めから見たときの色変化を抑え、どの角度から見ても鮮明な画像を映し出す広視野角化技術です。タッチ入力との相性が良いという利点もあり、モバイル機器のみならず、車載機器向けにも採用が進んでいます。
ソニーモバイルディスプレイ(株)が得意としていたシステム技術は、美しい画像表示をするための信号処理技術です。この技術を活かし、同社ではタッチセンサー機能を液晶セルに内蔵したPixel EyesTMや、消費電力を低減したWhiteMagicTMを開発しました。当社グループにて改良されたこれらの製品は、スマートフォンやデジタルカメラ向けに採用が増加しています。また、タブレット端末向けのPixel EyesTMの開発も完了しています。
当社グループはこれらの技術を融合し、製品の更なる高度化を進めています。加えて、動画表示が可能な反射型カラーディスプレイ、高精細な有機ELディスプレイ及び、将来ニーズの高まりが期待されるシートディスプレイの開発に取り組み、進化を続ける顧客ニーズを満たすことを目指しています。
③ 幅広い顧客基盤
顧客ニーズを満たす技術力を備え、顧客と競合しない事業モデルを展開していることにより、当社グループは幅広い事業分野の顧客と密接な協業・取引関係を構築しています。当社グループは、ハイエンドスマートフォン市場でもプレゼンスを拡大している中国メーカーを含む国内外の主要モバイル機器メーカーの多くを顧客に持つ他、車載用機器向けでは大手電装メーカー、民生製品では国内エレクトロニクスメーカー等、幅広い顧客層を有しています。こうした数多くの顧客に提供する製品は大半がカスタム品であるため、当社グループでは、統合前の3社から引き継いだ開発リソースを最適配置することにより、それぞれの顧客の様々なニーズに対応していきます。また、幅広い顧客層を有していることで、市場全体の成長を捉えやすいポジションにあると当社グループは考えています。
④ LTPS液晶ディスプレイ需要を満たす生産能力
スマートフォン市場では5型クラスのサイズでFull HDのモデルが増えており、更に高い解像度のディスプレイの需要も増加しています。300ppi以上の高精細ディスプレイを、顧客からの低消費電力、狭額縁、薄型等の要求も満たしつつ高い歩留りで生産するには、現行のアモルファスシリコン技術では難易度が高く、LTPS技術の需要が高まっています。
当社グループはLTPS液晶ディスプレイの需要拡大を見込み、2013年6月、茂原工場(千葉県茂原市)に新設した世界最大クラス注の第6世代(ガラスサイズ 1500mm×1850mm)LTPSラインにおいて量産を開始しました。このラインの立ち上げにより、より多くの顧客からのLTPS液晶ディスプレイの需要に対応することが可能となり、今後のLTPS液晶ディスプレイの市場拡大にも寄与するものと考えています。
注:出所 NPD DisplaySearch (April 2014)
[事業系統図]
(2014年3月31日時点)
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[用語集]
用語 | 解説 |
TFT(薄膜トランジスタ) | Thin Film Transistorの略。ガラス基板上にアモルファスシリコンや低温ポリシリコンで形成されたトランジスタ(スイッチングなどを行う半導体素子)のこと。 |
TFT液晶 | 液晶ディスプレイの一種で、画素にスイッチング素子として薄膜状に形成されたトランジスタ(Thin Film Transistor、薄膜トランジスタ)を使ったもの。 |
アレイ基板 | TFTが格子状に配列(array)されたガラス基板。 |
カラーフィルター基板 | カラー表示するためにサブピクセル(画素)をR(赤)G(緑)B(青)の3原色で格子状に塗り分けたガラス基板。 |
偏光板 | ある方向に振動している光のみを透過させる機能を有するフィルム。偏光板と液晶の動きにより、光の透過と遮断がコントロールされる。 |
ドライバIC | 液晶ディスプレイを表示させるための集積回路。 |
バックライトユニット | 液晶ディスプレイを表示させるため、液晶セルの裏側に配置した照明。 |
タッチパネル | ディスプレイに触れることで入力を行う装置。 |
カバーガラス | ディスプレイを保護するため表面に貼り付ける薄い強化ガラス板。 |
レジスト | 電極のパターンをガラス基板に形成する際に塗布する感光材の役目をする薬液。フォトレジストともいう。 |
エッチング | 露光・現像工程で薄膜上に形成された回路パターンの不要部分を除去する工程。 |
配向膜 | 液晶分子の向き(配向)を揃える膜。 |
配向処理 | 液晶分子の向き(配向)を揃えるため、布を巻きつけたローラーで一定方向に擦る、又は紫外線を照射すること。 |
LTPS(低温ポリシリコン) | Low Temperature Poly-Siliconの略。低温ポリシリコンともいう。ポリシリコンは、アモルファス(非晶質)状態のシリコンを熱処理することで結晶化させたもの。その中で、比較的低温(摂氏500~600度以下)の環境下で形成するTFT素子、又はその製法やそれを使った製品。 |
アモルファスシリコン(a-Si) | TFTに使われる材料の一つであり、Si原子が不規則に配列したアモルファス(非晶質)状態のシリコン半導体のこと。 |
ppi | pixel per inchの略で、1インチあたりのピクセルの密度を表す単位。(Pixel(ピクセル、画素)はディスプレイ画像の最小単位。) |
Full HD | 画面の解像度を表す表示規格の一つで、1080×1920画素のものを指す。「フルHD」や「フルハイビジョン」と表示されることもある。 |
WQHD | 画面の解像度を表す表示規格の一つで、1440×2560画素のものを指す。 |
コントラスト | 全画面白表示の輝度(最大輝度)と全画面黒表示の輝度(最小輝度)との比。 |
階調 | 明るさの濃淡を表現する段階の数のこと。画質を決める要素のひとつで、階調が多いほど、滑らかな描画ができる。 |
酸化物半導体 | 酸化物絶縁性を示すものが多い酸化物の中で、半導体の性質を示す化合物を使った半導体。 |
電子移動度 | 半導体の中の電子の移動のしやすさを示す値。移動度が高いほど電子動作が高速となるためTFTの小型化が可能であり、より複雑な回路を小面積で内蔵化できるので高精細なディスプレイの実現が可能となる。 |
IPS | In Plane Switchingの略。液晶モードの一つで、液晶分子を基板と平行な面内(in-plane)で回転させる。特に視野角特性に優れた技術。 |
反射型カラーディスプレイ | 太陽光や室内光等、外光の反射によって表示を行うタイプのカラーディスプレイ。バックライトを使う透過型ディスプレイと違い、上から入る光を反射させて表示する。バックライトを使わないため消費電力が非常に低い。 |
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