有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S10057YS
株式会社DNAチップ研究所 研究開発活動 (2015年3月期)
事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社の研究開発の目標は、診断に有用なコンテンツの開発及びそれらを搭載したチップの開発並びに応用技術の利用に必要な要素技術を開発することであります。このために、関連技術を有する大学及び企業等と手を組み共同研究や研究の受託を積極的に推進しております。したがいまして当社における研究開発活動は、研究受託事業の一環として行っているものであり、商品販売事業としての研究開発はありません。
当事業年度に実施した研究開発活動は以下のとおりです。
1.診断メニュー拡充のための取組み
ⅰ.リウマチェックの多剤効果予測
当事業年度は、関節リウマチ生物学的製剤である3剤(レミケード、アクテムラ、オレンシア)の効果予測研究を進め、投与前の患者の血液における特定の生物学的パスウェイの遺伝子群の働き方を調べることにより、薬剤効果を予測しうることを見出しました。翌事業年度上期には、本成果の論文化を進めるとともに、本成果を用いた多剤薬剤効果予測サービス開始を目指します。
また、当事業年度において、関節リウマチ疾患活動性を同定するバイオマーカーFAM20A遺伝子の特許査定を完了致しました。
ⅱ.免疫年齢サービス
免疫検査コストを低減するため、qPCR測定系の開発を行ないました。その結果、従来のマイクロアレイを用いた検査系に比べ、約1/3のコストダウンに成功致しました。本成果については、11月の第37回日本分子生物学会年会において学会発表を行なっております。
翌事業年度には、qPCR測定系を用いた免疫年齢サービスを展開してまいります。
ⅲ.EGFRチェック
低頻度変異検出のための検査精度についての検討実験を重ね、精度が保たれる実験条件・検体提出条件の設定を完了しました。
翌事業年度には、設定した条件のもと、検査受託サービスを開始いたします。
2.国プロジェクト等における研究開発活動
ⅰ.再生医療関連
独立行政法人新エネルギー・産業総合開発機構(NEDO)から委託を受け「再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工システムの開発」に参加し、ヒト多能性細胞由来の再生医療製品製造システムの開発(心筋・神経・網膜色素上皮・肝細胞)、ヒト間葉系幹細胞由来の再生医療製品製造システムの開発を実施いたしました。
ⅱ.京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略特区関連
経産省の医工連携事業化推進事業の中で、神奈川県・横浜市・川崎市が共同提案した『京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略特区』において、横浜プロジェクトの一環として、「微量血液の採取を目的とした低侵襲針と吸引ユニットの試作開発」に研究実施機関として参画いたしました。
3.当事業年度に発表した論文
ⅰ.大規模日本人集団のeQTL解析により、遺伝子発現を調節する遺伝子領域を同定
京都大学大学院医学研究科附属ゲノム医学センターと共同研究で、日本人集団における遺伝子発現調節に関わるゲノムDNA配列変異(SNP)を全ゲノム領域で探索し、データベースとして公開しました。本成果は、ヒトにおけるゲノムDNA配列の違いが、表現型の多様性や疾患感受性にどのようにして影響を与えるか、そのメカニズムの解明につながる成果です。研究成果は、国際科学雑誌『PLOS ONE』に掲載されました。
ⅱ.グリオーマ(神経膠腫)の機能を抑制するマイクロRNAを同定
当社は、愛媛大学、北海道大学と共にJST研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)に採択され共同研究を行ってまいりました。その成果として、愛媛大学大学院 医学系研究科 脳神経外科学の山下大介助教らは、脳腫瘍の一種であるグリオーマ(神経膠腫)の機能を抑制するマイクロRNAを発見いたしました。
本研究は、グリオーマ形成、再発に関わる作用機序の同定に結び付くと考えられ、癌の根治療法を生み出すと期待されます。なお、本研究成果は国際誌「Cancer Research」に掲載されました。
ⅲ.異なるマイクロアレイデータの比較を可能にする標準RNAとプローブの開発
当社は、特定非営利活動法人バイオチップコンソーシアム(JMAC)と共同で、DNAチップの標準化に向けた取組みを推進してまいりました。2014年12月に、異なるプラットフォームで得られたデータの補正に適用可能な標準RNAとプローブの開発に成功いたしました。
この成果により、マイクロアレイやRT-PCR、次世代シーケンシングなどのダイナミックレンジならびに限界地の検出や、異なるメーカーのプラットフォームによって得られたデータの直接比較が可能になることが期待されます。
本研究成果は国際誌「Analytical Biochemistry」に掲載されました。
4.当事業年度に取得・申請したした特許
ⅰ.関節リウマチの活動性指標となる新規バイオマーカー
リウマチ患者の血液中のFAM20A遺伝子の発現量を測定することにより、疾患活動性の評価や関節リウマチ治療薬の治療効果のモニタリングを可能とする方法に関する特許であり、2015年1月に登録されました。
ⅱ.がん幹細胞に対する増殖抑制機能を有するマイクロRNAをスクリーニングする方法及びマイクロRNAを有効成分とするがん幹細胞の増殖抑制剤
上記3 ⅱ 「グリオーマ(神経膠腫)の機能を抑制するマイクロRNAを同定」に関する特許申請を、2015年1月に行いました。
なお、2015年3月期の研究開発費は17,319千円であります。
(1)研究開発体制
当社の当事業年度における研究受託事業の売上高と研究開発事業の人員は次のとおりです。
事業年度 | 研究受託売上高 | 研究人員(期末人員) |
2015年3月期 | 340,156千円 | 16名 |
(2)共同研究開発内容
現在進めている、共同研究開発内容は次のとおりであります。
共同研究提携先 | 研究内容 | 開発する診断チップ/コンテンツ |
・国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科部門 | 消化器系癌の診断法の研究 (大腸癌、胃癌、食道癌、肝癌) | 消化器系癌診断チップ/コンテンツ |
・国立大学法人金沢大学大学院医学系研究科 | 血液を用いた糖尿病と遺伝子の関係を判断する方法に関する研究 | 糖尿病診断チップ/コンテンツ |
・学校法人埼玉医科大学総合医療センター ・学校法人慶應義塾大学医学部 | 末梢血によるRA早期疾患シグニチャー解析法の開発と確立 | リウマチ等診断チップ/コンテンツ |
・公立大学法人和歌山医科大学 | 関節リウマチに対するIL-6阻害療法の有効性予測 | リウマチ等診断チップ/コンテンツ |
・国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター | ストレス性神経疾患の血液遺伝子発現解析 | 神経疾患診断チップ/コンテンツ |
・国立研究開発法人産業技術総合研究所 | 生体関連物質の微量検出を目的とした新技術開発 | 診断チップの感度向上 |
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