有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S10056GN
日産自動車株式会社 研究開発活動 (2015年3月期)
事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループは、将来にわたって持続性のある車社会の実現に向けて、環境や安全など様々な分野での研究開発活動を積極的に行っている。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は5,061億円であった。
当社グループの研究開発体制及び活動成果は次のとおりである。
(1) 研究開発体制
当社グループの日本における研究開発は、日産テクニカルセンター(神奈川県厚木市)を中心に車両開発を日産車体(株)、(株)日産テクノ、日産ライトトラック(株)、ユニット開発を愛知機械工業(株)、ジヤトコ(株)などの関係各社が担当し、当社と密接な連携のもとで推進している。米欧地域においては、米国の北米日産会社、メキシコのメキシコ日産自動車会社、英国に拠点を持つ英国日産自動車製造会社、スペインの日産モトール・イベリカ会社において、一部車種のデザイン及び設計開発業務を行っている。また、米国の日産総合研究所シリコンバレーオフィスにおいて、自動運転車両の研究、最先端のICT(Information and Communication Technology)技術開発を行っている。
アジア地域では、中国の日産(中国)投資有限公司、東風汽車集団股份有限公司との合弁会社である東風汽車有限公司、台湾の裕隆汽車製造股份有限公司との合弁会社である裕隆日産汽車股份有限公司、タイのアジア・パシフィック日産自動車会社、インドのルノー日産テクノロジー&ビジネスセンターインディア社及び日産アショックレイランドテクノロジーズ(株)において一部車種のデザイン及び設計開発業務を行っている。
また、南米地域のブラジル日産自動車会社、南アフリカの日産サウスアフリカ会社においても現地生産車の一部開発業務を行っている。
ルノーと当社は、経営資源の効率化を目指し、両社間で行う次世代技術の研究領域における役割分担を再構築し、共通プラットフォームの採用、共通パワートレイン戦略の策定・実行、そして世界中の実験施設の適正化を加速させている。また、ダイムラーとの戦略的協力関係においては、パワートレインやプラットフォームの共用に取り組んでいる。さらに、ダイムラー、フォードと燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)システムの共同研究開発を行っている。
(2) 新商品の開発状況
欧州と国内にて、日産EV初の商用車となる「e-NV200」を発売した。海外では、北米において新型「ムラーノ」、欧州において新型5ドアハッチバック「パルサー」、中国においてヴェヌーシアブランドからエントリークラス車「R30」と100%電気自動車「e30」、インドネシアにおいて5ドアの5+2MPV ダットサン「GO+ Panca(ゴープラス パンチャ)」、タイにおいて新型1トンピックアップトラック「NP300 ナバラ」を発売した。(3) 新技術の開発状況
環境面においては、中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム2016」の3つの重点領域である、「低炭素化」「再生可能エネルギーへの転換」「資源の多様化」を推進するための活動として「ゼロ・エミッション車の普及」「低燃費車の拡大」「カーボンフットプリントの最小化」「新たに採掘する天然資源の最小化」「環境マネジメントの推進」という5つのテーマを掲げ、技術開発を行っている。「ゼロ・エミッション車の普及」では、2014年度にはメキシコ、韓国などに新規投入し、「日産リーフ」の投入市場は46となった。また2014年11月には累計販売台数15万台を達成、さらに2014年度は年間販売台数6万台以上を販売し、累計販売台数は17万台以上という結果となった。加えて2014年6月には欧州市場で、10月には日本市場で販売が開始された日産の電気自動車2車種目の「e-NV200」は、現在、日本、欧州、香港を含む26市場に投入されている。また9月には東風汽車有限公司の「ヴェヌーシア」より100%電気自動車「e30」の販売も開始されている。
また、「日産リーフ」は、米国空軍とカリフォルニアエネルギー委員会の協力のもと、カリフォルニア州のロサンゼルス空軍基地で始まった、“vehicle-to-grid”プロジェクトに参加している。これは基地内にパワーコントロールシステムを設置し、電気自動車の充放電を管理する事により、基地施設の電力コストを削減する実証プログラムで、「日産リーフ」が13台導入された。
一方、「低燃費車の拡大」では、日本、中国、欧州、米国で販売する日産車の燃費改善を進めている。「リチウムイオンバッテリー」「インテリジェントデュアルクラッチコントロールハイブリッドシステム」「エクストロニックCVT(無段変速機)」の3つをコア技術と位置づけ、車室内空間、用途、価格を考慮しながらクルマに最適な低燃費技術を採用し市場に投入する。2014年度は米国に投入した「ムラーノ」(*1)がクラストップとなる燃費を実現した。
燃費向上のための車両軽量化も推進している。2014年度に北米に投入した新型「ムラーノ」では、2013年度に世界で初めてインフィニティ「Q50」(日本では「スカイライン」)に採用した1.2GPa(ギガパスカル)級高成形性超ハイテン材(冷間プレス用超高張力鋼板)をはじめとする各種ハイテン材の採用比率を大幅に増加し、他の軽量化への取り組みも含め車両全体で66kgの軽量化を実現した。
安全面においては、日産車がかかわる交通事故による死亡・重症者数を2015年までに1995年比で半減させる目標を目指してきたが、日本、米国、英国はすでに達成しており、現在は、死亡・重症者数を2020年までにさらに半減させ、究極の目標として、実質ゼロにするという高い目標に向けて取り組んでいる。目標の達成に向けて、事故そのものの削減が重要と考え、「クルマが人を守る」という考え方“セーフティ・シールド”に基づき、人を危険に近づけないようクルマがサポートする技術開発を進めている。「インフィニティQ50」及び「スカイライン」では世界初となる「PFCW(前方衝突予測警報)」を搭載する等、車両の周囲360度の危険からドライバーを守ることを目指した全方位運転支援システムを実現した。また、前方車両との衝突回避を支援する「エマージェンシーブレーキ」の採用拡大を進めており、2015年度中には、日本で発売している電気自動車、商用車を含むほぼすべてのカテゴリーに搭載を完了すると発表した。
日本では、自動車アセスメント(JNCAP)の予防安全性能評価にて「スカイライン」「エクストレイル」「ノート」が、最高評価となる「先進安全車プラス(ASV+)」を獲得し、米国では、米国新車アセスメントプログラム(US-NCAP)にてインフィニティ「Q50」、日産「アルティマ」が、米国道路安全保険協会(IIHS)にてインフィニティ「Q50」、インフィニティ「Q70」、日産「ローグ」が最高評価を獲得した。欧州では、欧州新車アセスメントプログラム(ユーロNCAP)にて日産「エクストレイル」「キャシュカイ」「パルサー」が最高評価を獲得した。
さらに、交通事故低減に大きな効果が期待できる自動運転技術の投入スケジュールを発表し、2016年末までには混雑した高速道路上で自動運転を可能にする技術(トラフィック・ジャム・パイロット)を、2018年には危険回避や車線変更を自動的に行う複数レーンでの自動運転技術を投入する。2020年までには、十字路や交差点を自動的に横断出来る自動運転技術を導入する予定である。さらに、当社の北米研究拠点が、アメリカ航空宇宙局(NASA)と、自動運転システムの発展、および、同技術の商業的応用を目指し、共同で研究・開発を行う5年間のパートナーシップを締結した。
当社グループは、日産パワー88達成を目指し、今後も競争力のある商品、将来に向けた先端技術等のための研究開発活動に積極的に取り組んでいく。
*1:「ムラーノ」2WD・4WDともに24mpg(米国基準、シティ・ハイウェイ走行のコンビモード)
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