有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1003QWU
株式会社クラウドワークス 事業の内容 (2014年9月期)
当社は「21世紀の新しいワークスタイルを提供する」をミッションに掲げ、個の力を最大限活性化することにより、社会の発展と個人の幸せに貢献していくことを目的に事業を展開しております。
「学校を卒業直後に特定の企業に正社員として終身雇用され、定年を迎えて年金生活を送る」といった、多くの日本人が当たり前としてきた働き方は、もはや過去のものとなりました。リクルートワークス研究所「人材マーケット予測2015」によれば、日本における「正社員」比率は2002年の53.3%から2015年には45.2%にまで減少するといわれています。「非正規労働者」への依存度が高まる一方で、非正規労働者や特定の企業に属さない個人・フリーランスは、収入の不安定さを抱え、スキルアップのための教育機会や社会保障を得にくいなど、社会的に不利な立場に置かれることが多いのが実情です。当社は、この「正社員でなければワーキングプア」という二元論的構造を脱却し、多くの個人が働くインフラを構築することで、専門性の高いプロフェッショナルに企業の枠を超えて活躍する機会を、働き口不足に悩む地方在住者や若者に働く機会を提供したいと考えています。また、就業意欲がありながら育児や介護を理由に退職を選んだ女性、定年退職後も社会に貢献したいと考える活力あるシニアなど、現在の社会構造の中で埋もれた潜在労働力を掘り起し、社会全体を活性化したいと考えております。
また、企業においては、新たな人材活用のあり方が求められています。その背景の一つは、熾烈を極めるグローバル競争と長引くデフレの下、必要なときに必要なスキル・人材を柔軟に調達し、固定費を抑制したいというニーズの高まりです。特に、世界的に見ても少子高齢化が進行し、製造業からサービス業への産業構造変化が進む日本では、各企業が求めるスキルを持つ人材の獲得は今後も困難さが増すと考えられます。そしてまた、あらゆるもののコモディティ化が進む現代において、新たな価値創出により価格競争から脱却すべく、積極的に社外の人材やアイデアを活用する「オープンイノベーション」の概念への期待が高まっています。
当社が運営するクラウドソーシングサービス「クラウドワークス(CrowdWorks)」は、個人にとっての新しい働き方、そして企業にとっての新しい人材活用のあり方を提供するものと考えております。クラウドソーシングは、インターネットを活用することで、世界中の企業と個人が直接つながり、仕事の受発注を行うことができるサービスです。個人の時間の空き枠やスキルを社会全体でシェアできることから、世界的に広がりを見せる「シェアリングエコノミー」の一つとされています。
インターネット上で仕事の応募から報酬の受け取りまでを完結することができるため、個人は時間と場所にとらわれない新しいワークスタイルを獲得することができます。他方、企業は、多様なスキルを持った個人にオンラインでダイレクトにアクセスすることで、人材調達にかかる時間の大幅な短縮や費用対効果の向上が可能となります。また、消費者やユーザー、各方面の専門家など社外から広くアイデアを集めることも可能であり、研究開発や企画・マーケティングの分野に革新と共感をもたらすことができます。
「クラウドワークス」は2012年3月にサービスを開始し、登録ユーザー数(注1)は22万人(2014年9月現在)を超えております。総契約額も大きく成長を続け、直近四半期では4.9億円(第3期第4四半期会計期間)を突破いたしました。外務省、経済産業省など政府4省や、京都府、宮崎県、大阪市など約20の都道府県・地方自治体、自動車、通信、食品、教育、広告、メディアなど幅広い業種の大手企業・上場企業を含む4万社(2014年9月現在)にクライアント(発注者)として活用いただいており、一度仕事を発注いただいた約半数のクライアントに継続利用いただいております。(注2)
(注1)ユーザーは、「クラウドワークス」に会員登録したメンバー及びクライアントの累計数になります。また、一度も仕事の受注若しくは発注を行ったことのない非アクティブなメンバー及びクライアントも含まれております。
(注2)「クラウドワークス」上で二回以上仕事を登録したクライアントを継続利用クライアントと定義しております。
当社は、以下の形態にてサービスの提供をしております。
①「クラウドワークス」上で仕事のマッチングを行うプラットフォームサービス
②当社と発注企業が直接契約を結ぶエンタープライズサービス
「クラウドワークス」の各サービスの主な特徴は以下のとおりであります。
① 開発・デザインからモノづくりまで幅広いジャンルの仕事の受発注が可能
「クラウドワークス」では、アプリやソフトウェアの開発、ホームページ制作、ロゴやバナー、チラシなどのデザイン、記事作成やネーミングなどのライティング、データ入力やリスト作成などの事務作業をはじめとした188カテゴリ(2014年9月現在)の仕事を依頼することができるようになっております。また、クラウドソーシングによるモノづくりをサポートするプラットフォーム「メイカーズワークス」では、商品企画やプロダクトデザイン、機構設計、回路設計などのハードウェア設計、建築設計、CADや3Dプリンター用データ作成などの分野に対象を広げ、製造業・建設業の仕事が発注できるしくみを整備しております。
② 受発注プロセスのすべてがオンライン上で完結
クライアントは、「クラウドワークス」上のフォームに必要事項を入力するだけで、世界108ヶ国の多様なスキルを持った個人に対し、仕事を依頼することができます。依頼した仕事に対してメンバー(受注者)から募集があった場合、あるいは「クラウドワークス」上でメンバーのプロフィールを閲覧し希望に合致する人材を見つけた場合、そのメンバーに直接アクセスし、スキルや報酬などの条件が合意に至れば、その場で契約を締結できます。その後メンバーは業務を行い、クライアントがその成果物を検収した後でメンバーに報酬が支払われます。このように、「クラウドワークス」では発注から契約、業務管理、納品、検収、支払いの一連のプロセスをオンライン上で完結することができます。
また、メンバーは「クラウドワークス」上に登録されている様々な仕事の中から自分のスキルに合った仕事を探し、自由に応募・提案することができます。業務の進行は原則として「クラウドワークス」上のメッセージツールなどを用いて行うため、場所や時間にとらわれずに仕事を行い、報酬を得ることが可能です。
③ 仕事の依頼・契約まで無料で利用可能
「クラウドワークス」では会員登録、仕事の依頼・応募、クライアント・メンバー間での契約締結までを無料でご利用いただけるサービスとなっております。実際にメンバーが「クラウドワークス」上で仕事を行った後、当社が契約金額の一部をシステム利用料として受け取る方式となっております。
④ 安心に取引できる決済システム
クライアントとメンバーは取引を行う際、「クラウドワークス」上で業務委託契約を締結することとなりますが、金銭のやり取りについては当社を通して行われ、直接ユーザー同士が行うことはありません。そのため、業務を行ったにもかかわらず報酬を獲得できない、報酬を支払ったのに業務が行われないといったトラブルを回避し、安心して取引を行っていただけるサービスとなっております。
⑤ 依頼したい内容に合わせて選べる発注形式
「クラウドワークス」では、依頼したい仕事の内容によって「コンペ形式」「タスク形式」「プロジェクト形式(固定報酬制)」「プロジェクト形式(時給制)」の4種類の発注形式を選ぶことができます。
「コンペ形式」は不特定多数の個人から提案を募集し、集まった提案の中から最も希望に合ったものを採用し、採用案にのみ報酬を支払う発注形式で、ロゴデザインやネーミングなど広くアイデアを募りたい場合に適しています。
「タスク形式」は特定のスキルを必要としない定型的な仕事を大量に発注したい場合に全体の発注量と単価を決めて依頼し、複数の人と契約する発注形式です。
「プロジェクト形式(固定報酬制)」はアプリ開発やホームページ制作など成果物が明確で、専門性の高いスキルを持ったプロフェッショナルに依頼したい場合に適し、候補となるメンバーの実績や作業計画の提案を参考に、個別に条件や報酬を交渉してから契約を結びます。
「プロジェクト形式(時給制)」では、メンバーの業務開始・終了を記録することのできるシステムを活用し、業務中の画面、業務内容などをクライアントに自動的に送信することができます。これによりクライアントはメンバーがいつどのような仕事を行っているかを把握することが可能になり、メンバーもクライアントに業務内容を報告する手間を省くことを実現しております。時給制での契約は、求めるスキルを持ったメンバーと継続的な取引を行うことに適し、あたかも社外にバーチャルなチームを持つ感覚を得られます。
⑥ 取引終了後の相互評価と実績の蓄積
取引が終了する度、クライアントとメンバーは「スキル」「品質」「締め切り」「コミュニケーション」「協力的姿勢」の5つの項目を相互に評価し、その結果が「クラウドワークス」上で公開されます。過去の取引実績と評価が参照されることにより、クライアントは評価の高いメンバーを選んで発注することができ、メンバーは自らのスキルや実績を証明することにより多くの指名を受けたり、より高い報酬で仕事を受注したりすることができます。また、評価の低いクライアントが依頼した仕事はメンバーから選ばれず契約が成立しにくくなるため、業務をスムーズに進めるためのクライアントの努力を促し、受発注者双方の立場を対等にする効果があります。
⑦ 完全内製による「フルスタッフ・ユーザーサポート」
クラウドソーシングの普及は、未だ発展途上にあり、発注者も受注者も多くの不安を抱えていることがあります。当社は「クラウドワークス」利用者が安心、円滑にサービスを利用できるよう、社内に完全内製のユーザーサポート体制を整備しております。当社は、機能面の差別化が難しく、容易に模倣されやすいインターネットサービスにおいて、数値化されないユーザー体験(UX)の蓄積こそがユーザーに選ばれる最終的な要素であり競争力の源泉であると考えるためです。ユーザーサポートを外部委託せず社内に置くことで、リアルなユーザーの声を直接収集し、それを迅速に社内共有した上で当事者意識をもって対応し、サービス設計に反映させていくことが可能となります。
⑧ ソリューション提案に強みを持つ営業体制
大企業が新しいスキームであるクラウドソーシングを利用し、個人への発注を行うことは、内規上のハードルがあることが通常です。当社は、大企業の業務オペレーションや法務、社内決裁プロセスに精通した上で、大企業のニーズに応じたサービスのカスタマイズやソリューションの提案、発注担当者が企業内の稟議を通すための支援を積極的に行っています。
⑨ 確実な品質・納期管理としくみ化を実現する社内ディレクション体制
エンタープライズサービスにより当社が直接受託した案件については、社内ディレクションチームが「クラウドワークス」上のメンバーに仕事の発注を行っています。複雑・大量の案件を適切に分解した上で、オンライン上で多数のメンバーと同時に契約し、成果物の質と納期を守るべく安全確実に業務管理を行うには、多数の試行錯誤と創意工夫が必要です。当社は2013年末に本格的な体制を立ち上げ、レギュレーションの整備、業務プロセスの構築、自動化ツールの開発・導入を進めたことにより、大量のタスク案件を処理するオペレーションを短期間で構築することに成功しました。今後、エンタープライズサービスによる契約が拡大することに伴い、案件数・複雑度・仕事の種類ともに大きく拡大することが予想されますが、人手をできるだけ介さず工数とミスを最小化するしくみを継続的に開発してまいります。
また、ミッションである「21世紀の新しいワークスタイルを提供する」の下、当社は「クラウドワークス」のサービス拡充を通じて、以下の4点について貢献していきたいと考えております。
① 地域活性化
日本全国どこでも同じ条件で仕事を受注できるというクラウドソーシングのメリットを活かし、仕事の数が少ない地域において、新たな雇用を生み出していきます。また、人手不足に悩む地域の中小企業がクラウドソーシングによって適切な人材にアクセスできるようにすることで、地域経済の活性化に貢献してまいります。2014年7月には、地域在住者のITリテラシーや受発注スキルの不足を補うため、各地のコ・ワーキングスペースや地元にネットワークを持つ団体と提携し、人が介在する形でクラウドソーシングの活用をサポートする「クラウドワークス・アンバサダー プログラム」を開始し、32都道府県46団体(2014年9月現在)との連携体制を構築しております。
② 女性、シニアの活躍促進
クラウドソーシングでは、時間と場所にとらわれずに仕事ができることから、育児・介護を理由に企業を退職した女性に在宅でスキルを活かして働く機会と収入源を提供することができます。また、企業を定年退職後もスキルと意欲を持つシニアが、仕事を通じて活躍できる機会を提供します。
③ 人材育成
「クラウドワークス」内で、スキルアップを行うことのできる教育プログラムを拡充することで、メンバーが収入を増やし、よりハイレベルな仕事や未経験の仕事にチャレンジする機会を提供したいと考えております。当社はこれまでに、日本マイクロソフト株式会社と、エンジニア向けに同社のツール活用方法の教育プログラムを提供し、その修了を証明するライセンスを発行してメンバーのプロフィールに表記できる取り組みをしています。また、株式会社サンケイリビング新聞社とはライティングスキル向上のためのEラーニングプログラムを開発し、メンバーに無料で提供しています。さらに、都道府県・地方自治体と連携し、在宅ワーカーのスキルアップを目指す教育プログラムの開発・提供にも取り組んでおります。
④ 個人の信用形成
「クラウドワークス」で働いた実績や取引の評価を見える化することで、現在、賃貸契約や融資などで与信が得にくい個人事業主が社会的信用を得やすくなると考えます。また、育児や介護を理由に企業を退職した女性などが「クラウドワークス」を活用し、自分のペースを守りながら自宅で仕事を続け、継続的にスキルを磨く機会を得ていたことを取引実績により証明することで、育児・介護期間をブランクにすることなく、再就職しやすいしくみを作ることができます。当社は、企業に属さない個人のキャリアを蓄積し証明しうる社会インフラを構築したいと考えております。
「クラウドワークス」のサービス開始から現在にいたるまでの総契約額(注)の推移は以下の通りであります。
回次 決算年月 | 総契約額(千円) | 前四半期比(%) |
第1期第2四半期 2012年3月 | 525 | ― |
第1期第3四半期 2012年6月 | 20,774 | 3,954.7 |
第1期第4四半期 2012年9月 | 35,121 | 169.1 |
第2期第1四半期 2012年12月 | 59,138 | 168.4 |
第2期第2四半期 2013年3月 | 95,028 | 160.7 |
第2期第3四半期 2013年6月 | 132,734 | 139.7 |
第2期第4四半期 2013年9月 | 202,936 | 152.9 |
第3期第1四半期 2013年12月 | 286,582 | 141.2 |
第3期第2四半期 2014年3月 | 333,602 | 116.4 |
第3期第4四半期 2014年9月 | 499,843 | 131.2 |
(注)総契約額は、プラットフォームサービスにおいて契約がされた金額と、エンタープライズサービスにおいてクライアントから受注した業務委託料及び広告掲載料を含めております。
「クラウドワークス」では、下記の手数料をクライアント及びメンバーから受領し、営業収益として計上しております。
以上述べた事項を事業系統図によって示すと以下の通りであります。
(注)エンタープライズサービスは、クライアント(発注者)からの業務委託料からメンバー(メンバー)への報酬金額を除いた金額を営業収益として計上しております。
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