シェア: facebook でシェア twitter でシェア google+ でシェア

有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S10055KM

有価証券報告書抜粋 ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 事業の内容 (2015年3月期)


沿革メニュー関係会社の状況


当社グループは、当社及び販売子会社Human Metabolome Technologies America, Inc.(以下「HMT-A」と言います。)の2社で構成され、「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術をコアとした研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する」ことを企業理念として、研究機関や企業のメタボローム解析試験受託及びバイオマーカー開発を主たる事業として展開する慶應義塾大学発のベンチャー企業です。当社グループは、設立母体である慶應義塾大学先端生命科学研究所及び本社所在地である山形県や鶴岡市等地方自治体と産官学連携のもとに事業を展開しております。




(1) メタボロームとバイオマーカー

人間をはじめとする生物は、筋肉や臓器、骨といった多様な機能を持つ器官から成り立ちますが、これらはアミノ酸や脂質、核酸などの代謝物質(メタボライト)を共通の構成因子としており、代謝物質は全ての生命活動において欠かせない役割を担っています。代謝物質は食事により供給され、運動など日々の活動の中で消費されます。その機能に応じて体内や細胞内を移動し、多くの化学反応によって新しい物質へと作り替えられていきます。このような化学反応のことを代謝(メタボリズム)と呼び、この物質変換は代謝経路という一定の規則により成り立っています。代謝の仕組みを理解することは、私たち自身をより深く知ることに繋がります。
メタボローム解析は幅広い分野で利用されていますが、以下のような分野で代謝を理解する手法として活用されています。
・大学などの研究機関における疾患メカニズムの研究
・製薬企業における探索・薬理研究や毒性研究
・発酵を利用した物質生産を行っている企業における生産性の向上
・食品企業における成分分析や機能性の探索・確認

生命活動を営むためには、様々な機能を精緻に制御して”恒常性”を維持する仕組み(内的/外的な影響を最小限にし、一定に保つ仕組み)が備わっています。体温や心拍数が一時的に変化しても元に戻ることが、恒常性の身近な例と言えます。しかし、病気に罹患することにより恒常性が破綻した場合、代謝物質などの構成要素にも影響が及び、健康の時とは異なる振る舞いを示すようになります。それがバイオマーカーです。バイオマーカーとして広く知られているものに、膵臓の機能指標となる血糖(糖尿病)や肝機能の指標となるγ-GPT(肝硬変等)、腫瘍マーカーとしてPSA(前立腺がん)やCA19-9(膵臓がん等)があります。バイオマーカーとは、特定の疾患に対して客観的に評価できる生体上の指標をいいます。
バイオマーカーは、疾患の罹患をモニターすることを目的に古くから研究されてきましたが、より高感度で一度に多くの物質を分析できる新しい方法の出現により、新たなバイオマーカーの研究成果が相次いで発表されています。メタボローム解析技術により、探索が進んでいるバイオマーカーには、以下のようなものがあります。
・疾患の罹患を予測するバイオマーカー
・治療の予後を予測するバイオマーカー
・投薬による副作用を予測するバイオマーカー
・投薬の効果を予測するバイオマーカー

(2) 当社グループ設立の経緯

生物学、医学分野において、オミクス(注1)は生体の網羅的情報を得る手法として重要です。2001年慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授は、生体内の低分子代謝物質(メタボローム)(注2)の測定方法を開発しました。このメタボローム測定法はキャピラリー電気泳動装置(Capillary Electrophoresis)と質量分析計(Mass Spectrometer)を組み合わせて測定するもので、頭文字をとってCE-MS法と呼ばれています。
曽我朋義教授の測定法は、生体内のイオン性代謝物質(注3)を、一斉に、かつ、網羅的に測定できる点で画期的な技術でした。メタボローム解析技術は、生物学基礎研究から医薬開発、疾病バイオマーカー(注4)開発等に用いられるため、本技術の社会的ニーズが見込まれました。
こうした技術の確立を背景に、当社グループは、CE-MS法の開発者である曽我朋義教授、冨田勝教授、慶應義塾大学等が中心となり、2003年7月に設立されました。当社グループは、慶應義塾大学のアントレプレナー資金制度により出資を受けた慶應義塾大学発ベンチャー企業の第1号となりました。

(3) ビジネスモデル

当社グループは、収益基盤の柱として「メタボローム解析事業」、CE-MS法を国内外に普及させるための事業として「メタボロミクスキット事業」及び「人材派遣事業」、将来の成長事業として「バイオマーカー事業」を展開しています。当社グループの基本戦略は次のとおりであります。
メタボロミクスキット事業及び人材派遣事業により、当社グループ基盤技術であるCE-MS法を普及させながらメタボローム研究関連市場の拡大を図ります。同時に、メタボローム解析事業の国内外への展開により収益基盤を確保します。これら3事業から得られた利益を将来の成長事業であるバイオマーカー事業の研究開発に投資し、ここで得られた知的財産を、医薬品開発及び疾病診断分野にて実用化することにより、中長期における成長を図ります。






(4) 事業内容

① メタボローム解析事業
本事業では、主に製薬や食品等の民間企業、大学や公的研究機関からメタボローム解析試験を受託しております。顧客は、解析する試料を当社へ送付し、試料から代謝物質の抽出、CE-MS等による一斉分析、メタボローム解析のうえ、試験結果を報告書として納品します。当社グループのメタボローム解析サービスで得られた代謝物質データは、製薬企業や大学、研究所では基礎生物学研究から薬剤効果及び毒性の評価等、食品企業では発酵プロセスの律速段階解析や機能性食品の機能評価等に用いられ、顧客の研究開発進展に貢献しております。
当社は、メタボローム解析受託サービスをアジアにて展開するため、2011年6月に、韓国Young In Frontier Co., Ltd.と、韓国内におけるメタボローム解析サービス及び後記メタボロミクスキットの独占的販売権供与契約を締結しました。また、北米市場への展開のため、2012年10月には、医学研究の集積地ともいえるアメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジ市に、販売子会社HMT-Aを設立し、がん研究向け解析サービスC-SCOPEを主力商品として販売活動を展開しております。販売促進活動の一環として、有力大学のがん研究者に当該サービスを無償もしくは安価で提供し、技術的な評価を頂くことで、北米市場での価値向上と市場への早期浸透を図っております。

② バイオマーカー事業
血液などに含まれる代謝物質バイオマーカーは、疾患の早期診断や治療効果をモニタリングするための診断キット開発のシーズとなります。当社は、バイオマーカー事業を将来の成長事業と位置づけ、大学や診断薬企業との共同研究開発を通じて、メタボローム解析技術を用いたバイオマーカー探索及び診断キットの研究開発を進めております。
当社では、客観的診断が難しい中枢神経系疾患(気分障害や精神障害等)(注5)、メタボリックシンドローム(MetS)(注6)等社会問題化している疾患とその関連疾患に焦点を当てております。現在バイオマーカー及び診断キットの開発を進めている疾病は、大うつ病性障害(注7)、肝疾患、線維筋痛症(注8)、糖尿病性腎症(注9)です。疾病バイオマーカーを探索する対象疾患の選定においては、国内外の診断薬企業や製薬企業の研究者、開発担当者との情報交換を通して、社会が求める疾病診断法や新薬開発に関する情報を得て判断しております。
当社は、自社の研究開発を通じて得られたバイオマーカーや、外部より導入したバイオマーカーの診断法を開発し、診断薬企業と協力して体外診断用医薬品(注10)として上市することにより、研究開発に係る協力金や医薬品が上市された時の製品売上ロイヤリティを獲得します。また、医療機関との提携により、バイオマーカーを用いた臨床検査受託も進めてまいります。

③ メタボロミクスキット事業
当社は2006年5月より、アジレント・テクノロジー株式会社と共同で、企業、大学並びに公的研究機関向けにメタボロミクスキットの販売を開始しました。メタボロミクスキット事業では、アジレント・テクノロジー株式会社製のキャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOFMS)システムに、当社が開発・製造したメタボローム解析用試薬キット、限外ろ過フィルター(注11)、サンプルの調製法や分析メソッド等のノウハウ、トレーニング、各種サポート等をパッケージ化し提供しています。これらの製品、サービスにより、メタボローム解析経験を持たない研究者でも解析環境を円滑に立ち上げることができるように支援します。製薬企業等では、試料の機密性、納期等の理由により、自社での解析と受託解析の両立を望む場合があります。メタボロミクスキットは、当社グループの受託解析にて同じ解析方法による結果を得られるため、受託と自社解析でのデータの一貫性を保てることは大きなメリットです。

④ 人材派遣事業
当社は、CE-MSを普及させる視点から、2006年2月より特定労働者派遣事業の届出を行い、人材派遣事業を開始しました。本事業は、試薬キットやサポートの提供により顧客の研究開発活動を支援するメタボロミクスキット事業と併せて、人材面から顧客の研究活動を支援することを目的としております。当社は、現在技術員及び事務員を研究機関へ派遣しております。


(注1)オミクス(omics)とは、生体内に存在する遺伝子及びその発現、タンパク質、代謝物質等を網羅的に解析し、生体内の挙動を理解しようとする研究アプローチです。遺伝子(gene)ではゲノミクス(genomics)、遺伝子発現(transcript)ではトランスクリプトミクス(transcriptomics)、タンパク質(protein)ではプロテオミクス(proteomics)、代謝物質ではメタボロミクス(metabolomics)と表現します。

(注2)ヒトや動植物の生体内には、生命活動の維持に必要なATP(アデノシン三リン酸)等の高エネルギー物質や有機酸、アミノ酸等、数多くの代謝物質が存在し、酵素による代謝物質の変換が活発に行われています。メタボロームとは、これら生体由来の代謝物質の総称です。個々の代謝物質を指す場合には、メタボライトと言うこともあります。

(注3)イオン性代謝物質とは、水溶液中で電荷を帯びる代謝物質を指します。例えば、食塩(NaCl)は水に溶けると、Na+(ナトリウムイオン)とCl-(塩化物イオン)に分かれます。イオン性代謝物質は、このように分子が分かれて電荷的な性質を持ち、CE-MS法は、こうしたイオン性代謝物質が電荷を帯びている性質を利用し、キャピラリー電気泳動装置で測定試料に含まれる代謝物質を分離します。

(注4)血液や尿等に含まれる物質で、疾患等による生体内の変化を定量的に評価するための指標を指します。糖尿病における血糖値、痛風における血液尿酸値等はバイオマーカーの一例です。

(注5)中枢神経系疾患とは、末梢神経系に対して神経細胞が集中している脳と脊髄の機能に関連した症状を持つ疾患を指します。精神疾患や脳症、脳炎のような脳機能障害、疼痛など広い疾患領域を含んでいます。

(注6)メタボリックシンドローム(MetS)は、代謝性症候群とも呼ばれ、代謝機能の異常により生じる内臓脂肪型肥満と高血糖、高血圧、脂質異常のうち2つ以上を合併した場合を指します。動脈硬化性疾患やその他の血管性疾患(腎症など)、臓器障害のリスクが高くなるため、予防が重要とされています。

(注7)大うつ病性障害は、精神障害の一つであり、睡眠障害、焦燥感、不安、食欲低下、抑うつ症状を特徴とします。アメリカ精神医学会や世界保健機関(WHO)から診断基準が示されていますが、基本的に医師の面接による判断により診断されます。

(注8)線維筋痛症は、激しい全身疼痛を主訴とする原因不明の病気で、疼痛部位における炎症等の病変は見られず、不眠、抑うつ症状等を伴うこともあります。発症の原因やメカニズムは不明ですが、外傷、感染、ストレスが引き金になることが多く、中枢神経系(下行性痛覚抑制経路)の障害によるものと考えられています。日本では200万人の患者がいると推定されていますが、医師の間での認知度も低く、適切な治療を受けていない患者が多数を占めています。30から40代の女性に多く発症し、長期間にわたる激しい痛みのため、生活の質は著しく低下し、労務、学業に支障をきたすだけでなく、日常生活を送ることも困難になります。

(注9)糖尿病性腎症は、糖尿病を背景疾患とした細小血管障害です。高血糖による糸球体糖化や糸球体高血圧を原因として腎機能が障害を受け、腎症に進行します。糖尿病患者の尿中ミクロアルブミンをモニターし、陽性となった場合はACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬などの降圧剤による治療を行いますが、寛解率は低く、多くの患者がいずれ人工血液透析療法へ導入されます。現在、新規人工透析導入者の1位は糖尿病性腎症であり、医療経済的に大きな負担(約500万円/年/人)となっています。

(注10)体外診断用医薬品とは、薬事法では「専ら疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品のうち、人又は動物の身体に直接使用されることのないものをいう」とされています。検査結果が医師の診断を補助できる点で、単なる研究用試薬とは区別されます。

(注11)限外ろ過フィルターは、メタボローム解析を行う試料の計測前処理に用いる器具です。巨大分子であるDNAやタンパク質等を除去するフィルターで、代謝物質のみを試料から抽出するのに用いられます。

沿革関係会社の状況


このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E30071] S10055KM)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。