有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S10059RN
戸田建設株式会社 研究開発活動 (2015年3月期)
経営上の重要な契約等メニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社は、社会、顧客及び社内各部門のニーズやCSRに的確に応えるため、技術開発センターを中心に技術部門の総力を結集して、基礎的研究から新製品開発までの幅広い研究開発活動を行っている。特に重要なテーマについては「技術研究開発プロジェクト」を起こし、全社的な取り組みで短期間に開発を行い着実に成果をあげている。また、西松建設㈱との共同研究をはじめ、公的機関、大学、異業種企業、同業他社との技術交流、共同開発を積極的に推進して、多様な分野での研究開発の効率化を図っている。
当連結会計年度における研究開発費の総額は1,066百万円であり、セグメントごとの研究開発活動は以下のとおりである。
(建築事業及び土木事業)
(1)建築環境関連技術
「低炭素施工システム(TO-MINICA)」の開発、運用やBDFの生産技術の開発、環境最先端テナントビルの設計、建設などにより、2020年に1990年比CO2排出量を40%削減する目標を掲げて活動中である。さらに、2014年にTO-MINICAをWEB版に改良を行った。これにより作業所、協力会社両者の業務負担を軽減すると共にデータの信頼度を向上している。これらの活動により、2013年度の作業所におけるCO2排出は73,185t-CO2(基準年比62%減)、CO2排出量原単位は18.3t-CO2/億円(基準年比36%減)となった。ZEB(ネット・ゼロエネルギー・ビル)の実現に向けて、今後の展開の基礎となるZEBモデルを構築し、実建物への導入を図る。また、超高層集合住宅やリニューアル建物をターゲットとした「外断熱工法」、学校を対象とした「ハイブリッド換気システム」、外・半戸外空間や大空間などを対象とした「ミスト噴霧による蒸発冷却効果の利用技術」を整備するとともに、建物計画段階で太陽光発電パネルや風力発電システムなどの効果を簡易に予測する「自然エネルギー利用計算ツール」を開発している。
室内環境および精密環境技術に関連する技術では、天井の仕上げをなくした、従来よりもローコストな工業系クリーンルームである「スケルトンクリーンシステム®」を開発した。
実験施設として技術研究所に「室内環境比較実験室」を新設し、タスク&アンビエント空調・照明などのシステム開発や室内環境評価に活用し、ドラフト感の少ない空調吹出口を開発した。
建物内の電力供給に関しては、太陽光発電を直流のまま供給し、緊急時の停電にも対応できる「直流給電システム」を技術研究所に試験導入した。
(2)再生可能エネルギー関連技術
豊富な海洋エネルギーを有効活用する浮体式洋上風力発電施設の構築技術を開発し、環境省からの委託業務として「浮体式洋上風力発電実証事業委託業務」に取り組んでいる。2013年度には実証機(2MW)の実海域設置を成功させ、早期実用化に向けた取り組みを継続している。(3)生物多様性関連技術
「戸田建設生物多様性行動指針」を策定するとともに、設計時、施工時の留意点や関連法令、事例を集めた「生物多様性対応マニュアル」を作成し、業務に展開している。また、緑化設計時にその地域の生物、植生に合わせて評価できる「生物多様性評価システム」を開発し、活用している。(4)土壌汚染・濁水処理・ダイオキシン類対策関連技術
揮発性有機化合物による土壌・地下水汚染を、微生物を活用して原位置で浄化する「デクロパワー工法」を開発し、実際の汚染現場に適用している。また、工事排水の濁水処理を行うシステムとして「TSフィルターろ過装置」を開発、従来に無い高度処理を行うことが可能となった。ダイオキシン類対策を伴う焼却施設の解体では、「チムリス煙突解体工法」や「煙突自動除染レンガ解体ロボット(スウィンパーロボ)」等の除染技術と無害化技術、ICタグによる管理区域安全管理システム等の先端要素技術を統合した「環境配慮型焼却施設解体システム(TO-CDS)」を開発している。
(5)放射性物質の対策関連技術
遮蔽機能を増強できる移動に配慮した保管容器「TOMコンテナ」を開発した。その他、2種類の「ドライアイスブラスト除染工法(ワイドバキューム工法、ゲルスプレー工法)」を開発している。放射性廃棄物処分関連技術としては、ベントナイトに関する技術の開発、地下深部での地震動測定と耐震性評価、海外情報調査、新規制基準制定に伴う学会標準改定の業務などを実施した。
(6)免震・制振・BCP関連技術
東日本大震災の教訓を受け、超高層建物や震災時に重要拠点となる公共建築物、病院建築などの建物損傷を迅速かつ適格に評価可能な「ビルメディカルシステム®(建物モニタリング診断システム)」を開発し、将来のBCM対策の核となるソリューション技術として位置づけている。精密生産施設の微振動対策技術では、弾性すべり支承と剛すべり支承を用いた微振動対応型の免震工法に加え、BCP対策や外乱の振動特性に合わせて使い分ける対策メニューを整備している。新たに高層住宅の風対策や生産施設の微振動対策用に開発した免震装置は(西松建設㈱等と共同開発)、2013年6月に部材認定を取得した。さらに高度な免振技術として、地震の揺れに応じて減衰係数を切り換え、小中地震から大地震まで幅広い範囲で揺れを抑えることが可能な「セミアクティブ免振技術」を開発している(早稲田大学と共同開発)。
さらに、東日本大震災クラスの地震でも立体自動倉庫の揺れを半分程度に低減することができるワイヤーロープを利用した低コストで高性能なラック制震技術「立体自動倉庫制震工法」を開発した。
(7)天井脱落対策技術
2011年度に、在来工法天井の落下・脱落防止対策として「天井耐震クリップ工法」を開発した。(西松建設㈱と共同研究)この工法は2013年3月に(一財)ベターリビングより建設技術審査証明を取得した。また、特に継続使用が重要な生産施設・医療施設等のBCM対策として、「制震天井システム」も開発した。(8)基礎・地盤関連技術
基礎構造の耐震補強工法について、斜杭の活用により耐震性能とともに経済性も確保できる設計手法を整備し、(一財)ベターリビングの技術評定を取得した。場所打ちコンクリート杭について、杭中間部に拡径部を設けることにより、常時および地震時の支持力及び引抜き抵抗を向上させ基礎構造の減量化・合理化をはかるための「Me-A工法(MultiEnlarged-NodesAcepile)」を開発し、(一財)ベターリビングの技術評定を取得した。
(9)建築仕上げ材料関連技術
高耐久性床、抗菌・防かび床、帯電防止床を開発し、実用化している。また、臭気対策としてゼオライト消臭建材、抗菌対策として光触媒技術を利用した抗菌コーティング材を開発している。(10)建築生産システム関連技術
杭工事において施工精度をリアルタイムで管理する「杭芯位置誘導管理システム」、「ケーシング鉛直精度管理システム」を開発・活用している。リニューアル・耐震補強工事において、居付きの耐震補強を可能にする「鋼管コッター工法」を用いた耐震補強工法のメニューを拡充し、多くの実績を積んでいる。
解体技術において、低振動・低騒音の解体工事、リニューアル工事を実現した「水素ガス切断工法」、「泡電動コンクリートカッターによるスラブ斜め切断工法」を開発し、活用している。また、超高層建物においては、環境に配慮し二酸化炭素・騒音・粉塵の発生を抑えた「TO-ZERO工法」を開発した。
(11)ICT生産管理関連技術
情報化技術に関して、現場管理業務の効率化のために、「ICタグを利用した入退場管理システム」、「作業所内物流管理システム」のほか、品質向上のためのタブレット端末の適用や、「加速度センサーを用いたコンクリート打重ね時間管理ツール」や「CFT打設管理システム」で施工管理の効率化も図っている。(12)音響・遮音関連技術
ホールなどの大空間における音楽・講演等をより快適に聴くことのできる空間を提供する室内音響関連技術、交通騒音や隣室騒音等の聞きたくない音を低減する遮音関連技術の双方の研究開発を実施し、多くの実物件に適用している。工事中に問題となる建設機械騒音の低減対策として、逆位相の音を出して打ち消すアクティブ・ノイズ・コントロール(ANC:ActiveNoiseControl)を用いた戸田式アクティブ騒音制御システム「TANC(タンク)」を開発し、多くの作業所で活用している。
また、関西大学と共同で、防音壁などの先端部に取り付けることで大きな騒音低減効果が得られるエッジ効果抑制パネル「エッジサイレンサー」を開発し、仮設だけでなく本設にも適用している。
集合住宅で問題となる重量床衝撃音に対しては、巾木の下部に特殊なモヘヤ材を取付け、低減性能を確保した「モヘヤ付き巾木M」を東京技営(株)と共同で開発した。
また、特殊防振支持脚を採用することにより重量床衝撃音レベル遮断性能を従来の乾式二重床より1ランク向上させ、床面の振動も小さく抑えることができる乾式二重床「プレフロアーQuiet+(クワイエットプラス)」を共同開発した。
(13)シールド関連技術
狭隘な都市域において立坑用地の確保を容易にした「省面積立坑システム」は、当社施工28件、他社施工分を含めると47件の現場適用実績を持つ。下水道施設の劣化防止を目的とした「内面被覆工法」は、管渠に対しては民間6社、処理場に対しては民間15社でそれぞれ共同研究を実施し、(公財)日本下水道新技術機構の技術審査証明を取得済みである。都市型トンネル工事分野では、「交差点アンダーパス工法」、「超大口径管推進工法」、「管渠更生工法」等の技術を開発し、営業展開、現場適用に取り組んでいる。国内で8件しかないφ3500mm以上の超大口径管推進工事の内、2件を当社が施工している。(14)山岳トンネル技術
増加基調の山岳トンネル工事に対応する技術として、覆工品質の向上、吹付コンクリート等支保技術の改良、調査計測技術の高度化、環境負荷低減技術の開発に部門横断組織で積極的に取り組んでいる。覆工品質の向上については、ひび割れ低減技術の開発、吹付コンクリートについては増粘剤を添加してリバウンドを抑制した吹付コンクリートの開発、調査計測については切羽前方の地山を可視化するDRiスコープの開発、地山の3次元の変形に時間を考慮した変形予測を行う4DスーパーNATMの開発に取り組んでいる。また、開発済みの拡底ロックボルトやTDEM探査法は現場適用に展開している。(15)コンクリート技術
超高強度コンクリートに関して、設計基準強度200N/mm2の超高強度コンクリートを実物件に採用し、施工を完了した。さらに、高耐久性コンクリート技術(低収縮コンクリート技術)についても開発した。品質管理に関して、コンクリートの現場受入時の品質管理システムやコンクリート施工時の打重ね時間管理システムを構築した。また、(独)土木研究所との共同研究である「ボス供試体によるコンクリート構造物の品質検査法」については、(一社)日本非破壊検査協会の微破壊試験の規格として制定され、国土交通省地方整備局の橋梁直轄工事に採用されている。
コンクリートの剥落防止及びひび割れ発生の抑制を目的としたポリプロピレン短繊維「シムロック」を開発し、道路・鉄道のトンネル覆工コンクリートや高架橋等のコンクリートへの現場適用を図っている。また、既に豊富な実績を有する、冬場の低温時等に用いられるコンクリートの保温湿潤養生マット「Qマット」や夏場の高温時等に用いられるコンクリート湿潤養生マット「アクアマット」と併せ、多様なコンクリート養生システムを提供している。
(16)リニューアル技術
既設トンネル等の空洞充填材として「中性系可塑性充填材」を開発し、現場適用を図っている。従来のセメント系充填材(強アルカリ性)に対して、本材料は硬化前後の水素イオン濃度を中性域(pH5.8~8.6)にしたものであり、周辺環境への影響を最小限にすることができる。河川や農用地近傍での工事に提供していく予定である。また、既設トンネル等の補修補強工法として「BFP修繕工法」を開発した。本工法は連続繊維をプレート状に加工し、トンネル覆工内面に設置することで耐荷性や変形性能を向上させる工法であり、鉄道や道路管理者へ提供していく予定である。(17)基盤整備関連技術
わが国の持続的発展を図る上で、社会基盤整備は急務の課題であり、それらを支援するために各種の技術提案及び開発を実施している。オーバーパスに対応した立体交差急速施工技術「すいすいMOP工法」(2現場竣工済)、アンダーパスに対応した非開削トンネル構築技術「さくさくJAWS工法」、鉄道連続立体高架の工期短縮を実現するプレキャストアーチ式高架橋「すいすいSWAN工法」、開削地下構造物の急速構築技術「さくさくSLIT工法」を積極的に提案展開している。新型雨水浸透貯留施設工法、老朽インフラ更新技術、排泥量削減を目指した地盤掘削技術「気泡掘削工法」及び「特殊ポリマー安定液工法」など、持続可能で災害に強い基盤整備に資する施工技術の向上を目指すとともに、大規模加速器計画などの地下岩盤利用分野についても積極的に取り組んでいる。(18)医療施設関連技術
院内感染対策として、トリオシンフィルターとイオン発生器S-Plasmaionと高効率電気集塵器K-elementを併用する「トータル除菌空調システム」を新たに開発している。また、臭気対策として「ゼオライト消臭建材」を開発し、さらに、光触媒技術の利用をはじめとした「院内感染対策トイレシステム」を開発している。その他、手術室、病室のレイアウト検討のためにバーチャルリアリティ(VR)技術を使った「病院VRシステム」を開発している。また、㈱村田製作所およびウシオライティング㈱と共同開発中の無線通信技術を利用した次世代病院向け照明システム「スマートホスピタルライティングシステム」を開発し、埼玉県立がんセンターに導入した。
なお、子会社においては、研究開発活動は行われていない。
(不動産事業及びその他の事業)
研究開発活動は特段行われていない。経営上の重要な契約等財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
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