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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1007VQS

有価証券報告書抜粋 前田建設工業株式会社 研究開発活動 (2016年3月期)


経営上の重要な契約等メニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度は、建築事業、土木事業及びその他事業を中心に研究開発を行い、その総額は1,996百万円余である。
(建築事業及び土木事業)
当社グループは、建築事業・土木事業に関わる研究開発を当社が中心に行っている。当社グループは多様化・高度化する社会のニーズに対応するため、生産性や品質の向上など、社会への提供価値向上と企業利益に資する研究開発を推進している。特に環境・エネルギー関連技術、防災・復興関連技術、都市機能の高度化技術、ICT社会への対応技術などを、注力して取組むべき重要な技術分野として設定している。
また、総合的なソリューション技術やマネジメント技術の開発推進のため、グループ企業間の連携開発や、大学・公的研究機関・異業種企業との共同開発も積極的に推進している。
これらの多様な技術開発を実施するため、当社は事業に直結する短期的な技術開発を建築・土木両事業本部の技術開発部門が、中長期的・革新的技術の開発や基盤的研究開発を技術研究所が各々主管し、相互連携を密に取りながら効率よく開発を推進する体制を構築している。
当連結会計年度における研究開発費は1,708百万円余であり、主な研究開発成果は次のとおりである。

(1)環境・エネルギー関連技術
①自然由来ヒ素汚染土の大量連続処理浄化工法
近年、地下構造物が輻輳する大都市圏では、鉄道・共同溝・下水道・道路等を大深度地下に建設する工事が増加し、自然由来の重金属を含む地盤と遭遇する事例が増えている。2010年の土壌汚染対策法の改正により、自然由来の重金属についても厳格な取り扱いが義務付けられたことから、これらの工事における自然由来汚染土壌の処分方法が大きな課題となっている。当社では、泥水状の掘削土砂に従来品と比較して重金属類の吸着能力に優れた、大粒径(従来比6倍)の鉄粉を添加して、重金属類を鉄粉に吸着させた後、遠心分離と磁性分離の2段階鉄粉回収処理による重金属類の分離無害化工法を開発した。2段階鉄粉回収処理工法の採用により、鉄粉回収設備の小型化と大量連続処理を実現し、大幅なコストダウンを可能とした。
既に、自然由来ヒ素が環境基準値の4~8倍程度の上総層群土丹層を対象とした泥水固化工事に初適用し実績を上げている。今後、積極的に適用を進め、多様な土質、汚染種、処理規模に対応可能となるよう、適用範囲の拡大を図っていく予定である。
②低炭素型のコンクリート
低炭素化社会の構築に向け,セメントの一部を高炉スラグ微粉末やフライアッシュ等の産業副産物である混和材と置換し、CO2排出量を約60~80%削減した低炭素型のコンクリートを国立研究開発法人土木研究所および大成建設株式会社と共同で開発した。開発した低炭素型のコンクリートは24N/mm2クラスの強度を持つ、汎用性、実用性に優れたコンクリートであり、室内による強度試験および耐久性試験、実機による製造試験および施工試験、全国3か所における約4年間の暴露試験により,その性能を確認した。特に、低発熱性、塩害抵抗性、アルカリ骨材反応の抑制効果に優れ、低炭素社会、循環型社会の構築に貢献することが期待される。既に、二次製品工場の床スラブに適用した実績があり、今後は低炭素型社会への取組みの一つとして積極的に提案していく。

(2)防災・復興関連技術
①建物の安全性即時診断システム
東日本大震災では、建物管理者が被災建築物の安全性を即時に判断する手段がなく、初動活動に支障が生じた事例が確認されたことから、地震に対するBCP要素技術として、建物管理者自らが建築物の安全性を即時に把握する技術が望まれていた。当社では、建物内の適切な1ヶ所に地震計測センサを設置し、地震発生直後、その1ヶ所の観測記録から建物の揺れを自動的に解析・診断し、建物各階の安全性(構造・二次部材・設備)を評価し、建物所有者、管理者および使用者に対し、評価結果とそれに基づく行動指針をeメールならびに現地モニタで即時に発信する一貫システムを開発した。なお、本システムは、慶應義塾大学理工学部三田彰教授の提案による屋上階1ヶ所の地震計測センサを利用した構造安全性診断手法をベースに、当社独自のシステムとして実用化したものである。現在、当社支店へ実装展開中であり、今後は新築、既存建物を問わず積極的に提案していく。
②宅地向け液状化対策工法「Minyコラム工法」
東日本大震災を受けて、沿岸埋立地域を中心に広範囲にわたって発生した地盤の液状化現象に伴い、地盤の液状化対策・耐震補強としての地盤改良の必要性が一層高まっている。しかし、既存の施設を供用しながらの施工が必要となる条件が多く、従来の施工機械の大きさを大幅に小型化し、適用範囲を拡大することが強く求められている。
当社では、狭隘地かつ低コストでの施工を可能とした機械撹拌工法の一種である「Minyコラム工法」を開発・実用化した。Minyコラム工法は、地盤中にスラリー状の固化材を吐出しながら撹拌翼を貫入することで、強制的に原地盤と撹拌混合して改良体を築造する機械撹拌工法であり、従来のクローラ方式から施工機に車輪を設け杭基礎レール架台方式にすることで、施工機のサイズを幅100cm×長さ450cm×高さ450cmと従来の施工機に比べて、大幅にコンパクト化でき、従来の施工機では近づけない狭隘地での施工を可能とした。また、市街地で施工可能な低レベルの振動と騒音で周辺の構造物に与える影響が小さい工法である。改良体の品質においては、撹拌翼には第三者機関から証明を受けている工法を採用することで、建築構造物基礎等の本設利用にも適用することができる。Minyコラム工法は、既存インフラ施設の耐震補強や液状化対策ならびに建築構造物基礎および住宅基礎への杭に対して高い能力を発揮できる最新の技術である。

(3)ICT社会への対応技術
①施設履歴管理システム「アイクロア」
施設やインフラは、計画的に管理がなされていないと経年劣化などにより老朽化が早く進む場合がある。そのようになってから修繕を始めようとすると、修繕項目の優先順位確定の手間や費用の捻出などが課題となる。そのため近年では、施設管理を計画的に実施しようと民間の力を活用した官民連携による管理方法の検討が始まった。また、管理業務の生産性を向上させるには、ICTを活用した管理も必要不可欠になる。
当社では早くからこのような課題に対して取り組んでおり、2011年4月には施設のライフサイクルコストの低減や管理業務の効率化を支援する「アイクロア」のサービスを開始しており、すでに260施設、インフラ管理1地区で運用している。「アイクロア」はWEBブラウザーを介してインターネット上で活用するソフトウェアとして開発しており、施設に関する点検、修繕などの履歴、エネルギー使用量、図面などを「カルテ(情報)」として関係者間で共有・一元化することで、情報マネジメントが容易になった。「アイクロア」を活用した主な運用手法は、まず蓄積されたデータベースを分析し、分析結果や施設の現状調査などから事実に基づいて修繕計画を定期的に見直す。このサイクルを繰り返すことで、効率的な運用がおこなわれる。また、ユーザーの利便性向上を目指して、BIMと連携できる機能も搭載した。
今後は「アイクロア」に蓄積されたデータベースの分析や運用の実績を積み重ねることで、運用方法のさらなる改善を図り、施設だけでなく土木インフラなどにも適用範囲を拡大させる予定である。

(4)生産性向上技術
①地盤内空洞を迅速かつ安価に計測するリングビームスキャナー「サターン」
日本全国には、放置された鉱山廃坑や地下施設、鍾乳洞等の空洞が至る所に残されている。このため、地盤の陥没事故等を未然に防ぐため充填工事等の対策が実施されるが、地盤内空洞の寸法や形状を測定するには時間や費用がかかるため、十分な事前調査や出来形管理を実施することが出来ない現状にある。このような背景から、当社では地盤内空洞等の寸法・形状を安価かつ迅速に計測可能なリングビームスキャナー“サターン”(Ring Beam Scanner which measures Sewer pipe, Adit, Tunnel, Round shaft, Natural cavity, etc.)を開発した。本スキャナーは、半導体レーザービームを円錐ミラーで円盤状に反射させることで測定対象内部に光セクショニング形状を生成し、CCDカメラを用いてこの光セクショニング形状画像を取得することによって対象物内面の三次元形状を測定する。これにより、従来のレーザー距離計を用いたスキャナーで数時間かかっていた測定を、わずか数十秒ほどで実施することが可能となる。今後は本スキャナーを廃坑や地下施設等の調査、災害時の空洞・陥没等の調査、廃止トンネル等の充填工事における注入材出来形確認、ダム現場等における現場密度試験の体積測定、タンク等の内部形状調査などに幅広く適用していく予定である。

(5)品質向上技術
①あと施工せん断補強鉄筋「スパイラルアンカー」
阪神・淡路大震災や新潟県中越地震等によるRC構造物の被災等を踏まえて耐震基準の見直しが行われ、旧基準で構築された供用中のコンクリート構造物では、現行の耐震設計基準に対して部材のせん断耐力が不足するケースが指摘されている。それらの構造物に対する耐震補強は喫緊の課題であり、効率的にせん断耐力を向上して所要の地震時安定性を確保することができる補強工法が求められている。当社では、構造物の片側から施工が可能で、効率的に耐震性能を向上することが可能な耐震補強工法として「孔壁内面に目粗し処理を施したあと施工せん断補強鉄筋『スパイラルアンカー』」を開発し、2014年3月に一般財団法人土木研究センターより建設技術審査証明を取得した。本工法は、既存構造物の表面から削孔した後、孔壁内面に目粗し処理を施した孔内に、端部に定着体を取り付けた補強鉄筋の挿入とグラウトの注入を行って既存構造物と一体化させ、構造物全体の鉄筋量を増やすことによって耐震性を向上させる工法である。2015年11月には技術審査証明の内容変更を行い、削孔径の縮小化や鉄筋径、鉄筋強度のバリエーションを増やし、実構造物における施工性を向上するとともに適用範囲を大幅に拡大した。これまでにも多くの施工実績があり、今後も耐震補強の市場ニーズに対し積極的に適用を進めていく予定である。
②CSG統合管理システム「MAC Links(マック・リンクス)」
これまで、ダムの合理化施工法として実績を積み重ねてきたCSG工法は、東日本大震災以降、"粘り強い"防潮堤を早期に構築するための工法としても活用されており、建設現場周辺の岩石質材料にセメントと水を混ぜて堤体を構築する「CSG工法」は、今後もダムや防潮堤事業等の大規模な築堤構造物で利活用されることが予想される。一方、CSG工法は、材料のばらつきを許容するため、製造から施工管理に際しては、きめ細かい品質管理技術が求められる。
当社では、この品質管理の高度化を目的として、CSG材の製造時の粒度をデジタルカメラで撮像した画像により推定するとともに、含水率を非接触水分計によって計測し、品質管理を自動化するCSG品質管理システムを開発し、防潮堤現場で運用を開始した。この自動計測の頻度を増やせば、ダムや防潮堤などでの大量製造時下においても、きめ細かな品質管理が可能となり、不具合を未然に防止できる。また、この品質管理システムに加え、独自の連続ミキサによる大量製造、ダンプトラック等のCSG運行管理システム、ICT(情報通信技術)を活用した情報化施工を統合管理するシステム「MAC Links(マック・リンクス)」として、CSG工事を製造ミキサ・品質管理システム・運搬管理システム・CIM/ICTに関する4つの要素技術で構成し、それらをリンクさせることによって生産性向上を図るとともに高品質なCSG構造物を実現展開していく方針である。

(その他事業)
連結子会社である㈱前田製作所においては、産業・鉄構機械製造事業において環境負荷の低減、安全制御機能の付加、国内及び海外の市場ニーズに即したクレーンの研究開発に重点的に取り組んだ。
当連結会計年度における研究開発費は287百万円余となっている。

経営上の重要な契約等財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析


このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E00051] S1007VQS)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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