有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100W55U (EDINETへの外部リンク)
セイコーエプソン株式会社 研究開発活動 (2025年3月期)
(1)研究開発の考え方と体制
エプソンは創業以来、「省・小・精の技術」を核とした独自の技術力を強みに、社会に価値を提供してきました。現在は、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」のもと、社会課題の解決を起点とした技術開発へとシフトし、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
技術開発においては、顧客価値や事業性を踏まえたうえで、当社の技術的実力を客観的に評価し、ありたい姿とのギャップを明確化します。そのギャップを埋めるために、複数の開発シナリオを構築するアプローチを採用しています。最も高い成果が期待できる「プランA」を主軸としつつ、QCD(品質・コスト・納期)の一部を調整することで実現性を高めた「プランB」「プランC」も並行して検討。これにより、商品化・事業化への最短ルートを確保しています。
また、開発初期段階から社外パートナーとの共創を積極的に取り入れ、試行錯誤のプロセスに多様な知見を取り込む「開発のフロントローディング化」を推進しています。課題解決のサイクルを高速化させることで開発の質とスピードの両立を図っています。
エプソンは、研究開発を経営基盤強化の中核と位置づけ、基盤技術・コア技術・製品技術の継続的な進化に取り組んでいます。特に今後は、ものづくり力に加え、材料技術、AI、デジタル技術の強化を通じて、既存事業の競争力向上と新規事業創出に向けた技術基盤の構築を加速させます。
研究開発体制は、各事業部門が製品開発および事業に直結するコア技術開発を担い、本社開発部門が複数事業にまたがる基盤技術や長期的視点での新技術開発を担当しています。明確な役割分担のもと、密接な連携を図りながら全社一体となって技術革新に取り組んでいます。
エプソンは、これからも技術開発を通じて社会課題の解決に挑み、新たな価値創造に果敢にチャレンジしてまいります。
(2)研究開発費
当連結会計年度の研究開発費総額は428億円であり、売上収益の3.1%にあたります。各セグメントの内訳は、プリンティングソリューションズ事業が172億円、ビジュアルコミュニケーション事業が69億円、マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業が57億円、その他および全社が127億円です。なお、その他および全社の研究開発費には、事業強化や新規事業創出のための技術基盤の構築に必要な研究開発などを含みます。
■セグメント別研究開発費(2024年度)
(3)セグメント別の研究開発の目的および成果
①プリンティングソリューションズ事業セグメント
当領域は、インクジェット技術・紙再生技術とオープンなソリューションにより、環境負荷低減・生産性向上を実現し、印刷の進化を主導することを目指しています。そのために、エプソン独自のインクジェット技術「Heat-Free Technology」による商品ラインアップの拡大、ソリューションの提供を進め、環境性能の訴求によるレーザープリンターからインクジェットプリンターへのテクノロジーシフトの実現に取り組んでいます。
この方針に基づき、オフィスの印刷状況に合わせてプランや機器を選べる「スマートチャージ」<LM>シリーズの新商品として、「LM-C400」を発売しました。ラインヘッドを搭載することで印刷速度40枚/分(※1)の高い生産性を実現し、新たにA4カラーインクジェット複合機をラインアップすることでオフィスにおけるさまざまなニーズに対応します。加えて、印字プロセスに熱を使わない「Heat-Free Technology」を採用したインクジェット方式によって、稼働時の最大消費電力160W以下(※2)を実現し、待機時も含めたトータルの消費電力量を示すTEC値も0.19kWh(※3)と低く、オフィスの脱炭素化の取り組みとして有効な手段となります。
紙再生技術では、乾式オフィス製紙機PaperLabのメインユニット「Q-5000」および紙源プロセッサー「Q-40」を発売しました。PaperLabは、水を使わず(※4)に使用済みの紙を原料として新たな紙を生産できるため、オフィス内などでの紙資源循環に関連する活動を通じ、環境負荷低減に加えて多様な人材へも活躍の場を提供し、持続可能な社会の実現に貢献してきました。紙源プロセッサーは使用済みの紙を再生紙に適した形状かつ機密内容が判読できなくなるレベル(※5)まで細かく細断したあと、メインユニットに細断紙片を投入することで新たな紙「Dry Fiber Paper」(※6)を生み出します。このプロセスにより、様々な場所から安心して古紙を回収することが可能となり、複数の企業や事業所間、自治体を中心とした地域社会の皆さまをつなぐ新たな資源循環の形を実現します。
※1 A4縦片面。印刷スピード算出条件は下記参照
https://www.epson.jp/products/printer/sokutei.htm
※2 本体のみの最大消費電力(用紙カセット1段時)
※3 本体のみのTEC値(用紙カセット1段時)。TEC値:オフィスでの使用を想定した1週間の平均電力量。国際エネルギースタープログラムで定められた測定方法による数値
※4 機器内の湿度を保つために少量の水を使用。「Q-5000」では繊維結合の際にも少量の水を使用
※5 ISO/IEC 21964-2 Security Level P4に準拠
※6 PaperLabを用いて製紙した再生紙の総称
当領域は、インクジェット技術と多様なソリューションにより、印刷のデジタル化を主導し、環境負荷低減・生産性向上の実現を目指しています。そのために、多様なメディア・素材への印刷を実現するインクジェット技術のポテンシャルを引き出し、商業・産業印刷のデジタル化を後押しするとともに、分散印刷を支援するクラウドサービス「Epson Cloud Solution PORT」などのソリューションを通じて印刷業務における生産性向上のサポートに取り組んでいます。
この方針に基づき、エプソンでは初めてとなるDTFilm(※7)専用プリンター「SC-G6050」を発売しました。プリントヘッドを清潔に保つために必要な「吸引キャップ」に自動クリーニング機能を搭載したほか、ロール式の布製ワイパーにより常に新しい布でプリントヘッドを拭きとるため、毎日の部品清掃が不要です。さらに、ホワイトインクの自動循環システムでインク詰まりを防ぐなど、充実した自動メンテナンス機能によるメンテナンス工数の大幅削減と安定稼働を実現します。また、用途に合わせて選べるプリントモードにより、高画質でDTFilmならではの鮮やかな発色と、短納期でも安心して作業が進行できる生産性を両立しました。
また、ラベル印刷業の人手不足や、デジタル印刷機を導入したもののスキル習得までの課題を解決するために、 「SurePress」を活用したデジタル印刷ワークフロー「Epson Workflow Cloud for SurePress」の提供を開始しました。電子作業指示書(JDF)によるワークフローの自動化に加え、「一括印刷機能」によって刃型違いの複数ジョブの連続印刷を実現し、ラベル生産工程における自動化および効率化を図り、「省人化」と「スキルレス」を実現します。
※7 Direct to Film:転写印刷用フィルムなどへの直接印刷のこと
②ビジュアルコミュニケーション事業セグメント
当領域は、感動の映像体験と快適なビジュアルコミュニケーションで人・モノ・情報・サービスをつなぎ、「学び・働き・暮らし」を支援することを目指しています。そのために、高画質な大画面を実現するレーザー光源採用の高輝度プロジェクターの開発や、スマート化により使用環境・用途・シーンを拡大する設置性の高いホームプロジェクターの開発に取り組んでいます。
この方針に基づき、ビジネスプロジェクター高輝度モデル「EB-PQシリーズ」を発売しました。4Kの高画質を実現する2軸シフトテクノロジー「4K Crystal Motion Technology」(※8)を搭載し、高輝度かつ高解像度による迫力あるプロジェクションでイマーシブな空間演出での映像体験価値の向上を実現します。
ホームプロジェクターでは、気軽に高画質な大画面映像を楽しめる「EF-21」「EF-22」を発売しました。エプソン独自の3LCD技術と先進のレーザー光源により、明るく鮮明かつ色再現性の高い映像を実現したほか、シームレスに自動で映像のゆがみとフォーカス補正が行えるため、設置性が向上しました。また、Google TVTM機能とスピーカー内蔵により、Wi-FiⓇの接続環境があればこれ一台で音楽や有料/無料の動画配信サービスを大画面で楽しめます。
※8 4K信号を入力し、2軸シフトテクノロジーによってスクリーン上で4Kの高画質を表示
③マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント
当領域は、環境負荷に配慮した「生産性・柔軟性が高い生産システム」を共創し、ものづくりを革新することを目指しています。
この方針に基づき、産業用スカラ(水平多関節)ロボットの新商品として、「GXシリーズ」に対応したコントローラー「RC800-A」(※9)およびティーチペンダント「TP4」(※10)の受注を開始しました。ロボットの動きを制御するための装置であるコントローラー「RC800-A」は、お客様のニーズが高い「コンベヤートラッキング」の精度向上や、力覚センサーボードを標準搭載することで、より自由度の高いシステム構築ができるなど、お客様の使い勝手を向上させています。コントローラーオプションのティーチペンダント「TP4」は、エプソンロボット統合ソフトウエア「Epson RC+8.0」(※11)を内蔵し、パソコンなしでもプログラム開発が可能です。また、従来品より重さを1.2kgに軽量化したことで作業時の負荷を軽減したことに加え、消費電力を25Wから15W以下へ削減したことで環境負荷低減に貢献します。
自動化ニーズが高まる食品製造業向けには、食品グリス仕様モデルの「Tシリーズ」「LSシリーズ」「GXシリーズ」の受注を開始しました。3モデル7機種の豊富なラインアップにより、お客様の用途に合わせた機種の選択が可能で、さまざまな食品製造工程における自動化を支援し、労働人口減少といった社会課題解決に貢献していきます。
※9 「GX-Cシリーズ」ロボットの「GX4-C」「GX8-C」に対応
※10 スカラロボットと6軸(垂直多関節)ロボットに対応
※11 詳細については下記参照
https://www.epson.jp/products/robots/lineup/software/
当領域は、匠の技能、センシング技術を活用したソリューションを共創し、お客様の多様なライフスタイルを彩ることを目指しています。ウオッチ分野では、感性に訴えるデザイン・高品質な商品を、お値打ち感ある価格で提供すること、センシング分野では、センシング技術や分析アルゴリズムを活用した新たなソリューションの共創に取り組んでいます。
ウオッチ分野では、「Orient Star」のコンテンポラリーコレクションM34から、ペルセウス座流星群をデザインテーマとした独創的なダイヤルと、シリコン製がんぎ車搭載の高性能ムーブメントを特長とする「M34 F8 デイト」の新モデルを発売予定です。ブラック文字盤の限定2モデルには、エレクトロニクス分野で使用されている「金属ナノ粒子積層技術」を世界で初めて腕時計作りに応用(※12)し、極めて繊細で精巧、かつ奥行き感のある文字板を表現しました。
センシング分野において、エプソンはマテリアリティの一つである「生活の質向上」の価値創造戦略のもと、センシング技術を活用して、パーソナライズされた理想的なトレーニングを提供し、お客様の多様なライフスタイルを豊かにすることを目指しています。当期は、小中学生を対象とするスポーツスクールの運営団体向けに、子どもの運動能力向上を支援する新サービス「RevUp Physical Trainer」の提供を開始しました。本サービスでは、エプソン独自のモーションセンシング技術「M-Tracerテクノロジー」を搭載した小型センシング端末を装着し、基本的な運動動作を行うことで、動作回数の計測に加え、身体の詳細な動きの解析が可能です。解析結果に基づき、一人ひとりに合わせた正しい身体の動かし方を習得するための診断アドバイスをレポートとして提供します。さらに、計測・解析結果を時系列で確認できる「成長ログ」により、継続的な指導を通じた運動能力の向上をサポートします。また、本サービスは複数ユーザーの同時計測に対応しており、大人数でも効率的な計測が可能です。
※12 腕時計の文字板への加飾において、金属ナノ粒子/金属ナノインクを積層させてプリントする技術として世界初。2024年12月~2025年1月実施の「金属ナノ粒子積層技術(金属ナノ粒子/金属ナノインクを用いた時計文字板加飾技術)」に関する市場調査(※13)および当該領域における先行事業者(類似競合事業者)に関する知財調査
※13 「世界初」検証調査。株式会社未来トレンド研究機構調べ(2025年1月27日現在)
「RevUp Physical Trainer」サービスコンセプト
当領域は、「省・小・精の技術」を極めた水晶と半導体の技術融合の強みを生かし、タイミングデバイス、半導体、センサーにより、成長が著しい高速・大容量通信インフラ、IoT社会、およびモビリティ社会など、スマート化する社会の実現に貢献する商品開発に取り組んでいます。
水晶発振器分野では、低消費電力かつ小型で、次世代通信インフラの基準信号源に対応した恒温槽付水晶発振器「OG7050CAN」を開発しました。近年、第5世代通信システム(5G)/IoTの普及等による通信データトラフィック増大に伴い、基地局やデータセンターの電力消費量が急増することが予想されており、そこで使用される機器には低消費電力化が求められています。そのような中、エプソン独自の水晶デバイスと半導体、さらには実装技術の融合により、従来品と比較して56%減の低消費電力化および体積比85%減の小型化を実現しました。
半導体分野では、補聴器などの小型機器向けパワーマネジメントIC「S1A00210B」を開発しました。MHz帯の電磁誘導周波数に対応させることで小型コイルの使用が可能になり、本体の小型化に貢献します。また、特性の異なるバッテリーを使い分けできるように充電プロファイルを2種類記憶できることと、充放電回数(サイクル回数)管理して充電回数に応じた最適な充電方法を適用する機能を備えています。これらにより、充電時間の短縮やバッテリー寿命を延ばすことに貢献し、補聴器使用者の利便性向上につながることが期待できます。
④その他および全社
当領域では、各事業セグメントに共通する生産技術の高度化、DX基盤の強化、事業競争力を支える基礎研究、新規事業創出に向けた先端技術の研究開発に取り組んでいます。
全社的な取り組みとしては、「環境ビジョン2050」の実現に向けた環境技術の開発を推進しています。2024年度は、長期的な取り組みとして、CO2除去技術と藻類を活用したカーボンマイナス技術の研究開発を推進しました。
インクジェットプリンターで培った薄膜技術を応用し、CO2を効率的に分離・回収する分離膜フィルターを開発しました。従来の熱処理を伴う方式に比べ、低エネルギーでCO2回収が可能となるこの技術は、小型・効率の良い回収システムから、火力発電所や製鉄所などへの導入を視野に入れた研究が進められています。
また、微細藻類(円石藻)を活用したCO2固定化技術の研究も進行中で、森林の数十倍に相当するCO2吸収能力を持つ藻類の育種・培養技術の最適化を図っています。さらに、緑藻を用いたCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)技術の開発も進めており、CO2を資源として活用する新たな循環モデルの構築を目指しています。
加えて、グループ会社であるエプソンアトミックスでは、金属資源の循環利用を目的とした新工場の建設を青森県八戸市で進めています。2025年6月の稼働を目指すこの工場では、エプソングループ内外から排出される金属端材や使用済み金型などの不要な金属を再資源化し、金属粉末製品の原料として再利用することでバージン原料の使用を削減し、CO2排出量の低減に貢献します。また、同工場では新精錬プロセスの導入により、金属資源の循環利用を実現することに加え、安定的に高品質な製品を供給し、次世代の省電力・小型デバイスの実現に貢献します。また、エプソングループの「環境ビジョン2050」に基づく「地下資源(※14)消費ゼロ」を目指す取り組みの一つとして、金属の資源循環可能な拠点を目指します。
※14 原油、金属などの枯渇性資源
エプソンは創業以来、「省・小・精の技術」を核とした独自の技術力を強みに、社会に価値を提供してきました。現在は、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」のもと、社会課題の解決を起点とした技術開発へとシフトし、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
技術開発においては、顧客価値や事業性を踏まえたうえで、当社の技術的実力を客観的に評価し、ありたい姿とのギャップを明確化します。そのギャップを埋めるために、複数の開発シナリオを構築するアプローチを採用しています。最も高い成果が期待できる「プランA」を主軸としつつ、QCD(品質・コスト・納期)の一部を調整することで実現性を高めた「プランB」「プランC」も並行して検討。これにより、商品化・事業化への最短ルートを確保しています。
また、開発初期段階から社外パートナーとの共創を積極的に取り入れ、試行錯誤のプロセスに多様な知見を取り込む「開発のフロントローディング化」を推進しています。課題解決のサイクルを高速化させることで開発の質とスピードの両立を図っています。
エプソンは、研究開発を経営基盤強化の中核と位置づけ、基盤技術・コア技術・製品技術の継続的な進化に取り組んでいます。特に今後は、ものづくり力に加え、材料技術、AI、デジタル技術の強化を通じて、既存事業の競争力向上と新規事業創出に向けた技術基盤の構築を加速させます。
研究開発体制は、各事業部門が製品開発および事業に直結するコア技術開発を担い、本社開発部門が複数事業にまたがる基盤技術や長期的視点での新技術開発を担当しています。明確な役割分担のもと、密接な連携を図りながら全社一体となって技術革新に取り組んでいます。
エプソンは、これからも技術開発を通じて社会課題の解決に挑み、新たな価値創造に果敢にチャレンジしてまいります。
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(2)研究開発費
当連結会計年度の研究開発費総額は428億円であり、売上収益の3.1%にあたります。各セグメントの内訳は、プリンティングソリューションズ事業が172億円、ビジュアルコミュニケーション事業が69億円、マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業が57億円、その他および全社が127億円です。なお、その他および全社の研究開発費には、事業強化や新規事業創出のための技術基盤の構築に必要な研究開発などを含みます。
■セグメント別研究開発費(2024年度)
セグメントの名称 | 研究開発費(億円) |
プリンティングソリューションズ事業 | 172 |
ビジュアルコミュニケーション事業 | 69 |
マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業 | 57 |
その他および全社 | 127 |
合計 | 428 |
(3)セグメント別の研究開発の目的および成果
①プリンティングソリューションズ事業セグメント
当領域は、インクジェット技術・紙再生技術とオープンなソリューションにより、環境負荷低減・生産性向上を実現し、印刷の進化を主導することを目指しています。そのために、エプソン独自のインクジェット技術「Heat-Free Technology」による商品ラインアップの拡大、ソリューションの提供を進め、環境性能の訴求によるレーザープリンターからインクジェットプリンターへのテクノロジーシフトの実現に取り組んでいます。
この方針に基づき、オフィスの印刷状況に合わせてプランや機器を選べる「スマートチャージ」<LM>シリーズの新商品として、「LM-C400」を発売しました。ラインヘッドを搭載することで印刷速度40枚/分(※1)の高い生産性を実現し、新たにA4カラーインクジェット複合機をラインアップすることでオフィスにおけるさまざまなニーズに対応します。加えて、印字プロセスに熱を使わない「Heat-Free Technology」を採用したインクジェット方式によって、稼働時の最大消費電力160W以下(※2)を実現し、待機時も含めたトータルの消費電力量を示すTEC値も0.19kWh(※3)と低く、オフィスの脱炭素化の取り組みとして有効な手段となります。
紙再生技術では、乾式オフィス製紙機PaperLabのメインユニット「Q-5000」および紙源プロセッサー「Q-40」を発売しました。PaperLabは、水を使わず(※4)に使用済みの紙を原料として新たな紙を生産できるため、オフィス内などでの紙資源循環に関連する活動を通じ、環境負荷低減に加えて多様な人材へも活躍の場を提供し、持続可能な社会の実現に貢献してきました。紙源プロセッサーは使用済みの紙を再生紙に適した形状かつ機密内容が判読できなくなるレベル(※5)まで細かく細断したあと、メインユニットに細断紙片を投入することで新たな紙「Dry Fiber Paper」(※6)を生み出します。このプロセスにより、様々な場所から安心して古紙を回収することが可能となり、複数の企業や事業所間、自治体を中心とした地域社会の皆さまをつなぐ新たな資源循環の形を実現します。
※1 A4縦片面。印刷スピード算出条件は下記参照
https://www.epson.jp/products/printer/sokutei.htm
※2 本体のみの最大消費電力(用紙カセット1段時)
※3 本体のみのTEC値(用紙カセット1段時)。TEC値:オフィスでの使用を想定した1週間の平均電力量。国際エネルギースタープログラムで定められた測定方法による数値
※4 機器内の湿度を保つために少量の水を使用。「Q-5000」では繊維結合の際にも少量の水を使用
※5 ISO/IEC 21964-2 Security Level P4に準拠
※6 PaperLabを用いて製紙した再生紙の総称
当領域は、インクジェット技術と多様なソリューションにより、印刷のデジタル化を主導し、環境負荷低減・生産性向上の実現を目指しています。そのために、多様なメディア・素材への印刷を実現するインクジェット技術のポテンシャルを引き出し、商業・産業印刷のデジタル化を後押しするとともに、分散印刷を支援するクラウドサービス「Epson Cloud Solution PORT」などのソリューションを通じて印刷業務における生産性向上のサポートに取り組んでいます。
この方針に基づき、エプソンでは初めてとなるDTFilm(※7)専用プリンター「SC-G6050」を発売しました。プリントヘッドを清潔に保つために必要な「吸引キャップ」に自動クリーニング機能を搭載したほか、ロール式の布製ワイパーにより常に新しい布でプリントヘッドを拭きとるため、毎日の部品清掃が不要です。さらに、ホワイトインクの自動循環システムでインク詰まりを防ぐなど、充実した自動メンテナンス機能によるメンテナンス工数の大幅削減と安定稼働を実現します。また、用途に合わせて選べるプリントモードにより、高画質でDTFilmならではの鮮やかな発色と、短納期でも安心して作業が進行できる生産性を両立しました。
また、ラベル印刷業の人手不足や、デジタル印刷機を導入したもののスキル習得までの課題を解決するために、 「SurePress」を活用したデジタル印刷ワークフロー「Epson Workflow Cloud for SurePress」の提供を開始しました。電子作業指示書(JDF)によるワークフローの自動化に加え、「一括印刷機能」によって刃型違いの複数ジョブの連続印刷を実現し、ラベル生産工程における自動化および効率化を図り、「省人化」と「スキルレス」を実現します。
※7 Direct to Film:転写印刷用フィルムなどへの直接印刷のこと
②ビジュアルコミュニケーション事業セグメント
当領域は、感動の映像体験と快適なビジュアルコミュニケーションで人・モノ・情報・サービスをつなぎ、「学び・働き・暮らし」を支援することを目指しています。そのために、高画質な大画面を実現するレーザー光源採用の高輝度プロジェクターの開発や、スマート化により使用環境・用途・シーンを拡大する設置性の高いホームプロジェクターの開発に取り組んでいます。
この方針に基づき、ビジネスプロジェクター高輝度モデル「EB-PQシリーズ」を発売しました。4Kの高画質を実現する2軸シフトテクノロジー「4K Crystal Motion Technology」(※8)を搭載し、高輝度かつ高解像度による迫力あるプロジェクションでイマーシブな空間演出での映像体験価値の向上を実現します。
ホームプロジェクターでは、気軽に高画質な大画面映像を楽しめる「EF-21」「EF-22」を発売しました。エプソン独自の3LCD技術と先進のレーザー光源により、明るく鮮明かつ色再現性の高い映像を実現したほか、シームレスに自動で映像のゆがみとフォーカス補正が行えるため、設置性が向上しました。また、Google TVTM機能とスピーカー内蔵により、Wi-FiⓇの接続環境があればこれ一台で音楽や有料/無料の動画配信サービスを大画面で楽しめます。
※8 4K信号を入力し、2軸シフトテクノロジーによってスクリーン上で4Kの高画質を表示
③マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント
当領域は、環境負荷に配慮した「生産性・柔軟性が高い生産システム」を共創し、ものづくりを革新することを目指しています。
この方針に基づき、産業用スカラ(水平多関節)ロボットの新商品として、「GXシリーズ」に対応したコントローラー「RC800-A」(※9)およびティーチペンダント「TP4」(※10)の受注を開始しました。ロボットの動きを制御するための装置であるコントローラー「RC800-A」は、お客様のニーズが高い「コンベヤートラッキング」の精度向上や、力覚センサーボードを標準搭載することで、より自由度の高いシステム構築ができるなど、お客様の使い勝手を向上させています。コントローラーオプションのティーチペンダント「TP4」は、エプソンロボット統合ソフトウエア「Epson RC+8.0」(※11)を内蔵し、パソコンなしでもプログラム開発が可能です。また、従来品より重さを1.2kgに軽量化したことで作業時の負荷を軽減したことに加え、消費電力を25Wから15W以下へ削減したことで環境負荷低減に貢献します。
自動化ニーズが高まる食品製造業向けには、食品グリス仕様モデルの「Tシリーズ」「LSシリーズ」「GXシリーズ」の受注を開始しました。3モデル7機種の豊富なラインアップにより、お客様の用途に合わせた機種の選択が可能で、さまざまな食品製造工程における自動化を支援し、労働人口減少といった社会課題解決に貢献していきます。
※9 「GX-Cシリーズ」ロボットの「GX4-C」「GX8-C」に対応
※10 スカラロボットと6軸(垂直多関節)ロボットに対応
※11 詳細については下記参照
https://www.epson.jp/products/robots/lineup/software/
当領域は、匠の技能、センシング技術を活用したソリューションを共創し、お客様の多様なライフスタイルを彩ることを目指しています。ウオッチ分野では、感性に訴えるデザイン・高品質な商品を、お値打ち感ある価格で提供すること、センシング分野では、センシング技術や分析アルゴリズムを活用した新たなソリューションの共創に取り組んでいます。
ウオッチ分野では、「Orient Star」のコンテンポラリーコレクションM34から、ペルセウス座流星群をデザインテーマとした独創的なダイヤルと、シリコン製がんぎ車搭載の高性能ムーブメントを特長とする「M34 F8 デイト」の新モデルを発売予定です。ブラック文字盤の限定2モデルには、エレクトロニクス分野で使用されている「金属ナノ粒子積層技術」を世界で初めて腕時計作りに応用(※12)し、極めて繊細で精巧、かつ奥行き感のある文字板を表現しました。
センシング分野において、エプソンはマテリアリティの一つである「生活の質向上」の価値創造戦略のもと、センシング技術を活用して、パーソナライズされた理想的なトレーニングを提供し、お客様の多様なライフスタイルを豊かにすることを目指しています。当期は、小中学生を対象とするスポーツスクールの運営団体向けに、子どもの運動能力向上を支援する新サービス「RevUp Physical Trainer」の提供を開始しました。本サービスでは、エプソン独自のモーションセンシング技術「M-Tracerテクノロジー」を搭載した小型センシング端末を装着し、基本的な運動動作を行うことで、動作回数の計測に加え、身体の詳細な動きの解析が可能です。解析結果に基づき、一人ひとりに合わせた正しい身体の動かし方を習得するための診断アドバイスをレポートとして提供します。さらに、計測・解析結果を時系列で確認できる「成長ログ」により、継続的な指導を通じた運動能力の向上をサポートします。また、本サービスは複数ユーザーの同時計測に対応しており、大人数でも効率的な計測が可能です。
※12 腕時計の文字板への加飾において、金属ナノ粒子/金属ナノインクを積層させてプリントする技術として世界初。2024年12月~2025年1月実施の「金属ナノ粒子積層技術(金属ナノ粒子/金属ナノインクを用いた時計文字板加飾技術)」に関する市場調査(※13)および当該領域における先行事業者(類似競合事業者)に関する知財調査
※13 「世界初」検証調査。株式会社未来トレンド研究機構調べ(2025年1月27日現在)
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「RevUp Physical Trainer」サービスコンセプト
当領域は、「省・小・精の技術」を極めた水晶と半導体の技術融合の強みを生かし、タイミングデバイス、半導体、センサーにより、成長が著しい高速・大容量通信インフラ、IoT社会、およびモビリティ社会など、スマート化する社会の実現に貢献する商品開発に取り組んでいます。
水晶発振器分野では、低消費電力かつ小型で、次世代通信インフラの基準信号源に対応した恒温槽付水晶発振器「OG7050CAN」を開発しました。近年、第5世代通信システム(5G)/IoTの普及等による通信データトラフィック増大に伴い、基地局やデータセンターの電力消費量が急増することが予想されており、そこで使用される機器には低消費電力化が求められています。そのような中、エプソン独自の水晶デバイスと半導体、さらには実装技術の融合により、従来品と比較して56%減の低消費電力化および体積比85%減の小型化を実現しました。
半導体分野では、補聴器などの小型機器向けパワーマネジメントIC「S1A00210B」を開発しました。MHz帯の電磁誘導周波数に対応させることで小型コイルの使用が可能になり、本体の小型化に貢献します。また、特性の異なるバッテリーを使い分けできるように充電プロファイルを2種類記憶できることと、充放電回数(サイクル回数)管理して充電回数に応じた最適な充電方法を適用する機能を備えています。これらにより、充電時間の短縮やバッテリー寿命を延ばすことに貢献し、補聴器使用者の利便性向上につながることが期待できます。
④その他および全社
当領域では、各事業セグメントに共通する生産技術の高度化、DX基盤の強化、事業競争力を支える基礎研究、新規事業創出に向けた先端技術の研究開発に取り組んでいます。
全社的な取り組みとしては、「環境ビジョン2050」の実現に向けた環境技術の開発を推進しています。2024年度は、長期的な取り組みとして、CO2除去技術と藻類を活用したカーボンマイナス技術の研究開発を推進しました。
インクジェットプリンターで培った薄膜技術を応用し、CO2を効率的に分離・回収する分離膜フィルターを開発しました。従来の熱処理を伴う方式に比べ、低エネルギーでCO2回収が可能となるこの技術は、小型・効率の良い回収システムから、火力発電所や製鉄所などへの導入を視野に入れた研究が進められています。
また、微細藻類(円石藻)を活用したCO2固定化技術の研究も進行中で、森林の数十倍に相当するCO2吸収能力を持つ藻類の育種・培養技術の最適化を図っています。さらに、緑藻を用いたCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)技術の開発も進めており、CO2を資源として活用する新たな循環モデルの構築を目指しています。
加えて、グループ会社であるエプソンアトミックスでは、金属資源の循環利用を目的とした新工場の建設を青森県八戸市で進めています。2025年6月の稼働を目指すこの工場では、エプソングループ内外から排出される金属端材や使用済み金型などの不要な金属を再資源化し、金属粉末製品の原料として再利用することでバージン原料の使用を削減し、CO2排出量の低減に貢献します。また、同工場では新精錬プロセスの導入により、金属資源の循環利用を実現することに加え、安定的に高品質な製品を供給し、次世代の省電力・小型デバイスの実現に貢献します。また、エプソングループの「環境ビジョン2050」に基づく「地下資源(※14)消費ゼロ」を目指す取り組みの一つとして、金属の資源循環可能な拠点を目指します。
※14 原油、金属などの枯渇性資源
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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