シェア: facebook でシェア twitter でシェア google+ でシェア

有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1007855

有価証券報告書抜粋 株式会社ヘリオス 事業の内容 (2015年12月期)


沿革メニュー関係会社の状況

当社は、日本が誇る優れた技術をもって難治性疾患を罹患された方々に新しい治療法を提供するべく、化学物質の合成によって医薬品を作製する従来型の化合物医薬品(低分子医薬品)分野に加え、当社が中核的な事業領域と位置付けているiPS細胞に関連する技術を活用した再生医療等製品(以下「iPSC再生医薬品」といいます。)分野において、医薬品の研究開発を行っております。
なお、当社の事業セグメントは、医薬品事業のみの単一セグメントであります。

(1)事業の概要
(ア)iPSC再生医薬品分野
① 概要
iPSC再生医薬品は、iPS細胞を分化誘導(細胞を特定の機能を持った細胞、例えば神経細胞・皮膚細胞などに人為的に変化させることをいいます。)して作製した健康な細胞を移植することによって、高齢化などにより機能不全に陥った細胞等を置換して機能を回復することを目的とする製品であります。

以下、詳細なパイプラインの説明に先立ち、まず(i)iPS細胞、(ⅱ)網膜色素上皮細胞(以下「RPE細胞」といいます。)と加齢黄斑変性、(ⅲ)RPE細胞移植による加齢黄斑変性治療法及び(ⅳ)臓器原基を用いた3次元臓器に関してご説明いたします。

(ⅰ)iPS細胞
iPS細胞(人工多能性幹細胞)とは、2006年に国立大学法人京都大学(以下「京都大学」といいます。)の山中伸弥教授が世界で初めて作製に成功し、2012年にその功績からノーベル生理学・医学賞を受賞したことで広く知られるようになった、皮膚などの体細胞にいくつかの遺伝子(山中因子)を導入することによって作り出される、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力(多能性)と、ほぼ無限に増殖する能力(増殖能)を持った細胞であります。
ヒトの体は約60兆個の細胞からなりますが、それらの細胞は全て元々一つの細胞であった受精卵が細胞分裂を繰り返し、それぞれ臓器・器官等を構成する細胞へと分化したものであります。受精卵が特定の細胞に分化していく流れは一方通行であり、従来の技術では一度分化した細胞を分化する前の細胞に戻すことはできませんでした。ところが、皮膚細胞などの成熟した細胞にいくつかの遺伝子を導入することにより、新たに様々な細胞に分化する能力(多能性)とほぼ無限に増殖する能力(増殖能)を持たせることに成功したものがiPS細胞であります。iPS細胞のような多能性幹細胞は、いずれも自然に特定の細胞に分化していく訳ではないため、特定の細胞に分化を誘導するためにはiPS細胞の作製とは別の技術が必要となります。
加えて、近年、細胞医薬品分野においては、罹患者自身から採取した細胞(自家細胞)由来の幹細胞を用いたもののみならず、安全性が確認された他人の細胞(他家細胞)由来の幹細胞を活用した医薬品などの研究開発が進んでおります。
なお、iPS細胞と比較される多能性幹細胞としてES細胞(胚性幹細胞)があります。ES細胞は、受精卵から採取した多能性幹細胞で、同じく多能性と増殖能を備えているものの、受精卵から細胞を採取するという点の倫理的な問題等から国内では過去ヒトに関して研究開発が必ずしも十分に進まなかった歴史があります。

(ⅱ) RPE細胞と加齢黄斑変性
網膜は、光や色を感じる視細胞を含む感覚網膜(神経性網膜)と、RPE細胞と呼ばれる組織から構成されます。RPE細胞は、網膜の外側にある一層の細胞で、感覚網膜への栄養補給や老廃物の分解を担っています。そのため、RPE細胞の機能が低下すると視機能を担う感覚網膜の機能も低下してしまいます。
当社が最初の適応症(治療法の対象となる症状をいいます。以下同じ。)として治療法の実用化に取り組んでいる加齢黄斑変性(AMD :Age-related Macular Degeneration)は、網膜変性疾患の一種であり、網膜の中でも視力を保つために極めて重要な役割を果たす「黄斑部」に障害が生じる病気で、発症すると次第に視力が低下し、見え方に異常が生じるなどの症状が現われます。
(黄斑部と網膜色素上皮細胞)

0101010_001.png


加齢黄斑変性は、滲出型(新生血管型:ウェット型)と非滲出型(萎縮型:ドライ型)に大別され、その原因は、黄斑部を支えるRPE細胞が老化等の原因により感覚網膜への栄養補給や老廃物の分解ができなくなってしまうことにあるものとされております。
日本人に多いウェット型は、黄斑部を支えるRPE細胞の機能不全に伴い、RPE細胞内に貯まった老廃物を分解するために、その外周にある脈絡膜から、脈絡膜新生血管と呼ばれる異常な血管が生えてくるのが特徴であります。この血管は正常な血管とは異なり、もろくて透過性が高いため、破れて出血し、又は水がしみだしてしまうため、網膜が浮腫を起こし、黄斑部の機能が阻害され、視力の低下や視野の歪みなどを生じます。
これに対して、欧米人に多いドライ型は、RPE細胞が加齢により萎縮してしまうことにより、網膜に障害が生じて視力が徐々に低下していく病気であります。
加齢黄斑変性の詳しい発症原因は未だ解明されておらず、根本的な治療法も確立しておりません。加齢黄斑変性は、欧米のような先進国では成人の失明原因として最も多く、公益財団法人難病医学研究財団 難病情報センターのホームページの記載によると、日本での推定罹患者数は2007年時点で69万人(但し、罹患者数を正確に把握できないため、2007年に福岡県内の人口約1万人の久山町において行われた調査結果を日本の人口に換算した推定値)と推定されております。
また、米国国立眼病研究所(National Eye Institute)のホームページにおいて公開されている統計データによると、2010年時点で米国において207万人いると推定される加齢黄斑変性の罹患者は、2030年(2030年)には366万人に増加すると予測されております。

(ⅲ)RPE細胞移植による加齢黄斑変性治療法
加齢黄斑変性の罹患者に対するRPE細胞の移植治療法は、これまでも多くの移植手術が試されておりましたが、これまでは特に移植対象となる細胞の確保が難しいという点が大きな課題でした。
特に2006年に英国において罹患者自身の眼の黄斑部周辺のRPE細胞を剥離して作製したRPE細胞のシートを移植するという治験が行われましたが、一定の有効性が確認されたものの、移植に必要な細胞を眼内の健常な箇所から切除する際の侵襲が大きく一般化はしませんでした。
これに対して、当社のRPE細胞の移植治療法は、国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」といいます。)の髙橋政代プロジェクトリーダー等が中心となって考案したiPS細胞からRPE細胞を分化誘導し移植する技術・知見を基礎として、量産化・品質の安定化等に向けた当社独自の技術・知見を加えて開発したものであり、罹患者自身ではない第三者の細胞から作製され、安全性等に関する基準を満たしたiPS細胞から作製したRPE細胞を含む懸濁液(以下「iPS細胞由来RPE細胞懸濁液」といいます。なお、懸濁液とは液体中に固体粒子が分散しているものをいいます。)を注入し、又はiPS細胞由来RPE細胞のシート(以下「iPS細胞由来RPE細胞シート」といいます。)を移植し、患部に定着させることにより感覚網膜への栄養補給や老廃物の分解機能を回復させ、視機能を改善させる治療法であります。
当社は、日本人に多いウェット型の加齢黄斑変性と欧米人に多いドライ型の加齢黄斑変性の両方を適応症として、この治療法の実用化を目指しております。

以下は、国内におけるiPS細胞の製造からiPSC再生医薬品として製剤化されたRPE細胞(以下「RPE細胞製品」といいます。)の罹患者への投与までの流れを示す図であります。

0101010_002.png


また、以下は当社が実用化を目指しているiPS細胞由来RPE細胞懸濁液又はシートを用いた加齢黄斑変性の治療法を示す図であります。

0101010_003.png

0101010_004.jpg


(ⅳ)臓器原基を用いた3次元臓器
当社は、公立大学法人横浜市立大学大学院医学研究科臓器再生医学 谷口英樹教授、同武部貴則准教授ら研究グループが開発したiPS細胞等から機能的なヒト臓器を作製する技術に関し、2014年10月、全世界における独占的な特許実施許諾契約を締結するとともに、同研究グループと共同研究を開始しています。
同技術は、胎内で細胞同士が協調し合って臓器が形成される過程を模倣するという発想から開発されたもので、3種類の細胞(内胚葉細胞、血管内皮細胞、間葉系幹細胞)を一緒に培養することで臓器のもとになる立体的な臓器原基(臓器の芽)を人為的に創出する新規の細胞培養操作技術です。具体的には、例えば肝臓の場合、肝臓の機能を担う肝細胞の前駆細胞をiPS細胞から作製し、血管を作り出す血管内皮細胞と、細胞同士をつなぐ働きなどを持つ間葉系幹細胞と特別な条件下で共に培養すると、48時間程度で立体的な肝臓原基が創出されます。さらにヒトiPS細胞から作製したヒト肝臓原基をマウスの生体内に移植すると、ヒト血管構造を持つ機能的な肝臓へと成長し、肝不全モデルマウスへの移植実験では非移植群のマウスと比較して生存率が有意に改善するという治療効果が発現することが明らかになっています。同研究グループは、肝臓のみならず、膵臓、腎臓、腸、肺、心臓、脳などさまざまな器官の3次元的な臓器原基を創出することにも成功しています。
横浜市立大学では、2019年に新生児の代表的な代謝性肝疾患である「尿素サイクル異常症」を対象とした臨床研究を実施する計画が進められています。現在、臓器が適切に機能しない疾患に対しては、機能を損なった臓器を健常な臓器へ置換する臓器移植が有効な治療法として実施されています。しかしながら、年々増大する臓器移植のニーズに対し、ドナー臓器の供給は絶対的に不足しており、iPS細胞等を用いて作製した臓器原基をヒトの体内に移植することによって機能的なヒト臓器を創り出すという新たな再生医療等製品(3次元臓器)は、臓器移植の代替治療としての新たな治療概念を提唱できるものと期待されます。

② 開発に向けた事業上の取組み
当社は、2013年2月にiPSアカデミアジャパン株式会社との間でRPE細胞を有効成分として含有する細胞製品を対象とする全世界を許諾領域としたiPS細胞樹立基本技術に関する特許実施権許諾契約を締結して非独占的ライセンスを受けるとともに、理研との間で同年3月にiPS細胞を含む多能性幹細胞由来RPE細胞を有効成分として含有する再生医療製品を対象とする全世界を許諾領域とした特許実施許諾契約を締結して独占的ライセンスを受けております。
また、当社は、かかるRPE細胞製品を用いた加齢黄斑変性の治療法の開発を迅速かつ確実に進めるべく、2013年12月に、大日本住友製薬株式会社(以下「大日本住友製薬」といいます。)との間で、日本におけるRPE細胞製品の開発を共同して行うことを合意し、同社との間で①当社の保有する知的財産権の実施許諾に関する実施許諾契約書(サブライセンス契約)、②共同開発を行う上での役割分担や費用負担を定めた共同開発契約書、並びに、③当該製品の製造や販売促進業務を受託する合弁会社の設立と同社への業務委託料等を定めた合弁契約書を締結いたしました。
これらの契約書のうち、実施許諾契約書においては、契約一時金5億円及び開発の進捗に伴って支払われるマイルストン収入11億円について合意されており、また、共同開発契約書においては、当社がRPE細胞製品の開発に際して必要となる開発費用のうち最大52億円を大日本住友製薬が負担することが合意されております。なお、損益計算書等における研究開発費の額は、大日本住友製薬による開発費用の負担分を控除した後の金額であります。

※マイルストン収入とは、契約に基づき、開発の進捗によりあらかじめ定められた目標(マイルストン)の達成に応じて受領する一時的な収入をいいます。

当社は、大日本住友製薬との間で、共同開発契約書に基づき、当社がRPE細胞製品の前臨床試験や治験の実施、製造販売承認申請等を行うことに合意しております。他方、RPE細胞製品の製造や販売促進業務に関しては、大日本住友製薬が過去から培ってきた医薬品製造ノウハウや医薬品の販売網等を活かす形が望ましいと判断し、大日本住友製薬との合弁契約書に基づき、両社共同出資により2014年2月に設立された株式会社サイレジェン(以下「サイレジェン」といいます。)に対して、国内における製造及び販売促進業務を独占的に委託することに合意しております。

さらに、当社は、RPE細胞製品の次のiPSC再生医薬品の候補を探索すべく、再生医療分野において実績を上げる大学・研究機関との共同研究を積極的に進めており、iPS細胞から臓器原基を用いた3次元臓器を作製する研究において実績を有する横浜市立大学との間で、肝臓原基作製に向けた共同研究を既に開始しております。当社は、将来的に肝臓、腎臓及び膵臓といった臓器の再生を含め、アンメットメディカルニーズ(未だ有効な治療法がない医療ニーズ)の高い領域についてパイプラインの拡充を模索してまいります。

なお、当社は、iPS細胞を用いた再生医療を新たな産業として捉え、研究開発から製造販売承認の取得、製造・販売までを、当社、関係会社及び提携企業によって実現する体制の構築を目指しています。iPSC再生医薬品の実用化には、細胞を大量培養する技術を確立することが必要であり、特に、3次元臓器に関しては3種類の細胞から作製する臓器原基を大量に移植することが想定されます。そこで、当社はアカデミア等との共同研究や企業等からの技術導入を含めて大量培養技術の確立に向けた取り組みを進めており、その一環として、自動培養装置を国立大学法人大阪大学、株式会社ニコン及び澁谷工業株式会社との間で共同して開発しております。

iPSC再生医薬品分野に係る国内における事業系統図は以下のとおりであります。

0101010_005.png


(注)サイレジェンに対するRPE細胞に関するサブライセンス付与は、当社、大日本住友製薬及びサイレジェン間の共同実施許諾契約に基づき、当社及び大日本住友製薬から共同して行われております。
③ 収益モデル
当社は、国内におけるRPE細胞製品の開発については、共同開発先である大日本住友製薬からマイルストン収入を得るとともに同社による開発費用の負担を得ます。また、当社は、大日本住友製薬との合弁会社であるサイレジェンに製造及び販売促進業務を委託し、サイレジェンに対してこれらの委託費用を支払う一方で、サイレジェンの当社に対する製品売上に対してロイヤルティ収入を得るとともに、サイレジェンから供給を受けたRPE細胞を医療機関に販売することにより製品の販売収入を得る計画です。
収益モデルの概要は以下の図のとおりです。製品開発のリスクに関しましては、「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」をご参照ください。また、契約の内容に関しましては「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」をご参照ください。

※ロイヤルティ収入とは、契約に基づき、製品が上市された後に、その販売額に応じた一定料率を受領する収入をいいます。

0101010_006.png

なお、当社が大日本住友製薬から得る予定のマイルストン収入は11億円(うち2億円は受領済み)であり、今後、国内における当該製品に関する治験計画の届出から製造販売承認の取得までの複数の目標(マイルストン)の達成により順次受領していく予定です。また、当社は、サイレジェンへの製造委託に基づき、当該製品の薬価の一定割合を製造単価として、サイレジェンから製品の供給を受けます。他方で、当社は、サイレジェンの当社への製品供給に関して、その正味売上高の額の一定割合(大日本住友製薬と同率)をロイヤルティ収入として受領します。さらに、当社は、販売促進業務をサイレジェンに委託し、当該製品の開発費用の総額と前年の年間総売上高の額に応じて変動する販売促進業務に係る業務委託料をサイレジェンに支払います。
サイレジェンは、当社と大日本住友製薬が50%ずつの共同出資により設立した合弁会社であることから、サイレジェンの資本及び損益の50%分が実質的に当社に帰属いたします。

米国及び欧州におけるRPE細胞製品の開発については、上場時の資金調達が当社の当初想定を下回ったことから、自社単独での開発からパートナー企業とのアライアンスによる開発に方針を転換しています。共同開発先を探した上で当該製品の開発に関する実施許諾契約(ライセンス契約)を締結し、契約締結及びマイルストン達成時のマイルストン収入及び上市後のロイヤルティ収入を得る計画です。

また、3次元臓器については、臓器又は適応疾患ごとにパートナー企業との事業提携を積極的に検討してまいります。

(イ)化合物医薬品分野
① 概要
化合物医薬品分野では、国立大学法人九州大学(以下「九州大学」といいます。)の研究グループが発見したBBG250(Brilliant Blue G-250)という染色性の高い色素を主成分とした眼科手術補助剤を、株式会社産学連携機構九州からの独占的ライセンスに基づき開発しております。
当社は、上記の眼科手術補助剤に関する日本以外の全世界向けの独占的なサブライセンスをDutch Ophthalmic Research Center International B.V.(以下「DORC社」といいます。)に付与しており、DORC社は、2010年9月から欧州等において、この眼科手術補助剤を製造・販売しております。この製品は、BBG250の高い染色性を利用して、眼内にある内境界膜を安全に染色し、眼科手術における内境界膜剥離を行いやすくするものです。
一方、日本国内については、わかもと製薬株式会社(以下「わかもと製薬」といいます。)に眼科手術用途の内境界膜染色についての独占的サブライセンスを付与しており、わかもと製薬が製造販売承認の取得に向けて開発を進めております。
化合物医薬品分野に係る事業系統図は以下のとおりであります。

0101010_007.png


② 収益モデル
当社は、上記図に記載のとおり、全世界で特許技術の実施許諾(サブライセンス付与)を行っております。このうち、欧州におけるサブライセンス先であるDORC社は、BBG250を使用した眼科手術補助剤を製造・販売しており、当社は、この売上に対してロイヤルティ収入を受け取っています。また、日本においてはわかもと製薬からマイルストン収入及び承認を取得した後に製品の販売に応じた収入を得る計画となっています。

なお、詳細については、後述「(2)当社のパイプライン ② 化合物医薬品分野のパイプライン(開発コード:HLM0021、HLM0022、HLM0023)」をご参照ください。
(2)当社のパイプライン(製品開発群)
以下の表は、当社の開発品並びにその適応症、市場、開発段階及び当事業年度末現在の進捗状況を示しております。
なお、製品の開発に際しては様々なリスクを伴うため、当社として各製品に関する製造販売承認の取得又はその時期を保証できるものではありません。当社製品の開発リスクの概要については、「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」のとおりであります。
0101010_008.png


0101010_009.png

(注)1.「前臨床試験」、「第Ⅰ相試験」、「第Ⅱ相試験」及び「第Ⅲ相試験」とは、医薬品の製造販売承認を得るために必要となる試験の各段階を示すものであります。
2.「HLCR011」及び「HLCL041」は、薬機法で新設された早期承認制度に基づいた条件及び期限付承認の取得を目指しております。従って、従来の医薬品のような開発の相(第Ⅰ相、第Ⅱ相、第Ⅲ相)の考え方は適用されません。

① iPSC再生医薬品分野のパイプライン(開発コード:HLCR011、HLCR012、HLCL041)
HLCR011(日本向け)及びHLCR012(欧米向け)は、2013年6月から日本において前臨床試験を開始し、治験に向けた準備を行っている再生医療等製品の候補であります。

(ⅰ) HLCR011(日本向けiPS細胞由来RPE細胞懸濁液)
HLCR011は、他家iPS細胞を正常なRPE細胞に分化誘導し、純化した上で、iPS細胞由来RPE細胞懸濁液という形で罹患者に移植し、加齢黄斑変性の治療を行うiPSC再生医薬品候補であります。
当社のiPS細胞由来RPE細胞懸濁液による治療法は、理研の髙橋政代プロジェクトリーダー等が中心となって考案したiPS細胞からRPE細胞を分化誘導し移植する技術・知見を基礎として、量産化・品質の安定化等に向けた当社独自の技術・知見を加えて開発したものであり、細胞培養・分化誘導等の技術は基本的に同じであるものの、①罹患者自身ではない第三者の細胞から作製され、安全性等に関する基準を満たしたiPS細胞(他家細胞由来iPS細胞)を使用する点、②RPE細胞のシートではなく、RPE細胞を含む懸濁液を用いる点、③量産化並びに条件及び期限付承認の取得のための基準への適合を目的とした工程変更が加えられている点等において異なるものであります。また、当社は、理研の髙橋政代プロジェクトリーダー等の臨床研究とは別個に薬機法に基づき厳格な基準に則った治験を新たに実施しなければなりません。
なお、RPE細胞の懸濁液の注射による治療法については、2014年10月にES細胞由来RPE細胞を用いたAdvanced Cell Technology, Inc.(現 Ocata Therapeutics, Inc.)が実施した米国での臨床成績が発表されており、第Ⅰ相/第Ⅱ相試験にて良好な安全性が示され、有効性が推定されています。
HLCR011は、共同開発パートナーである大日本住友製薬とともに、薬事法の改正で新設された早期承認制度に基づいた条件及び期限付承認の取得を想定して開発を進めております。条件及び期限付承認とは、従来のように、治験によって安全性と有効性の両方の確認を行った上で製造販売承認を与えるのではなく、治験によって安全性の確認は必要ですが有効性に関しては推定された段階で条件及び期限を付した承認を与え、実際に患者さんへの投与を可能とし、市販後に有効性を検証し、再度承認申請を行って本承認を与えることにより、再生医療等製品の早期の実用化を可能とする制度であります。
当社は、上記のような条件及び期限付承認制度を活用することを念頭に、再生医療等製品の候補としてのHLCR011について治験を数十症例程度の規模で行うことを想定しております。但し、再生医療等製品については、治験に関する明確な指針がなく、具体的な治験のスケジュールに関しては独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」といいます。)と対面助言を行った上で確定される予定であります。

(ⅱ) HLCR012(米国・欧州向けiPS細胞由来RPE細胞懸濁液又はシート)
HLCR012は、萎縮(ドライ)型加齢黄斑変性を適応症としたiPS細胞由来RPE細胞懸濁液又はシートの移植による治療法であり、米国・欧州におけるiPSC再生医薬品候補であります。
米国・欧州においては、日本における条件及び期限付承認制度と同様の制度が存在しないため、従来の医薬品同様、第Ⅰ相試験から第Ⅲ相試験までの治験を経て、各国の薬事法に基づく製造販売承認申請を行うことを想定しております。
当社は、米国及び欧州での治験に用いる治験薬製造の準備を進めており、早期にパートナー企業を決定し、米国において、第Ⅰ相/第Ⅱ相試験を開始することを目指しております。
当社としては、開発パートナー企業の決定後に、米国の食品医薬品局(以下「FDA」といいます。)に対して新薬臨床試験開始届(IND:Investigational New Drug Application)を提出し、第Ⅰ相/第Ⅱ相試験を行うことを見込んでおりますが、具体的なスケジュールについては、今後、開発パートナー企業との協議の後に米国FDAとの事前会議(以下「Pre-IND会議」といいます。)等を通じて検討していく予定です。
また、欧州については、米国の第Ⅰ相/第Ⅱ相試験の結果を活用して、第Ⅲ相試験から治験を実施することを検討しております。

(ⅲ) HLCL041(肝臓原基を用いた3次元臓器)
当社は眼疾患の領域に加えて、アンメットメディカルニーズの高い他の領域におけるパイプラインの拡充にも積極的に取り組んでいます。具体的な取り組みの一例が、横浜市立大学と2014年10月に全世界における独占的な特許実施許諾契約を締結した、臓器のもとになる臓器原基を人為的に作製する新規の細胞培養操作技術を用いた機能的なヒト臓器の作製です。この技術の実用化に向け、当社は代謝性肝疾患を対象とした再生医療等製品(3次元臓器)を開発するべく横浜市立大学との共同研究を行っています。肝臓は、たんぱく質など身体に必要なさまざまな物質を合成し、不要有害な物質を解毒、排泄するなど約500種類もの機能を、約2000種類以上の酵素を用いて果たしている体内の化学工場といえる臓器です。代謝性肝疾患は、生まれつき特定の酵素が欠損していること等により必要な物質を作ることができない肝臓の疾患で、国内で年間約30名、欧米で年間約390名が新たに発症していると推定されます。HLCL041は、肝臓へ肝臓原基を注入し、機能的な肝臓に育てることで、生まれつき生産できない酵素を生産できるように肝臓機能を改善させることを目的とした再生医療等製品であり、臓器移植の代替治療とするべく、ヒトへの移植が可能なヒト肝臓原基の大量製造方法の構築、さらに作製されたヒト肝臓原基の評価方法や移植方法を検討していく考えです。

② 化合物医薬品分野のパイプライン(開発コード:HLM0021、HLM0022、HLM0023)
HLM0021、HLM0022及びHLM0023は、内境界膜を安全に染色し、眼科手術における内境界膜剥離等を行いやすくする、BBG250を主成分とする眼科手術補助剤であります。HLM0021、HLM0022及びHLM0023は、九州大学の研究グループが発見した染色性の高い色素BBG250を基に、当社の代表取締役社長である鍵本忠尚により2005年に設立されたアキュメンバイオファーマ株式会社(現 アキュメン株式会社。以下「アキュメン」といいます。)が開発した眼科手術補助剤であり、当社は、2013年12月にアキュメンからBBG250を含有する眼科手術補助剤に関する事業を譲り受けております。
眼内は、硝子体というゼリー状の物質で満たされており、その奥に網膜がありますが、網膜剥離等の手術を行うためには、その前段階として、硝子体を切除し、網膜の最表層部分にある内境界膜を剥離しなければなりません(このような硝子体の切除を伴う一連の手術を一般的に硝子体手術といいます。)。ところが、内境界膜は、非常に薄く透明な膜であるため、従来は手術経験が豊富な医師以外には剥離が難しいものでした。そこで、当社は、この内境界膜を一時的に青色に染色し、硝子体手術をより安全に行うことを可能にする染色剤としてBBG250を含有する眼科手術補助剤の開発を進めております。
また、白内障は、本来透明であるレンズが老化等の原因で白く濁り硬化することで、視力が低下する病気です。ヒトのレンズは柔らかく、透明な薄い膜でできたカプセルに入っているため、現行の白内障手術ではこの透明なカプセルの中心を丸く切り抜き、濁ったレンズの中身を人工の透明なレンズと入れ替えます。そこで、当社は、白内障に関しても、この透明なカプセルを一時的に青色に染色し、手術をより安全に行うことを可能にする染色剤として、同じく眼科手術補助剤の開発を進めております。
HLM0021、HLM0022及びHLM0023の開発方針等は、以下のとおりです。

(ⅰ) HLM0021(日本向け眼科手術補助剤(硝子体手術))
HLM0021(硝子体手術)は、眼科手術補助剤として日本で開発中の新薬です。現在第Ⅲ相試験が終了し、製造販売承認の申請に向けて、原薬及び製剤の製造方法の確立、並びに、かかる原薬及び製剤での適切な安定性試験等を準備中であります。HLM0021は、当社から日本における眼科手術用途(内境界膜染色に限る。)について独占的なサブライセンスを受けた、わかもと製薬により開発が行われております。当社は、原薬・製剤の供給や必要な試験の実施、製造委託先との調整等の業務を分担し、わかもと製薬によるHLM0021の製造販売承認の取得を目指して、支援を続けてまいります。

(ⅱ) HLM0021(日本向け眼科手術補助剤(白内障手術))
HLM0021(白内障手術)は、現在、当社が日本国内において白内障手術向けのサブライセンス先の選定を行っている眼科手術補助剤であります。当社は、かかる適応症に関しても今後サブライセンス先による治験、製造販売承認の取得を目指す予定であります。但し、現時点で具体的なサブライセンス先は決定しておらず、また、実際の開発はサブライセンス先の判断によって行われることになります。

(ⅲ) HLM0022(欧州向け眼科手術補助剤)
HLM0022は、BBG250に関する日本を除く全世界向けの独占的なサブライセンスを付与しているDORC社により、欧州等において2010年9月から製造販売が行われている、眼科手術における内境界膜剥離を行いやすくする眼科手術補助剤です。2015年12月末時点で、販売に関して74の国と地域で承認を取得しております。

(ⅳ) HLM0023(米国向け眼科手術補助剤)
HLM0023は、BBG250に関する日本を除く全世界向けの独占的なサブライセンスを付与しているDORC社により開発が進められている米国向けの眼科手術補助剤であります。
開発を行うDORC社では、米国のFDAに対する相談の結果、欧州におけるHLM0022の臨床成績を使用することが認められ、現在、第Ⅲ相試験に関する検討作業を行っております。

沿革関係会社の状況


このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E31335] S1007855)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。