有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S10075C7
株式会社ミズホメディー 事業の内容 (2015年12月期)
(1) 事業の特徴
当社は、主に体外診断用医薬品に関して特許権利取得を視野に独自の研究開発もしくは産学官共同研究を実施するとともに、ISO13485品質マネジメントを骨格として設計開発、製造、販売組織による自社一貫体制を構築し、各組織において有能で経験豊富なスタッフを配備のうえ事業活動を行っております。また、これらのプロセスを一連の業務執行会議のもと遂行する事で、医療現場のニーズに対して優れた品質の製品を提供するとともに、万全のアフターフォローでお客様への安定供給を行っております。なお、当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しておりますが、市場分野の区分は「病院・開業医分野」、「OTC・その他分野」としております。
病院・開業医分野では、国内外の医療機関向けに患者の健康状態、疾患の有無、治療の経過等を診断するための生化学検査薬※1、免疫血清検査薬※2を製造販売しております。また、製薬メーカーと共同開発した免疫血清検査薬等については、当該製薬メーカーを通じて販売しております。
OTC・その他分野では、主に一般消費者の自己検査として厚生労働省の認可を得ている一般用医薬品※3を薬局・薬店へ販売しております。その他には、農作物の苗木などのウイルス病を見つけるため、免疫血清検査薬の技術を応用した果樹ウイルス検査薬を農業試験場等へ販売しております。
(2) 主な製品
① 病院・開業医分野
医療機関において使用されている体外診断用医薬品は、初診時、入院時のスクリーニング検査、疾患の確定診断、モニタリング、健康診断、院内感染防御などに用いられており、大学や大病院の検査室、検査センターにおいて多量の検体が検査されております。体外診断用医薬品は、診断分野の面から生化学検査薬、免疫血清検査薬、尿糞便検査薬、微生物検査薬、血液検査薬や病理検査薬などその他の検査薬に分類されます。
当社の主力商品は、設立時は生化学検査薬でしたが、現在は診断分野の中でも最も市場規模が大きい免疫血清検査薬となっております。免疫血清検査薬のなかでも、インフルエンザウイルスやアデノウイルス※4などの感染症の検査薬は、中小病院や開業医を中心として市場は拡大しており、迅速で簡易な検査技術であるイムノクロマト法を用いた多くの製品を販売しております。
イ.免疫血清検査薬POCT
当社は、それまで妊娠検査薬など尿中ホルモンの分野でしか用いられていなかったイムノクロマト法を感染症の検査薬に応用し、血中ウイルス検査薬としてB型肝炎検出用キット「クイックチェイサー HBsAg」を製品化いたしました。本製品は、免疫検査機器を必要とせず簡易迅速に判定が行えることから、免疫検査機器を所有していない中小医療機関に普及いたしました。
その後も、感染症分野での開発に継続して取り組んでおり、血中ウイルス検査薬として、C型肝炎や梅毒の検査薬の製品化を実現するとともに、鼻咽頭分泌液を検査対象とした呼吸器感染症検査薬として、インフルエンザウイルス抗原検出用キット「クイックチェイサー Flu A,B」、アデノウイルス抗原検出用キット「クイックチェイサー Adeno」、RSウイルス抗原検出用キット「クイックチェイサー RSV」、A群β溶血連鎖球菌検出用キット「クイックチェイサー Strep A」、「クイックチェイサー Dip Strep A」の検査薬の製品化を実現いたしました。
さらに、当社は、富士フイルム株式会社との共同開発により、競合するPOCT検査薬企業に先駆けて、機器試薬システム※5の製品化を実現いたしました。当社の機器試薬システムは、感染症診断では最も重要な性能である高感度を実現しているため、感染初期においても判定が可能であり、また、自動検出と判定結果のプリントアウト機能を備えているため、迅速かつ客観的な判定が可能なものとなっております。機器試薬システムのうち、機器は「クイックチェイサー Immuno Reader」を、試薬はインフルエンザウイルス、アデノウイルス、A群β溶血連鎖球菌、及びRSウイルスを対象とするクイックチェイサーAutoシリーズを販売しております。
なお、本システムに用いる機器は富士フイルム株式会社から当社へ供給され、試薬は当社から富士フイルム株式会社へ供給されており、それぞれのブランドで販売されております。
ロ.生化学検査薬、尿糞便検査薬
生化学検査薬は、入院時のスクリーニングや内臓疾患を特定するために血液中の酵素や脂質を測定する際に用いられています。
当社は、オートLシリーズ製品として、CRE、BUN、UAなどの腎機能検査薬※1、T-CHO、TG、HDL、LDLなどの脂質代謝機能検査薬※1を販売しております。
尿糞便検査薬は、一般検査では尿中のタンパクや糖、大腸がん検診では便中のヘモグロビン(下部消化管出血マーカー)を検出する検査などに用いられています。
当社は、消化器内科向けに、当社独自である便中のヘモグロビンと同時にトランスフェリン(上部消化管出血マーカー)を検出する迅速検査薬「クイックチェイサー 便潜血」を販売しております。また、産婦人科向けに、尿中hCGを迅速に測定する妊娠検査薬「HCGクイックチェッカー・S」や、当社特許技術により妊娠しやすい排卵時期を予知する排卵日検査薬※6「LHクイックチェッカー・S」を販売しております。
② OTC・その他分野
一般用医薬品として薬局・薬店で販売されているOTC検査薬は、ドラッグストアでの販売が始まった2003年頃から市場規模が拡大し、特に妊娠検査薬は妊娠の早期判定の補助として広く普及しております。当社は、OTC検査薬として最も市場が拡大した妊娠検査薬を、厚生労働省の製造販売に関する許認可制度が開始された1992年より販売しており、続けて開発した排卵日検査薬とともに、少子化対策を要する昨今の社会に貢献する製品を製造し、全国の薬局・薬店を通して消費者へ供給しております。
イ.一般用医薬品
当社は、1992年に一般用医薬品としての販売が解禁されると同時に妊娠検査薬の製造を開始し、製薬メーカーを通じて全国の薬局・薬店への販売を開始しました。その後、1997年に、当社から直接全国の薬局・薬店への販売を開始しました。現在では、妊娠検査薬「P-チェック・S」を自社ブランド製品として販売するとともに、チェーン展開を行うドラッグストアのプライベートブランド製品としても「S-チェッカー」※7や「プレセルフ」※8などの製品名で販売しております。
ロ.薬局における排卵日検査薬
少子化が社会問題とされるなか、大きく社会貢献する検査薬として、妊娠しやすい時期を的確に予知できる排卵日検査薬「P-チェック・LH」を薬局を通して販売しております。
当社の病院・開業医分野における主な製品は、以下のとおりであります。
製品名 | 一般的名称 | 使用目的 |
クイックチェイサー Flu A,B | インフルエンザウイルスキット | 鼻腔ぬぐい液、鼻腔吸引液、咽頭ぬぐい液又は鼻汁鼻かみ液中のインフルエンザAウイルス抗原及びインフルエンザBウイルス抗原の検出 (インフルエンザウイルス感染の診断の補助) |
クイックチェイサー Adeno | アデノウイルスキット | 咽頭粘膜上皮細胞、鼻腔ぬぐい液、鼻腔吸引液又は角結膜上皮細胞中のアデノウイルス抗原の検出 (アデノウイルス感染の診断の補助) |
クイックチェイサー RSV | RSウイルスキット | 鼻腔ぬぐい液、鼻腔吸引液又は鼻腔洗浄液中のRSウイルス抗原の検出 (RSウイルス感染の診断の補助) |
クイックチェイサー Strep A | A群ベータ溶血連鎖球菌抗原キット | 咽頭検体中のA群β溶血連鎖球菌抗原の検出 (A群連鎖球菌感染の診断の補助) |
クイックチェイサー Dip Strep A | A群ベータ溶血連鎖球菌抗原キット | 咽頭検体中のA群β溶血連鎖球菌抗原の検出 (A群連鎖球菌感染の診断の補助) |
クイックチェイサー Auto Flu A,B | インフルエンザウイルスキット | 鼻腔ぬぐい液、鼻腔吸引液、咽頭ぬぐい液又は鼻汁鼻かみ液中のインフルエンザAウイルス抗原及びインフルエンザBウイルス抗原の検出 (インフルエンザウイルス感染の診断の補助) |
クイックチェイサー Auto Adeno | アデノウイルスキット | 咽頭粘膜上皮細胞、鼻腔ぬぐい液、鼻腔吸引液又は角結膜上皮細胞中のアデノウイルス抗原の検出 (アデノウイルス感染の診断の補助) |
クイックチェイサー Auto Strep A | A群ベータ溶血連鎖球菌抗原キット | 咽頭検体中のA群β溶血連鎖球菌抗原の検出 (A群連鎖球菌感染の診断の補助) |
クイックチェイサー Auto RSV/Adeno | RSウイルスキット アデノウイルスキット | 鼻腔ぬぐい液、鼻腔吸引液又は咽頭ぬぐい液中のRSウイルス抗原及びアデノウイルス抗原の検出 (RSウイルス感染及びアデノウイルス感染症の診断の補助) |
クイックチェイサー Noro | ノロウイルス抗原キット | 糞便中のノロウイルス抗原の検出 (ノロウイルス感染の診断の補助) |
クイックチェイサー Rota/Adeno | ロタウイルスキット アデノウイルスキット | 糞便中のロタウイルス抗原及びアデノウイルス抗原の検出(ロタウイルス感染及びアデノウイルス感染の診断の補助) |
クイックチェイサー 便潜血 | ヘモグロビン/トランスフェリンキット | 糞便中ヒトヘモグロビン、ヒトトランスフェリンの検出 |
HCGクイックチェッカー・S | ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンキット | 尿中のヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)の検出 |
LHクイックチェッカー・S | 自己検査用黄体形成ホルモンキット | 尿中の黄体形成ホルモン(LH)の検出 |
当社のOTC・その他分野における主な製品は、以下のとおりであります。
製品名 | 一般的名称 | 使用目的 |
P-チェック・S | 一般用ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンキット | 尿中のヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)の検出 (妊娠の検査) |
P-チェック・LH | 自己検査用黄体形成ホルモンキット | 尿中の黄体形成ホルモン(LH)の検出 |
(3) 当社の販売形態
当社は体外診断用医薬品の原材料を国内外から仕入れ、当社で製造を行い、国内外の医薬品卸、代理店を通じて販売しております。当社の事業を事業系統図として示すと下記のとおりであります。
[事業系統図]
[用語集]
※1 生化学検査薬とは、血液の中でも血清といわれる液体部分を生化学的に分析する検査薬のことです。この検査により、特に内蔵の異常をチェックすることができます。
例として、下記に腎臓機能と脂質代謝機能の検査項目を説明します。
腎臓機能検査:
・ CRE(クレアチニン)とは、筋肉運動のエネルギー源となるアミノ酸の一種クレアチンが代謝されてできた物質で、老廃物のひとつです。通常、クレアチニンは、腎臓が正常に働いていれば濾過され尿中に排泄されますが、腎機能に障害があると血液中のクレアチニンが増加します。クレアチニンを測定することで腎機能低下の程度を把握できます。
・ BUN(尿素窒素)とは、血清成分からタンパク質を取り除いた残りである残余窒素の30~40%を占める成分です。尿素窒素は、通常、腎臓で濾過されて尿中に排出されますが、急性や慢性の腎不全などで腎臓の働きが低下すると濾過しきれない分が血液中に残ってしまい、尿素窒素の値が高くなります。
・ UA(尿酸)とは、代謝(体内の細胞が死んだり新しく生まれる活動)の結果、燃えかすとして尿に排泄される物質です。腎機能に障害が起こって尿酸が正しく排泄されなかったり、何らかの原因で尿酸が作られすぎたりすると、血液中で増加した尿酸が異常を引き起こします。その代表が痛風であり、主に痛風の診断をするため、血液中の尿酸値を測定します。
脂質代謝機能検査:
・ T-CHO(総コレステロール)とは、細胞膜の材料となり血管の強化や維持に重要な役割を果たしている脂質の一種です。この総コレステロールの血液中の濃度を測定することにより、動脈硬化や心臓病などの循環器障害の診断を行うことができます。コレステロールは体内では、脂肪酸と結合したエステル型と別々に分かれた遊離型があり、これら二つを合わせて総コレステロールといいます。
・ TG(中性脂肪)とは、糖質、炭水化物、動物性脂肪などを主な成分として肝臓で作られます。これらの成分を必要以上に摂取すると、中性脂肪は皮下脂肪に蓄積されます。人間が活動するとき、第一のエネルギー源となるのはブドウ糖ですが、ブドウ糖が不足してくると、貯蔵されていた脂肪が分解され、血液中に放出されることでエネルギーとして使われます。しかし、血液中の中性脂肪が増えすぎると動脈硬化の危険が高まります。
・ HDL(善玉コレステロール)とは、高比重リポタンパクともいい、コレステロールがタンパク質と結びついたもので、血管内壁に結合して動脈硬化を引き起こすコレステロールを引き抜いて肝臓まで運ぶ働きをしています。このことから「善玉コレステロール」と呼ばれています。総コレステロールの値に関係なく善玉コレステロールの値が低いと、動脈硬化が進んで狭心症や心筋梗塞を引き起こしやすいことがわかっています。
・ LDL(悪玉コレステロール)とは、肝臓で作られたコレステロールを各臓器に運ぶ働きをしている低比重リポタンパクをいいます。血液中の悪玉コレステロールの値が高いと、細胞内に取り込まれなかった余剰なコレステロールを血液中に放置し動脈硬化を引き起こす原因となります。
※2 免疫とは、外部から侵入してくる細菌やウイルスに対して体内が抵抗する働きのことで、この免疫反応が引き起こされると作られる抵抗物質が抗体です。免疫血清検査薬は、この抗体及び細菌、ウイルスの有無や量を調べる検査薬で、B型肝炎やC型肝炎の感染の診断や、輸血の際の適合不適合判断などに使用されます。
※3 一般用医薬品とは、「一般の人が、薬剤師などから提供された適切な情報に基づき、自らの判断で購入し、自らの責任で使用する医薬品であって、軽度な疾病に伴う症状の改善、生活習慣病などの疾病に伴う症状発現の予防、生活の質の改善・向上、健康状態の自己検査、健康の維持・増進、その他保健衛生を目的とするもの」と定義されています。十分な説明や情報を示した上で、消費者が自ら簡単な治療を行うというセルフメディケーションの方向性が提唱されており、厚生労働省が認可を与えた医薬品のみ薬局やドラッグストアにおいて販売されています。
※4 アデノウイルスとは、扁桃腺やリンパ節で増殖するウイルスです。アデノウイルスに感染すると、軽い風邪程度から重症の扁桃腺炎や肺炎を発症します。
※5 装置を用いて検査を行う試薬は、複数の機器メーカーが販売する汎用の装置に適用する検査薬と、専用の機器でのみ使用可能な検査薬に分類されます。機器試薬システムは後者をいい、1つのメーカーが装置と検査薬をセットで販売し、かつ、同じ装置に適用できる各種測定項目の検査薬を供給している販売形態をいいます。
※6 排卵日検査薬とは、尿中の黄体化ホルモン(LH)を測定する検査薬です。排卵直前に尿中の黄体化ホルモンを測定することにより、排卵日がある程度予知できます。
※7 「S-チェッカー」は、ドラッグストアや薬局など営む法人または個人を加盟社として構成したチェーン組織である日本ドラッグチェーン会(株式会社ニッド)のプライベートブランド商品の名称です。
※8 「プレセルフ」は、株式会社マツモトキヨシのプライベートブランド商品の名称です。
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