有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100W178 (EDINETへの外部リンク)
富士電機株式会社 研究開発活動 (2025年3月期)
富士電機は、「2026年度中期経営計画」の研究開発戦略に基づき、現行製品の競争力強化や次世代機の開発、成長戦略をけん引するGX、DXやグローバル商材の新製品開発、及び2030年以降の市場拡大を見据えた、水素・アンモニア・CO2関連などの新技術獲得に取り組んでいます。これらに向けて、パートナー企業やアカデミアとの協業・共創も進めています。
当連結会計年度における富士電機の研究開発費は37,822百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。
また、当連結会計年度において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,373件です。
■エネルギー部門
●発電プラント分野
将来の水素社会の到来に備え、自動車用の固体高分子形燃料電池モジュールを適用した工場・施設向け水素燃料電池システムの開発を進めています。当社独自の運転技術により10年を超える耐久性を実現するとともに、急峻な電力需要への追従運転や自立運転(BCP対応)も可能です。今後、発電容量360kWの実証機を用いてフィールドテストを行う予定です。
●エネルギーマネジメント分野
再生可能エネルギー(再エネ)の普及にともない伸長する蓄電池市場向けに、大容量蓄電池PCSを開発しました。出力容量2,750kVA品をラインアップに追加するとともに、自立運転機能(BCP対応)や低騒音オプションを備えることでさまざまな顧客のニーズに対応します。
●施設・電源システム分野
設備投資が活発な国内・海外の半導体工場やデータセンター向けに、22kVモールド変圧器を開発しました。当社がこれまで培ってきた熱流体解析や電界解析などの技術を活用し、放熱及び絶縁構造を最適化することにより、従来器よりも小型化しました。
工場や交通施設の受配電設備向けに、最新の国内規格「JIS C 62271-200」に準拠したスイッチギヤ「VCM-CLAD(3.6/7.2kV、400~3,000A)」を開発し発売しました。インターロックの強化などに対応することで、顧客設備への安定した電力供給を実現します。
●器具分野
国内トップシェアの電磁開閉器を35年ぶりにフルモデルチェンジした「SC-NEXTシリーズ」の定格電流40~65A品の開発を完了し発売しました。本シリーズは、従来品の長寿命・高信頼性の特徴を継承しつつ、外形の更なる小型化を実現し、制御盤の小型化や高機能化に貢献します。2023年度に発売した11~38A品に加えて、今回の開発で定格電流11A~65A(定格電圧200V)の小型・中型容量のラインアップが完成し、幅広い顧客の用途に応えることが可能となりました。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は9,809百万円です。
■インダストリー部門
●低圧インバータ分野
国内・海外のエレベータメーカー向けに、乗用エレベータ用に制御性能を最適化したインバータ「FRENIC-Lift(LM3)」を開発し発売しました。モータ軸回転角度の検出分解能を向上し、エレベータ始動時のかごの落下量を従来機種に比べて約47%改善したことにより、良好な乗り心地を実現します。
●FAコンポーネント分野
製造ラインやプラントの生産性向上に貢献する新たな機能を搭載したプログラマブルコントローラ「MICREX-SXシリーズ」SPHのCPUモジュールとして、「SPH2200」(監視・シーケンス制御用)、「SPH3300」(モーション制御用)を開発し発売しました。演算エンジンを刷新したことで従来に比べて制御速度を6.5倍向上するとともに、これまで上位機種に搭載していた計測・制御データを定周期で記録する当社独自のデータロギング機能を標準搭載し、自動化・省人化に必要な生産設備のデータを可視化し、製造現場のDXに貢献します。
ロボット、機械装置向けサーボシステム「ALPHA7」シリーズの容量11kW、15kWを開発しました。2023年度に発売した容量2.9kW~7.5kWに加えて、今回の開発でシリーズのラインアップが完成しました。これにより、顧客の幅広いニーズに対応します。
●小容量電源分野
情報通信機器や産業機器向けに小容量UPS「GX100シリーズリニューアル版(2kVA,3kVA)」を開発しました。電源投入時の突入電流に対応し、常時安定した電力供給をするため過負荷耐量を向上しました。
●計測機器・センサ分野
鉄道事業者向けに河川橋梁の健全性を高精度に評価する業界初の橋梁モニタリングシステムを開発し発売しました。従来は、台風や豪雨による増水後、作業員を派遣して目視確認や衝撃振動試験により橋梁の健全性を確認していました。本システムは、橋梁に高分解能加速度センサとセンサデータの伝送機能を搭載したモニタリングシステムを設置して橋梁の固有振動数を自動で取得し、取得したデータを独自のアルゴリズムにより解析することで、橋脚の異常兆候の有無を判定します。これにより現地作業を省力化しつつ、交通インフラの安全性向上に貢献します。
発電プラントやガス設備など高耐圧性能が求められる環境向けに、ピエゾ式抵抗型高圧測定圧力計を開発しました。本製品は、従来の静電容量式圧力センサに比べて、高圧領域で誤差が少ない構造のピエゾ式圧力センサを採用したことで、業界トップクラスの耐圧150MPaを実現しました。これにより、年々掘削深度が深くなり高耐圧化する海底油田設備などに対応します。
半導体製造装置や空調設備向けに、超音波流量計「S-Flow(口径40A,50A)」を開発しました。配管に前面から取り付け可能な構造とし、取り扱いやすさを向上しました。
●駆動制御システム分野
発電や鉄鋼・化学プラント向けに、中型誘導電動機「低圧三相モータMLU2形シリーズ(定格電圧200V、400V)」及び「高圧三相モータMLA6形シリーズ(3,000V、3,300V、6,000V、6,600V)」のモデルチェンジ品を開発し発売しました。本シリーズは、従来機に比べて始動トルクを大きく向上し、始動電流の増加を抑制しました。これにより、搭載したシステムの安定運転に貢献します。
●計測制御システム分野
産業プラント向けに、監視制御システム「MICREX-VieW FOCUS Evolution」ver.2.2を開発しました。複数のエンジニアが同時にプログラムの編集作業を行えるマルチユーザーエンジニアリング機能やエンジニアリングデータの検索性を向上させる統合クロスリファレンス機能を新たに搭載し、エンジニアリング効率を大幅に向上しました。
●原子力・放射線分野
原子力発電所の廃止措置による解体・撤去で発生する廃棄物を分別して適切に処理するため、試料の前処理を含めた分析技術の開発を進めています。これまでに、放射性元素塩素36に対して、誘導結合プラズマ質量分析法を用い、かつ、試料の前処理工程を簡素化し、計測時間を従来の1/30に短縮する技術を確立しています。現在は、分析可能な放射性元素種類の拡充に向けた開発に取り組んでいます。これにより、廃棄物処理の効率化に貢献します。
●情報ソリューション分野
業種・業態を問わず、情報の検索や分析を容易にし、様々な管理業務の効率化を支援するBI(ビジネスインテリジェンス:Business Intelligence)ツール「軽技Web V8.0」を開発し発売しました。本製品は、専門知識が無くとも、簡単な操作でデータを検索・活用できます。今回新たにユニバーサルデザインを取り入れ、より操作性を向上することで、レポート作成などの業務の効率化に貢献します。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は10,446百万円です。
■半導体部門
●産業モジュール分野
太陽光発電システム向けに最適化した第7世代IGBTモジュール1,200V/800A(M276パッケージ)を開発し量産を開始しました。内部レイアウトの改善により、パッケージは従来と同じ外形寸法を維持しながら、従来の1200V/600Aから定格電流を拡大したことで、装置の小型化に貢献します。
鉄道や再エネ発電システム向けに、1,200V系列のAll-SiCモジュール(M295パッケージ)を開発し、量産を開始しました。第2世代SiCトレンチゲート型MOSFET(第2世代SiCチップ)の適用により、従来のSi-IGBTチップに比べて総損失を約70%低減しました。さらに、M295パッケージは、従来の標準パッケージ(M276)に比べて配線インダクタンスを24%削減し、SiC-MOSFETの高速スイッチング時において、ノイズや故障の原因となるサージ電圧を抑制しました。これらにより、インバータなどの顧客装置の効率向上や信頼性向上に貢献します。
再エネ発電システム向けに、「HPnC」(High Power next Core)パッケージに第3世代SiCトレンチゲート型MOSFET(第3世代SiCチップ)を搭載した2,300V/1,200Aの大容量モジュールを開発しサンプル展開を開始しました。第2世代SiCチップに比べ低損失・小型化した第3世代SiCチップを用いることにより、更なる大容量化が求められる再エネ市場の拡大に貢献します。
●車載モジュール分野
軽・小型車用インバータ向けに、750V/600Aの直接水冷型パワーモジュール(M682パッケージ)を開発し量産を開始しました。低損失の第7世代RC-IGBTチップを搭載し、冷却性能を改善することで電力密度をさらに高めました。引き続き、さまざまな出力の電動車に対応するため容量系列の拡大を進めます。
2026年以降のxEV(電動車)モデル向けに、第3世代SiCチップを搭載して発生損失を大幅に低減しつつ、パッケージの薄型と低インダクタンス化を実現した次世代SiCパワーモジュールの開発を進めています。これらの製品を通じて、電動車の更なる高効率化と小型・軽量化に貢献します。
●電源制御用IC分野
電源システム向けに、第4世代臨界モードインターリーブPFC-ICを開発しました。力率向上とTHD(全高調波歪率)の改善により、国際標準規格IEC61000-3-2で定められた高調波電流規制ClassCに準拠しました。また、負荷状態に応じてICの制御方法を自動的に切り替える機能を新たに搭載しました。軽負荷時の効率向上、待機電力の低減に貢献します。
●感光体分野
小規模オフィス向けに、最大A4サイズの印刷に特化した小型カラープリンタ用の有機感光体を開発し量産を開始しました。高感度の電荷輸送材を採用することで画質を向上しました。また、添加剤の配合比率を最適化することにより感光体表面の残留電位の上昇を抑制し、長期間にわたり安定した画像品質を実現しました。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は13,439百万円です。
■食品流通部門
●自動販売機(自販機)分野
販売できる商品の選択肢を広げ、小売業・アグリ分野などのこれまで自販機が活用されていなかった市場へ訴求し、店舗の省人・省力化に貢献する業界初の「冷蔵ロッカー型自販機」を開発し発売しました。本自販機では、商品の大きさに合わせて、顧客自身が商品の収納室の間仕切りを着脱できるため、飲料や食品のような定形品に限らず、これまで販売できなかった野菜や生花などの不定形品に加えて、ホールケーキや寿司折詰めなど大型の冷蔵食品も販売できます。また、収納室の背面から冷気を送り込むダクト循環方式を新たに開発し、収納室容量変更の影響を受けず、温度ムラの無い保冷構造を実現しました。
●店舗流通分野
外食産業やオフィス向けに、業務用全自動コーヒーマシン「Cafe Mania」に外付け可能なミルクユニットを開発しました。ミルクを水蒸気で加熱しながら空気と混合して泡立てる方式を採用することで、口当たりの良い泡質を実現しました。これにより、提供飲料のバリエーションが広がり、ユーザのさまざまな嗜好に対応可能になりました。
店舗のさらなる省エネルギー(省エネ)化やCO2排出量削減のニーズに応えるため、太陽光パネルや蓄電池を併設したコンビニエンスストアのエネルギーを制御する店舗コントローラの次世代機を開発しています。運転環境に対応してショーケースを最適に制御して省エネを実現するとともに、太陽光パネルの発電量や店舗の電力需要の予測制御機能との組み合わせにより、発電した電力を余すことなく活用することで、CO2排出量の削減と購入電力量の低減に貢献します。
●通貨機器分野
2024年7月3日に発行された新紙幣を識別する技術を開発し、釣銭機や自販機のビルバリデータへ搭載しました。なお、既に市場で稼働している釣銭機などに対しては、ソフトウエアの更新のみで新紙幣対応が可能です。これにより、顧客の負担を軽減できます。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は4,116百万円です。
■新技術・基盤技術分野
●パワーエレクトロニクス技術
カーボンニュートラルの実現に向けて、太陽光や風力など再エネの利用拡大が求められています。一方、郊外など大きな電力を流すことのできない系統に再エネを接続する場合、電圧振動が増加する懸念があります。これに対応するために、再エネ用PCSの出力電圧・電流を安定させる新たな制御アルゴリズムを開発しました。本制御アルゴリズムを搭載したPCSの実機検証により、従来は接続困難であった電力系統においても安定して運転が可能であることを確認しました。
リニアモータのさらなる小型化を目指し、位置検出をセンサレスで行う駆動制御技術を開発しました。本技術は、磁石配置から生じる磁束変化を利用して動作位置を検出する方式を採用し、モータ構造の最適化により隣接する磁石からの磁束干渉を低減することで高精度な位置検出を実現しました。これにより、省スペースが求められるアプリケーションへの適用が可能となり、幅広いニーズに対応します。
●AI活用技術
電力取引市場において、再エネで発電した電力を売買するビジネスが拡大しています。そこで、市場取引を行うEMS(Energy Management System)向けに、AIを活用した価格予測技術と取引計画の最適化技術を開発しました。複数の取引市場(卸電力市場、需給調整市場)の中から最適な市場を選択し、売買するタイミングと取引量を自動的に計画します。これにより、独立系発電事業者や特定卸供給事業者など顧客の電力取引における収益最大化が可能となります。
近年増加している洪水への対策として、ダム流入量をAIにより長期かつ高精度に予測する技術を開発しました。本技術は、雨がダムに流れる時間遅れを学習し、3日先までの計画作成を支援します。また、AIの学習モデルや学習手順の最適化により流入量予測の精度を向上させ、発電用ダムの過剰放流を抑制し、発電ロスを低減します。これにより、国土交通省のガイドラインに基づく計画的な事前放流が可能となり、洪水対策と発電効率の両立を実現します。
研究開発における生産性・品質向上や開発リードタイムの短縮に向けて、構造設計やソフトウエア開発における生成AIの活用を進めています。構造設計においては、シミュレーション技術と生成AI技術を融合したジェネレーティブデザインの実用化に取り組んでいます。この技術は、要求仕様や制約条件の範囲で3次元形状の自動生成が可能です。ソフトウエア開発においては、生成AIによるプログラムの自動生成技術を開発しました。引き続き、生成AIを用いたプログラムの試験条件の自動生成技術の開発に取り組む予定です。
●セキュリティ技術
工場など製造現場ではエネルギー利用効率や生産性向上を目的として、設備の消費電力、装置の稼働率や良品率など、様々なデータの活用が進んでいます。一方で、設備や装置のデータ活用には外部サーバとの接続が必要不可欠でありサイバー攻撃による情報流出や生産停止などのリスクが増大することから、セキュリティ対策が重要となります。制御システムにおけるセキュリティ対策に関する標準は、国際標準IEC62443に定められており、この認証取得に向けた技術開発を進めています。今回、メモリ領域へのアクセスを制御する技術を確立し、不正なプログラムの実行/書換えの防止を実現しました。引き続き、不正アクセス防止技術などのセキュリティ対策技術の開発を進める予定です。
●水素・アンモニア・CO2関連技術
水素社会の到来に向けて、水素製造コストの低減が見込めるAEM(Anion Exchange Membrane)型水電解水素生成技術の開発に取り組んでいます。2024年度は、小型セルの試作と耐久性を評価し、セルを大面積化した場合の課題抽出と耐久性向上のための対策検討を実施しました。本研究は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「アニオン膜型アルカリ水電解セルの要素研究と実用化技術の確立」として実施しました。
水素と同様に次世代燃料として期待され、水素キャリアとしても利用可能なアンモニアの社会実装に向けた周辺技術の開発も進めています。アンモニア燃料供給船やバンカリング装置に適用する高感度アンモニア漏えい検知技術や配管内に残留するアンモニアの回収技術などの安全対策技術の開発を行っています。本研究はNEDOのグリーンイノベーション基金事業「次世代船舶の開発」プロジェクトの「アンモニア燃料船サプライチェーン構築における周辺機器開発」として実施しています。
工場用コージェネレーションシステムや船舶のディーゼルエンジンの脱炭素化に向けてCO2分離回収装置の開発に取り組んでいます。これらの比較的小規模なシステムにおいて低コスト化が可能な膜方式を適用したCO2分離技術の開発とともに、膜性能を維持するための排ガスの前処理技術(排ガスの除熱、除湿、集塵)の開発を並行して進めています。2024年度は、前処理装置の機能試作及び評価を実施し、排ガスの流量・圧力変動に追従して前処理プロセスを制御する技術を確立しました。今後、CO2回収装置の実証機の試作と評価を進めます。
●次世代半導体技術
SiCよりさらに低損失な次世代半導体材料として期待されている窒化ガリウム(GaN)を用いた、縦型GaNパワーデバイスを開発しています。量産性に優れる「イオン注入プロセス」を用いたデバイスとして縦型GaNでは世界初の耐圧1,400V、電流10Aの大面積素子を実現しました。本研究の一部は文部科学省「革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業(パワーデバイス領域)」として実施しています。
●材料技術
サーキュラーエコノミーの実現に向けて、リサイクル可能な樹脂材料の実用化に向けた技術開発に取り組んでいます。熱可塑性材料の耐加水分解性や機械強度などの性能を維持するため、材料添加による加水分解抑制や加工条件の最適化を完了しました。今後、リサイクルが困難とされている耐熱性や難燃性が高い熱硬化性樹脂材料を対象に、環境負荷低減樹脂への代替を進める予定です。
■その他部門
当連結会計年度における当部門の研究開発費は8百万円です。
当連結会計年度における富士電機の研究開発費は37,822百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。
また、当連結会計年度において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,373件です。
■エネルギー部門
●発電プラント分野
将来の水素社会の到来に備え、自動車用の固体高分子形燃料電池モジュールを適用した工場・施設向け水素燃料電池システムの開発を進めています。当社独自の運転技術により10年を超える耐久性を実現するとともに、急峻な電力需要への追従運転や自立運転(BCP対応)も可能です。今後、発電容量360kWの実証機を用いてフィールドテストを行う予定です。
●エネルギーマネジメント分野
再生可能エネルギー(再エネ)の普及にともない伸長する蓄電池市場向けに、大容量蓄電池PCSを開発しました。出力容量2,750kVA品をラインアップに追加するとともに、自立運転機能(BCP対応)や低騒音オプションを備えることでさまざまな顧客のニーズに対応します。
●施設・電源システム分野
設備投資が活発な国内・海外の半導体工場やデータセンター向けに、22kVモールド変圧器を開発しました。当社がこれまで培ってきた熱流体解析や電界解析などの技術を活用し、放熱及び絶縁構造を最適化することにより、従来器よりも小型化しました。
工場や交通施設の受配電設備向けに、最新の国内規格「JIS C 62271-200」に準拠したスイッチギヤ「VCM-CLAD(3.6/7.2kV、400~3,000A)」を開発し発売しました。インターロックの強化などに対応することで、顧客設備への安定した電力供給を実現します。
●器具分野
国内トップシェアの電磁開閉器を35年ぶりにフルモデルチェンジした「SC-NEXTシリーズ」の定格電流40~65A品の開発を完了し発売しました。本シリーズは、従来品の長寿命・高信頼性の特徴を継承しつつ、外形の更なる小型化を実現し、制御盤の小型化や高機能化に貢献します。2023年度に発売した11~38A品に加えて、今回の開発で定格電流11A~65A(定格電圧200V)の小型・中型容量のラインアップが完成し、幅広い顧客の用途に応えることが可能となりました。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は9,809百万円です。
■インダストリー部門
●低圧インバータ分野
国内・海外のエレベータメーカー向けに、乗用エレベータ用に制御性能を最適化したインバータ「FRENIC-Lift(LM3)」を開発し発売しました。モータ軸回転角度の検出分解能を向上し、エレベータ始動時のかごの落下量を従来機種に比べて約47%改善したことにより、良好な乗り心地を実現します。
●FAコンポーネント分野
製造ラインやプラントの生産性向上に貢献する新たな機能を搭載したプログラマブルコントローラ「MICREX-SXシリーズ」SPHのCPUモジュールとして、「SPH2200」(監視・シーケンス制御用)、「SPH3300」(モーション制御用)を開発し発売しました。演算エンジンを刷新したことで従来に比べて制御速度を6.5倍向上するとともに、これまで上位機種に搭載していた計測・制御データを定周期で記録する当社独自のデータロギング機能を標準搭載し、自動化・省人化に必要な生産設備のデータを可視化し、製造現場のDXに貢献します。
ロボット、機械装置向けサーボシステム「ALPHA7」シリーズの容量11kW、15kWを開発しました。2023年度に発売した容量2.9kW~7.5kWに加えて、今回の開発でシリーズのラインアップが完成しました。これにより、顧客の幅広いニーズに対応します。
●小容量電源分野
情報通信機器や産業機器向けに小容量UPS「GX100シリーズリニューアル版(2kVA,3kVA)」を開発しました。電源投入時の突入電流に対応し、常時安定した電力供給をするため過負荷耐量を向上しました。
●計測機器・センサ分野
鉄道事業者向けに河川橋梁の健全性を高精度に評価する業界初の橋梁モニタリングシステムを開発し発売しました。従来は、台風や豪雨による増水後、作業員を派遣して目視確認や衝撃振動試験により橋梁の健全性を確認していました。本システムは、橋梁に高分解能加速度センサとセンサデータの伝送機能を搭載したモニタリングシステムを設置して橋梁の固有振動数を自動で取得し、取得したデータを独自のアルゴリズムにより解析することで、橋脚の異常兆候の有無を判定します。これにより現地作業を省力化しつつ、交通インフラの安全性向上に貢献します。
発電プラントやガス設備など高耐圧性能が求められる環境向けに、ピエゾ式抵抗型高圧測定圧力計を開発しました。本製品は、従来の静電容量式圧力センサに比べて、高圧領域で誤差が少ない構造のピエゾ式圧力センサを採用したことで、業界トップクラスの耐圧150MPaを実現しました。これにより、年々掘削深度が深くなり高耐圧化する海底油田設備などに対応します。
半導体製造装置や空調設備向けに、超音波流量計「S-Flow(口径40A,50A)」を開発しました。配管に前面から取り付け可能な構造とし、取り扱いやすさを向上しました。
●駆動制御システム分野
発電や鉄鋼・化学プラント向けに、中型誘導電動機「低圧三相モータMLU2形シリーズ(定格電圧200V、400V)」及び「高圧三相モータMLA6形シリーズ(3,000V、3,300V、6,000V、6,600V)」のモデルチェンジ品を開発し発売しました。本シリーズは、従来機に比べて始動トルクを大きく向上し、始動電流の増加を抑制しました。これにより、搭載したシステムの安定運転に貢献します。
●計測制御システム分野
産業プラント向けに、監視制御システム「MICREX-VieW FOCUS Evolution」ver.2.2を開発しました。複数のエンジニアが同時にプログラムの編集作業を行えるマルチユーザーエンジニアリング機能やエンジニアリングデータの検索性を向上させる統合クロスリファレンス機能を新たに搭載し、エンジニアリング効率を大幅に向上しました。
●原子力・放射線分野
原子力発電所の廃止措置による解体・撤去で発生する廃棄物を分別して適切に処理するため、試料の前処理を含めた分析技術の開発を進めています。これまでに、放射性元素塩素36に対して、誘導結合プラズマ質量分析法を用い、かつ、試料の前処理工程を簡素化し、計測時間を従来の1/30に短縮する技術を確立しています。現在は、分析可能な放射性元素種類の拡充に向けた開発に取り組んでいます。これにより、廃棄物処理の効率化に貢献します。
●情報ソリューション分野
業種・業態を問わず、情報の検索や分析を容易にし、様々な管理業務の効率化を支援するBI(ビジネスインテリジェンス:Business Intelligence)ツール「軽技Web V8.0」を開発し発売しました。本製品は、専門知識が無くとも、簡単な操作でデータを検索・活用できます。今回新たにユニバーサルデザインを取り入れ、より操作性を向上することで、レポート作成などの業務の効率化に貢献します。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は10,446百万円です。
■半導体部門
●産業モジュール分野
太陽光発電システム向けに最適化した第7世代IGBTモジュール1,200V/800A(M276パッケージ)を開発し量産を開始しました。内部レイアウトの改善により、パッケージは従来と同じ外形寸法を維持しながら、従来の1200V/600Aから定格電流を拡大したことで、装置の小型化に貢献します。
鉄道や再エネ発電システム向けに、1,200V系列のAll-SiCモジュール(M295パッケージ)を開発し、量産を開始しました。第2世代SiCトレンチゲート型MOSFET(第2世代SiCチップ)の適用により、従来のSi-IGBTチップに比べて総損失を約70%低減しました。さらに、M295パッケージは、従来の標準パッケージ(M276)に比べて配線インダクタンスを24%削減し、SiC-MOSFETの高速スイッチング時において、ノイズや故障の原因となるサージ電圧を抑制しました。これらにより、インバータなどの顧客装置の効率向上や信頼性向上に貢献します。
再エネ発電システム向けに、「HPnC」(High Power next Core)パッケージに第3世代SiCトレンチゲート型MOSFET(第3世代SiCチップ)を搭載した2,300V/1,200Aの大容量モジュールを開発しサンプル展開を開始しました。第2世代SiCチップに比べ低損失・小型化した第3世代SiCチップを用いることにより、更なる大容量化が求められる再エネ市場の拡大に貢献します。
●車載モジュール分野
軽・小型車用インバータ向けに、750V/600Aの直接水冷型パワーモジュール(M682パッケージ)を開発し量産を開始しました。低損失の第7世代RC-IGBTチップを搭載し、冷却性能を改善することで電力密度をさらに高めました。引き続き、さまざまな出力の電動車に対応するため容量系列の拡大を進めます。
2026年以降のxEV(電動車)モデル向けに、第3世代SiCチップを搭載して発生損失を大幅に低減しつつ、パッケージの薄型と低インダクタンス化を実現した次世代SiCパワーモジュールの開発を進めています。これらの製品を通じて、電動車の更なる高効率化と小型・軽量化に貢献します。
●電源制御用IC分野
電源システム向けに、第4世代臨界モードインターリーブPFC-ICを開発しました。力率向上とTHD(全高調波歪率)の改善により、国際標準規格IEC61000-3-2で定められた高調波電流規制ClassCに準拠しました。また、負荷状態に応じてICの制御方法を自動的に切り替える機能を新たに搭載しました。軽負荷時の効率向上、待機電力の低減に貢献します。
●感光体分野
小規模オフィス向けに、最大A4サイズの印刷に特化した小型カラープリンタ用の有機感光体を開発し量産を開始しました。高感度の電荷輸送材を採用することで画質を向上しました。また、添加剤の配合比率を最適化することにより感光体表面の残留電位の上昇を抑制し、長期間にわたり安定した画像品質を実現しました。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は13,439百万円です。
■食品流通部門
●自動販売機(自販機)分野
販売できる商品の選択肢を広げ、小売業・アグリ分野などのこれまで自販機が活用されていなかった市場へ訴求し、店舗の省人・省力化に貢献する業界初の「冷蔵ロッカー型自販機」を開発し発売しました。本自販機では、商品の大きさに合わせて、顧客自身が商品の収納室の間仕切りを着脱できるため、飲料や食品のような定形品に限らず、これまで販売できなかった野菜や生花などの不定形品に加えて、ホールケーキや寿司折詰めなど大型の冷蔵食品も販売できます。また、収納室の背面から冷気を送り込むダクト循環方式を新たに開発し、収納室容量変更の影響を受けず、温度ムラの無い保冷構造を実現しました。
●店舗流通分野
外食産業やオフィス向けに、業務用全自動コーヒーマシン「Cafe Mania」に外付け可能なミルクユニットを開発しました。ミルクを水蒸気で加熱しながら空気と混合して泡立てる方式を採用することで、口当たりの良い泡質を実現しました。これにより、提供飲料のバリエーションが広がり、ユーザのさまざまな嗜好に対応可能になりました。
店舗のさらなる省エネルギー(省エネ)化やCO2排出量削減のニーズに応えるため、太陽光パネルや蓄電池を併設したコンビニエンスストアのエネルギーを制御する店舗コントローラの次世代機を開発しています。運転環境に対応してショーケースを最適に制御して省エネを実現するとともに、太陽光パネルの発電量や店舗の電力需要の予測制御機能との組み合わせにより、発電した電力を余すことなく活用することで、CO2排出量の削減と購入電力量の低減に貢献します。
●通貨機器分野
2024年7月3日に発行された新紙幣を識別する技術を開発し、釣銭機や自販機のビルバリデータへ搭載しました。なお、既に市場で稼働している釣銭機などに対しては、ソフトウエアの更新のみで新紙幣対応が可能です。これにより、顧客の負担を軽減できます。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は4,116百万円です。
■新技術・基盤技術分野
●パワーエレクトロニクス技術
カーボンニュートラルの実現に向けて、太陽光や風力など再エネの利用拡大が求められています。一方、郊外など大きな電力を流すことのできない系統に再エネを接続する場合、電圧振動が増加する懸念があります。これに対応するために、再エネ用PCSの出力電圧・電流を安定させる新たな制御アルゴリズムを開発しました。本制御アルゴリズムを搭載したPCSの実機検証により、従来は接続困難であった電力系統においても安定して運転が可能であることを確認しました。
リニアモータのさらなる小型化を目指し、位置検出をセンサレスで行う駆動制御技術を開発しました。本技術は、磁石配置から生じる磁束変化を利用して動作位置を検出する方式を採用し、モータ構造の最適化により隣接する磁石からの磁束干渉を低減することで高精度な位置検出を実現しました。これにより、省スペースが求められるアプリケーションへの適用が可能となり、幅広いニーズに対応します。
●AI活用技術
電力取引市場において、再エネで発電した電力を売買するビジネスが拡大しています。そこで、市場取引を行うEMS(Energy Management System)向けに、AIを活用した価格予測技術と取引計画の最適化技術を開発しました。複数の取引市場(卸電力市場、需給調整市場)の中から最適な市場を選択し、売買するタイミングと取引量を自動的に計画します。これにより、独立系発電事業者や特定卸供給事業者など顧客の電力取引における収益最大化が可能となります。
近年増加している洪水への対策として、ダム流入量をAIにより長期かつ高精度に予測する技術を開発しました。本技術は、雨がダムに流れる時間遅れを学習し、3日先までの計画作成を支援します。また、AIの学習モデルや学習手順の最適化により流入量予測の精度を向上させ、発電用ダムの過剰放流を抑制し、発電ロスを低減します。これにより、国土交通省のガイドラインに基づく計画的な事前放流が可能となり、洪水対策と発電効率の両立を実現します。
研究開発における生産性・品質向上や開発リードタイムの短縮に向けて、構造設計やソフトウエア開発における生成AIの活用を進めています。構造設計においては、シミュレーション技術と生成AI技術を融合したジェネレーティブデザインの実用化に取り組んでいます。この技術は、要求仕様や制約条件の範囲で3次元形状の自動生成が可能です。ソフトウエア開発においては、生成AIによるプログラムの自動生成技術を開発しました。引き続き、生成AIを用いたプログラムの試験条件の自動生成技術の開発に取り組む予定です。
●セキュリティ技術
工場など製造現場ではエネルギー利用効率や生産性向上を目的として、設備の消費電力、装置の稼働率や良品率など、様々なデータの活用が進んでいます。一方で、設備や装置のデータ活用には外部サーバとの接続が必要不可欠でありサイバー攻撃による情報流出や生産停止などのリスクが増大することから、セキュリティ対策が重要となります。制御システムにおけるセキュリティ対策に関する標準は、国際標準IEC62443に定められており、この認証取得に向けた技術開発を進めています。今回、メモリ領域へのアクセスを制御する技術を確立し、不正なプログラムの実行/書換えの防止を実現しました。引き続き、不正アクセス防止技術などのセキュリティ対策技術の開発を進める予定です。
●水素・アンモニア・CO2関連技術
水素社会の到来に向けて、水素製造コストの低減が見込めるAEM(Anion Exchange Membrane)型水電解水素生成技術の開発に取り組んでいます。2024年度は、小型セルの試作と耐久性を評価し、セルを大面積化した場合の課題抽出と耐久性向上のための対策検討を実施しました。本研究は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「アニオン膜型アルカリ水電解セルの要素研究と実用化技術の確立」として実施しました。
水素と同様に次世代燃料として期待され、水素キャリアとしても利用可能なアンモニアの社会実装に向けた周辺技術の開発も進めています。アンモニア燃料供給船やバンカリング装置に適用する高感度アンモニア漏えい検知技術や配管内に残留するアンモニアの回収技術などの安全対策技術の開発を行っています。本研究はNEDOのグリーンイノベーション基金事業「次世代船舶の開発」プロジェクトの「アンモニア燃料船サプライチェーン構築における周辺機器開発」として実施しています。
工場用コージェネレーションシステムや船舶のディーゼルエンジンの脱炭素化に向けてCO2分離回収装置の開発に取り組んでいます。これらの比較的小規模なシステムにおいて低コスト化が可能な膜方式を適用したCO2分離技術の開発とともに、膜性能を維持するための排ガスの前処理技術(排ガスの除熱、除湿、集塵)の開発を並行して進めています。2024年度は、前処理装置の機能試作及び評価を実施し、排ガスの流量・圧力変動に追従して前処理プロセスを制御する技術を確立しました。今後、CO2回収装置の実証機の試作と評価を進めます。
●次世代半導体技術
SiCよりさらに低損失な次世代半導体材料として期待されている窒化ガリウム(GaN)を用いた、縦型GaNパワーデバイスを開発しています。量産性に優れる「イオン注入プロセス」を用いたデバイスとして縦型GaNでは世界初の耐圧1,400V、電流10Aの大面積素子を実現しました。本研究の一部は文部科学省「革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業(パワーデバイス領域)」として実施しています。
●材料技術
サーキュラーエコノミーの実現に向けて、リサイクル可能な樹脂材料の実用化に向けた技術開発に取り組んでいます。熱可塑性材料の耐加水分解性や機械強度などの性能を維持するため、材料添加による加水分解抑制や加工条件の最適化を完了しました。今後、リサイクルが困難とされている耐熱性や難燃性が高い熱硬化性樹脂材料を対象に、環境負荷低減樹脂への代替を進める予定です。
■その他部門
当連結会計年度における当部門の研究開発費は8百万円です。
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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