有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1004SLO
セイコーエプソン株式会社 事業等のリスク (2015年3月期)
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。
なお、エプソンは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避および発生した場合の対応に努める方針です。
また、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてエプソンが判断したものです。
(1)プリンターの売上変動による業績への影響について
2015年3月期における情報関連機器事業セグメントの売上収益9,072億円は、エプソンの連結売上収益1兆863億円の8割強を占めており、そのなかでもホーム市場向けのほか、新興国市場・オフィス市場向けや商業・産業向けのインクジェットプリンターを中心とする各種プリンターとこれらの消耗品が売上収益および利益の多くを占めています。したがって、これらのプリンターおよび消耗品の売上収益が変動した場合には、エプソンの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(2)他社との競合について
(販売における影響)
エプソンの主力製品であるプリンターやプロジェクターをはじめとする製品全般について、他社との競合の激化により、販売価格の低下や低価格品への需要のシフトおよび販売数量の減少などの影響を受けることがあります。
エプソンでは、これらの状況に対して、各市場での顧客ニーズに対応した製品や高付加価値製品およびサービスの提供に取り組むとともに、設計・開発の効率化やコストダウンなどにより製造コストの削減に努め、かかる販売価格の低下や販売数量の減少に対処していく方針です。
しかしながら、今後、これらの施策が成功する保証はなく、エプソンがかかる販売価格の低下などに効果的に対応できない場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(テクノロジーにおける影響)
エプソンの販売する一部の製品については、他社のテクノロジーと競合しており、例えば、次のような事例があります。
・インクジェットプリンターにおけるエプソンのマイクロピエゾ方式(※1)と他社のサーマルインクジェット方式(※2)との競合
・プロジェクターにおけるエプソンの3LCD(三板透過型液晶)方式(※3)と他社のDLP方式(※4)などとの競合
エプソンは、これらのエプソンの製品において採用している方式について、現時点では競合他社の方式に対する技術的な優位性があると考えていますが、消費者によるエプソンの技術に対する評価が変化した場合や、エプソンの技術と競合するほかの革新的な技術が出現した場合などには、エプソンの競争優位性が損なわれ、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
※1 マイクロピエゾ方式とは、ピエゾと呼ぶ圧電素子を伸縮させて、インク滴をノズルから噴射させるエプソン独自のインクジェット技術をいいます。
※2 サーマルインクジェット方式とは、インクに熱を加えることで発生する気泡の圧力により、インク滴を噴射する技術をいいます。なお、バブルジェット方式といわれることもあります。
※3 3LCD(三板透過型液晶)方式とは、ライトバルブに高温ポリシリコンTFT液晶パネルを用いる方式であり、光源から出射された光を特殊な鏡を使って赤・緑・青の3原色に分離し、各色専用のLCDで映像を作った後、無駄なく再合成し投影します。
※4 DLP方式とは、表示デバイスにDMD(Digital Micromirror Device)を用いる方式です。DMDとは、ミクロンサイズの微極小な鏡が多数並んだ半導体で、1つの鏡が1画素に対応し光源からの光を反射することで映像を投影します。なお、DLPおよびDMDは、米国テキサス・インスツルメンツ社の登録商標です。
(新たな競合の発生)
エプソンは、現在、高度な技術力、豊富な資金力または強固な財務基盤を有する大企業あるいは市場における認知度、供給力または価格競争力を有する国内外の企業との間で競合関係にありますが、これらに加え、将来、ほかの企業が、ブランド力、技術力、資金調達力、マーケティング力、販売力および低コストの生産能力などを生かしてエプソンの事業領域へ新規参入してくる可能性もあります。
(3)経営環境などの急激な変化について
エプソンは、現在、独自の強みを生かすことが可能であるとともに、今後の拡大が見込まれる分野として、「プリンティング」「ビジュアルコミュニケーション」「生活の質向上」「ものづくり革新」の4つの領域に経営資源を集中し、持続的な成長を実現する事業基盤の構築・強化に取り組んでいます。この実現に向けて、エプソンでは、長期ビジョンや中期的な経営計画などに基づく施策を展開していますが、技術の優位性が競争力にとって大変重要な要素であると考えており、創業以来の独自の強みである「省・小・精の技術」を源泉とする「マイクロピエゾ」「マイクロディスプレイ」「センシング」「ロボティクス」の独創のコア技術を進化させるとともに、これらをプラットフォームとして融合することにより、顧客ニーズに対応した製品の開発・製造およびサービスの提供を行っています。
しかしながら、エプソンが経営資源を集中しているこれらの製品の属する市場は、一般的に技術革新の速度が速いとともに製品ライフサイクルが短く、また、世界景気の変動にともなうエプソンの主要市場における需要・投資動向が、エプソンの製品の販売に影響を及ぼす可能性があるほか、現在推進している中期計画や事業戦略が必ずしも成功する保証はありません。
エプソンでは、各市場や顧客のニーズの把握に努め、製品市場予測による中・長期的な研究開発や投資を行うほか、開発・設計のプラットフォーム化などにより、既存製品から新製品への迅速かつ円滑な移行などにも取り組んでいく方針です。
しかしながら、今後、市場でのニーズや技術革新の変化に適切に対応できない場合、景気後退などにより需要が回復しない場合および主要市場における急激な需要変動に適切に対応できない場合などには、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)第三者によるインクジェットプリンター用消耗品の販売について
インクジェットプリンターの主な消耗品であるインクカートリッジは、エプソンの売上収益および利益にとって相当重要なものとなっています。インクカートリッジなどのインクジェットプリンター用消耗品については、第三者によりエプソンのプリンター本体で使用することができる代替品が供給されています。これらの第三者からの代替品は、一般的にエプソンの純正品よりも廉価で販売されており、また、先進国市場と比較して新興国市場においてより流通している状況にあります。
エプソンは、こうした第三者によるインクジェットプリンター用消耗品の販売について、純正品としての高い品質の訴求のほか、大容量インクタンクを搭載したモデルの販売など、各市場における顧客ニーズに的確に対応したインクジェットプリンターを提供し、顧客の利便性をさらに高めることにより、引き続き顧客価値の実現を図っていく方針です。また、エプソンが保有するインクカートリッジに係る特許権および商標権の侵害に対しては、適宜、法的措置を講じていく方針です。
しかしながら、これらの施策が必ずしも有効である保証はなく、将来において代替品の販売が拡大し、純正品のシェア低下にともなう販売数量の減少やこれに対応するための販売価格の引下げなどにより、インクカートリッジの売上収益が減少した場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)海外での事業展開について
エプソンは、グローバルに事業を展開しており、2015年3月期の連結売上収益のうち7割強は海外における売上収益が占めています。エプソンは、中国、インドネシア、シンガポール、マレーシアおよびフィリピンなどのアジア地域をはじめ、アメリカやイギリスなどにも生産拠点を有し、販売会社も世界各地域に設立しています。また、2015年3月末における海外従業員数はエプソンの全従業員数の7割強を占めています。
エプソンでは、こうしたグローバルな事業展開は地域ごとの市場ニーズを的確にとらえたマーケティング活動を可能とし、また、製造コストの削減およびリードタイムの短縮によるコスト競争力の確保など、事業上の多くのメリットがあると考えています。一方で、海外における製造・販売に関しては、各国政府の製造・販売に係る諸法令・規制、社会・政治および経済状況の変化、輸送の遅延、電力などのインフラの障害、為替制限、熟練労働力の不足、地域的な労働環境の変化、税制変更、保護貿易諸規制、そのほかエプソンの製品の輸出入に対する諸法令・規制など、海外事業展開に不可避のリスクがあります。
(6)特定の仕入先からの部品などの調達について
エプソンは、第三者から一部の部品などを調達していますが、一般的に長期仕入契約を締結することなく継続的な取引関係を維持しています。また、エプソンは、部品などに関して複数社からの調達を原則としていますが、特定の部品などについては、他社からの代替調達が困難であるため、1社のみからの調達となる場合があります。エプソンでは、品質の維持・改善やコスト低減活動などに調達先と協同で取り組むことなどにより、安定的かつ効率的な調達活動を展開していく方針ですが、仮にこれらの調達先からの供給の不足や供給された部品などの品質不良などにより、製造・販売活動に支障を来たした場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)品質問題について
エプソンの製品保証の有無および内容は顧客との個別の契約により異なります。エプソンの製品に不良品または規格に適合しないものがあった場合には、エプソンは当該製品の無償での交換または修理など、不良品を補償するコストを負担し、また、当該製品が人的被害または物的損害を生じさせた場合には、製造物責任などの責任を負う可能性があります。
このほか、エプソンの製品の性能に関し適切な表示または説明がなされなかったことを理由として、顧客などに対し責任を負うことや、改良のためのコストが発生する可能性があります。さらに、エプソンの製品にこのような品質問題が発生した場合には、エプソン製品への信頼性を損ない、顧客の喪失または当該製品への需要の減少などにより、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)知的財産権について
エプソンにとって、特許権およびそのほかの知的財産権は競争力維持のために非常に重要です。エプソンは、自らが必要とする多くの技術を自社開発してきており、それを国内外において特許権、商標権およびそのほかの知的財産権として、あるいは他社と契約を締結することにより、製品および技術上の知的財産権を設定し保持しています。また、知的財産権の管理業務に人員を重点的に配置し、知的財産権の強化を図っています。
しかしながら、次のような知的財産権に関する問題が発生した場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
・エプソンが保有する知的財産権に対して異議申立や無効請求などがなされる可能性、その結果、当該知的財産権が無効と認められる可能性
・第三者間での合併または買収の結果、従来、エプソンがライセンスを付与していない第三者がライセンスを保有し、その結果、エプソンが知的財産権の競争優位性を失う可能性
・第三者との合併または買収の結果、従来、エプソンの事業に課せられなかった新たな制約が課せられる可能性およびこれらを解決するために支出を強いられる可能性
・エプソンが保有する知的財産権が競争上の優位性をもたらさない、またはその知的財産権を有効に行使できない可能性
・エプソンまたはその顧客が第三者から知的財産権の侵害を主張され、その解決のために多くの時間とコストを費やし、または経営資源などの集中が妨げられることになる可能性
・第三者からの侵害の主張が認められた場合に多額の賠償金やロイヤリティの支払い、該当技術の使用差し止めなどの損害が発生する可能性
・エプソンの従業員などにより発明などに対する報酬に関する訴訟が提起され、その解決のために多くの時間とコストを強いられる可能性、その結果、多額の報酬の支払いが決定される可能性
(9)環境問題について
エプソンは、国内外において製造過程で発生する廃棄物および大気中への排出物などについて、さまざまな環境規制を受けています。エプソンでは、環境保全活動を重要な経営方針の一つとして掲げ、「環境ビジョン2050」と中期施策に基づき、環境負荷を低減した製品の開発・製造、使用エネルギー量の削減、使用済み製品の回収・リサイクルの推進、国際的な化学物質規制(主には欧州のRoHS指令やREACH規制)への対応および環境管理システムの改善など、あらゆる側面から環境保全活動に取り組んでいく方針です。こうした取り組みの結果、エプソンでは、これまで重大な環境問題が発生したことはありませんが、将来において環境問題が発生し、損害の賠償や浄化などの費用負担、罰金または生産中止などの影響を受ける可能性、あるいは新しい規制が施行され多額の費用負担が必要となる可能性があり、このような事態が実現した場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)人材の確保について
エプソンの高度な新技術・新製品の開発・製造には、国内外における優秀な人材の確保が重要ですが、これらの人材の獲得競争は激しいものとなっています。エプソンは、役割に基づいた処遇制度の導入や現地人材の積極的な登用などにより、優秀な人材の確保に努めていますが、仮にこれらの人材を十分に採用または雇用し続けることができない場合や、技術などの継承が適切にできない場合には、エプソンの事業計画の遂行に影響を及ぼす可能性があります。
(11)為替変動について
エプソンの売上収益の相当部分は、米ドルおよびユーロなどの外貨建てとなっています。エプソンは、海外調達の拡大および生産拠点の海外移転などを進めたことにより米ドル建ての費用が増加し、米ドル建ての売上収益と費用はおおむね拮抗していますが、ユーロ建ての売上収益は依然としてユーロ建ての費用よりもかなり多い状況にあります。また、エプソンは、為替変動リスクをヘッジするために為替予約取引などを行っていますが、米ドルおよびユーロなどの外国通貨の日本円に対する為替変動は、エプソンの財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)年金制度について
エプソンの設けている確定給付型の制度として、確定給付企業年金制度および退職一時金制度があります。
エプソンは、確定給付型の退職年金制度について、年金資産の運用収益率の低下や受給権者の増加といった状況を踏まえ、今後の環境変化に適応するとともに、将来にわたり安定的に維持運営することを目的として2014年4月に制度改定を実施しましたが、年金資産の運用成績の変動および退職給付債務の数理計算の基礎となる割引率の見積数値の変動などが発生した場合には、エプソンの財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。
(13)独占禁止法令に基づく手続について
エプソンは、グローバルに事業を展開しており、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律など、国内外の独占禁止法令に基づく手続の対象となることがあります。海外の関係当局も特定の業界などを対象に調査または情報収集を行うことがあり、その一環としてエプソンも市場状況および販売方法一般に関する調査などを受けることがあります。これらの調査・手続が実施された場合や関連法規の違反があった場合には、エプソンの販売活動に支障が生じ、またはエプソンの社会的信用を損なうこともしくは多額の制裁金が課されることなどにより、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社および関係する連結子会社は、現在、液晶ディスプレイの価格カルテル嫌疑に基づき、欧州委員会そのほかの競争法関係当局による調査を受けていますが、現時点においてかかる調査の結果および終結の時期を予測することは困難です。
(14)重要な訴訟について
エプソンは、プリンティングソリューションズ事業、ビジュアルコミュニケーション事業およびウエアラブル・産業プロダクツ事業などに係る各製品の開発、製造、販売およびこれらに付帯するサービスの提供を主な事業として、国内外において事業活動を展開していますが、その事業の特性上、知的財産権、製造物責任、独占禁止法、環境規制などに関連して訴訟が提起される場合や、法的手続が開始される可能性があります。
有価証券報告書提出日現在、エプソンに係争している重要な訴訟は、次のとおりです。
ドイツでは、PCやプリンターなどのデジタル機器が著作物の複製を可能にしているとして、著作権者に代わり著作権料を徴収する団体であるVerwertungsgesellschaft Wort(以下「VG Wort」という。)が、デジタル機器を輸入販売する各社に対して著作権料の支払いを求める一連の訴訟を提起しています。
エプソンにおいては、シングルファンクションプリンターについて、2004年1月に当社の連結子会社であるEpson Deutschland GmbH(以下「EDG」という。)が、VG Wortにより著作権料の支払いを求める民事訴訟を提起されました。かかる訴訟の第1審では当該プリンターが著作権料の賦課の対象となるという判断がなされ、当該プリンターの1分間当たりの印刷可能枚数に応じ、1台当たり10ユーロから256.70ユーロまでの料率による著作権料の支払いをEDGに対し命じる判決が下されましたが、第2審および連邦最高裁判所では原告側の請求が棄却され、原告は、かかる判決を不服として憲法裁判所に上訴しました。これに対して、2010年12月に憲法裁判所は、2008年8月の連邦最高裁判所の判決がドイツ連邦憲法第14条に定める権利を侵害していると判断し、連邦最高裁判所の判決を破棄するとともに、審理を連邦最高裁判所に差し戻すという判断を下しました。その後、2011年7月に連邦最高裁判所は、本件を欧州司法裁判所に付託する手続をとり、2012年10月から審理が開始されましたが、2013年6月に欧州司法裁判所は、EU加盟国がプリンターやPCの製造業者に対して著作権料を課すことを認める旨の判断を示しました。これを受け、2014年7月に連邦最高裁判所においても、プリンターやPCが著作権料の賦課対象であるとの判決があり、具体的な著作権料率に関して、高等裁判所にて再審理が開始されました。
なお、エプソンを含む各企業および業界団体は、こうした著作権料の適用範囲の拡大に反対の姿勢を示しています。
また、当社の連結子会社であるEpson Europe B.V.(以下「EEB」という。)は、2010年6月にベルギーにおける著作権料徴収団体であるLa SCRL REPROBEL(以下「REPROBEL」という。)に対して、マルチファンクションプリンターに関する著作権料の返還などを求める民事訴訟を提起しました。その後、REPROBELがEEBを提訴したことにより、これら二つの訴訟は併合され、かかる訴訟の第1審ではEEBの主張を棄却する判決がなされましたが、EEBは、これを不服として上訴する方針です。
このほか、当社および関係する連結子会社は、液晶ディスプレイの価格カルテル嫌疑に基づき、米国において取引先などから民事訴訟を提起されています。
現時点において上記の訴訟の結果および終結の時期を予測することは困難ですが、訴訟または法的手続の結果によっては、エプソンの業績や今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
(15)財務報告に係る内部統制について
エプソンは、財務報告の信頼性に係る内部統制の構築および運用を図っています。エプソンでは、財務報告に係る内部統制の構築および運用を重要な経営課題の一つとして位置付け、グループを挙げて関係会社の管理体制などの点検・改善などに取り組んでいますが、常に有効な内部統制システムを構築および運用できる保証はなく、また、内部統制システムに本質的に内在する固有の限界があるため、今後、上記の対応が有効に機能しなかった場合や、財務報告に係る内部統制の不備または開示すべき重要な不備が発生した場合には、エプソンの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。
(16)他社との提携について
エプソンは、事業戦略の選択肢の一つとして、他社と業務提携などを行うことがあります。しかしながら、当事者間における提携などの見直しにともない、提携関係が解消される可能性があるほか、提携内容の一部変更が行われる可能性があります。また、提携などによる事業戦略が必ずしも想定どおり成功し、エプソンの業績に寄与する保証はありません。
(17)災害などについて
エプソンは、研究開発、調達、製造、物流、販売およびサービスの拠点を世界に展開していますが、これらの地域において予測不可能な自然災害、新型インフルエンザなどの新興感染症の流行、コンピュータウィルスの感染、顧客データの漏洩、社内重要基幹システムの障害発生、部品調達先などの罹災によるサプライチェーン上の混乱、戦争・テロなどが発生した場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
特にエプソンの主要な事業拠点が所在する長野県中部には、東海地震発生時の大規模被災の可能性が高いとされる「地震防災対策強化地域」に指定されている市町村が多く存在し、また、糸魚川静岡構造線に沿った活断層帯があるなど、地震発生リスクが比較的に高い地域です。
エプソンでは、2002年4月に東海地震の防災対策強化地域が見直されたことを受けて地震対策の見直しを行い、防災訓練などの地震防災計画や事業継続計画の策定などにより、かかる災害にともなう影響の軽減に向けた対応を可能な範囲において行っています。
しかしながら、長野県中部に大規模な地震が発生した場合には、これらの施策にもかかわらず、エプソンが受ける影響は甚大なものになる可能性があります。
なお、エプソンは、地震により発生する損害に対しては地震保険を付保しているものの、その補償範囲は限定されています。
(18)法規制または許認可などについて
エプソンは、日本国内および諸外国・地域において多様な事業を展開しており、各国および各事業におけるコンプライアンスに関する体制強化と社内的な啓蒙活動などを通じて各種の法規制に対応するように努めていますが、今後の事業拡大に際しては公的機関などを含む新規顧客への営業活動の強化のほか、健康・医療などの新規分野の開拓にも取り組む必要があるため、これらの活動に関係する各種の法規制やコンプライアンス(法令遵守)への対応が一層求められることがあります。
エプソンでは、引き続きコンプライアンスを重要な経営方針の一つとして位置付け、適宜、未然防止・制御活動を展開していく方針ですが、今後、例えば、腐敗防止法規制、広告・表示規制、個人情報保護・プライバシー規制などにおいて、関係法令などへの抵触またはそのおそれが生じた場合や、より厳格な法規制の導入や関係当局による法令運用の強化が行われた場合には、エプソンの社会的信用が毀損されるとともに、多額の制裁金を課せられるほか、事業活動に制約が生じるおそれがあり、これらの法規制を遵守するための費用が増加するなど、エプソンの業績や今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
なお、エプソンは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避および発生した場合の対応に努める方針です。
また、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてエプソンが判断したものです。
(1)プリンターの売上変動による業績への影響について
2015年3月期における情報関連機器事業セグメントの売上収益9,072億円は、エプソンの連結売上収益1兆863億円の8割強を占めており、そのなかでもホーム市場向けのほか、新興国市場・オフィス市場向けや商業・産業向けのインクジェットプリンターを中心とする各種プリンターとこれらの消耗品が売上収益および利益の多くを占めています。したがって、これらのプリンターおよび消耗品の売上収益が変動した場合には、エプソンの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(2)他社との競合について
(販売における影響)
エプソンの主力製品であるプリンターやプロジェクターをはじめとする製品全般について、他社との競合の激化により、販売価格の低下や低価格品への需要のシフトおよび販売数量の減少などの影響を受けることがあります。
エプソンでは、これらの状況に対して、各市場での顧客ニーズに対応した製品や高付加価値製品およびサービスの提供に取り組むとともに、設計・開発の効率化やコストダウンなどにより製造コストの削減に努め、かかる販売価格の低下や販売数量の減少に対処していく方針です。
しかしながら、今後、これらの施策が成功する保証はなく、エプソンがかかる販売価格の低下などに効果的に対応できない場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(テクノロジーにおける影響)
エプソンの販売する一部の製品については、他社のテクノロジーと競合しており、例えば、次のような事例があります。
・インクジェットプリンターにおけるエプソンのマイクロピエゾ方式(※1)と他社のサーマルインクジェット方式(※2)との競合
・プロジェクターにおけるエプソンの3LCD(三板透過型液晶)方式(※3)と他社のDLP方式(※4)などとの競合
エプソンは、これらのエプソンの製品において採用している方式について、現時点では競合他社の方式に対する技術的な優位性があると考えていますが、消費者によるエプソンの技術に対する評価が変化した場合や、エプソンの技術と競合するほかの革新的な技術が出現した場合などには、エプソンの競争優位性が損なわれ、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
※1 マイクロピエゾ方式とは、ピエゾと呼ぶ圧電素子を伸縮させて、インク滴をノズルから噴射させるエプソン独自のインクジェット技術をいいます。
※2 サーマルインクジェット方式とは、インクに熱を加えることで発生する気泡の圧力により、インク滴を噴射する技術をいいます。なお、バブルジェット方式といわれることもあります。
※3 3LCD(三板透過型液晶)方式とは、ライトバルブに高温ポリシリコンTFT液晶パネルを用いる方式であり、光源から出射された光を特殊な鏡を使って赤・緑・青の3原色に分離し、各色専用のLCDで映像を作った後、無駄なく再合成し投影します。
※4 DLP方式とは、表示デバイスにDMD(Digital Micromirror Device)を用いる方式です。DMDとは、ミクロンサイズの微極小な鏡が多数並んだ半導体で、1つの鏡が1画素に対応し光源からの光を反射することで映像を投影します。なお、DLPおよびDMDは、米国テキサス・インスツルメンツ社の登録商標です。
(新たな競合の発生)
エプソンは、現在、高度な技術力、豊富な資金力または強固な財務基盤を有する大企業あるいは市場における認知度、供給力または価格競争力を有する国内外の企業との間で競合関係にありますが、これらに加え、将来、ほかの企業が、ブランド力、技術力、資金調達力、マーケティング力、販売力および低コストの生産能力などを生かしてエプソンの事業領域へ新規参入してくる可能性もあります。
(3)経営環境などの急激な変化について
エプソンは、現在、独自の強みを生かすことが可能であるとともに、今後の拡大が見込まれる分野として、「プリンティング」「ビジュアルコミュニケーション」「生活の質向上」「ものづくり革新」の4つの領域に経営資源を集中し、持続的な成長を実現する事業基盤の構築・強化に取り組んでいます。この実現に向けて、エプソンでは、長期ビジョンや中期的な経営計画などに基づく施策を展開していますが、技術の優位性が競争力にとって大変重要な要素であると考えており、創業以来の独自の強みである「省・小・精の技術」を源泉とする「マイクロピエゾ」「マイクロディスプレイ」「センシング」「ロボティクス」の独創のコア技術を進化させるとともに、これらをプラットフォームとして融合することにより、顧客ニーズに対応した製品の開発・製造およびサービスの提供を行っています。
しかしながら、エプソンが経営資源を集中しているこれらの製品の属する市場は、一般的に技術革新の速度が速いとともに製品ライフサイクルが短く、また、世界景気の変動にともなうエプソンの主要市場における需要・投資動向が、エプソンの製品の販売に影響を及ぼす可能性があるほか、現在推進している中期計画や事業戦略が必ずしも成功する保証はありません。
エプソンでは、各市場や顧客のニーズの把握に努め、製品市場予測による中・長期的な研究開発や投資を行うほか、開発・設計のプラットフォーム化などにより、既存製品から新製品への迅速かつ円滑な移行などにも取り組んでいく方針です。
しかしながら、今後、市場でのニーズや技術革新の変化に適切に対応できない場合、景気後退などにより需要が回復しない場合および主要市場における急激な需要変動に適切に対応できない場合などには、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)第三者によるインクジェットプリンター用消耗品の販売について
インクジェットプリンターの主な消耗品であるインクカートリッジは、エプソンの売上収益および利益にとって相当重要なものとなっています。インクカートリッジなどのインクジェットプリンター用消耗品については、第三者によりエプソンのプリンター本体で使用することができる代替品が供給されています。これらの第三者からの代替品は、一般的にエプソンの純正品よりも廉価で販売されており、また、先進国市場と比較して新興国市場においてより流通している状況にあります。
エプソンは、こうした第三者によるインクジェットプリンター用消耗品の販売について、純正品としての高い品質の訴求のほか、大容量インクタンクを搭載したモデルの販売など、各市場における顧客ニーズに的確に対応したインクジェットプリンターを提供し、顧客の利便性をさらに高めることにより、引き続き顧客価値の実現を図っていく方針です。また、エプソンが保有するインクカートリッジに係る特許権および商標権の侵害に対しては、適宜、法的措置を講じていく方針です。
しかしながら、これらの施策が必ずしも有効である保証はなく、将来において代替品の販売が拡大し、純正品のシェア低下にともなう販売数量の減少やこれに対応するための販売価格の引下げなどにより、インクカートリッジの売上収益が減少した場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)海外での事業展開について
エプソンは、グローバルに事業を展開しており、2015年3月期の連結売上収益のうち7割強は海外における売上収益が占めています。エプソンは、中国、インドネシア、シンガポール、マレーシアおよびフィリピンなどのアジア地域をはじめ、アメリカやイギリスなどにも生産拠点を有し、販売会社も世界各地域に設立しています。また、2015年3月末における海外従業員数はエプソンの全従業員数の7割強を占めています。
エプソンでは、こうしたグローバルな事業展開は地域ごとの市場ニーズを的確にとらえたマーケティング活動を可能とし、また、製造コストの削減およびリードタイムの短縮によるコスト競争力の確保など、事業上の多くのメリットがあると考えています。一方で、海外における製造・販売に関しては、各国政府の製造・販売に係る諸法令・規制、社会・政治および経済状況の変化、輸送の遅延、電力などのインフラの障害、為替制限、熟練労働力の不足、地域的な労働環境の変化、税制変更、保護貿易諸規制、そのほかエプソンの製品の輸出入に対する諸法令・規制など、海外事業展開に不可避のリスクがあります。
(6)特定の仕入先からの部品などの調達について
エプソンは、第三者から一部の部品などを調達していますが、一般的に長期仕入契約を締結することなく継続的な取引関係を維持しています。また、エプソンは、部品などに関して複数社からの調達を原則としていますが、特定の部品などについては、他社からの代替調達が困難であるため、1社のみからの調達となる場合があります。エプソンでは、品質の維持・改善やコスト低減活動などに調達先と協同で取り組むことなどにより、安定的かつ効率的な調達活動を展開していく方針ですが、仮にこれらの調達先からの供給の不足や供給された部品などの品質不良などにより、製造・販売活動に支障を来たした場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)品質問題について
エプソンの製品保証の有無および内容は顧客との個別の契約により異なります。エプソンの製品に不良品または規格に適合しないものがあった場合には、エプソンは当該製品の無償での交換または修理など、不良品を補償するコストを負担し、また、当該製品が人的被害または物的損害を生じさせた場合には、製造物責任などの責任を負う可能性があります。
このほか、エプソンの製品の性能に関し適切な表示または説明がなされなかったことを理由として、顧客などに対し責任を負うことや、改良のためのコストが発生する可能性があります。さらに、エプソンの製品にこのような品質問題が発生した場合には、エプソン製品への信頼性を損ない、顧客の喪失または当該製品への需要の減少などにより、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)知的財産権について
エプソンにとって、特許権およびそのほかの知的財産権は競争力維持のために非常に重要です。エプソンは、自らが必要とする多くの技術を自社開発してきており、それを国内外において特許権、商標権およびそのほかの知的財産権として、あるいは他社と契約を締結することにより、製品および技術上の知的財産権を設定し保持しています。また、知的財産権の管理業務に人員を重点的に配置し、知的財産権の強化を図っています。
しかしながら、次のような知的財産権に関する問題が発生した場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
・エプソンが保有する知的財産権に対して異議申立や無効請求などがなされる可能性、その結果、当該知的財産権が無効と認められる可能性
・第三者間での合併または買収の結果、従来、エプソンがライセンスを付与していない第三者がライセンスを保有し、その結果、エプソンが知的財産権の競争優位性を失う可能性
・第三者との合併または買収の結果、従来、エプソンの事業に課せられなかった新たな制約が課せられる可能性およびこれらを解決するために支出を強いられる可能性
・エプソンが保有する知的財産権が競争上の優位性をもたらさない、またはその知的財産権を有効に行使できない可能性
・エプソンまたはその顧客が第三者から知的財産権の侵害を主張され、その解決のために多くの時間とコストを費やし、または経営資源などの集中が妨げられることになる可能性
・第三者からの侵害の主張が認められた場合に多額の賠償金やロイヤリティの支払い、該当技術の使用差し止めなどの損害が発生する可能性
・エプソンの従業員などにより発明などに対する報酬に関する訴訟が提起され、その解決のために多くの時間とコストを強いられる可能性、その結果、多額の報酬の支払いが決定される可能性
(9)環境問題について
エプソンは、国内外において製造過程で発生する廃棄物および大気中への排出物などについて、さまざまな環境規制を受けています。エプソンでは、環境保全活動を重要な経営方針の一つとして掲げ、「環境ビジョン2050」と中期施策に基づき、環境負荷を低減した製品の開発・製造、使用エネルギー量の削減、使用済み製品の回収・リサイクルの推進、国際的な化学物質規制(主には欧州のRoHS指令やREACH規制)への対応および環境管理システムの改善など、あらゆる側面から環境保全活動に取り組んでいく方針です。こうした取り組みの結果、エプソンでは、これまで重大な環境問題が発生したことはありませんが、将来において環境問題が発生し、損害の賠償や浄化などの費用負担、罰金または生産中止などの影響を受ける可能性、あるいは新しい規制が施行され多額の費用負担が必要となる可能性があり、このような事態が実現した場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)人材の確保について
エプソンの高度な新技術・新製品の開発・製造には、国内外における優秀な人材の確保が重要ですが、これらの人材の獲得競争は激しいものとなっています。エプソンは、役割に基づいた処遇制度の導入や現地人材の積極的な登用などにより、優秀な人材の確保に努めていますが、仮にこれらの人材を十分に採用または雇用し続けることができない場合や、技術などの継承が適切にできない場合には、エプソンの事業計画の遂行に影響を及ぼす可能性があります。
(11)為替変動について
エプソンの売上収益の相当部分は、米ドルおよびユーロなどの外貨建てとなっています。エプソンは、海外調達の拡大および生産拠点の海外移転などを進めたことにより米ドル建ての費用が増加し、米ドル建ての売上収益と費用はおおむね拮抗していますが、ユーロ建ての売上収益は依然としてユーロ建ての費用よりもかなり多い状況にあります。また、エプソンは、為替変動リスクをヘッジするために為替予約取引などを行っていますが、米ドルおよびユーロなどの外国通貨の日本円に対する為替変動は、エプソンの財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)年金制度について
エプソンの設けている確定給付型の制度として、確定給付企業年金制度および退職一時金制度があります。
エプソンは、確定給付型の退職年金制度について、年金資産の運用収益率の低下や受給権者の増加といった状況を踏まえ、今後の環境変化に適応するとともに、将来にわたり安定的に維持運営することを目的として2014年4月に制度改定を実施しましたが、年金資産の運用成績の変動および退職給付債務の数理計算の基礎となる割引率の見積数値の変動などが発生した場合には、エプソンの財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。
(13)独占禁止法令に基づく手続について
エプソンは、グローバルに事業を展開しており、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律など、国内外の独占禁止法令に基づく手続の対象となることがあります。海外の関係当局も特定の業界などを対象に調査または情報収集を行うことがあり、その一環としてエプソンも市場状況および販売方法一般に関する調査などを受けることがあります。これらの調査・手続が実施された場合や関連法規の違反があった場合には、エプソンの販売活動に支障が生じ、またはエプソンの社会的信用を損なうこともしくは多額の制裁金が課されることなどにより、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社および関係する連結子会社は、現在、液晶ディスプレイの価格カルテル嫌疑に基づき、欧州委員会そのほかの競争法関係当局による調査を受けていますが、現時点においてかかる調査の結果および終結の時期を予測することは困難です。
(14)重要な訴訟について
エプソンは、プリンティングソリューションズ事業、ビジュアルコミュニケーション事業およびウエアラブル・産業プロダクツ事業などに係る各製品の開発、製造、販売およびこれらに付帯するサービスの提供を主な事業として、国内外において事業活動を展開していますが、その事業の特性上、知的財産権、製造物責任、独占禁止法、環境規制などに関連して訴訟が提起される場合や、法的手続が開始される可能性があります。
有価証券報告書提出日現在、エプソンに係争している重要な訴訟は、次のとおりです。
ドイツでは、PCやプリンターなどのデジタル機器が著作物の複製を可能にしているとして、著作権者に代わり著作権料を徴収する団体であるVerwertungsgesellschaft Wort(以下「VG Wort」という。)が、デジタル機器を輸入販売する各社に対して著作権料の支払いを求める一連の訴訟を提起しています。
エプソンにおいては、シングルファンクションプリンターについて、2004年1月に当社の連結子会社であるEpson Deutschland GmbH(以下「EDG」という。)が、VG Wortにより著作権料の支払いを求める民事訴訟を提起されました。かかる訴訟の第1審では当該プリンターが著作権料の賦課の対象となるという判断がなされ、当該プリンターの1分間当たりの印刷可能枚数に応じ、1台当たり10ユーロから256.70ユーロまでの料率による著作権料の支払いをEDGに対し命じる判決が下されましたが、第2審および連邦最高裁判所では原告側の請求が棄却され、原告は、かかる判決を不服として憲法裁判所に上訴しました。これに対して、2010年12月に憲法裁判所は、2008年8月の連邦最高裁判所の判決がドイツ連邦憲法第14条に定める権利を侵害していると判断し、連邦最高裁判所の判決を破棄するとともに、審理を連邦最高裁判所に差し戻すという判断を下しました。その後、2011年7月に連邦最高裁判所は、本件を欧州司法裁判所に付託する手続をとり、2012年10月から審理が開始されましたが、2013年6月に欧州司法裁判所は、EU加盟国がプリンターやPCの製造業者に対して著作権料を課すことを認める旨の判断を示しました。これを受け、2014年7月に連邦最高裁判所においても、プリンターやPCが著作権料の賦課対象であるとの判決があり、具体的な著作権料率に関して、高等裁判所にて再審理が開始されました。
なお、エプソンを含む各企業および業界団体は、こうした著作権料の適用範囲の拡大に反対の姿勢を示しています。
また、当社の連結子会社であるEpson Europe B.V.(以下「EEB」という。)は、2010年6月にベルギーにおける著作権料徴収団体であるLa SCRL REPROBEL(以下「REPROBEL」という。)に対して、マルチファンクションプリンターに関する著作権料の返還などを求める民事訴訟を提起しました。その後、REPROBELがEEBを提訴したことにより、これら二つの訴訟は併合され、かかる訴訟の第1審ではEEBの主張を棄却する判決がなされましたが、EEBは、これを不服として上訴する方針です。
このほか、当社および関係する連結子会社は、液晶ディスプレイの価格カルテル嫌疑に基づき、米国において取引先などから民事訴訟を提起されています。
現時点において上記の訴訟の結果および終結の時期を予測することは困難ですが、訴訟または法的手続の結果によっては、エプソンの業績や今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
(15)財務報告に係る内部統制について
エプソンは、財務報告の信頼性に係る内部統制の構築および運用を図っています。エプソンでは、財務報告に係る内部統制の構築および運用を重要な経営課題の一つとして位置付け、グループを挙げて関係会社の管理体制などの点検・改善などに取り組んでいますが、常に有効な内部統制システムを構築および運用できる保証はなく、また、内部統制システムに本質的に内在する固有の限界があるため、今後、上記の対応が有効に機能しなかった場合や、財務報告に係る内部統制の不備または開示すべき重要な不備が発生した場合には、エプソンの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。
(16)他社との提携について
エプソンは、事業戦略の選択肢の一つとして、他社と業務提携などを行うことがあります。しかしながら、当事者間における提携などの見直しにともない、提携関係が解消される可能性があるほか、提携内容の一部変更が行われる可能性があります。また、提携などによる事業戦略が必ずしも想定どおり成功し、エプソンの業績に寄与する保証はありません。
(17)災害などについて
エプソンは、研究開発、調達、製造、物流、販売およびサービスの拠点を世界に展開していますが、これらの地域において予測不可能な自然災害、新型インフルエンザなどの新興感染症の流行、コンピュータウィルスの感染、顧客データの漏洩、社内重要基幹システムの障害発生、部品調達先などの罹災によるサプライチェーン上の混乱、戦争・テロなどが発生した場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。
特にエプソンの主要な事業拠点が所在する長野県中部には、東海地震発生時の大規模被災の可能性が高いとされる「地震防災対策強化地域」に指定されている市町村が多く存在し、また、糸魚川静岡構造線に沿った活断層帯があるなど、地震発生リスクが比較的に高い地域です。
エプソンでは、2002年4月に東海地震の防災対策強化地域が見直されたことを受けて地震対策の見直しを行い、防災訓練などの地震防災計画や事業継続計画の策定などにより、かかる災害にともなう影響の軽減に向けた対応を可能な範囲において行っています。
しかしながら、長野県中部に大規模な地震が発生した場合には、これらの施策にもかかわらず、エプソンが受ける影響は甚大なものになる可能性があります。
なお、エプソンは、地震により発生する損害に対しては地震保険を付保しているものの、その補償範囲は限定されています。
(18)法規制または許認可などについて
エプソンは、日本国内および諸外国・地域において多様な事業を展開しており、各国および各事業におけるコンプライアンスに関する体制強化と社内的な啓蒙活動などを通じて各種の法規制に対応するように努めていますが、今後の事業拡大に際しては公的機関などを含む新規顧客への営業活動の強化のほか、健康・医療などの新規分野の開拓にも取り組む必要があるため、これらの活動に関係する各種の法規制やコンプライアンス(法令遵守)への対応が一層求められることがあります。
エプソンでは、引き続きコンプライアンスを重要な経営方針の一つとして位置付け、適宜、未然防止・制御活動を展開していく方針ですが、今後、例えば、腐敗防止法規制、広告・表示規制、個人情報保護・プライバシー規制などにおいて、関係法令などへの抵触またはそのおそれが生じた場合や、より厳格な法規制の導入や関係当局による法令運用の強化が行われた場合には、エプソンの社会的信用が毀損されるとともに、多額の制裁金を課せられるほか、事業活動に制約が生じるおそれがあり、これらの法規制を遵守するための費用が増加するなど、エプソンの業績や今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
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このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E01873] S1004SLO)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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