有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1007XSR
オークマ株式会社 研究開発活動 (2016年3月期)
経営上の重要な契約等メニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当グループでは、基礎及び応用研究、そして、これらの研究により裏付けされた新製品の開発までの一連の研究開発活動を、当社の技術本部及びFAシステム本部を中心として行っております。当連結会計年度は、研究開発費として41億42百万円を支出いたしました。
研究開発活動の概要は、次のとおりであります。
(1) 新機種・新技術開発
グローバルに拡大を続ける航空機産業や、先進国・新興国ともに需要が広がる自動車産業、並びに広範囲に亘る国内製造業の設備投資意欲が旺盛な状況となりました。2015年の日本の業界受注額は1兆4,806億円と前年の1兆5,094億円には届かなかったものの歴代3番目の高水準となりました。このような市場において、製品競争力を一層高めていくためには、生産性の向上に貢献し、高付加価値加工・高精度加工が安定して実現でき、かつ、環境・エネルギーに配慮したスマートファクトリーに対応できる自律型工作機械「スマートマシン」の開発が必要となります。当グループは、このような市場要求に対して業界唯一の、機・電・情・知(機械・電気・情報・知識創造)の融合技術を持つ強みを活かし、「高精度生産性」の追求と「省エネルギー」に貢献するオンリーワン技術・商品の開発を展開しております。
当グループは、これまでにお客様の加工能率最大を支援する「加工ナビ」、安定した高精度加工が誰にでも実現できる「サーモフレンドリーコンセプト」、衝突を気にせず誰にでも熟練の操作が実現できる「ぶつからない機械(アンチクラッシュシステム)」、5軸制御加工機の幾何誤差を自動計測・補正する「ファイブチューニング」等の知能化技術を開発いたしました。また、拡大を続ける航空機業界で課題となっている、チタン・インコネル材の様な難削材の高能率加工を実現する「シンクロドライビング」の開発は、当グループの技術力を示す新技術開発となりました。
航空・宇宙、エネルギー、自動車、一般機械等幅広い業界で、部品の高機能化・軽量化を目的として複数部品の一体化が加速し、複雑形状化が進んでおります。そのため加工の工程集約のニーズが一層高まり、1回の段取りであらゆる加工ができる5軸制御マシニングセンタや複合加工機の需要がグローバルに増加しております。
これらの需要に対応すべく、サーモフレンドリーコンセプトによる抜群の加工精度安定性とファイブチューニングによる高精度な加工を実現する5軸制御マシニングセンタ「MU-4000V」を開発しました。「MU-4000V」は、昨年までに開発した「MU-5000V」「MU-6300V」「MU-8000V」のMU-1000Vシリーズを完成させるもので、高速・高精度な5軸制御マシニングセンタでありながら旋削機能、研削機能、スカイビング歯車加工等の多工程をコンパクトサイズに集約可能といたしました。新たな5軸制御マシニングセンタのベストセラーマシンとしてまいります。
さらに大型の5軸制御マシニングセンタとしては、横形の「MU-10000H」を既に市場投入しており、幅広い市場ニーズに応えることができるよう新機種開発を進めてまいりました。今後とも5軸制御マシニングセンタ、複合加工機シリーズの育成展開を継続して、一層の市場競争力強化を図ってまいります。
5軸制御マシニングセンタ及び複合加工機の領域において、さらなる工程集約・機能拡張を実現するため、複合加工機では、工具主軸の回転を利用し、加工物の外周穴や突出部の旋削加工も可能にしたターニングカット機能を開発し、シール機構部に要求される加工精度の対応を可能にしました。工具主軸の持つB軸動作と旋削加工を同期制御することで、工具寿命の延長や、曲面形状の加工精度を向上するB軸旋削機能、さらに、複雑形状加工を実施後、加工物を取外すことなく、三次元計測を可能とした、機内計測システム等を開発いたしました。また、生産性向上を目的とした、下刃物台付の複合加工機では、下刃物台の取付け工具本数の制約から、長時間連続運転に制限がありましたが、工具を自動交換する技術を開発し、長時間自動運転の対応を可能としました。
また、当社のベストセラーマシンであります「LB EX」シリーズの中でも、最も需要の大きな「LB3000 EXⅡ」において長尺加工を可能とする心間1,300mm仕様を開発いたしました。長尺加工物を高能率に加工する為、加工物を支持する振止めをNC制御にて長手に移動可能とした「自走式振止め」や、ねじ加工時のビビリを抑制する「加工ナビT-gねじ切り」機能を付加し、新たに長手展開をいたしました。
これらの継続的な機械及び技術の開発の結果、2015年には、5軸制御マシニングセンタ「MU-4000V-L」が、日刊工業新聞社主催の「2015年度十大新製品賞 本賞」を、また、新世代省エネルギー技術として開発いたしました「ECO suite」が、日刊工業新聞社主催の「第45回機械工業デザイン賞 最優秀賞・経済産業大臣賞」をそれぞれ受賞いたしました。
当グループは今後とも、お客様の利益の最大化に向けて「高精度生産性」を追求し、また、お客様が求める「ソリューション(課題解決や付加価値向上のための提案)」を機械に組込むことにより、新しい差別化・成長製品の創出を目指してまいります。機械技術、加工技術、制御・ITの技術基盤をベースに、トータルレスポンシビリティの強みをさらに拡げて「最高のものづくりサービス」を提供してまいります。
この戦略は、当グループならではの強みであり、他社が容易に真似できない差別化戦略であります。オンリーワン技術・商品を間断なく開発し、その業界、対象ワークでグローバルに競争力をもつ生産手段を提供し、お客様の利益を創出し続けることにより、世界の工作機械のエクセレントカンパニーを目指してまいります。
(2) NC装置とIT製品の開発
当グループは、1963年(1963年)に自社製NC「OSP」の開発に成功して以来、機械とNC装置を一体でサポートする「トータルレスポンシビリティ」を基本理念とし、現在では、機・電・情・知(機械・電気・情報・知識創造)の融合をコンセプトとして、お客様のものづくりを支えるソリューションを提供する先進技術と機能の開発を続けております。当連結会計年度における研究開発活動として、1)新世代知能化CNC「OSP suite」 、2)新世代省エネシステム「ECO suite」、3)オークマスマートファクトリー、4)新制御技術の開発を進めてまいりました。
1)新世代知能化CNC「OSP suite」の全機種展開
「OSP suite」は、オンリーワン技術である「知能化技術」に加えて、タッチパネル操作を進化させた新操作感覚「suite タッチ」と加工現場から発想した「suite アプリ」を搭載し、始業点検からプログラムや工具・治具の準備、加工、終業作業に至るまで、作業全般でのデジタル情報の活用を促進する新世代知能化CNC装置であります。
当社はJIMTOF2014を皮切りに、19インチ大画面を搭載した新世代知能化CNC「OSP suite」のPRを開始し、2015年4月より複合加工機、5軸制御マシニングセンタへの適用、販売を開始いたしました。
「OSP suite」は、「IoT」時代にフィットした「ものづくりのデジタル化」を推進する「CNC装置」として、人に優しい操作性と省スペースを両立する15インチ画面を採用した「OSP suite」スリムタイプ及びコンパクトタイプを開発し、2015年8月から 旋盤、マシニングセンタ全機種に搭載し販売を開始いたしました。
2)新世代省エネルギー技術「ECO suite」の全機種展開
「ECO suite」は、「運転電力の低減」と「待機電力の削減」による省エネを実現する新世代省エネルギー技術であります。
「ECO suite」は、世界初の工作機械アイドリングストップ機能「ECOアイドルストップ」、電力消費量をリアルタイムで見える化する「ECO電力モニタ」、ものづくりの環境に合わせて省エネルギーを最適化する「ECOユアツ」、「ECOオペレーション」で構成され、高度な省エネルギー技術により、高精度を維持したまま電力消費量の削減を実現するものであります。
2015年4月から「ECO suite」を複合加工機、5軸制御マシニングセンタに搭載、販売を開始、2015年8月からは、旋盤、マシニングセンタ全機種に搭載し、販売を開始いたしました。
3)オークマスマートファクトリーの提案
ドイツの「Industrie4.0」や米国の「Industrial Internet」など、国を挙げて次世代のものづくりを推進するなか、当社は、2015年11月に開催した「OMF」(オークママシンフェア)にて、「OSP suite」を中核に、CAD、CAM、そして工作機械の動作を忠実にシミュレーションする当社独自の3Dバーチャモニタと機械をつなぎ、最短時間で加工準備を完了するものづくり現場のスマートファクトリー化の提案を行いました。
また、生産計画の変更に対して、柔軟に作業計画を変更し、作業者に分かりやすく伝えるシステム、作業計画から加工準備、実加工、品質検査までの各種情報をデジタル化して蓄積し、製品のトレーサビリティを確保すると共に、データ分析によって計画策定や加工準備、加工作業の改善につなげるスマートマニュファクチャリングを提案いたしました。
4) 新制御技術の開発
高付加価値加工が求められる複合加工機や5軸制御マシニングセンタの回転軸においては、加工物の径が大きい場合、微細な角度誤差が加工面に大きな誤差となって現れるため、精密なサーボ制御が要求されます。
当社が開発した、サーボナビAI(Automatic Identification)は、ワーク重量に応じて最適な制御パラメータを自動的に調整する新制御技術であり、これをさらに進化させ、機械の摩擦抵抗などの状態変化に対しても、自動的に最適な制御パラメータを調整するサーボナビSF(Surface Fine tuning)を5軸制御マシニングセンタに適用いたしました。これらサーボナビによって、機械性能を最大限に引き出し、複雑化する5軸加工の高生産性と高品位加工の両立の実現を図りました。
当グループでは、半世紀に渡る自社製NC開発の基本理念を今後も継承するとともに、オークマの強みである機・電・情・知融合のコンセプトを基盤として、先進のサーボ技術、先進の情報技術、オンリーワンの知能化技術の開発と強化を進め、自社製NCとIT製品のさらなる進化を促進し、「総合一貫した“ものづくりサービス”」を通じて世界中のお客様の価値創造に貢献できるように推進してまいります。
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