有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100W5LN (EDINETへの外部リンク)
住友電気工業株式会社 研究開発活動 (2025年3月期)
当社及び連結子会社は、「技術を創造し、変革を生み出し、絶えざる成長に努めます」との経営理念の下、社会の変革・伸長分野に焦点を合わせ、オリジナリティがあり、かつ収益力のある新事業・新製品の開発に努めております。また、将来の社会ニーズを踏まえ、当社グループの次代の成長を担う研究テーマの発掘・育成にも積極的に取り組んでおります。
環境エネルギー関連事業、情報通信関連事業、自動車関連事業、エレクトロニクス関連事業、産業素材関連事業他の各事業分野及び共通基盤技術における当連結会計年度の主な成果は以下のとおりであります。
また、当連結会計年度における研究開発費の総額は156,293百万円であります。
(1) 環境エネルギー関連事業
超電導や次世代送電網の分野でのネットワーク技術を活用したエネルギーソリューション事業など、新しい分野への進出を図るとともに、蓄電池、電力ケーブルなどエネルギー分野での積極的な開発を推進しております。
超電導の分野では、溶液塗布熱分解法による低コスト希土類系高温超電導線材の実用化に取り組んでおります。また、世界初の安定した超電導接続技術を開発し、永久電流で磁場を発生することが可能なコイルを実現しました。これらの技術により、高温超電導線材のNMR(核磁気共鳴装置)やMRI(磁気共鳴画像)への展開や小型核融合炉用マグネットへの応用が期待できます。
次世代送電網の分野では、自然エネルギーの導入、省エネルギー、電力網の分散管理といった社会ニーズに対応すべく、レドックスフロー電池(蓄電池)について、大規模システムによる実証運転を実施しております。
HEV(ハイブリッド自動車)などの環境対応車に多用されるニッケル水素電池の集電体として上市しているニッケル製セルメットを各種燃料電池、水素製造電極向けに展開するため、高温耐久性を付与した耐熱セルメットや、耐強酸性を高めた耐食セルメットを開発しております。また、EV(電気自動車)やHEV等の環境対応車の分野では、固有の高分子材料の合成技術を駆使し、駆動モーター等に適用する高性能平角巻線の開発にも取り組んでおり、モーターの高性能化に貢献する薄肉皮膜で高度な電気絶縁性を発揮する次世代平角巻線の開発に注力しております。
電力ケーブルの技術開発では、長距離直流連系線、再生エネルギー関連の需要伸長に対応すべく、超高圧直流
ケーブル、洋上風力向けケーブルの開発や送電線路に用いられるシステム製品を開発しております。
住友電設㈱では、社会や顧客の多様化するニーズに応えるべく、脱炭素化社会実現に向けたカーボンニュートラル・省エネルギー技術、IoTや5Gを活用した監視・エネルギー管理等のビルディングマネジメントシステム、工場向け統合セキュリティシステム、ローカル5Gシステム、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)による食品衛生管理をクラウドで一元管理するシステムなど、最新技術、情報化技術を活用し、新技術、新工法、各種システムの開発に取り組んでおります。
日新電機㈱では、環境配慮への要請の高まり、脱炭素に向けた電力システムの変化など、持続可能な社会に向けた動きへ対応すべく、研究開発に取り組んでおります。
電力・環境システム分野では、環境負荷の低減、省スペース化を狙いとする製品の開発と共に、多様な分散型電源が導入拡大される社会において電力の安定需給を支える技術や製品、システムの開発、蓄電池システムや工場・水処理設備の進化に資する運用管理、IoT関連の技術や製品、システムの開発を進めております。
ビーム・プラズマ分野では、社会を支える材料・部品・デバイスの進化に資するべく、パワー半導体用等のイオン注入装置や多様な材料改質に利用される電子線照射装置、ファインコーティング関連の技術研究や製品開発を進めております。
当事業に係る研究開発費は15,661百万円であります。
(2) 情報通信関連事業
光通信関連製品、デバイス関連製品、化合物半導体材料、ネットワーク・システム関連製品などの分野において、総合的に研究開発を行っております。
光通信関連分野では、光ファイバ・ケーブルの伝送容量向上や長距離化に向け、超低損失ガラス、新タイプの細径光ファイバや高耐曲げ性・高耐側圧性の光ファイバ、脱炭素に向けた光ファイバ新製法、次世代技術である中空コア光ファイバ等、広範囲な開発に取り組んでおります。特に、伝送容量の飛躍的拡大に向け、1本の光ファイバ中に複数のコアを有するマルチコア型光ファイバと関連技術は、2023年に世界初の商用導入を果たし、実用化への開発・実証をさらに進めております。一方で、生成AIに必要な大規模データセンターを支える様々な大容量・高密度光配線製品を開発しており、コンピューティング能力向上と消費電力低減の両立が期待される光電融合に向けた新技術創出にも取り組んでおります。
デバイス関連分野では、光通信用デバイス及び無線通信用電子デバイス関連の新製品をいち早く市場に投入することにより、事業拡大に努めております。光通信用デバイス関連製品では、データセンター用機器等に搭載される支線系対応製品や、長距離幹線機器に対応したコヒーレント伝送用デバイスを開発しております。無線通信デバイス関連製品では、高効率・高出力のGaN(窒化ガリウム)トランジスタを開発し、携帯基地局用途に製品化しておりますが、5G及び次世代通信用にさらなる効率改善、高周波/広帯域化に取り組んでおります。また、これらデバイス技術の蓄積を活かし、多様な分野への応用が期待できる近赤外、中赤外領域の製品開発も進めております。
化合物半導体材料では、高速通信用の光デバイスや無線通信用電子デバイスなどに用いられるInP(インジウムリン)及びGaAs(ガリウムヒ素)系エピタキシャルウエハの新製品開発を進めております。
ネットワーク・システム関連分野では、持続可能で強靭な社会を支える情報通信機器・システムの研究開発を推進しております。光・無線技術及びその融合技術を活用し、5G/Beyond 5G向けネットワークやオール光ネットワークを支える光伝送システム、無線伝送システム及びそのコアとなる部品の研究開発に、通信事業者とも連携しながら取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は21,623百万円であります。
(3) 自動車関連事業
モビリティ分野の主要製品である自動車関連製品においては、顧客目線の開発・提案が求められております。当社では㈱オートネットワーク技術研究所にてマーケティングから製品開発まで一貫して行う研究開発体制を整備することで、変化の激しい事業環境に追随するための方針決定の迅速化や効率化を図っております。本研究所ではCASEやSDGsなどの社会の大きなニーズの変化と当社が持つ技術シーズをマッチングさせるためのマーケティング活動を強化しており、それを基に顧客とのパートナー活動を深化させ、得意とする情報通信やエネルギー関連技術を活かしたワイヤーハーネス及びエレクトロニクス製品などの新製品の開発を行っております。
ワイヤーハーネスに関しては、次世代車載システムにパワー供給や情報伝送するためのネットワークアーキテクチャを顧客と共に構想し、システム設計やそれに必要な要素技術の開発を進めております。例えば自動運転等で必要となる高速通信用ハーネス・コネクタにおいては、将来必要とされる超高速通信に向け車載光ハーネス・コネクタの開発も推進しております。また、モジュール生産など車両の製造革新に対応するための、モジュール対応ワイヤーハーネスについても開発を進めております。本格普及が進んでいる電動車(EV・PHEV・HEV)向けでは、高圧ハーネス・コネクタ、バッテリー内配線モジュールなど各製品の開発に取り組む他、高電圧・大電流化により今後大きな問題となる電磁ノイズ対策製品の開発も進めております。GX、CE(サーキュラーエコノミー)視点での研究活動も強化しており、ワイヤーハーネスからの金属・樹脂などの材料分離・再生などの技術開発にも取り組んでおります。
エレクトロニクス機器に関しては、給電・分配・変換・蓄電に関わる車載電源機器や、車内の情報配線のハブ機能となる車載ゲートウェイなどの開発を進めております。さらに当社事業であるエネルギーや通信の社会基盤と車が繋がる変革に対応した新しいシステムやサービスの開発にも取り組んでおります。
一方で、新製品の開発効率化や高いレベルの品質確保に不可欠な試験・分析・評価・解析技術など基盤技術の研究開発も推進しております。CAE(Computer-Aided Engineering)技術やAIなどのDX化を推し進めることで、材料選定と強度・発熱等の性能予測サイクルを短期化させ、顧客に対するタイムリーな提案を実現しております。また、今後進んでいく電磁ノイズの高周波化に対応するための高精度計測技術やノイズ測定環境の構築なども進めております。
交通インフラ関連分野では、交通事故削減や自動運転社会に向けたインフラ機器・クラウド技術の研究開発を推進しております。具体的には、レーダやカメラ映像を使った車両・歩行者等のセンサや、コネクティッドカー管理システム等の開発を行っております。
住友理工㈱では、ワイヤーハーネスと制遮音品や内装品、ホースなどの製品を組み合わせたシステムの提案等をはじめとして、さらなる協業体制の構築を進めております。これまで培ってきた配合技術を活かし開発した放熱性防音材が、2024年度愛知発明表彰において「愛知発明大賞」を受賞しました。この材料は、「磁気誘導発泡成形法:MIF®(Magnetic Induction Foaming)」を用いて開発したもので、一般的な防音ウレタンの10~50倍もの放熱性能を備えております。自動運転やEVに必要とされる防音・熱対策での課題を同時に解決する材料として期待されております。EV向け熱対策においては、優れた断熱効果を持つ薄膜高断熱材「ファインシュライト」に加え、冷却系ホースや電池用断熱材、バッテリー冷却プレート「クールフィットプレート」等を開発しており、受注に向けた取組みを進めております。また、より高精度な製品設計と競争力のある量産生産性の実現を目指し、独自の加硫シミュレーション技術の確立による設計から量産工程まで一貫したDXを推進しております。
自動車分野以外でも、エレクトロニクス分野、インフラ・住環境分野、ヘルスケア分野などにおいて、材料技術・センサ技術等を活かした新製品・新サービスの研究開発を進めております。SRセンサを応用した「モニライフシリーズ」は、2023年度に2023年度中部地方発明表彰「文部科学大臣賞」と2023年度愛知発明表彰「発明奨励賞」を受賞いたしましたが、2024年度に宿泊者の睡眠状態を可視化するサービス用途で品川駅の㈱ナインアワーズ・スリープラボに採用されました。
当事業に係る研究開発費は104,238百万円であります。
(4) エレクトロニクス関連事業
当社固有の材料技術、マイクロ・ナノテクノロジーをベースに、FPC、電子ワイヤー製品、照射架橋製品、多孔質フッ素樹脂膜製品など広範な新材料や部品の開発を行っております。FPCでは、携帯機器や医療機器等向けの次世代微細回路製品、5Gやミリ波など高周波用途向け部材の開発に取り組んでおります。また、電子デバイス用の低線膨張率の高放熱素材、独自の多孔化技術を適用した半導体用途向けの微小孔径の多孔質フッ素樹脂膜の開発にも注力しております。
当事業に係る研究開発費は5,913百万円であります。
(5) 産業素材関連事業他
超硬合金、ダイヤモンド、立方晶窒化硼素、コーティング薄膜、特殊鋼線、鉄系焼結部品やセラミックスに関する当社固有の材料技術とプロセス技術を駆使し、切削用工具・研削用工具や超精密加工用工具、各種自動車機構部品、機能部品等の開発を進めております。
切削用工具・研削用工具開発においては、今後、市場が伸長していく航空機分野及び半導体分野を重点ターゲットとし、計算科学を活用した硬質材料の開発、コーティング技術開発を進めております。
ダイヤモンドでは、超精密加工や高品位加工用工具素材として使用することを目的として、独自の原料技術や超高圧技術で単結晶ダイヤモンド素材や新材料開発及び精密加工技術開発に注力しております。また、量子センサ用ダイヤモンド素材開発にも取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は8,858百万円であります。
今後の成長を担う新規分野への挑戦として、水素エネルギー社会を実現する技術開発を行っております。また次世代の電線や高強度材料として期待されるカーボンナノチューブの長尺化にも独自製法で取り組んでおります。
以上の各事業分野の研究開発及び生産、品質などを支える解析技術の分野では、電子顕微鏡による原子構造の観察や、ポリマーの分子構造解析など、最先端技術によってモノづくりの品質強化を行っております。これに加え、公益財団法人佐賀県産業振興機構・九州シンクロトロン光研究センターに当社グループ専用のビームラインを保有し、放射光による世界トップ水準の原子スケール解析を常時利用することで、製品開発の加速や知的財産権の強化などを進めております。また、大規模計算や計算科学など高度な計算機シミュレーション技術の開発、AI活用にも注力しており、本技術を活用することで新製品設計最適化、生産プロセスの改善による信頼性向上を推進しております。その他、中国・蘇州市に中国解析センターを設置し、当社グループのグローバル展開を支えております。
研究開発・モノづくりを強化するためにDX技術の開発も進めてまいります。新材料の研究開発を加速するために、MI(マテリアルズ・インフォマティクス)や、PI(プロセス・インフォマティクス)の取組みを積極的に推進してまいります。また、生産現場からIoT技術を用いてデータを収集する技術や、AIや分析によりデータ活用するための技術開発を進めてまいります。以上の取組みや技術を用いた改善事例をツール化・アプリ化し、当社グループの様々な工場に横展開してまいります。並行して、社外からのサイバー攻撃からシステムを守るセキュリティ関連技術も強化いたします。
大阪製作所内の研究本館「WinDLab」を研究・開発活動の中核とし、2020年度に伊丹製作所内に開所した「CRystal Lab.」並びに横浜製作所内の情報通信分野の研究開発拠点が連携して部門横断的な研究開発の加速に取り組んでおります。なお、生成AIの拡大に伴い、今後も需要増が見込まれるデータセンター関連製品の研究開発を強化するため、2026年3月の竣工を目指して横浜製作所内に新たな研究開発棟を建設中であります。海外においても米国カリフォルニア州のICS(Innovation Core SEI,Inc.)の他、欧州・中国等に設けた研究拠点を活用して、広い視野で事業の成長を目指してまいります。
また、グループ全体として、これらの研究開発の成果を早期に収穫すべく努めるとともに、企業の社会的責任を自覚し、先進情報通信インフラ構築、省エネ、省資源、環境保護を一層前進させる研究にも注力してまいります。
環境エネルギー関連事業、情報通信関連事業、自動車関連事業、エレクトロニクス関連事業、産業素材関連事業他の各事業分野及び共通基盤技術における当連結会計年度の主な成果は以下のとおりであります。
また、当連結会計年度における研究開発費の総額は156,293百万円であります。
(1) 環境エネルギー関連事業
超電導や次世代送電網の分野でのネットワーク技術を活用したエネルギーソリューション事業など、新しい分野への進出を図るとともに、蓄電池、電力ケーブルなどエネルギー分野での積極的な開発を推進しております。
超電導の分野では、溶液塗布熱分解法による低コスト希土類系高温超電導線材の実用化に取り組んでおります。また、世界初の安定した超電導接続技術を開発し、永久電流で磁場を発生することが可能なコイルを実現しました。これらの技術により、高温超電導線材のNMR(核磁気共鳴装置)やMRI(磁気共鳴画像)への展開や小型核融合炉用マグネットへの応用が期待できます。
次世代送電網の分野では、自然エネルギーの導入、省エネルギー、電力網の分散管理といった社会ニーズに対応すべく、レドックスフロー電池(蓄電池)について、大規模システムによる実証運転を実施しております。
HEV(ハイブリッド自動車)などの環境対応車に多用されるニッケル水素電池の集電体として上市しているニッケル製セルメットを各種燃料電池、水素製造電極向けに展開するため、高温耐久性を付与した耐熱セルメットや、耐強酸性を高めた耐食セルメットを開発しております。また、EV(電気自動車)やHEV等の環境対応車の分野では、固有の高分子材料の合成技術を駆使し、駆動モーター等に適用する高性能平角巻線の開発にも取り組んでおり、モーターの高性能化に貢献する薄肉皮膜で高度な電気絶縁性を発揮する次世代平角巻線の開発に注力しております。
電力ケーブルの技術開発では、長距離直流連系線、再生エネルギー関連の需要伸長に対応すべく、超高圧直流
ケーブル、洋上風力向けケーブルの開発や送電線路に用いられるシステム製品を開発しております。
住友電設㈱では、社会や顧客の多様化するニーズに応えるべく、脱炭素化社会実現に向けたカーボンニュートラル・省エネルギー技術、IoTや5Gを活用した監視・エネルギー管理等のビルディングマネジメントシステム、工場向け統合セキュリティシステム、ローカル5Gシステム、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)による食品衛生管理をクラウドで一元管理するシステムなど、最新技術、情報化技術を活用し、新技術、新工法、各種システムの開発に取り組んでおります。
日新電機㈱では、環境配慮への要請の高まり、脱炭素に向けた電力システムの変化など、持続可能な社会に向けた動きへ対応すべく、研究開発に取り組んでおります。
電力・環境システム分野では、環境負荷の低減、省スペース化を狙いとする製品の開発と共に、多様な分散型電源が導入拡大される社会において電力の安定需給を支える技術や製品、システムの開発、蓄電池システムや工場・水処理設備の進化に資する運用管理、IoT関連の技術や製品、システムの開発を進めております。
ビーム・プラズマ分野では、社会を支える材料・部品・デバイスの進化に資するべく、パワー半導体用等のイオン注入装置や多様な材料改質に利用される電子線照射装置、ファインコーティング関連の技術研究や製品開発を進めております。
当事業に係る研究開発費は15,661百万円であります。
(2) 情報通信関連事業
光通信関連製品、デバイス関連製品、化合物半導体材料、ネットワーク・システム関連製品などの分野において、総合的に研究開発を行っております。
光通信関連分野では、光ファイバ・ケーブルの伝送容量向上や長距離化に向け、超低損失ガラス、新タイプの細径光ファイバや高耐曲げ性・高耐側圧性の光ファイバ、脱炭素に向けた光ファイバ新製法、次世代技術である中空コア光ファイバ等、広範囲な開発に取り組んでおります。特に、伝送容量の飛躍的拡大に向け、1本の光ファイバ中に複数のコアを有するマルチコア型光ファイバと関連技術は、2023年に世界初の商用導入を果たし、実用化への開発・実証をさらに進めております。一方で、生成AIに必要な大規模データセンターを支える様々な大容量・高密度光配線製品を開発しており、コンピューティング能力向上と消費電力低減の両立が期待される光電融合に向けた新技術創出にも取り組んでおります。
デバイス関連分野では、光通信用デバイス及び無線通信用電子デバイス関連の新製品をいち早く市場に投入することにより、事業拡大に努めております。光通信用デバイス関連製品では、データセンター用機器等に搭載される支線系対応製品や、長距離幹線機器に対応したコヒーレント伝送用デバイスを開発しております。無線通信デバイス関連製品では、高効率・高出力のGaN(窒化ガリウム)トランジスタを開発し、携帯基地局用途に製品化しておりますが、5G及び次世代通信用にさらなる効率改善、高周波/広帯域化に取り組んでおります。また、これらデバイス技術の蓄積を活かし、多様な分野への応用が期待できる近赤外、中赤外領域の製品開発も進めております。
化合物半導体材料では、高速通信用の光デバイスや無線通信用電子デバイスなどに用いられるInP(インジウムリン)及びGaAs(ガリウムヒ素)系エピタキシャルウエハの新製品開発を進めております。
ネットワーク・システム関連分野では、持続可能で強靭な社会を支える情報通信機器・システムの研究開発を推進しております。光・無線技術及びその融合技術を活用し、5G/Beyond 5G向けネットワークやオール光ネットワークを支える光伝送システム、無線伝送システム及びそのコアとなる部品の研究開発に、通信事業者とも連携しながら取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は21,623百万円であります。
(3) 自動車関連事業
モビリティ分野の主要製品である自動車関連製品においては、顧客目線の開発・提案が求められております。当社では㈱オートネットワーク技術研究所にてマーケティングから製品開発まで一貫して行う研究開発体制を整備することで、変化の激しい事業環境に追随するための方針決定の迅速化や効率化を図っております。本研究所ではCASEやSDGsなどの社会の大きなニーズの変化と当社が持つ技術シーズをマッチングさせるためのマーケティング活動を強化しており、それを基に顧客とのパートナー活動を深化させ、得意とする情報通信やエネルギー関連技術を活かしたワイヤーハーネス及びエレクトロニクス製品などの新製品の開発を行っております。
ワイヤーハーネスに関しては、次世代車載システムにパワー供給や情報伝送するためのネットワークアーキテクチャを顧客と共に構想し、システム設計やそれに必要な要素技術の開発を進めております。例えば自動運転等で必要となる高速通信用ハーネス・コネクタにおいては、将来必要とされる超高速通信に向け車載光ハーネス・コネクタの開発も推進しております。また、モジュール生産など車両の製造革新に対応するための、モジュール対応ワイヤーハーネスについても開発を進めております。本格普及が進んでいる電動車(EV・PHEV・HEV)向けでは、高圧ハーネス・コネクタ、バッテリー内配線モジュールなど各製品の開発に取り組む他、高電圧・大電流化により今後大きな問題となる電磁ノイズ対策製品の開発も進めております。GX、CE(サーキュラーエコノミー)視点での研究活動も強化しており、ワイヤーハーネスからの金属・樹脂などの材料分離・再生などの技術開発にも取り組んでおります。
エレクトロニクス機器に関しては、給電・分配・変換・蓄電に関わる車載電源機器や、車内の情報配線のハブ機能となる車載ゲートウェイなどの開発を進めております。さらに当社事業であるエネルギーや通信の社会基盤と車が繋がる変革に対応した新しいシステムやサービスの開発にも取り組んでおります。
一方で、新製品の開発効率化や高いレベルの品質確保に不可欠な試験・分析・評価・解析技術など基盤技術の研究開発も推進しております。CAE(Computer-Aided Engineering)技術やAIなどのDX化を推し進めることで、材料選定と強度・発熱等の性能予測サイクルを短期化させ、顧客に対するタイムリーな提案を実現しております。また、今後進んでいく電磁ノイズの高周波化に対応するための高精度計測技術やノイズ測定環境の構築なども進めております。
交通インフラ関連分野では、交通事故削減や自動運転社会に向けたインフラ機器・クラウド技術の研究開発を推進しております。具体的には、レーダやカメラ映像を使った車両・歩行者等のセンサや、コネクティッドカー管理システム等の開発を行っております。
住友理工㈱では、ワイヤーハーネスと制遮音品や内装品、ホースなどの製品を組み合わせたシステムの提案等をはじめとして、さらなる協業体制の構築を進めております。これまで培ってきた配合技術を活かし開発した放熱性防音材が、2024年度愛知発明表彰において「愛知発明大賞」を受賞しました。この材料は、「磁気誘導発泡成形法:MIF®(Magnetic Induction Foaming)」を用いて開発したもので、一般的な防音ウレタンの10~50倍もの放熱性能を備えております。自動運転やEVに必要とされる防音・熱対策での課題を同時に解決する材料として期待されております。EV向け熱対策においては、優れた断熱効果を持つ薄膜高断熱材「ファインシュライト」に加え、冷却系ホースや電池用断熱材、バッテリー冷却プレート「クールフィットプレート」等を開発しており、受注に向けた取組みを進めております。また、より高精度な製品設計と競争力のある量産生産性の実現を目指し、独自の加硫シミュレーション技術の確立による設計から量産工程まで一貫したDXを推進しております。
自動車分野以外でも、エレクトロニクス分野、インフラ・住環境分野、ヘルスケア分野などにおいて、材料技術・センサ技術等を活かした新製品・新サービスの研究開発を進めております。SRセンサを応用した「モニライフシリーズ」は、2023年度に2023年度中部地方発明表彰「文部科学大臣賞」と2023年度愛知発明表彰「発明奨励賞」を受賞いたしましたが、2024年度に宿泊者の睡眠状態を可視化するサービス用途で品川駅の㈱ナインアワーズ・スリープラボに採用されました。
当事業に係る研究開発費は104,238百万円であります。
(4) エレクトロニクス関連事業
当社固有の材料技術、マイクロ・ナノテクノロジーをベースに、FPC、電子ワイヤー製品、照射架橋製品、多孔質フッ素樹脂膜製品など広範な新材料や部品の開発を行っております。FPCでは、携帯機器や医療機器等向けの次世代微細回路製品、5Gやミリ波など高周波用途向け部材の開発に取り組んでおります。また、電子デバイス用の低線膨張率の高放熱素材、独自の多孔化技術を適用した半導体用途向けの微小孔径の多孔質フッ素樹脂膜の開発にも注力しております。
当事業に係る研究開発費は5,913百万円であります。
(5) 産業素材関連事業他
超硬合金、ダイヤモンド、立方晶窒化硼素、コーティング薄膜、特殊鋼線、鉄系焼結部品やセラミックスに関する当社固有の材料技術とプロセス技術を駆使し、切削用工具・研削用工具や超精密加工用工具、各種自動車機構部品、機能部品等の開発を進めております。
切削用工具・研削用工具開発においては、今後、市場が伸長していく航空機分野及び半導体分野を重点ターゲットとし、計算科学を活用した硬質材料の開発、コーティング技術開発を進めております。
ダイヤモンドでは、超精密加工や高品位加工用工具素材として使用することを目的として、独自の原料技術や超高圧技術で単結晶ダイヤモンド素材や新材料開発及び精密加工技術開発に注力しております。また、量子センサ用ダイヤモンド素材開発にも取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は8,858百万円であります。
今後の成長を担う新規分野への挑戦として、水素エネルギー社会を実現する技術開発を行っております。また次世代の電線や高強度材料として期待されるカーボンナノチューブの長尺化にも独自製法で取り組んでおります。
以上の各事業分野の研究開発及び生産、品質などを支える解析技術の分野では、電子顕微鏡による原子構造の観察や、ポリマーの分子構造解析など、最先端技術によってモノづくりの品質強化を行っております。これに加え、公益財団法人佐賀県産業振興機構・九州シンクロトロン光研究センターに当社グループ専用のビームラインを保有し、放射光による世界トップ水準の原子スケール解析を常時利用することで、製品開発の加速や知的財産権の強化などを進めております。また、大規模計算や計算科学など高度な計算機シミュレーション技術の開発、AI活用にも注力しており、本技術を活用することで新製品設計最適化、生産プロセスの改善による信頼性向上を推進しております。その他、中国・蘇州市に中国解析センターを設置し、当社グループのグローバル展開を支えております。
研究開発・モノづくりを強化するためにDX技術の開発も進めてまいります。新材料の研究開発を加速するために、MI(マテリアルズ・インフォマティクス)や、PI(プロセス・インフォマティクス)の取組みを積極的に推進してまいります。また、生産現場からIoT技術を用いてデータを収集する技術や、AIや分析によりデータ活用するための技術開発を進めてまいります。以上の取組みや技術を用いた改善事例をツール化・アプリ化し、当社グループの様々な工場に横展開してまいります。並行して、社外からのサイバー攻撃からシステムを守るセキュリティ関連技術も強化いたします。
大阪製作所内の研究本館「WinDLab」を研究・開発活動の中核とし、2020年度に伊丹製作所内に開所した「CRystal Lab.」並びに横浜製作所内の情報通信分野の研究開発拠点が連携して部門横断的な研究開発の加速に取り組んでおります。なお、生成AIの拡大に伴い、今後も需要増が見込まれるデータセンター関連製品の研究開発を強化するため、2026年3月の竣工を目指して横浜製作所内に新たな研究開発棟を建設中であります。海外においても米国カリフォルニア州のICS(Innovation Core SEI,Inc.)の他、欧州・中国等に設けた研究拠点を活用して、広い視野で事業の成長を目指してまいります。
また、グループ全体として、これらの研究開発の成果を早期に収穫すべく努めるとともに、企業の社会的責任を自覚し、先進情報通信インフラ構築、省エネ、省資源、環境保護を一層前進させる研究にも注力してまいります。
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