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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1007V2L

有価証券報告書抜粋 ブライトパス・バイオ株式会社 事業の内容 (2016年3月期)


沿革メニュー従業員の状況


当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発(現在、臨床試験段階)を行う創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴などについては以下のとおりであります。

(1) 事業モデル

当社の基本的な事業モデルは、がん免疫治療薬シーズの探索研究から初期臨床試験までを行い、後期臨床試験からは国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスし開発を委ね、そのライセンス先製薬会社からライセンス収入を得るものです。
医薬品開発は一般的に10年以上かかりますが、各国の当局の製造販売承認を得て上市される前でも、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合となる販売ロイヤリティ収入等)を得ることができます。製薬会社へライセンス後も開発協力金を得て開発を継続することもあります。
当社は本邦において長くがんペプチドワクチンの研究を行ってきた久留米大学発のベンチャーとして、久留米大学で1992年に始まる基礎研究と1998年に始まる臨床研究を終えたがんペプチドワクチン・シーズを、2003年の当社設立とともに特許の譲渡を受けて承継し、企業治験に用いる治験薬の製剤化検討に始まり、早期臨床試験までを自社単独で行ってきました。リード開発品のがんペプチドワクチンITK-1は、現在実施中である進行性の去勢抵抗性前立腺がん※1※2を対象とする国内第Ⅲ相臨床試験の開始前に富士フイルム株式会社へライセンス・アウトし、現在当社は同社から本臨床試験の実施を受託し開発協力金を得ながら、本臨床試験を遂行しています。


(2) 技術の特徴

当社が開発しているがん免疫治療薬は、人間の体が本来持つ免疫機構にがん細胞を攻撃させるがん治療薬で、免疫機構を司る様々な免疫細胞や免疫に関与する物質を活用し、免疫応答(特定のペプチドを攻撃の目印としてがん細胞を攻撃した経験=免疫メモリー)をコントロールすることによって、がん細胞を死滅させたり、がんの再発・転移を防いだり、進行を遅らせたりする効果を有します。外科的に腫瘍を切除する手術とも、放射線でがん細胞を殺傷する放射線療法とも、化学合成物を直接がん細胞に作用させて殺傷する化学療法(いわゆる抗がん剤治療)とも作用メカニズムが異なるため、これらの既存の作用メカニズムによる治療が有効で無くなったがん患者にとって手術・放射線療法・化学療法に次ぐ「第4の治療法」となることが期待されています。

当社は、がん免疫治療薬の中でも、免疫機構を司る細胞傷害性T細胞※3※4(CTL)を活性化させがん細胞を殺傷させることを作用メカニズムとするがんワクチンを開発しています。CTLはがん抗原※5を認識し、そのがん抗原を表面上に提示しているがん細胞を殺傷する機能を有します。





がん抗原は、がん細胞表面上にあって、CTLが正常細胞とがん細胞を見分けてがん細胞を攻撃するときの目印になるもので、現在の当社は、がん抗原としてペプチド※6(タンパク質の断片)を用いる「がんペプチドワクチン」を開発しています。


(TCR 用語解説※7、CD8 用語解説※8)

① がんペプチドワクチンの作用メカニズム
がん細胞は正常細胞に比べ活発に増殖しているため、細胞の増殖に関連したタンパク質(アミノ酸が数百~数千個、長くつながったもの)が分解され断片化したペプチド(アミノ酸8~10個の短い鎖)が細胞表面に大量に存在しています。また、腫瘍マーカー※9として知られているがん特異的なペプチドも同様にがん細胞表面に存在しています。これらはがん抗原としてCTLの標的となります。
そこで、がん細胞内で作り出され細胞表面上に存在しているペプチドと同じものを人工的に化学合成し、この合成ペプチドをがん患者に投与し、そのペプチドに反応するCTLを患者の体内で増やし、がん細胞を破壊しようというのが、がんペプチドワクチンです。
投与されたがんペプチドワクチンは局所の樹状細胞※10やマクロファージ※11などの抗原提示細胞※12によって貪食※13され、細胞表面にHLA※14クラスⅠ分子(ヒト白血球抗原)と複合体を形成して細胞表面に表出(提示)されます。ペプチドを表面上に提示したこれらの抗原提示細胞は近傍のリンパ節へと移動し、そこで投与されたペプチドに特異的に反応するCTL前駆細胞※15に抗原提示を行い、この抗原提示を受けたCTL前駆細胞は活性化されて増殖します。増殖を遂げ成熟したCTLはリンパ流に乗ってがん局所へと移動します。がん細胞表面には投与されたがんペプチドワクチンと同じ配列のペプチドががん細胞内で作られHLA分子と複合体を形成して細胞表面に表出されており、CTLはこの複合体を認識してがん細胞をアポトーシス※16へと誘導します。





② 当社のペプチドの特徴
1991年にベルギーのThierry Boon博士らのグループによって、T細胞が認識する「抗原」の正体が、わずか9(±1)アミノ酸残基からなる短鎖ペプチドであることが突き止められ、分子生物学に基づいた科学的な腫瘍免疫が確立されました。抗原の実体が判明したことで、世界中の研究機関で、抗原の探索に始まるがんワクチンの開発が本格化しました。
当社が久留米大学から承継しワクチンとして開発を進めているペプチドは、この抗原の正体が突き止められたすぐ後の1992年から久留米大学の医学部免疫・免疫治療学講座において大規模に進められた抗原探索の成果物です。
ワクチンに用いられている抗原ペプチドは当時の久留米大学において、がん患者から得られた腫瘍組織からcDNA(腫瘍細胞に発現するタンパク質情報を持つメッセンジャーRNA(mRNA)※17)から逆転写酵素※18を用いて合成された相補的DNAライブラリを作製し、そのcDNAライブラリの中からCTLの細胞株(がん患者から樹立された実際にがん細胞を攻撃することができるCTLの細胞株)が認識する抗原タンパク質を同定し、さらにCTLにより認識される9-10個のアミノ酸からなるペプチド分子を同定することによって見つけられました。実際のがん患者のCTLからより高いがん細胞殺傷力を引き出すペプチド抗原が厳選され、さらに久留米大学における臨床研究で実際にがん患者に投与され、免疫応答の強度で絞り込まれたものとなっています。

これらの生体由来のがん抗原タンパク質から見出されたペプチドは、そのアミノ酸配列のまま化学合成されたペプチド製剤となります。人の体内に存在するものと同じ物質であるため、従来の抗がん剤(化学療法剤)に比べて安全性が高く、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)※19を維持しながら、生存期間を延長させることが可能になると期待されています。また、これらのペプチドは化学合成で製造されることから、動物由来、血液由来のウイルス等の混入はありません。

③ ペプチド投与方法の特徴
当社のワクチンはペプチドを用いますが、患者個々人の免疫機構が以前にそれを目印としてがん細胞を攻撃したこと(免疫メモリー)があるかどうかを投与前にバイオマーカー※20で確認し、免疫メモリーのあるペプチドを投与します。それによって、より強い免疫をより早く誘導でき、より高い臨床効果へ結びつくという考え方に基づいています。がんワクチン開発の課題の1つは、免疫反応(CTLの活性化)から活性化されたCTLががん細胞を攻撃し、それが臨床効果として現れるまでにタイムラグがあることと言われています。タイムラグがあるとその間にがん細胞が増殖してしまうからです。当社は、免疫メモリーに着目する独自の投与方法によって、この課題を克服することを考えています。
さらに、当社は複数のペプチドを同時に投与します。がん細胞は免疫系の攻撃を免れるために特定の遺伝子発現を変化させて攻撃の目印を消失させたりすることがあります。これは、エスケープ現象、あるいは免疫逃避と呼ばれています。1つのペプチド投与では、最初は効いても、がん細胞の遺伝子変異により、すぐに効かなくなる可能性があると考えられています。一方で、複数の抗原投与ならがん細胞の遺伝子変異が追いつかず、エスケープ現象を回避できる可能性が高くなります。




(3) 開発パイプライン

当社における現在のパイプラインは、臨床開発段階にあるHLA-A24拘束性ペプチドで構成されるがんペプチドワクチンITK-1と、米国において開発中のHLA-A2拘束性ペプチドで構成されるグローバル向けがんペプチドワクチンGRN-1201の2本があります。ITK-1は第Ⅲ相臨床試験中であり、2015年6月に中間解析を実施し、2016年4月には症例の獲得活動を終了し、最終解析実施までの観察期間となっております。GRN-1201は、2015年10月に治験申請(IND)を行い、メラノーマ(悪性黒色腫)を対象とする米国での第Ⅰ相臨床試験を開始しております。




ITK-1 前立腺がん
・ 患者の免疫応答に最適ながんペプチドワクチンを投与
・ 国内で進行性の去勢抵抗性前立腺がんを対象とする第Ⅲ相臨床試験を実施中(中間解析を実施済み及び症例登録獲得活動終了)
・ 富士フイルム株式会社へライセンス・アウト済み

[開発とアライアンスの現状]
リード開発品のがんペプチドワクチンITK-1は、富士フイルム株式会社へ導出済みで、2013年6月より日本国内において進行性の去勢抵抗性前立腺がんを対象とするプラセボ対照第Ⅲ相二重盲検比較試験が実施されています。2015年6月に中間解析を実施し、第三者機関である効果安全性評価委員会(臨床試験の進行、安全性データおよび有効性を適時に評価し、治験依頼者に試験の継続、変更または中止を提言することを目的に外部の医師などに依頼して設置することのできる委員会)より本臨床試験の継続が認められ、引き続き試験を進めております。
本臨床試験は、手術・放射線療法・ホルモン療法・化学療法剤の治療を経た進行性の去勢抵抗性前立腺がん患者を対象に、全国の施設で進められています。前立腺がんは中高年男性に多くみられるがんですが、日本においても近年の高齢化や生活環境・食生活の欧米化などにより患者数が増加しており、現在の患者数(有病者数)は約18万人と推定されます(出所:2011年厚生労働省患者数調査)。2011年の罹患者数(年間の新規診断数)は7万8,728人であり、男性では胃がんに次いで2番目に多いがんです。前立腺がんによる死亡数も年々増加し、2013年における死亡数は1万1,560人であり、この20年間で約3倍に増加しています(出所:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター)。前立腺がんの標準的治療であるホルモン療法が無効になった去勢抵抗性前立腺がん患者数も増えています。
本臨床試験において、当社は富士フイルム株式会社から治験実施を委託されており、開発協力金を得ております。この臨床試験において有意性が示されれば、本品は日本の当局に製造販売承認申請されます。当社は予め開発進捗に応じて設定したマイルストンが達成されることにより開発マイルストン収入を得て、更に本品の上市後は製品売上の一定割合を販売ロイヤリティ収入として得ます。

[開発品の特徴]
ITK-1は、予め化学合成で製造された既製品の12種の抗原ペプチドの中から、投与前の患者の末梢血を用いたバイオマーカー検査によって、各患者に最適な抗原ペプチドを2~4種選択して投与する「テーラーメイド型」がんペプチドワクチンです。テーラーメイド型ワクチンは、バイオマーカーで免疫メモリーのあるペプチドを複数選択し、それらを同時投与することによって、患者個人の免疫反応を効率よく引き出すとともに、がんの免疫逃避を回避するので、臨床効果に結びつく可能性が高くなります。

[これまでの試験成績]
久留米大学から基礎研究及び臨床研究を終えたがんペプチドワクチン・シーズ※21を承継し、ITK-1として製剤化及び非臨床試験を実施した後、2005年度から i)去勢抵抗性エストラムスチン不応答再燃前立腺がん、及び ii)初期治療(術後放射線化学療法または放射線治療)抵抗性膠芽腫(脳腫瘍)※22患者を対象にITK-1の第Ⅰ相臨床試験及び継続投与試験を実施しました。その結果、前立腺がん患者15例と膠芽腫患者12例の計27例での主な副作用は、注射部位の反応で、「発熱」1例及び「注射部位の反応」2例がCTCAE Grade 3※23を認めた以外はCTCAE Grade 2以下であったことから、高い安全性が示唆されました。前立腺がん患者15例での全生存期間の中央値※24(Median Survival Time)は23.8ヶ月を示し(出所:Noguchi M, et al. The Prostate 2011; 71: 470-479)、これは久留米大学の臨床研究をよく再現する成績でした。臨床効果を生物学的に裏付けるワクチン投与患者の免疫応答、すなわちCTLの活性化と、抗体価の上昇も確認されております。また、膠芽腫患者12例の全生存期間中央値は10.6ヶ月で、うち2例で有効例(部分奏功※25;MRIによる画像診断で50%以上の腫瘍縮小)が認められました(出所:Terasaki M, et al. J Clin Oncol 2011; 29: 337-344) 。

GRN-1201 各種固形がん
・ グローバル向けがんペプチドワクチン
・ 米国で第Ⅰ相臨床試験実施中

ITK-1に続くパイプラインのGRN-1201は、欧米人が多く有するA2型のHLA(HLA-A2)に結合するペプチドで構成される、米国や欧州を始めグローバルに展開できるがんペプチドワクチンです。米国FDA(米国食品医薬品局)に2015年10月に治験申請(IND)を行い、現在米国での第Ⅰ相臨床試験を実施中です。第1適応として、メラノーマ(悪性黒色腫)患者を対象としております。
CTLはHLAと抗原ペプチドとの結合を介して、ペプチドを攻撃対象の目印として記憶しますが、このHLAにも個人差、人種差があります。日本人に最も多いHLA-A24は日本人全体の60%、欧米ではHLA-A2が全体の50%を占めます。ITK-1はHLA-A24に結合するペプチドであるのに対し、GRN-1201はHLA-A2に結合するペプチドで構成されます。

新規パイプライン
久留米大学から継承したITK-1及びGRN-1201に用いているもの以外のがん抗原(治療薬シード)をペプチドワクチンの形態以外に展開することも含めた、新しいがん免疫治療薬の探索研究も進めています。
当社の物質特許※26を有するがん抗原と免疫細胞を修飾して活性を高める技術との融合による治療薬または治療法を中心に、日本・海外を問わず、外部の研究機関との共同研究や導入も含め、引き続きがん免疫療法に焦点を当てたシーズを開発していきます。

(4) 許認可、免許及び登録等の状況について

a. 許認可、免許及び登録、行政指導等
医薬品販売業許可(福岡県)を2013年5月27日付で得ています。
医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律;
日本では、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。

b. 知的財産権の状況
知財は、個別のペプチドの物質特許を押さえ、その上で複数ペプチド投与を前提とするためその組み合わせの臨床上の有用性を、実際の臨床試験のデータを実施例として特許化する2層構造が骨格となります。
ITK-1を構成するペプチド物質及び関連特許は、独占的に富士フイルム株式会社に使用許諾されています。
GRN-1201については、物質特許を含め当社が特許を有しております。



発明の名称特許登録番号出願国
(登録国)
権利者
上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社
7655751米国
2554195カナダ
腫瘍抗原
7465452米国当社
1207199欧州(注)
2381348カナダ
4051602日本
4097178日本
4035845日本
4624377日本
CD4陽性T細胞に認識されるペプチド4443202日本当社
副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24または-A2結合ペプチド4579581日本当社
ヒト癌退縮抗原タンパク質4138073日本当社
新規な腫瘍抗原タンパク質SART-3及びその腫瘍抗原ペプチド4436977日本当社
4904384日本
7541428米国
8097697米国
8563684米国
1116791欧州(注)
2340888カナダ
99812596.2中国
660367韓国
がんペプチドワクチン(出願中)米国当社
欧州
カナダ
5706895日本

(注)欧州については、ドイツ、スペイン、フランス、英国、イタリアが含まれております。

[用語解説]

※1(前立腺がん)
前立腺がんとは、前立腺(外腺)に発生する病気、がんの一つです。前立腺は男性の臓器で、膀胱の下で尿道をとり囲むようにしてあります。前立腺がんは50歳代から急速に増え始め、発生の平均年齢が70歳といわれるくらい高齢の男性にみられるがんです。前立腺がんは加齢による男性ホルモンのバランスの崩れや、前立腺の慢性的炎症、食生活や生活習慣などの要因が加わって発生すると言われています。前立腺がんは高齢者で発症することから、高齢化が進む日本を含む先進国で罹患率が増加しており、2011年の罹患者数(年間の新規診断数)は7万8,728人であり、男性では胃がんに次いで2番目に多いがんです。前立腺がんによる死亡数も年々増加し、2013年における死亡数は1万1,560人であり、この20年間で約3倍に増加しています(出所:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター)。

※2(去勢抵抗性前立腺がん)
ホルモン療法及び去勢を行っても効かなくなった状態の前立腺がん。前立腺がんの増殖や進行には男性ホルモンであるアンドロゲンとその受容体であり、転写因子として機能するアンドロゲン受容体が重要な役割を果たすことがわかっています。初めは男性ホルモンを抑える内分泌療法(ホルモン療法)が奏功するものの、暫くして再燃を繰り返した末に奏功しなくなり、「去勢抵抗性」状態になります。

※3(T細胞)
白血球のうち、リンパ球と称される細胞の一種で、骨髄で産生され胸腺でリンパ球へと分化される免疫細胞のこと。胸腺(Thymus)の頭文字をとってT細胞と呼ばれます。生体内に侵入した異物から人体を守る免疫応答システムの司令塔の働きを有し、マクロファージや細胞傷害性T細胞(CTL)などの免疫実働細胞に指示・命令を出します。

※4(細胞傷害性T細胞‐CTL)
CTLはCytotoxic T Lymphocyteの略語で、リンパ球のうちのT細胞の一種。細胞表面のT細胞受容体を通じて、樹状細胞等の抗原提示細胞から提示された異物を特異的に認識し、同じくその異物を表面上に提示しているウイルス感染細胞やがん細胞を認識し、細胞傷害物質のサイトカインであるパーフォリンやグランザイムなどを放出したりすることによって、殺傷することができます。以前はキラーT細胞とも呼ばれていました。

※5(がん抗原)
細胞傷害性T細胞等の免疫細胞が、正常細胞とがん細胞を見分けるための目印になるタンパク質。

※6(ペプチド)
アミノ酸が複数個つながったもの。タンパク質の断片。

※7(TCR)
T細胞受容体(T-cell Receptor)。T細胞の細胞膜上に発現している抗原受容体分子。T細胞に活性化シグナルを伝達する機能を持ち、他の細胞表面上にあるHLA分子に結合した抗原ペプチドを認識します。がんワクチンの作用機序においては、T細胞ががん細胞を認識するときと、樹状細胞等の抗原提示細胞から攻撃の目印としてがん抗原ペプチドの提示を受ける(情報を受け取る)ときに、このT細胞受容体を通して相手の細胞に表出されたペプチドとHLAの複合体を認識します。

※8(CD8)
CTLの補助レセプターのこと。抗原認識において、CD8はT細胞表面のT細胞レセプターと会合し、HLA・ペプチド複合体におけるHLAの定常部分に結合します。この結合は、T細胞が機能的な応答を示す際において不可欠であるため、補助レセプターと呼ばれます。

※9(腫瘍マーカー)
がん細胞が作り出す生体因子で、がんの進行とともに増加するため、がんの進行度を評価する指標(マーカー)となるもの。血液中又は尿中における当該物質の濃度を測定し、がんの進行度を評価します。前立腺がんの腫瘍マーカーとしては、PSA(前立腺特異抗原 Prostate Specific Antigen)などがあります。


※10(樹状細胞)
枝状、樹状の形態をした突起を有する細胞であり、抗原提示細胞としての機能を有する免疫細胞の一種です。体内に侵入した細菌やウイルスなどの抗原を細胞内に取り込み消化し、免疫情報をリンパ球に伝えます。がんにおいては、CTLにがん抗原の情報を伝達して、がん細胞への攻撃などの免疫反応を開始させます。

※11(マクロファージ)
白血球の一種であり、動物の組織内に存在するアメーバ状の細胞。生体内に侵入した細菌や異物などを捕食し、消化するため、清掃屋としての役割を有します。また、それらの異物に抵抗するため、それらの異物の情報を免疫情報としてリンパ球に伝える役割も有しています。

※12(抗原提示細胞)
体内に侵入した細菌やウイルスに取り込まれた細胞の断片、がん細胞の断片などを細胞内に取り込み、それらが含む抗原を細胞表面に表出(提示)しながら、近くのリンパ節へ移動し、T細胞に抗原の情報を伝達し活性化させる役割を担う免疫細胞。抗原提示細胞には、樹状細胞やマクロファージなどがあります。

※13(貪食)
細菌や死んだ細胞などの大型の粒子を取り込み、分解や処理などの消化を行うこと。この能力を有する細胞を総称して貪食細胞といい、マクロファージや樹状細胞などがあります。

※14(HLA)
HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれています。
HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能します。
HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型があります。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しません。

※15(CTL前駆細胞)
がん細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞(CTL)になる前のT細胞のこと。

※16(アポトーシス)
細胞に内在する、あらかじめ遺伝子で決められたメカニズムにより自らが細胞死を誘導する機構。生体を良い状態に維持するために引き起こされる、生体を調整するための遺伝子によりプログラムされた細胞死のことです。細胞の発生や成長の過程で生じる不要となる細胞を排除する役割だけでなく、がん細胞やウイルスを排除するにあたっても重要な役割を果たします。

※17(RNA)
リボ核酸(ribonucleic acid)の略称。DNAも核酸であるが、DNAは核の中で様々な情報を蓄積・保存をする役割があるのに対し、RNAはその情報の一時的な処理を行うという役割があります。
生体内の働き・構造から、翻訳の鋳型となる伝令RNA(メッセンジャーRNA, mRNA)、リボソームの主要構成成分であり細胞内RNAの最多成分であるリボソームRNA(rRNA)などに分類されます。
この中でメッセンジャーRNAは、DNAからタンパク質を合成するための塩基配列情報を持ったRNAで、mRNAと表記されます。タンパク質の合成は、DNAからタンパク質を合成するために必要な塩基配列情報をコピーしたmRNAが合成され、このmRNAの塩基配列情報に従ってタンパク質が合成されます。


※18(逆転写酵素)
RNA依存性DNAポリメラーゼ (RNA-dependent DNA polymerase) のこと。逆転写反応を触媒する酵素。この酵素は一本鎖RNAを鋳型としてDNAを合成(逆転写)するもので、レトロウイルスの増殖に必須の因子として発見されました。逆転写酵素は相補的DNA(cDNA)の合成に利用され(逆転写反応)、遺伝子工学や分子生物学的実験には必須のツールとなっています。

※19(QOL=Quality of Life)
医療現場で、病気を治療することだけでなく、患者の生活機能ができるだけ保たれ、人間らしい生活を続けられること。「生活の質」、人間らしい充実した生活、暮らしのレベル。医療分野においては、がん等の長期療養を要する疾患、ならびに消耗の激しい疾患や進行性の疾患において、患者の体へのダメージの大きい治療を継続することによって、患者が自らの理想とする生き方、もしくは社会的にみて「人間らしい生活」と考える生活が実現できない状況を「QOL (生活の質)が低下する」と呼びます。

※20(バイオマーカー)
客観的に人体の状態を測定し評価するための指標であり、観察、診断及び治療の際に使用される。臨床検査値(血液検査、腫瘍マーカーなど)、CTやMRIなどの画像診断データや、臨床試験においてその効果を測定する代替マーカーや前立腺がんの状態を調べるPSA(前立腺特異抗原)は診断マーカーであるなど、また広い意味では体温や脈拍なども含まれます。

※21(シーズ)
研究開発および事業化の対象となる医薬品候補物質。

※22(膠芽腫)
脳腫瘍の中でも最も悪性度の高い(WHO分類により星状細胞腫グレード4)腫瘍のこと。

※23(CTCAE Grade)
Common Terminology Criteria for Adverse Events(有害事象共通用語規準)の略で、臨床試験で発生する「有害事象」を世界共通の尺度で評価・集計するための規準。「有害事象(Adverse Event: AE)」とは、治療に際して観察される、あらゆる意図しないまたは好ましくない徴候や症状、疾患を指し、治療との因果関係は求めないため原疾患による合併症等の症状も治療に起因する副作用もすべてが含まれます。Gradeは、有害事象の重症度を示し、以下の原則に従いGrade1からGrade5まで5段階に分類され、各有害事象の重症度が定義されております。
Grade 1 軽症; 症状がない, または軽度の症状がある; 臨床所見または検査所見のみ; 治療を要さない
Grade 2 中等症; 最小限/局所的/非侵襲的治療を要する; 年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限
Grade 3 重症または医学的に重大であるが, ただちに生命を脅かすものではない; 入院または入院期間の延長を要する; 活動不能/動作不能; 身の回りの日常生活動作の制限
Grade 4 生命を脅かす; 緊急処置を要する
Grade 5 有害事象による死亡

※24(全生存期間の中央値)
「全生存期間」は、試験に登録された日からあらゆる原因による死亡日までの期間を指します。「全生存期間の中央値(MST; Median Survival Time)」は、試験に登録された症例の生存率が50%になるまでの期間をいいます。全生存期間はがん治療薬の臨床試験の評価項目として、特に後期臨床試験において一般的に用いられています。

※25(部分奏功)
がん治療薬の臨床効果を示す一つの指標に「奏効率」があり、MRI等の画像診断において測定可能ながん組織の断面の長径とそれに直角に交わる最大径の積の総和が50%以下に縮小し、かつ腫瘍による二次病変の増悪がなく、新病変がない場合(2方向測定法)、もしくは断面の最長径の和が30%以上減少し、かつ測定不能病変の明らかな増悪がなく、新病変がない場合(RECIST)が有効(部分奏効)、全ての腫瘍が消失した場合が著効(完全奏効)と判定されます。

※26(物質特許)
新規に生成された医薬品の成分など、一定の機能や効果を持った物質そのものに対して付与される特許権。その特許化された物質については、特許権者又は実施許諾者以外の実施(使用、生産、譲渡等)が制限されることにより、特許権者又は実施許諾者の実施が保護されることになります。

沿革従業員の状況


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