有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S10056TN
スズキ株式会社 研究開発活動 (2015年3月期)
事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループの研究開発活動は主に当社が行っています。環境問題や多様化するお客様のニーズに対応し独創的で競争力のある商品を提供することを目指し、積極的に取り組んでいます。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は1,259億円であり、セグメントごとの活動状況は、以下のとおりです。
(1) 二輪車
二輪車事業では、低燃費化、軽量化、環境性能に優れた二輪車の開発など、環境に配慮した技術開発に取り組んでいます。低燃費化では、155cm3インド向け二輪車、「GIXXER」において、「SEP」(Suzuki Eco Performance)エンジンを搭載するとともに、ピストン軽量化と小型/軽量ローラーロッカーアームの採用によりメカニカルロスを低減しました。また、ロングストローク化により燃焼室を小型化し高い燃焼効率とクラス最高※1の燃費を達成しました。市場で高い評価を受けた「GIXXER」は、インドで13のバイク オブ ザ イヤーを受賞しました。
軽量化についても、新型「Let's」「Let's G」において、ガソリンタンクを従来のブロー成形から二輪車初の射室成型+熱版溶着製法の開発、採用により12%の軽量化を実現しました。またフレームの構造見直し、肉厚の最適化により7%の軽量化も実現しました。その結果、クラストップレベル※2の軽量ボディにより、装備重量69kgを実現し、軽快な走行はもちろん、駐輪場での取り回しもスムーズに行えるスクーターとなっています。
環境性能では、資源の有効利用を促進するため、PPリサイクル材の利用拡大に取り組んでいます。また、リサイクル設計を推進する上で、部品の分解の容易性について追求しています。
その他の研究開発としては、水素を用いた空冷式燃料電池二輪車「バーグマン フューエルセル スクーター」の実用化に向けて基礎開発を進めています。また、英国の燃料電池開発会社Intelligent Energy Holdings PLCと合弁で設立した㈱SMILE FCシステムで、軽量、コンパクトで低コストな燃料電池の量産技術開発、試作生産に取り組んでいます。
レース活動に関しても、2015年よりFIM(国際モーターサイクリズム連盟)のロードレース世界選手権(MotoGP)に復帰しました。レースを通して得られる技術を量産車開発に還元し、より魅力的な商品の開発を進めます。
当連結会計年度における二輪車事業の研究開発費の金額は170億円です。
(2) 四輪車
四輪車事業では、国内軽自動車をはじめ、燃費の優れた小型車の普及こそが環境問題に貢献できると考え、「トップクラスの環境性能であること」を目指すと同時に、「お客様にとってお求めやすい価格で提供できること」、「お客様が見て、使って、喜びと安心を感じていただけること」を方針として商品開発を行っています。特に環境に配慮しながら更に便利で楽しい車を実現する次世代環境技術「スズキグリーン テクノロジー」の開発・採用拡大を進めています。また、新興国市場において低燃費として要望の高いディーゼルエンジンの自主開発や、先進安全技術の開発にも取り組んでいます。
まず低燃費化技術の分野では、新たに開発した軽量プラットフォームの採用と徹底した軽量化の取り組み、パワートレインの高効率化により、ガソリン車トップレベル※3の低燃費37.0km/Lを実現した新型「アルト」を発売しました。軽量プラットフォームの開発は、軽自動車だけでなく、Aセグメント、Bセグメントにおいても進めています。これは車体重量の軽減だけでなく、複数の機種のプラットフォームを統合化することで開発の効率化、開発期間の短縮も同時にもたらすものであり、新商品に順次採用していきます。
次に、新興国市場向けに当社初のディーゼルエンジンとなる、2気筒・800cm3「E08A型ディーゼルエンジン」を開発しました。今後、インド市場向けの「セレリオ」に搭載します。
また、ガソリンエンジンの新たな取り組みとして、排気量のダウンサイジングによる燃費性能の向上と過給機による出力及びトルク向上から、低燃費と運転する楽しみを両立した直噴ターボ「BOOSTERJET」エンジンを開発し、海外のモーターショーにて発表しました。今後の新商品に順次搭載します。
次に電動化技術では「S-エネチャージ」を市場に投入しました。「S-エネチャージ」は、「エネチャージ」をさらに進化させた当社独自の低燃費化技術です。減速時に蓄えた電力で加速時にISG(モーター機能付発電機)がモーターアシストを行うことで、加速性能はそのままに、エンジンの負担を軽減し、燃料消費を抑制します。また、ISGのスターターモーター機能により、アイドリングストップからの静かでスムーズなエンジン再始動を実現しています。「S-エネチャージ」は軽乗用車「ワゴンR」、「ワゴンRスティングレー」に設定し、軽ワゴントップレベル※4の低燃費32.4km/Lを達成しました。一方、「スイフト レンジエクステンダー」と軽商用EVについては、社会実証実験を通し、開発に取り組んでいます。更に、燃料電池四輪車についても、二輪車と同様に、空冷式燃料電池を使用したシステムでの開発を進めています。
トランスミッションの分野では5速MTに、クラッチとシフト操作を自動で行う電動油圧式アクチュエーターを搭載した当社独自のAMT(Automated Manual Transmission)である「AGS」(Auto Gear Shift)をインド等の海外生産車に続き、国内軽自動車にも採用しました。「AGS」はトランスミッションとエンジンの協調制御により、変速ショックの少ない滑らかなシフトフィーリングを実現する機構です。優れた燃費性能や力強い走行性能などMTの利点に加え、クラッチ操作が不要というATの利点を兼ね備えています。
先進安全技術分野では衝突被害軽減ブレーキシステムとして、これまでのレーダーが障害物を検知する「レーダーブレーキサポート」、「レーダーブレーキサポートⅡ」に続き、ステレオカメラにより歩行者の検知も可能とした「デュアルカメラブレーキサポート」を開発、「スペーシア」のマイナーチェンジ車に採用しました。
その他の商品では、新ジャンルの軽自動車として開発した「ハスラー」が市場で高く評価され、日本自動車研究者ジャーナリスト会議(RJC)と、日本自動車殿堂が主催する2つのカー オブ ザ イヤーを受賞しました。
当連結会計年度における四輪車事業の研究開発費の金額は1,060億円です。
(3) 特機等
特機等事業では、マリン関係製品にかかわる環境や利便性向上の技術開発を行っています。環境面では、熱効率向上、リーンバーン(希薄燃焼)採用機種の拡大など、低燃費化や排ガスの低減を行いました。主な成果として、「DF200A/200AP」の2機種の新型船外機を開発しました。総排気量2,867cm3の直列4気筒エンジンをベースとしてダウンサイジングを図り、セミダイレクト吸気システムによる吸気温度低減、高圧縮比化、リーンバーンシステムなどの採用により147kW(200PS)の最高出力と低燃費化の両立を実現しました。
利便性向上技術としては、キーレススタートシステムを開発しました。携帯リモコンを身に着けていれば、スイッチ操作だけでエンジンを始動・停止できるとともに、船外機の盗難抑止に役立つイモビライザー機能を備えた当社独自のシステムで、「DF200AP」に標準装備としています。さらに「DF200AP」は、当社独自のプロペラの正/逆回転を統合した「スズキ・セレクティブ・ローテーション」と電子制御方式の操作系を採用し、多機掛けボートへの搭載性を向上、反応の良いスロットル制御と滑らかなシフト操作を実現しました。
また、前連結会計年度に発売した新型船外機「DF25A/30A」は、高い技術力が認められ、アメリカマリン工業会の2014年技術革新賞を受賞しました。当社の受賞は、今回で8回目です。
当連結会計年度における特機等事業の研究開発費の金額は29億円です。
※1 150cm3スポーツバイククラス。2015年4月現在、当社調べ。
※2 国内50cm3スクータークラス。2014年11月現在、当社調べ。
※3 JC08モード。2015年3月現在、当社調べ。
※4 軽ワゴン=全高1,550mm以上の軽自動車。JC08モード。2015年3月現在、当社調べ。
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