有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100AK1M
日本郵政株式会社 事業等のリスク (2017年3月期)
生産、受注及び販売の状況メニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
以下において、当社及び当社グループの事業内容、経営成績、財政状態等に関する事項のうち投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクを例示しておりますが、これらに限定されるものではありません。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
Ⅰ.当社グループ全般に関するリスク
1.事業環境に関するリスク
(1) 経済情勢その他の事業環境の変動に伴うリスク
当社グループが行う事業のうち、郵便・物流事業、金融窓口事業、銀行業、生命保険業等は、その収益の多くが日本国内において生み出されるものであるため、主として国内における金利の動向、金融市場の変動、消費税増税、少子高齢化の進展、eコマース市場の動向、賃金水準の変動、不動産価格の変動、預金水準等の影響を受けます。また、当社グループは、国際物流事業において、日本郵便の子会社であるトール社が、豪州を中心に、アジア太平洋地域等におけるフォワーディング、コントラクト物流(3PL)等の国際的な事業活動を行っており、各国・地域における経済情勢・金融市場その他事業環境の変動による影響を受けます。したがって、かかる国内外の経済情勢・金融市場その他事業環境の変動により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります(金利の動向に係るリスクについては、下記「Ⅱ.郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業に関するリスク (4) 国際物流事業に関するリスク ⑤ 金利変動のリスク」、「Ⅲ.銀行業に関するリスク (1) 市場リスク ① 金利リスク」及び「Ⅳ.生命保険業に関するリスク (2) 資産運用に関するリスク ① 国内金利に関する市場リスク」の記載を、郵便・物流事業における経営環境の変化に関するリスクについては、下記「Ⅱ.郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業に関するリスク (1) 郵便・物流事業における経営環境の変化に関するリスク」をそれぞれご参照ください。)。
例えば、我が国においては、長期に亘る少子高齢化の影響を受け、生産年齢人口が減少し続けており、こうした状況のもと、貯蓄の減少、保険契約の減少、経済規模の縮小による郵便物数の減少等が生じた場合には、当社グループ全体の事業規模が縮小する可能性があります。これらの事情により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 他社との競合に関するリスク
当社グループが行う事業は、いずれも、激しい競争状況に置かれております。当社グループと競合関係にある同業他社は、当社グループより優れた商品構成、サービス、価格競争力、事業規模、シェア、ブランド価値、顧客基盤、資金調達手段、事業拠点、ATMや物流拠点その他のインフラ又はネットワーク等を有する可能性があります。
例えば、日本郵便が行っている郵便・物流事業についても、信書便事業者や他の物流事業者等と競合関係にあり、他社の提供するサービスへの乗り換えが発生した場合、又は、競争激化により当社の事業、シェア若しくは収益の動向が当社グループの想定どおりに進捗しなかった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、ゆうちょ銀行が行っている銀行業、及びかんぽ生命保険が行っている生命保険業は、同業他社等と競合関係にあります。今後、両社が金融サービスに対する顧客ニーズの変化や市場構造の変化等に適切に対応できなかった場合、又は、両社が競合他社に対して優位に立てない場合等においては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、近年では、国内外の各業界において統合や再編、業務提携が積極的に行われているほか、参入規制の緩和や業務範囲の拡大等の規制緩和が行われております。当社グループ各社が市場構造の変化に対応できなかった場合や規制緩和や新規参入が想定以上に進んだ場合は、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
例えば、当社グループの郵便事業と競合する一般信書便事業については、民間事業者による信書の送達に関する法律(以下「信書便法」といいます。)に基づき、一定の参入条件が課された許可制とされており、現時点において同事業に参入している民間事業者はおりません。しかしながら、信書便法の改正等により、信書便事業の業務範囲の拡大や参入条件が変更されるなど参入規制が緩和された場合には、新規事業者の参入により競争が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、2015年6月に改正信書便法が成立し、特定信書便役務の範囲の拡大等の改正が行われております。
(3) 大規模災害等の発生に伴うリスク
当社グループは、日本全国にわたる幅広い事業活動に加えて、トール社が国際的な事業活動を行っており、各国・地域における地震、噴火、津波、台風、洪水、大雪、火災等の大規模自然災害、新型インフルエンザやエボラ出血熱等の感染症の大流行、戦争、テロリズム、武力衝突等の人的災害、水道、電気、ガス、通信・金融サービス等に係る社会的インフラの重大な障害や混乱等の発生、又は当社グループの店舗、その他の設備や施設の損壊その他正常な業務遂行を困難とする状況等が生じた場合、当社グループの業務の全部若しくは一部が停止し、又は、運営に支障をきたすおそれがあり、また、設備やインフラの回復、顧客等の損失の補償等のために長期の時間及び多額の費用を要する可能性があります。
また、かかる状況下において当社グループの業務が円滑に機能していたとしても、かかる状況の発生に伴う経済・社会活動の沈滞等の影響を受け、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
特に、当社グループは生命保険子会社としてかんぽ生命保険を保有していることから、大地震その他の大規模災害や新型インフルエンザのような感染症の大流行を原因として大量の死者が出た場合に、かんぽ生命保険による保険給付に関し、通常の想定を超える債務を負うリスクにさらされております。同社は、保険業法の基準に従って危険準備金を積み立てておりますが、予想を超える大規模災害等の発生により危険準備金を超えるような保険金・給付金の支払いが発生した場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
2.法的規制・法令遵守等に関するリスク
(1) 法的規制及びその変更に関するリスク
当社グループは業務を行うにあたり、以下のような各種の法的規制等の適用を受けております。
これらの規制により、当社グループは、同業他社に比して、新規事業の展開や既存事業の拡大、低収益分野からの撤退又は縮小が制約されるため、競争力を失い、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループに適用のある法令等の改正や新たな法的規制等により、当社グループの競争条件が悪化したり、事業活動の一部が制限又は変更を余儀なくされた場合は、新たな対応費用の増加、収益機会等の喪失等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
① 郵便法等に基づく規制
郵便法上、郵便事業は当社の連結子会社である日本郵便が独占的に行うこととされておりますが、郵便約款の変更や業務委託の認可制、全国一律料金制度、定形郵便物の料金制限、郵便料金の届出制(第三種郵便物及び第四種郵便物については認可制)といった、本事業特有の規制又は他の事業や他社とは異なる規制を受けております。
② 銀行法及び保険業法に基づく規制
当社グループの銀行業及び生命保険業においては、これらの事業に一般的に適用される銀行法及び保険業法といった金融業規制を受けております。
(a) ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険に対する規制
銀行業を営む当社の連結子会社であるゆうちょ銀行及び生命保険業を営む当社の連結子会社であるかんぽ生命保険(両社について、以下「金融2社」と総称します。)は、それぞれ銀行法及び保険業法に基づき、金融庁の監督を受けており、内閣総理大臣からの委任を受けた金融庁長官による、法令違反等による免許取消し並びに業務の健全性かつ適切な運営を確保する等のために必要があると認めるときの業務停止及び立入検査等を含む広範な監督に服しております。
ゆうちょ銀行は、銀行法及び関連業規制に基づき、法令により定められた業務以外の業務を営むことができず、また、自己資本の充実度合いを図る基準である自己資本比率について、単体自己資本比率(国内基準)を4.0%以上に維持すること等が必要とされています。また、かんぽ生命保険は、保険業法及び関連業規制に基づき、法令に基づき定められた業務以外の業務を行うことができず、また、大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断する指標の一つであるソルベンシー・マージン比率を200%以上に維持すること等が必要とされています。2017年3月31日現在、ゆうちょ銀行の単体自己資本比率は22.22%、かんぽ生命保険の連結ソルベンシー・マージン比率は1,290.6%であり、いずれも法令上の規制比率に比べ相当程度高い水準を確保しておりますが、近時の金融市場の状況に対応したリスク性資産の増加により、これらの比率は低下傾向にあることに加え、保有有価証券等の価値の低下、これらの比率の算出方法の変更、比率に係る規制の変更、新たな規制の導入等により、単体自己資本比率又は連結ソルベンシー・マージン比率が更に低下する可能性があり、当該比率が規制比率を下回るような場合には、規制当局から、報告又は資料の提出や、業務の縮小等を含む改善措置が求められる可能性があり、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(b) 日本郵便に対する規制
日本郵便は、当社グループの金融窓口事業に関連して、ゆうちょ銀行を所属銀行とする銀行代理業者として、また、かんぽ生命保険を所属保険会社等とする生命保険募集人として、銀行法及び保険業法に基づき、金融庁の監督に服しております。
また、日本郵便は、銀行代理業者として、法令により定められた業務以外の業務を営むことができず、また、分別管理義務、銀行代理業務を行う際の顧客への説明義務、断定的判断の提供等の一定の禁止行為等の規制を受けております。また、生命保険募集人として、顧客に対する説明義務、虚偽説明等の一定の禁止行為等の規制を受けております。
日本郵便が上記規制に違反する等した場合には、規制当局から、許可又は登録の取消しや業務の一部又は全部の停止を命ぜられる可能性があり、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(c) 当社に対する規制
当社自身も銀行持株会社及び保険持株会社として、銀行法及び保険業法に基づき金融庁の監督に服するとともに、当社の連結自己資本比率(国内基準)を4.0%以上に維持すること及び当社の連結ソルベンシー・マージン比率を200%以上に維持すること等が必要とされるほか、顧客の利益保護のための体制の整備や事業年度毎の規制当局に対する業務報告書等の提出の義務等を負っております。
なお、2017年3月31日現在、当社の連結自己資本比率は23.80%、連結ソルベンシー・マージン比率は922.0%であり、いずれも法令上の規制比率に比べ相当程度高い水準を確保しておりますが、近時の金融市場の状況に対応したリスク性資産の増加により、これらの比率は低下傾向にあることに加え、保有有価証券等の価値の低下、これらの比率の算出方法の変更、比率に係る規制の変更等により、連結自己資本比率又は連結ソルベンシー・マージン比率が更に低下する可能性があり、当該比率が規制比率を下回るような場合には、規制当局から、報告又は資料の提出や、業務の縮小等を含む改善措置が求められる可能性があり、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(d) 事業の前提となる許認可
当社グループは、主として以下のような許認可等を受けております。
許認可等の名称 | 根拠条文 | 会社名 | 有効期限 | 許認可等の取消事由等 |
銀行持株会社の認可 | 銀行法第52条の17第1項 | 日本郵政株式会社 | なし | 同法第52条の34第1項 |
保険持株会社の認可 | 保険業法第271条の18第1項 | 日本郵政株式会社 | なし | 同法第271条の30第1項 |
銀行代理業の許可 | 銀行法第52条の36第1項 | 日本郵便株式会社 | なし | 同法第52条の56第1項 |
生命保険募集人の登録 | 保険業法第276条 | 日本郵便株式会社 | なし | 同法第307条第1項 |
銀行業の免許 | 銀行法第4条第1項 | 株式会社ゆうちょ銀行 | なし | 同法第26条第1項、第27条、第28条 |
生命保険業の免許 | 保険業法第3条第4項 | 株式会社かんぽ生命保険 | なし | 同法第132条第1項、第133条、第134条 |
現時点におきましては、上記許認可等が取消しとなるような事由は生じておりませんが、将来、何らかの理由により、各法が定める取消事由等に該当し、所管大臣より許認可の取消処分等を受けることとなった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 当社グループ固有に適用される規制等
当社及び日本郵便は、郵政民営化法等に基づき、郵便の役務、簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務並びに簡易に利用できる生命保険の役務が、利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的に利用できるようにするとともに、将来にわたりあまねく全国において公平に利用できることが確保されるよう、郵便局ネットワークを維持する法律上の義務を負っています(かかる義務に基づき郵便局ネットワークを通じて行われる役務提供を、以下「ユニバーサルサービス」といいます。)。
ユニバーサルサービスについては、2013年10月に、総務大臣が「郵政事業のユニバーサルサービス確保と郵便・信書便市場の活性化方策の在り方」について、その諮問機関である情報通信審議会郵政政策部会に諮問を行い、同審議会において、2015年9月28日に答申が出されました。
答申において、ユニバーサルサービスの確保について、短期的には、「日本郵政及び日本郵便は自らの経営努力により現在のサービスの範囲・水準の維持が求められる」、「また、国は、ユニバーサルサービス確保に向けたインセンティブとなるような方策について検討することが必要である」、中長期的には、「郵政事業を取り巻く環境の変化やこれに応じた国民・利用者が郵政事業に期待するサービスの範囲・水準の変化も踏まえて、ユニバーサルサービスの確保の方策やコスト負担の在り方について継続的に検討していくことが必要」とされています。
答申を受けて実施される政府の施策の内容によっては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、情報通信審議会は郵政事業のユニバーサルサービスコストの試算を行っておりますが、審議会が独自に試算したものであり、当社グループが作成したものではありません。
また、当社及び日本郵便は、それぞれ日本郵政株式会社法及び日本郵便株式会社法に基づき、新規業務、株式の募集、取締役の選解任及び監査役の選解任(当社のみ)、事業計画の策定、定款の変更、合併、会社分割、解散等を行う場合には、総務大臣の認可(ただし、日本郵便の新規業務については総務大臣への届出)が必要とされています。また、金融2社は、銀行法又は保険業法に基づく規制に加え、同種の業務を営む事業者との対等な競争条件を確保するため、郵政民営化法に基づき、新規業務、他の金融機関等の子会社化、合併、会社分割、事業の譲渡及び譲受け、廃業並びに解散等を行う場合には、内閣総理大臣及び総務大臣の認可が必要とされているほか、銀行業における預入限度額規制、生命保険業における加入限度額規制(各限度額規制の詳細については、上記「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3) 事業に係る主な法律関連事項 ③ 郵政民営化法」の記載をご参照ください。)が課される等、同業他社とは異なる規制が課されております。
④ WTO(World Trade Organization:世界貿易機関)による政府調達ルール
公社を承継した機関として、当社、日本郵便、金融2社が政府調達協定その他の国際約束の適用を受ける物品等を調達する場合には、国際約束に定める手続の遵守が求められます。当社グループ各社の作為又は不作為により、かかるこれらのルールを遵守できなかった場合には、調達行為が成立しない、あるいは調達行為に遅れが発生する可能性があり、当初想定していた計画が実施できないなど、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 個人情報その他の機密情報の漏えいに関するリスク
当社グループは、郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業、銀行業、生命保険業等を営んでおり、多くの顧客や取引先等から様々な情報を取得し保有しております。これらの情報については、郵便法、銀行法、保険業法、金融商品取引法等のほか、個人情報の保護に関する法律等に基づき適切に取り扱うことが求められております。
近年、企業・団体が保有する個人情報等の漏えいや不正なアクセス、サイバー攻撃等が多発しております。
当社グループが保有する個人情報その他の機密情報が外部に漏えいした場合には、損害賠償や当該事案に対応するための費用、行政処分、社会的信用の毀損による顧客の喪失等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 訴訟その他法的手続に関するリスク
当社グループは、事業の遂行に関して、訴訟、行政処分その他の法的手続が提起又は開始されるリスクを有しており、一部ではありますが人事処遇や勤務管理などの人事労務上の問題や職場の安全衛生管理上の問題等に関連する訴訟等を、当社グループの従業員等から提起されております。かかる訴訟等の解決には相当の時間及び費用を要する可能性があるとともに、社会的関心・影響の大きな訴訟等が発生した場合、当社グループに対して損害賠償の支払等が命じられる場合等不利な判断がなされた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 不正・不祥事に関するリスク
当社グループは、法令その他諸規則等を遵守すべく、コンプライアンスの水準向上及び内部管理態勢の強化を経営上の最重要課題の一つとして位置づけ、グループ各社の役員・従業員に対して適切な指示、指導及びモニタリングを行う態勢を整備するとともに、不正行為等の防止のために予防策を講じておりますが、かかる態勢・予防策が常に十分な効果を発揮するという保証はなく、当社グループの役員・従業員による法令その他諸規則等の違反、社内規程・手続等の不遵守、不正行為、事故、不祥事等が生じる可能性があります。当社グループにおいては、従業員による顧客預金等の横領等が発覚し、日本郵便及び金融2社が、2009年12月、金融庁、総務省より、内部管理態勢の充実・強化に関する業務改善命令、犯罪の再発防止に関する監督上の命令を受けましたが、当社グループはかかる業務改善命令等を受けて、犯罪の防止に向けた内部管理態勢の強化を図った結果、2015年12月に金融庁の業務改善命令に基づく報告義務が、また、2016年12月に総務省の監督上の命令に係る報告義務がそれぞれ解除されました。当社グループの役員・従業員その他の関係者による違法行為、不正、不祥事、反社会的勢力との取引等が発生した場合には、被害者等に対して損害賠償責任を負い、刑事罰又は監督官庁からの行政上の処分を受ける可能性があるほか、当社グループの社会的信用が毀損するおそれもあります。かかる場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 社会的信用の低下に関するリスク
当社グループは、あまねく全国に広がる郵便局ネットワークを通じて、多数の郵便物・荷物の配達や金融サービスの提供を行っております。
当社グループの商品、サービス、事業、従業員、提携先又は委託先企業に関連して、郵便物の管理上の不備・遅配・誤配及び破棄・紛失等、配達員による交通事故、銀行口座やクレジットカードの不正利用、キャッシュカードの盗難等の犯罪、サイバー攻撃等によるシステム・トラブルや個人情報の漏えい、不正行為、反社会的勢力との取引、労働問題、事故、業務上のトラブル、社内規程・手続違反、不祥事等が発生した場合には、当社グループ及び当社グループ各社が提供するサービスに対する社会的信用が低下し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループ又は当社グループが行っている事業全般に対する風評・風説が、報道機関・市場関係者への情報伝播、インターネット上の掲示板やSNSへの書込み等により拡散した場合、また、報道機関により否定的報道が行われた場合には、仮にそれらが事実に基づかない場合であっても、当社グループが提供するサービスの公益性、事業規模、社会における認知度・注目度等を背景に、当社グループは、顧客や市場関係者等から、否定的理解・認識をされ、又は、強い批判がなされる可能性があり、それにより当社グループ、商品、サービス、事業のイメージ・社会的信用が毀損し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
3.事業運営に関するリスク
(1) 固定費負担に関するリスク
当社及び日本郵便は、郵便の役務、簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務並びに簡易に利用できる生命保険の役務が、利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的に利用できるようにするとともに、将来にわたりあまねく全国において公平に利用できることが確保されるよう、郵便局ネットワークを維持する法律上の義務を負っています(上記「2.法的規制・法令遵守等に関するリスク (1) 法的規制及びその変更に関するリスク ③ 当社グループ固有に適用される規制等」の記載をご参照ください。)。当社及び日本郵便は、かかるユニバーサルサービス提供義務に基づき、郵便、銀行、保険の各サービスを、全国に広がる郵便局ネットワークを通じて全国の顧客に提供しております。そのため、当社グループの郵便・物流事業及び金融窓口事業においては、全国各地の郵便局及び配送拠点等に係る設備費、車両費等の多額の固定費に加え、膨大な数の郵便局員その他の従業員の給与等の人件費が発生しており、労使交渉等により従業員への給与が増額された場合には、それが比較的小さな増額である場合でも、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、高齢化による社会保障負担の増大や厚生年金保険料率、雇用保険料率及び健康保険組合保険料率の引き上げなどによる福利厚生費の上昇も想定されます。
当社及び日本郵便は、今後、地方における過疎化の進展、企業活動又は個人の消費活動の縮小、電子メール等インターネットやウェブサイトを通じた通信手段、金融サービスの普及等を背景に、当社グループが郵便局を通じて提供するサービスの利用が減少した場合であっても(下記「Ⅱ.郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業に関するリスク (2) 郵便物等の減少に関するリスク」の記載をご参照ください。)、ユニバーサルサービスを維持する法的義務があり、収益性の低い事業又は拠点等を縮小する等の対応が制限されているため、かかる方法により固定費を削減することが困難となる可能性があります。従って、上記の事情等により当社グループが郵便局を通じて提供するサービスに対する需要が減少し、郵便物や荷物の取扱数量又は郵便局窓口での金融・保険商品の販売量が減少した場合、当社グループの提供する商品及びサービスの内容、対象若しくは対価を変更し若しくはその提供を中止し、又は、郵便局ネットワークを縮小するなどの対応ができず、又は、制約され、かかる固定費に見合った収益を上げられない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 郵便局等に係る設備の老朽化に関するリスク
日本郵便は、全国各地に所在する郵便局等多数の建物を保有しており、その中には老朽化の進んだ古い建物が多数含まれており、日本郵便はかかる設備等に対して、必要な老朽化対策工事を集中的に行っており、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、老朽化対策工事の対象となる日本郵便の建物の一部には、アスベストが使用されていることが判明しており、今後多くの建物でアスベストの存在が確認され、法令に基づく飛散防止措置としてアスベストの除去を行うことが必要となった場合には、多額のアスベスト除去費用及び関連の工事費用が生じる可能性があります。
(3) リスク管理方針及び手続の有効性に係るリスク
当社グループは、リスク管理に関する規程を定め、リスク管理態勢を整備し、リスク管理を実施しております。しかしながら、当社グループのリスク管理は、過去の経験・データに基づいて構築されているため、将来発生するリスクを正確に予測することができず、新しい業務分野への進出や外部環境の変化等によりリスク管理が有効に機能しない可能性があります。
また、当社グループがリスク管理の方針及び手続を策定する際、参考又は前提とした情報が真実性、正確性、完全性又は合理性に欠ける場合には、当社グループのリスク管理の有効性に悪影響を与える可能性があります。
さらに、当社グループの事業に内在するリスクを管理するためには、膨大な取引や事象の適切な記録、審査、調査等に係る方針及び手続の有効性や効率性等が重要ですが、かかる方針や手続が万全とは言えない可能性があります。
当社グループは、経営環境、リスクの状況等の変化に応じ、リスク管理態勢全般について随時見直しを行い、万全のリスク管理態勢を構築するよう努めておりますが、当社グループのリスク管理態勢が有効に機能しない場合や、欠陥が発生した場合等には、当社が予期していなかった損失を被る可能性や、当社グループ各社が行政処分を受ける可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの事業拡大に伴い、リスク管理態勢の増強も必要となりますが、事業の拡大に比してリスク管理態勢の拡充が十分ではない場合等においては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 情報通信システムに関するリスク
当社グループの郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業、銀行業、生命保険業のそれぞれにおいて、コンピュータシステムは、顧客や各種決済機構等のシステムとサービスの提供に必要なネットワークで接続されるなど極めて重要な機能を担っております。これらについて、地震、噴火、津波、台風、洪水、大雪、火災等の自然災害やテロリズム等の外的要因に加えて、人的過失、事故、停電、ハッキング、コンピュータウィルスの感染、サイバー攻撃、システムの新規開発・更新における瑕疵、通信事業者等の第三者の役務提供の瑕疵等により重大なシステム障害や故障等が発生する可能性があります。こうしたシステムの障害、故障等が生じた場合に、業務の停止・混乱等及びそれに伴う損害賠償、行政処分、社会的信用の毀損、対応や対策に要する費用等が発生することにより、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、基幹ITシステムを含む当社グループのITシステムのアップグレードを行っており、かつ、新規のシステム投資を行うこともありますが、かかる作業の遅延、失敗、多額の費用発生により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 優秀な人材の確保に関するリスク
当社グループにおいては、郵便・物流事業に従事する配達又は運送に係る車両の運転手を必要としておりますが、昨今の労働力不足により十分な数の運転手の確保が困難となる可能性があります。
また、当社グループは、銀行業務、保険業務、保険数理、資産運用、会計、金融業規制、法令遵守、IT等に係る資格、高度の専門性及び経験を有する有能な人材を必要としており、新規採用・中途採用を通じ、人材の確保に努めるとともに、グループ中期経営計画のグループ戦略の一つとして人材育成戦略を掲げ、かかる人材の育成にも努めております。併せて、女性の労働力確保を含め、ダイバーシティ・マネジメントを推進することとしており、多様な社員が個性や能力を十分に発揮し活躍できるよう、制度や環境の整備等に努めております。しかしながら、当社グループが魅力的な条件を提供できず、有資格者や有能で熟練した人材の採用若しくは育成及び定着を図ることができなかった場合、又は、適切な育成環境を整備できない場合や、人事処遇や労務管理等の人事労務上の問題や職場の安全衛生管理上の問題等が発生した場合には、当社グループの事業の競争力若しくは業務運営の効率性が損なわれ、又は人材の多様性を確保することができず、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) グループ外の企業との資本・業務提携・外部委託及び企業買収に伴うリスク
当社グループは、American Family Life Assurance Company of Columbus、ジオポスト、レントングループ、三井住友信託銀行株式会社、野村ホールディングス株式会社等の当社グループ外の企業との間で、様々な業務に関し、資本提携、業務提携、外部委託を行っております。このようなグループ外の資本・業務提携先、外部委託先との間における、戦略上若しくは事業上の問題又は目標の変更や当社グループとの関係の変化等により、期待通りのシナジー効果が得られない可能性も否定できません。このような場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性や当社グループが行った投資を回収できない可能性があります。
また、資本・業務提携先、外部委託先において、業務遂行上の問題が生じ、商品・サービスの提供等に支障をきたす場合、顧客情報等の重要な情報が漏えいする等の事故、違法行為、不正行為、不祥事等が発生した場合等には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが、他の企業を買収するに当たっては、買収先企業や買収先事業を効果的かつ効率的に当社グループの事業と統合できない可能性、買収先企業の重要な顧客、仕入先、その他関係者との良好な関係を維持できない可能性、買収資産の価値が毀損し、損失が発生する可能性などがあります。このような事象が発生した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、トール社の買収に関するリスクについては、「Ⅱ.郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業に関するリスク (4) 国際物流事業に関するリスク ① トール社買収に起因する減損の計上及び同社の買収に関するリスク」の記載をご参照ください。
(7) 業務範囲の拡大等に伴うリスク
当社及び金融2社は、新たな収益機会を得るために新規業務を行う場合、内閣総理大臣及び総務大臣の認可を得る必要があるなど、当社グループによる新規事業の展開を含む業務範囲の拡大には一定の制約が伴います(上記「2.法的規制・法令遵守等に関するリスク (1) 法的規制及びその変更に関するリスク ③ 当社グループ固有に適用される規制等」の記載をご参照ください。)。
例えば、金融2社は新商品又は新サービスの導入にあたって、郵政民営化法に基づく認可を取得する必要がありますが、当該認可が得られない可能性や認可取得のために各社の計画どおりの時期又は内容で新商品を投入又は新サービスを提供できない可能性があります。
また、当社グループが、業務範囲を拡大することができたとしても、限定的な経験しか有していない業務分野に進出した場合、競争の激しい分野に進出した場合や業務拡大により過度の人的・物的負担が生じた場合等において、業務範囲の拡大が功を奏する保証はなく、当初想定した成果をもたらさず、又は損失が発生する可能性があります。
さらに、日本郵便は、アジア市場への展開を中心に、国際的な物流事業を手掛ける総合物流事業者として、事業の収益性を高めるため、トール社の買収、ジオポスト及びレントングループとの事業提携による国際宅配事業への進出など国際的な事業展開を推進しております。しかしながら、当該地域における法制度・税制、経済・政治情勢の悪化、市場成長性の鈍化、競争の激化、為替の変動、伝染病の流行による混乱、海外における業務提携先や取引先との関係の悪化、訴訟・規制当局による行政処分等、海外における事業展開には、これに内在する様々なリスクが存在します。かかるリスクが顕在化した場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、トール社の買収に関するリスクについては、下記「Ⅱ.郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業に関するリスク (4) 国際物流事業に関するリスク ① トール社買収に起因する減損の計上及び同社の買収に関するリスク」の記載をご参照ください。
(8) 中期経営計画に関するリスク
当社グループは「日本郵政グループ中期経営計画~新郵政ネットワーク創造プラン2017~」を策定し、郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業、銀行業、生命保険業等の業務に係る中期的な事業戦略・方針を定めております。
しかしながら、これらの施策については、当社グループの各事業における目標を達成できない可能性があるとともに、本「4 事業等のリスク」に記載の各リスク等が内在しています。また、将来においても、当社グループによる上記施策の実施を阻害するリスクが高まったり新たなリスクが生じたりする可能性もあります。さらに、上記中期経営計画は、国内外の市場金利、為替、株価、経営環境(現在予定されている消費税増税や法人税減税を含みます。)、競争状況、営業費用等多くの前提に基づいて作成されております。当社グループの施策が奏功しなかった場合、又は、当社グループの採用した前提と異なる状況が生じた場合には、当該計画における目標を達成できない可能性があります(既に本書提出日時点において同中期経営計画策定時に想定していた金融市況及び経済情勢等からの乖離が生じています。このうち、市場金利に係る前提と異なる状況の発生(マイナス金利等)については、下記「Ⅲ.銀行業に関するリスク (1) 市場リスク ① 金利リスク」及び「Ⅳ.生命保険業に関するリスク (2) 資産運用に関するリスク ① 国内金利に関する市場リスク」の記載をご参照ください。)。
また、当社は将来的な国際会計基準(IFRS)の適用を検討しており、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
4.財務に関するリスク
(1) 固定資産の減損損失に関するリスク
当社グループは、郵便・物流事業、金融窓口事業及び国際物流事業を中心に、多額の固定資産を所有しております。経営環境の変化や収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなった場合には、減損損失を計上することが必要となり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 繰延税金資産に関するリスク
当社グループは、現行の会計基準に従い、将来の課税所得見積りを合理的に行った上で、貸借対照表において繰延税金資産を計上しておりますが、将来の課税所得見積額の変更や税制改正に伴う税率の変更等により、繰延税金資産の全部又は一部に回収可能性がないと判断した場合、繰延税金資産が減額され、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 退職給付債務に関するリスク
当社グループの退職給付費用及び債務は、将来の退職給付債務算出に用いる年金数理上の前提条件に基づいて算出しておりますが、金利環境の急変等により、実際の結果が前提条件と異なる場合、又は、前提条件に変更があった場合には、退職給付費用及び債務が増加する可能性があります。また、当社グループにおいて退職給付制度を改定した場合にも、追加的負担が発生する可能性があります。その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、従業員の退職が一定期間に集中するような場合には、退職給付金の支払いのために多額の資金が必要となり、その結果、通常業務又は設備投資等への資金充当の柔軟性に制約が生じる可能性があります。
(4) 管理会計等に係る内部管理に関するリスク
本書には、日本の会計基準によらず外部監査を受けていない管理会計等に基づく数値・分析等が含まれております。当社は、これらについても正確性の確保に努めておりますが、有効でない場合等には、当該数値等の信頼性に影響を及ぼす可能性があります。
Ⅱ.郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業に関するリスク
(1) 郵便・物流事業における経営環境の変化に関するリスク
郵便・物流事業においては、近年のeコマース市場の拡大に伴う宅配便需要の急激な増加とこれによる労働力の不足といった経営環境の急激な変化が顕在化しており、他の主要な物流事業者等においては、基本運賃や大口顧客向け特約運賃の値上げを含む契約条件の改定、配達時間帯や再配達に係るサービス内容の見直し、労働環境又は労働条件の改善のための取り組みを行っているものも見受けられます。当社グループがこのような経営環境の変化に適時かつ適切に対応できなかった場合、当社グループの競争力、収益性、人材の確保等に影響し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 郵便物等の減少に関するリスク
電子メール、SNSやスマートフォンの普及に加え、当社グループの顧客におけるコスト削減を目的とした、請求書や取引明細書等の電子メール送信・WEB閲覧の浸透等の影響により、郵便物数は年々減少を続けており、今後もかかる傾向は継続することが予想されます。また、当社グループの郵便・物流事業における重要な収益の柱となっている年賀状の配達数も年々減少傾向にあり、国民の生活様式や社会慣行の変化等の要因により、今後も減少傾向が進む可能性があります。また、日本郵便は、人件費単価の上昇や、大型の郵便物等の増加を背景とした持戻り・再配達の増加等に伴い、2017年6月1日付で、第二種郵便物及び定形外郵便物の料金並びにゆうメールの運賃の改定を行いました。今般又は将来の郵便料金等の改定により、当社グループが取り扱う郵便物等の数に影響を及ぼす可能性があります。これらの事情により、当社グループの郵便・物流事業において取り扱う郵便物等の数が減少し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 金融2社からの金融窓口業務の受託に関するリスク
日本郵便が金融2社との間で締結している銀行窓口業務契約等及び保険窓口業務契約等に基づく2017年3月期における各社からの受託手数料は、それぞれ6,124億円及び3,927億円であり、それぞれ当社グループの金融窓口事業セグメントにおける経常収益の約44%及び約28%を占めており、かかる受託手数料は今後も当社グループの金融窓口事業における収益の重要な部分を占めることとなるものと考えられます。受託手数料は、銀行法・保険業法に定められたアームズレングスルール等を遵守することが求められており、恣意的な変更が行われることは想定しておりませんが、今後、上記各窓口業務契約等が、合理的な理由に基づき受託手数料の額を減額する又は対象となる業務の範囲を限定する等、日本郵便にとって不利に改定された場合には、当社グループの金融窓口事業における収益に影響を与える可能性があります。また、特にゆうちょ銀行から受け取る受託手数料については、ゆうちょ銀行の直営店での業務コストをベースに、日本郵便での取扱実績に基づいて委託業務コストに見合う額が算出されるため、ゆうちょ銀行において業務コストの削減が行われた場合には、当社グループの金融窓口事業における収益に影響を与える可能性があります。さらに、これらの受託手数料の一定部分は、日本郵便において取り扱われた業務の量にかかわらず一定の計算方法により算定されるものとされていますが、今後仮に金融2社が日本郵便における業務量に比例する受託手数料の割合を高めようとする場合には、当社グループの金融窓口事業における収益に影響を与える可能性があります。
当社グループとしては、今後も簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務並びに簡易に利用できる生命保険の役務が、利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的に利用できるようにするとともに、将来にわたりあまねく全国において公平に利用できることが確保されるよう、日本郵便と金融2社との関係を引き続き強化していく所存であり、当社が金融2社の株式を処分したことにより当社による両社への影響力が低下・消滅した場合においてもこの関係は変わるものではないと当社としては考えております。しかし金融2社はユニバーサルサービスの提供に係る法的義務を負うものではなく(上記「Ⅰ.当社グループ全般に関するリスク 2.法的規制・法令遵守等に関するリスク (1) 法的規制及びその変更に関するリスク ③ 当社グループ固有に適用される規制等」の記載をご参照ください。)、金融2社が、郵便局ネットワークに代替する販売チャネル(例えば、ATMの相互利用、オンライン取引、グループ外の企業への委託を含みますがこれらに限られません。)をより重視するようになった場合等や、窓口業務の健全・適切な運営確保の観点から特段の事由が生じた場合等、銀行窓口業務契約等及び保険窓口業務契約等の解除が発生した場合には、当社グループの金融窓口事業の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 国際物流事業に関するリスク
① トール社買収に起因する減損の計上及び同社の買収に関するリスク
日本郵便は2015年5月に、トール社の発行済株式のすべてを買収総額6,093億円で取得いたしましたが、資源価格の下落並びに中国経済及び豪州経済の減速等を受けて、2017年3月期のトール社の業績が大きく悪化したことに伴い、当社の2017年3月期の連結決算において、国際物流事業に係るのれん及び商標権の全額3,923億円並びに有形固定資産の一部80億円(合計4,003億円)の特別損失(減損損失)を計上いたしました。上記「3 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 経営環境及び対処すべき課題 ③ 国際物流事業」に記載のとおり、このような状況を受け、当社グループでは、2017年1月にトール社の経営陣を刷新し、人員削減や部門の統廃合等によるコスト削減施策を中心に、トール社の業績回復・将来の成長への基盤を整えるための対策を講じているところですが、かかる経営改善策が功を奏せず、トール社の業績が改善しない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、トール社はこれまで複数のM&Aを行い、事業統合を実施している過程にありますが、当社グループとの事業統合も含め統合が予定通り進捗しない場合には、複数のビジネス・ユニットによる取引先の競合やオペレーションの重複等が解消されないこと、複雑な業務及び設備、並びに異なる地理的エリアに存する多様な企業風土と異なる言語に基づく従業員を十分に管理できないこと、トール社と競合関係にある同業他社が、トール社より優れた革新的な商品、サービスを提供することで、トール社のマーケットシェア及び利益が低減すること、自然災害、事故等により、基幹ITシステム、主要な輸送手段、倉庫が損害等を受けること、更には、買収時に発見できなかった問題が発生すること等により、当社グループとして想定した買収効果を得ることができない可能性や当社グループ又はトール社の既存事業に負の効果を及ぼす可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、上記のとおり、2017年3月期においてトール社の買収にかかるのれん及び商標権については全額減損損失を計上したことにより、のれん及び商標権に関して追加の減損損失が発生することはありませんが、今後トール社の業績が更に悪化する場合には、トール社の保有する物流設備その他の固定資産についても減損損失を計上し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、このような当社グループの国際的な事業展開に伴うリスクについては、「Ⅰ.当社グループ全般に関するリスク 3.事業運営に関するリスク (7) 業務範囲の拡大等に伴うリスク」の記載もご参照ください。
② 資源価格の下落及び豪州経済の減速等に関するリスク
国際物流事業におけるトール社の事業は、豪州国内物流事業、国際フォワーディング事業及びコントラクト事業(3PL)に区分されるところ、特に豪州国内物流事業の業績は、資源価格を中心とする豪州経済による影響を大きく受けております。今後も豪州経済の低迷が継続し、又は更に悪化した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ トール社に適用される規制等
国際物流事業を担うトール社は、豪州を中心に、アジア太平洋地域等におけるフォワーディング、コントラクト物流(3PL)等の国際的な事業活動を行っており、各国・地域の事業許可や租税に係る法・規制、運送、貿易管理、贈収賄防止、独占禁止、為替規制、環境、各種安全確保等の法・規制の適用を受けております。法令等の改正や新たな法規制等により、当社グループの競争条件が悪化したり、事業活動の一部が制限又は変更を余儀なくされた場合は、新たな対応費用の増加、収益機会等の喪失等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 為替変動のリスク
国際物流事業を担うトール社の連結財務諸表は外貨建て(豪ドル)で作成されていることから、大幅な為替相場の変動が生じた場合、外貨建ての資産・負債等が当社の連結財務諸表作成のために円換算される際に為替相場の変動による影響を受けるため、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 金利変動のリスク
トール社は、継続的に設備投資等を行っており、投資にあたっては自己資金を投入しているほか、金融機関からの借入等に依存する割合も少なくありません。トール社による金融機関からの借入等の利息は、将来の金利動向によっては資金調達コストの上昇による影響を受け、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 不動産事業に関するリスク
当社グループは、金融窓口事業において、事務所・商業施設・住宅等の賃貸・管理事業のほか、分譲住宅事業等の不動産事業を営んでおり、営業・投資を目的とする不動産を所有しております。しかし、国内外の景気動向又は特定地域の経済状況や人口動向等の変化により、不動産価格や賃貸料が下落し、又は、空室率が上昇する可能性があります。さらに、当社グループが保有する不動産を活用した不動産開発においては、法的規制の変更、建築資材の価格や工事労務費の高騰、大規模災害等の発生等の影響を受ける可能性があります。これらの事象により、当社グループの不動産事業の収益や費用に影響を及ぼし、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
Ⅲ.銀行業に関するリスク
(1) 市場リスク
ゆうちょ銀行が保有する金融資産・負債の多くは、市場の変動による価値変化等を伴うものであります。ゆうちょ銀行では、中期的に安定的収益の確保を図ることを目的に、資産・負債を総合管理するALM(Asset Liability Management)の他、ストレス・テストや損益シミュレーション等を実施することにより、市場リスク等を適切に管理するよう努めておりますが、大幅な市場変動等によりかかる管理が十分に機能しない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があり、また、中期的な安定的収益の確保を目的とした外国証券、オルタナティブ投資等への運用の高度化・多様化が、目的に即した結果を生まない可能性もあります。
① 金利リスク
ゆうちょ銀行が保有する日本国債(2017年3月末日現在、68.8兆円・ゆうちょ銀行の総資産額の32%)を始めとする金融資産と、定額貯金を始めとする貯金や外貨を含む市場性調達の負債の期間や金利更改サイクル等には、差異が存在します。このため、金利(長期や短期の金利)の変動は、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、2016年1月の日本銀行による「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」政策や同年9月21日の金融政策決定会合で導入が決定された「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」政策の影響等により、当連結会計年度末現在において、日本国債の一部の金利がマイナスとなる等市場金利は非常に低い水準にあり、さらに、今後の金融政策の動向によりかかる金利水準が長期に亘り継続し又は低下する場合、運用収益の減少に比して、相対的に貯金の調達コストが減少しないことにより、資金粗利鞘が減少し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、市場金利の変動は、日本国債を始めとするゆうちょ銀行の債券ポートフォリオ等の価値に影響を及ぼします。例えば、国内外の景気変動、中央銀行の金融政策、日本国政府の財政運営やその信認の変化等、様々な要因により市場金利が上昇した場合、保有する債券等の価値下落によって評価損・減損損失や売却損等が生じ、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
加えて、定額貯金(2017年3月末日現在、101.2兆円・総貯金額の56%(特別貯金(民営化前に預入された定額郵便貯金相当)を含む。)。預入から6か月経過後は払戻し自由、3年までは6か月ごとの段階金利、それ以降は固定金利の10年満期・複利貯金)について、急激な市場金利上昇等により、事前のリスク管理の想定を超える貯金流出や預け替えが発生した場合にも、計画以上の運用原資の減少や調達コストの上昇を通じて、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 為替リスク
ゆうちょ銀行は、収益源泉・リスクの分散を目的に、運用の高度化・多様化の一環として国際分散投資を進め、外国証券の保有が増加(2017年3月末日現在、その他の証券(外国債券や主な投資対象が外国債券である投資信託等で構成)は52.9兆円・ゆうちょ銀行の総資産額の25%)しておりますが、外貨建て資産の一部については為替リスクを軽減するヘッジを行わない、又は短期のヘッジを行うことがあります。その結果、大幅な為替相場の変動が発生した場合、ヘッジしていない部分に差損が発生し、又はヘッジコストが上昇すること等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 株式価格変動リスク
ゆうちょ銀行は、直接又は金銭の信託や投資信託を通じて間接的に、市場性のある株式を保有することがあることから、国内外の経済状況又は市場環境の悪化や低迷等によって株価が低下する場合には、保有株式に評価損・減損損失や売却損等が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 市場流動性リスク
経済状況の著しい悪化や金融市場の混乱、銀行・金融業界全体の社会的信用や信認が低下する場合等には、ゆうちょ銀行が国内外の市場で取引・決済ができなくなることや、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされること等により、損失を被る可能性があります。その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 資金流動性リスク
ゆうちょ銀行の業績や財政状態の悪化、風評等の発生や、予期せぬ資金流出、運用と調達の期間のミスマッチ(差異)等、また、ゆうちょ銀行の収益力・信用力の低下、日本国債の格下げ等の影響を受けたゆうちょ銀行の格付の引き下げにより、円貨・外貨の必要資金確保が困難になる、又は、通常よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより、損失を被る可能性があります。その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 信用リスク
ゆうちょ銀行の取引先や、ゆうちょ銀行が保有する社債等の負債性証券の発行者その他の投資先、貸出先の債務者等において、国内外の経済情勢(景気・信用状況等)や特定の業種を取り巻く経営環境の変化、不祥事等の発生、その他不測の事態により、財政状態が急激に悪化する可能性があります。その結果、ゆうちょ銀行の与信関係費用が増加、ゆうちょ銀行が保有する負債性証券等の価値が下落すること等により、当社グループの事業、業績、財政状態及び自己資本の状況に影響を及ぼす可能性や、中期的な安定的収益の確保を目的とした外国証券への運用、プライベート・エクイティその他のオルタナティブ投資等、運用の高度化・多様化が、目的に即した結果を生まない可能性があります。
(5) オペレーショナル・リスク等
ゆうちょ銀行の業務においては、事務リスク、システムリスク、情報資産リスク、訴訟等に係るリスク、人事リスク、レピュテーショナル・リスク、法令違反等に係るリスク、災害リスク等のオペレーショナル・リスクが存在します。ゆうちょ銀行が、これらのオペレーショナル・リスクを適切に管理できず、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 代理店を通じた営業に係るリスク
ゆうちょ銀行は、銀行代理業務の委託契約等に基づき日本郵便に銀行代理業務等を委託しています。ゆうちょ銀行の店舗24,060店舗(2017年3月31日現在)のうち23,826店舗が代理店(郵便局)となっており、ゆうちょ銀行の貯金残高の約9割が代理店で開設された口座への預入による等、ゆうちょ銀行の事業は、代理店である日本郵便の郵便局ネットワークによる営業に大きく依拠しています(下記「5 経営上の重要な契約等」をご参照ください。)。
従って、コミュニケーション手段の多様化、競合するネットワークやサービスの利便性向上等により、ゆうちょ銀行の代理店である郵便局の利用者数や利用頻度が減少したり、代理店で取り扱うゆうちょ銀行の商品・サービスの種類や代理店数が減少した場合、また、ゆうちょ銀行の代理店業務に従事する従業員の確保やその教育が十分でない場合、郵便局で取り扱う競合商品との競争が激化する場合、日本郵便が人材等のリソースをゆうちょ銀行の商品・サービス以外に優先的に配分する場合等においては、ゆうちょ銀行の貯金等や新商品等の販売が伸びず、当社グループの銀行業における業務及び業績に影響を及ぼし、結果として当社グループの事業、業績及び財政状態にも影響を及ぼす可能性があります。
また、ゆうちょ銀行は、上記の銀行代理業務の委託契約等に基づき、相当額の委託手数料を日本郵便に対して支払っておりますが、当該委託手数料の算定方法その他の条件がゆうちょ銀行と日本郵便との間の合意により見直されたり、当該契約等が解除され代替委託先等を適時に確保できない場合、当社グループの銀行業における業務及び業績に影響を及ぼし、結果として当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 事業環境等に係るリスク
① ユニバーサルサービスの提供に係るリスク
ゆうちょ銀行は、日本郵便との間で銀行窓口業務契約を締結しており、日本郵便は全国の郵便局で、ゆうちょ銀行の基本的な商品・サービスを、日本郵便株式会社法に基づくいわゆるユニバーサルサービス提供に係る法的責務の履行として提供しています(下記「5 経営上の重要な契約等」をご参照ください。)。ゆうちょ銀行は、法令上この責務を直接負わないものの、郵便局で使用するATM・窓口端末機など銀行委託業務に係るITシステムの導入・運行コストとともに(なお、当該ITシステムはゆうちょ銀行が所有)、同業務に従事する日本郵便の従業員の指導・教育等を通じ、ユニバーサルサービス提供に係る一定のコストを負担しております。
なお、銀行窓口業務契約は、期限の定めがなく、また、本契約に定める特段の事由が生じた場合等を除き、当事者の合意がない限り、解除できないものと定めています。また、ゆうちょ銀行の定款には、日本郵便と銀行窓口業務契約を締結する旨規定しているため、当該契約を終了させる場合には、ゆうちょ銀行の定款の変更を要します。従って、日本郵便がユニバーサルサービスの提供責務を果たすために必要と考える限り、ゆうちょ銀行は、各郵便局でゆうちょ銀行の基本的な商品・サービスの提供を継続することとなり、その結果、より収益性の高い業務や地域への経営資源配分が制約されること等により、当社グループの銀行業における業務及び業績に影響を及ぼし、結果として当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 経済・社会情勢、市場に係るリスク
ゆうちょ銀行が行う当社グループの銀行業は、その収益の多くが日本国内での貯金調達や国内外での有価証券運用によって得られており、国内外の景気・信用状況や人口動態等の経済・社会情勢、金利・為替等の市場の変動・悪化が、当社グループの銀行業における業績及び財政状態に影響を及ぼし、結果として当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。例えば、消費税率の引き上げによる家計の可処分所得の低下や、少子高齢化に伴い、日本の貯蓄率・預金水準が低下し、ゆうちょ銀行の貯金残高が減少する可能性があります。また、国内外の金融市場に混乱等が生じた場合、ゆうちょ銀行の事業の低迷や資産内容の悪化、資金調達力・資産流動性の低下等が生じる可能性があります。このような場合、中期的な安定的収益の確保を目的とした運用の高度化・多様化が、目的に即した結果を生まない可能性もあります。
(8) 事業戦略・経営計画に係るリスク
ゆうちょ銀行は、郵便局ネットワークをメインチャネルとして、お客さま満足度No.1のサービスを広く国民各層に提供する「最も身近で信頼される銀行」、また、適切なリスク管理の下で運用の高度化・多様化を推進し、安定的収益を確保する「本邦最大級の機関投資家」を目指しております。
しかしながら、これらに向けたゆうちょ銀行の事業戦略・経営計画は、各種のリスクにより実施が困難となり、又は有効でなくなる可能性があります。また、事業戦略・経営計画の策定時に前提とした各種の想定が想定通りとならないこと等により、当初計画した成果が得られない可能性もあります。特に、市場(金利・為替等)・経済情勢(景気・信用状況等)等が計画策定時の想定通り安定推移しなかった場合、例えば、市場金利の低下による運用利回りの減少によってベース・ポートフォリオの収益計画が達成できない可能性や、国際分散投資等の高度化・加速、サテライト・ポートフォリオの拡大を継続していく中で、適切なポートフォリオ分散を達成できない可能性、より高いリスクを有する運用資産の増加によって価格変動リスクを受けやすくなり、ゆうちょ銀行の事業、業績及び財政状態に及ぼす影響が大きくなる可能性があります。さらに、2017年3月期第2四半期以降に満期が集中している定額貯金の再預入や、投資信託の販売、運用・リスク管理・営業等の人材確保・育成が、想定通り進捗しなかった場合、総預かり資産の拡大等の計画が達成できなくなる可能性があります。
Ⅳ.生命保険業に関するリスク
(1) ユニバーサルサービスの提供に関するリスク
上記「Ⅰ.当社グループ全般に関するリスク 2.法的規制・法令遵守等に関するリスク (1) 法的規制及びその変更に関するリスク ③ 当社グループ固有に適用される規制等」のとおり、郵政民営化法上、当社及び日本郵便は、ユニバーサルサービスの提供義務を負っており、日本郵便は、郵政民営化法上のかかる規定を遵守するため、かんぽ生命保険と生命保険募集・契約維持管理業務委託契約及び保険窓口業務契約を締結してかんぽ生命保険の保険代理業務を受託し、全国の各郵便局において、かんぽ生命保険の商品及びサービスを提供しております(下記「5 経営上の重要な契約等」をご参照ください。)。特に、保険窓口業務契約は、期間の定めのない契約であり、特段の事情がない限りかんぽ生命保険から一方的に解除することはできないこととされております。また、かんぽ生命保険の定款上、かんぽ生命保険は日本郵便との間で、保険窓口業務契約を締結する旨の規定が存在し、当該契約を終了させる場合にはかんぽ生命保険の定款変更が必要となります。従って、かんぽ生命保険が日本郵便との間の保険窓口業務契約を終了させるには、これらの手続等を充足する必要があります。
このように、かんぽ生命保険が、ユニバーサルサービスの提供義務を負う日本郵便との間で、解除することが困難な保険窓口業務契約を締結することで、日本郵便がユニバーサルサービスを提供する上での関連保険会社としての地位を維持する契約上の義務を負うため、当社グループの生命保険事業における柔軟な事業展開が困難となり、結果として当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 資産運用に関するリスク
① 国内金利に関する市場リスク
かんぽ生命保険では、保険契約の引受けによって生じる負債に見合った運用資産を適切に管理し、損益の安定を図る目的で、資産と負債のバランスを考慮してリスクコントロールを行う、ALM(Asset Liability Management:資産・負債の総合的な管理)を行っております。かんぽ生命保険がALMを適切に行えなかった場合又はかんぽ生命保険のALMによって対処可能な程度を超えて市場環境が大きく変動した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
特に、かんぽ生命保険の資産構成においては、円金利資産の割合が高く、かんぽ生命保険の契約者に対する債務のデュレーションが運用資産より長期であることから、資産と負債のデュレーションのミスマッチによる国内金利の変動リスクを有しております。
具体的には、2016年2月の日本銀行によるマイナス金利政策導入以降、低金利環境が継続しておりますが、かんぽ生命保険が既に保有している保険契約の予定利率は変わらないことから、当初想定していた運用収益が確保できない、あるいは逆ざや(資産運用ポートフォリオの平均運用利回りが既契約の責任準備金の積立てに用いた予定利率を下回る現象)となる可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、国内金利が現在の水準より上昇した場合には、資産運用利回りが上昇することにより、利息収入などの収益が向上する一方、債券価格の下落等による評価損・減損が発生する可能性があります。加えて、保険契約者がより高い収益を得られる別の金融商品へ資金を移動させることにより、保険契約の解約が増加する可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② ①以外の市場リスク
かんぽ生命保険の保有する外貨建資産に係る為替リスクがヘッジされていない部分について、為替相場の変動が発生した場合や、為替リスクをヘッジしていたとしても、国内外の金利差拡大によりヘッジコストが高まり、これまでの条件でロールによる為替予約ができなくなった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、外国金利の変動により、かんぽ生命保険の保有する外国証券の価値が下落した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、かんぽ生命保険は市場性のある株式を保有していることから、株価が下落した場合には、保有株式に評価損や売却損が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 信用リスク
かんぽ生命保険の取引先・投資先・かんぽ生命保険が保有する負債性証券の発行者において、国内外の景気動向や特定の業種を取り巻く経営環境の変化、不祥事の発生、国家間紛争等その他不測の事態により、財政状態が悪化した場合には、信用リスク及び与信関係費用が増加し、又はかんぽ生命保険が保有する負債性証券の価値が下落すること等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 市場流動性・資金繰りに関するリスク
① 市場流動性リスク
金融市場の混乱等により、市場において正常に金融商品の取引・資金決済ができなくなった場合や、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされることになった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、国内外の金融市場及び経済状況の悪化等により、市場の流動性が減退した場合は、かんぽ生命保険の保有する資産の売却可能性や価値が減少する可能性があります。
② 資金繰りリスク
かんぽ生命保険の財務内容の悪化等による新契約の減少に伴う保険料収入の減少、大量解約に伴う解約返戻金支出の増加、巨大災害に伴う保険金の大量支払による資金流出等により資金繰りが悪化し、資金の確保に通常よりも著しく低い価格での資産売却を余儀なくされることにより損失を被った場合には、当社グループの業務運営、事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 商品の集中に関するリスク
かんぽ生命保険の取り扱う商品は、個人向け生命保険に集中しております。個人向け生命保険については、国内の雇用水準及び家計所得水準、代替商品であるその他の商品に対する相対的魅力、保険会社の財務健全性、社会的信用に対する一般的な認識、出生率及び高齢化等日本の人口構成に影響を与える長期的な人口動態等の要因が、新規契約数や既存契約の解約率に影響を与え、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 日本の人口動態に関するリスク
1965年代半ば以降、日本の出生率は総じて徐々に低下する傾向にあり、現在は世界で最低の水準にあります。これらの結果、15歳から64歳までの人口は減少傾向が続いており、この傾向が、日本国内における生命保険の総保有契約高の減少の主要な要因であると考えております。また、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、15歳から64歳までの人口は、今後も減少し続けるであろうと予測しております。かんぽ生命保険の顧客基盤は中高年層に強みがありますが、もし、これらの傾向が続き、青壮年層における生命保険に対する需要が減少する場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 保険料設定に関するリスク
かんぽ生命保険は、保険の種類及び内容、契約時の被保険者の年齢、性別、保険金額等を考慮して、計算基礎率(予定死亡率、予定利率、予定事業費率)等に基づいて保険料を設定しておりますが、実際の死亡率が事前に設定した予定死亡率を超過した場合、実際の運用利回りが事前に設定した予定利率を下回った場合、実際の経費が事前に設定した予定事業費を超過した場合には、保険期間中の保険料等の受取総額を、保険金・経費等の支払総額が上回ることにより損失が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
他方、かんぽ生命保険は、標準利率の引下げ等を受け、2016年8月及び2017年4月に商品の予定利率を引き下げ、保険料の値上げを実施しておりますが、今後も保険料の値上げを行う可能性があります。かかる保険料の値上げにより、かんぽ生命保険による新契約獲得数が減少する場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 責任準備金の積立に関するリスク
かんぽ生命保険は、日本の生命保険会社として、保険業法及び関連業規制に基づき、保険料収入の大部分を、責任準備金として将来の保険金等の支払いに備えて積み立てております。責任準備金は、かんぽ生命保険の負債の最も大きな部分を占めているものであり、各保険契約の保障対象となる事象の起こる頻度や時期、保険金等支払額、資産運用額等につき一定の前提を置き、これらに基づく見積りによって計算されるものであります。これらの前提と実際の結果が乖離した場合や環境の変化により将来乖離が見込まれる場合には、責任準備金の積増しが必要となる可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、責任準備金の積立水準に関するガイドラインや標準利率・標準生命表は、規制当局である金融庁等によって定められているものですが、これらに変更があった場合には、保険料見直しや責任準備金の積増しが必要となる可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 契約者配当準備金に関するリスク
かんぽ生命保険が確保すべき契約者配当準備金は費用として扱われ、これにより各事業年度における純利益が減少します。かんぽ生命保険は契約者配当準備金の繰入額の決定について裁量を有しており、その水準については、かんぽ生命保険商品の競争力、業績、ソルベンシー・マージン比率等の様々な要素を考慮して判断しておりますが、その水準によっては、かんぽ生命保険株主への配当原資の額、事業、業績及び財政状態又はかんぽ生命保険の株式価値に影響を及ぼす可能性があります。
なお、かんぽ生命保険が管理機構から受再している簡易生命保険契約については、「旧簡易生命保険契約に基づく保険責任に係る再保険契約」において、かんぽ生命保険が引き受けた保険契約と区分してその収益及び費用を経理するものとし、簡易生命保険契約の再保険損益の8割を契約者配当準備金に繰り入れることとしております。また、再保険配当の計算方法の変更の必要性について、毎事業年度、管理機構とかんぽ生命保険間で協議することとされておりますが、本契約締結以降、当該計算方法が変更されたことはなく、当連結会計年度末現在において変更の予定もありません。
(9) 保険金の支払いに関するリスク
かんぽ生命保険は、正確・迅速な保険金等のお支払いが生命保険会社の根幹業務であるとの認識の下、支払管理態勢の強化、お客さまサポートの充実に取り組んでおりますが、何らかの理由により、規制当局又はかんぽ生命保険が支払管理態勢の強化が不十分であると判断した場合には、各種改善策を講じる可能性があり、当社グループの社会的信用、事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10) オペレーショナルリスク
かんぽ生命保険の業務においては、事務リスク、システムリスク、情報漏えいリスク、コンプライアンス違反、不正・不祥事に関するリスク、従業員、代理店、業務委託先、保険契約者等の不正により損害を被るリスク等のオペレーショナルリスクが存在します。かんぽ生命保険がこれらのオペレーショナルリスクを適切に管理できず、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業務運営、社会的信用、事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 生命保険契約者保護機構への負担金及び国内の他の生命保険会社の破綻に係るリスク
かんぽ生命保険は、生命保険契約者保護機構(以下「保護機構」といいます。)への負担金支払義務を負っております。保護機構は、破綻した生命保険会社の保険契約者を保護することを目的としており、破綻した生命保険会社から他の生命保険会社へ保険契約を移転する際に、資金援助を実施しております。保護機構への負担金額は保険料収入及び責任準備金の額などに応じて決められるため、かんぽ生命保険の保険料収入及び責任準備金の額が他の生命保険会社に比して増加した場合、負担金が増加する可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、日本の他の生命保険会社の破綻は、日本の生命保険業界全体の評価にも悪影響を与え、保険契約者の生命保険業界全体に対する信用を損ない、これにより当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(12) 格付けの低下に関するリスク
かんぽ生命保険は、格付会社より格付けを取得しておりますが、かんぽ生命保険の財務内容の悪化等により格付けが引き下げられた場合、新規契約の減少、既存契約の解約の増加等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
Ⅴ.宿泊事業・病院事業に関するリスク
当社の営む宿泊事業及び病院事業においては、自然災害、事故、火災、食中毒等から生じる潜在的な損失の発生、損害賠償責任、行政処分等のリスクを内包しています。
また、少子高齢化に伴う近時の医療費削減の流れは、病院事業の収益性に影響を及ぼす可能性があります。
宿泊事業・病院事業について、近年継続して営業損失を計上していることから、個々の施設(又は病院)の状況を踏まえ、増収対策や経費削減による経営改善を進めていることに加え、宿泊事業においては施設配置の見直しも行ったところですが、今後も厳しい状況が続く見通しです。
Ⅵ.郵政民営化に関するリスク
2015年11月4日に、日本国政府及び当社は、グローバル・オファリングにより、それぞれが保有する当社の株式及び金融2社の株式について、その発行済株式(ゆうちょ銀行については、自己株式を除きます。)の約11%の売出を行いました。また、当社は、2015年10月19日開催の取締役会決議に基づき、同年12月3日に、自己株式の取得を実施しました。その結果、当連結会計年度末現在において、日本国政府は当社の発行済株式の約80%(自己株式を除く議決権割合は約88%)を、当社はゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の発行済株式のそれぞれ約74%(自己株式を除く議決権割合は約89%)及び89%を保有しています。
郵政民営化法に基づき、日本国政府が保有する当社の株式は、できる限り早期に処分するものとされており(ただし、日本国政府による当社株式の保有割合は常に3分の1を超えるものとされております。)、また、当社が保有する金融2社の株式についても、金融2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、その全部をできる限り早期に処分するものとされております。当社では、上記趣旨に沿って、まずは、金融2社株式の保有割合が50%程度となるまで、段階的に売却することとしています。
以下では、かかる日本国政府による当社株式の売却と、当社による金融2社株式の売却に起因する当社グループの事業等のリスクのうち主要なものを記載しております。
(1) 持分の減少による連結業績への影響並びに事業の規模及び範囲の縮小に関するリスク
2017年3月期におけるゆうちょ銀行の営む銀行業及びかんぽ生命保険の営む生命保険業におけるセグメント利益及びセグメント資産の各合計額は、当社グループのセグメント利益及びセグメント資産の各合計額(「その他」に区分されるものを除きます。)のそれぞれ約90%及び約98%を占めております。郵政民営化法に基づき、当社が金融2社の株式を処分した場合、当社の連結財務諸表の親会社株主に帰属する当期純利益及び非支配株主持分を除く純資産の額に反映される金融2社の純利益及び純資産の額が、減少することになります。金融2社の議決権の過半数を保有している間は連結対象となりますが、当面の処分方針に従い保有割合が50%程度となるまで売却し、金融2社の議決権の過半数を保有しないこととなった場合には、連結対象となるかについて他の要件とも併せて検討することとなります。なお、金融2社が連結対象から外れた場合、連結貸借対照表上、金融2社の資産、負債を合算しなくなるため、当社グループの資産、負債の規模が減少することになります。さらに、金融2社が持分法適用関連会社からも外れた場合は、金融2社株式は「その他有価証券」となり毎期時価で評価することになり、原則として評価差額は「その他有価証券評価差額金」として純資産に計上することになります。
なお、当社の連結財務諸表に対する金融2社の収益・利益が与える影響については、以下のとおりと想定しております。
① 金融2社持分比率が50%を超える場合、及び金融2社持分比率が40%~50%で当社連結対象となる場合
金融2社の収益が当社連結収益に寄与します。また、金融2社の利益が持分比率に応じて当社連結利益に寄与します。
② 金融2社持分比率が20%~50%で持分法適用となる場合
金融2社の利益が持分比率に応じて当社連結利益に寄与します。
③ 金融2社持分比率が20%未満の場合
金融2社からの配当収入があれば、当該収入が当社連結収益・利益に寄与します。
また、上記のとおり、当社が保有する金融2社の株式は、金融2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、その全部をできる限り早期に処分するものとされているところ、当社が金融2社の株式を処分しその持分が低下するにつれて、当社グループの事業は、金融2社以外の事業に集中することになり、当該各事業における収益の悪化が、当社グループの事業、業績及び財政状態に、より影響を及ぼすことになります。また、金融2社に対する持分が低下又は消滅することにより、当社グループの財務の健全性又はキャッシュ・フローが悪化し、当社グループの資金調達能力が制限される可能性があります。
当社は、金融2社株式の売却手取金を有効に活用し企業価値の向上に努める所存ですが、金融2社からの配当収入に代わる利益を得られない場合には、当社の配当原資が確保できないおそれがあり、また上記の金融2社の当社連結利益への影響の低下を通じて当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 議決権割合の減少による影響力の低下及び少数株主との利益相反に関するリスク
当社は、2015年11月4日の金融2社株式の売出しの実施後においても、金融2社の議決権を保有する親会社であり、当社の利益とその他の少数株主の利益は相反する可能性があります。会社法上、取締役及び執行役は、会社及び少数株主を含む総株主の利益のために業務を行う義務を負っているため、金融2社における意思決定は、常に当社の意向に沿った、又は、当社グループの利益に資するものとなるとは限りません。また、当社が金融2社の株式の2分の1以上又は3分の1超を処分した場合には、株主総会における普通決議又は特別決議を要する事項につき、当社が単独で可決することができなくなる可能性があります。
また、当社は、2018年3月期末までの間は連結配当性向50%以上を目安に、安定的な1株当たり配当を目指してまいりますが(下記「第4 提出会社の状況 3 配当政策」の記載をご参照ください。)、当社の配当の原資は金融2社からの配当収入に依存しており、当社が金融2社の株式を処分することにより当社の金融2社の意思決定に及ぼす影響力が低下した場合等においては、当社は金融2社から当社の期待する配当収入を得られる保証はありません。
従って、当社が金融2社の株式を処分することにより、当社の金融2社に対する議決権割合が減少した場合には、当社が金融2社の意思決定に及ぼしうる影響はその処分割合に応じて限定的となり、金融2社の意思決定は、当社グループの意向に沿った、又は、当社グループの利益に資するものとはならない可能性があります。
(3) 日本国政府との関係が希薄化することに関するリスク
金融2社は、その唯一の株主を当社、当社の唯一の株主を日本国政府とする上場前の状態にあっても、日本国政府その他の公的機関から何らの保証その他の信用補完を受けていたわけではありませんが、当社が金融2社の親会社ではなくなることに伴い、金融2社と日本国政府との関係が弱まった場合には、顧客等が、金融2社の経済的信用力が低下した、又は、ゆうちょ銀行の貯金及びかんぽ生命保険の商品のリスクが上昇したという誤認や錯誤を有することとなる可能性があります。実際の金融2社の経済的信用力等とは無関係であるにも関わらず、かかる誤認や錯誤が社会に広く伝播した場合等においては、顧客等によるゆうちょ銀行の既存貯金の引き出し又は貯金の減少、かんぽ生命保険との新規契約の差し控えや既存契約の解約、その他金融2社との取引量の低下を招き、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 日本国政府との利益相反に関するリスク
当連結会計年度の末日現在において、日本国政府は当社株式の議決権(自己株式を除く。)の約88%を保有しており、日本国政府は当社の株主総会において、普通決議事項及び特別決議事項のいずれについても、単独で可決することが可能です。また、当社及び日本郵便は、日本郵政株式会社法及び日本郵便株式会社法に基づき、新規業務、株式の募集、取締役の選解任及び監査役の選解任(当社のみ)、事業計画の策定、定款の変更、合併、会社分割、解散等を行う場合には、総務大臣の認可(ただし、日本郵便の新規業務については総務大臣への届出)が必要とされています。また、金融2社は、郵政民営化法に基づき、新規業務、他の金融機関等の子会社化、合併、会社分割、事業の譲渡及び譲受け、廃業並びに解散等を行う場合には、内閣総理大臣及び総務大臣の認可が必要とされています。
当社グループの事業その他に関する日本国政府の利益は、当社のその他の株主の利益と相反する可能性があり、日本国政府が、株主としての経済的利益よりも公共政策上の判断等を優先した場合等には、当社グループのその他の株主の利益に反する支配権又は影響力の行使がなされる可能性があります。なお、郵政民営化法により、日本国政府は当社株式をできる限り早期に処分することが規定されておりますが、その具体的な時期及び処分割合を予想することは困難であり、また、同法により当社株式の発行済株式総数の3分の1超に相当する株式については日本国政府が引き続き保有することが規定されていることから、日本国政府による当社株式の処分完了後も日本国政府は3分の1超の当社株式保有者として引き続き当社に重要な影響を及ぼしうることになります。
(5) 当社による金融2社株式の売却時期に関するリスク
郵政民営化法に基づき、当社は金融2社の株式の全部を処分することが規定されております。金融2社株式の処分時期について、具体的な期限の定めはないものの、その処分に際しては、金融2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分することとされています。金融2社株式の処分時期については、かかる要素を勘案して当社取締役会において決定しますが、現時点において、決まっておらず、その時期によっては当社の株主全体の利益とは一致しない可能性があります。従って、当社は、金融2社株式の処分を、適切な時期に適切な条件で実行することができない可能性があります。
郵政民営化法に基づく規制については、当社が金融2社の株式を2分の1以上処分した場合には、金融2社に対する新規業務に係る規制は認可制から届出制へと緩和されます。さらに、当社が金融2社の株式を全部処分した場合又は2分の1以上を処分した旨を総務大臣が内閣総理大臣に通知した日以後に、内閣総理大臣及び総務大臣が他の金融機関等との間の適正な競争関係及び利用者への役務の適切な提供を阻害するおそれがないと認め、その旨が決定した場合には、金融2社に対する新規業務に係る規制、他の金融機関等の子会社化、合併、会社分割、事業の譲渡及び譲受け、廃業並びに解散等を行う場合の規制、銀行業における預入限度額規制、生命保険業における加入限度額規制等の適用は廃止されることになります。しかしながら、金融2社の上場後における当社による金融2社株式の売却の時期及び売却の規模は未確定であり、また、金融2社株式の処分に係る郵政民営化法の定めの変更、株式市場の動向等により、金融2社の株式の処分が予定通りに進まない場合には、かかる上乗せ規制の撤廃が行われず、当社の期待する金融2社の経営の自由度の拡大等が実現しない可能性があります。
(6) 金融2社株式の売却損失の発生に関するリスク
金融2社株式の売却収入が、売却に係る当社が保有する金融2社株式の帳簿価額を下回った場合には、売却される株式の帳簿価額と売却収入の差額について、当社の損益計算書に売却損失として計上する必要があり、その結果、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、2017年3月31日現在、当社が保有するゆうちょ銀行株式の帳簿価額は5,780,141百万円、かんぽ生命保険株式の帳簿価額は890,039百万円です。
一方、連結財務諸表においては、金融2社株式の売却収入が、売却による当社の持分の減少額を下回った場合には、売却による当社の持分の減少額と売却収入の差額を、連結貸借対照表の資本剰余金から減少させる必要があり、その結果、当社グループの財政状態に影響を与える可能性があります。また、金融2社が持分法適用関連会社となり、金融2社株式の売却収入が、売却による当社の持分の減少額を下回った場合には、売却による当社の持分の減少額と売却収入の差額について、連結損益計算書に売却損失として計上する必要があります。さらに、金融2社が子会社及び持分法適用関連会社ではなくなり、金融2社株式の売却収入が、売却に係る当社が保有する金融2社株式の帳簿価額を下回った場合には、売却される株式の帳簿価額と売却収入の差額について、連結損益計算書に売却損失として計上する必要があります。以上の結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、2015年11月4日の金融2社株式の売出しにおいては、ゆうちょ銀行株式の売却に伴い、当社の損益計算書における関係会社株式売却損126,236百万円及び当社の連結貸借対照表における資本剰余金351,922百万円の減少が発生し、かんぽ生命保険株式の売却に伴い、当社の損益計算書における関係会社株式売却益32,796百万円及び当社の連結貸借対照表における資本剰余金17,754百万円の減少が発生しております。
(7) 当社の商標等の金融2社による継続使用に関するリスク
当社及び事業子会社が締結した、「日本郵政グループ運営に関する契約」(以下「グループ運営契約」といいます。グループ運営契約の詳細は、下記「5 経営上の重要な契約等」をご参照ください。)に基づき、事業子会社は、当社による金融2社株式の処分後も、引き続き「日本郵政」ブランド及び関連商標の使用を継続する予定です。
そのため、金融2社株式の売却後も、金融2社における業績の低迷、従業員の不祥事その他の理由により金融2社の社会的信用が毀損された場合には、当社グループの社会的信用及び「日本郵政」のブランド・イメージに悪影響を及ぼす可能性があり、また、当社グループのコンプライアンス又は内部統制の十分性又は有効性に疑義があるものと受け止める可能性があり、かかる場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、グループ運営契約に基づき、金融2社から、当社グループに属することによる利益の対価としてブランド価値使用料を受け取っており、当社による金融2社株式の保有割合にかかわらず、金融2社がそれぞれ日本郵便株式会社法第2条第2項に定める関連銀行又は同条第3項に定める関連保険会社である限り、収受することを想定しております。しかしながら、金融2社が関連銀行又は関連保険会社に該当しないこととなりグループ運営契約そのものを適用しないこととなった場合、若しくは重大な経済情勢の変化等に起因してブランド価値使用料の算定方法が変更された場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
Ⅶ.金融2社との関係について
(1) 当社と金融2社との関係について
① 当社グループにおける金融2社の位置づけ
ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の金融2社は、現在、日本郵便が金融のユニバーサルサービス提供に係る責務を果たすために営む銀行代理業又は保険募集等に係る業務委託契約を日本郵便との間でそれぞれ締結しており、それぞれ当社グループにおいて、日本郵便株式会社法第2条第2項に定める関連銀行として銀行業セグメント又は同条第3項に定める関連保険会社として生命保険業セグメントを担っております。
グループ会社として相互に連携・協力し、シナジー効果を発揮するため、当社及び金融2社は、「日本郵政グループ協定」及び「日本郵政グループ運営に関する契約」(いずれも2015年4月1日発効。以下「グループ協定等」といいます。)を締結しており、その存続期間は、金融2社が日本郵便と締結している上記の業務委託契約が解除されるまでとしております。なお、これらの契約の解除は、当社による金融2社の株式売却と連動しておりません。
② 金融2社とのグループ協定等
当社は、金融2社を含む事業子会社との間で、グループ協定等を締結し、グループ共通の理念、方針、その他グループ運営に係る基本的事項について合意しております(グループ協定等の詳細については「5 経営上の重要な契約等」をご参照ください。)。
グループ協定等に基づき、事業子会社に関するグループ運営は、当社が中心となって行っておりますが、金融2社の独立性を確保する観点から、金融2社については事前承認ルールを採用せず、グループ運営を適切・円滑に行うために必要な事項や法令等に基づき管理等が必要となる事項について、事前協議又は報告を求めています。
③ 金融2社との人的関係
本書提出日現在において、当社の役員1名(長門正貢)が、グループ経営体制の強化、及び金融2社のトップマネジメント強化のため、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の役員(非常勤)を兼任しております。また、ゆうちょ銀行の役員1名(池田憲人)及びかんぽ生命保険の役員1名(植平光彦)がグループ経営体制の強化のため、ゆうちょ銀行の役員1名(田中進)及びかんぽ生命保険の役員1名(加藤進康)が、国が資本金の2分の1以上を出資している法人である当社として国会において各子会社に関する専門的な質問への答弁対応の必要があると考えているため、当社の役員(非常勤)を兼任しております(当社の役員の状況については「第4 提出会社の状況 5 役員の状況」をご参照ください。)。
④ 金融2社との取引等
当社と金融2社との2017年3月期における主な取引等は以下のとおりであります。
取引等内容 | 取引等先 | 金額 (百万円) | 取引等条件の決定方法等 |
ブランド価値使用料 | ゆうちょ銀行 | 4,091 | 「5 経営上の重要な契約等 (1) 日本郵政グループ協定等」をご覧ください。 |
システム利用料(※) | ゆうちょ銀行 | 14,133 | システムの提供にかかる必要経費に一定の利益率を乗じた金額を、日本郵便及び金融2社が、利用状況等に応じて負担する。 |
貯金旧勘定 交付金 | ゆうちょ銀行 | 8,371 | 郵政民営化法第122条の規定により、ゆうちょ銀行が当社に対して金銭の交付(貯金旧勘定交付金)を行うもの。 |
配当金 | ゆうちょ銀行 | 166,851 | 将来に向けた安定的な企業成長を実現するために必要な内部留保資金を確保しつつ、経営成績に応じた利益還元を株主である当社に対して行うもの。 なお、ゆうちょ銀行は、会社法第459条の規定に基づき、取締役会の決議によって剰余金の配当を行うこととしている。 |
ブランド価値使用料 | かんぽ生命保険 | 3,259 | 「5 経営上の重要な契約等 (1) 日本郵政グループ協定等」をご覧ください。 |
システム利用料(※) | かんぽ生命保険 | 1,636 | システムの提供にかかる必要経費に一定の利益率を乗じた金額を、日本郵便及び金融2社が、利用状況等に応じて負担する。 |
配当金 | かんぽ生命保険 | 29,904 | 将来に向けた安定的な企業成長を実現するために必要な内部留保資金を確保しつつ、経営成績に応じた利益還元を株主である当社に対して行うもの。 なお、かんぽ生命保険は、会社法第459条の規定に基づき、取締役会の決議によって剰余金の配当を行うこととしている。 |
(※) PNETサービス、情報系共用システムサービス及び人事関係システムサービスの利用料(日本郵政インフォメーションテクノロジー株式会社との取引を含む。)
(2) 日本郵便と金融2社との関係について
当社の子会社である日本郵便は、ゆうちょ銀行から銀行窓口業務等の委託、また、かんぽ生命保険から保険窓口業務等の委託を受けており、これらの業務は金融窓口事業セグメントの収益の大部分を占めることから、両社の経営方針に変更が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、2017年3月期末現在の日本郵便に対する金融2社の関係につきましては、次のとおりであります。
① 人的関係
日本郵便では、銀行窓口業務及び保険窓口業務における営業施策の企画・立案、推進管理を金融2社と協力して行うとともに、両社から販売支援・業務指導を受けるなど、一体的な営業体制を構築することを目的として、人事交流を行っております。
② 取引関係
日本郵便と金融2社との2017年3月期における主な取引は、以下のとおりであります。
取引内容 | 取引先 | 金額 (百万円) | 取引条件等の決定方法等 |
銀行代理業の業務に係る受託手数料の受取 | ゆうちょ銀行 | 612,465 | 銀行代理業等の委託業務に関連して発生する原価を基準に決定 |
保険代理業務の業務に係る受託手数料の受取 | かんぽ生命保険 | 392,768 | 募集手数料については、代理店方式を採用している他の生命保険会社の例に準じて設定。維持・集金手数料については、業務量に応じた計算により額を設定 |
郵便料金等の受取 | ゆうちょ銀行 | 18,066 | 一般の利用者の料金と同一の条件で取引 |
かんぽ生命保険 | 6,967 | ||
土地・建物等の賃貸 (※1) | ゆうちょ銀行 | 7,216 | 不動産鑑定評価の考え方に基づき決定 |
かんぽ生命保険 | 2,606 | ||
シェアードサービス利用料の受取 (※2) | ゆうちょ銀行 | 3,010 | 必要経費に加え、利用状況、他企業における平均的な利益率を勘案し両社交渉により手数料率等を決定 |
かんぽ生命保険 | 1,370 |
(※1) 営業店等の施設の賃貸、社員用社宅関連業務の提供等
(※2) グループ内物流業務の提供等
当社は、上記のような当社及び日本郵便と金融2社との契約関係・人的関係・取引関係に基づき、金融2社を含む当社グループの企業価値を最大化していく方針ですが、金融2社と当社及び日本郵便とのシナジー効果を実現できない可能性があり、また、金融2社と当社及び日本郵便との利益相反を適切に管理できない可能性があります。さらに、将来の金融2社株式の追加処分などによって、かかる関係に変更が生じる又はかかる関係による当社グループの企業価値の最大化がさらに困難となる可能性があります。
生産、受注及び販売の状況財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
- 有価証券報告書 抜粋メニュー
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- 提出会社の経営指標等
- 沿革
- 事業の内容
- 関係会社の状況
- 従業員の状況
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- 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
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