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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1005856

有価証券報告書抜粋 株式会社 熊谷組 研究開発活動 (2015年3月期)


事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。
当連結会計年度は、研究開発費として12億円を投入した。
当連結会計年度における主な研究開発活動は、次のとおりである。
(1) 土木事業
① CAN(Controller Area Network)制御車両の遠隔操作システムの開発
近年、土砂崩落の恐れがあるなど、人が立入ることが危険な災害地では、遠隔操作式建設機械による無人化施工で復旧を行うことが多くなってきている。従来の遠隔操作式建設機械は、新たに無線送受信機を建設機械に取り付けることで、遠隔操作を実現してきた。そのためには専用の無線システムを組み、電磁弁等の設備を追加する必要があり、改造などの時間とコストがかかるという問題があった。
本システムは、建設機械に標準装備されたCANを使用して、通常使用される遠隔操縦用制御装置を使うことなく、操作レバーや車両の情報をそのまま無線LANで遠隔地に飛ばして操作するものである。
CANの信号をそのまま伝送するため、操作情報を車両側と操作室側で共有でき、操作感覚は搭乗時とほとんど変わらない。また、車両情報などもそのまま特殊装置なしに直接伝送することが可能である。通常の建設機械では、遠隔操作のための改造等でコストがかかるが、本システムでは変換装置とジョイスティック等の必要な装置に無線を追加することで安価に遠隔操作式建設機械を提供することが可能である。
② 曲線函体推進工法「まがるーふ工法」の適用範囲拡大
2008年より開発を進めてきた「まがるーふ工法」は、分岐合流部等の超大断面トンネル構築を目指した技術であるが、2013年にNEXCO東日本と共同で供用中の道路トンネルの盤膨れ変状箇所に応用し、従来必要とされた全面通行止めを回避してインバートを新たに構築することに成功し、社会的影響を極めて少なくできる補修方法の事例として大いに注目されている。本年は、当初の開発目標であった“都市部大断面トンネル構築”に必要な“方向制御技術”や“地下水対応技術”について技術向上を図る。
具体的には、都市部における軟弱地山での大断面トンネル掘削外周部への曲線函体による事前アーチ支保体構築のための高精度長距離推進技術、大深度地下部における高圧地下水対策技術を確立することで、外殻先行型支保という新しいトンネル構築方法を確立し、「まがるーふ工法」の適用範囲拡大を目指す。
③ 沖縄県の公募事業「微生物等を活用した汚染土壌の浄化処理技術開発事業」によるバイオ処理実証実験を終了し、油汚染土壌の浄化処理技術「ちゅらパイル工法」を開発
当社は、油分解能力が高くかつ安全性の高い分解菌を用い、沖縄特有の土質や気候に対応した、確実で安全な油汚染土壌の浄化処理技術「ちゅらパイル工法」を開発した。沖縄県では多数の米軍基地が存在し、跡地では油などによる土壌汚染が顕在化している。一般に油汚染土壌の浄化対策としては、汚染土壌を掘削後に、非汚染土壌と置換する方法や石灰と混合する方法、微生物の働きを利用したバイオレメディエーションなどが主流である。本工法は、掘削した油汚染土に石油分解菌(経済産業大臣・環境大臣による安全性確認取得済)を投入、あるいは土着の石油分解菌を活性化させるために栄養塩や有機資材(堆肥)を投与して混ぜ練り合わせ、盛土状(パイル)に養生して沖縄の気候風土に適した管理手法で石油分解菌の働きを活発化させることにより土壌を浄化する。これまで汚染土壌の措置は掘削除去が多く用いられており、土壌の搬出・運搬時の飛散や高コストが課題とされてきた。本工法は、敷地内施工ができ、低コストで環境負荷が少ない浄化が可能である。さらに、米軍基地跡地だけでなく、製造工場敷地や都市部、住宅街など幅広い状況での施工が可能である。今後、工法研究協会を設立し「ちゅらパイル工法」の普及展開を図る。また、県内企業への技術移転を積極的に行うことにより、技術の向上とともに新規事業創出に寄与し、県内での新たな雇用創出にも結び付けていく。なお本案件は、当社、南洋土建株式会社及びテクノス株式会社との共同開発である。
④ 建設業では初めて、「国連生物多様性の10年日本委員会」による連携事業に認定
当社が進める自然環境の保全、再生、創出の取り組みのひとつである「ホタルの棲める環境づくり(ホタルビオトープ技術)」が、建設業で初めて「国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)(注)」が推奨する連携事業に認定された。当社は、従来より自然環境や生物が生息する空間づくり、ビオトープの創造、屋上緑化の整備やホタルの棲める環境づくりなどを積極的に実施してきた。また、地元の小学校・中学校・NPO・自治体等と連携し、工事現場でのホタル鑑賞会など地域住民や子供達への学習の場としても活用してきた。このことがUNDB-Jが推奨する事業認定基準を満たし、連携事業の認定を受けたものである。今後広くお客様などにアピールを行い、技術提案・設計案件に展開していく。
(注) 「国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)」:生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の目標に貢献するために設立され、国内のあらゆるセクター(国、自治体、NPO、事業者、教育機関など)の参画と連携を促し、取り組みを推進するための組織。
(2) 建築事業
① インフラの劣化診断にも応用可能な「指向性音カメラ」の開発
当社は、特定の方向からの音を可視化して表示する「指向性音カメラ」を開発した。本技術を用いることにより、壁などで囲まれた音の反射が多い場所であっても、音の発生方向・大きさといった情報を可視化して確認することができるようになった。「音カメラ」は全方位の音を計測することができるが、壁などで囲まれたような場所では、音源から直接届く音と壁などで反射した音が干渉してしまい、音の発生方向を特定しにくい場合もあった。今回開発した「指向性音カメラ」は、先に開発した「音カメラ」の技術を向上させて指向性を持たせ、カメラが向いている方向の音のみを効率的に計測することが可能となった。カメラ後方の音は遮音層によって低減されるため、カメラ前方の音に対する干渉などの影響を最小限にすることができる。また、計測データを記録しながらリアルタイムで結果を表示することができ、その場で音の情報を確認することができる。国土交通省の調査によると、10年後には全国に約70万橋ある2m以上の橋梁の43%が建設後50年を経過すると言われている。これらの橋梁の劣化を点検するツールとして、地方自治体や設計事務所、コンサルティング会社などへ積極的に提案していく予定である。なお、本成果の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの受託業務「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」の結果得られたものである。
② 集合住宅の改築や改修などに必要な技術を網羅する「マンションリノベーション技術データベース」を構築
当社は、リフォーム・リニューアル、コンバージョン、リノベーション等に必要な各種技術を網羅した「マンションリノベーション技術データベース」を構築した。
本データベースを用いることによって、マンションリノベーションを計画しているデベロッパー等からの技術相談に対して、広範囲かつ詳細な技術情報の提供、技術提案ができるようになった。政府の「新成長戦略」の中で「ストック重視の住宅政策の転換」が謳われており、「中古住宅流通市場やリフォーム市場の規模を倍増させる」としている。一方、国土交通省ではリフォームや中古住宅購入への体制を整備している。当社においては、お客様からの要望や技術相談に対して、当社やグループ会社の技術営業担当者が本データベースを用いて、広範囲かつ詳細な技術情報の中から最適な計画を提案する。また、当社の得意技術である音環境技術や室内環境解析技術を駆使することにより、さらなる良好な室内環境の提案も可能であり、本データベースを通じて建物全体及び室内空間の基本的な性能について、与条件に応じたベストな提案を総合的な技術力の裏付けの元で実施する。今後は本データベースの充実を図りながら、新たに抽出した課題の解決のための研究開発を実施していく。また、グループ会社と一体となった独自色のある技術提案を行う。
③ 石貼り仕上げの低床乾式遮音二重床工法において、高い床衝撃音低減性能を実現した「NSフロアーⅥ」を開発
当社は、新しい低床乾式遮音二重床「NSフロアーⅥ」を開発した。今回開発した工法は、パーティクルボードの上の下地材を針葉樹合板の一枚貼りとし、もう一枚は環境に配慮したガラス繊維不織布入りせっこう板に変更した。また、乾式二重床の低床化による床衝撃音低減性能の低下に対し、支持脚の仕様の工夫により、床仕上げ高さ100㎜で施工した場合でも従来工法と同等の高い床衝撃音低減性能を確保した。近年、集合住宅においては、玄関・廊下・洗面室・トイレなどの仕上げ材に大理石やタイルを採用するケースが多くなってきている。天然大理石(無垢大理石)を二重床の上に使用する場合、従来の工法では、下地材として針葉樹合板を2枚貼りし、床仕上げ高さも150㎜を必要としていた。そこで新工法の開発にあたっては、森林資源の保護に配慮した下地材への変更と、低床であるために天井高さに余裕がない共同住宅のリニューアルにも対応できる乾式二重床の開発(低床での床衝撃音低減性能の低下防止)が課題であった。今後、集合住宅の石貼り仕上げの乾式二重床に関する重要なツールとして位置づけ、デベロッパーや設計事務所などに対して積極的に提案していく予定である。本工法は、一般財団法人日本建築総合試験所において床衝撃音レベル低減量及び耐荷重性能試験を行い、大理石仕上げの従来工法と同等の高い床衝撃音低減性能を確保していることを確認している。なお本案件は、当社、野原産業株式会社及び有限会社泰成電機工業による共同開発である。
④ リフォームに対応できる乾式二重床で高い床衝撃音低減性能を実現した「NSフロアー石貼り下地工法」を開発
当社は、リフォームに対応できる高い床衝撃音低減性能の「NSフロアー石貼り下地工法」を開発した。今回開発した工法は、パーティクルボードの上の下地材として環境に配慮したガラス繊維不織布入りせっこう板を用いた。この上に針葉樹合板、下地となる大理石を貼り、フローリングを施工した。リフォームする住宅は、一般的に床衝撃音レベルの性能が低いものが多い。この下地材及び石材の採用により、乾式二重床の剛性が大幅に向上し、重量床衝撃音低減性能はスラブ素面よりも高い床衝撃音低減性能を実現した。さらに、大理石下地の採用による乾式二重床の床仕上げ高さの増加を支持脚の高さで調整し、従来の150㎜から120㎜に抑えた。このため、天井高さに余裕がないリニューアルに対応できるようになった。今後、集合住宅の床衝撃音遮断性能を向上させる重要なツールとして、デベロッパーや設計事務所などに対して積極的に提案していく予定である。なお本案件は、当社、野原産業株式会社及び有限会社泰成電機工業による共同開発である。
⑤ 建物の安全性向上と施工時のコスト低減が可能な杭工法であるMe-A工法を開発し技術評定を取得
当社は、建物の安全性向上と施工時のコスト低減が可能な杭工法であるMe-A工法(Multi Enlarged-nodes Ace Pile)を開発し、一般財団法人ベターリビングより技術評定を取得した。本工法は、アースドリル工法を用いて杭軸部の中間及び先端に節状の拡径部を設け、建物を支える力を増大させた場所打ちコンクリート杭を造成する工法である。杭の中間と先端に拡径部による抵杭要素を設けることで、拡径部を先端にのみ設ける従来の工法に比べ、杭の支持力を先端だけで増大させず、中間と先端に分散して増大させる効果がある。また、この拡径部は地震の時に建物を転倒させようとする力に抵抗するため、杭の引き抜き抵抗としても有効に働く。さらに、従来の工法より杭を短く杭軸部を細くすることが可能であり、杭工事費を10~30%低減できる。今後は、杭基礎の安全性の向上とコスト低減のため、Me-A工法の適用を進めていく。なお本案件は、当社、戸田建設株式会社、ジャパンパイル株式会社、大豊建設株式会社、大洋基礎株式会社、東急建設株式会社、東洋テクノ株式会社、西松建設株式会社及び三井住友建設株式会社による共同開発である。
⑥ HRパイル工法(杭頭半剛接合工法)の設計指針改定・技術評定取得
当社は、「HRパイル工法」の杭頭接合部のコンクリートの許容応力度に関して設計指針を改定し、一般財団法人日本建築センターの基礎評定(BCJ評定-FD0202-06)を取得した。HRパイル工法は、2005年に共同開発を行い、その後、適用杭径の拡大、杭頭接合部の回転性能の評価方法の見直し、杭頭接合部と杭軸部のコンクリート強度同一化など技術改定の都度基礎評定を取得してきた。今回、過去に実施した構造実験を国土交通省告示に基づく試験として位置付け、その結果を見直すことにより、杭頭接合部におけるコンクリートの許容応力度を上部構造と同じ許容圧縮応力度で長期:Fc/3、短期:2Fc/3として評価しても、杭頭接合部の回転剛性の評価方法、強度の評価方法が妥当であることを確認した。これにより杭頭接合部に必要とされるコンクリート強度が抑えられ、設計の合理化を図ることが可能になった。今後はHRパイル工法研究会において、施工方法についても改良を図り、高い耐震性を有する本工法を積極的に提案していく。なお本案件は、当社、青木あすなろ建設株式会社、株式会社安藤・間、大木建設株式会社、西武建設株式会社、株式会社錢高組、株式会社ピーエス三菱及び前田建設工業株式会社による共同開発である。

(3) 子会社
株式会社ガイアートT・K
① フルファンクションペーブ(FFP:多機能型排水性舗装)の改良・改善
FFPの施工実績の増加に伴い、施工時の施工管理結果や追跡調査結果から挙がった改良・改善の課題を絞り込み、その検討を行った。
最も大きな課題であった縦溝の明瞭化については、ビットと新たな形状のビームを取り付けたシニックススクリードをアスファルトフィニッシャーに取り付け施工することで大きく改善することができた。また、耐久性については、アスファルト混合物の配合を再検討した結果、高耐久となるトップサイズと粒度範囲を見出すことができた。
② 橋面舗装工法の開発
社会インフラの老朽化、とりわけ橋梁の掛け替えが急務となる情勢を受け、高機能でかつ耐久性の高い新たな床版掛け替えシステムの一環として、新たな橋面舗装材の開発や舗装新設工事における耐久性の高い防水材とアスファルト混合物を組み合わせた最適な舗装構成の検討を行っている。
特に、基層混合物面に塗布する防水タイプタックコートについて、具体的な3種類の材料について研究を実施した。
その結果、2種類は使用する基層混合物の種類によって防水性が低下する可能性があること、残りの1種類は基層混合物の種類に影響されることなく防水性が良好であることを室内で確認した。

事業等のリスク財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析


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