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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100YGBO (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 株式会社日立製作所 研究開発活動 (2026年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等

(1)研究の目的及び主要課題
当グループ(当社及び連結子会社)は、めざす社会の姿として、環境・幸福・経済成長が調和したハーモナイズドソサエティを掲げています。この実現に向けて、研究開発ではコア市場における事業領域の差別化に寄与するだけでなく、外部環境の変化の中で転換点を生み出し、成長市場や新市場の開拓を狙った技術開発を進めています。当グループ全体が持つ“強み技術”を体系化した「技術基盤」に基づきながら、製品やサービスの差別化、イノベーションの創生につなげています。
また、Lumada 3.0を体現する、AIで社会インフラを革新する次世代ソリューション群「HMAX」の拡大につながる技術開発にも取り組んでいます。この技術開発において重要な役割を担うのが、フィジカルAI統合モデル「Integrated World Infrastructure Model (以下、「IWIM」といいます。)」です。IWIMは、当社が蓄積してきた社会インフラ領域の運用・保守に関するドメインナレッジを学習することで、物理世界の現象を正確に理解・推論し、適切に応答することが可能です。これにより、設備の状態把握や保全計画の高度化といった現場課題の解決に資するフィジカルAIの開発及び事業への技術展開を加速し、社会インフラの変革に貢献していきます。

(2)研究開発体制
当グループの研究開発は、当社及び国内外のグループ各社の研究開発部門が緊密に連携し、グローバルな視点のもとで推進しています。また、大学・研究機関、業界団体、外部企業など多様なパートナーと連携し、研究開発グループ国分寺サイトの「協創の森」を基点として、共同研究及び協業を展開しています。これらの取組により、技術及び社会の転換点を先取りし、イノベーションの創出から社会実装に至るまで一体的に推進しています。さらに、コーポレートベンチャリングを活用したオープンイノベーションを通じて、社外パートナーとの技術基盤の構築及び事業創出を進めています。
コア事業の成長、成長市場の獲得及び新市場の創出に向けた持続的なイノベーションの加速を目的として、2025年4月に研究開発グループの組織再編を実施しました。国内では、OT×Digitalの創出を担う「Digital Innovation R&D」、OT×Productのイノベーションを担う「Sustainability Innovation R&D」、次の成長領域の創出を担う「Next Research」を設置し、研究開発を推進しています。海外では、北米、欧州、中国、アジア、インドに展開する研究開発拠点を通じて各地域の変化を捉え、各国・地域の事業部門と連携した事業創出及び地域特性や市場ニーズに応じた研究開発を推進し、事業成長と新たな価値創出を牽引しています。

(3)イノベーション投資
当グループのさらなる成長に向けて、グループ全体のイノベーション投資を拡大します。
コーポレートベンチャリング投資では、2025年に組成した最大規模となる400百万米ドルの第4号ファンドを含め、当社のスタートアップへの投資資金残高は累計10億米ドルに達しました。グローバルトップクラスの運用規模によりオープンイノベーションをさらに加速させ、スタートアップを活用したイノベーションエコシステム構築に貢献します。具体的には、日立の強みであるOT、IT及びプロダクトにAIを融合させたフィジカルAIや、データセンター、ヘルスケア、分散型エネルギーシステム、量子、核融合、宇宙等の先端技術や新領域を対象に、新事業創出に注力する戦略SIBビジネスユニットの活動を中心としてスタートアップとの協創を推進しています。こうした取組により創出される技術や事業機会を起点に、One Hitachiの成長事業の創出及び新たな事業機会の獲得をめざしています。

(4)研究開発費
当連結会計年度における当グループの研究開発費は、売上収益の2.7%にあたる2,903億円であり、セグメントごとの研究開発費及び研究開発費の推移は次のとおりです。

セグメントの名称研究開発費
(億円)
デジタルシステム&サービス496
エナジー708
モビリティ336
コネクティブインダストリーズ1,051
その他14
全社及び消去295
合 計2,903

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(注)1.赤色は当グループの研究開発費の合計です。オレンジ色はそのうち、デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ及びコネクティブインダストリーズの4セグメントにおける研究開発費の合計です。
2.( )内の数値は、当グループの研究開発費の売上収益合計に占める割合です。

(5)研究成果
当連結会計年度における研究開発活動の主要な成果は、次のとおりです。
当グループでは、社会インフラの運用・制御技術で培ったノウハウに加え、AIなどのデジタル技術、製品技術を活かしたグリーン・サステナビリティ、次の成長領域の創出に向けた先端技術の研究開発を推進しました。これらの各領域の融合的な取組を通じて、社会課題の解決、新たな価値創出、持続可能な社会や未来社会の実現に貢献しました。

① Lumada 3.0/HMAXを支える基盤技術を開発 (全社、デジタルシステム&サービスセグメント、コネクティブインダストリーズセグメント)
社会インフラを安全かつ持続的に革新するため、フィジカルAI統合モデル「IWIM」を発表しました(2025年11月)。IWIMは、当社が蓄積してきた社会インフラ領域のナレッジ/手法とAI技術を統合することで、物理世界の現象を正確に理解・推論し、適切な応答を実現します。IWIMを活用することで、現場の動作データや作業ノウハウを自律的に継続学習((注)1)して動作を最適化しながら作業の速度・品質を向上する、フィジカルAI技術を開発しました(2026年3月)。さらに、エッジAI(注)2技術の開発により、多様なセンサーデータ処理を一つの半導体チップに集積・省電力化し、最適化した回路で効率的な動作を実現します(2025年10月)。これらの技術を通じて、Lumada 3.0を体現するHMAXのグローバル展開に貢献し、人・AI・ロボットが共に進化する社会の実現・価値最大化をめざします。
(注)1.本研究の一部は、国立研究開発法人科学技術振興機構(以下、「JST」といいます。)のムーンショット型研究開発事業(グラント番号JPMJMS2031)の支援を受けて実施しています。
2.ネットワークの端末機器(エッジデバイス)に直接搭載したAI

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フィジカルAI統合モデル「IWIM」の概要

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フィジカルAIロボットの動作の様子

② 次世代AIエージェント「Naivy」の開発とアプリケーションを拡充 (デジタルシステム&サービスセグメント、エナジーセグメント、コネクティブインダストリーズセグメント)
次世代AIエージェント「Frontline Coordinator – Naivy (以下、「Naivy」といいます(注)1。)」を開発しました(2025年7月)。Naivyは、メタバース空間と現場情報を統合し、必要な情報を人やロボットに提供するAIエージェントであり、様々なアプリケーションに活用することでフロントラインワーカーの作業効率やウェルビーイングの向上に貢献します。当社は、㈱日立プラントサービスと共同で行った現場での検証において、施設管理タスクにおける非熟練者の業務遂行能力を3割程度向上できることを確認しました。「現場安全高度化ソリューション」の提供において、具体的なユースケースとして、Naivyを活用した「リスク危険予知支援システム(注)2」を㈱日立プラントコンストラクションと共同開発するなど、現場の安全性向上にも貢献しました(2025年10月)。さらに、㈱日立ソリューションズが提供する「設備管理向けナレッジ活用アプリケーション」においてもNaivyを活用し(2026年3月)、One Hitachiでアプリケーションの拡充を推進することで、現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)と安全性向上に貢献しました。
(注)1.NavigatorとAIを組み合わせた造語で、人とAIとロボットが統合的に協働するための調整役の意味。商標登録済み。
2.リスク危険予知:現場作業などに潜む不安全な状態や行動、心理状態を事前に明らかにすることで、労働災害のリスクを軽減し、事故防止につなげること。また、リスクアセスメントの要素を含む、より広範なリスク評価を行うこと。

③ 半導体デバイスの生産効率改善に寄与する高感度欠陥検査技術を開発 (コネクティブインダストリーズセグメント)
半導体製造プロセスにおける10nm(ナノメートル。1mmの100万分の1。)以下の微小欠陥を高感度に検出する技術を開発しました。デバイス回路のレイアウトを自動認識して検出感度を調整する技術と、誤検出を識別する技術を組み合わせることで、欠陥ではない製造プロセス上のばらつきの誤判定(過検出)を低減します。半導体デバイス評価用サンプルでの試験では、過検出を90%以上抑制できることを確認しました。これにより、検査工数の削減とデバイスの安定供給を支援します。開発技術をマルチビーム式の走査型電子顕微鏡へ搭載し、高速・高感度検査を実現します。さらに、検査時に得られる電気・材料特性データを活用することで、製造プロセスのデジタルツイン(注)化を推進し、生産効率改善により深く寄与することをめざします。
(注)現実世界から収集したデータをもとに、その現実世界をコンピューター上の仮想空間に再現する技術。ここでは、製造プロセスの最適化や品質管理に活用することを指します。

④ エネルギー領域でのSociety 5.0実現と、循環経済の実現を加速するエコシステム構築の強化 (全社)
日立東大ラボでは、提言書「Society 5.0を支えるエネルギーシステムの実現に向けて」を第6版まで発刊し、カーボンニュートラル実現に向けた具体的な道筋を示してきました。2025年4月に発刊した第7版では、第6版からの変化点と動向を網羅的に解析し、優先課題とその対策をまとめました。2026年1月に開催した第8回産学協創フォーラムでは、提言の振り返りやエネルギー改革を議論するとともに、「エネルギーシステムの公共性と競争性」、「地域のトランジションの加速」をテーマにディスカッションし、持続可能な社会実現に向けた次のアクションの議論を深めました。これまでの取組が評価され、内閣府等が主催する「第8回日本オープンイノベーション大賞」日本経済団体連合会会長賞を受賞しています(2026年2月)。
また、2022年10月に国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、「産総研」といいます。)内に「日立-産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボ」を設立して以来、「循環経済社会のグランドデザインの策定」をはじめとした3つのテーマで研究を推進してきました。サーキュラーエコノミーに関する様々な創意工夫が生み出す費用対効果を研究報告書等で公開するなど、定義や算定方法、個社及びバリューネットワークへの適用方法、実務上の留意点を整理しました。2026年2月の第3回オープンフォーラムでは、「ありたき将来」の実現に向けたロードマップや要件に加え、標準化や重要なステークホルダーとの連携、経済性と環境性の両立する施策のあり方について外部有識者と議論を深めました。これらのサーキュラーエコノミーに関する提言活動は、2025年グッドデザイン賞を受賞しています(2025年10月)。

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「第8回日本オープンイノベーション大賞」表彰式の様子

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サーキュラーエコノミー提言活動における「2025年グッドデザイン賞」の受賞

⑤ シリコン量子コンピュータの実用化に向けた研究開発を加速 (全社)
当社は、日立ケンブリッジラボでの長年の基礎研究を経て、2020年からはJSTのムーンショット型研究開発事業(グラント番号JPMJMS2065)も活用し、大規模化に優位なシリコン量子コンピュータの研究開発を推進しています。2025年10月には、この分野で世界的な研究業績のある理化学研究所及びベルギーを拠点とする世界的な研究イノベーション・ハブであるimecと、グローバルなエコシステム構築に向けた基本合意書を締結しました。各国の研究拠点や専門人材を活用した研究開発ネットワークを構築し、新たなスピン量子ビット((注)1)制御技術の研究開発を加速しています。
2026年3月には、JSTのムーンショット型研究開発事業の第2期(2026~2030年度)の研究開発プロジェクト(グラント番号JPMJMS256H)に参画することを発表しました。2027年度までに開発者や研究者が参加できる量子プラットフォーム((注)2)の構築とクラウド公開((注)3)を推進するとともに、産学官連携や国際標準化、社会や産業の課題解決に向けた活用を広げていきます。
(注)1.量子ビット:量子コンピュータで利用される情報の最小単位
2.量子コンピュータを活用したアプリケーション開発や研究が可能な共通基盤
3.インターネット経由で研究者や開発者が単一電子からなる量子ビットを実際に操作できるサービス

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シリコン量子コンピュータ及び適用イメージ

⑥ 宇宙からの災害監視・インフラ管理の精度を高める「構造化電波」技術の原理検証に成功 (全社)
人工衛星による災害監視や環境モニタリングなどを想定した「構造化電波(注)」技術の原理検証に成功しました。本技術は、物体の形状や動き、材質など複数の特徴(多変数データ)を同時に取得できる独自の電波制御及び解析技術です。今回、音波を用いた実験を通じて、渦状の波面を持つ構造化電波の生成・制御、検出、解析の有効性を確認しました。天候や昼夜の影響を受けずに、複数の情報取得が可能となり、迅速な意思決定や異常兆候の早期発見に役立ちます。今後は、パートナー企業や大学・研究機関と連携し、多様な分野での社会実装を推進することで、安全・安心で持続可能な社会の実現に貢献していきます。
(注)ここでは、偏波状態や位相、周波数といった自由度を制御して作り上げた電波のことを指します。今回の検証では、渦状の波面の重ね合わせを使用。

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構造化電波を利用した地球観測のイメージ図

事業等のリスク株式の総数等


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