有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S10054T3
住友電気工業株式会社 研究開発活動 (2015年3月期)
事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社及び連結子会社は「技術を創造し、変革を生み出し、絶えざる成長に努めます」という経営理念の下、伸長分野に焦点を合わせ、オリジナリティがありかつ収益力のある新事業・新製品の開発に努めております。また、将来の技術ニーズを踏まえ、当社グループの次代の成長を担う新規研究テーマの発掘・育成にも積極的に取り組んでおります。
自動車関連事業、情報通信関連事業、エレクトロニクス関連事業、環境エネルギー関連事業、産業素材関連事業他の各主要事業分野における当連結会計年度の主な成果は以下のとおりであります。
また、当連結会計年度における研究開発費の総額は105,604百万円であります。
(1) 自動車関連事業
ワイヤーハーネス及び車載エレクトロニクス機器については、当社、住友電装㈱、及び両社の共同出資による㈱オートネットワーク技術研究所を中心に、当社固有の材料技術・解析技術を活かして安全、快適、環境のニーズに対応した新製品の開発を行っております。
ワイヤーハーネスについては、次世代車載システムに対応できるハーネスアーキテクチャを構築し、それに必要な要素技術の開発を進めております。また、環境対応としてハーネスの軽量化に取り組んでおり、銅に比べ軽量なアルミを使ったワイヤーハーネスを量産し、さらに適用範囲拡大の取り組みを進めております。市場規模が拡大してきたEV(Electric Vehicle)・HEV(Hybrid Electric Vehicle)用高圧ハーネスやコネクタ、バッテリー内配線モジュールの開発等にも取り組んでおります。車載エレクトロニクス機器に関しては、電源系、情報系の
ネットワーク化に対応すべく、PD(Power Distributor)等のエレクトロニクス機器や半導体デバイス、ボディ制御ECU、次世代の車載LAN(Local Area Network)の開発を、ソフトウェアを含め進めております。
一方、新製品の開発効率化や高いレベルの品質確保に向け、要素技術開発や信頼性確保に不可欠な試験・分析・評価・解析技術の開発を推進しております。環境試験装置や分析装置等の評価設備の充実を図るとともに、コネクタ接点の接触メカニズム解析や電子機器の熱・振動解析等、CAE(Computer-Aided Engineering)技術を用いたシミュレーション技術を充実させております。
住友理工㈱では、事業を取り巻く環境がダイナミックに変化する中、将来の成長・発展に結びつく新事業の創出に向けて、コア技術をベースに外部技術の融合・協業を促進し、スピーディーな新技術の創出とタイムリーな商品開発を目指しております。自動車分野においては、環境規制対応、乗り心地性向上、さらにはグローバル対応を目指して先進的な技術開発に取り組んでおります。最近の取組み成果として、高機能ゴムと精密加工技術を融合し、燃料電池自動車に搭載される燃料電池スタック向けゴムシール材「セル用ガスケット」を開発しました。
当事業に係る研究開発費は64,431百万円であります。
(2) 情報通信関連事業
光通信関連製品、ネットワーク・システム製品などの分野において、総合的に研究開発を行っております。
光通信関連製品では、光ファイバ通信のさらなる高速化・長距離化に向けて、海底ケーブル用途の低損失低非線形光ファイバの研究開発を進め、量産安定化技術とさらなる特性向上に取り組んでおります。また、伝送容量の飛躍的な拡大に向けて、1本の光ファイバに複数本のコアが形成されたマルチコア型光ファイバの開発に取り組み、光ファイバ構造・製造方法の検討、複数のコアへの光入出力デバイスなど、実使用上の課題解決に向けた研究を進めております。さらに、光ネットワークを効率よく運用するために光ファイバの切替装置も開発しております。一方で、データセンタにおける情報機器内や情報機器間、サーバ間等を10Gbps以上の伝送速度で接続するデータセンタ用大容量配線技術の開発に取り組み、光ケーブル/電気ケーブルをそれぞれ適材適所で活用した高速大容量配線群の製品化を進めております。また、データセンタ内で使用される新光コネクタなども開発を進めており、従来のテレコム光通信で培った技術のデータセンタ市場への応用展開を進めております。そのほか、光ファイバ製造技術を活用した新材料の開発、光ファイバ実装・光学設計などの基盤技術を活用した新製品の開発を進めており、エレクトロニクスやライフサイエンスなどの新たな分野への光技術の展開を図っております。
伝送デバイス関連製品では、数十mの短距離伝送から数千kmの長距離伝送に対応するハイエンドの光通信デバイス、及び高速、高出力特性を有する無線通信用電子デバイス技術を活かして、新製品をいち早く市場に投入することにより、事業拡大に努めております。
光通信デバイス製品においては、10/40Gbpsの製品開発を終え、100Gbps以上の伝送速度に対応した製品開発に注力しております。40km伝送までのイーサネット対応においては、小型省電力化を目指し、100Gbps対応CFP4/QSFP28(現行製品比、容積約1/10、消費電力約1/3)を製品化するとともに、次世代の400Gbps対応開発も進めております。80kmから数千km伝送対応としては、コヒーレント伝送デバイスを開発しております。波長多重技術を用いることにより、数Tbps伝送を可能とします。構成要素である波長可変半導体レーザ、光多値位相変調デバイス、ホモダイン光受信デバイスは、化合物半導体を用いた光集積回路技術を用いて製品化しつつあります。それらを用いた光トランシーバの開発も進めております。ごく短距離の数十mの建屋内大容量配線市場への展開も検討しており、超低消費電力で光学実装性の優れた面発光型半導体レーザ(VCSEL)の高速化を進めております。
無線通信デバイス製品では、世界に先駆けて高効率・高出力のGaN(窒化ガリウム)トランジスタを開発し、携帯基地局用途に製品化しました。本製品は低消費電力化やLTEへの移行など市場の要請に合致し、国内外で既存のSi(シリコン)トランジスタからGaNへの移行を牽引しました。現在は、さらなる効率改善を図っており、LTEに次ぐ第五世代携帯無線用途を目指した開発に注力しております。さらに、レーダ用途を目指し10GHz帯で高出力・高効率化を図るとともに、20GHz帯、80GHz帯(ミリ波帯)でのMMIC(Microwave Monolithic IC)の製品開発を進め、基地局間通信や衛星通信、車載レーダなど、無線用途に広く展開しております。
これらデバイス技術の蓄積を活かし、ライフサイエンス、環境関連、インフラや工業プロセス管理など多様な分野への応用が期待できる高感度な赤外イメージセンサ、低消費電力赤外光源の開発も進めております。
ネットワーク・システム関連分野では、情報通信技術の革新により、安全・安心・快適かつ持続可能な社会の実現を目指した情報通信機器の研究開発を推進しております。
有線通信システム関連では、10G-EPON等、より高速化した次世代システムの研究開発に、無線通信システム関連では、携帯電話基地局用屋外無線ユニットの新ジャンルであるアクティブアンテナの開発、並びにIoT(Internet of Things)に向けたモノとモノ(Machine to Machine:M2M)との通信による高度なサービス実現の基盤となる無線通信技術に取り組んでおります。また、エネルギーネットワーク関連分野では、電力需給逼迫時に素早く自動的に使用電力量の調整を行うクラウド型デマンドレスポンスシステムや、宅内の電力使用量を最適化するシステム(HEMS)の研究開発、定置用蓄電池システムの開発に取り組んでおります。安全・安心に関する技術分野では、交通社会の安全のために、交通システム制御アルゴリズムや路車協調による安全運転支援システムの開発を行っております。インフラ・プラント構造物等の劣化監視のために自社センサー技術を用いた分析技術の研究にも取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は15,192百万円であります。
(3) エレクトロニクス関連事業
マイクロ・ナノテクノロジーを駆使して、化合物半導体やエレクトロニクス関連部材などの広範な新材料や部品の開発を行っております。
化合物半導体では、情報通信を支える高速通信用の光デバイスや無線用電子デバイスなどに用いられるインジウムリン及びガリウムヒ素基板の高品質化開発を進めております。また、青紫色レーザダイオードや白色LED、パワーデバイス等に応用されるGaN基板の高品質化に加え、緑色レーザに適した基板の開発にも成功し、世界初の純緑色レーザ発振を実現しました。さらに、新しい光デバイスや電子デバイス用途の半導体材料の開発にも取り組んでおります。
エレクトロニクス関連部材では、独自の液相還元プロセスによる金属ナノ粒子粉末を用いた高導電性ペーストや回路形成用ナノインク、及び高精度印刷技術による微細回路基板を開発しております。さらに、固有の接着材料技術や微細回路形成技術を活用した携帯機器用の電子回路基板、高耐熱電子回路基板、車載向けモジュール部品や放熱部材などの開発に取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は3,851百万円であります。
(4) 環境エネルギー関連事業
超電導や次世代送電網の分野でのネットワーク技術を活用したエネルギーソリューション事業など、新しい分野への進出を図るとともに、蓄電池などエネルギー分野での積極的な開発を推進しております。
超電導分野では、ビスマス系高温超電導線材の特性と量産性を大幅に向上させ、世界各国のケーブルプロジェクトやモータ、マグネット開発用などに線材を納入するなど、商業ベースでの販売本格化を図りつつあります。超電導ケーブル交流送電システムでは新エネルギー・産業技術総合開発機構の「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」に参画し、2012年10月から2013年12月まで1年以上にわたり、日本初の系統連系試験を成功裏に完了いたしました。また、2014年6月から本プロジェクトの後継プロジェクトとして「次世代送電システムの安全性・信頼性に係る実証研究」に参画し、実用化への研究開発に取り組んでおります。一方、直流伝送システムでは2013年3月より、経済産業省委託事業「高温超電導直流送電システムの実証研究」へ参画する等、高温超電導ケーブルシステムの実用化に向け技術力の向上に注力してまいります。なお、産業応用では超電導マグネットシステムの開発を進めており、2014年7月に小型軽量冷凍機冷凍型マグネットシステム(±6T-Φ70mm)の販売開始や、2015年3月に半導体プローバ用マグネットシステムの実機納入等、産業界での実用化を狙った開発、用途開拓に注力しているところであります。またビスマス系とは異なる次世代の超電導線材の研究も行っており、結晶配向した金属基板、中間層、超電導層からなる薄膜超電導線の特性向上にも注力しております。
次世代送電網の分野では、自然エネルギーの導入、省エネルギー、電力網の分散管理といった社会ニーズに対応すべく、2011年6月から、当社大阪製作所において、自社開発の集光型太陽光発電装置(CPV)を含む複数の自然エネルギー発電装置と小型レドックスフロー電池(蓄電池)等を直流電力ケーブルで連結したマイクロス
マートグリッドシステムの実証試験を実施しております。さらに、2012年7月から、当社横浜製作所において、メガワット級の出力・容量を有するレドックスフロー電池と定格出力100kWのCPVから成る大規模蓄発電システムを開発し、実際の工場電力運用の中で、製品化のための実証運転を実施しております。また、次世代超電導線材、電力線通信(PLC)によるメガソーラー監視システムの開発、非常用の小型蓄電池やパワーコンディ
ショナ等の開発にも注力しております。
蓄電池分野では、難燃性材料で構成し、小型の組電池が実現可能な溶融塩電解液電池を開発中で、顧客からの情報を基により多くのニーズに対応可能な電池を設計し、評価を進めております。また蓄電池の集電材料として、高性能化に貢献できる金属多孔体「アルミセルメット」を開発しており、リチウムイオン電池やキャパシタなどの蓄電デバイス用途として、量産に向けた生産技術開発に注力しております。
住友電設㈱では、市場の多様化するニーズに応えるべく、太陽光発電システム用保守監視システム、エネルギー管理等のビル・マネジメントシステム技術、超電導冷却システム、蓄電池システムなど、最新技術、情報化技術を活用し、省エネ技術、新工法、各種システムの開発に取り組んでおります。
日新電機㈱では、電力機器をはじめ、新エネルギー・環境関連製品、及びビーム・真空応用装置などの次世代装置に重点を置いて研究開発を進めております。電力機器分野においては、従来形製品の縮小化とともに、太陽光発電をはじめ、多様な分散電源の増加を受けて、電力品質を維持・向上する技術研究や製品開発に取り組みました。
ビーム・真空応用事業では、薄膜コーティング装置や新たなコーティング薄膜の研究開発、半導体製造用イオン注入装置や電子線照射装置などの次世代製品の研究開発に注力しております。また、新エネルギー・環境分野においては、太陽光発電用パワーコンディショナの高機能化に向けた研究開発に注力するとともに、EMS(エネルギー管理システム)関連の技術研究並びに実証検証を進めております。
当事業に係る研究開発費は14,172百万円であります。
(5) 産業素材関連事業他
超硬合金、ダイヤモンド、立方晶窒化硼素、コーティング薄膜、特殊鋼線、セラミックスや鉄系焼結部品に関する当社固有の材料技術とプロセス技術を駆使し、切削用工具や超精密加工用工具、各種自動車機構部品・機能部品、家電部品等の開発を進めております。
ダイヤモンドでは、15万気圧、2000℃以上の新しい超高圧技術と独自の新プロセスにより合成した、数十nmサイズの超微細粒よりなる高硬度ナノ多結晶ダイヤモンドが従来のダイヤモンドを大きく凌駕する機械的特性を有することを実証、次世代の高性能精密加工用工具として実用化開発に注力しております。
焼結部品の関連では、ディーゼルエンジン用燃料噴射装置部品など高周波域で優れた磁気特性を持つ圧粉軟磁性材応用製品の開発、EV・HEVなどの自動車の電動化に対応した高性能圧粉軟磁性材料の製品開発に注力しております。
また切削工具分野で培った超硬合金技術、コーティング技術を展開すべく、新接合手法として注目されている摩擦撹拌接合ツールの開発に取り組み、非切削分野での新市場開拓を目指しております。
なお、今後の成長を担う新規分野としまして、水ビジネス関連では、バラスト水処理装置開発に注力しております。また、ライフサイエンスの分野では、近赤外光の技術を応用した医療機器の開発を推進しております。農業分野においては、当社独自の砂栽培技術と環境制御の組合せによる抜本的な生産性の改善、農業の工業化に取り組んでおり、当社のICT技術も今後活用していく予定です。
当事業に係る研究開発費は7,958百万円であります。
以上の5分野の研究開発及びグループ全体の生産、品質などを支える解析技術の分野では、ナノスケールの構造解析や、ポリマーの分子構造解析など、世界トップレベルの分析を行っております。さらに、SPring-8などの放射光施設を利用した最先端の原子レベル解析により、レアメタルのリサイクル技術開発や知的財産権の強化などに寄与しております。なお、放射光利用の拡大を図るため、佐賀県が運営する九州シンクロトロン光研究センターに当社グループ専用のビームラインを建設中であり、2016年度の稼働を目指しております。また、高度な計算機シミュレーションを用いたCAE技術の開発にも注力しており、2012年度には、社内のCAE用並列計算サーバを増強し、処理能力を4倍以上に高めました。加えて、国立研究開発法人 理化学研究所が保有する「京」や公益財団法人 計算科学振興財団が保有する「FOCUS」など、外部のスーパーコンピュータも利用しながら、生産プロセスの改善や各種新製品の設計にCAE技術を活用することで他社との差別化につながる解析技術の開発を推進しております。
なお、当社では、創業110周年の記念事業の一環として研究本館「WinD Lab」を建設、2010年4月に竣工しました。この「WinD Lab」を研究・開発活動の中核とし、さらなる事業の成長を目指します。また、グループ全体として、これらの研究開発成果を早期に確保すべく努めるとともに、企業の社会的責任を自覚し、省エネ、省資源、環境保護に関する研究にも注力してまいります。
自動車関連事業、情報通信関連事業、エレクトロニクス関連事業、環境エネルギー関連事業、産業素材関連事業他の各主要事業分野における当連結会計年度の主な成果は以下のとおりであります。
また、当連結会計年度における研究開発費の総額は105,604百万円であります。
(1) 自動車関連事業
ワイヤーハーネス及び車載エレクトロニクス機器については、当社、住友電装㈱、及び両社の共同出資による㈱オートネットワーク技術研究所を中心に、当社固有の材料技術・解析技術を活かして安全、快適、環境のニーズに対応した新製品の開発を行っております。
ワイヤーハーネスについては、次世代車載システムに対応できるハーネスアーキテクチャを構築し、それに必要な要素技術の開発を進めております。また、環境対応としてハーネスの軽量化に取り組んでおり、銅に比べ軽量なアルミを使ったワイヤーハーネスを量産し、さらに適用範囲拡大の取り組みを進めております。市場規模が拡大してきたEV(Electric Vehicle)・HEV(Hybrid Electric Vehicle)用高圧ハーネスやコネクタ、バッテリー内配線モジュールの開発等にも取り組んでおります。車載エレクトロニクス機器に関しては、電源系、情報系の
ネットワーク化に対応すべく、PD(Power Distributor)等のエレクトロニクス機器や半導体デバイス、ボディ制御ECU、次世代の車載LAN(Local Area Network)の開発を、ソフトウェアを含め進めております。
一方、新製品の開発効率化や高いレベルの品質確保に向け、要素技術開発や信頼性確保に不可欠な試験・分析・評価・解析技術の開発を推進しております。環境試験装置や分析装置等の評価設備の充実を図るとともに、コネクタ接点の接触メカニズム解析や電子機器の熱・振動解析等、CAE(Computer-Aided Engineering)技術を用いたシミュレーション技術を充実させております。
住友理工㈱では、事業を取り巻く環境がダイナミックに変化する中、将来の成長・発展に結びつく新事業の創出に向けて、コア技術をベースに外部技術の融合・協業を促進し、スピーディーな新技術の創出とタイムリーな商品開発を目指しております。自動車分野においては、環境規制対応、乗り心地性向上、さらにはグローバル対応を目指して先進的な技術開発に取り組んでおります。最近の取組み成果として、高機能ゴムと精密加工技術を融合し、燃料電池自動車に搭載される燃料電池スタック向けゴムシール材「セル用ガスケット」を開発しました。
当事業に係る研究開発費は64,431百万円であります。
(2) 情報通信関連事業
光通信関連製品、ネットワーク・システム製品などの分野において、総合的に研究開発を行っております。
光通信関連製品では、光ファイバ通信のさらなる高速化・長距離化に向けて、海底ケーブル用途の低損失低非線形光ファイバの研究開発を進め、量産安定化技術とさらなる特性向上に取り組んでおります。また、伝送容量の飛躍的な拡大に向けて、1本の光ファイバに複数本のコアが形成されたマルチコア型光ファイバの開発に取り組み、光ファイバ構造・製造方法の検討、複数のコアへの光入出力デバイスなど、実使用上の課題解決に向けた研究を進めております。さらに、光ネットワークを効率よく運用するために光ファイバの切替装置も開発しております。一方で、データセンタにおける情報機器内や情報機器間、サーバ間等を10Gbps以上の伝送速度で接続するデータセンタ用大容量配線技術の開発に取り組み、光ケーブル/電気ケーブルをそれぞれ適材適所で活用した高速大容量配線群の製品化を進めております。また、データセンタ内で使用される新光コネクタなども開発を進めており、従来のテレコム光通信で培った技術のデータセンタ市場への応用展開を進めております。そのほか、光ファイバ製造技術を活用した新材料の開発、光ファイバ実装・光学設計などの基盤技術を活用した新製品の開発を進めており、エレクトロニクスやライフサイエンスなどの新たな分野への光技術の展開を図っております。
伝送デバイス関連製品では、数十mの短距離伝送から数千kmの長距離伝送に対応するハイエンドの光通信デバイス、及び高速、高出力特性を有する無線通信用電子デバイス技術を活かして、新製品をいち早く市場に投入することにより、事業拡大に努めております。
光通信デバイス製品においては、10/40Gbpsの製品開発を終え、100Gbps以上の伝送速度に対応した製品開発に注力しております。40km伝送までのイーサネット対応においては、小型省電力化を目指し、100Gbps対応CFP4/QSFP28(現行製品比、容積約1/10、消費電力約1/3)を製品化するとともに、次世代の400Gbps対応開発も進めております。80kmから数千km伝送対応としては、コヒーレント伝送デバイスを開発しております。波長多重技術を用いることにより、数Tbps伝送を可能とします。構成要素である波長可変半導体レーザ、光多値位相変調デバイス、ホモダイン光受信デバイスは、化合物半導体を用いた光集積回路技術を用いて製品化しつつあります。それらを用いた光トランシーバの開発も進めております。ごく短距離の数十mの建屋内大容量配線市場への展開も検討しており、超低消費電力で光学実装性の優れた面発光型半導体レーザ(VCSEL)の高速化を進めております。
無線通信デバイス製品では、世界に先駆けて高効率・高出力のGaN(窒化ガリウム)トランジスタを開発し、携帯基地局用途に製品化しました。本製品は低消費電力化やLTEへの移行など市場の要請に合致し、国内外で既存のSi(シリコン)トランジスタからGaNへの移行を牽引しました。現在は、さらなる効率改善を図っており、LTEに次ぐ第五世代携帯無線用途を目指した開発に注力しております。さらに、レーダ用途を目指し10GHz帯で高出力・高効率化を図るとともに、20GHz帯、80GHz帯(ミリ波帯)でのMMIC(Microwave Monolithic IC)の製品開発を進め、基地局間通信や衛星通信、車載レーダなど、無線用途に広く展開しております。
これらデバイス技術の蓄積を活かし、ライフサイエンス、環境関連、インフラや工業プロセス管理など多様な分野への応用が期待できる高感度な赤外イメージセンサ、低消費電力赤外光源の開発も進めております。
ネットワーク・システム関連分野では、情報通信技術の革新により、安全・安心・快適かつ持続可能な社会の実現を目指した情報通信機器の研究開発を推進しております。
有線通信システム関連では、10G-EPON等、より高速化した次世代システムの研究開発に、無線通信システム関連では、携帯電話基地局用屋外無線ユニットの新ジャンルであるアクティブアンテナの開発、並びにIoT(Internet of Things)に向けたモノとモノ(Machine to Machine:M2M)との通信による高度なサービス実現の基盤となる無線通信技術に取り組んでおります。また、エネルギーネットワーク関連分野では、電力需給逼迫時に素早く自動的に使用電力量の調整を行うクラウド型デマンドレスポンスシステムや、宅内の電力使用量を最適化するシステム(HEMS)の研究開発、定置用蓄電池システムの開発に取り組んでおります。安全・安心に関する技術分野では、交通社会の安全のために、交通システム制御アルゴリズムや路車協調による安全運転支援システムの開発を行っております。インフラ・プラント構造物等の劣化監視のために自社センサー技術を用いた分析技術の研究にも取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は15,192百万円であります。
(3) エレクトロニクス関連事業
マイクロ・ナノテクノロジーを駆使して、化合物半導体やエレクトロニクス関連部材などの広範な新材料や部品の開発を行っております。
化合物半導体では、情報通信を支える高速通信用の光デバイスや無線用電子デバイスなどに用いられるインジウムリン及びガリウムヒ素基板の高品質化開発を進めております。また、青紫色レーザダイオードや白色LED、パワーデバイス等に応用されるGaN基板の高品質化に加え、緑色レーザに適した基板の開発にも成功し、世界初の純緑色レーザ発振を実現しました。さらに、新しい光デバイスや電子デバイス用途の半導体材料の開発にも取り組んでおります。
エレクトロニクス関連部材では、独自の液相還元プロセスによる金属ナノ粒子粉末を用いた高導電性ペーストや回路形成用ナノインク、及び高精度印刷技術による微細回路基板を開発しております。さらに、固有の接着材料技術や微細回路形成技術を活用した携帯機器用の電子回路基板、高耐熱電子回路基板、車載向けモジュール部品や放熱部材などの開発に取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は3,851百万円であります。
(4) 環境エネルギー関連事業
超電導や次世代送電網の分野でのネットワーク技術を活用したエネルギーソリューション事業など、新しい分野への進出を図るとともに、蓄電池などエネルギー分野での積極的な開発を推進しております。
超電導分野では、ビスマス系高温超電導線材の特性と量産性を大幅に向上させ、世界各国のケーブルプロジェクトやモータ、マグネット開発用などに線材を納入するなど、商業ベースでの販売本格化を図りつつあります。超電導ケーブル交流送電システムでは新エネルギー・産業技術総合開発機構の「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」に参画し、2012年10月から2013年12月まで1年以上にわたり、日本初の系統連系試験を成功裏に完了いたしました。また、2014年6月から本プロジェクトの後継プロジェクトとして「次世代送電システムの安全性・信頼性に係る実証研究」に参画し、実用化への研究開発に取り組んでおります。一方、直流伝送システムでは2013年3月より、経済産業省委託事業「高温超電導直流送電システムの実証研究」へ参画する等、高温超電導ケーブルシステムの実用化に向け技術力の向上に注力してまいります。なお、産業応用では超電導マグネットシステムの開発を進めており、2014年7月に小型軽量冷凍機冷凍型マグネットシステム(±6T-Φ70mm)の販売開始や、2015年3月に半導体プローバ用マグネットシステムの実機納入等、産業界での実用化を狙った開発、用途開拓に注力しているところであります。またビスマス系とは異なる次世代の超電導線材の研究も行っており、結晶配向した金属基板、中間層、超電導層からなる薄膜超電導線の特性向上にも注力しております。
次世代送電網の分野では、自然エネルギーの導入、省エネルギー、電力網の分散管理といった社会ニーズに対応すべく、2011年6月から、当社大阪製作所において、自社開発の集光型太陽光発電装置(CPV)を含む複数の自然エネルギー発電装置と小型レドックスフロー電池(蓄電池)等を直流電力ケーブルで連結したマイクロス
マートグリッドシステムの実証試験を実施しております。さらに、2012年7月から、当社横浜製作所において、メガワット級の出力・容量を有するレドックスフロー電池と定格出力100kWのCPVから成る大規模蓄発電システムを開発し、実際の工場電力運用の中で、製品化のための実証運転を実施しております。また、次世代超電導線材、電力線通信(PLC)によるメガソーラー監視システムの開発、非常用の小型蓄電池やパワーコンディ
ショナ等の開発にも注力しております。
蓄電池分野では、難燃性材料で構成し、小型の組電池が実現可能な溶融塩電解液電池を開発中で、顧客からの情報を基により多くのニーズに対応可能な電池を設計し、評価を進めております。また蓄電池の集電材料として、高性能化に貢献できる金属多孔体「アルミセルメット」を開発しており、リチウムイオン電池やキャパシタなどの蓄電デバイス用途として、量産に向けた生産技術開発に注力しております。
住友電設㈱では、市場の多様化するニーズに応えるべく、太陽光発電システム用保守監視システム、エネルギー管理等のビル・マネジメントシステム技術、超電導冷却システム、蓄電池システムなど、最新技術、情報化技術を活用し、省エネ技術、新工法、各種システムの開発に取り組んでおります。
日新電機㈱では、電力機器をはじめ、新エネルギー・環境関連製品、及びビーム・真空応用装置などの次世代装置に重点を置いて研究開発を進めております。電力機器分野においては、従来形製品の縮小化とともに、太陽光発電をはじめ、多様な分散電源の増加を受けて、電力品質を維持・向上する技術研究や製品開発に取り組みました。
ビーム・真空応用事業では、薄膜コーティング装置や新たなコーティング薄膜の研究開発、半導体製造用イオン注入装置や電子線照射装置などの次世代製品の研究開発に注力しております。また、新エネルギー・環境分野においては、太陽光発電用パワーコンディショナの高機能化に向けた研究開発に注力するとともに、EMS(エネルギー管理システム)関連の技術研究並びに実証検証を進めております。
当事業に係る研究開発費は14,172百万円であります。
(5) 産業素材関連事業他
超硬合金、ダイヤモンド、立方晶窒化硼素、コーティング薄膜、特殊鋼線、セラミックスや鉄系焼結部品に関する当社固有の材料技術とプロセス技術を駆使し、切削用工具や超精密加工用工具、各種自動車機構部品・機能部品、家電部品等の開発を進めております。
ダイヤモンドでは、15万気圧、2000℃以上の新しい超高圧技術と独自の新プロセスにより合成した、数十nmサイズの超微細粒よりなる高硬度ナノ多結晶ダイヤモンドが従来のダイヤモンドを大きく凌駕する機械的特性を有することを実証、次世代の高性能精密加工用工具として実用化開発に注力しております。
焼結部品の関連では、ディーゼルエンジン用燃料噴射装置部品など高周波域で優れた磁気特性を持つ圧粉軟磁性材応用製品の開発、EV・HEVなどの自動車の電動化に対応した高性能圧粉軟磁性材料の製品開発に注力しております。
また切削工具分野で培った超硬合金技術、コーティング技術を展開すべく、新接合手法として注目されている摩擦撹拌接合ツールの開発に取り組み、非切削分野での新市場開拓を目指しております。
なお、今後の成長を担う新規分野としまして、水ビジネス関連では、バラスト水処理装置開発に注力しております。また、ライフサイエンスの分野では、近赤外光の技術を応用した医療機器の開発を推進しております。農業分野においては、当社独自の砂栽培技術と環境制御の組合せによる抜本的な生産性の改善、農業の工業化に取り組んでおり、当社のICT技術も今後活用していく予定です。
当事業に係る研究開発費は7,958百万円であります。
以上の5分野の研究開発及びグループ全体の生産、品質などを支える解析技術の分野では、ナノスケールの構造解析や、ポリマーの分子構造解析など、世界トップレベルの分析を行っております。さらに、SPring-8などの放射光施設を利用した最先端の原子レベル解析により、レアメタルのリサイクル技術開発や知的財産権の強化などに寄与しております。なお、放射光利用の拡大を図るため、佐賀県が運営する九州シンクロトロン光研究センターに当社グループ専用のビームラインを建設中であり、2016年度の稼働を目指しております。また、高度な計算機シミュレーションを用いたCAE技術の開発にも注力しており、2012年度には、社内のCAE用並列計算サーバを増強し、処理能力を4倍以上に高めました。加えて、国立研究開発法人 理化学研究所が保有する「京」や公益財団法人 計算科学振興財団が保有する「FOCUS」など、外部のスーパーコンピュータも利用しながら、生産プロセスの改善や各種新製品の設計にCAE技術を活用することで他社との差別化につながる解析技術の開発を推進しております。
なお、当社では、創業110周年の記念事業の一環として研究本館「WinD Lab」を建設、2010年4月に竣工しました。この「WinD Lab」を研究・開発活動の中核とし、さらなる事業の成長を目指します。また、グループ全体として、これらの研究開発成果を早期に確保すべく努めるとともに、企業の社会的責任を自覚し、省エネ、省資源、環境保護に関する研究にも注力してまいります。
事業等のリスク財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
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- 生産、受注及び販売の状況
- 対処すべき課題
- 事業等のリスク
- 研究開発活動
- 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
- 株式の総数等
- 発行済株式総数、資本金等の推移
- 株価の推移
- 最近6月間の月別最高・最低株価
- 株式所有者別状況
- 役員の状況
- コーポレートガバナンス状況
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E01333] S10054T3)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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