有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100W6FA (EDINETへの外部リンク)
株式会社 熊谷組 研究開発活動 (2025年3月期)
当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。
当連結会計年度は、研究開発費として3,137百万円投入した。
当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。
(1) 土木事業
① トンネル補修におけるサポートライニング工法用ダクタル板把持装置の開発
当社では、既設トンネルの覆工内巻補強工としてサポートライニング工法を展開している。当工法は、鋼製支保工と埋設型枠兼用UFCパネルを配置し、既設覆工との隙間に無収縮モルタル等を充填することで両者を一体化して補強構造を構築するものである。これらの設置作業は人力主体で行っているため、パネル1枚の大きさや重量にも自ずと制限が設けられ、工期短縮策における課題の一因となっていた。また、トンネル上部の施工では高い難易度や作業者の体力的負担といった施工環境への対策も求められていた。今回、株式会社アクティオと共同開発した機械は、汎用クレーンとバキューム式吸着器によるパネル把持機構を組み合わせたもので、従来よりも大きなパネルの採用やトンネル全周への対応といった施工の効率化が可能である。把持装置はサクションカップ4個を備え最大300kgの定格能力を有する。作業者は相番の高所作業車からリモコンで機械操作するため、安全で特段の熟練も要しない。実用化に向けた一連の検証では、サクションカップの吸着性能など要素技術の他、技術研究所施設内での実物大施工実験を重ねて施工性に問題ないことも確認してきた。今年度中には実際の施工現場への導入を予定しており、作業者の習熟など作業性の向上や必要な改良検討をさらに進め、安全で効率的な施工の実現と普及展開を図る計画である。
② 高精度水中測位システムとマシンガイダンスを統合した水中遠隔操作システム「AquaMarionette®(アクアマリオネット)」が完成
水中の無人化施工を目指し、音速自動補正機能を備えた高精度水中測位システムとマシンガイダンスを統合した水中バックホウの遠隔操作システム「AquaMarionette®(アクアマリオネット)」を開発した。このシステムは、狭隘な屋外実験水槽においても精度数cmの高精度な水中遠隔制御を実証した。近年、老朽化したインフラの更新や災害復旧のため、河川や海洋などでの精密な水中施工が求められている。しかし、高水圧や視界不良の条件下での作業は通常避けられるため、水中施工の効率化に特化した機械が必要である。そのため、水中遠隔操作が可能な制御系のハードウェア開発、施工機械の姿勢情報を提供するマシンガイダンスシステム、そして高精度に機械の位置を測定する水中測位システムが不可欠である。実証試験では、高精度水中測位システムから得られたデータとバックホウに装備されたセンサーによる姿勢データを統合した。3tクラスの小型水中バックホウを水深4.5mの屋外水槽の目視できない条件下で遠隔操作し、システムの優れた性能を確認した。この実証により、厳しい条件下でも高精度な水中遠隔施工が可能であり、通常の水域でも十分な施工能力を持つことが確認された。水中バックホウの遠隔操作化は、極東建設株式会社の協力で実現した。今後、「AquaMarionette®(アクアマリオネット)」は高水圧や視界不良の条件下においても潜水士なしでの施工が実現でき、河川・海洋・港湾・ダムなどでの高精度水中施工システムとしての活用が期待される。このシステムは水中施工の効率性や安全性を向上させ、新たなプロジェクトへの可能性を広げることを目指している。
③ 覆工コンクリート油圧式流量調整バルブの開発
覆工コンクリートは、トンネル中心を境に左右に配置した配管から、打設口を切り替えながら(段取り替え)コンクリートを交互に打設するのが一般的である。従来の打設方法では、段取り替えごとにコンクリートの供給を一時中断する。段取り替えは作業員が狭隘なセントルを移動するため、転倒や配管落下等の被災リスクに晒されるとともに、段取り替えに時間を要する場合、コールドジョイント等の品質低下を引き起こす。そこで、当社は岐阜工業株式会社と共同で、コンクリートの左右供給量を制御しながら、連続して同時打設が可能な油圧式流量調整バルブを開発した(特許出願中)。
流量調整バルブをセントルの主配管と副配管の間に配置したY字管先端にそれぞれ配置し、側壁からアーチまでの覆工コンクリートを同時連続で打設することが可能である。油圧式流量調整バルブは、シャッターバルブの開度でコンクリート供給量を制御するため、巻厚がばらつく左右のコンクリートを均等な打ち上り高さで管理することが可能である。シャッターバルブ開度をパラメータとした基礎実験では、開度ごとの実測値と理論値のばらつきが少なく、高い精度でコンクリート供給量を制御できることを実証した。今後は、基礎実験の知見を基にして、油圧式流量調整バルブと自動締固めシステム等の各種技術を組み合わせ、災害防止と作業効率向上を両立した、覆工コンクリート連続水平自動打設システムを確立し生産性向上を図る。
④ 半断面施工に適用可能な新型コッター式継手を開発~小型・軽量化により継手重量50%削減に成功~
当社と株式会社ガイアート、オリエンタル白石株式会社、ジオスター株式会社(以下、「開発4社」という)は、橋梁用「コッター床版工法」に従来用いてきたコッター式継手を改良した新型コッター式継手を開発した。この新型継手は、高速道路の床版取替工事における半断面施工にも適用が可能である。コッター床版工法は、プレキャスト床版同士の接合にコッター式継手を用いることで迅速な施工を実現する。従来工法で必要であった現場打ちコンクリートが不要となり、これに伴う作業を削減することで作業日数を約50%短縮し、作業人員を約60%削減することができる。また、床版面積の99%をプレキャスト化できるため、施工効率のみならず床版の耐久性も向上する。床版の接合作業は、ボルトを締め付けるだけの単純な作業となり、鉄筋工や型枠工等の熟練工を必要としない。さらに部分的な取り替えも容易であるため、メンテナンス性や災害時の復旧性にも優れている。新型継手は、従来継手の過剰な部位を特定し最適化することで、同等の性能を保ちながら全長を半分にし、重量を50%削減した。これにより、施工現場での作業性が向上し、継手製造費も大幅に低減され、コスト競争力が強化された。新型継手は、すでにNEXCO試験法442-2019により要求性能を満足することを確認しており、今後は量産体制を整え、本年度中の市場投入を予定している。開発4社は、今後も高速道路のリニューアルプロジェクトを中心に実績を積み重ね、全国の道路リニューアル工事における技術の進化に取り組む方針である。
⑤ Geo-MG®(ジオマシンガイダンス®)の開発
Geo-MG®(ジオマシンガイダンス®)は、3次元地質・土質モデルをマシンガイダンスシステムに組み込むことで、地質分布に応じた適切な地山掘削を可能にし、正確かつ合理的な掘削作業を実現するシステムである。開発の背景には、建設工事で副次的に発生する建設発生土の有効活用が求められるなかで、地質境界に沿って正確に掘削・分別し、適合材料と不適合材料の混入を防ぐ必要性がある。しかし、地中の状態は目視できずオペレータの経験に頼る部分が大きかったため、掘削中に地質境界へ重機を誘導し、効率的な分別を可能にするシステムを開発した。このシステムを活用して、熊本県農林水産部発注の大切畑ダム災害復旧工事において、その有効性を確認した。今後、このシステムを活用することで、掘削地山の地質ごとの分別が容易になり、盛土材料の質の向上や建設発生土の有効利用率の向上を図る。
⑥ 軌道装置接近警報システムの開発
当社は、株式会社アクティオと共同で、トンネル施工時における軌道装置内の安全性向上を目指し、人物検知による「軌道装置接近警報システム」を開発した。このシステムは、脱着可能なカメラと警報出力機構をユニット化し、AIを用いて軌道内の人物検知を行うものであり、軌道装置の編成長に影響を受けることなく利用できる。当システムは、無線カメラユニットと監視モニターユニット間で映像を無線伝送し、人物検知処理は監視ユニット側のメインPCで行う。カメラユニットの映像データを基にAIによる人物検知を行い、検知結果に応じて警報器を作動させるものである。また、軌道装置の後押し運転時には、オペレータの視界確保にも貢献する。開発に先立ち2つの要素実験を行いシステムの確認を行った。1つ目は、シールド坑内におけるカメラ映像伝送の適合性について、内径2.55mのシールド坑内で伝送実験を行った。結果は、障害物のない直線では290mまで伝送が可能であり、見通しの無い急曲線を挟んだ場合でも186mの伝送距離が確認され適用可能と判断した。2つ目は、AIによる人物検知の検証で、画像フレームにタグ付けした教師データを作成し、軌条内にいる人のみを検知できるように学習させ、実運用を想定した試行試験を行った。結果は、シールド坑内での走行時における画像が乱れることはなく、人物検知が手摺の内外で識別されており、システムの有効性が確認された。今後は、現場開始時からシステムを導入して安全性の向上を図る。特にバッテリー機関車の後押し走行時におけるオペレータへの安全運転サポートが期待される。また、バッテリー機関車との連携により、坑内自動走行が可能となるよう開発を進める。
(2) 建築事業
① CADデータからBIMモデルを生成するシステム「CABTrans」を開発
CADデータからBIMモデルを生成するシステム「CABTrans」を燈株式会社と共同開発した。近年、日建連発行のロードマップや国土交通省のガイドラインなどで、施工BIMやフロントローディングの重要性が示されている。当社は2021年から施工請負金額500百万円以上の新築工事で施工BIMを活用しており、簡易的なBIMモデルを作成し、施工検討を行っているが、多くは設計図を参照し人力で入力している。この作業を自動化し、作業時間短縮によるコストダウンや鉄筋情報などのモデル品質の向上、作成時期の前倒しによるフロントローディングの加速などを期待して本システムを開発した。
「CABTrans」は大きく2つのモジュールに分かれており、燈株式会社が開発した、CADデータから情報を取得し、構造化されたCSVデータを出力するモジュール「D-CSV」と、当社が担当した、CSVを読み込み、CSVからRhino-Grasshopper(注1)を経由してArchicad(注2)上にBIMモデルを生成するモジュールである。この2つのモジュールにより、従来のモデル全体の作成時間と比べて、20~30%程度の削減をすることが期待できる。また、リードタイム短縮により早期のBIM対応が可能となる。
今後は、実際の案件に適用することで効果測定を行うとともに、意匠図も含めた対応図面種類の拡充、読み取り精度の向上を行っていく予定である。また、Grasshopper部分をDynamo(注3)による処理に置き換えることで、Revit(注4)への対応も検討を行っている。
(注)1 Rhino-Grasshopper:Robert McNeel & Associates社製3Dソフトウェア「Rhinoceros」上で動作するビジュアルプログラミングツール
2 Archicad:Graphisoft社製BIMモデリングツール
3 Dynamo:Revit上で動作するビジュアルプログラミングツール
4 Revit:Autodesk社製BIMモデリングツール
② 木質耐火部材「環境配慮型λ-WOODⅡ®」が3時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得
木材と被覆材の分別廃棄を可能とした木質耐火部材の、環境配慮型λ-WOODⅡ®(ラムダウッド・ツー)について、柱・梁・床・壁の1~3時間の耐火構造の国土交通大臣認定を取得した。新たに柱・梁3時間及び床・壁1,2時間の耐火認定を取得したことにより、耐火要件上は15階以上の全ての耐火建築物の主要構造部に木造を適用することが可能となった。なお、今回大臣認定を取得した1,2時間耐火のCLT(注)床及び1.5時間耐火の集成材梁は、地上9階建てオフィスビル「(仮称)秋葉原木造オフィスビル計画」にて初採用予定である。
環境配慮型λ-WOODⅡ®の構造は、芯材の木材を石膏ボードの耐火被覆層で被覆した木質耐火部材である。1つ目の特徴は、芯材(木材)とその周囲を耐火被覆する石膏ボードの解体分離が可能な仕様であり、接着剤を一切使用しない留付材のみで固定し、解体時には容易に木材と石膏ボードを分離することを可能にした。これは木材と石膏ボードの再資源化を可能にするとともに、廃棄コストの低減にも寄与する。2つ目の特徴は、表面材の自由性であり、耐火被覆材(石膏ボード)の外周部に張る表面材は、木材のほか、様々な仕様を選択できる。3つ目の特徴は、耐火被覆層の構成を簡素化したことであり、λ-WOODⅡ®では、被覆材を21mmの強化石膏ボードに統一し、現場管理の手間を低減した。一例として、3時間耐火の梁の耐火被覆層は、従来のλ-WOODでは8層だが、λ-WOODⅡは4層に簡素化した。
今後は、主要構造部に木材を適用した15階以上の耐火建築物に積極的に取り組み、普及に向けたさらなる技術開発を進める。
(注)直交集成板(Cross Laminated Timberの略)
③ 品確法に適応した環境配慮型ハーフプレキャスト床板を開発
住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、品確法)の劣化等級3(注1)を満足する環境配慮型ハーフプレキャスト床板を、株式会社旭ダンケと共同開発した。中・高層マンションの床への適用を目的に、実際の生産ラインでの試験施工を行い、現行製品と同等の品質が確保されることを確認した。
建築業界で最も広く使われる建材の一つはコンクリートである。このコンクリートの原材料の一つであるセメントの製造過程では、多くの二酸化炭素が排出されることから、環境負荷低減と持続可能性を目指したコンクリート技術が多く開発されている。ハーフプレキャスト床板の低炭素化は、使用するコンクリートを構成するセメントの一部を高炉スラグ微粉末(注2)に置換する環境配慮コンクリート(CELBIC(注3))の製造技術を参考にしている。
本開発製品の特長は、①JASS10(プレキャスト鉄筋コンクリート工事)の基準を満足し、品確法劣化等級3に適応した製品である。②現行製品と同等の品質性能を確保している。③CO₂排出量を現行製品(コンクリート材料のみ)と比較して、約19%削減できる。④本開発製品は、N認定(注4)を取得した工場で製造している。
環境配慮型ハーフプレキャスト床板は、直近では自社物件への適用を積極的に行う予定であるが、他社案件についても積極的に展開・適用し、販売することを検討している。今後は、適用対象の範囲を拡大するため、様々なプレキャスト部材を開発し、さらなるCO₂削減に向けた検討や社会ニーズに応えるべく環境ラベルの取得などの技術開発を進めていく。
(注)1 品確法は、住宅性能表示制度や新築住宅の10年保証などについてまとめた法律である。住宅性能表示制度によって定められた劣化対策等級のランクは3等級で表され、等級が高いほど建物の耐久性が上がる。等級3は通常想定されている条件のもと、約75~90年間大規模な改修工事をせずに使えるように対策されている。
2 高炉スラグ微粉末は、製鉄所で発生する副産物で、製造における二酸化炭素の排出量がセメントの1/20以下となる。
3 CELBICは、青木あすなろ建設株式会社、株式会社淺沼組、株式会社安藤・間、株式会社奥村組、株式会社鴻池組、五洋建設株式会社、株式会社錢高組、鉄建建設株式会社、東急建設株式会社、東洋建設株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、矢作建設工業株式会社と当社の13社で開発した。
4 一般社団法人プレハブ建築協会におけるPC部材品質認定制度。
④ 20℃封緘養生で材齢28日圧縮強度150N/mm²以上が得られるプレミックス製常温硬化型超高強度グラウト材を開発
20℃封緘養生(注1)において材齢(注2)28日圧縮強度が150N/mm²以上となる常温硬化型の超高強度プレミックスグラウト材を株式会社フローリックと共同開発した。
近年、建設材料は機能向上が求められており、特に自然災害増大や長寿命化に対応する高強度化や高耐久化への要求は高く、超高強度コンクリート等の開発が行われている。セメント系の材料の高強度化に必要な水結合材比の極小化は、十分な流動性確保に相反し、また、高強度の確保には高温給熱養生(注3)の必要な場合もあり、汎用性のある製品は少ない。
今般、流動性確保により充填性を担保し、常温硬化において高強度を確保する配合を検討し、さらにプレミックス化を行い、汎用的かつ安定的に品質を確保できるグラウト材を開発した。これはセメントにシリカフューム、膨張材などの混和材料及び細骨材をプレミックスしたもので、普通セメント又は早強セメントを使用する2配合を用意した。水結合材比はそれぞれ16.0%及び17.0%とし、特殊高性能減水剤を使用して練り混ぜ、剥落防止材にポリプロピレン繊維を添加している。用途としては、高強度コンクリートの接合部や、高強度を要する狭い間隙の充填等であり、給熱養生を行わずに確実な充填と高強度の品質を得ることができる。開発したグラウト材の特徴は、①フロー値(JHS 313)は350mm程度、②空気量は消泡剤を使用して3.5%以下に調整、③圧縮強度は20℃封緘養生で、普通セメント配合では材齢7日120N/mm²、材齢28日160N/mm²。早強セメント配合では材齢7日150N/mm²、材齢28日180N/mm²である。
今後は適用箇所に応じた性能配合や効率的な練混ぜ方法の検討を行う。また、土木学会の設計・施工指針(案)を参考にした材料特性及び耐久性評価を実施し、第三者試験機関から最終的な配合の試験結果を得て外販を検討する。
(注)1 コンクリート表面からの水分の出入りがない状態に保って行う供試体の養生
2 コンクリートを打ち込んでからの経過日数
3 コンクリート周囲表面又は、コンクリート内部から熱量を補給して一定の温度(高温)に保温して養生する方法
⑤ 木材を耐火被覆として利用した鉄骨部材「ドレスウッド」で柱の1.5時間耐火大臣認定を取得~木材利用の拡大に寄与できる新たな耐火技術を開発~
木材と生体溶解性繊維(AESウール)の断熱材で耐火被覆を施した鉄骨部材「ドレスウッド」を株式会社ホルツストラと共同開発し、柱の1.5時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得した。
近年、脱炭素社会に向けた建築物での木材利用が注目され、鉄骨造やRC造においても木材の積極的活用が期待されている。今回開発した「ドレスウッド」は、鉄骨部材にAESウールの断熱材と木材で耐火被覆を施した。木材部分は火災時には炭化しながらゆっくり燃えるため、鉄骨部材への熱伝達を遅らせる効果を持つ。また、軽量で高断熱のAESウールを組み合わせることで耐火被覆全体の厚みを抑えた。木材厚は最小30mm、断熱材を合わせた正味被覆厚は最小60mmとなり、スリムな部材寸法を実現した。さらに、木材は多様な樹種を選択できるため、顧客や設計者のニーズに応じた材料選択が可能なほか、木材あらわしにより室内空間に木質感をもたらし、ぬくもりや親しみやすさを演出する仕上げ材として機能する。
本部材は大臣認定の取得により、建物の最上階から数えて9層までの範囲に使用することが可能となった。現在、地上9階建てオフィスビルにて初採用される予定である。今後も実物件への積極的な採用に取り組むほか、梁の耐火構造の開発や、より長時間の耐火部材の開発を計画している。
当社は、建築物の木造化や木質化を通じた持続可能な社会の実現のために、さらなる取り組みを進める予定である。
(3) 子会社
株式会社ガイアート
① 多機能型縦溝粗面舗装工法(フル・ファンクション・ペーブ)の高耐久化の検討
アスファルトメーカーと共同で、すべり止め効果や凍結抑制効果の高い多機能型粗面舗装用の高耐久化改質アスファルトを開発し、2024年12月に、軽井沢町の同社が管理運営を行っている有料道路“白糸ハイランドウェイ”にて試験施工を実施した。現在、その効果や耐久性についての検証を行っており、優位性が確認でき次第、国土交通省や地方公共団体等への技術提案をしていく。
② 速硬型樹脂モルタル補修材(ダッシュペーブE)の空港補修用への改良
速硬型樹脂モルタル補修材(ダッシュペーブE)は、最適な粒度に調整された5mmトップの骨材と特殊樹脂バインダーを3リッター容量分手練り混合し補修箇所に充填するキット化した同社製品であり、混合から約2分で車両の通行に耐える強度となる。今般、空港における補修材として大量に使用したいとの要望があり、遅延剤添加により30分間施工が可能なワーカビリティを確保できるものに改良した。今後、空港メンテナンス維持への展開を図っていく。
③ モバブルー「カーボンニュートラルタイプ」の開発
モバブルーは、藻類の活着促進や多様な海洋生物の生息場形成を目的とした生物育成ブロックであり、福井県敦賀湾において藻場形成や多種の海洋生物の繁殖実績を有している。今般、さらなる自然共生型ブルーインフラ(ネイチャーポジティブ)を目指し、モバブルーの材料にスラグ等を用いた新たな「カーボンニュートラルタイプ」を開発した。今後、沖縄県で試験施工を行い、沖縄固有のサンゴ類やリュウキュウスガモなどの着床基盤としての有効性及びブルーカーボン生態系としての機能性を検証していく。また、港湾空港技術研究所や民間研究機関と連携した効果検証を継続し、全国展開に向けた提案活動を行っていく。
当連結会計年度は、研究開発費として3,137百万円投入した。
当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。
(1) 土木事業
① トンネル補修におけるサポートライニング工法用ダクタル板把持装置の開発
当社では、既設トンネルの覆工内巻補強工としてサポートライニング工法を展開している。当工法は、鋼製支保工と埋設型枠兼用UFCパネルを配置し、既設覆工との隙間に無収縮モルタル等を充填することで両者を一体化して補強構造を構築するものである。これらの設置作業は人力主体で行っているため、パネル1枚の大きさや重量にも自ずと制限が設けられ、工期短縮策における課題の一因となっていた。また、トンネル上部の施工では高い難易度や作業者の体力的負担といった施工環境への対策も求められていた。今回、株式会社アクティオと共同開発した機械は、汎用クレーンとバキューム式吸着器によるパネル把持機構を組み合わせたもので、従来よりも大きなパネルの採用やトンネル全周への対応といった施工の効率化が可能である。把持装置はサクションカップ4個を備え最大300kgの定格能力を有する。作業者は相番の高所作業車からリモコンで機械操作するため、安全で特段の熟練も要しない。実用化に向けた一連の検証では、サクションカップの吸着性能など要素技術の他、技術研究所施設内での実物大施工実験を重ねて施工性に問題ないことも確認してきた。今年度中には実際の施工現場への導入を予定しており、作業者の習熟など作業性の向上や必要な改良検討をさらに進め、安全で効率的な施工の実現と普及展開を図る計画である。
② 高精度水中測位システムとマシンガイダンスを統合した水中遠隔操作システム「AquaMarionette®(アクアマリオネット)」が完成
水中の無人化施工を目指し、音速自動補正機能を備えた高精度水中測位システムとマシンガイダンスを統合した水中バックホウの遠隔操作システム「AquaMarionette®(アクアマリオネット)」を開発した。このシステムは、狭隘な屋外実験水槽においても精度数cmの高精度な水中遠隔制御を実証した。近年、老朽化したインフラの更新や災害復旧のため、河川や海洋などでの精密な水中施工が求められている。しかし、高水圧や視界不良の条件下での作業は通常避けられるため、水中施工の効率化に特化した機械が必要である。そのため、水中遠隔操作が可能な制御系のハードウェア開発、施工機械の姿勢情報を提供するマシンガイダンスシステム、そして高精度に機械の位置を測定する水中測位システムが不可欠である。実証試験では、高精度水中測位システムから得られたデータとバックホウに装備されたセンサーによる姿勢データを統合した。3tクラスの小型水中バックホウを水深4.5mの屋外水槽の目視できない条件下で遠隔操作し、システムの優れた性能を確認した。この実証により、厳しい条件下でも高精度な水中遠隔施工が可能であり、通常の水域でも十分な施工能力を持つことが確認された。水中バックホウの遠隔操作化は、極東建設株式会社の協力で実現した。今後、「AquaMarionette®(アクアマリオネット)」は高水圧や視界不良の条件下においても潜水士なしでの施工が実現でき、河川・海洋・港湾・ダムなどでの高精度水中施工システムとしての活用が期待される。このシステムは水中施工の効率性や安全性を向上させ、新たなプロジェクトへの可能性を広げることを目指している。
③ 覆工コンクリート油圧式流量調整バルブの開発
覆工コンクリートは、トンネル中心を境に左右に配置した配管から、打設口を切り替えながら(段取り替え)コンクリートを交互に打設するのが一般的である。従来の打設方法では、段取り替えごとにコンクリートの供給を一時中断する。段取り替えは作業員が狭隘なセントルを移動するため、転倒や配管落下等の被災リスクに晒されるとともに、段取り替えに時間を要する場合、コールドジョイント等の品質低下を引き起こす。そこで、当社は岐阜工業株式会社と共同で、コンクリートの左右供給量を制御しながら、連続して同時打設が可能な油圧式流量調整バルブを開発した(特許出願中)。
流量調整バルブをセントルの主配管と副配管の間に配置したY字管先端にそれぞれ配置し、側壁からアーチまでの覆工コンクリートを同時連続で打設することが可能である。油圧式流量調整バルブは、シャッターバルブの開度でコンクリート供給量を制御するため、巻厚がばらつく左右のコンクリートを均等な打ち上り高さで管理することが可能である。シャッターバルブ開度をパラメータとした基礎実験では、開度ごとの実測値と理論値のばらつきが少なく、高い精度でコンクリート供給量を制御できることを実証した。今後は、基礎実験の知見を基にして、油圧式流量調整バルブと自動締固めシステム等の各種技術を組み合わせ、災害防止と作業効率向上を両立した、覆工コンクリート連続水平自動打設システムを確立し生産性向上を図る。
④ 半断面施工に適用可能な新型コッター式継手を開発~小型・軽量化により継手重量50%削減に成功~
当社と株式会社ガイアート、オリエンタル白石株式会社、ジオスター株式会社(以下、「開発4社」という)は、橋梁用「コッター床版工法」に従来用いてきたコッター式継手を改良した新型コッター式継手を開発した。この新型継手は、高速道路の床版取替工事における半断面施工にも適用が可能である。コッター床版工法は、プレキャスト床版同士の接合にコッター式継手を用いることで迅速な施工を実現する。従来工法で必要であった現場打ちコンクリートが不要となり、これに伴う作業を削減することで作業日数を約50%短縮し、作業人員を約60%削減することができる。また、床版面積の99%をプレキャスト化できるため、施工効率のみならず床版の耐久性も向上する。床版の接合作業は、ボルトを締め付けるだけの単純な作業となり、鉄筋工や型枠工等の熟練工を必要としない。さらに部分的な取り替えも容易であるため、メンテナンス性や災害時の復旧性にも優れている。新型継手は、従来継手の過剰な部位を特定し最適化することで、同等の性能を保ちながら全長を半分にし、重量を50%削減した。これにより、施工現場での作業性が向上し、継手製造費も大幅に低減され、コスト競争力が強化された。新型継手は、すでにNEXCO試験法442-2019により要求性能を満足することを確認しており、今後は量産体制を整え、本年度中の市場投入を予定している。開発4社は、今後も高速道路のリニューアルプロジェクトを中心に実績を積み重ね、全国の道路リニューアル工事における技術の進化に取り組む方針である。
⑤ Geo-MG®(ジオマシンガイダンス®)の開発
Geo-MG®(ジオマシンガイダンス®)は、3次元地質・土質モデルをマシンガイダンスシステムに組み込むことで、地質分布に応じた適切な地山掘削を可能にし、正確かつ合理的な掘削作業を実現するシステムである。開発の背景には、建設工事で副次的に発生する建設発生土の有効活用が求められるなかで、地質境界に沿って正確に掘削・分別し、適合材料と不適合材料の混入を防ぐ必要性がある。しかし、地中の状態は目視できずオペレータの経験に頼る部分が大きかったため、掘削中に地質境界へ重機を誘導し、効率的な分別を可能にするシステムを開発した。このシステムを活用して、熊本県農林水産部発注の大切畑ダム災害復旧工事において、その有効性を確認した。今後、このシステムを活用することで、掘削地山の地質ごとの分別が容易になり、盛土材料の質の向上や建設発生土の有効利用率の向上を図る。
⑥ 軌道装置接近警報システムの開発
当社は、株式会社アクティオと共同で、トンネル施工時における軌道装置内の安全性向上を目指し、人物検知による「軌道装置接近警報システム」を開発した。このシステムは、脱着可能なカメラと警報出力機構をユニット化し、AIを用いて軌道内の人物検知を行うものであり、軌道装置の編成長に影響を受けることなく利用できる。当システムは、無線カメラユニットと監視モニターユニット間で映像を無線伝送し、人物検知処理は監視ユニット側のメインPCで行う。カメラユニットの映像データを基にAIによる人物検知を行い、検知結果に応じて警報器を作動させるものである。また、軌道装置の後押し運転時には、オペレータの視界確保にも貢献する。開発に先立ち2つの要素実験を行いシステムの確認を行った。1つ目は、シールド坑内におけるカメラ映像伝送の適合性について、内径2.55mのシールド坑内で伝送実験を行った。結果は、障害物のない直線では290mまで伝送が可能であり、見通しの無い急曲線を挟んだ場合でも186mの伝送距離が確認され適用可能と判断した。2つ目は、AIによる人物検知の検証で、画像フレームにタグ付けした教師データを作成し、軌条内にいる人のみを検知できるように学習させ、実運用を想定した試行試験を行った。結果は、シールド坑内での走行時における画像が乱れることはなく、人物検知が手摺の内外で識別されており、システムの有効性が確認された。今後は、現場開始時からシステムを導入して安全性の向上を図る。特にバッテリー機関車の後押し走行時におけるオペレータへの安全運転サポートが期待される。また、バッテリー機関車との連携により、坑内自動走行が可能となるよう開発を進める。
(2) 建築事業
① CADデータからBIMモデルを生成するシステム「CABTrans」を開発
CADデータからBIMモデルを生成するシステム「CABTrans」を燈株式会社と共同開発した。近年、日建連発行のロードマップや国土交通省のガイドラインなどで、施工BIMやフロントローディングの重要性が示されている。当社は2021年から施工請負金額500百万円以上の新築工事で施工BIMを活用しており、簡易的なBIMモデルを作成し、施工検討を行っているが、多くは設計図を参照し人力で入力している。この作業を自動化し、作業時間短縮によるコストダウンや鉄筋情報などのモデル品質の向上、作成時期の前倒しによるフロントローディングの加速などを期待して本システムを開発した。
「CABTrans」は大きく2つのモジュールに分かれており、燈株式会社が開発した、CADデータから情報を取得し、構造化されたCSVデータを出力するモジュール「D-CSV」と、当社が担当した、CSVを読み込み、CSVからRhino-Grasshopper(注1)を経由してArchicad(注2)上にBIMモデルを生成するモジュールである。この2つのモジュールにより、従来のモデル全体の作成時間と比べて、20~30%程度の削減をすることが期待できる。また、リードタイム短縮により早期のBIM対応が可能となる。
今後は、実際の案件に適用することで効果測定を行うとともに、意匠図も含めた対応図面種類の拡充、読み取り精度の向上を行っていく予定である。また、Grasshopper部分をDynamo(注3)による処理に置き換えることで、Revit(注4)への対応も検討を行っている。
(注)1 Rhino-Grasshopper:Robert McNeel & Associates社製3Dソフトウェア「Rhinoceros」上で動作するビジュアルプログラミングツール
2 Archicad:Graphisoft社製BIMモデリングツール
3 Dynamo:Revit上で動作するビジュアルプログラミングツール
4 Revit:Autodesk社製BIMモデリングツール
② 木質耐火部材「環境配慮型λ-WOODⅡ®」が3時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得
木材と被覆材の分別廃棄を可能とした木質耐火部材の、環境配慮型λ-WOODⅡ®(ラムダウッド・ツー)について、柱・梁・床・壁の1~3時間の耐火構造の国土交通大臣認定を取得した。新たに柱・梁3時間及び床・壁1,2時間の耐火認定を取得したことにより、耐火要件上は15階以上の全ての耐火建築物の主要構造部に木造を適用することが可能となった。なお、今回大臣認定を取得した1,2時間耐火のCLT(注)床及び1.5時間耐火の集成材梁は、地上9階建てオフィスビル「(仮称)秋葉原木造オフィスビル計画」にて初採用予定である。
環境配慮型λ-WOODⅡ®の構造は、芯材の木材を石膏ボードの耐火被覆層で被覆した木質耐火部材である。1つ目の特徴は、芯材(木材)とその周囲を耐火被覆する石膏ボードの解体分離が可能な仕様であり、接着剤を一切使用しない留付材のみで固定し、解体時には容易に木材と石膏ボードを分離することを可能にした。これは木材と石膏ボードの再資源化を可能にするとともに、廃棄コストの低減にも寄与する。2つ目の特徴は、表面材の自由性であり、耐火被覆材(石膏ボード)の外周部に張る表面材は、木材のほか、様々な仕様を選択できる。3つ目の特徴は、耐火被覆層の構成を簡素化したことであり、λ-WOODⅡ®では、被覆材を21mmの強化石膏ボードに統一し、現場管理の手間を低減した。一例として、3時間耐火の梁の耐火被覆層は、従来のλ-WOODでは8層だが、λ-WOODⅡは4層に簡素化した。
今後は、主要構造部に木材を適用した15階以上の耐火建築物に積極的に取り組み、普及に向けたさらなる技術開発を進める。
(注)直交集成板(Cross Laminated Timberの略)
③ 品確法に適応した環境配慮型ハーフプレキャスト床板を開発
住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、品確法)の劣化等級3(注1)を満足する環境配慮型ハーフプレキャスト床板を、株式会社旭ダンケと共同開発した。中・高層マンションの床への適用を目的に、実際の生産ラインでの試験施工を行い、現行製品と同等の品質が確保されることを確認した。
建築業界で最も広く使われる建材の一つはコンクリートである。このコンクリートの原材料の一つであるセメントの製造過程では、多くの二酸化炭素が排出されることから、環境負荷低減と持続可能性を目指したコンクリート技術が多く開発されている。ハーフプレキャスト床板の低炭素化は、使用するコンクリートを構成するセメントの一部を高炉スラグ微粉末(注2)に置換する環境配慮コンクリート(CELBIC(注3))の製造技術を参考にしている。
本開発製品の特長は、①JASS10(プレキャスト鉄筋コンクリート工事)の基準を満足し、品確法劣化等級3に適応した製品である。②現行製品と同等の品質性能を確保している。③CO₂排出量を現行製品(コンクリート材料のみ)と比較して、約19%削減できる。④本開発製品は、N認定(注4)を取得した工場で製造している。
環境配慮型ハーフプレキャスト床板は、直近では自社物件への適用を積極的に行う予定であるが、他社案件についても積極的に展開・適用し、販売することを検討している。今後は、適用対象の範囲を拡大するため、様々なプレキャスト部材を開発し、さらなるCO₂削減に向けた検討や社会ニーズに応えるべく環境ラベルの取得などの技術開発を進めていく。
(注)1 品確法は、住宅性能表示制度や新築住宅の10年保証などについてまとめた法律である。住宅性能表示制度によって定められた劣化対策等級のランクは3等級で表され、等級が高いほど建物の耐久性が上がる。等級3は通常想定されている条件のもと、約75~90年間大規模な改修工事をせずに使えるように対策されている。
2 高炉スラグ微粉末は、製鉄所で発生する副産物で、製造における二酸化炭素の排出量がセメントの1/20以下となる。
3 CELBICは、青木あすなろ建設株式会社、株式会社淺沼組、株式会社安藤・間、株式会社奥村組、株式会社鴻池組、五洋建設株式会社、株式会社錢高組、鉄建建設株式会社、東急建設株式会社、東洋建設株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、矢作建設工業株式会社と当社の13社で開発した。
4 一般社団法人プレハブ建築協会におけるPC部材品質認定制度。
④ 20℃封緘養生で材齢28日圧縮強度150N/mm²以上が得られるプレミックス製常温硬化型超高強度グラウト材を開発
20℃封緘養生(注1)において材齢(注2)28日圧縮強度が150N/mm²以上となる常温硬化型の超高強度プレミックスグラウト材を株式会社フローリックと共同開発した。
近年、建設材料は機能向上が求められており、特に自然災害増大や長寿命化に対応する高強度化や高耐久化への要求は高く、超高強度コンクリート等の開発が行われている。セメント系の材料の高強度化に必要な水結合材比の極小化は、十分な流動性確保に相反し、また、高強度の確保には高温給熱養生(注3)の必要な場合もあり、汎用性のある製品は少ない。
今般、流動性確保により充填性を担保し、常温硬化において高強度を確保する配合を検討し、さらにプレミックス化を行い、汎用的かつ安定的に品質を確保できるグラウト材を開発した。これはセメントにシリカフューム、膨張材などの混和材料及び細骨材をプレミックスしたもので、普通セメント又は早強セメントを使用する2配合を用意した。水結合材比はそれぞれ16.0%及び17.0%とし、特殊高性能減水剤を使用して練り混ぜ、剥落防止材にポリプロピレン繊維を添加している。用途としては、高強度コンクリートの接合部や、高強度を要する狭い間隙の充填等であり、給熱養生を行わずに確実な充填と高強度の品質を得ることができる。開発したグラウト材の特徴は、①フロー値(JHS 313)は350mm程度、②空気量は消泡剤を使用して3.5%以下に調整、③圧縮強度は20℃封緘養生で、普通セメント配合では材齢7日120N/mm²、材齢28日160N/mm²。早強セメント配合では材齢7日150N/mm²、材齢28日180N/mm²である。
今後は適用箇所に応じた性能配合や効率的な練混ぜ方法の検討を行う。また、土木学会の設計・施工指針(案)を参考にした材料特性及び耐久性評価を実施し、第三者試験機関から最終的な配合の試験結果を得て外販を検討する。
(注)1 コンクリート表面からの水分の出入りがない状態に保って行う供試体の養生
2 コンクリートを打ち込んでからの経過日数
3 コンクリート周囲表面又は、コンクリート内部から熱量を補給して一定の温度(高温)に保温して養生する方法
⑤ 木材を耐火被覆として利用した鉄骨部材「ドレスウッド」で柱の1.5時間耐火大臣認定を取得~木材利用の拡大に寄与できる新たな耐火技術を開発~
木材と生体溶解性繊維(AESウール)の断熱材で耐火被覆を施した鉄骨部材「ドレスウッド」を株式会社ホルツストラと共同開発し、柱の1.5時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得した。
近年、脱炭素社会に向けた建築物での木材利用が注目され、鉄骨造やRC造においても木材の積極的活用が期待されている。今回開発した「ドレスウッド」は、鉄骨部材にAESウールの断熱材と木材で耐火被覆を施した。木材部分は火災時には炭化しながらゆっくり燃えるため、鉄骨部材への熱伝達を遅らせる効果を持つ。また、軽量で高断熱のAESウールを組み合わせることで耐火被覆全体の厚みを抑えた。木材厚は最小30mm、断熱材を合わせた正味被覆厚は最小60mmとなり、スリムな部材寸法を実現した。さらに、木材は多様な樹種を選択できるため、顧客や設計者のニーズに応じた材料選択が可能なほか、木材あらわしにより室内空間に木質感をもたらし、ぬくもりや親しみやすさを演出する仕上げ材として機能する。
本部材は大臣認定の取得により、建物の最上階から数えて9層までの範囲に使用することが可能となった。現在、地上9階建てオフィスビルにて初採用される予定である。今後も実物件への積極的な採用に取り組むほか、梁の耐火構造の開発や、より長時間の耐火部材の開発を計画している。
当社は、建築物の木造化や木質化を通じた持続可能な社会の実現のために、さらなる取り組みを進める予定である。
(3) 子会社
株式会社ガイアート
① 多機能型縦溝粗面舗装工法(フル・ファンクション・ペーブ)の高耐久化の検討
アスファルトメーカーと共同で、すべり止め効果や凍結抑制効果の高い多機能型粗面舗装用の高耐久化改質アスファルトを開発し、2024年12月に、軽井沢町の同社が管理運営を行っている有料道路“白糸ハイランドウェイ”にて試験施工を実施した。現在、その効果や耐久性についての検証を行っており、優位性が確認でき次第、国土交通省や地方公共団体等への技術提案をしていく。
② 速硬型樹脂モルタル補修材(ダッシュペーブE)の空港補修用への改良
速硬型樹脂モルタル補修材(ダッシュペーブE)は、最適な粒度に調整された5mmトップの骨材と特殊樹脂バインダーを3リッター容量分手練り混合し補修箇所に充填するキット化した同社製品であり、混合から約2分で車両の通行に耐える強度となる。今般、空港における補修材として大量に使用したいとの要望があり、遅延剤添加により30分間施工が可能なワーカビリティを確保できるものに改良した。今後、空港メンテナンス維持への展開を図っていく。
③ モバブルー「カーボンニュートラルタイプ」の開発
モバブルーは、藻類の活着促進や多様な海洋生物の生息場形成を目的とした生物育成ブロックであり、福井県敦賀湾において藻場形成や多種の海洋生物の繁殖実績を有している。今般、さらなる自然共生型ブルーインフラ(ネイチャーポジティブ)を目指し、モバブルーの材料にスラグ等を用いた新たな「カーボンニュートラルタイプ」を開発した。今後、沖縄県で試験施工を行い、沖縄固有のサンゴ類やリュウキュウスガモなどの着床基盤としての有効性及びブルーカーボン生態系としての機能性を検証していく。また、港湾空港技術研究所や民間研究機関と連携した効果検証を継続し、全国展開に向けた提案活動を行っていく。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E00056] S100W6FA)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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