有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S10056CK
オークマ株式会社 研究開発活動 (2015年3月期)
経営上の重要な契約等メニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当グループでは、基礎及び応用研究からこれらの研究をベースとした新製品の開発まで一連の研究開発活動を、当社の技術本部及びFAシステム本部を中心として行っております。当連結会計年度は研究開発費として36億57百万円を支出いたしました。
研究開発活動の概要は、次のとおりであります。
(1) 新機種開発
世界経済が総じて緩やかな回復基調で推移するなか、工作機械業界をとりまく環境は月を追うごとに回復基調が強まりました。2014年の日本の業界受注額は1兆5,094億円と前年の1兆1,170億円を大幅に上回り、2007年に記録した史上最高の1兆5,900億円に次ぐ史上2番目の高水準となりました。新興国の台頭や世界の人口増加によりエネルギー産業、インフラ整備に向けた需要は堅調に推移しており、拡大する航空機業界のほか、先進国・新興国ともに自動車産業の需要も広がっています。このような市場において、製品競争力を一層高めていくためには、生産性向上に貢献する機械・高付加価値加工・高精度加工が安定して実現でき、環境・エネルギーに配慮したスマートファクトリーに対応できる機械が必要となります。当グループは、このような市場要求に対して業界唯一の、機・電・情・知(機械・電気・情報・知識創造)の融合技術を持つ強みを活かし、「高精度生産性」の追求と「省エネルギー」に貢献するオンリーワン技術・商品の開発を展開しております。お客様の最大能率加工を支援する「加工ナビ」、誰にでも安定して高精度加工が実現できる「サーモフレンドリーコンセプト」、衝突を気にせず誰にでも熟練の操作を実現する「ぶつからない機械(アンチクラッシュシステム)」、5軸制御加工機の幾何誤差を自動計測・補正する「ファイブチューニング」等の知能化技術をこれまでに開発し、市場で高い評価をいただいています。
更に2014年には、拡大する航空機業界で課題となっている、チタン・インコネル材の様な難削材の高能率加工を実現する「シンクロドライビング」を開発し、当グループの技術力を示すものとして市場で高い評価を頂いております。
インフラ産業、航空機、エネルギー分野では、大型部品においても複数部品の一体化が加速し、複雑形状化が進んでおります。そのため加工の工程集約のニーズが一層高まり、1回の段取りであらゆる加工ができる5軸制御マシニングセンタや複合加工機の需要がグローバルに増加しております。これらの需要に対応すべく、サーモフレンドリーコンセプトによる抜群の加工精度安定性とファイブチューニングによる高精度な加工を実現する5軸制御マシニングセンタ「MU-8000V」を開発しました。「MU-8000V」は、昨年までに開発した「MU-5000V」「MU-6300V」と同様にワークへのアプローチを作業者側と、ワークを自動交換する装置(APC(自動パレット交換)、ロボット)を区別することで、機械仕様に関わらず、作業者の機械への寄付きの良さを確保しております。これにより、さらに大きな5軸制御マシニングセンタ「MU-10000H」まで幅広くラインナップでき、市場ニーズに的確に応えることができるようになりました。
また、複合加工機では、よりマシニングセンタに近い加工を実現し、機械の最大工具長の工具を使用しても加工制限が発生しない理想的な動作範囲を持つ「MULTUS U3000」「MULTUS U4000」シリーズを2013年に開発いたしましたが、お客様の加工部品の大きさに最適な加工機を選択頂ける様、1000・1500・2000mmの長手展開と共に、工程集約や、加工時間短縮といった様々なご要望に、自在に対応可能とする下刃物台・対向主軸仕様の展開を行い、全17機種の展開を完了しました。
また、5軸制御マシニングセンタの幾何誤差を自動計測・補正するために開発いたしました「ファイブチューニング」の機能を当社の複合加工機「MULTUS U」シリーズ及び「VTM-YB」シリーズにも適用し、複雑形状部品加工における精度を向上させることができるようになりました。
自動車産業向けでは、エンジンのダウンサイズとターボの組合せが加速しており、ターボの生産量が拡大しております。これらをはじめ小型高精度部品の需要の高まりに応えるために小型の円筒研削盤「GA-15W」を開発しました。コンパクトな設計でライン長の短縮を実現し、大径砥石が搭載できるため長時間の連続稼働が可能となりました。また、新開発の研削盤用新CNC「OSP-P300G」を投入し、作業者の意思に沿った容易な操作性と、1画面で簡単に砥石ドレスが実現できました。さらに、小型ワークで発生しやすい研削びびりを抑制する機能も搭載することで、量産加工において重要視される連続稼働での面積生産性の向上に大きく貢献します。
これらの継続的な機械及び技術の開発の結果、2014年には、市場で高い加工能力が評価されている門形マシニングセンタ「MCR-C」が、「第44回機械工業デザイン賞」(日刊工業新聞社主催)を、5軸立形制御マシニングセンタ「MU-6300V」がドイツにおいて「MM Award」(Maschinen Markt社)をそれぞれ受賞いたしました。また、制御装置では、日常のメンテナンスからプログラム作成、稼動管理、そして作業者が使いたいアプリケーションといった「ものづくり」の各段階で必要なサポートを制御装置に一揃にした、ものづくりコントローラ「OSP Suite」を開発し、「第57回十大新製品賞」(日刊工業新聞社主催)を受賞いたしました。
当グループは今後とも、お客様の利益の最大化に向けて「高精度生産性」を追求し、また、お客様が求める「ソリューション(課題解決や付加価値向上のための提案)」を機械に組込むことにより、新しい差別化・成長製品の創出を目指していきます。機械技術、加工技術、制御・ITの技術基盤をベースに、トータルレスポンシビリティの強みをさらに拡げて「最高のものづくりサービス」を提供してまいります
この戦略は、当グループならではの強みであり、他社が容易に真似できない差別化戦略であります。オンリーワン技術・商品を間断なく開発し、その業界、対象ワークでグローバルに競争力をもつ生産手段を提供し、お客様の利益を創出し続けることにより、世界の工作機械のエクセレントカンパニーを目指します。
(2) NC装置とIT製品の開発
当グループは、工作機械メーカとしての長い歴史と実績に基づく確かな技術を土台として、1963年(1963年)、自社製NCの開発に成功しました。「OSP」は、機械技術と電気技術の融合を目指し、電源を切っても現在位置を失わない「絶対位置検出」、変化するお客様のニーズに柔軟に対応する「ソフトウェア可変」、機械とNC装置を一体でサポートする「トータルレスポンシビリティー」を基本理念としており、この3つの理念は、「OSP」の誕生以来、半世紀を経た現在に至るまで、当グループにおける「OSP」開発の基本理念として受け継いでおります。現在も、お客様の価値創造を支えるために、機・電・情・知(機械・電気・情報・知識創造)の更なる融合によって、生産現場が真に求める、ユニークな差別化技術と先進機能の開発を続けております。
当グループにおける、当連結会計年度における研究開発活動としては、1)OSP suiteの開発、2)加工技術の強化開発、3)高精密サーボの強化開発を推進いたしました。
1)「IoT」時代にフィットした新世代知能化CNC「OSP suite」の開発
ビジネスのグローバル化および製品サイクルの短縮化に伴い、モノづくりのリードタイム短縮とコスト低減が一層重要となっています。そこで、製品開発から生産までのプロセスを最適化し、課題を解決するデジタル・マニュファクチャリングが注目されています。生産現場には情報が溢れており、図面や加工指示情報と高度化が進む工作機械が発信する情報をデジタル化し、お客様がそれらデジタル情報を活用し、機械の性能・機能を最大限引き出して、最高の生産性向上を図るソリューションを提供する事が重要となっています。OSPは、高速&高精度な加工を実現するための数々の機能、「サーモフレンドリーコンセプト」、「アンチクラッシュシステム」、「加工ナビ」、「ファイブチューニング」などの知能化技術でお客様の生産性向上を支援してきています。
「OSP suite」は、さらに、モノづくりに必要な加工情報、段取り情報、メンテナンス情報まで範囲を広げ、モノづくり全体を支援するものです。進化を続ける当社の「知能化技術」と「IoT」時代にフィットしたデジタル・マニュファクチャリングを切り拓く、知能化アプリ・情報アプリ「suiteアプリ」を最適融合し、人に優しい新操作感覚「suiteタッチ」で楽しく使用できる操作環境を提供する新世代知能化CNCです。
また、知能化技術と融合した新世代省エネルギー技術「ECO suite」では、加工精度や使い勝手を損なわない工作機械のアイドリングストップを実現した「ECOアイドルストップ」、間欠運転など稼働中の省エネルギー設定が可能な「ECOオペレーション」、サーボ制御技術を応用し高効率を極限まで追求した省エネ油圧ユニット「ECOユアツ」で電力量を50%削減しました。(当社 立形マシニングセンタ比)
本製品は、2015年4月から「MULTUS U3000」等の複合加工機、及び「MU-6300V」等の5軸制御マシニングセンタに適用を開始いたしました。
2)加工技術の強化開発
航空機・エネルギー・医療などの分野では、チタン、インコネルなどの難削材の使用率が高まり、それらの加工の安定化や加工コスト低減が求められています。難削材加工の工具寿命を向上させる技術として「シンクロドライビング」機能を開発、JIMTOF2014に出展し、制御装置を自社で開発できるオークマならではの機能と高い評価をいただきました。インサート工具を使用する場合に問題となる「工具チッピング」や「びびり」対策として、工具各刃における1刃送り量や加工入り部の切削速度を制御する事で、振動や切削熱を低下させ、工具寿命を向上させます。
3)高精密サーボの強化開発
加工するワーク重量に応じて最適な加減速制御を行い、加工時間を最短化するサーボナビAI(Automatic Identification)を2012年から適用し、次に経年変化による摺動抵抗の変化に伴う送り軸反転時の追従誤差や機械振動の増加を自動的に抑制するサーボナビSF(Surface Fine tuning)を2013年から、マシニングセンタの直線軸に適用しました。これらの機能は高速・高精度加工を求められる金型加工のお客様に好評を頂いております。
当連結会計年度は、このサーボナビのさらなる機能強化を行い、5軸制御マシニングセンタの回転テーブル軸や、旋盤系複合加工機の主軸にサーボナビAIを開発いたしました。広い加工エリアを持つ最新の5軸制御マシニングセンタや複合加工機においては、加工可能なワーク重量が大きく、その重量変化がサーボ制御に与える影響が大きいため、常に機械の最大性能を引き出すサーボナビにより、加工時間短縮の大きな効果を得ることができます。
当グループでは、半世紀に渡る自社製NC開発の基本理念を今後も継承するとともに、オークマの強みである機電情知融合のコンセプトを基盤として、先進のサーボ技術、先進の情報技術、オンリーワンの知能化技術の開発と強化を進め、自社製NCとIT製品のさらなる進化を促進し、「総合一貫した“ものづくりサービス”」を通じて世界中のお客様の価値創造に貢献できるように推進してまいります。
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