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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100TUGV (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 日清オイリオグループ株式会社 研究開発活動 (2024年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等



当社グループは、長年の植物油脂研究で培った知見を活用し、中長期視点の「技術開発」と、お客さまのニーズにスピーディにお応えする「商品開発」を両輪とした研究開発活動を行っております。油脂の製造および加工に関する技術をはじめ、油脂の栄養評価技術や分析・評価技術、官能評価技術を強みとし、健康、おいしさの追求と、環境負荷低減、ユーザーニーズに対応したアプリケーション開発に取り組んでおります。技術力を強化し、知的財産の戦略的な活用を行うことで、グローバルトップレベルの油脂ソリューション企業の実現に貢献してまいります。



当事業年度は、油糧原料の安定確保に向けて、「Bio-Digital Transformation 産学共創拠点」に参画し、微細藻類による油脂生産の検討を開始いたしました。また、東北大学との共同研究により、おいしさを司る油脂由来の香気成分の生成メカニズムを解明するなど、産学官の連携を図りながら技術開発を進めております。
また、海外の研究開発拠点であるマレーシアのNisshin Global Research Center Sdn. Bhd.では、当社グループのパーム油脂、スペシャリティファットの製造および販売を行う事業会社Intercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.と連携し、チョコレート用油脂の主原料であるパーム油に関わる油脂加工技術の開発を行っております。今期は国内の研究開発部門と共同で、チョコレート用途に適した成分の分別技術を確立し、設備導入を進めてまいりました。
ファインケミカル事業部では、化粧品領域、化学品領域、および食品領域におけるファインケミカル素材の開発ならびに、その機能評価に基づく価値開発やアプリケーション化を進めるとともに、生産部門と連携して製品の品質優位性を高めるための活動を行っております。また、事業のグローバル展開を支える基盤を形作るために、当社グループであるIndustrial Quimica Lasem, S.A.U.とは、エステル油剤開発、品質管理、生産技術などにおいて多面的な技術連携関係を構築しております。中国では、これまでの当社グループの日清奥利友(上海)国際貿易有限公司との連携による当社製品の技術的、品質的な特徴を顧客にアピールする活動に加え、上海テクニカルサポートセンター(通称:STS)を当事業年度に新たに開設し、中国における市場開拓を着実に進めております。

2024年度には、研究開発部門の機構改革と、横浜磯子事業場内に建設した新たな研究開発拠点である「インキュベーションスクエア」の稼働を開始し、研究開発機能を強化しお客さまと価値を共創するための基盤を整備いたします。国内外を問わず様々なお客さまとの技術や情報の交流を通して、多様な視点とアイデアにより最先端のソリューションを提供してまいります。
なお、当連結会計年度における研究開発費の合計は3,519百万円(前連結会計年度は3,128百万円)であり、セグメント別の研究開発費については以下のとおりです。

油脂事業加工食品・素材事業ファインケミカル事業合計
2023年度(百万円)2,3325796073,519


〔油脂事業〕

1.油脂・油糧
2024年、日本初のサラダ油である「日清サラダ油」の発売から100周年を迎えました。ホームユース食用油では、毎日ご家庭で使う油はより良いものをお届けしたいとの思いから、長年にわたり積み重ねてきた技術を結集し、「日清ヘルシークリア」を2024年2月に発売いたしました。当社は、これまでも「酸化」を抑える技術を数々と開発してまいりましたが、これまでの技術を結集しさらに進化させた「ウルトラ酸化バリア製法」を開発いたしました。お客さまの「酸化」に対する不安を解消する「日清ヘルシークリア」は、開封後もつくりたての油のおいしさが続くという新たな価値を提供し、クッキングオイルの魅力をさらに高めることで、家庭用食用油市場を活性化してまいります。さらに、オリーブオイル市場の活性を目的に、気軽に初めての方でもオリーブオイルのおいしさを感じていただくことのできる新商品「日清キャノーラ&オリーブ」を2024年2月に発売いたしました。また、本格風味の「BOSCO シーズニングオイル」に、高級食材トリュフの芳醇な香りを手軽に楽しんでいただける「トリュフ&オリーブオイル」を追加発売し、「味つけオイル」による食用油のおいしさ、使い方の提案をさらに広げてまいります。
環境にやさしい企業活動の取り組みの一環として、容器におけるプラスチック使用量削減のため、新容器(紙パックタイプおよび800gPETボトル)を開発いたしました。紙パックタイプ450gは、当社400gPET容器と比較してプラスチックの使用量を55%削減し、FSC認証紙やバイオマス素材を使用しております。また、使いやすい2WAYキャップを採用し、残っている量が分かりやすいスリットを付けております。800gPETボトルは、とってをなくすことで900gPETボトルと比較してプラスチック使用量を39%削減し、再生プラスチックも30%含有しております。さらに、くぼみを配置することで使いやすさも両立しております。
業務用食用油では、お客さまの様々な課題を解決する提案や商品開発を行っております。当事業年度はカスタマーサポート機能を強化し、フライ油分析をはじめとするアフターフォローやメニュー開発支援などお客さまの課題解決に一層の充実を図りました。開発面では、最近の健康ニーズの高まりによりこめ油の利用が多くなっていることを受け、「日清キャノーラ&こめ油」を開発いたしました(2024年4月上市)。ブレンドしたこめ油特有のうま味により揚げ物がおいしくなるだけではなく、通常のこめ油ブレンド油に比べ劣化を抑える長持ち製法を付与しております。また、外食のお客さま向けに、ご飯をおいしくする「日清炊飯油 お店のごはん用」を開発しました(2024年4月上市)。さらにフードロスや環境配慮など多様化するニーズへ対応した炒め油や麺さばき油などの機能性油脂の開発を推進しております。

2.加工油脂
製菓・製パン商品において、油脂は風味、食感、口どけなどおいしさの大事な機能を担っております。当社では「油脂」を究めることで、チョコレート用油脂を中心としてスペシャリティファットやマーガリン・ショートニングなどの製品を開発しております。また、これらの製品の主要原料油であるパーム油を生産する当社グループのIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.および、業務用チョコレートを販売する当社グループの大東カカオ株式会社の研究開発部門とも連携することで、油脂製造からアプリケーション開発にわたる領域のニーズに応える研究開発を行っております。既存のお客さまへの新たな提案や新規のお客さまの開拓に取り組んだ結果、ココアバターとの相溶性の高いチョコレート用油脂や口どけのよいクリーム用油脂を上市いたしました。コンビニエンスストア向け商品には、当社独自のエステル交換油を活用することで、サクサクとした食感やジューシー感が特長のシートマーガリンが採用になりました。また、機能性を有する素材と油脂を組み合わせた製パン用油剤により、従来よりもしっとり感があるパン生地に仕上がることが可能となり、消費期限の延長やそれによる食品ロス削減が期待されております。

〔加工食品・素材事業〕

1.MCT
MCTの優れた健康性に着目して機能開発を進め、これまでの「体脂肪やウエストサイズを減らす」に加え、「日常活動時の脂肪の燃焼を高める」や「運動時の脂肪の燃焼を高める」などの新たな機能性表示食品を消費者庁に届出することができました。今後は食用油や加工食品へ広く展開することで、マーケットでの認知度向上や価値化を図り、当社の掲げる「すべての人の健康」の実現を推進してまいります。

2.調味料
ドレッシング類では、シニア層の方から高い支持をいただいているアマニ油をお手軽にお使いいただける「日清アマニ油ドレッシング」に、新たな風味として「黒酢たまねぎ」「旨口チョレギ」を追加発売いたしました。また、ドレッシング主力商品として多くのお客さまより支持をいただいている「日清ドレッシングダイエット」に、大容量タイプへの要望にお応えして、人気の「うまくち和風」「まろやかごま風味」に大容量サイズ400mlを追加発売いたしました。

3.機能素材・食品
MCTを使用した商品として、25gの小容量でエネルギーが100kcal摂取できる「ミニタスエネルギーゼリー」の新味3種(マスカット、ヨーグルト、いちご)を追加発売いたしました。さらに粉末タイプの粥ゼリーの素として、「米粥ゼリーの素」「パン粥ゼリーの素」の2品を上市いたしました。1食120g当たり200kcalのエネルギー密度となっており、同量の粥の2.5倍量のエネルギー摂取が可能となっております。加えてたん白質も5~10g配合していることから、たくさん食べられない方に、エネルギーとたん白質を無理なく食べていただける商品となっております。
当社の独自技術による油脂100%の結晶性油脂「コナファット」は、食感改善、分散補助、粉末の流動性改善といった機能を軸に食品用途で幅広くご利用いただいております。食品での用途をさらに拡大するため、チョコレートの粘度調整やクッキーの品質改良などの新たな価値の提案を進めております。また、食品廃棄の削減に向けて、食品アップサイクルへの利用についても用途提案を進めております。非食品分野では環境を意識した脱石油、脱ケミカルを目指した用途開発、市場開拓を進めております。様々な用途での活用方法をご提案することで、販売数量を着実に増やしております。

4.チョコレート
大東カカオ株式会社と連携を取りながら、カカオを中心に、素材にこだわり、配合・物性・製造技術を磨き、他社がまねのできない多様な技術やユーザーの要求にこたえるための高付加価値技術を構築しております。
大東カカオ株式会社の強みであるロースト方法やカカオ産地を組み合わせた風味づくりを行うとともに、当社との連携を強化し、油脂技術を活用した高機能なチョコレートの開発を進めております。また、持続可能な社会への貢献の一環として、サステナブル認証カカオを使用した製品の発売に加え、認証パーム油の導入に向けた取り組みを開始。市場の要求や顧客からの要望に合わせて、認証原料への切り替えを進めるための検討を実施しております。歴史的なカカオ相場の高騰に加え、カカオ豆の安定的な確保への対応のために、従来以外の産地を評価・検証を実施して品質への影響を最小限にとどめ、顧客へ安定した製品をお届けするための検討を実施しております。さらに、カカオ豆の発酵工程の調査、改善のために大学と共同研究や、防災食用チョコレートの開発を進めております。

5.大豆食品素材
加工食品原料の価格高騰を背景に、粒状大豆たん白、全脂大豆粉末、粉末状大豆たん白、脱脂大豆粉末などの大豆食品素材を利用したアプリケーションを開発いたしました。加えて、お客さまのニーズが多様化していることから、粒状大豆たん白を中心にお客さまニーズに即したPB商品の開発を手掛けました。大豆食品素材の栄養・健康機能を訴求し、代替品としての利用にとどまらず大豆食品素材だからこそできる“植物のチカラ®”を強みとしてさらなる価値創造を進めてまいります。

〔ファインケミカル事業〕

化粧品領域における開発活動としては、グローバルな視野で化粧品業界に広く展開できる高機能素材や植物由来成分からなる素材の開発に取り組んでおります。
化学品領域における開発活動としては、情報関連分野・潤滑用途の素材を中心に顧客と直結した開発を進めております。
食品領域における開発活動としては、主力であるMCT製品の品質向上を図るとともに、新たな機能性素材の開発に取り組んでおります。
Industrial Quimica Lasem, S.A.U.との間では、技術的な相乗作用を得るために、製品のみならず原材料評価、品質管理、製品開発、および生産技術など多岐にわたる連携関係を構築してきました。同社が製造販売する、FSSC22000などの認証を背景とした高品質なMCT「QUOLIO(クオリオ)」については、国内展開を図るとともに、高品質な化粧品原料の製造が可能となる生産設備の改良を行い、グローバル供給体制確立への歩みを進めております。
日清奥利友(上海)国際貿易有限公司とは、中国における技術サービスの充実を目的として設置したラボ機能の有効活用を図るとともに、さらに発展させる形で、現地企業を対象とした原料セミナーを複数回開催し、同社製品の優れた特徴をアピールする活動を行い、中国における市場開拓を着実に進めております。
セッツ株式会社においては、外食厨房や食品加工工場、フィットネス施設や介護施設、保育園等、生活のあらゆる場面の衛生管理に役立つ商品やソリューション提供を通じて、「清潔・キレイ」「健康」「快適」な環境づくりに貢献すべく事業活動を行っております。衛生管理事業部 研究開発部では、微生物制御技術、洗浄技術、顧客技術を融合することで、同社ならではの高付加価値商品開発に取り組んでおります。大学や外部機関との共同研究やネットワークも積極的に活用しております。最重点商品の一つであるアルコール製剤ユービコールノロVに関しては、商品力の更なる強化、ラインアップ化に向け、ウイルス対応技術の一層の深化と応用展開に向け精力的に研究活動を継続しております。一方、既存品の鮮度アップ、新製品開発にも力を入れ、特に油汚れ洗浄剤分野においては、新製品、およびリニューアル製品を上市しました。中性でべたつき油汚れに対し高い洗浄性能を有する「油汚れ用中性レンジスター」、食品工場に特有な固形油脂洗浄機能に除菌効果をプラスした「オイルクリーナー」です。発売以来、お客様からも高い評価が得られております。これら活動により、安全・安心、簡便性(時短・労働力減少への対策)といった価値の提供に努めてまいります。
また、顧客起点・現場主義を重要な行動指針に掲げ研究活動を実践してきており、本年度も全国の現場を訪問し、課題解決に繋がる対策や商品提案を積極的に行っております。ユーザー様から高い信頼を獲得するとともに、得られた知見を活かし商品力の強化に繋げてまいります。
学術活動では、大阪工研協会主催の石けん洗剤技術交流会(8月)において、「食品製造現場における洗浄と解析技術を用いた衛生管理」の題名で講演を、日本食品微生物学会学術総会(9月)において、「グラム陰性菌株に対し薬剤感受性が低下する要因の解析」「抗ノロウイルス効果を有する天然抽出物素材のスクリーニング」の2件の発表を行い、後者は優秀発表賞を受賞しました。11月には、食品微生物科学協会主催の食の安全安心セミナーにて「食の衛生管理に向けた秋のセッツ製品のご紹介」の発表、および、NPO法人カビ相談センター主催の生活環境とカビ管理対策セミナーにて「食品製造現場におけるカビ汚染の実態とその除去方法について」のタイトルで講演を行いました。2024年2月には、第48回分析展と講演・技術発表会において、「強力な洗浄力を持つ「ごっそりフライヤースター」の開発~油脂分析からのアプローチ~」のタイトルで発表しました。また、長年研究を行ってきたブドウ種子抽出エキスの抗ウイルス効果メカニズムの解析検討結果が「Screening of Natural Extracts with Anti-Norovirus Effects and Analysis of this Mechanism in Grape Seed Extract」のタイトルで、Journal of Microorganism Control (2023) Vol.28,No.3 に掲載されました。
これら研究開発活動を通じて、引き続き当社グループは衛生管理事業の拡大に努めてまいります。

今後とも技術力の一層の充実を図り、新製品・新技術開発、新分野開拓に積極的に取り組んでいく方針であります。

事業等のリスク株式の総数等


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