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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100VHZZ (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 キヤノン株式会社 研究開発活動 (2024年12月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等

当社は創業当時から、業界をリードするコア製品を生みだす「コアコンピタンス技術(以下、コア技術)」と、技術蓄積のベースとなる「基盤要素技術」、さらには、商品化技術のベースとなる「価値創造基盤技術」を多様に組み合わせた「コアコンピタンスマネジメント」を展開して事業の多角化を行ってきました。
コアコンピタンスマネジメントでは、コア技術はその進化にともない、他事業でも再活用できる基盤要素技術として蓄積されていきます。たとえば、カメラの人物認識というコア技術は、AI・データ統計解析という基盤要素技術として蓄積され進化し、現在では、多角化を担うメディカル事業の医療ITシステムに組み込まれて事業の強化に貢献しています。
このコアコンピタンスマネジメントは、研究開発のプロセスのなかでは「マトリックス研究開発体制」を通して行われています。本社の研究部門とそれぞれの製品を担う事業部の開発部門がマトリックス型の体制を敷き、全社技術の利活用が可能な体系を構築しています。製品の競争力のもととなるコア技術は事業部の開発部門が主体ですが、本社の研究部門は、先行的なトレンドリサーチと基盤技術開発を担い、事業部のもつコア技術の先行的な開発につなげています。
さらに、コア技術/基盤要素技術という「製品に入る技術」と、価値創造基盤技術という「製品を支える技術」が一体となって全社で利活用が可能なホリスティックな(技術を複合的に連携できる)開発環境が整っていることが、当社の研究開発の最大の特徴となっています。これにより、製品に入る技術と製品を支える技術が強い技術として、同時に製品開発に投入されることで、競争力のある製品を生みだしています。
当事業年度におけるグループ全体の研究開発費は、337,348百万円であり、セグメントごとの主な研究開発の成果は次のとおりです。


Ⅰ.プリンティングビジネスユニット
商業印刷向け大型複合機は、高速印刷を実現する、熱効率を高めた定着システム「Print on Demand-Surface Rapid Fusing(POD-SURF)」を搭載した「imagePRESS Vシリーズ」を2022年より販売しています。「V1350」では、135枚/分のシリーズ最高の高速印刷を実現、印刷物の短納期化に寄与し、効率的に大量出力したい印刷業などのお客様のビジネスを力強く支援します。「V1000」では、一冊の冊子で厚紙と普通紙が混在するような印刷でも用紙ごとに定着温度を切り替える頻度を抑制し、温度調整によるダウンタイムを削減しました。厚紙と普通紙で機器を分けずに、1台で高い生産性を維持した連続印刷が可能です。「V900」では、コンパクト設計でありながら、オプションユニットの拡張性と幅広い用紙対応力で多様な印刷が可能になりました。これまで上位機種でしか採用されていなかったオプションのインライン分光センサーで、高精度な色調整がボタン一つで実施可能になり、オペレーターの負荷軽減を実現します。ハードウエアだけでなく、リモート印刷管理アプリ「PRISMAremote Manager」を活用することで、印刷機から離れた場所でも用紙の補充タイミングや稼働状況をリアルタイムに把握可能です。用紙切れなどのエラーを事前に防止することで、ダウンタイムを削減し業務効率化を支援します。
大判インクジェットプリンターは、基本性能の強化と印刷作業の省力化に取り組みました。新たに画質を向上させながら耐光性と光沢紙/半光沢紙での耐擦過性を強化した顔料インク「LUCIA PRO II(ルシアプロツー)」を開発しました。このインクを搭載したグラフィックアート市場向けの「PRO-6600/PRO-4600/PRO-2600」は、imagePROGRAFシリーズ最高の写真画質とプリントの長期保存を両立させました。また、広告などのグラフィックポスターの出力を担う出力センターや社内印刷部門向けの「GP-6600S/GP-4600S/GP-2600S」は、人目を引く鮮やかなポスターを高速出力するとともに、擦れによる印刷面のキズを抑制し、カット作業などの印刷後の加工や掲示を容易にしました。これらの機種と、CAD・ポスター市場向けの大判インクジェットプリンター「TZ-32000/TX-4200/TX-3200/TX-2200」は、用紙の給紙や種類の検知、残量の推計を自動で行う「スマートロール紙セット」機能を備え、給紙処理を高速化することでロール紙セットにかかる時間を従来機種より短縮しました。また、新開発のインクセンシングシステムにより、インク吐出状態を定期的にモニタリングし、インク着弾位置を自動で最適化して高画質を維持するなど、作業の効率化や生産性向上に寄与します。
オフィス向け複合機は、「imageRUNNER ADVANCE DX シリーズ」において、業界トップレベル※1の標準消費電力量(TEC2018※2)の実現、小サイズ紙の出力生産性向上、さまざまな静音化の工夫による稼働音の低減などの、複合機としての本質性能向上に加え、セキュリティ面でも強固な暗号化機能を提供する最新規格への対応など、ラインアップの強化を進めてきました。2024年に新たに加わった「imageFORCE C7165F」は、光源にLEDマルチチップを採用した次世代露光デバイス「D² Exposure(ディー・スクエア・エクスポージャー)」を搭載し、4,800×2,400dpiの高品位プリントを実現しています。また、新搭載した紙種を判別する「メディアセンサー」による用紙に応じた最適な印刷設定の自動適応や、プリンタードライバー画面上のガイダンス機能による操作性向上により、高品位成果物の内製ワークフローを簡略化します。セキュリティ面では、AIを活用したネットワーク環境分析により、最適なセキュリティ設定を推奨することで、IT管理者 がいない企業でもセキュアな運用を支援します。高性能で使いやすい複合機とクラウド型MFP機能拡張プラットフォーム「uniFLOW Online」を介した多彩なデジタルサービスの組み合わせで、オフィス業務のデジタルトランスフォーメーションを強力にサポートします。
ビジネス向けインクジェットプリンターは、低ランニングコストを実現する特大容量タンク製品シリーズを強化しています。在宅勤務に特化したフルフロントオペレーション対応の「GX2030/GX1030」、物流・薬局・小売りで使用される用紙の種類・サイズに幅広く対応し、1台で様々な印刷ができる「GX5530」、さらには、受付業務や窓口業務に特化したフロント操作のADF(Automatic Document Feeder)による対面業務の効率化を実現した「GX6530」により、さまざまな角度からビジネスを支援していきます。
家庭用インクジェットプリンターは、仕事や趣味・学習などのさまざまなユースシーンに応える機能と使い勝手を向上させました。写真や文書印刷に適した「PIXSUS XK130/TS8830」、特大容量タンクを搭載し大量文書を印刷するユーザーに最適な「G3390」では、ユーザーのユースシーンに合わせて選択できるUI(ユーザーインターフェース)の採用により、それぞれの活動に適した使いたい機能に素早くアクセスできます。
当社は、次世代の太陽電池として注目されているペロブスカイト太陽電池の耐久性及び量産安定性を向上させることが期待される高機能材料を開発しました。ペロブスカイト太陽電池は軽量で曲げられるほか、室内光でも発電できるため、現在の主流となっているシリコン型と比較して設置の自由度が高く、設備投資コストの抑制も期待されています。新開発の高機能材料は、複合機やレーザープリンターの基幹部品である感光体の開発を通して培ってきた材料技術を応用することで、従来は難しかった高い光電変換効率を維持しながら光電変換層を厚く被覆できることが特長です。今後、さらなる技術開発を進め、2025年の生産開始をめざします。
当ビジネスユニットに係る研究開発費は、100,361百万円であります。

※1 オフィス向けカラー複合機(A4片面、毎分25-35枚の出力速度)において。2024年12月3日現在。
オフィス向けモノクロ複合機(A4片面、毎分25-45枚の出力速度)において。2024年12月3日現在。(当社調べ)
※2 国際エネルギースタープログラムで定められた測定法による数値。


Ⅱ.メディカルビジネスユニット
当社では国産としては初めてのフォトンカウンティング検出器を搭載したX線CTの医療機器としての認証を2022年12月に取得、国立がん研究センター先端医療開発センター・国立がん研究センター東病院と連携し、特定臨床研究として早期のフォトンカウンティングCT(PCCT)実用化に向けた研究を推進、2024年にはオランダのラドバウド大学、広島大外、ペンシルベニア大学でも、PCCTを用いた臨床研究を開始しました。当社は、共同臨床研究で得られた意見や評価を開発にフィードバックし、PCCTの開発研究を加速します。これまでにキヤノンが培ってきた数々の技術を結集したPCCTの早期実用化を通じてCTグローバルシェアNo.1を実現し、画像診断技術のさらなる発展に寄与してまいります。
超音波診断装置では「Aplio iシリーズ」のアプリケーション「Liver Package」を用いた非侵襲的な肝病態の評価法を検証する研究を支援しており、多施設共同研究「iLEAD (innovative Liver Elasticity, Attenuation, and Dispersion ultrasound study)」において、「Liver Package」の「Attenuation Imaging(ATI)」、「Shear Wave Dispersion(SWD)」、「Shear Wave Elastography(SWE)」から得られる情報が、肝臓の脂肪化、炎症、線維化と関連があることが確認され、研究成果に関する論文が国際学術誌「Radiology」に採択され臨床エビデンスとして掲載されました。
このような新たな臨床価値を生み出す技術をベースにアップストリームマーケティングを強化するべく、米国クリーブランド市近郊に「Canon Healthcare USA,Inc.」を設立し、臨床ニーズをとらえたグローバルな製品開発につなげる活動を行っています。さらに米国クリーブランド・クリニック財団と戦略的研究パートナーシップに合意し、クリーブランド・クリニックの生物医学研究や臨床ケアにおける高い専門性と当社のイメージング技術を生かして共同研究を推進しています。また、DXを取り入れた、より効率的な販売活動についても進めています。新製品や販売情報を集中管理し、お客様にとって最適な情報やテクノロジーをタイムリーに提供するという「Canon Medical Academy構想」のもと、オランダとアメリカに新たにトレーニングセンターを稼働させ、プレゼンスの向上にも取り組んでいます。
当ビジネスユニットに係る研究開発費は、52,639百万円であります。


Ⅲ.イメージングビジネスユニット
レンズ交換式デジタルカメラ(デジタル一眼レフカメラ及びミラーレスカメラ)では、プロ・ハイアマチュア向けの主力モデル「EOS R5 Mark II」及び「EOS Rシステム」初のフラッグシップ機「EOS R1」を発売しました。新開発のエンジンシステムやディープラーニング技術の活用により、静止画・動画機能を進化させ、プロ・ハイアマチュア顧客の高い要望に応えるラインアップを構築しました。
また、「RFレンズ」では、動画機能を強化したハイブリッドレンズやVRレンズなどの新製品を投入し、ラインアップを拡充いたしました。
「CINEMA EOS SYSTEM」と業務用ビデオカメラにおいて、マルチカメラワークフローを効率化するワイヤレスリモートアプリケーション「Canon Multi-Camera Control」の提供を開始しました。「CINEMA EOS SYSTEM」では、印象的な映像表現を可能とするRFマウント採用・6Kフルサイズセンサ搭載の「EOS C400」「EOS C80」、RFマウント採用・通信機能拡充のCINE-SERVO レンズ「CN7×17 KAS T/R1」を発売しました。放送レンズにおいて、運用性と機能性を高めた新開発のデジタルドライブユニットを搭載した4K放送用カメラ対応ポータブルズームレンズ「CJ27e×7.3B IASE T」の発売を開始しました。
リモートカメラシステムでは映像制作から講義・会議まで用途に適した商品ラインアップを整備し、さらにリモートカメラコントローラー最上位モデル「RC-IP1000」の導入や最大200台までカメラ接続の一括管理が可能な「マルチカメラマネジメントアプリ」によりリモートプロダクションの利便性向上を実現しました。また、登録した画角へ繰り返し動作する「自動ループアプリケーション」や人物の動きに合わせて自動で被写体を追尾する「自動追尾アプリケーション」の機能強化など、映像制作の効率化・省人化や講義・会議の映像コミュニケーションを支援します。
高度監視市場向けに発売した「映像鮮明化ソフトウェア」は、カメラメーカーとして蓄積してきた膨大な画像データベースと画像処理の知見をもとに、独自開発したディープラーニング画像処理技術を採用しています。カメラ単体では避けられない低照度環境下などで発生するノイズに対して、さらなる低減処理を行うことが可能です。また、SPADセンサーの特性を活かすための開発を続けており、SPADセンサー搭載の超高感度カメラ「MS-500」をアップグレードして明暗差が大きい環境やより強いノイズ低減が求められる環境に適応できるようにしました。同時にネットワーク接続による制御や映像配信も可能とし、より多様なユーザーニーズに対応できる製品になりました。
製造や流通における点検・検査の自動化を支援する映像解析ソフトウェア「Vision Edition」のバージョンアップ版をリリースしました。大規模遠隔モニタリングに対応するため、マルチカメラ接続機能を拡張し、ビデオ管理ソフトウェア
「Milestone XProtect」からの画像取得も可能です。また、画像添付可能なメール通知機能やAI画像処理との連携機能により、製造工程や物流拠点など、さまざまなシーンで顧客のDX推進に貢献しております。
3Dイメージングの領域においては、「ボリュメトリックビデオシステム」によりスポーツ放送で実際のカメラ位置にとらわれない自由な視点からの映像を展開しました。3Dコンテンツの撮影から編集までをワンストップで実現した「ボリュメトリックビデオスタジオ-川崎」では、ミュージックビデオなどの映像制作やAR/VRの3Dコンテンツ制作で実績を積み重ねました。またMR(Mixed Reality:複合現実)では、製造業をはじめとして幅広い分野に3Dデータを活用したソリューションを提供してまいります。
当ビジネスユニットに係る研究開発費は、101,200百万円であります。


Ⅳ.インダストリアルビジネスユニット
半導体露光装置においては、ハンコのように押し付けるシンプルな仕組みで微細な回路パターン形成を実現するナノインプリント半導体製造装置「FPA-1200NZ2C」により、最先端の半導体デバイス製造に貢献します。この装置は、投影露光装置のように光源の波長による微細化を必要としないため、消費電力やCO2の削減にも貢献しています。また、高透過率と高耐久性が特徴の新投影レンズを採用したi線ステッパー「FPA-3030i6」により、今後も成長が見込まれるパワーデバイス、グリーンデバイスなどの製造をサポートします。
FPD露光装置においては、第6世代ガラス基板向け「MPAsp-E1003H」により、ディスプレイパネルの使用用途拡大に貢献しています。この装置は、65型パネルを一括で露光可能な第8世代ガラス基板向け投影光学系を搭載したことで、一度に露光できる幅を約1.2倍に拡大、高解像力と高生産性を両立しました。さらに車載用途に使われる横長の大型特殊ディスプレイも繋ぎ目なく2ショットで露光できるため、量産時の生産性向上に寄与します。
計測機器分野においては、判別が困難な黒色プラスチック片とその他プラスチック片を高精度に選別する「トラッキング型ラマン分光技術」を用いたプラスチック選別装置を開発しました。再利用できるプラスチック量の最大化により、サーキュラーエコノミーの構築に寄与します。
当ビジネスユニットに係る研究開発費は、30,559百万円であります。


また、基礎研究等のその他及び全社に係る研究開発費は52,589百万円であります。

注:製品名は日本国内での名称です。

事業等のリスク株式の総数等


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