有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1006KAL
浜松ホトニクス株式会社 研究開発活動 (2015年9月期)
経営上の重要な契約等メニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループの研究開発活動は、「光の本質に関する研究及びその応用」をメインテーマとし、主に当社の中央研究所、筑波研究所及び各事業部において行っております。
光の世界は未だその本質すら解明されていないという、多くの可能性を秘めた分野であり、光の利用という観点からみても、光の広い波長領域のうち、ごく限られた一部しか利用することができていないのが現状であります。こうした中、当社の中央研究所及び筑波研究所においては、光についての基礎研究と光の利用に関する応用研究を進めており、また、各事業部においては、製品とその応用製品及びそれらを支える要素技術、製造技術、加工技術に関する開発を行っております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は、11,615百万円であり、これを事業のセグメントでみますと、各事業区分に配賦できない基礎的研究5,360百万円、電子管事業2,013百万円、光半導体事業3,667百万円、画像計測機器事業368百万円及びその他事業204百万円であります。
当連結会計年度における主要な研究開発の概要は次のとおりであります。
高出力で省電力・長寿命なUV-LEDユニット
近年、印刷業界では、紫外線を照射することで瞬時に硬化するUVインキを用いる印刷手法が浸透しており、UVインキを硬化させる光源として主にメタルハライドランプが用いられてきました。この度、当社は、設計や材料の最適化により放熱特性を上げて投入電力を大幅に増やすことを可能としたことで、メタルハライドランプと同等レベルの紫外線照射強度を実現したUV-LEDユニットを開発いたしました。本製品は、メタルハライドランプの3分の1以下の消費電力で、10倍以上の長寿命を実現したことから、大幅なコスト削減も可能となります。UV-LED光源は、印刷以外にも、コーティング剤の乾燥や精密部品の接着など幅広い用途に応用可能であり、今後、各種用途に応じて製品ラインナップを拡充してまいります。
室温動作型赤外線受光素子
波長3~5μm帯の赤外線には環境破壊の原因とされるガスの吸収波長が含まれているため、この波長域に感度を有する赤外線受光素子を用いることで、ガスの濃度計測を行うことができます。しかし、この波長域における現在主流の室温型赤外線受光素子には鉛が含まれており、環境上の問題がありました。また、鉛を含まないタイプは冷却が必要なため小型化・低価格化に限界があり用途も限られておりました。このような中、長年培ってきた化合物半導体結晶成長技術やプロセス技術により、この波長域において、鉛を含まず環境にやさしいことに加え室温動作が可能な赤外線受光素子を開発いたしました(注1)。この赤外線受光素子を用いた計測は、今後、環境分野だけでなく、医療、農業などの幅広い分野での貢献が期待されます。
製造装置や検査装置への組み込みが容易な小型膜厚計
近年、スマートフォンなどのタッチパネルには、導電性、表面保護などの機能を付与するために多層のコーティングが施されております。膜厚計は、コーティングの厚みを測定することで品質不良を検査するものですが、製造装置や検査装置に組み込むことで測定の高速化が可能になります。当社は、業界で唯一、基材の両面の膜厚を同時計測できる機能に加え、シーケンサ(注2)接続に対応したほか、最先端の分光技術により小型化を実現したことで、装置への組み込みが容易な膜厚計を開発いたしました。当社の膜厚計は、製造・検査工程における作業時間の短縮や高効率で安定した品質管理に貢献いたします。
バイオの分野におきましては、光バイオアッセイシステム(注3)の実用化研究を進めております。本システムは、測定対象物質の溶液と混合した藻類が発する微弱光を検出・計測することでその物質のもつ毒性を評価するものですが、この度、藻類細胞を試薬化した試験キットによる簡便な試験法を実用化いたしました。これにより、試験に必要となる藻類細胞の培養とその維持管理を大幅に簡素化でき、高品質な毒性評価がより短時間かつ低コストで実現可能となります。今後は、工場排水等の測定による水質管理への活用や環境負荷の少ない農薬・洗剤等の開発への貢献が期待されます。
医療の分野におきましては、マウスやサルの鼻から投与したワクチンが目的とする部位に滞留する一方で副作用の原因となる脳内への移行が認められないことをPETにより解析した結果、PETが経鼻投与型ワクチンの有効性のみならず安全性を示すのに有効な手段であることを実証いたしました(注4)。経鼻投与型医薬品は、注射型に比べて扱いやすく、高い効果も期待できることから、近年世界各国で研究が進められております。今回開発した解析技術はPETの新たな用途を示すものであり、今後、経鼻投与型をはじめ様々な医薬品の臨床試験への貢献が期待されます。
半導体レーザの分野におきましては、テラヘルツ(THz)帯における量子カスケードレーザ(注5)の研究を進めております。THz波は、非破壊検査や医用など幅広い分野での応用が期待されておりますが、従来の方法ではTHz帯でのレーザ発振には液体窒素などによる極低温冷却が必要であり、これまで産業応用はほとんど進んでおりませんでした。このような中、当社は、量子カスケードレーザ内部で差周波(注6)を発生させる技術を用いて、室温でのTHz波発生を可能といたしました。また、従来とは異なる独自に考案した構造で作製することにより、世界トップクラスの波長変換効率を実現し、THz波の出力向上も可能となりました。今後は、さらなる高性能化を進めTHz波の産業応用を目指してまいります。
また、半導体レーザにホトニック結晶(注7)を組み込むことで、高い光出力でビーム品質の良いレーザを得られるホトニック結晶面発光レーザの研究も進めております。この度、プロセス技術の向上と設計の最適化により、製品化に求められる低コストで生産安定性に優れた量産可能な製造技術を確立いたしました。今後は、完成度を高めるとともにさらなる高出力化を進めてまいります。
(注)1 本開発成果の一部は、NEDO助成事業「環境計測/産業用高性能量子型室温動作赤外線検出素子の開発」によるものです。
2 工場などにおける機器をプログラムにより自動制御する装置です。
3 本技術は、国立環境研究所と共同で開発したものです。
4 本成果は、東京大学及び国立感染症研究所との共同研究によるものです。
5 光のエネルギーが小さい中赤外から遠赤外の波長領域においても高い出力を得ることができる半導体レーザです。
6 非線形光学効果により2つの異なる周波数の光の差に相当する光が発生する現象です。
7 屈折率の異なる材料が周期的に並んだ二次元又は三次元的なナノ構造体で、様々な光制御機能をもたせることができます。
光の世界は未だその本質すら解明されていないという、多くの可能性を秘めた分野であり、光の利用という観点からみても、光の広い波長領域のうち、ごく限られた一部しか利用することができていないのが現状であります。こうした中、当社の中央研究所及び筑波研究所においては、光についての基礎研究と光の利用に関する応用研究を進めており、また、各事業部においては、製品とその応用製品及びそれらを支える要素技術、製造技術、加工技術に関する開発を行っております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は、11,615百万円であり、これを事業のセグメントでみますと、各事業区分に配賦できない基礎的研究5,360百万円、電子管事業2,013百万円、光半導体事業3,667百万円、画像計測機器事業368百万円及びその他事業204百万円であります。
当連結会計年度における主要な研究開発の概要は次のとおりであります。
高出力で省電力・長寿命なUV-LEDユニット
近年、印刷業界では、紫外線を照射することで瞬時に硬化するUVインキを用いる印刷手法が浸透しており、UVインキを硬化させる光源として主にメタルハライドランプが用いられてきました。この度、当社は、設計や材料の最適化により放熱特性を上げて投入電力を大幅に増やすことを可能としたことで、メタルハライドランプと同等レベルの紫外線照射強度を実現したUV-LEDユニットを開発いたしました。本製品は、メタルハライドランプの3分の1以下の消費電力で、10倍以上の長寿命を実現したことから、大幅なコスト削減も可能となります。UV-LED光源は、印刷以外にも、コーティング剤の乾燥や精密部品の接着など幅広い用途に応用可能であり、今後、各種用途に応じて製品ラインナップを拡充してまいります。
室温動作型赤外線受光素子
波長3~5μm帯の赤外線には環境破壊の原因とされるガスの吸収波長が含まれているため、この波長域に感度を有する赤外線受光素子を用いることで、ガスの濃度計測を行うことができます。しかし、この波長域における現在主流の室温型赤外線受光素子には鉛が含まれており、環境上の問題がありました。また、鉛を含まないタイプは冷却が必要なため小型化・低価格化に限界があり用途も限られておりました。このような中、長年培ってきた化合物半導体結晶成長技術やプロセス技術により、この波長域において、鉛を含まず環境にやさしいことに加え室温動作が可能な赤外線受光素子を開発いたしました(注1)。この赤外線受光素子を用いた計測は、今後、環境分野だけでなく、医療、農業などの幅広い分野での貢献が期待されます。
製造装置や検査装置への組み込みが容易な小型膜厚計
近年、スマートフォンなどのタッチパネルには、導電性、表面保護などの機能を付与するために多層のコーティングが施されております。膜厚計は、コーティングの厚みを測定することで品質不良を検査するものですが、製造装置や検査装置に組み込むことで測定の高速化が可能になります。当社は、業界で唯一、基材の両面の膜厚を同時計測できる機能に加え、シーケンサ(注2)接続に対応したほか、最先端の分光技術により小型化を実現したことで、装置への組み込みが容易な膜厚計を開発いたしました。当社の膜厚計は、製造・検査工程における作業時間の短縮や高効率で安定した品質管理に貢献いたします。
バイオの分野におきましては、光バイオアッセイシステム(注3)の実用化研究を進めております。本システムは、測定対象物質の溶液と混合した藻類が発する微弱光を検出・計測することでその物質のもつ毒性を評価するものですが、この度、藻類細胞を試薬化した試験キットによる簡便な試験法を実用化いたしました。これにより、試験に必要となる藻類細胞の培養とその維持管理を大幅に簡素化でき、高品質な毒性評価がより短時間かつ低コストで実現可能となります。今後は、工場排水等の測定による水質管理への活用や環境負荷の少ない農薬・洗剤等の開発への貢献が期待されます。
医療の分野におきましては、マウスやサルの鼻から投与したワクチンが目的とする部位に滞留する一方で副作用の原因となる脳内への移行が認められないことをPETにより解析した結果、PETが経鼻投与型ワクチンの有効性のみならず安全性を示すのに有効な手段であることを実証いたしました(注4)。経鼻投与型医薬品は、注射型に比べて扱いやすく、高い効果も期待できることから、近年世界各国で研究が進められております。今回開発した解析技術はPETの新たな用途を示すものであり、今後、経鼻投与型をはじめ様々な医薬品の臨床試験への貢献が期待されます。
半導体レーザの分野におきましては、テラヘルツ(THz)帯における量子カスケードレーザ(注5)の研究を進めております。THz波は、非破壊検査や医用など幅広い分野での応用が期待されておりますが、従来の方法ではTHz帯でのレーザ発振には液体窒素などによる極低温冷却が必要であり、これまで産業応用はほとんど進んでおりませんでした。このような中、当社は、量子カスケードレーザ内部で差周波(注6)を発生させる技術を用いて、室温でのTHz波発生を可能といたしました。また、従来とは異なる独自に考案した構造で作製することにより、世界トップクラスの波長変換効率を実現し、THz波の出力向上も可能となりました。今後は、さらなる高性能化を進めTHz波の産業応用を目指してまいります。
また、半導体レーザにホトニック結晶(注7)を組み込むことで、高い光出力でビーム品質の良いレーザを得られるホトニック結晶面発光レーザの研究も進めております。この度、プロセス技術の向上と設計の最適化により、製品化に求められる低コストで生産安定性に優れた量産可能な製造技術を確立いたしました。今後は、完成度を高めるとともにさらなる高出力化を進めてまいります。
(注)1 本開発成果の一部は、NEDO助成事業「環境計測/産業用高性能量子型室温動作赤外線検出素子の開発」によるものです。
2 工場などにおける機器をプログラムにより自動制御する装置です。
3 本技術は、国立環境研究所と共同で開発したものです。
4 本成果は、東京大学及び国立感染症研究所との共同研究によるものです。
5 光のエネルギーが小さい中赤外から遠赤外の波長領域においても高い出力を得ることができる半導体レーザです。
6 非線形光学効果により2つの異なる周波数の光の差に相当する光が発生する現象です。
7 屈折率の異なる材料が周期的に並んだ二次元又は三次元的なナノ構造体で、様々な光制御機能をもたせることができます。
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